本願は、リン光体および蛍光材料等の発光材料を有するスクリーンを用いて光学的励起下で発光して画像を生成するレーザビデオディスプレイシステムおよびレーザHDTVセットを含む走査ビームディスプレイシステムの実装について記載する。発光または蛍光材料を有するスクリーン設計の様々な例が記載される。1以上の走査励起レーザビームの励起下でリン光体材料を有するスクリーンが詳細に記載され、本願の様々なシステムよびデバイス例における光学的に励起された蛍光材料の特定の実装例として利用されている。
1実装例においては、例えば、レーザビームにより光学的に励起され、カラー画像を形成するのに適した赤色、緑色、および青色の光をそれぞれ生成する3つの異なる色リン光体が、ピクセルドットとして、あるいは赤、緑、および青のリン光体ストライプとして、平行してスクリーン上に形成されうる。本願に記載される様々な例においては、レーザベースのディスプレイの様々な特徴を示すべく、赤、緑、および青の光を発光する平行したカラーリン光体ストライプを有するスクリーンを利用する。
リン光体材料は、発光材料の一種である。例示された、リン光体を蛍光材料として利用する様々な記載されるシステム、デバイスおよび特徴は、他の光学的に励起可能な、発光する、非リン光体の蛍光材料から形成されるスクリーンを有するディスプレイに適応可能である。例えば、量子ドット材料は、適度な光学的励起下において発光し、故に、本願のシステムよびデバイス用の蛍光材料として利用できる。さらに詳しくは、とりわけ、CdSeおよびPbSなどの半導体化合物は、発光量子ドット材料として化合物のエキシトンボーア半径のオーダの直径を有する粒子の形状に製造することができる。異なる色の光を生成すべく、異なるエネルギーバンドギャップ構造を有する異なる量子ドット材料を利用して、同じ励起光下で異なる色を発光させてよい。量子ドットのなかには、2‐10ナノメートルの寸法であり、10‐50アトムという約数十のアトムを含むものがある。量子ドットは、様々な材料内に分散され混合されて、溶液、粒子、ゼリー状の基質(matrix)材料および固体(例えば固溶体)を形成しうる。量子ドットフィルムまたはフィルムストライプは、本願においてはシステムまたはデバイス用のスクリーンとして基板上に形成されてよい。例えば1実装例においては、3つの異なる量子ドット材料を、光学ポンプとして走査レーザビームにより光学的に励起されるよう設計および設計して、カラー画像形成に適した赤色、緑色、および青色の光を生成してよい。このような量子ドットは、平行なライン(反復性の連続した赤色のピクセルドットライン、緑色のピクセルドットライン、および青色のピクセルドットライン)として配列されたピクセルドットとしてスクリーン上に形成されてよい。
ここに記載する走査ビームディスプレイシステムの例は、少なくとも1つの走査レーザビームを利用してスクリーンに堆積されたカラー発光材料を励起して、カラー画像を生成する。走査レーザビームは赤色、緑色、青色、あるいは他の可視色の画像を伝送するよう変調され、レーザビームが赤色、緑色、青色の画像により、赤色、緑色、青色のカラー発光材料を励起するよう制御される。故に、走査レーザビームは画像を伝送するが、観察者に見える可視光を直接生成はしない。スクリーン上のカラー発光蛍光材料が走査レーザビームのエネルギーを吸収して、赤色、緑色、および青色あるいはその他の色の可視光を発光して、観察者に見える実際のカラー画像を生成する。
蛍光材料に発光(to emit light)、または冷光を発させる(to luminesce)のに十分なエネルギーを有する1以上のレーザビームを利用した蛍光材料のレーザ励起は、光学的励起の形態の1種である。他の実装例においては、光学的励起は、スクリーンで利用される蛍光材料を励起するのに十分なエネルギーを有する非レーザ光源により生成されてよい。非レーザ励起光源の例には、様々な発光ダイオード(LED)、ライトランプ、および、高いエネルギーの光を可視領域の低いエネルギーの光に変換する蛍光材料を励起する波長またはスペクトル帯の光を生成する他の光源が含まれる。スクリーンの蛍光材料を励起する励起光学ビームは、蛍光材料による発光可視光の周波数より高い周波数の周波数あるいはスペクトル領域であってよい。故に、励起光学ビームは、紫色スペクトル領域および紫外線(UV)スペクトル領域(420nmより下の波長等)であってよい。以下で記載する例においては、UV光またはUVレーザビームが、リン光体材料または他の蛍光材料の励起光の一例として利用されているが、他の波長の光であってもよい。
図1は、カラーリン光体ストライプを有するスクリーンを利用するレーザベースのディスプレイシステムの一例を示す。カラーリン光体ドットは、スクリーン上の画像ピクセルを画定することに利用されてもよい。システムは、スクリーン101に少なくとも1つの走査レーザビーム120を生成および投影するレーザモジュール110を含む。スクリーン101は、垂直方向の平行なカラーリン光体ストライプを有し、2つの隣接するリン光体ストライプは、異なる色の光を発光する異なるリン光体材料から形成される。例においては、赤色のリン光体が赤色の光を発光するレーザ光を吸収し、緑色のリン光体が緑色の光を発光するレーザ光を吸収し、青色のリン光体が青色の光を発光するレーザ光を吸収する。3つのカラーリン光体ストライプは3つの異なる色である。該ストライプの特定の1空間カラー列を図1に、赤色、緑色、および青色として示す。他のカラー列を利用することもできる。レーザビーム120はカラーリン光体の光学吸収帯域内の波長であり、通常は、カラー画像用の可視の青色、緑色、赤色より短い波長である。一例としては、カラーリン光体は、約380nm‐約420nmのスペクトル領域のUV光を吸収して望ましい赤色光、緑色光、青色光を生成するリン光体であってよい。レーザモジュール110は、ビーム120を生成するUVダイオードレーザなどの1以上のレーザ、ビーム120を水平および垂直に走査して、スクリーン101に1度に1画像フレームを描画するビーム走査機構、およびビーム120を変調して、赤色、緑色、青色の画像チャネル用の情報を伝送する信号変調機構を含みうる。このようなディスプレイシステムは、観察者とレーザモジュール110とがスクリーン101の異なる側にある背面投射型システムとして構成されてもよい。このようなディスプレイシステムは、観察者とレーザモジュール110とがスクリーン101の同じ側にある正面投射型システムとして構成されてもよい。
図2Aは、図1のスクリーン101の例示的設計を示す。スクリーン101は、走査レーザビーム120を透過させる裏面基板201を含んでよく、レーザモジュール110に対面して走査レーザビーム120を受け取る。第2の正面基板202は、裏面基板201に対して固定され、背面投影構成において観察者に対面する。カラーリン光体ストライプ層203が基板201および202の間に配置され、リン光体ストライプを含む。赤色、緑色、および青色を放出するカラーリン光体ストライプは、R、G、およびBで表される。正面基板202は、リン光体ストライプが発光する赤色、緑色、および青色を透過させる。基板201および202は、ガラスあるいはプラスチックパネルを含む様々な材料から形成されうる。各カラーピクセルは、3つの水平方向に隣接するカラーリン光体ストライプの部分を含み、その垂直方向寸法はレーザビーム120の垂直方向におけるビーム拡がりにより画定される。このように、各カラーピクセルは、3つの異なる色(赤、緑、および青)の3つのサブピクセルを含む。レーザモジュール110は、左から右へ、および上から下へ、1度に1つの水平ラインをレーザビーム120で走査して、スクリーン101を充てんする。レーザモジュール110はスクリーン101に対して位置的に固定され、所定の方法でビーム120の走査を制御してレーザビーム120とスクリーン101の各ピクセル位置との間に適切な配置関係を守る。
図2Aにおいては、走査レーザビーム120は、ピクセル内の緑色リン光体ストライプに方向付けられ、該ピクセルに緑色の光を生成する。図2Bではさらに、スクリーン101の表面に垂直な方向B−Bからみたスクリーン101操作が示されている。各カラーストライプは縦長形状なので、ビーム120の断面は、ピクセルの各カラーストライプ内のビームの充てん率を最大化すべく、ストライプの方向に沿って延びてよい。これは、レーザモジュール110のビーム整形光学素子を利用して達成されてよい。スクリーン上のリン光体材料を励起する走査レーザビームを生成するのに利用されるレーザ源は、シングルモードのレーザあるいはマルチモードのレーザであってよい。さらにレーザは、各リン光体ストライプの幅により制限されるビーム拡がりが小さくなるように、リン光体ストライプが延びる方向に垂直な方向においてシングルモードであってよい。リン光体ストライプの延びる方向において、このレーザビームは、リン光体ストライプを横切る方向のビーム拡がりよりも広い面積にわたり拡がるようなマルチプルモードであってよい。シングルモードを1方向に利用してスクリーン上に小さなビームフットプリントを残し、マルチプルモードをその垂直方向に利用してスクリーン上に大きなフットプリントを残す、というこのレーザビーム利用法により、スクリーン上に延びたカラーサブピクセルに合致する形状をビームに持たせ、マルチモードによってビームに十分なレーザ力を与えることで、スクリーンの十分な輝度を保証する。
図3Aを参照すると、図1のレーザモジュール110の例示的実装例が示されている。多数レーザを有するレーザアレイ310の利用により多数のレーザビーム312を生成することで、ディスプレイ輝度を向上させるべくスクリーン101を同時走査する。信号変調コントローラ320は、レーザアレイ310のレーザの制御および変調により、レーザビーム312を変調してスクリーン101表示用画像を伝送させる。信号変調コントローラ320は、3つの異なる色チャネル用にデジタル画像信号を生成するデジタル画像プロセッサを1つ、およびデジタル画像信号を伝送するレーザ制御信号を生成する複数のレーザ駆動回路を含みうる。そしてレーザ制御信号が印加されて、レーザアレイ310内のレーザ(例えばレーザダイオード電流)を変調する。
ビーム走査は、垂直走査用にガルボミラーなどの走査ミラー340、水平走査用に多面(multi-facet)ポリゴンスキャナ350を利用することで行われうる。走査レンズ360を利用して、ポリゴンスキャナ350からの走査ビームをスクリーン101上に投影することができる。走査レンズ360は、スクリーン101上にレーザアレイ310の各レーザを撮像するよう設計される。ポリゴンミラー350の異なる各反射ファセットは、N個の水平ラインを同時に走査する(Nはレーザ数を表す)。示された例において、レーザビームが先ずガルボミラー340に方向付けられ、その後、ガルボミラー340からポリゴンスキャナ350に方向付けられる。出力走査ビーム120は、その後スクリーン101上に投影される。リレー光学モジュール330がレーザビーム312の光路に配置され、レーザビーム312の空間特性を変更し、密に固まったビーム束332を生成し、これをガルボミラー340とポリゴンスキャナー350とが走査して、走査ビーム120としてスクリーン101に投影し、リン光体を励起して、リン光体が発光するカラー光により画像が生成される。
レーザビーム120は空間的にスクリーン101上を走査され、異なる時に異なる色ピクセルに衝突する。故に、各変調ビーム120は、各ピクセルの赤色、緑色、および青色の画像信号を、異なるときに各ピクセルに、および異なるときに異なるピクセルに伝送する。故に、ビーム120は、信号変調コントローラ320により、異なるときに異なるピクセルについての画像情報をコード化される。故にビーム走査は、ビーム120の時間領域にコード化された画像信号をスクリーン101の空間ピクセル上にマッピングする。例えば、変調レーザビーム120は、3つの異なる色チャネル用の3つのカラーサブピクセル用に3つの連続したタイムスロットに均等に分割される各カラーピクセルを有することができる。ビーム120の変調は、各色の望ましいグレイスケール、各ピクセルの適切な色の組み合わせ、および望ましい画像輝度を生成すべくパルス変調を利用してよい。
1実装例においては、多数のビーム120が、二つの隣接するビームがスクリーン101の水平ライン1本分互いに間隔を置いて垂直方向沿いに配設されるよう、スクリーン101の異なり隣接する垂直位置に方向付けられる。ガルボミラー340の任意の位置、およびポリゴンスキャナ350の任意の位置においては、ビーム120はスクリーン101の垂直方向に互いに位置合わせされていなくてよく、水平方向にスクリーン101の異なる位置にあってよい。ビーム120はスクリーン101の一部のみをカバーしてよい。ガルボミラー340の固定角度位置においては、ポリゴンスキャナ350のスピンにより、レーザアレイ310のN個のレーザからのビーム120が、スクリーン101上のN個の隣接する水平ラインの1スクリーンセグメントを走査される。1スクリーンセグメント上の各水平走査の終わりに、ガルボミラー340は異なる固定角度位置に調節され、N個のビーム120全ての垂直位置が、N個の水平ラインの次に隣接するスクリーンセグメントを走査するよう調節される。この処理は、スクリーン101全体が走査されて全スクリーンディスプレイを生成するまで繰り返される。
図3Aに示す走査ビームディスプレイシステムの上述の例においては、走査レンズ360がビーム走査デバイス340および350の下流に配置されて、1以上の走査励起ビーム120をスクリーン101に合焦する。この光学構成は、プレオブジェクティブ型(pre-objective)走査システムと称される。このようなプレオブジェクティブ型の設計においては、走査レンズ360内へと方向付けられる走査ビームは直交する2方向に走査される。故に、走査レンズ360は、直交する2方向に沿ってスクリーン101上に走査ビームを合焦するよう設計される。直交する方向どちらにおいても適切な合焦性を達成すべく、走査レンズ360は複雑になる場合があり、しばしば多数のレンズ部材から形成される。例えば1実装例においては、走査レンズ360は、入力ビームが走査レンズの光軸に対して垂直な直交した2つの軸各々の回りを走査されるときスクリーンの焦点位置と入力走査角(シータ)とが線形関係を有するよう設計される二次元エフシータレンズであってよい。このようなエフシータレンズにおいては、スクリーン上の焦点位置が、入力走査角(シータ)に比例する。
プレオブジェクティブ型構成におけるエフシータレンズなどの二次元走査レンズ360は、直交する2つの走査方向の光学的歪を呈し、スクリーン101上のビーム位置が曲線を辿る可能性がある。故に、スクリーン101上で直線になるはずの水平走査ラインが曲線となる。二次元走査レンズ360が生じる歪はスクリーン101上に見える可能性があるので、表示された画像の品質を低下させうる。このボー歪(bow distortion)問題を軽減する方法の1つに、多数のレンズ部材を有する合成レンズ構成で走査レンズ360を設計してボー歪を低減する、というものがある。このような合成レンズ部材は、最後のレンズアセンブリを望ましいエフシータ条件から逸脱させて光学走査性能を脅かしうる。通常、歪公差が減少すると、アセンブリ内のレンズ部材の数は増加する。しかし、合成レンズ部材を有するような走査レンズは、製造費用が高い。
プレオブジェクティブ型走査ビームシステム内の二次元走査レンズに関連した上述の歪の問題を避けるべく、以下のセクションにおいては、二次元走査レンズ360を、より簡潔で安価な一次元走査レンズで置き換えるべく実装されうるポストオブジェクティブ型の走査ビームディスプレイシステムの例を説明する。2007年4月30日に出願した「POST-OBJECTIVE SCANNING BEAM SYSTEMS」なる名称の米国特許出願第11/742,014号明細書(米国特許出願公開第_______号明細書)は、本願に記載されたリン光体スクリーンとともに利用されるのに適したポストオブジェクティブ型走査ビームシステムの例を記載しており、これを本願の明細書の一部として参照により組み込む。本願に記載されているスクリーン設計は、ポストオブジェクティブ型走査ビームディスプレイシステムおよびプレオブジェクティブ型走査ビームディスプレイシステム双方で利用可能である。
図3Bは、図1のシステム設計に基づくポストオブジェクティブ型走査ビームディスプレイシステムの例示的実装例を示す。多数のレーザを有するレーザアレイ310を利用して、多数のレーザビーム312を生成してスクリーン101を同時に走査することで、ディスプレイの輝度を高める。信号変調コントローラ320は、レーザアレイ310内のレーザを制御および変調して、スクリーン101に表示させる画像を伝送するようレーザビーム312を変調するよう提供される。ビーム走査は、ポリゴンスキャナ350などの水平スキャナおよびガルバノメートルスキャナ340などの垂直スキャナを有する2スキャナ設計に基づく。ポリゴンスキャナ350の異なる各ファセットは、N個の水平ラインを同時に走査する(Nはレーザ数を表す)。リレー光学モジュール330は、水平走査用ポリゴンスキャナ350のファセット寸法のレーザビーム332のコンパクトな一式を形成するよう、レーザビーム312の間隔を狭める。ポリゴンスキャナ350の下流には、一次水平走査レンズ380があり、この次に垂直スキャナ340(例えばガルボミラー)が続くが、垂直スキャナ340は、一次走査レンズ380を介してポリゴンスキャナ350から各水平走査ビーム332を受け取り、ポリゴンスキャナ350の次のファセットによる次の水平走査の前であって、各水平走査の最後に各水平走査ビーム332を垂直走査する。垂直スキャナ340は、二次元走査ビーム390をスクリーン101に方向付ける。
この水平/垂直走査という光学設計下においては、一次元走査レンズ380は、ポリゴンスキャナ140の下流であって垂直スキャナ340の上流に配置されてスクリーン101上に各水平走査ビームを合焦し、スクリーン101の表示画像の水平ボー歪を許容範囲内に最小限にとどめ、これによりスクリーン101上に視覚的に「直線である」水平走査ラインを生成する。直線の水平走査ラインを生成することのできるこのような一次元走査レンズ380は、類似性能の二次元走査レンズに比べて簡潔であり安価である。走査レンズ380の下流に存在する垂直スキャナ340は平面反射板であり、スクリーン101に対してビームを単に反射させ垂直方向に走査することで、各水平走査ビームをスクリーン101の異なる垂直位置に配置させて、異なる水平ラインを走査する。垂直スキャナ340の反射板の水平方向の寸法は、ポリゴンスキャナ350および走査レンズ380から来る各走査ビームの空間領域をカバーするのに十分な大きさを有する。図3Bのシステムは、一次元走査レンズ380が垂直スキャナ340の上流にあることから、ポストオブジェクティブ型の設計である。この特定の例においては、垂直スキャナ340の下流にはレンズあるいは他の合焦部材がない。
とりわけ、図3Bのポストオブジェクティブ型のシステムにおいては、走査レンズから特定のビームのスクリーン101上の位置までの距離は、垂直スキャナ340の垂直走査位置に応じて変わる。故に、長い(elongated)一次元走査レンズの中心を通る直線の水平ライン沿いに固定された焦点距離を有するよう一次元走査レンズ380を設計する場合、各ビームの焦点特性を垂直スキャナ380の垂直走査位置に応じて変化させ、スクリーン101上に一貫したビーム合焦を維持せねばならない。この点に関して、垂直スキャナ340の垂直走査位置に基づいて一次元走査レンズ380に向かうビームの収束を調整するように、ダイナミックフォーカス機構を実装することができる。
例えば、レーザからポリゴンスキャナ350までの1以上のレーザビームの光路においては、固定レンズとダイナミックリフォーカスレンズとを、ダイナミックフォーカス機構として利用することができる。ダイナミックフォーカスレンズを利用して固定レンズの上流位置に各ビームを合焦する。レンズの焦点同士が一致する場合、レンズからの出力光はコリメートされる。レンズ同士の焦点間の逸脱の方向および量に応じて、コリメータレンズからポリゴンスキャナ350への出力光は、発散あるいは収束いずれかとなる。故に、2つのレンズ間の光軸沿いの相対位置が調節されると、スクリーン101上の走査光の焦点が調節されうる。リフォーカスレンズアクチュエータは、制御信号に応じてレンズ間の相対位置を調節するのに利用されうる。この特定の例において、リフォーカスレンズアクチュエータを利用して、ポリゴンスキャナ350から光路を通り一次元走査レンズ380へ方向付けられるビームの収束を、垂直スキャナ340の垂直走査と同期して調節する。図3Bの垂直スキャナ340は、第1の垂直スキャナ350の走査レートよりもずっと小さい走査レートで走査されるので、スクリーン101上の垂直走査で生じる焦点のばらつきは、より遅い垂直走査レートで時間により変化する。これにより、図1のシステムで実装されるべき焦点調節機構に、高い水平走査レートではなくて、より遅い垂直走査レートにおける反応スピードの下限を持たせることができる。
図3Bの上述のポストオブジェクト走査ビームシステムの例では、走査レンズ380の上流に配置される第1のビームスキャナとして水平走査用のポリゴンスキャナ350を用い、走査レンズ380の下流の垂直走査用の第2のビームスキャナとしてガルボミラー等の垂直スキャナ340を用いる。他の実装例においては、走査レンズ380の上流に配置される第1のビームスキャナがガルボミラー等の垂直走査用の垂直スキャナであり、走査レンズ380の下流の第2のスキャナが水平走査用のポリゴンスキャナである。この構成では、小さなガルボ反射器の利用が可能なので、図3Bのポストオブジェクティブ型のシステムで必要となる、上流のポリゴンの水平走査方向にある大きな下流のガルボ反射器を必要としない。大きなガルボ反射器は、小さなガルボ反射器よりも、操作に大量の電力を必要としえて、小さなガルボ反射器と比較して嵩張ることから、そのダイナミックレンジも制限される場合がある。このシステムでは、歪パターンが他に対して回転するので、RGB垂直ラインでは好ましい。というのも、垂直方向の強い歪によりスポットが回転して、事実上スポットがより広くなるからである。
図3Cは、図3Bの2つの走査デバイスの順序を逆にしたポストオブジェクティブ型の構成のレーザアレイ310の多数のレーザに基づくレーザ走査ディスプレイシステムの一例である。走査ビームディスプレイシステムは、多数のレーザビームをそれぞれ生成するレーザアレイ310を形成する複数のレーザと、レーザビームの光路の走査レンズ380Aの両側に配置されて、2つの直交する方向のレーザビームをスクリーン101へと走査する2つのスキャナ340Aおよび350Aを有するビーム走査モジュールと、レーザ310と走査モジュールとの間に配置され、レンズ330A、330B、および330Cを含み、2つの隣接するレーザビーム間の間隔を狭め、走査モジュールにおいてレーザビームと重畳するアフォーカル光学リレーモジュール330とを含む。図3Cの設計の1実装例においては、走査レンズ380は、垂直スキャナ340Aの反射面をポリゴン350Aの反射ファセットへ撮像して、コンパクトなポリゴンの比較的小さいポリゴンファセットを利用してポリゴンの電力消費およびダイナミックレンジを低減することができるように設計されうる。ミラー337および338は、ポリゴンスキャナ350Aとスクリーン101との間の光路に配置されて、光路を小さな光学的深さで折り曲げる(fold)。
1実装例では、アフォーカル光学リレーモジュール330は、レーザからのレーザビームを受け取り合焦する第1の焦点距離を有する第1のレンズと、該第1の焦点距離より短い第2の焦点距離を有し、第1のレンズから第1の焦点距離分だけ離間して第1のレンズからのレーザビームを合焦する第2のレンズと、第2の焦点距離より長い第3の焦点距離を有し、第2のレンズから第3の焦点距離分だけ離間して第2のレーザからのレーザビームを走査モジュールへ方向付ける第3のレンズとを含みうる。アフォーカル光学リレーモジュール330の例は、「Optical Designs for Scanning Beam Display Systems Using Fluorescent Screens」なる名称で2006年10月25日に提出されたPCT出願第CT/US2006/041584号明細書(PCT公開第WO2007/050662号明細書)、および、「Optical Designs for Scanning Beam Display Systems Using Fluorescent Screens」なる名称で2006年8月24日に提出された米国特許出願第11/510,495号明細書(米国特許出願公開第2007−0206258号明細書)に記載されており、これらを参照として本願の明細書の一部として組み込む。
図3Cにおいて、レーザビームは、単一平面(つまり、瞳面(pupil plane))で重なるよう制御される。走査レンズ380Aの上流の一軸走査スキャナ(例えば、ガルボミラー)が、瞳面に配置され、1つの軸沿い(本例では垂直方向)の全てのビームを走査するのに利用される。走査レンズ380Aは、上流の垂直スキャナ150(例えばガルボミラー)からの走査ビームの全角度範囲を許容するべく十分大きな視野を有する多機能走査レンズであってよい。走査レンズ380Aは、ビームをスクリーン101に合焦する収束レンズである。走査レンズ380Aは、ガルボミラー340Aを下流のポリゴンスキャナ350Aのポリゴン反射ファセットへ撮像するのにも利用される。この撮像機能により、ポリゴン350Aは比較的小型なものとすることができる。撮像機能がない場合には、走査ビームが当然ガルボミラー340Aから遠く離れるにつれて拡がることになるので、ポリゴン350Aは比較的大きくなる。図3Cの走査レンズ380Aは、機能達成の目的から(例えば、ガルボミラー340Aの走査範囲にわたる(over)合焦および再撮像)、単一部材のレンズであってもよいし、多数のレンズ部材を含むこともできる。
走査レンズ380Aの下流では、ポリゴンスキャナ350Aは、走査レンズ380Aからの収束ビームを、スクリーン101へと走査する。収束ビームの焦点は、概して、曲面にある。焦点サーボを利用して、ビームをスクリーン101の平面に動的にリフォーカスさせる。この例においては、焦点サーボは、図示されている空隙で隔てられた少なくとも2つのレンズ部材334および335を含む。2つのレンズのうち1つ(例えばレンズ334)は、正の焦点距離を有し、他は(例えばレンズ335)は、負の焦点距離を有する。アクチュエータは2つのレンズ334および335の間の相対間隔を制御すべく設けられる。焦点サーボに対して入退出するビームは、焦点サーボを含むレンズが所期の距離分、隔てられる際、所定の通りにコリメートされる(つまり、中間のまたは所定の位置)。図3Cに示す例においては、焦点サーボの1つのレンズは固定されており、他は軸方向に動くことでビームを動的にリフォーカスする。可動レンズ(例えばレンズ335)は、ビームをスクリーン101上に合焦させるに足る距離分、所定の位置の周りを動く。ポストオブジェクティブ型システムでは、出力2−D走査ビームが、水平方向のボー歪のような光学的歪を有しうる。多数のレンズ部材を有する歪補正光学モジュール336を、ポリゴンスキャナ350Aとスクリーン101との間の光路に配置して、光学的歪を低減しうる。
図1、3A、3B、および3Cの蛍光スクリーン101の図2Bのストライプ設計は、様々な構成で実装されうる。図2Aは、2つの基板201および202の間のカラーリン光体ストライプ層等の蛍光層203を配置する一例を示す。背面投射型システムでは、スクリーン101が、入射する走査励起ビーム120の出来るだけ多くの光を、蛍光層に導き、蛍光層から観察者側へ向かう発光量を最大化することが望ましい。幾らかのスクリーン機構を、個別に、または組み合わせてスクリーン101に実装して、効率的な励起光の収集、観察者側へ向かう蛍光の最大化、スクリーンコントラストの強調およびスクリーングレアの低減等のスクリーン性能の向上を図ることができる。スクリーン101の構造および材料は、特定用途に応じたコストおよびその他の要件上の制約に応じて設計および選択することが可能である。
図4は、走査励起光の光学的励起下で赤色、緑色、および青色を発光する蛍光ストライプを有する蛍光ストライプ層を有する例示的スクリーン101を示す。幾らかのスクリーン特徴が例示され、選択的に特定のスクリーンに実装することができる。故に、図4に示す特徴の幾らかのみを有する特定の蛍光スクリーンが、特定のディスプレイ用途では十分な場合もある。
図4の蛍光スクリーン101は、少なくとも1つの基板層424を含み、蛍光層400を含む様々なスクリーンコンポーネントに強固な構造的支持を与える。基板層424は、薄い基板または剛性シートいずれであってもよい。図4に示すように蛍光層400の観察者側に配置されると、基板層424は、蛍光ストライプ401、402、403が発光する可視カラー光に対して透明性または半透明性を有する材料から形成されうる。半透明性を有する材料は、蛍光ストライプが発光する3つの色を含む可視光を均一に減衰させることができ、光学減光フィルタ(optical neutral density filter)のような働きをする。基板層424は、プラスチック材料、ガラス材料、または他の適切な誘電体材料から形成されうる。例えば、基板層424は、アクリル剛性シートから形成されてよい。ある設計例では、基板層424の厚みは数ミリメートルであってよい。加えて、基板層424は、励起ビーム120の励起光に対して不透明性または反射性とすることで、励起光が観察者へ到達することを避け、未吸収の励起光を蛍光層400で再利用すべく戻してよい。
基板層424はさらに、蛍光層400の他の面に配置されてもよい。励起ビーム120は、基板層424を透過して蛍光層400に入るべきなので、基板層424の材料は励起ビーム120の励起光に対して透明性を有するべきである。加えて、この構成の基板層424は、蛍光層400が発光した可視光に対して反射性を有して、蛍光層400からの可視光を観察者側へ向かわせて、表示画像の輝度(brightness)を向上させてよい。
蛍光層400は、赤色、緑色、および青色リン光体ストライプといった反復性のカラーパターンを有する平行な蛍光ストライプを含む。蛍光ストライプは、図1に示す走査励起ビーム120の水平走査方向に対して垂直である。図4および図2Bに示すように、スクリーン上の各ディスプレイピクセルは、隣接する赤色ストライプ401、緑色ストライプ402、および青色ストライプ402の部分である3つのサブピクセルを含む。各サブピクセルの水平方向における寸法は、各ストライプの幅により画定され、垂直方向の寸法は、垂直方向におけるビーム幅により画定される。ストライプデバイダ404は、光学的に反射性、不透明性、または光学的に吸収性を有してよく、任意の2つの隣接する蛍光ストライプ間に形成されることで、2つの隣接するサブピクセル間のクロストークを最小限に抑えるあるいは低減してよい。その結果、1つのカラーピクセル内の2つの隣接するサブピクセル間の、および2つの隣接するカラーピクセル間の境界におけるスメアを低減させることができ、およびスクリーンの解像度およびコントラストを向上させることができる。各ストライプデバイダ404の側壁は、光学的に反射性を有するよう形成されることで、各サブピクセルの輝度およびスクリーンの効率性を高めることができる。加えて、観察者側に対向するストライプデバイダ404のファセットは(例えば、黒色の吸収性層で被膜されることで)黒くされて、観察者側への反射またはグレアを低減してよい。
基板層424および蛍光層400の上述の基本構造は、構築ブロックとして利用されて、1以上のスクリーン部材を追加して、スクリーンの様々な特性および性能を向上させてよい。励起波長である励起光が蛍光材料に吸収され異なる色の可視蛍光に変換されて観察者に画像を表示する実施形態において、蛍光層400は光学的にアクティブな層である。この点に関して、蛍光層400は、さらに、スクリーンの「励起側」と「観察者側」との間のデバイダでもあり、2つの側の各々に望ましい光学効果を達成してスクリーン性能を高めるべく、2つの側の光学特性は非常に異なるよう設計される。このような光学効果の例には、励起ビーム120の蛍光層への誘導を向上させること、蛍光層400に吸収されなかった反射・発散励起光を蛍光層400で再利用すべく戻すこと、蛍光層400からスクリーンの観察者側へと発光された可視光量を最大化すること、周辺光の反射により生じる観察者へのスクリーングレアを低減すること、励起光がスクリーンから観察者側にかけて存在することを遮ること、およびスクリーンのコントラストを強調すること、を含む。様々なスクリーン部材を構成することで、これら光学効果の1以上を達成しうる。このようなスクリーン部材の幾らかの例を図4に示す。
図4を参照すると、スクリーンの励起ビーム120の入射側においては、励起ビーム120をスクリーン101に導く入射層411が配設されうる。例えば、フレネルレンズ層がこの入射層411として利用されて、走査励起ビーム120の入射方向を制御してよい。別の例としては、この入射層411に、レンズ部材のアレイおよび各サブピクセル内または蛍光ストライプの幅内に多数のレンズを有する整合ピンホールアレイを有するレンズアレイ層を実装してよい。また別の例としては、プリズム層または高屈折率誘電体層を入射層411の一部として利用して、励起光および蛍光層が発光する可視光を含む光をスクリーンが再利用できるよう戻してもよい。観察者に対するスクリーンの輝度を向上させるべく、第1の二色性層412(D1)を、蛍光層400の上流の励起ビーム120の経路に(例えば、蛍光層400の励起側に)配置して、励起ビーム120の波長の光を透過させて、蛍光層400が発光する可視光を反射してよい。第1の二色性層412は、蛍光の光学的損失を低減させてスクリーンの輝度を高めることができる。蛍光層400の観察者側においては、第2の二色性層421(D2)を配設して、蛍光層400が発光する可視光を透過させ、励起ビーム120の波長の光を反射させてよい。故に、第2の二色性層421は、蛍光層400を透過した励起光を蛍光層400に再利用のために戻し、これにより励起光の利用効率およびスクリーン輝度を向上させることができる。
蛍光層400の観察者側には、スクリーンのコントラストを向上させるべくコントラスト強調層422を配設してよい。コントラスト強調層422は、複数のスクリーン層に垂直な方向に沿って蛍光層400の蛍光ストライプと空間的に対応するよう位置合わせされる色選択吸収性ストライプ(color-selective absorbing stripe)を含むこともできる。これにより、色選択吸収性ストライプは、蛍光ストライプの対応する色の光を透過させて、他の蛍光ストライプの色の光を吸収する。または、コントラスト強調層422は、周辺光の反射に起因するスクリーンのグレアを低減すべく可視光を均一に低減する光学減光フィルタ層であってもよい。この減光フィルタ機能は、蛍光層400の観察者側の1以上の他の層(基板層424を含む)に実装することもできる。
さらに、スクリーンは、蛍光層400の観察者側にスクリーンゲイン層423を含み、スクリーンの輝度および視野角を光学的に高めてよい。ゲイン層423は、レンズ部材を有するレンズ層、回折部材の回折光学層、ホログラフィ部材を有するホログラフィ層、またはこれらおよび他の構造の組み合わせを含みうる。蛍光層400の観察者側における層423、422、および421の空間順序(spatial sequence)は、図4に示したものと異なってもよい。
さらに、励起遮蔽層425が蛍光層400の観察者側に配設されて、スクリーンから観察者側へと向かう励起光を遮ってよい。この層は、可視光を透過させて、励起光を吸収する材料により実装されてよい。例えば、ポリエステルベースのカラーフィルタをこの層として利用して、400‐415nmの放射であってよい励起光を遮ってよい。幾らかの実装例においては、この遮蔽フィルタは、410nm未満の透過率が0.01%未満、且つ430nmを超える透過率が50%を超えていてもよい。減光フィルタ機能をこの層に組み込むこともできる(例えば、430nm‐670nmの間の可視光を均一に減衰させるようなもの)。この遮蔽機能は基板層424に組み込むこともできる。
図4では、励起光(例えばUV)を遮り可視光を透過させる二色性層D2(421)および光学減光(ND)フィルタ422が、発光層の観察者側に形成されてよい。支持基板424は観察者側に配設されるので、支持基板424は発光層が発光する可視カラー光に対して透明性または半透明性を有する材料から形成されてよい。発光ストライプが発光する3色を含む可視光を均一に減衰させる半透明性を有する材料を支持基板424に利用することで、光学減光(ND)フィルタのような機能が達成される。加えて、支持基板424は、励起ビーム120の励起光に対して不透明性または反射性とすることで、励起光が観察者へ到達することを避け、未吸収の励起光を発光層で再利用すべく戻してよい。
図5は、レンズアレイ層510に連結された複数の平行な発光ストライプを有する多層スクリーンの一例を示す。支持基板424は、スクリーンの観察者側に配設されて様々なスクリーン層を支持し、プラスチックその他の材料から形成することができる。発光層は透明接着層540を介して基板424に結合され、図4のストライプ401、402、および403等の平行且つ独立した発光ストライプを含む。各ストライプは、励起光120を吸収して、励起波長とは異なる可視波長の可視光を発光する。本例においては、各発光ストライプは、励起光を吸収して可視光を発光する発光材料401、402、または403のストライプと、発光材料のストライプおよびピンホールアレイ層520の間に配設された透明フィラー(clear filler)等の透明材料501のストライプとを含む。平行なストライプデバイダは、各ストライプデバイダが2つの隣接する発光ストライプ間に配設されるよう、発光ストライプ間にインタリーブされる。各ストライプデバイダは光学的に反射性および不透明性を有していて、2つの隣接する発光ストライプ間を光学的に分離して、色純度および画像コントラストを向上させる。本例においては、各ストライプデバイダは、黒色の光学的に吸収性を有する材料等の光学的に不透明なコア531と、2つの隣接する発光ストライプをインタフェースする光学的に不透明なコア531の両側に形成される光学的に反射性を有する層532とを含む。
レンズアレイ層510が透明レンズアレイ支持層512上に形成されてレンズ511の二次元アレイを形成して、発光層の励起側に配設されて発光層へと励起光120を方向付ける。各レンズ511は、各発光ストライプの幅より小さい大きさを有し、各発光ストライプの幅内には多数のレンズが存在する(例えば、1ストライプについて4つのレンズ511が存在する)。
図5のスクリーンは、レンズアレイ層との組み合わせでピンホールアレイ層520を含む。ピンホールアレイ層520は、レンズアレイ層510と発光層との間に形成されて、レンズアレイ層510に重畳し、レンズ511とそれぞれ配列されるピンホール521の2次元アレイとパターニングされる反射性および半透明性を有する層522を含み、各レンズ511により、そのレンズ511の各ピンホール521に合焦する励起光120が、不透明な反射層522を透過して、発光層に到達することができ、この一方、ピンホール521に合焦されなかった他の方向の励起光は不透明な反射層522で遮られ反射する。各ストライプは、多数のレンズ511(例えば、約数十ミクロンの範囲(例えば20ミクロン)の直径を有するマイクロレンズ)を覆い、各ストライプまたはサブピクセルが受光する励起光120は、レンズ511により多数の収束ミニ励起ビームに変換される。各レンズ511の合焦は、殆どの光強度を、各ピンホール521を介して方向付け、励起光120の発光層へのスループットを増加させる。レンズアレイ層510は、100パーセントまたは略100パーセントのフィルファクタを有するよう設計されて、反射性および半透明性を有する層522を介して光を導く効率を上げることができる。この設計により、レンズアレイ層510が受光する励起光120が、確実にピンホールアレイ層520を透過して発光層に到達する。この点において、このレンズアレイ層510とピンホールアレイ層520との組み合わせにより、図4の入射層411の機能が提供される。
加えて、ピンホールアレイ層520は、反射性および半透明性を有する層522を発光層からピンホールアレイ層520へと方向付けられる光の遮断層として利用する、というのも、発光層とピンホールアレイ層520との間にレンズがないことで、ピンホールアレイ層520に向かう光などが、全方向に拡散するからである。特に、発光層が発光する可視光は全方向へ向かう。発光材料401、402、または403とピンホールアレイ層520との間には透明フィラーのストライプ501が配設されて、発光材料が発光する可視光の伝播空間を提供し、ピンホールアレイ層520へ向かう発光可視光がいずれかのピンホール511に到達する前に十分に分岐するようにする。例えば、透明フィラーのストライプ501は、数十ミクロンの厚みを有して発光可視光を十分分岐させることができる。透明のストライプ501の最小厚みは、各レンズ511の焦点距離の半分に設定されてよい。この結果、光の僅かな部分だけがピンホールアレイ層520のピンホール521を透過させることができ、可視光の大半および未吸収の励起光が、反射性および半透明性を有する層522で反射されて、発光層へ戻る。反射光は、「再利用」されることで、スクリーンの輝度および光学的効率を向上させる。この点において、レンズアレイ層510およびピンホールアレイ層520のこの組み合わせは、図4の二色性層D1(411)のような働きもする。
レンズアレイ層510およびピンホールアレイ層520の組み合わせは、図5に示すレンズアレイアセンブリ500である。粘着層530が発光層とピンホールアレイ層520との間に配設されてレンズアレイアセンブリ500を発光層に結合する。粘着層530は例えば透明粘着層であってよい。
図6A、6B、および6Cは、レンズアレイアセンブリ500のさらなる詳細を示す。図6Aは、励起側から観察者側への方向における上面図を示す。この特定の例においては、各レンズ511は六角形をしており、6つの隣接するレンズ511と間隙なく隣接しあって配置されて、100パーセントのフィルファクタを有する。他のレンズ形状も採用可能である。図6Bは、レンズアレイアセンブリ500の斜視図を示す。図6Cは、図5の断面図と同じ方向のレンズ511の横断面図を示す。
図7A、7B、および7Cは、レンズアレイアセンブリ500にピンホール521を形成して、各ピンホール521を各レンズ511に自動位置合わせさせるレーザアブレーション製造処理の一例を示す。レンズアレイ層510は、平坦な面である一面を有する。黒色吸収層710が平坦な面に形成されえて、励起光を吸収する。この吸収により、レーザアブレーションが促進されうる。層710の厚みは、例えば約100nmであってよい。黒色吸収層710の上部には、反射性および不透明性を有する金属層522が所望の厚みで光学的に不透明となるよう形成される。層522としては、厚みが400nmから700nmの蒸着アルミニウム層を利用しうる。図7Bはレーザアブレーション処理を示す。走査アブレーションレーザビーム720がレーザ源から方向付けられ、図1、3A、3B、または3Cに示すディスプレイシステムの励起ビーム120と同様の方法で走査されて、アブレーションレーザビーム720が走査経路を、スクリーンの各全ての位置にある励起ビーム120の方向へと辿る。この走査モードでは、金属層522上のアブレーションビーム720の焦点722の位置は、走査アブレーションレーザビーム720の垂直入射に対する様々な入射方向に応じて、レンズ511毎に、各レンズ511の光軸上の焦点に関して変化する。故に、レンズ511のピンホール521の位置は、それぞれレンズ511に入る際の走査アブレーションビーム720の方向により決まる。図7Bは、スクリーンの中央の水平走査方向の5つのレンズ各々の光軸に関する走査アブレーションビーム720とビーム焦点位置との間の関係を示す。ビーム720の走査によるビーム焦点位置のシフトは、水平および垂直方向両方に起こる。図7Cはこの結果生じるピンホール521を示す。
故に、ピンホールアレイ層520のピンホール521のアレイは、レンズアレイ層510のレンズ511のアレイと、位置的に正確に整合していない。レンズアレイ層510のレンズ511は、アレイ間のレンズ同士の間隔が均一である周期的なアレイである。ピンホールアレイ層520のピンホール521は、周期的ではなく、両方向についてホール間の間隔が変化する。各ピンホール521は、唯一のレンズ511に対応しており、走査ビームが垂直入射方向にある際のスクリーンの位置を除いては、レンズ511の光軸方向の対応するレンズ521の中央に位置合わせされてはいない。ピンホールアレイ層520の設計により、スクリーンが実際のディスプレイシステムで利用されるときの各ピンホールと走査励起ビーム120との間の自動位置合わせが可能となる。この結果、レンズアレイアセンブリ500の励起光の光学的損失が低減される。
各レンズ511の焦点位置722における金属は、ピンホール521として貫通穴を形成するべくアブレーションされ、除去される。このアブレーション処理は、焦点位置722での黒色吸収層710によるレーザ光の吸収によって促進され、さらに、黒色吸収層710に整合するホールを生成する。ピンホール521は、表面522のビームスポット径より大きく形成されることで製造公差に許容度を与え、アブレーションレーザビーム720の波長(例えば520nm)と励起レーザビーム120の波長(例えば420nm未満)との間の差異によるビーム焦点のばらつきに許容度を与えることができる。
顕著に、本願の上述およびその他のスクリーン設計は、主に、異なるスクリーン層間で精密な光学配置をなくする。レンズアレイ層510およびピンホールアレイ層520は、上述の自己整列式のレーザアブレーション処理により単一のアセンブリ500として製造される。このアセンブリ500は、互いに重畳するよう発光層に結合される。各レンズ511およびそれに対応するピンホール521は、いずれのストライプまたは発光層のいずれの他の特徴とも正確に位置合わせされる必要がない。故に、これらおよび他の異なるスクリーン層を比較的容易に組み立てて最終スクリーンを形成することができる。
図8は、レンズアレイアセンブリ500に連結された複数の平行な発光ストライプを有する多層スクリーンの別の例を示す。本例では、発光ストライプとインタリーブされるストライプデバイダ801が、金属、反射ビーズとバインダ材料との混合物、および白色塗料材料(例えば、TiO2充てん樹脂または硫酸バリウム充てん樹脂)等の、光学的に不透明性および反射性を有する材料から形成される。ビーズは、ビーズバインダ材料の屈折率より大きな屈折率を有する誘電体材料から形成されることで光学的反射を行うことができ、数ミクロンから数十ミクロンまたは数百ミクロンといった様々なサイズに形成することができる。各ビーズは金属被膜で部分的にまたは全体的に覆われてよい。白色塗料材料の反射率は400nmから650nmの間で90パーセントを超えてよい。加えて、黒色吸収ストライプ層810を観察者側に対向する各ストライプデバイダのファセット上に形成して(つまり、レンズアレイ層510から遠い側に形成して)、デバイダにおける反射またはグレアを低減することができる。
図9および10は、それぞれ図5および8のスクリーンのレンズアレイアセンブリを置き換える、フレネルレンズ層910および二色性層920の組み合わせを利用する2つのスクリーンを示す。フレネルレンズ層910は、スクリーンの励起側に入射層として設けられ、励起ビーム120を受け取るスクリーンの全領域を被膜する。フレネルレンズ層910は、ガラスまたはプラスチック材料から形成されうる誘電体基板に設けることができる。例えばアクリルプラスチック材料を利用してフレネルレンズ層910を形成してよい。フレネルレンズ層910とは異なる屈折率(index)を有する誘電体層を、フレネルレンズ層910とスクリーンの残りの部分との間に形成することで、フレネルレンズ層910とスクリーンの次の層(たとえば二色性層920)との間で屈折率を異ならせることができる。この層は、空隙であっても、励起光に対して透明性を有する誘電体材料であってもよい。フレネルレンズ層910は、フレネルリングを有し、光学的回折、屈折、または両方により入射走査励起ビーム120を、略スクリーンに対して法線方向の入射励起ビームとして再度方向付けることができる。フレネルレンズ層910は、入射走査励起ビーム120に対してテレセントリックな構成であってよい。
二色性層910は様々な構成での実装が可能である。大型ディスプレイでは、二色性層は、比較的安価且つ比較的製造が容易な材料で形成されてよい。層間の屈折率および物理的厚みの値を制御することで多数の誘電体層を設計して様々な波長選択光学フィルタを構築することができる。例えば、高屈折率の誘電体層と低屈折率の誘電体層とを交互に並べた多数の層を設計して、所望の波長選択反射・透過スペクトルを得ることができる。屈折率の異なる多数のフィルム同士をラミネートあるいは溶着することで、D1またはD2の二色性層として合成シートを構築してよい。幾らかの実装例においては、屈折率の異なる2材料で形成される多数の層を利用して該2つの材料を交互に並べることで合成フィルム積層を形成してよい。他の実装例においては、屈折率の異なる3以上の材料同士を積層して、二色性層920用の合成フィルム積層を形成してよい。このような二色性層920用の合成シートは、本質的に励起光(例えばUV光)を透過させ、カラーの可視光を反射する光学干渉反射器(optical interference reflector)である。合成シートの材料は有機材料、無機材料、または剛性を有しても可撓性を有してもよい有機材料と無機材料との組み合わせであってよい。
可撓性を有する多層合成シートを、重合体材料、非重合体材料、または重合体と非重合体を合わせた材料で形成してよい。重合体と非重合体をあわせた材料を含むフィルムの例は、「Method for forming a multicolor interference coating」なる名称の米国特許第6,010,751号明細書、および「Retroreflective articles having polymer multiplayer reflective coatings」なる名称の米国特許第6,172,810号明細書に開示があり、これら全体を本願の明細書の部分として参照として組み込む。全てが重合体である構成の合成シートによると、製造およびコスト面の利点が得られる。高い光学透過性および高い屈折率示差(index differential)を有する高温重合体を利用することで、環境的に安定した、薄く、可撓性を有する干渉フィルタを得ることができる。「Color shifting film」なる名称の米国特許第6,531,230号明細書に開示された共押し出し(coextruded)多層干渉フィルタを利用することで、正確な波長選択を行うことができ、比較的低コストの大面積のフィルタフィルムとして形成することができる。米国特許第6,531,230号明細書の全開示を本願の明細書の一部として参照として組み込む。高い屈折率示差を有する重合体を一対利用することで、薄く、高反射性を有し、基板の支持なしに自立でき、大型スクリーン形成時の加工も容易なミラーを構築することができる。このような合成シートは、機能的には、例えばPET層およびco−PMMA層が交互に並んだ積層である1枚の多層光学フィルム(MOF)であってよく、スクリーン用途に適切な法線入射反射帯を形成してよい。一例としては、3M Corporationの多層ポリエステルベースのフィルムから形成される高度な鏡面反射鏡(ESR)を構成して、本願について望ましい二色性の反射・透過帯を生成してよい。多層フィルムの様々な特徴の例が「Method for making multiplayer optical films having thin optical layers」なる名称の米国特許第5,976,424号明細書、「Biphenyl derivatives for photostabilization in pulsed optical darkening apparatus and method」なる名称の米国特許第5,080,467号明細書、および「Backlight system with multiplayer optical film reflector」なる名称の米国特許第6,905,220号明細書に記載されており、これら全てを本願の明細書の一部として参照として組み込む。
上述の例では、各発光ストライプが、励起光を吸収して可視光を発光する発光材料(例えば401、402、または403)のストライプと、透明材料501のストライプとを含む。この構造は、スクリーン層上に直接発光リン光体ストライプを印刷する方法を含む様々な処理により製造が可能である。以下に、図11A、11B、および11Cに示す、まずモールドに形成されている発光リン光体ストライプをモールドから出してスクリーン層に転写する、成形および転写処理の一例を記載する。
図11Aは、発光層を形成するのに適したモールドを示す。モールドは、モールドベース1101と、モールドベース1101の上の複数の溝デバイダ1130の間に形成された複数の平行な溝1120とを含む。モールドの寸法は、ダイアモンドターニング(diamond turning)等の公知の精密機械加工法により整合されてよい。発光材料の塗布前にモールドの溝1120の内面を処理することで、各発光ストライプをモールドから外しやすくすることができる。例えば、各溝1120の内面を、ニッケル層で電気めっきをかける、または、表面潤滑剤(例えば、テフロン(登録商標))の層で被膜することができる。
モールドが準備されると、リン光体材料等の発光材料を、モールドの複数の平行な溝1120に塗布して(図11Bおよび11C)、2つの隣り合う溝1120に、2つの異なる波長の光を発光する2つの異なる発光材料を塗布する。スクリーン印刷処理等の印刷処理を利用して、リン光体インクをモールドに印刷することができる。印刷処理においては、各溝の各発光材料の量を制御して各溝1120を部分的に充てんするようにする。これは、スクイジー速度、迎え角、インク粘度、ステンシルマスク開口幅等のスクリーン印刷パラメータを制御することにより達成されうる。または、インクに、蒸発することでリン光体を各モールド溝の底面に落ち着かせる揮発剤を混合することでリン光体の量を制御することもできる。インクは、揮発剤の蒸発後に上面が凹型状となる場合がある(図11C)。
リン光体材料が塗布された後で、液体材料を、各発光材料の上部の各溝1120に塗布して、溝1120を充てんする。例えば、Norland 61 UV硬化可能コンパウンド、または、Addison Clear Wave AC A109−TR UVモールディングコンパウンド等の、光学的に透明な液体材料を供給してモールドを充てんすることができる。スクイジーを利用して、モールドの上部から余分な材料をかき落とす。
その後に、液体材料を、各溝1120の各発光材料に接着させる透明固体材料501に変える。例えば、透明材料501は、UV光または熱に曝されてモールドからの取り出しを促すことで、完全にまたは部分的に硬化させることができる。別のスクリーン層に容易に結合できるよう、固体材料に変わった後も透明材料501の上面は、粘着性を維持させてよい。図11Dは、特定の寸法を有するモールドの一例を示す。
上述の通り成形された発光層は、次に、モールドから出されて、別のスクリーン層に接着される。この処理では、スクリーン層は、モールド上に配置されて、透明固体材料と接触および結合される。スクリーン層をリフトして、透明固体材料501および各発光材料から形成されるストライプをリフトしてモールドから取り出し、複数の平行な発光ストライプを有する発光層を形成して、別のスクリーン層に接着される。
図12Aおよび12Bは、レンズアレイアセンブリ500を用いた発光層のリフト処理を示す。先ず、予め組み立てられたレンズアレイアセンブリ500を、透明粘着層530が図11Dに示すモールドの溝1120に露呈した透明フィラー501に対向するよう配向する。予め組み立てられたレンズアレイアセンブリ500をモールドに押圧して、透明粘着層530と透明フィラー501とを互いに結合させる(図12A)。次に、図12Bに示すように、レンズアレイアセンブリ500をリフトして、モールドのモールドベース1101から取り外し、透明フィラー501のストライプと透明フィラー501に接着されたリン光体ストライプ(401、402、403等)とを溝1120から取り外す。このリフト処理は、透明粘着層530と透明フィラー501との間の接着、および、モールドの溝1120の内面に前処理を施して各発光ストライプのモールドからの分離を促すことにより、促される。
図13Aから13Dは、図5のスクリーンの残りの製造処理を示す。モールドから複数の平行な発光ストライプから形成される発光層をリフトした後で、金属反射層で発光ストライプを被膜して、発光材料および透明固体材料の露出面と、2つの隣接する発光ストライプ間のスクリーン層の上の表面とを被膜する(図13A)。この層の側面にある部分は、図5の反射層532であり、この層の発光材料(例えばリン光体)の上面にある部分が、後に取り除かれる層1310として示されている。フィラー材料531で2つの隣接する発光ストライプ間を充てんするが、この材料531は、黒色顔料のような光を吸収する材料であってよい。次に、フィラー材料531の一部、発光材料(例えばリン光体)の上の金属層1310、および、発光材料の一部を取り除いて、発光材料が各発光ストライプにおいて露出する平坦な面を形成する。図13Cは、平坦な面を形成する露出した上部リン光体面1330および上部フィラー面を示す。同時に、別のスクリーン層を平坦な面の上に配設する。図13Dは、透明接着層540を用いて支持基板424を平坦な面に接着できることを示している。
図14A、14B、および14Cは、リフト層1401を用いて、成形された発光層をモールドから出し、レンズアレイアセンブリ500等の別のスクリーン層と結合させる処理を示す。このリフト層1401は、スクリーンの一部となり、ピンホールアレイ層520とリン光体との間の所望の伝播長(propagation length)を形成するよう設計されうる。このリフト層1401は、厚みが6ミクロンから25ミクロンのMylarフィルム等の薄いプラスチックまたはポリエステルフィルムを含む様々な透明材料から形成されてよい。先ず、リフト層1401をモールドに押圧して、リフト層1401と透明フィラー501とを互いに結合させる(図14A)。薄い接着層を他のリフト層1401または透明フィラー501の露出面に塗布して、リフト層1401と透明フィラー501との間の結合を助けてよい。次に、図14Bに示すように、リフト層1401をリフトして、モールドのモールドベース1101から取り外し、透明フィラー501に結合された透明フィラー501およびリン光体ストライプ(401、402、403等)のストライプを溝1120から取り外す。図14Cは、図5のレンズアレイアセンブリ500をリフト層1401に、スクリーンの一部として結合させる組み立て処理をさらに示す。予め組み立てられたレンズアレイアセンブリ500を、透明粘着層530がリフト層1401に対向するように配向する。予め組み立てられたレンズアレイアセンブリ500とリフト層1401とを互いに対して押圧して、透明な粘着層530とリフト層1401とを互いに結合させる。その後、さらなるスクリーン層をリン光体ストライプ(401、402、403等)の上に配置して、スクリーンを完成させる。
図13Cを参照すると、各ストライプのリン光体上面1330は、スクリーンの観察者側に対向する。空隙または低屈折率の誘電体層をリン光体面1330と支持基板層424との間に形成して、支持基板424を介して観察者側に発光された可視光の透過を高めてよい。一実装例では、平坦な面1330に結合されるスクリーン層と発光材料との間に空隙を形成するよう、発光材料の露出面1330の表面テクスチャを、除去処理または別個の表面処理中に形成することができる。リフト層1401は、リン光体の屈折率より低い屈折率の材料であってよい。
類似した、または、僅かに異なる多層構造を有するスクリーンについては、異なる成形処理を利用することもできる。図15Aから15Jは、この異なる成形処理を示す。
図15Aは、スクリーンの発光層を形成するのに適したモールドを示す。モールドは、モールドベース1501と、モールドベース1501の上の複数のワイドモールドデバイダ1520の間に形成された複数の狭い平行なモールド溝1510とを含む。溝1510を利用して、スクリーンの隣接する発光ストライプ間にストライプデバイダを形成して、モールドデバイダ1520が占める空間を利用してスクリーンに発光ストライプを形成する。モールドの寸法は、ダイアモンドターニング(diamond turning)等の公知の精密機械加工法により整合されてよい。モールドのモールド溝1510の内面およびモールドデバイダ1520の上面を処理することで、成形された構造をモールドから外しやすくすることができる。例えば、各溝1510の内面およびモールドデバイダ1520の上面を、ニッケル層で電気めっきをかける、または、表面潤滑剤(例えば、テフロン(登録商標))の層で被膜することができる。光学的に不透明な材料(例えば黒色インク)等のストライプデバイダ材料をモールドの複数の平行な溝1510に塗布して、溝1510を充てんする。スクリーン印刷処理等の印刷処理を利用して、ストライプデバイダ材料をモールドに印刷することができる。ストライプデバイダ材料は、光を吸収するUV硬化可能黒色材料であってよい。余分なストライプデバイダ材料を取り除いて、モールドデバイダ1520の上面を有する平坦な面を形成する。
図15Bは、充てんされたストライプデバイダ材料1530の露出面の上部およびモールドデバイダ1520の上面へのUV硬化可能透明層1540の形成を示す。先ず、透明層1540のUV硬化可能材料を、充てんされたストライプデバイダ材料1530の露出面上部およびモールドデバイダ1520の上面に塗布して直接接触させる。次に、透明層1540のUV硬化可能材料をUV光に曝し、該材料を硬化させて、UV硬化可能材料をストライプデバイダ材料1530に結合させる。このUV硬化可能透明層1540はスクリーンによって適応されてもされなくてもよい。
次に、UV硬化可能透明層1540のない場合、キャリア層1560および接着層1550を、充てんされたストライプデバイダ材料1530の露出面の上部の上面およびモールドデバイダ1520の上面に接着する。UV硬化可能透明層1540がある場合には、キャリア層1560および接着層1550は、UV硬化可能透明層1540の上面に接着される。接着層1550は、底部接着層1551がUV硬化可能透明層1540に接着され、上部プラスチックまたはポリエステルのバッキング層1552がキャリア層1560に接着されたUVダイシング接着層であってよい。接着層1550の一例は、ウェハダイシングに利用されるUVダイシング接着テープであり、UV光に曝されると接着面が粘着性を失う。この処理により、キャリア層1560が、接着層1550によりUV硬化可能透明層1540に接着される(図15C)。キャリア層1560はその後、モールドからリフトされて外されて、ストライプデバイダ1530をモールド溝1510から取り外し、隣接するストライプデバイダ1530間にリン光体ストライプ溝1533の平行アレイを形成する(図15D)。
次に、金属層(例えばアルミニウム)等の反射被膜1570を、ストライプデバイダ1530の表面およびリン光体ストライプ溝1533の底面に堆積させる(図15E)。この反射層の目的の一部は、光を再利用してスクリーンの光学的効率を上げることである。次に、リン光体材料等の発光材料を複数の平行な溝1533に塗布して、2つの隣接する溝1533に、2つの異なる波長の光を発光する2つの異なる発光材料を塗布する。スクリーン印刷処理等の印刷処理を利用して、リン光体インクを溝1533に印刷することができる。印刷処理においては、各溝1533の各発光材料の量を制御して、ストライプデバイダ1530の上面から選択された距離h分下の、各溝1533の部分を充てんするようにする(図15F)。これにより、上面1580を有するリン光体(401、402、403等)が形成される。充てんされたリン光体材料にUV光を照射して、材料を硬化させる。UV光は反射金属層1570を貫通せず、UVが除去された接着層1550の接着はそのまま残る。リン光体材料の上の空間は、空のままでも、各溝1533内の各発光材料に接着される透明固体材料に変化するNorland 61 UV硬化可能コンパウンド、または、Addison Clear Wave AC A109−TR UVモールディングコンパウンド等の、光学的に透明な液体材料で充てんしてもよい。
この設計では、ストライプデバイダ1530の上面は、最終スクリーンの観察者側に対向するよう配向される。故に、反射被膜1570の、上面ストライプデバイダ1530にある部分を取り除くことで、スクリーンの観察者側への反射またはグレアを低減すべきである。これは、ストライプデバイダ1530の不透明フィラー材料が不透明の上面1531として露出するまで反射被膜1570の上部層を取り除くことで達成されうる(図15G)。この除去処理は、研磨およびサンドブラストを含むがそれらに限られない様々な技術により行うことができる。
次に、支持基板424を、上面1531および透明フィラー501の上面に、接着層により接着する(図15H)。同時に、UV光をキャリア層1560および接着層1550を介して方向付けて、UVダイシング接着層1550の接着を失わせて、これにより図15Iに示すスクリーン構造をリリースしてよい。UV透明層1540を取り除いてよい(図15J)。
図16および17は、さらに、図15Jのスクリーン構造に基づくスクリーンの2つの例を示す。図16では、図5のレンズアレイアセンブリ500を図15Jのスクリーン構造の励起側に接着する。図17では、図9の二色性層920を、図15Jのスクリーン構造の励起側に接着する。
図18は、フレネルレンズ層を有するスクリーン構造の別の例を示す。この例では、図4のコントラスト強調層422を、スクリーン層に垂直な方向の蛍光層の複数の蛍光ストライプと空間的に対応して位置合わせされる赤色、緑色、および青色のフィルタ1811、1812、および1813を有するカラーフィルタ層1810として実装される。これにより、色選択吸収性ストライプ1811、1812、および1813は、蛍光ストライプの対応する色の光を透過させて、他の蛍光ストライプの色の光を吸収する。接着層。2つの隣接するフィルタ1811、1812、および1813間には不透明領域を形成して、フィルタ間を光学的に分離して、色の混合を低減させることができる。このフィルタ層1810を他のスクリーン設計に利用することで、表示画像のコントラストを強調することができる。
図18では、接着層1820が、カラーフィルタ層1810とリン光体層との間に形成される。この接着層1820はスタンドオフを生成し、リン光体ストライプとカラーフィルタとの間に空隙を生成する。この空隙により望ましくない画像のハローが低減され、UVを再利用の目的からリン光体層に戻して、光学的効率を向上させることができる。空隙は様々な厚みの値(例えば10から20ミクロン)に設定することができる。製造においては、薄い接着層でモールドを覆い、多層光学フィルムD1を接着層1820に積層する。その後、リン光体をモールドから剥離する。この例は、異なるリン光体ストライプ間の空隙を示しているが、TiO2または銀の剥片等の不透明性および反射性を有する材料を充てんしてもよく、または、組み立て前に、めっきをかけても、平坦化処理を行ってもよい。
本明細書は多数の詳細を含むが、これら詳細は本発明の範囲の限定として、または請求されうるものに対する限定として捉えられるべきではなく、むしろ本発明の特定の実施形態に特有の特徴の記載として捉えられるべきである。本明細書で記載した、別の実施形態において記載したある特徴は、単一の実施形態で組み合わせられて実施されてもよい。また逆に、単一の実施形態において記載された様々な特徴を多数の実施形態で別個に、または任意の適切なサブコンビネーションとして実施してもよい。さらには、上述の記載において特徴はあるコンビネーションにおいて機能しているかもしれないし、当初はそのように請求されるかもしれないが、請求されたコンビネーションから1以上の特徴を幾らかの場合に除去して、請求されたコンビネーションをコンビネーションのなかのサブコンビネーション、又はサブコンビネーションの変形例としてもよい。
幾らかの実装例のみを開示した。しかし、本特許出願の記載および例示に基づいて変形例、改善例、および他の実装例を行うこともできることを理解されたい。