JP2004122870A - 揺動機構付き3輪車 - Google Patents
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Abstract
【効果】例えば、左右の後輪を軸で連結したものに比較して、本発明では、後輪の上下動を左右の干渉なく独立させて行わせることができ、左右の後輪のそれぞれの路面への追従性が増して、車体のロール等を少なくすることができ、乗り心地を向上できる。同じ支軸に左右のサスペンションアームを取付けることから、部品数を減らすことができ、更に、支軸で揺動軸を兼用することから、より一層コストダウンを図ることができる。
【選択図】 図11
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗り心地を高めつつそのためのコスト低減を図った揺動機構付き3輪車に関する。
【0002】
【従来の技術】
揺動機構付き3輪車として、左右の後輪を軸で連結したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特公昭58−24310号公報(第1−2頁、第2−3図)
【0004】
特許文献1の第2図を以下の図19で説明し、特許文献1の第3図を以下の図20で説明する。なお、符号は振り直した。
図19は従来の揺動機構付き3輪車の側面図であり、一つの前輪201を備えた前部フレーム202と、左右の後輪203,204を備えた後部フレーム205とをピボット結合装置206で連結した揺動機構付き3輪車を示す。
ピボット結合装置206は、前部フレーム202に取付けたハウジングと、このハウジングに前部を回転可能に取付けるとともに後部を後部フレーム205に取付けたピボット軸とからなり、前部フレーム202は後部フレーム205に対してピボット軸線207周りにローリングすることが可能である。
【0005】
図20は従来の揺動機構付き3輪車の後部断面図であり、一方の後輪203を取付けた後輪軸211に中間軸212の一端をスプライン結合し、この中間軸212の他端に摩擦差動装置213を介して他方の後輪軸214を取付け、この後輪軸214に他方の後輪204を取付けたことを示す。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図19において、3輪車は前部フレーム202を左右に揺動させるピボット軸を備えるが、後輪203,204を上下にスイングさせるためのスイング軸は備えていない。スイング軸を設けると、部品数が増加し、コストアップを招く。
【0007】
図20において、左右の後輪203,204は後輪軸211、中間軸212及び後輪軸214で一体的に連結されているため、例えば、走行中に、一方の後輪203が路面の凸部に乗り上げると、後輪203は上方へ移動し、この影響が後輪軸211、中間軸212及び後輪軸214を介して他方の後輪204にも及んで後輪204が傾き、図19に示した後部フレーム205がロールし、このロールによって前部フレーム202が上下動する。このような構成は、排気量の小さい車両においては問題ないが、高速走行も可能な中排気量以上の車両においては、乗り心地の改善が望まれる。
【0008】
そこで、上記したスイング軸を左右に別々に設け、これらのスイング軸にそれぞれスイングアームを取付け、これらのスイングアームに後輪203,204をそれぞれ取付けると、左右の後輪が独立して、後輪203,204の一方の上下動が他方に影響を及ぼさなくなるが、左右にスイング軸を設けることになり、より一層コストアップとなる。
【0009】
本発明の目的は、揺動機構付き3輪車の乗り心地を高めつつそのためのコストを低減することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、車体フレームの左右にサスペンションアームを介して左右の後輪を上下動可能に取付け、サスペンションアーム側に対して車体フレームの左右の揺動を許容する揺動機構をサスペンションアーム側と車体フレーム側との間に設けた揺動機構付き3輪車において、車体フレームに車体前後方向に延びる支軸を取付け、この支軸に左右のサスペンションアームをそれぞれ上下スイング可能に互いに独立して取付け、支軸で車体フレームを揺動させるための揺動軸を兼用したことを特徴とする。
【0011】
支軸に互いに独立したサスペンションアームを介して左右の後輪を支持することで、例えば、従来のように左右の後輪を車軸で連結したものに比較して、本発明では、後輪の上下動を左右の干渉なく独立させて行わせることができ、左右の後輪のそれぞれの路面への追従性が増して、車体のロールを少なくすることができ、乗り心地を向上させることができる。
【0012】
同じ支軸に左右のサスペンションアームを取付けることから、左右のサスペンションアームを別々のスイング軸に取付けるのに比べて、部品数を減らすことができ、コストダウンを図ることができる。
更に、支軸と揺動軸とを兼用することから、支軸と揺動軸とを別々に設けるのに比べて、部品数を減らすことができ、一層コストダウンを図ることができる。
【0013】
請求項2は、サスペンションアームを、A字形状のアームとしたことを特徴とする。
サスペンションアームはA字形状であるから、サスペンションアームの剛性を高めることができ、走行安定性を高めることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る揺動機構付き3輪車の側面図であり、揺動機構付き3輪車10(以下「(3輪車10」と記す。)は、ヘッドパイプ11に図示せぬハンドル軸を介して操舵可能に取付けたフロントフォーク12と、このフロントフォーク12の下端に取付けた前輪13と、フロントフォーク12に一体的に取付けたハンドル14と、ヘッドパイプ11の後部に取付けた車体フレーム16と、この車体フレーム16の後部に取付けたパワーユニット17と、このパワーユニット17で駆動する左右の後輪18,21と、車体フレーム17の上部に取付けた収納ボックス22と、この収納ボックス22の上部に開閉可能に取付けたシート23とからなる。
【0015】
車体フレーム16は、ヘッドパイプ11から後方斜め下方へ延ばしたダウンパイプ25と、このダウンパイプ25の下部から後方更に後方斜め上方へ延ばした左右一対のロアパイプ26,27と、これらのロアパイプ26,27の後部に連結したセンタアッパフレーム28と、ダウンパイプ25から後方へ延ばすとともにセンタアッパフレーム28に連結したセンタパイプ31と、上記のロアパイプ26,27の後部及びセンタアッパフレーム28の後部側のそれぞれに連結した側面視J字状のJフレーム32とからなる。
【0016】
センタアッパフレーム28は、収納ボックス22を支持するとともにパワーユニット17を吊り下げる部材である。
Jフレーム32は、後輪18,21を懸架するリヤサスペンション及びこのリヤサスペンション側に対して車体フレーム16側の左右の揺動を許容する揺動機構とを取付ける部材である。これらのリヤサスペンション及び揺動機構については後に詳述する。
【0017】
パワーユニット17は、車体前方側に配置したエンジン34と、このエンジン34の動力を後輪18,21に伝達する動力伝達機構35とからなる。
ここで、41は前輪13の上方を覆うフロントフェンダ、42はバッテリ、43はウインカ、44はテールランプ、46はエアクリーナ、47はマフラである。
【0018】
図2は本発明に係る3輪車の要部側面図であり、Jフレーム32の上部とセンタアッパフレーム28の後端とを連結するためにJフレーム32及びセンタアッパフレーム28のそれぞれに連結パイプ52,52(奥側の連結パイプ52は不図示)を渡し、これらの連結パイプ52,52とセンタアッパフレーム28とに補強プレート53,53を取付け、Jフレーム32の後部の内側に側面視がほぼL字状のLパイプ54を取付け、センタアッパフレーム28にブラケット56,56(奥側のブラケット56は不図示)を取付け、これらのブラケット56,56に中継部材57を介してパワーユニット17の前部上部を取付け、補強プレート53,53から支持ロッド58を下方斜め後方へ延ばすことでパワーユニット17の後部を支持し、Lパイプ54の前部から前方へ突出部61を延ばすことでパワーユニット17の後端部を取付けたことを示す。なお、32A,32B,32Cは、それぞれJフレーム32においてほぼ水平とした下部水平部、上端側を下端側よりも後方へ移動させた後端傾斜部、前端部を後端部よりも上方へ移動させた上部傾斜部である。
【0019】
図3は本発明に係る3輪車の平面図であり、Jフレーム32の後部を1本のパイプで構成し、このJフレーム32にリヤサスペンション63(詳細は後述する。)を取付けたことを示す。なお、65は後輪用のブレーキレバー、66は前輪用のブレーキレバーである。
【0020】
図4は本発明に係る3輪車の要部平面図であり、Jフレーム32の左右にサスペンションアーム71,72を取付け、これらのサスペンションアーム71,72の先端にそれぞれホルダー(不図示)を取付け、これらのホルダーに回転可能にそれぞれ後輪18,21を取付け、これらの後輪18,21をパワーユニット17の動力伝達機構35から延ばしたドライブシャフト73,74で駆動する構造にしたことを示す。
【0021】
76はダンパ77と圧縮コイルばね(不図示)とからなる弾性手段としての緩衝器であり、左右のサスペンションアーム71,72のそれぞれの側に連結したものである。
【0022】
センタアッパフレーム28は、円形又はほぼ長円形の部材であり、この上部にほぼ同形の底を有する収納ボックス22(図1参照)を取付ける。
パワーユニット17の動力伝達機構35は、エンジン34の左部後部から後方へ延ばしたベルト式の無段変速機78と、この無段変速機78の後部に連結したギヤボックス81とからなり、このギヤボックス81の前側の出力軸にドライブシャフト74を接続し、ギヤボックス81の後側の出力軸にドライブシャフト73を接続する。
【0023】
図5は本発明に係る3輪車の第1斜視図であり、車体フレーム16のロアパイプ26,27の後部にJフレーム32の前部を取付けたことを示す。なお、83はホルダー(奥側のホルダー83は不図示)である。
【0024】
図6は本発明に係る3輪車の背面図であり、Jフレーム32の後端傾斜部32Bは、3輪車10に乗車しない状態では、ほぼ鉛直となるようにした部分であり、この後端傾斜部32Bにサスペンションアーム71,72の後部を取付ける。なお、85は後端傾斜部32Bにサスペンションアーム71,72の後部をスイング可能に取付けるための後部スイング軸である。
【0025】
図7は本発明に係る3輪車の第2斜視図であり、Jフレーム32から左右にサスペンションアーム71,72を延ばし、これらのサスペンションアーム71,72の先端にそれぞれホルダー83を取付け、サスペンションアーム71,72のそれぞれの上部に取付ブラケット86,87を介して連結手段としての円弧状リンク88,89をスイング可能に取付け、これらの円弧状リンク88,89の先端に側面視がほぼL字状の連結手段としてのベルクランク90,91をスイング可能に取付け、これらのベルクランク90,91の上部端部間に緩衝器76を渡し、ベルクランク90,91の側部端部間にバー状の接続部材92を渡し、この接続部材92を揺動機構93を介してJフレーム32の後端傾斜部32Bに取付けたリヤサスペンション63を示す。
【0026】
円弧状リンク88,89はそれぞれ、中間部に側部突出部95を備え、これらの側部突出部95に、円弧状リンク88,89のスイングを制動するブレーキキャリパ96,96を取付けた部材である。なお、97,97はブレーキキャリパ96を備えたブレーキ装置であり、油圧によってブレーキキャリパ96,96でディスク98,98を挟み込む。ディスク98,98はそれぞれサスペンションアーム71,72に取付けた部材である。100は円弧状リンク88,89のスイング軸となるボルトである。
【0027】
ベルクランク90,91は、それぞれ2枚のクランクプレート102,102からなり、第1の支点としての第1ボルト103と、第2の支点としての第2ボルト104と、第3の支点としての第3ボルト106とを備える。なお、107は緩衝器76の伸縮を規制するストッパピンとした第4ボルト、108…(…は複数個を示す。以下同じ。)は第1ボルト103〜第4ボルト107にねじ込むナットである。
【0028】
揺動機構93は、コーナリング時等に、サスペンションアーム71,72に対して車体フレーム16の左右の揺動を許容するとともに、揺動の傾きが大きくなるにつれて、内蔵する弾性体で反力を大きくして元の位置に戻すようにしたものである。
【0029】
図8(a)〜(c)は本発明に係る揺動機構の説明図であり、(a)は側面図(一部断面図)、(b)は(a)のb−b線断面図、(c)は(b)を元にした作用図である。
(a)において、揺動機構93は、Jフレーム32の後端傾斜部32B及びLパイプ54の後部に取付けたケース111と、このケース111内に収納したダンパラバー112…と、これらのダンパラバー112…を押圧するとともに接続部材92に取付けた押圧部材113と、この押圧部材113及び接続部材92を貫通させるとともに両端部をLパイプ54に設けた先端支持部114及び後端傾斜部32Bで支持した貫通ピン116とからなる、いわゆる「ナイトハルトダンパ」である。なお、117は接続部材92に押圧部材113をボルトで取付けるために押圧部材113に設けた取付部、118は接続部材92のスイング量を規制するために先端支持部114に一体的に設けたスイング規制部である。
【0030】
(b)において、ケース111は、左ケース121及び右ケース122とを合わせた部材であり、内部にダンパ収納室123を設け、このダンパ収納室123の4隅にダンパラバー112…を配置し、これらのダンパラバー112…を押圧部材113の凸状の押圧部124…で押圧する。
【0031】
(c)において、サスペンションアーム側に連結した接続部材92に対して、車体フレーム16が車体左方(図中の矢印leftは車体左方を表す。)へ揺動し、Lパイプ54が角度θだけ傾斜すると、揺動機構93のケース111は、押圧部材113に対して相対回転することになり、ケース111内に収納したダンパラバー112…はケース111と押圧部材113とに挟まれて圧縮され、ケース111、ひいては車体フレーム16を元の位置((a)の位置)に戻そうとする反力が発生する。
【0032】
図9は本発明に係る3輪車の第3斜視図(車体フレームの斜め後方から見た図)であり、Jフレーム32に、サスペンションアーム71,72(図7参照)の後部をスイング可能に取付けるための後部取付部127と、サスペンションアーム71,72の前部をスイング可能に取付けるための前部取付部128とを設けたことを示す。
【0033】
後部取付部127は、後端傾斜部32Bと、Lパイプ54から下部水平部32E(後述する。)へ下ろした鉛直ブラケット131とからなり、これらの後部傾斜部32B及び鉛直ブラケット131のそれぞれにサスペンションアーム71,72の後部を支持する後部スイング軸85(図6参照)を取付ける。
【0034】
前部取付部128は、下部水平部32Eに間隔を開けてそれぞれ立ち上げた前部立上げ部133及び後部立上げ部134からなり、これらの前部立上げ部133及び後部立上げ部134のそれぞれにサスペンションアーム71,72の前部を支持する前部スイング軸136を取付ける。
【0035】
ここで、138は燃料タンク、142,143は車体フレーム16にエンジン34を搭載するためのエンジンマウント防振リンク、144はJフレーム32の下部水平部32Eの先端を取付けるためにロアパイプ26,27の後部下部に取付けたU字状のUパイプである。
【0036】
図5では、Y字状に分岐させた下部水平部32Aの前端をロアパイプ26,27に直接取付けた実施の形態を示したが、この図9では、Jフレーム32を、Y字状に分岐させた下部水平部32Eと、後端傾斜部32Bと、上部傾斜部32Cとから構成し、下部水平部32Eの前端をロアパイプ26,27にUパイプ144を介して取付けた別の実施の形態を示す。
【0037】
図10は本発明に係る車体フレームの平面図であり、Jフレーム32の下部水平部32Eを途中でY字状に分岐させてUパイプ144の後部に連結し、また、連結パイプ52,52をJフレーム32の上部傾斜部32Cからセンタアッパフレーム28へY字状に延ばしたことを示す。
【0038】
下部水平部32E(及び下部水平部32A(図5参照))は、詳しくは、1本の長尺の第1パイプ151を途中で曲げ、この第1パイプ151の屈曲部152の近傍に第2パイプ153を接続することで形成した部分である。なお、154は第1パイプ151に第2パイプ153を接続してY字状に分岐させたY字分岐部、155は上部傾斜部32Cに連結パイプ52,52を接続してY字状に分岐させたY字分岐部である。
第1パイプ151は、後端傾斜部32B及び上部傾斜部32Cを含む部材であり、Jフレーム32から第2パイプ153を除いたものである。
【0039】
このように、下部水平部32EをY字状に形成することで、Jフレーム32の下部前部とUパイプ144との結合を強固にし、連結パイプ52,52をY字状に配置することで、Jフレーム32の後部上部とセンタアップフレーム28の後部との結合を強固にすることができる。また、図5において、下部水平部32AをY字状に形成することで、Jフレーム32の下部前部とロアパイプ26,27との結合を強固にすることができる。
【0040】
図11は本発明に係るリヤサスペンションの背面図であり、乗員(運転者)1名が乗車した状態(この状態を「1G状態」という。)のリヤサスペンション63を示す。なお、図9に示したJフレーム32の後端傾斜部32B及び上部傾斜部32Cは省略した。また、図8(b)に示した揺動機構93の右ケース122は想像線で示した。このとき、車体フレーム16のLパイプ54はほぼ鉛直の状態にあり、接続部材92はほぼ水平の状態にある。
【0041】
接続部材92は、両端に扇形の扇形状部156,157を備え、これらの扇形状部156,157にそれぞれ円弧状長穴158,159を設けた部材であり、これらの円弧状長穴158,159にストッパピンとした第4ボルト107,107を通すことで、接続部材92に対するベルクランク90,91の傾き角度を規制する。このベルクランク90,91の傾き角度は、サスペンションアーム71,72の傾斜角度即ち後輪18,21の上下移動量によって変化する。換言すれば、円弧状長穴158,159は後輪18,21の上下移動量を規制する部分である。
【0042】
図12は本発明に係るサスペンションアーム前部の取付状態を示す斜視図(図中の矢印(front)は車体前方を示す。以下同じ。)であり、前部スイング軸136にサスペンションアーム71,72の前部端部を、サスペンションアーム71の後方にサスペンションアーム72が位置するようにしてそれぞれ回転可能に取付けた状態を示す。
前部スイング軸136は、前部立上げ部133と後部立上げ部134とに貫通させたボルトであり、端部にナット161をねじ込んだ部材である。
【0043】
図13は本発明に係るサスペンションアーム後部の取付状態を示す斜視図であり、後部スイング軸85にサスペンションアーム71,72の後部端部を、サスペンションアーム71の後方にサスペンションアーム72が位置するようにしてそれぞれ回転可能に取付けた状態を示す。
【0044】
以上に述べたリヤサスペンション63の作用を次に説明する。
図14は本発明に係るリヤサスペンションの作用を示す第1作用図である。
例えば、左側の後輪18が図11に示した状態から移動量M1だけ上方に移動すると、サスペンションアーム71は後部スイング軸85及び前部スイング軸136(図9参照)を中心にして矢印aのように上方へスイングし、これに伴って、円弧状リンク88が矢印bのように上昇してベルクランク90を第2ボルト104を支点にして矢印cの向きにスイングさせ、緩衝器76を矢印dのように押し縮める。このようにして、左側の後輪18の上昇に伴う車体フレーム16(図10参照)側への衝撃の伝達を和らげる。
このとき、他方のサスペンションアーム72は図11と同じ状態にあるため、接続部材92は図11と同様にほぼ水平な状態にある。
【0045】
図15は本発明に係るリヤサスペンションの作用を示す第2作用図である。
図11の状態から、後輪18,21が共に移動量M2だけ上昇する、又は車体フレーム16が後輪18,21に対して移動量M2だけ下降すると、サスペンションアーム71,72は、後部スイング軸85及び前部スイング軸136(図9参照)を中心にして矢印f,fのように上方へスイングし、これに伴って、円弧状リンク88,89が矢印g,gのように上昇してベルクランク90,91を第2ボルト104を支点にして矢印h,hの向きにスイングさせ、緩衝器76を矢印j,jのように押し縮める。この結果、緩衝器76による緩衝作用がなされる。
【0046】
図16は本発明に係るリヤサスペンションの作用を示す第3作用図である。
図11の状態から、後輪18,21が共に移動量M3だけ下降する、又は車体フレーム16が後輪18,21に対して移動量M3だけ上昇すると、サスペンションアーム71,72は、後部スイング軸85及び前部スイング軸136(図9参照)を中心にして矢印m,mのように下方へスイングし、これに伴って、円弧状リンク88,89が矢印n,nのように下降してベルクランク90,91を第2ボルト104を支点にして矢印p,pの向きにスイングさせ、緩衝器76を矢印q,qのように引き伸す。この結果、緩衝器76による緩衝作用がなされる。
【0047】
図17は本発明に係るリヤサスペンションの作用を示す第4作用図である。
図11の状態から、車体フレーム16、ここではLパイプ54が車体左方に角度φ1だけ揺動すると、Lパイプ54に貫通ピン116で連結した接続部材92は、矢印sのように左方へ平行移動する。これに伴い、円弧状リンク88,89は矢印t,tのように傾き、ベルクランク90,91は矢印u,uのように平行移動する。ベルクランク90,91の第3ボルト106,106間の間隔は変化しないので、緩衝器76の伸縮はない。
【0048】
このとき、接続部材92に対して車体フレーム16が揺動するため、図8(c)で示したのと同様に、揺動機構によって車体フレーム16を元の位置(即ち、図11の位置である。)に戻そうとする反力が発生する。
【0049】
上記したように、車体フレーム16は、車体フレーム16にサスペンションアーム71,72をスイング可能に支持した前部スイング軸136(図12参照)及び後部スイング軸85を中心にして揺動する。このように、前部スイング軸136及び後部スイング軸85は、車体フレーム16が揺動するための揺動軸となる。
【0050】
図18は本発明に係るリヤサスペンションの作用を示す第5作用図である。
図11の状態から、後輪18が移動量M4だけ上昇し、且つ、車体フレーム16、ここではLパイプ54が車体左方に角度φ2だけ揺動すると、サスペンションアーム71は後部スイング軸85及び前部スイング軸136(図9参照)を中心にして矢印vのように上方へスイングするとともに、接続部材92は、矢印wのように左方へ移動する。これに伴って、円弧状リンク88は上昇するとともに左方へ傾斜し、円弧状リンク89は矢印xのように左方へ傾斜して、ベルクランク90は第2ボルト104を支点にして時計回りにスイングするとともに左方へ移動し、ベルクランク91は左方へ移動して、結果的に緩衝器76を押し縮め、緩衝作用をなす。
【0051】
以上の図3、図12及び図13で説明したように、本発明は第1に、車体フレーム16の左右にサスペンションアーム71,72を介して左右の後輪18,21を上下動可能に取付け、サスペンションアーム71,72側に対して車体フレーム16の左右の揺動を許容する揺動機構93(図11参照)をサスペンションアーム71,72側と車体フレーム16側との間に設けた揺動機構付き3輪車10において、車体フレーム16に車体前後方向に延びる支軸としての前部スイング軸136及び後部スイング軸85を取付け、これらの前部スイング軸136及び後部スイング軸85に左右のサスペンションアーム71,72をそれぞれ上下スイング可能に互いに独立して取付け、前部スイング軸136及び後部スイング軸85で車体フレーム16を揺動させるための揺動軸を兼用したことを特徴とする。
【0052】
前部スイング軸136及び後部スイング軸85に互いに独立したサスペンションアーム71,72を介して左右の後輪18,21を支持することで、例えば、従来のように左右の後輪を車軸で連結したものに比較して、本発明では、後輪18,21の上下動を左右の干渉なく独立させて行わせることができ、左右の後輪18,21のそれぞれの路面への追従性が増して、車体のロールを少なくすることができ、乗り心地を向上させることができる。
【0053】
同じ前部スイング軸136及び同じ後部スイング軸85に左右のサスペンションアーム71,72をそれぞれ取付けることから、左右のサスペンションアームを別々のスイング軸に取付けるのに比べて、部品数を減らすことができ、コストダウンを図ることができる。
更に、前部スイング軸136及び後部スイング軸85で揺動軸を兼用することから、支軸と揺動軸とを別々に設けるのに比べて、部品数を減らすことができ、一層コストダウンを図ることができる。
【0054】
請求項2は、図4に示したように、サスペンションアーム71,72を、A字形状のアームとしたことを特徴とする。
サスペンションアーム71,72はA字形状であるから、サスペンションアーム71,72の剛性を高めることができ、走行安定性を高めることができる。
【0055】
尚、本発明の実施の形態では、支軸を前部スイング軸136(図12参照)と後部スイング軸85(図13参照)とに分けたが、これに限らず、支軸を1本のスイング軸として、このスイング軸に左右のサスペンションアーム71,72をスイング可能に取付けてもよい。
【0056】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1の揺動機構付き3輪車は、車体フレームに車体前後方向に延びる支軸を取付け、この支軸に左右のサスペンションアームをそれぞれ上下スイング可能に互いに独立して取付け、支軸で車体フレームを揺動させるための揺動軸を兼用したので、支軸に互いに独立したサスペンションアームを介して左右の後輪を支持することで、例えば、従来のように左右の後輪を車軸で連結したものに比較して、本発明では、後輪の上下動を左右の干渉なく独立させて行わせることができ、左右の後輪のそれぞれの路面への追従性が増して、車体のロールを少なくすることができ、乗り心地を向上させることができる。
【0057】
同じ支軸に左右のサスペンションアームを取付けることから、左右のサスペンションアームを別々のスイング軸に取付けるのに比べて、部品数を減らすことができ、コストダウンを図ることができる。
更に、支軸で揺動軸を兼用することから、支軸と揺動軸とを別々に設けるのに比べて、部品数を減らすことができ、一層コストダウンを図ることができる。
【0058】
請求項2の揺動機構付き3輪車は、サスペンションアームを、A字形状のアームとしたので、サスペンションアームはA字形状であるから、サスペンションアームの剛性を高めることができ、走行安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る揺動機構付き3輪車の側面図
【図2】本発明に係る3輪車の要部側面図
【図3】本発明に係る3輪車の平面図
【図4】本発明に係る3輪車の要部平面図
【図5】本発明に係る3輪車の第1斜視図
【図6】本発明に係る3輪車の背面図
【図7】本発明に係る3輪車の第2斜視図
【図8】本発明に係る揺動機構の説明図
【図9】本発明に係る3輪車の第3斜視図
【図10】本発明に係る車体フレームの平面図
【図11】本発明に係るリヤサスペンションの背面図
【図12】本発明に係るサスペンションアーム前部の取付状態を示す斜視図
【図13】本発明に係るサスペンションアーム後部の取付状態を示す斜視図
【図14】本発明に係るリヤサスペンションの作用を示す第1作用図
【図15】本発明に係るリヤサスペンションの作用を示す第2作用図
【図16】本発明に係るリヤサスペンションの作用を示す第3作用図
【図17】本発明に係るリヤサスペンションの作用を示す第4作用図
【図18】本発明に係るリヤサスペンションの作用を示す第5作用図
【図19】従来の揺動機構付き3輪車の側面図
【図20】従来の揺動機構付き3輪車の後部断面図
【符号の説明】
10…揺動機構付き3輪車、16…車体フレーム、18,21…後輪、71,72…サスペンションアーム、85,136…支軸(後部スイング軸、前部スイング軸)、93…揺動機構。
Claims (2)
- 車体フレームの左右にサスペンションアームを介して左右の後輪を上下動可能に取付け、前記サスペンションアーム側に対して車体フレームの左右の揺動を許容する揺動機構をサスペンションアーム側と車体フレーム側との間に設けた揺動機構付き3輪車において、
前記車体フレームに車体前後方向に延びる支軸を取付け、この支軸に前記左右のサスペンションアームをそれぞれ上下スイング可能に互いに独立して取付け、前記支軸で車体フレームを揺動させるための揺動軸を兼用したことを特徴とする揺動機構付き3輪車。 - 前記サスペンションアームは、A字形状のアームであることを特徴とする請求項1記載の揺動機構付き3輪車。
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