JP2006312663A - 炭化水素油の脱硫方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 炭化水素油とニッケルと亜鉛を含む多孔質脱硫剤とを、水素の存在下で、反応温度100〜400℃、反応圧力0.2〜5.0MPa、及び液空間速度(LHSV)が2.0h−1を超え50.0h−1以下の条件下で接触する炭化水素油の脱硫方法。
【選択図】 なし
Description
すなわち、本発明は、ニッケルと亜鉛を含む多孔質脱硫剤と炭化水素油を、水素の存在下で、温度100〜400℃、圧力0.2〜5.0MPa、液空間速度(LHSV)が2.0h−1を超え50.0h−1以下の条件下で接触させる炭化水素油の脱硫方法である。
さらに、本発明の炭化水素油の脱硫方法は、炭化水素油と多孔質脱硫剤とが接触するリアクター2基以上に直列に通油し、炭化水素油と多孔質脱硫剤とが最初に接触するリアクターの出口における生成油の硫黄分が接触前の炭化水素油の硫黄分の5%以上になった場合に、あるいは、最初に接触するリアクターの出口における生成油の硫化水素濃度が10質量ppm以上になった場合に、あるいは、最初に接触するリアクターの出口における生成油の硫黄分が0.5質量ppm以上になった場合に炭化水素油と多孔質脱硫剤とが最初に接触していたリアクターをオンオイル系から切り離して、炭化水素油と多孔質脱硫剤とが最初に接触するリアクターを2番目以降に接触していたリアクターに切り替える脱硫方法である。なお、硫黄分及び硫化水素濃度は、特別に断らない限り、硫黄(S)換算された値である。
本発明による脱硫方法の対象となる原料の炭化水素油は硫黄分を含む炭化水素油であれば特に限定されないが、硫黄分を2質量ppm以上含むものが好ましく、より好ましくは2〜1000質量ppm、特に好ましくは2〜100質量ppm、さらに好ましくは2〜40質量ppm含むものである。硫黄分が1000質量ppmを超えると脱硫剤の寿命が短くなり好ましくない。
また、原料の炭化水素油は、製油所などで生産されるものには限らず、硫黄分を2〜1000質量ppm含有し、さらに脱硫したものであれば、石油化学から生産される石油(炭化水素)ガスや前記と同様な沸点範囲を有する留分でも構わない。好ましく使用できる炭化水素油として、重質油を熱分解、又は接触分解して得られた炭化水素をさらに分留したものが挙げられる。
本発明の多孔質脱硫剤は、ニッケルと亜鉛を含むものである。本発明におけるニッケルと亜鉛を含む多孔質脱硫剤の製造方法は特に限定されないが、アルミナのような多孔質担体に亜鉛やニッケルなどの金属成分を含浸、担持して焼成する製造方法や、あるいは共沈法によって亜鉛やニッケルなどの金属成分を沈殿させてろ過洗浄し、成形、焼成等の工程を経る製造方法が、好ましい方法として挙げられる。特に好ましいのは、共沈法であり、脱硫に有効なニッケルと亜鉛を脱硫剤中に多く含ませることができ脱硫剤の長寿命化を達成できる。ニッケルと亜鉛以外にも、鉄、銅等の他の元素を含んで構わないがニッケルと亜鉛は必須成分である。例えば、銅亜鉛系の脱硫剤を用いた場合、ガソリン中に多く含まれるチオフェン類や灯軽油中に多く含まれるベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェン類を長期間にわたって脱硫することが困難である。亜鉛含有量に対するニッケル含有量の比(質量)は0.5以下、好ましくは0.35以下、特には0.02〜0.5である。亜鉛含有量に対するニッケル含有量の比(質量)が0.5を超えると多孔質脱硫剤の寿命が著しく短くなり好ましくない。
さらに、本発明に用いる脱硫剤は、ナトリウム含有量が脱硫剤総質量に対して1.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、さらには0.2質量%以下である。ナトリウムが脱硫剤総質量に対して1.0質量%を超えて含まれると脱硫性能が低下するため好ましくない。
好ましい脱硫剤は、ニッケル、亜鉛などの金属成分を0.5〜85質量%、特には1〜80質量%含有する。また、成形、焼成された脱硫剤にさらに金属成分を含浸、担持して、焼成してもよい。脱硫剤は、水素雰囲気下で処理して用いるのが好ましい。脱硫剤の比表面積は、好ましくは30m2/g以上、特には50〜600m2/gである。
本発明のニッケルと亜鉛を含む多孔質脱硫剤による脱硫処理においては、脱硫剤中に硫黄が取り込まれニッケルおよび亜鉛が硫化物に変化する。これら硫化物は水素化脱硫触媒として作用し硫化水素が発生する場合もあるが、ニッケルおよび亜鉛が完全に硫化物でない場合はニッケルまたは亜鉛と結合して硫黄として取り込まれるので、生成油中に硫化水素が含まれることはない。ただし、ニッケルおよび亜鉛が完全に硫化物になると硫黄の取り込み能力がなくなるので、本発明のニッケルと亜鉛を含む多孔質脱硫剤は触媒としてのみ作用し、生成油中に硫化水素が含まれてしまう。これを防ぐため以下に示すようなシステムで脱硫を行うことが好ましい。
本発明の炭化水素油を多孔質脱硫剤と接触させる条件としては、反応温度が100〜400℃であり、好ましくは200〜350℃、特に好ましくは250〜350℃である。反応温度が100℃未満であると、脱硫速度が低下し、効率的に脱硫ができず好ましくない。また、反応温度が400℃を超えると、脱硫剤がシンタリングし脱硫容量が低下し好ましくない。
反応圧力はゲージ圧で0.2〜5.0MPa、好ましくは0.5〜3.0MPa、特に好ましくは0.5〜2.0MPaである。反応圧力が0.2MPa未満だと脱硫速度が低下し、効率的に脱硫ができず好ましくない。反応圧力が5.0MPaを超えると、炭化水素油中に含まれるオレフィン分や芳香族分の水素化等の副反応が進行し好ましくない。
水素/油比は特に限定しないが、好ましくは1〜1000NL/L、より好ましくは10〜500NL/Lであり、特に好ましくは10〜300NL/Lである。
水素としては、メタン等の不純物を含んでいてもよいが、水素コンプレッサーが大きくなりすぎないよう、水素純度は50容量%以上が好ましく、さらには80容量%以上、特には95%以上が好ましい。水素中に硫化水素などの硫黄化合物が含まれると脱硫剤の寿命が低下するので、水素中の硫黄分は、1000容量ppm以下が好ましく、さらには100容量ppm以下、特には10容量ppm以下が好ましい。
本発明に使用するニッケルと亜鉛を含む多孔質脱硫剤は、水素処理によって活性回復させることができる。水素処理によって、なぜ活性が回復するのか、そのメカニズムは必ずしも明確ではないが、次のようにして活性が回復されるものと推察される。炭化水素油中の硫黄化合物の多くはニッケル上で脱硫され、すなわち、硫黄原子はまずニッケルに取り込まれる。ニッケルに取り込まれた硫黄原子は水素の存在下で亜鉛に移動する。ニッケルから亜鉛への硫黄の移動速度が十分でない状況(反応温度が低い、水素分圧が低い、水素/油比が低い)では、ニッケルと亜鉛に対する硫黄取り込み量が化学量論量に達する前に、大きく脱硫性能が低下してしまう。このような場合、水素処理をすることによって活性を回復させることができる。水素処理において、ニッケルから亜鉛への硫黄の移動が促進されて活性が回復されるものと推察される。活性回復中は硫化水素が発生しないことからも、ニッケルから亜鉛に硫黄の移動が起きるだけと考えられる。
ただし、ニッケルと亜鉛に硫黄が化学量論量まで取り込まれ、完全に硫化物となってしまった脱硫剤は、水素処理を行っても活性はほとんど回復しない。このような場合には、過熱されないように酸素濃度をコントロールして、硫黄化合物を酸化(燃焼)してSO2ガスとしてニッケルや亜鉛から切り離して活性を取り戻すことができる。脱硫剤として使用する際には、新品の脱硫剤を用いる場合と同様に、通油前に水素による還元処理を行う。
リアクターXとリアクターYが直列となるよう(リアクターXが前段、リアクターYが後段)に流路を設定し、反応温度300℃、反応圧力1.0MPa、水素/油比=450NL/L、リアクターXのLHSV=10.0h−1、リアクターYのLHSV=10.0h−1の条件下、炭化水素油をリアクターXの入口から通油を開始した。この時間を0時間とする。51時間後のリアクターX出口生成油の硫黄分は0.12質量ppmであり、リアクターY出口生成油硫黄分は0.10質量ppm以下であった。78時間後のリアクターX出口における生成油硫黄分は91質量ppm、生成油中の硫化水素濃度は硫黄(S)として6.6質量ppmであったが、リアクターY出口における生成油硫黄分は0.10質量ppm以下、生成油中の硫化水素濃度は0.10質量ppm以下であった。79時間後に、炭化水素油の通油をリアクターYのみにした。リアクターYのみに炭化水素油を通油している間、リアクターXの使用済み脱硫剤を抜き出し、脱硫剤Aを充填し、水素気流中350℃で16時間還元処理を行った。105時間後のリアクターY出口生成油の硫黄分は0.20質量ppmであった。110時間後にリアクターYとリアクターXが直列となるよう(リアクターYが前段、リアクターXが後段)に流路を変更した。151時間後のリアクターY出口生成油の硫黄分は85質量ppm、生成油中の硫化水素濃度は4.3質量ppmであったが、リアクターY出口における生成油硫黄分は0.10質量ppm以下、生成油中の硫化水素濃度は0.10質量ppm以下であった。
なお、硫黄分は、ASTM D 5453(紫外蛍光法)に準拠して測定した。生成油中の硫化水素濃度は、化学発光によって硫黄化合物を選択的に検出、定量するANTEK製硫黄化学発光検出器を備えた島津製作所製ガスクロマトグラフ装置を用いて、ガスクロマトグラフ法で測定した。オレフィン分は、ヒューレットパッカード社製PIONA装置を用いて、ガスクロマトグラフ法で測定した。
反応温度300℃、反応圧力1.0MPa、水素/油比=450NL/L、LHSV=10.0h−1の条件下、実施例1で調製した炭化水素油をリアクターに通油した。40時間後の生成油の硫黄分は0.44質量ppmであり、56時間後の生成油の硫黄分は6.1質量ppmであった。
実施例1で調製した炭化水素油を用い、実施例1と同様の方法で炭化水素油を通油した。8時間後の生成油の硫黄分は40.5質量ppmであった。
実施例1で調製した炭化水素油を用い、実施例1と同様の方法で炭化水素油を通油した。12時間後の生成油の硫黄分は169質量ppmであった。
リアクターから接触分解重質ナフサを除去後、300℃、1MPaの条件下16時間水素気流中で活性回復処理を行った。
再び、リアクターを前述の条件(300℃、1MPa)で活性回復処理を行った。その後、再度、接触分解重質ナフサをリアクターに、反応温度300℃、反応圧力0.5MPa、LHSV=2.1h−1、水素/油比=20NL/Lの条件下で3,742時間通油した。30時間通油した時点での生成油硫黄分は0.30質量ppm、オレフィン分は10.0容量%、3,742時間通油した時点での生成油硫黄分は0.55質量ppm、オレフィン分は10.6容量%であった。
2 リアクターAの出口配管
3 第1の切替配管
4 リアクターBの出口配管
5 第2の切替配管
6 生成油移送配管
7 リアクターA
8 リアクターB
11〜16 切替バルブ
Claims (6)
- 炭化水素油とニッケルと亜鉛を含む多孔質脱硫剤とを、水素の存在下で、反応温度100〜400℃、反応圧力0.2〜5.0MPa、及び液空間速度(LHSV)が2.0h−1を超え50.0h−1以下の条件下で接触することを特徴とする炭化水素油の脱硫方法。
- 活性が低下した多孔質脱硫剤を水素処理によって活性を回復し、繰り返し使用する請求項1に記載の炭化水素油の脱硫方法。
- 多孔質脱硫剤は、ニッケル含有量が33質量%以下、及び亜鉛含有量が30質量%以上であり、かつ、亜鉛含有量に対するニッケル含有量の比(質量)が0.5以下である請求項1または2に記載の炭化水素油の脱硫方法。
- 多孔質脱硫剤を保持するリアクター2基以上に直列に炭化水素油を通油し、炭化水素油が最初に通油されるリアクターの出口における反応生成油中の硫黄分が通油前の炭化水素油の硫黄分の5%以上になった場合に、炭化水素油を最初に通油していたリアクターをオンオイル系から切り離して、炭化水素油を最初に通油するリアクターを2番目以降に通油していたリアクターに切り替える請求項1〜3の何れかに記載の炭化水素油の脱硫方法。
- 多孔質脱硫剤を保持するリアクター2基以上に直列に炭化水素油を通油し、炭化水素油が最初に通油されるリアクターの出口における反応生成油中の硫化水素濃度が硫黄分として10質量ppm以上になった場合に炭化水素油を最初に通油していたリアクターをオンオイル系から切り離して、炭化水素油を最初に通油するリアクターを2番目以降に接触していたリアクターに切り替える請求項1〜3の何れかに記載の炭化水素油の脱硫方法。
- 多孔質脱硫剤を保持するリアクター2基以上に直列に炭化水素油を通油し、炭化水素油が最初に通油されるリアクターの出口における反応生成油中の硫黄分が0.5質量ppm以上になった場合に、炭化水素油を最初に通油していたリアクターをオンオイル系から切り離して、炭化水素油を最初に通油するリアクターを2番目以降に通油していたリアクターに切り替える請求項1〜3の何れかに記載の炭化水素油の脱硫方法。
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