JP2011225848A - 活性放射線硬化性インク組成物、インクジェット記録用インク組成物、並びに印刷物、および印刷物成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)酸性基を2以上または塩基性基を2以上有するポリマー、(B)前記(A)ポリマーが有する酸性基または塩基性基と対塩を形成しうる置換基を有する重合性モノマー、(C)光重合開始剤、および(D)前記(B)重合性モノマーとは構造の異なる重合性モノマーを含む活性放射線硬化性インク組成物。
【選択図】図1
Description
インクジェット方式の一つとして、放射線の照射により、硬化可能なインクジェット記録用インクを用いた記録方式がある。この方法によれば、インク射出後直ちに又は一定の時間後に放射線照射し、インク液滴を硬化させることで、印字の生産性が向上し、鮮鋭な画像を形成することができる。
高感度で硬化し、保存性に優れた光重合開始剤組成物を得ることを目的として、特定構造の多官能チオール化合物を光重合開始剤組成物の一成分として感光性組成物に用いる技術が提案されている(例えば、特許文献2及び3参照。)。常温溶融塩をインクに用いて、インクの長期保存性を向上し、長期間保存してもインクの吐出を安定させる提案がなされている(例えば、特許文献4参照。)。
また、柔軟性と感度を両立させる技術として、酸性基を有する単官能(メタ)アクリレートと塩基性基を有する単官能(メタ)アクリレートとを有するインク組成物が提案されている(例えば特許文献5参照。)。
しかし、インクの保存安定性、感度、硬化物の柔軟性、硬化物の表面硬度をいずれも向上させることは不十分であり、これらの性能を向上させる技術の開発が待ち望まれている。
即ち、本発明の目的は、硬化して得られた画像の表面硬度が高く、柔軟性に優れ、被記録媒体との密着性に優れ、長期に保存しても吐出安定性に優れ、且つ感度が高いインク組成物を提供することである。該インク組成物はインクジェット記録用として好適であり、本発明の別の目的は、特に該インク組成物をインクジェット記録による印刷物を成形した場合に、表面硬度に優れ、耐ブロッキング性、延伸性、密着性に優れた印刷物の製造方法、および印刷物成形体の製造方法を提供することである。
<1> (A)酸性基を2以上または塩基性基を2以上有するポリマー、(B)前記(A)ポリマーが有する酸性基または塩基性基と対塩を形成しうる置換基を有する重合性モノマー、(C)光重合開始剤、および(D)前記(B)重合性モノマーとは構造の異なる重合性モノマーを含む活性放射線硬化性インク組成物。
<2> 前記(A)酸性基を2以上または塩基性基を2以上有するポリマーの酸性基または塩基性基の量に対する、前記(B)重合性モノマーの対塩を形成しうる置換基の量が、当量基準で0.2〜1の範囲である<1>に記載の活性放射線硬化性インク組成物。
<3> 前記(A)酸性基を2以上または塩基性基を2以上有するポリマーが、(i)フッ素置換炭化水素基、(ii)シロキサン骨格、および(iii)長鎖アルキル基からなる群より選択される少なくとも1つの部分構造を含むポリマーである<1>または<2>に記載の活性放射線硬化性インク組成物。
<5> 前記(A)酸性基を2以上または塩基性基を2以上有するポリマーが、ウレタン樹脂またはウレア樹脂である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の活性放射線硬化性インク組成物。
<6> インクジェット記録用である<1>〜<5>のいずれか1項に記載の活性放射線硬化性インク組成物。
<7> 成型可能な樹脂材料からなる基材が有する硬質表面への印刷に用いられる<1>〜<6>のいずれか1項に記載の活性放射線硬化性インク組成物。
<9> 成形可能な樹脂材料からなる基材上に、<1>〜<7>のいずれか1項に記載の活性放射線硬化性インク組成物を付与して画像を形成する工程と、該画像に活性放射線を照射して硬化させて印刷物を得る工程と、硬化した画像が形成された前記基材を成形加工して成形体を得る工程と、を有する印刷物成形体の製造方法。
本発明のインク組成物は、酸性基を2以上または塩基性基を2以上有するポリマーと、該ポリマーが有する酸性基または塩基性基と対塩を形成しうる置換基を有する重合性モノマーとを有しているので、インク組成物中で前記ポリマーと前記重合性モノマーとが会合(擬似結合)を生じる。この結果、前記ポリマーがイオン性の連結を介して前記重合性モノマーが有する重合性基を有した状態になり、顔料等の着色剤の分散安定性を低下させることなく、得られた硬化物は優れた画質を得ることができたものと考えられる。また、硬化して得られた硬化物は高Tgであり、高い膜強度が得られ、画質と膜強度を良好に両立することができたものと考えられる。
なお、(A)ポリマーが酸性基を有する場合、(B)重合性モノマーは、酸性基と対塩を形成する塩基性基を有し、(A)ポリマーが塩基性基を有する場合、(B)重合性モノマーは、塩基性基と対塩を形成しうる酸性基を有する。
さらに、印刷物を加熱成形する際には、熱等によって擬似結合が解離して柔軟性を示し、成形が容易になる。硬化後および成形後の印刷物、および成形体においては、再度擬似結合が生じるので、硬度が高くなり、印刷物、および成形体の膜強度が高くなるものと考えられる。
また、前記特定構造の(A)ポリマーは、ポリマーに重合性基を共有結合にて導入して重合性ポリマーを調製するのに比べ、少ない工程数で製造することが可能であるという利点をも有する。
以下、本発明のインク組成物に用いる各成分を詳細に説明する。なお、本発明の詳細な記載における「分子量」とは、特に断らない限り「重量平均分子量」として扱うものとする。
本発明のインク組成物は、(A)酸性基を2以上または塩基性基を2以上有するポリマー(以下、適宜、(A)特定ポリマーと称する)を含む。
(A)特定ポリマーは、分子内に2以上の酸性基を有するか、或いは分子内に2以上の塩基性基を有すれば、どのようなポリマーであっても本発明のインク組成物に使用することができる。
また、特定ポリマーが有する酸性基は、同種でも異種でもよく、酸性基を2個分子内に有していればよい。特定ポリマーの酸価としては、1〜700mgKOH/gが好ましく、5〜400mgKOH/gがより好ましく、最も好ましくは8〜200mgKOH/gである。このような酸価に適合するような条件で酸性基を有するポリマーが好ましい。
芳香族アミン構造としては、少なくとも一つが置換基を有してよい炭素数6〜20の芳香環により置換され、残りが炭素数1〜20の直鎖、分岐、又は環状のアルキル基により置換された2級、又は3級のアミン構造が好ましい。芳香環上の好ましい置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子などが挙げられる。
本発明における特定ポリマーの調製に好適に用いることのできる分子内に酸基、または塩基性基を有するモノマー化合物の具体例は、後述の酸性基を有する重合性モノマー、または後述する塩基性基を有する重合性モノマーである〔例示化合物(Ba-1)〜(Ba−18)、(Bb-1)〜(Bb-14)〕を用いることができる。
さらに、下記構造の酸性基を有する重合性モノマーを、本発明における特定ポリマーの調製に用いることもできる。
また酸性基、塩基性基が導入される形式は、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体などいずれの方法でもよいが、溶解性の観点からランダム共重合体として導入されることが好ましい。
また塩基性基においては、ポリマーの主鎖と塩基性基とを連結する鎖長は、原子数が3以上100以下であることが好ましく6以上50以下であることがより好ましく、8以上20以下であることがさらに好ましい。
連結の鎖長を上記範囲とすることによって、特定ポリマーと対塩を形成する(B)重合性モノマーの反応性を高く保ち、溶解性とインク組成物を硬化した膜の強度が良好となる。
なお、本願発明における特定ポリマー中の酸性基、又は塩基性基の導入方法としては前記の手法が好ましく用いられるが、特定ポリマー中に酸性基、又は塩基性基が2以上導入されればよく、前記の手法のみに限定されるものではない。
本発明における特定ポリマー中に含んでもよい(i)フッ素置換炭化水素基とは、少なくとも1つのフッ素原子により置換された炭化水素基であればよく、アルキル基における少なくとも一つの水素原子をフッ素原子に置換したフッ素置換アルキル基が挙げられ、フッ素置換アルキル基のすべての水素をフッ素に置換したパーフルオロアルキル基がより好ましい。
アルキル基としては、炭素数3〜12が好ましく、炭素数4〜10がより好ましく、炭素数6〜8が更に好ましい。
本発明における特定ポリマーが有するフッ素置換炭化水素基は、インク表面への偏在性の観点から、下記一般式Iで表される基であることが好ましい。
なお、mが2以上の場合、互いに隣接する炭素上の官能基(即ち、隣り合う炭素にそれぞれ結合しているR2同士やR3同士)は結合して脂肪族環を形成してもよい。
また、一般式Iにおけるmは0以上の整数を表し、2〜8の整数が好ましく、2が特に好ましい。
また、*で表されるポリマー鎖への連結部位は、特定ポリマーの主鎖に直結していてもよいし、ポリオキシアルキレン基、アルキレン基、エステル基、ウレタン基、ヘテロ原子を含んでもよい環状アルキレン基、ポリ(カプロラクトン)、アミノ基、等の2価の連結基を介して結合していてもよい。ポリオキシアルキレン基を介して結合していることが好ましい。
一般式Iにおいて、Xが単結合である場合は、ポリマー主鎖と、R2及びR3が結合している炭素原子と、が直接連結していることを意味する。
また、Xが2価の連結基である場合には、その連結基としては、−O−、−S−、−N(R4)−、−CO−等が挙げられる。これらの中でも−O−がより好ましい。ここで、R4は、水素原子又は炭素数1〜4個のアルキル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、好ましくは、水素原子、メチル基である。
このフッ素置換炭化水素基含有モノマーとしては、下記一般式IIで表されるモノマーが好ましいものとして挙げられる。
なお、一般式IIにおいてR1で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
また、Xが2価の連結基である場合には、その連結基としては、−O−、−S−、−N(R4)−、−CO−等が挙げられる。これらの中でも−O−がより好ましい。
ここで、R4は、水素原子又は炭素数1〜4個のアルキル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、好ましくは、水素原子、メチル基である。
特定ポリマーに含んでもよいシロキサン骨格とは、「−Si−O−Si−」を有していれば、特に制限はなく、ポリオキシアルキレン基を含むことが好ましい。
シロキサン骨格を有することによって、インク組成物の吐出安定性を上げ、インク組成物を塗膜としたときの表面偏析性を高くすることができる。この観点から、下記構造式(A)で表される化合物(以下、「特定シロキサン化合物」ともいう)を重合して、シロキサン骨格を特定ポリマーに導入することが好ましい。
また、y1は、1〜30の整数である。
前記構造式(A)中、X2は単結合、又は下記構造式(C)で表わされる2価の基である。
前記構造式(C)中、Q2は、前記構造式(A)におけるR7に結合する。
これらのうちポリオキシアルキレン基を介してシロキサン構造がポリマーに結合した構造が好ましい。
特定ポリマーが含んでもよい長鎖アルキル基としては、炭素数4〜12のアルキル基であり、下記一般式(3)が好ましい。ポリオキシアルキレン基を介して特定ポリマーに導入することも好ましい。
上記一般式(3)中、R11は、炭素数6〜20のアルキル基が好ましく、炭素数10〜20のアルキル基がより好ましい。またn3は、1〜3の整数が好ましく、いずれもこの範囲にあると表面偏析性が好ましい。
長鎖アルキル基を構成する構造単位としては、特開2010−18728号公報段落番号〔0096〕〜〔0097〕に記載の構造単位が挙げられる。
また、ポリオキシアルキレン基を介して長鎖アルキル基がポリマーに結合した構造が好ましく、後述の一般式(1)の項で説明する。
また、ポリオキシアルキレン基全体の分子量は、150から5000が好ましく、より好ましくは200から5000、最も好ましくは300から3000である。この分子量の範囲にあると画像平滑性が良好である。
一般式(1)で表わされる構造単位を含むモノマーを他の構造単位のモノマーと共重合して本発明の特定ポリマーとすることも好ましい。
ポリオキシアルキレン基を介してフッ素置換炭化水素基がポリマーに結合した構造としては下記の具体例が挙げられる。
上記範囲とすることで、特定ポリマーをインク組成物内にて効率的に表面偏析させ、且つ平滑性が向上する。
特定ポリマーの主鎖の具体的な形態としては、以下のような例が挙げられる。
例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、フェノール/ホルムアルデヒド縮合樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、無水マレイン酸/α−オレフィン樹脂、α−ヘテロ置換メタクリル樹脂などを用いることができる。その中でも、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、スチリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が有用であり、特にアクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂が有用である。
本発明のインク組成物は、(B)前記(A)ポリマーが有する酸性基または塩基性基と対塩を形成しうる置換基を有する重合性モノマー(特定モノマー)を含む。
即ち、特定ポリマーが酸性基を2以上有する場合には、酸性基と対塩をなす塩基性を有する重合性モノマーを用い、特定ポリマーが塩基性基を2以上有する場合には、塩基性基と対塩をなす酸性基を有する重合性モノマーを用いる。
以下、塩基性を有する重合性モノマー、および酸性基を有する重合性モノマーを説明する。
酸性基を有する特定ポリマーを使用する場合には、塩基性基を有する重合性モノマーを用いるが、特定ポリマーの酸性基と重合性モノマーの塩基性基とは、酸性基とプロトン化された塩基性基のpKaにおいて、1〜15の差を有する関係であることが好ましく、より好ましくは2〜12の差を有する関係である。特に好ましい組み合わせとしては3〜10の差を有する組み合わせである。
また、塩基性基を有する特定ポリマーを使用する場合の関係も同様である。
本発明のインク組成物は、(C)光重合開始剤を含有する。
(C)光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を、インク組成物の使用目的に応じて、適宜選択して使用することができる。
本発明のインク組成物に使用する光重合開始剤は、外部エネルギー(光)を吸収して重合開始種であるラジカルを生成する化合物である。光には、活性放射線、すなわち、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できる。
また、特開2008−105379号公報、特開2009−114290号公報に記載の重合開始剤も好ましい。
本発明のインク組成物における光重合開始剤の含有量は、インク組成物に対して、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%、更に好ましくは1〜10質量%である。
本発明のインク組成物は、重合性化合物である(D)(B)重合性モノマーとは構造の異なる重合性モノマー(重合性モノマーD)を含む。
本発明における重合性モノマーDは、前記(B)特定モノマーとは構造が異なる重合性モノマー化合物である。
本発明に適用しうる重合性モノマーDとしては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、およびカチオン重合性化合物であり、且つ(B)特定モノマーと構造が異なれば、どのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。
重合性モノマーDは1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。好ましくは2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。
なお、メタクリレートは、皮膚低刺激性がアクリレートより良好である。
また、本発明で用いることができる重合性モノマーDとしては、カチオン重合性化合物が挙げられ、光酸発生剤から発生する酸により重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性化合物として知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性化合物としては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892、同2001−40068、同2001−55507、同2001−310938、同2001−310937、同2001−220526などの各公報に記載されている、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
本発明に用いうる単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
さらに重合性モノマーDとして、ビニルエーテル化合物が挙げられるが、ビニルエーテル化合物はラジカル重合でも、カチオン重合でもいずれでも反応性を示す。
具体的には、単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
本発明のインク組成物には、必要によって、上記で説明した以外のその他の成分を添加することができる。以下、その他の成分を説明する。
本発明のインク組成物には、目的に応じて着色剤を含有することができる。インク組成物に着色剤を添加することで、可視画像(有色画像)を形成しうるインク組成物とすることができる。
本発明のインク組成物に用いることのできる着色剤は、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の色材、(顔料、染料)を適宜選択して用いることができる。例えば、耐候性に優れた画像を形成する場合には、顔料が好ましい。また、染料としては、水溶性染料および油溶性染料のいずれも使用できるが、油溶性染料が好ましい。
まず、本発明のインク組成物における着色剤として好ましく使用される顔料について述べる。着色剤として顔料を用いた場合、インク組成物を使用して形成された着色画像は耐光性に優れたものとなる。
前記顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料および無機顔料、または顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、或いは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
本発明において使用できる有機顔料および無機顔料の具体例としては、特開2008−13646号公報の段落番号〔0126〕〜〔0131〕に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。
顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、ルーブリゾール社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1質量部〜50質量部添加することが好ましい。
次に、本発明における着色剤として好ましく使用される染料について述べる。
染料としては、従来公知の化合物(染料)から適宜選択して使用することができる。具体的には、特開2002−114930号公報の段落番号〔0023〕〜〔0089〕、特開2008−13646号公報の段落番号〔0136〕〜〔0140〕に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。
本発明のインク組成物には、光重合開始剤の活性光線照射による分解を促進させるために増感色素を添加することができる。増感色素は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感色素は、光重合開始剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用を生じ、これにより光重合開始剤の化学変化、即ち、分解、ラジカル、酸或いは塩基の生成を促進させるものである。
多核芳香族類(例えば、アントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、チオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)等が挙げられ、多核芳香族類およびチオキサントン類が好ましい類として挙げられる。
また、特開2008−95086号公報記載の増感色素も好適である。
本発明のインク組成物は、共増感剤を含有することもできる。本発明において共増感剤は、増感色素の活性放射線に対する感度を一層向上させる、或いは酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
本発明のインク組成物は、連鎖移動剤を含有することもできる。本発明において連鎖移動剤は硬化物の感度向上、膜物性の柔軟化に硬化がある。連鎖移動剤としては、Polymer Handbook (4th Edition)に記載の一般的な連鎖移動剤が使用できるが、好ましい連鎖移動剤としてはチオール類であり、例えば、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、4,4−チオビスベンゼンチオール、p−ブロモベンゼンチオール、チオシアヌル酸、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、p−トルエンチオールなど、また、米国特許第4414312号や特開昭64−13144号記載のチオール類、特開平2−291561号記載のジスルフィド類、米国特許第3558322号や特開昭64−17048号記載のチオン類、特開平2−291560号記載のO−アシルチオヒドロキサメートやN−アルコキシピリジンチオン類なども挙げられる。保存安定性の観点から特に2級チオール基、芳香族ジチオール基を有する化合物がより好ましい。
本発明の安定剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、メトキシベンゾキノン、フェノチアジン、カテコール類、アルキルフェノール類、アルキルビスフェノール類、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、サリチル酸銅、チオジプロピオン酸エステル類、メルカプトベンズイミダゾール、ホスファイト類、などが挙げられ、特にp−メトキシフェノール、カテコール類、フェノール類が好ましい。
安定剤は単独で使用しても、2種以上併用しても良い。安定剤の添加量は、全インク総質量に対して、100〜10,000ppmであり、好ましくは、300〜2000ppm、更には、500〜1,000ppmがより好ましい。
保存性を高める観点から重合禁止剤を添加してもよい。また、本発明のインク組成物をインクジェット記録用インク組成物として使用する場合には、40〜80℃の範囲で加熱し、低粘度化して吐出することが好ましく、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤は、本発明のインク組成物全量に対し、200〜20,000ppmであり、300〜2000ppmがより好ましく、更には、500〜1,000ppmが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノンやメトキシベンゾキノンなどのキノン類、フェノチアジン、カテコール類、アルキルフェノール類、アルキルビスフェノール類、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、サリチル酸銅、チオジプロピオン酸エステル類、メルカプトベンズイミダゾール、ホスファイト類、などが挙げられ、p−メトキシフェノール、カテコール類、キノン類が好ましく、特にハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl、tris(N−nitroso−N−phenylhydroxylamine)aluminum salt等がより好ましい。
本発明のインク組成物には、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5質量%〜15質量%であることが好ましい。
本発明のインク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。
酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1質量%〜8質量%であることが好ましい。
本発明のインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。
有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。
また、金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1質量%〜8質量%であることが好ましい。
本発明のインク組成物には、被記録媒体(基材)との密着性を改良するため、極微量の非硬化性の有機溶剤を添加してもよい。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1質量%〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1質量%〜3質量%の範囲である。
本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。
高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。 また、本発明のインク組成物を膜としたときに、タック性改善等の目的で表面に偏析しやすい高分子化合物も好適である。これらの高分子化合物は特開2008−248119号公報〔0017〕〜〔0037〕、特開2005−250890号公報〔0015〕〜〔0034〕などに記載されたSi、F原子を含む高分子、長鎖アルキル基を側鎖に有する高分子などが利用可能である。
本発明のインク組成物には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、が挙げられる。
なお、界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。
有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
本発明のインク組成物をインクジェット記録に適用する場合には、吐出性を考慮し、吐出時の温度(例えば、40℃〜80℃、好ましくは25℃〜30℃)において、粘度が、好ましくは7mPa・s〜30mPa・sであり、より好ましくは7mPa・s〜20mPa・sである。例えば、本発明のインク組成物の室温(25℃〜30℃)における粘度は、好ましくは35〜500mPa・s、より好ましくは35mPa・s〜200mPa・sである。
本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を回避し、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となる。更にインク液滴着弾時のインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
本発明のインク組成物が好ましく適用されるインクジェット記録方法について、以下説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、被記録媒体上に、上記した活性放射線硬化性インク組成物をインクジェット方式により付与して画像を形成する工程と、該画像に活性放射線を照射して硬化させる工程と、を有する印刷物の製造方法であることを特徴とする。
前記印刷物の製造方法において、被記録媒体として成型可能な樹脂材料からなる基材を用い、さらに、硬化した画像が形成された前記基材を成形加工して成形体を得る工程を有することによって印刷物成形体を製造することができる。
更に、本発明に適用しうる被記録材料としては、平版印刷版の支持体が挙げられる。
そのため、耐擦過性に優れ、表面のべとつきが抑制された画像を有する印刷物となる。
今日において、成形加工が施された加飾シート等の印刷物は、様々な用途で使用されている。例えば、電化製品等に使用されるメンブレンスイッチ表面シートは、薄プラスチックシート(膜圧約100μmのPET、ポリカーボネート、ポリスチレン等)にイメージ(画像)が形成された後、スイッチ部分(クリック部分)にクリック感を出す目的で、エンボス加工が施される。またその他、印刷物をマット調に仕上げたり、デザイン上立体感を出したりするため、画像を形成した後の印刷物にエンボス加工を施す例が多く見られる。
これらの加工が施される印刷物に用いられるインクの性能としては、得られた画像(印刷物)がひび割れや剥離等を起こしにくく、硬化膜の耐衝撃性、柔軟性、基材密着性に富むものが求められている。これに対し、本発明のインク組成物は、特定化合物を有していることから、表面を効率よく硬化することができるため衝撃に強く、更に、バルクを柔軟な膜(粘弾性が低い軟らかい膜)にしても表面の硬化性(粘弾性が高いべとつきが無い膜)を確保することができるため、画像形成後の印刷物に対し、上記加熱成形加工が施され、印刷物成形体を得る用途において、特に良好な効果を発揮することができる。
なお、本発明のインク組成物から得られる印刷物の用途としては、上記の中でも特に真空成型用途に適用されることが好ましい。
真空成形は、画像が形成された支持体を予め熱変形可能な温度まで予熱し、これを金型へ減圧によって吸引して延伸しながら金型に圧着冷却し成形する方法であり、圧空成形は、画像が形成された支持体を予め熱変形可能な温度まで予熱し、金型の反対側から加圧して金型に圧着冷却し成形する方法である。真空圧空成形は、前記減圧及び加圧を同時に行い成形する方法である。
詳しくは高分子大辞典(丸善株式会社)p.766〜768に記載されている「熱成形」の項目及び該項目に引用されている文献を参照することができる。
次に示す顔料、分散剤、溶媒を混合して、マゼンタ色の顔料分散物(M1)を調製した。
マゼンタ顔料分散物(M1)
・顔料:C.I.ピグメントレッド57:1 15部
・分散剤:高分子分散剤〔LUBRIZOL社製ソルスパース32000〕 5部
・溶媒:フェノキシエチルアクリレート 80部
下記のインク組成物の組成に示す成分を混合して、表1に示す実施例1〜34、および比較例1〜5のインク組成物を調製した。
但し、(A)特定ポリマーの量、および(B)重合性モノマーの量は以下のようにした。
(A)特定ポリマーをインク組成物全量に対して、4%添加した。(B)特定モノマーは、(A)特定ポリマー中の酸性基、または塩基性基に対して、表1に記載の中和度となるように、添加した。例えば、実施例1における中和度20とは、特定ポリマーが有するアミノ基の20%が、特定モノマーであるアクリル酸によって中和されたことを意味する。実施例2、3、および5における中和度は、特定ポリマーが有する酸性基、または塩基性基が特定モノマーによって中和された量を示す。また、中和度100%とは、特定ポリマーが有する酸性基、または塩基性基が特定モノマーによって当量で中和されたことを示す。
なお、表1における(A)特定ポリマー、(B)特定モノマーは前記した例示化合物である。
・顔料分散物(M1) 4部
・(A)特定ポリマー:表1に記載の化合物
・(B)特定モノマー:表1に記載の化合物
・(C)光重合開始剤:ビフェニルベンゾイル 4部
・(C)光重合開始剤:Irgacure 819 5部
(Ciba Specialty Chemicals社製)
・(C)光重合開始剤:Irgacure 184 2部
(Ciba Specialty Chemicals社製)
・(D)重合性モノマーD:フェノキシエチルアクリレート 36部
・(D)重合性モノマーD:N-ビニルカプロラクタム 40部
・エポキシ化合物:共栄社化学製 エポキシエステル3002A 1部
(PO変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート)
・連鎖移動剤:昭和電工社製 カレンズMT−PEI 1部
・安定剤:Rahn社製 Genorad 16 0.1部
得られた各インク組成物を用いて、下記の評価を行い、結果を表2にまとめた。
<インクジェット画像記録(印刷)>
まず、調製されたインク組成物を絶対ろ過精度2μmのフィルターにてろ過した。
次に、ピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体への記録を行った。インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱及び加温を行った。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に70℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、8pl〜30plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
UV−LEDと被記録媒体との距離及び被記録媒体の搬送速度の設定に応じて、被記録媒体上の露光エネルギーを0.01J/cm2〜15J/cm2の間で調整することができる。なお、照射時間は、紫外線照射後の画像面において、粘着感の無くなるまでとした。また、被記録媒体としては、ポリカーボネートシートを用いた。
また、インク組成物を用いて形成した画像(インク組成物の硬化膜)の延伸率、及び被記録媒体に対する密着性を後述する条件に変更して評価した。
紫外線照射後の画像面において、触指で粘着感の無くなる露光エネルギー量(mJ/cm2)を硬化感度と定義した。数値が小さいものほど高感度であることを表す。4000mJ/cm2以下で硬化することが好ましい。
各インク組成物を75%RH、60℃で3日保存した後、上記射出温度でのインク粘度を測定し、インク粘度の増加分を、保存後/保存前の粘度比で算出した。粘度が変化せず1.0に近いものは、保存安定性が良好である。この数値が1.5を超えると吐出時に目詰まりを起こす場合がある。評価基準は、1.5未満を○、1.5以上を×とした。
前述のようにして得られたインク組成物(ろ過後のもの)のヘッドノズルでの吐出安定性を以下のようにして評価した。
即ち、下記の条件でピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置により、60分の連続吐出におけるノズルロス個数を測定した。
−条件−
・チャンネル数:318/ヘッド
・駆動周波数:4.8kHz/dot
・インク滴:7滴、42pl
・温度:45℃
○:ノズルロス数が0以上5個未満
△:ノズルロス数が5個以上10個未満
×:ノズルロス数が10個以上
前記のインクジェット記録方法を適用して得られた、紫外線照射後の画像上に、PET(サイズ:縦横共に画像形成したポリカーボネートシートと同サイズ、重さ:2g/枚)を500枚重ね載せ、一日放置し、PETへの転写を目視評価した。転写が無い場合を○、転写がある場合を×とし、転写が無くなるまでに要した露光エネルギー量(mJ/cm2)をブロッキング感度と定義した。
ブロッキング感度の許容範囲は12,000mJ/cm2以下であり、より好ましくは8,000mJ/cm2以下である。
積算露光量:12,000mJ/cm2、照度:2140mW/cm2とした以外は、前記インクジェット画像記録と同様にして、インク組成物の硬化膜を作成した。得られた硬化膜を軸長5cm×幅2.5cmにカットし、引っ張り試験機(島津製作所社製、オートグラフAGS−J)を用いて、室温(20℃)中、速度30cm/minで延伸させ、硬化膜が破断する伸び率を測定した。初期長から2倍の長さまで伸びた状態を伸び率100%と定義した。
延伸率の許容範囲はロール状基材に対応するためには100%以上が必要であり、成型加工用途で使用する場合には200%以上であり、より好ましくは300%以上である。
前記インクジェット画像記録において、インク組成物を用いてポリカーボネートシート上にベタ画像を印字したほかは、同様にして、インク組成物の硬化膜を形成した。得られたサンプルを用いて、クロスハッチテストにより評価した。この試験は、JISK5600に基づき、0〜5の6段階で評価し、0が最もよく、1が実用上問題ないレベルと評価した。
−評価基準−
○:0
△:1
×:2〜5の範囲
密着性評価の項に記載の各硬化膜について、JIS−K5400に従い、鉛筆硬度を測定した。
真空成形装置フォーミング300X(成光産業(株)製)を用い真空成形を行った。該真空成形装置の真空テーブルの中心に図1に示す木製型を設置し、支持体である厚さ0.5mmのポリカーボネートの温度が170℃になるようにヒーターの温度を設定した。支持体温度が170℃に加熱された後、木型の設置された真空テーブルをテーブル昇降レバーで操作しながらゆっくりと上昇させ、真空成形を行った。成形された印刷物にひび割れ、白抜けが生じていないか、目視で観察を行った。
−評価基準−
○:ひび割れ、白抜けが生じていない。
×:表面のベタツキが著しく、真空成形が行なえなかった。
本発明の特定ポリマーと、特定ポリマーと対塩を構成する特定モノマーとを用いた実施例1〜34はインク組成物の保存安定性、吐出安定性が共に良好であり、硬化されたインク組成物はブロッキング感度が高く、鉛筆硬度が高いものであった。特に表面偏析性基を有するアクリル樹脂である特定ポリマーを用いた実施例13〜24では、ブロッキング感度が高く、硬化したインク組成物の表面硬度は高いものであり、本発明の効果が著しいものであった。また、特定ポリマーと特定モノマーとを添加したことによって、密着力を悪化させることなく、加熱延伸率が改善したため真空成型適性が向上した結果となった。
Claims (9)
- (A)酸性基を2以上または塩基性基を2以上有するポリマー、(B)前記(A)ポリマーが有する酸性基または塩基性基と対塩を形成しうる置換基を有する重合性モノマー、(C)光重合開始剤、および(D)前記(B)重合性モノマーとは構造の異なる重合性モノマーを含む活性放射線硬化性インク組成物。
- 前記(A)酸性基を2以上または塩基性基を2以上有するポリマーの酸性基または塩基性基の量に対する、前記(B)重合性モノマーの対塩を形成しうる置換基の量が、当量基準で0.2〜1の範囲である請求項1に記載の活性放射線硬化性インク組成物。
- 前記(A)酸性基を2以上または塩基性基を2以上有するポリマーが、(i)フッ素置換炭化水素基、(ii)シロキサン骨格、および(iii)長鎖アルキル基からなる群より選択される少なくとも1つの部分構造を含むポリマーである請求項1または請求項2に記載の活性放射線硬化性インク組成物。
- 前記(A)酸性基を2以上または塩基性基を2以上有するポリマーが、アクリル樹脂である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の活性放射線硬化性インク組成物。
- 前記(A)酸性基を2以上または塩基性基を2以上有するポリマーが、ウレタン樹脂またはウレア樹脂である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の活性放射線硬化性インク組成物。
- インクジェット記録用である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の活性放射線硬化性インク組成物。
- 成型可能な樹脂材料からなる基材が有する硬質表面への印刷に用いられる請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の活性放射線硬化性インク組成物。
- 被記録媒体上に、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の活性放射線硬化性インク組成物を付与して画像を形成する工程と、
該画像に活性放射線を照射して硬化させる工程と、
を有する印刷物の製造方法。 - 成形可能な樹脂材料からなる基材上に、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の活性放射線硬化性インク組成物を付与して画像を形成する工程と、
該画像に活性放射線を照射して硬化させて印刷物を得る工程と、
硬化した画像が形成された前記基材を成形加工して成形体を得る工程と、
を有する印刷物成形体の製造方法。
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