JP2004104929A - 分割型のコア形状を有する回転機器用の電磁鋼板 - Google Patents
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Abstract
【課題】強磁性を有するのは言うまでもなく、分割型のコア形状を有する回転機のステータに適した特殊な異方性を有する回転機器用の電磁鋼板を提供する。
【解決手段】L方向、C方向およびD方向のエプスタイン試験片(L,CおよびD片)を用いた磁気特性測定値において、L片を用いた測定による 50Hz, 1.5Tにおける鉄損W15/50(L)を1.2 W/kg以下にすると共に、L,C片を用いた測定による5000 A/mにおける磁束密度B50(L), B50(C) を共に1.80T以上、D片を用いた測定によるB50(D) を1.58T以上とし、さらにクリアランス:5%で打ち抜いた時の鋼板端面のダレを板厚の15%以下とする。
【選択図】 図3
【解決手段】L方向、C方向およびD方向のエプスタイン試験片(L,CおよびD片)を用いた磁気特性測定値において、L片を用いた測定による 50Hz, 1.5Tにおける鉄損W15/50(L)を1.2 W/kg以下にすると共に、L,C片を用いた測定による5000 A/mにおける磁束密度B50(L), B50(C) を共に1.80T以上、D片を用いた測定によるB50(D) を1.58T以上とし、さらにクリアランス:5%で打ち抜いた時の鋼板端面のダレを板厚の15%以下とする。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車などに用いられるブラシレスDCモータやリラクタンスモータなどに用いられる分割タイプのモータコア、特にティース部とコアバック部とが分割されたタイプのモータコアに適用して好適な回転機器用の電磁鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電動機や発電機のステータは、一般に無方向性電磁鋼板を、図1に示すような形状に打ち抜いて積層し、そのティース2に銅線を巻きつけて組み立てられる。図中、番号1がステータ、2はコアバックである。
【0003】
従来、かようなステータ用の材料としては、ステータで発生する損失(鉄損)を低減するために、交番磁界下で鉄損が小さい材料が使用されていた。一般に、無方向性電磁鋼板よりも方向性電磁鋼板の方が交番磁界下での鉄損が小さいことが知られているが、ティース部とコアバック部の方向が90°異なるために、一方向にのみ磁気特性の良い方向性電磁鋼板を用いることは、必ずしも有利な結果を得るものではなかった。
【0004】
上記の問題を解決するものとして、鉄心材料として2方向性電磁鋼板を用い、ステータの磁気回路の方向を2方向性電磁鋼板の磁化容易軸に合わせることにより、高透磁率で低鉄損の電気子鉄心(ステータ)を提供するという提案がなされている(特許文献1)。
また、大型の電動機あるいは発電機のステータを組み立てるに際し、ステータを円周方向に分割したものとし、一方向性電磁鋼板の磁化容易軸方向をこの分割したステータの円周方向に合わせて組みたてるという方法も提案されている(非特許文献1)。
しかしながら、これらの方法では、ステータのティース部とコアバック部との接続部で発生する回転磁界がトータルの鉄損を大きく劣化させることが明らかとなっており、このような回転磁束による鉄損劣化の軽減には至っていない。
【0005】
一方、ステータをティース部とコアバック部とに分割し、かかるティース部とコアバック部をそれぞれ、これらに流れる磁束の方向が方向性電磁鋼板の磁化容易軸とほぼ同一になるように切り出して、組み立てることからなる方法も提案されている(特許文献2)。
この方法によれば、方向性電磁鋼板をその磁気特性の良好な方向だけ用いて組み立てが可能なことから、さほど回転鉄損による悪影響がないと考えられる。
しかしながら、この方法でも、期待するほど良好な鉄損改善効果を得ることはできなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−355983号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】
H.Shimanaka, Y.Ito, T.Irie, K.Matsumura, H.Nakamura and Y.Shono 「Non−Oriented Si−Steels Useful for Energy Efficient Electrical Apparatus 」Energy Efficient Electrical Steels(Proc.of a symposium at the Fall Meeting of TMS of AITE)1980年10月
【特許文献2】
特開平10−271716号公報(特許請求の範囲)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記の実状に鑑み開発されたもので、強磁性を有するのは言うまでもなく、分割型のコア形状を有する回転機のステータに適した特殊な異方性を有する回転機器用の電磁鋼板を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、この発明は、圧延方向(L方向)、圧延直角方向(C方向)および対角方向(圧延方向から45°の方向;D方向)のエプスタイン試験片(L,CおよびD片)を用いた磁気特性測定値において、L片を用いた測定による 50Hz, 1.5Tにおける鉄損W15/50(L)が1.2 W/kg以下でかつ、L,C片を用いた測定による5000 A/mにおける磁束密度B50(L), B50(C) が共に1.80T以上、D片を用いた測定によるB50(D) が1.58T以上であり、さらにクリアランス:5%で打ち抜いた時の鋼板端面のダレが板厚の15%以下であることを特徴とする、ティース部とコアバック部が分割されたタイプの分割型のコア形状を有する回転機器用の電磁鋼板である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の解明経緯について説明する。
さて、発明者らは先ず、市販の 500WのブラシレスDCモータを入手し、これと同等の形状に加工できる金型を作成し、この金型を用いて種々の鋼板素材を打ち抜いてモータを作成し、それらの性能を評価した。
その際、図2(a) のタイプ1に示すように、ティース部2とコアバック部3を分割した。というのは、このように分割することによって、ティース部2およびコアバック部3のそれぞれの部分において、磁束の流れる方向に沿って材料の最も優れた磁気特性を示す方向を選んで使用することができるため、モータ性能を最大化することができると考えられるからである。通常は、圧延方向が最も優れた磁気特性を示すので、ティース部およびコアバック部ともに長さ方向は、材料の圧延方向となるように素材を加工した。
【0010】
素材特性の評価に際しては、圧延方向(L方向)、圧延直角方向(C方向)および対角方向(圧延方向から45°の方向;D方向)のエプスタイン試験片(L,CおよびD片)を用いて磁気測定を行った。
そして、これらの測定値とモータ効率との関係について種々検討を行った結果、図3に示すように、モータの最大効率は対角方向の磁束密度B50(D) に依存し、この値が1.58T以上の場合にのみ、良好な効率が得られることが判明した。
なお、この図3は、定格が 500Wのモータの最大効率とその時のB50(D) との関係を示したものであり、その他の特性値は次のとおりである。W15/50(L):0.76〜1.20W/kg、B50(L) :1.80〜1.93T、B50(C) :1.80〜1.89T。
【0011】
しかしながら、たとえ磁束密度B50(D) ≧1.58Tを満足する場合であっても、モータ効率がさほど改善されない場合も見受けられた。
そこで、発明者らは、この点に着目し、より詳細な調査を行ったところ、打ち抜き加工時における鋼板端面の形状が、モータ効率に大きく影響していることを突き止めた。
【0012】
図4に、鋼板の剪断端面の形状を示す。
また、図5に、クリアランスを5%として剪断した時の鋼板のダレとモータ効率との関係について調べた結果を示す。
なお、ダレは剪断端面の光学顕微鏡観察により求め、板厚に対する比率で示した。また、使用した鋼板の各特性値はそれぞれ次のとおりである。W15/50(L):0.76〜1.20W/kg、B50(L) :1.80〜1.93T、B50(C) :1.80〜1.89T、B50(D):1.58〜1.68T。
図5に示したとおり、ダレの大きさが15%を超えると、モータ効率が急激に劣化することが明らかとなった。
【0013】
このように、B50(D) を1.58T以上にすると共に、ダレの大きさを15%以下に抑制した場合においてのみ、良好なモータ特性が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察できる。
つまり、ティース部とコアバック部を分割した場合、磁束の流れは素材の主に長手方向に流れる。その際、ティース部とコアバック部の結合部分では、コアバック部が長手方向に伸長することによってティース部は材料の幅方向に圧縮応力が加わるため、さらに磁束は長手方向を流れようとする。従って、磁束が素材の長手方向からずれて対角方向や直角方向に流れる領域は非常に小さくなり、接合部のごく近傍だけとなる。体積的にはこの部分の影響度は非常に小さいと考えられるが、この部分の素材の磁束密度が低いと、つまりこの部分の磁気抵抗が高いと、磁束はこの部分を避けようとして板面から漏れて進もうとするため、この局所集中的な漏れの磁束によって、板面内に渦電流損が発生すると共に、いわゆる漂遊負荷損が発生する。
これが、モータコアの全損失に占める割合が大きいものと考えられる。
【0014】
かような損失を回避するためには、長手方向すなわち圧延方向に対する相対的な対角方向および圧延直角方向の磁束密度を良好にして、局所集中的な漏れの磁束を軽減することが重要であると考えられる。
また、鋼板のダレが大きい場合には、継ぎ目の部分で隣接する鋼板に磁束が渡りにくくなって磁束の漏れがさらに増加し、板面内渦電流損および漂遊負荷損を増大させるものと考えられる。
なお、板面内渦電流損を軽減するためには、板厚を薄くしたり、素材の元々の損失を低減しておくことも重要である。
【0015】
上記の知見に基づき、この発明では、L方向、C方向およびD方向のエプスタイン試験片(L,CおよびD片)を用いた磁気特性測定値において、L片を用いた測定による 50Hz, 1.5Tにおける鉄損W15/50(L)を 1.2 W/kg以下にすると共に、L,C片を用いた測定による5000 A/mにおける磁束密度B50(L), B50(C)をともに1.80T以上とし、かつD片を用いた測定によるB50(D) を1.58T以上とし、さらにクリアランス:5%で打ち抜いたときの鋼板端面のダレを板厚の15%以下に抑制することとしたのである。
【0016】
次に、この発明の素材である鋼スラブの好適成分組成範囲について説明する。C:0.05mass%以下
Cは、0.05mass%を超えると脱炭焼鈍によっても目標とする 50ppm以下まで除去することが困難となり、磁気時効による鉄損の劣化を招く。また、最終冷延前の焼鈍の際にγ相が生じ、結晶粒を平均粒径を 100μm 以上の大きさに成長させるのが困難となる。これらの理由により、C量は0.05mass%以下とすることが好ましい。
なお、一方でCは、冷延時に結晶粒内における局所変形を促進させ{100}<001>組織の発達を促す効果もある。この作用は、0.003 mass%以上で発生し0.01mass%以上でより強くなるため、Cは0.01mass%以上添加することが好ましい。
【0017】
Si:1.5 〜4.5 mass%
Siは、電気抵抗を増加させて鉄損を低減する作用がある。また、最終冷延前の焼鈍の際におけるγ相の発生を抑制して粒成長を促進する作用があるので、1.5mass%以上含有させることが好ましい。一方、4.5 mass%を超えると加工性が劣化し、最終冷延の隙に割れが発生し易くなるので、4.5 mass%以下とすることが好ましい。
【0018】
Mn:0.005 〜1.0 mass%
Mnは、熱間加工性を改善するのに有用な元素であるが、含有量が0.005 mass%未満ではその効果に乏しく、一方1.0 mass%を超えると二次再結晶が困難になるので、 0.005〜1.0 mass%の範囲とすることが好ましい。
【0019】
Al:0.001 〜0.020 mass%
Al量が 0.001mass%に満たないと{100}<001>方位の集積度が低下したり、二次再結晶が不安定となり、一方 0.020mass%を超えると{110}<001>方位が増加してC方向の磁気特性が劣化するので、Al量は 0.001〜0.020mass%の範囲にすることが好ましい。特にAl量が 0.001〜0.010 mass%の範囲では、仕上げ焼鈍後の鉄損が低減されるのでより有利である。この理由は定かではないが、鋼板内部のAl窒化物あるいは酸化物が低減されるためではないかと考えられる。なお、Alは、製品板中では 100 ppm以下まで低減される。
【0020】
Se, S合計で 150 ppm以下
SeおよびSは、Mnと化合物を形成して結晶粒の成長を抑制する作用があり、{100}<001>方位の集積度を低下させる。特に、合計量が 150 ppmを超えると、磁気特性の劣化が避けられないので、これらは合計量で 150 ppm以下に制御することが好ましい。なお、SeやSはそれぞれ、製品板中では 50 ppm 以下まで低減される。
【0021】
O:60 ppm以下
Oは、鋼中で酸化物を形成し、結晶粒の成長を抑制して{100}<001>方位の集積度を低下させる。また、焼鈍による除去も因難で、60 ppmを超えると磁気特性の劣化が避けられないので、Oは60 ppm以下とすることが好ましい。
【0022】
N:50 ppm以下
Nは、鋼中でAlやSiの窒化物を形成し、結晶粒の成長を抑制して{100}<001>方位の集積度を低下させるので、50 ppm以下とするのが好ましい。
【0023】
B:1〜100 ppm
Bは、二次再結晶を安定して発現させる効果がある有用元素である。しかしながら、含有量が1ppm に満たないとその添加効果に乏しく、一方 100 ppmを超えると二次再結晶が生じなくなるので、B量は必要に応じ1〜100 ppm の範囲で添加することが好ましい。なお、多量の添加は板の脆化をもたらし、曲げ加工によって割れ易くなるので、より好ましくは1〜20 ppmの範囲である。
【0024】
その他、この発明では、鉄損の改善成分として、Ni:1.5 mass%以下、Cu:0.5 mass%以下、Mo:0.5 mass%以下、Sn:0.5 mass%以下、Sb:0.5 mass%以下、Cu:1mass%以下を適宜含有させることができる。また、不可避的不純物として、0.05mass%以下であれば、P, Cu, Ni, Cr, Mo等を含んでいても特に問題はない。
【0025】
次に、この発明鋼の好適製造条件について述べる。
上記の好適成分に調整された鋼スラブを、常法に従い加熱したのち、熱間圧延する。ついで、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行って最終板厚に仕上げる。
この発明では、この最終冷延の前段階で結晶粒の大きさを平均粒径で 100μm以上にしておくことが好ましく、かくして{100}<001>方位の集積度の向上ひいてはB50(L) およびB50(C) 等の磁気特性の向上を図ることができる。これに対し、平均結晶粒径が 100μm 未満の場合あるいは圧延による伸長粒が残存している場合には、一次再結晶後に{111}組織が発達し、{110}<001>方位の二次再結晶が成長し易くなり、L方向の磁気特性は向上するものの、C方向の磁気特性の劣化を招く。ここに、最終冷延前に 100μm 以上の平均結晶粒径を得るためには、最終冷延前に 900℃以上、1250℃以下の温度で熱延板焼鈍あるいは中間焼鈍を行うことが有効である。
【0026】
また、最終冷延工程では、圧下率を80%以上にすることが重要であり、かくして{100}<001>方位の集積度を有利に向上させることができる。
さらに、上記の最終冷延を3パス以上で行い、しかも 120℃以上でかつ圧下率:25%以上(1パス当たり)の圧延パスを少なくとも1パス施すことにより、B50(D) が高まり、かつ打ち抜き形状を良好に保つのに必要な集合組織に制御することができる。なお、温間圧延区間について特に制限はなく、圧延の全区間を上述したような温間圧延としてもかまわない。ここに、温間圧延の温度を 120℃以上とした理由は、圧延温度が 120℃未満では温度上昇の効果が少なく上述した効果が得られないからである。とはいえ、 450℃を超えると導入した転位の回復が生じ、{100}<001>方位への集積があまり期待できなくなるため、圧延温度は 120〜450 ℃程度とすることが好ましい。かかる温間圧延は、C含有量が0.01mass%以上の場合に、最も有効に{100}<001>方位の集積度を高める効果がある。
【0027】
ついで、再結晶焼鈍を施す。好ましくは、焼鈍温度:760 〜950 ℃、焼鈍時間:10〜200 秒として一次再結晶を生じさせる。この時、一次再結晶粒の粒径が大きすぎると、仕上げ焼鈍で二次再結晶が生じなくなる。ここに、粒径の上限値はAl量や不純物量によって変化するが、概ね70μm 程度である。また、磁気時効による磁気特性の劣化を防止するためには、雰囲気を湿潤水素雰囲気としてC量を50 ppm以下好ましくは30 ppm以下まで低減することが望ましい。
【0028】
引き続く仕上げ焼鈍工程では、 825〜1050℃の温度範囲に10時間以上保持して二次再結晶を生じさせることが好ましい。焼鈍雰囲気は非酸化性雰囲気とする必要があるが、5vol %以上の窒素を含有させることによって二次再結晶を安定化させることができる。また、この仕上げ焼鈍中における鋼板同士の密着を防止するために、マグネシア、アルミナ、シリカ等の粉末やシートを焼鈍分離剤として用いることも可能である。
【0029】
さらに、積層鉄心として用いるためには、仕上げ焼鈍後の鋼板表面に絶縁コーティング処理を施すことが望ましい。かかる絶縁コーティングには、従来の電磁鋼板に用いられている無機、半有機、有機コーティングが使用できる。また、張力を付与するシリカ−りん酸塩系のコーティングを施すことも、騒音の低減および歪感受性の低減に有効である。また、コイル形状で仕上げ焼鈍を行った場合には、鋼板に張力を付与しながら 750〜900 ℃の温度で平坦化焼鈍を施すのが、形状矯正および磁性改善のために有効であり、さらにかかる焼鈍の雰囲気を湿潤水素雰囲気として脱炭を併せて行うことも可能である。
【0030】
次に、打ち抜き事におけるダレの大きさを15%以下に低減するには、前述の温間圧延による集合組織の制御が最も効果的である。加えて、Si量を1.5 mass%以上として鋼板の強度、硬度を高めることによって、より有利に達成することができる。
【0031】
【実施例】
実施例1
C:0.023 mass%,Si:3.0 mass%,Mn:0.22mass%,Al:0.006 mass%およびN:23 ppmを含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、連続鋳造によって製造したのち、熱間圧延により2.6 mm厚の熱延板とし、ついで1050℃で60秒の熱延板焼鈍を施した。この時、平均結晶粒径は 200μm を上回っていた。ついで、1回の冷間圧延で0.35mmの最終板厚に仕上げた。この冷間圧延条件を変化させることにより、表1に示すA〜Fの素材を作製した。
これらの材料を用いて、図2(a) 〜(c) に示す3タイプの形状の分割型のステータコアを作製し、積層後、巻き線を施してステータに組み上げた。ロータは、市販の表面磁石タイプのものを用いた。このモータの定格出力は 300Wで、2000rpm 付近での最大効率を測定した。
【0032】
素材は、圧延方向、圧延直角方向および対角方向にエプスタイン試験片を採取し、JIS C 2550に準拠して磁気特性を測定した。また、クリアランスを5%として円盤打ち抜き金型により30mmφの円盤を打ち抜き、その時に発生したダレを光学顕微鏡観察により測定した。
得られた結果を表1に併記する。
【0033】
【表1】
【0034】
同表から明らかなように、この発明に従う材料を使用することにより、いずれの分割タイプのコアであっても、優れた効率を得ることができた。
【0035】
【発明の効果】
かくして、この発明によれば、分割型のコア形状を有する回転機において、その効率を安定して向上させることができる回転機器用の電磁鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ステータを作成する際の無方向性電磁鋼板の一般的な打ち抜き形状を示した図である。
【図2】ティース部とコアバック部が分割された分割型スタータの形状を示した図である。
【図3】磁束密度B50(D) とモータ効率との関係を示したグラフである。
【図4】鋼板の剪断端面形状を示した図である。
【図5】鋼板のダレとモータ効率との関係を示したグラフである。
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車などに用いられるブラシレスDCモータやリラクタンスモータなどに用いられる分割タイプのモータコア、特にティース部とコアバック部とが分割されたタイプのモータコアに適用して好適な回転機器用の電磁鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電動機や発電機のステータは、一般に無方向性電磁鋼板を、図1に示すような形状に打ち抜いて積層し、そのティース2に銅線を巻きつけて組み立てられる。図中、番号1がステータ、2はコアバックである。
【0003】
従来、かようなステータ用の材料としては、ステータで発生する損失(鉄損)を低減するために、交番磁界下で鉄損が小さい材料が使用されていた。一般に、無方向性電磁鋼板よりも方向性電磁鋼板の方が交番磁界下での鉄損が小さいことが知られているが、ティース部とコアバック部の方向が90°異なるために、一方向にのみ磁気特性の良い方向性電磁鋼板を用いることは、必ずしも有利な結果を得るものではなかった。
【0004】
上記の問題を解決するものとして、鉄心材料として2方向性電磁鋼板を用い、ステータの磁気回路の方向を2方向性電磁鋼板の磁化容易軸に合わせることにより、高透磁率で低鉄損の電気子鉄心(ステータ)を提供するという提案がなされている(特許文献1)。
また、大型の電動機あるいは発電機のステータを組み立てるに際し、ステータを円周方向に分割したものとし、一方向性電磁鋼板の磁化容易軸方向をこの分割したステータの円周方向に合わせて組みたてるという方法も提案されている(非特許文献1)。
しかしながら、これらの方法では、ステータのティース部とコアバック部との接続部で発生する回転磁界がトータルの鉄損を大きく劣化させることが明らかとなっており、このような回転磁束による鉄損劣化の軽減には至っていない。
【0005】
一方、ステータをティース部とコアバック部とに分割し、かかるティース部とコアバック部をそれぞれ、これらに流れる磁束の方向が方向性電磁鋼板の磁化容易軸とほぼ同一になるように切り出して、組み立てることからなる方法も提案されている(特許文献2)。
この方法によれば、方向性電磁鋼板をその磁気特性の良好な方向だけ用いて組み立てが可能なことから、さほど回転鉄損による悪影響がないと考えられる。
しかしながら、この方法でも、期待するほど良好な鉄損改善効果を得ることはできなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−355983号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】
H.Shimanaka, Y.Ito, T.Irie, K.Matsumura, H.Nakamura and Y.Shono 「Non−Oriented Si−Steels Useful for Energy Efficient Electrical Apparatus 」Energy Efficient Electrical Steels(Proc.of a symposium at the Fall Meeting of TMS of AITE)1980年10月
【特許文献2】
特開平10−271716号公報(特許請求の範囲)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記の実状に鑑み開発されたもので、強磁性を有するのは言うまでもなく、分割型のコア形状を有する回転機のステータに適した特殊な異方性を有する回転機器用の電磁鋼板を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、この発明は、圧延方向(L方向)、圧延直角方向(C方向)および対角方向(圧延方向から45°の方向;D方向)のエプスタイン試験片(L,CおよびD片)を用いた磁気特性測定値において、L片を用いた測定による 50Hz, 1.5Tにおける鉄損W15/50(L)が1.2 W/kg以下でかつ、L,C片を用いた測定による5000 A/mにおける磁束密度B50(L), B50(C) が共に1.80T以上、D片を用いた測定によるB50(D) が1.58T以上であり、さらにクリアランス:5%で打ち抜いた時の鋼板端面のダレが板厚の15%以下であることを特徴とする、ティース部とコアバック部が分割されたタイプの分割型のコア形状を有する回転機器用の電磁鋼板である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の解明経緯について説明する。
さて、発明者らは先ず、市販の 500WのブラシレスDCモータを入手し、これと同等の形状に加工できる金型を作成し、この金型を用いて種々の鋼板素材を打ち抜いてモータを作成し、それらの性能を評価した。
その際、図2(a) のタイプ1に示すように、ティース部2とコアバック部3を分割した。というのは、このように分割することによって、ティース部2およびコアバック部3のそれぞれの部分において、磁束の流れる方向に沿って材料の最も優れた磁気特性を示す方向を選んで使用することができるため、モータ性能を最大化することができると考えられるからである。通常は、圧延方向が最も優れた磁気特性を示すので、ティース部およびコアバック部ともに長さ方向は、材料の圧延方向となるように素材を加工した。
【0010】
素材特性の評価に際しては、圧延方向(L方向)、圧延直角方向(C方向)および対角方向(圧延方向から45°の方向;D方向)のエプスタイン試験片(L,CおよびD片)を用いて磁気測定を行った。
そして、これらの測定値とモータ効率との関係について種々検討を行った結果、図3に示すように、モータの最大効率は対角方向の磁束密度B50(D) に依存し、この値が1.58T以上の場合にのみ、良好な効率が得られることが判明した。
なお、この図3は、定格が 500Wのモータの最大効率とその時のB50(D) との関係を示したものであり、その他の特性値は次のとおりである。W15/50(L):0.76〜1.20W/kg、B50(L) :1.80〜1.93T、B50(C) :1.80〜1.89T。
【0011】
しかしながら、たとえ磁束密度B50(D) ≧1.58Tを満足する場合であっても、モータ効率がさほど改善されない場合も見受けられた。
そこで、発明者らは、この点に着目し、より詳細な調査を行ったところ、打ち抜き加工時における鋼板端面の形状が、モータ効率に大きく影響していることを突き止めた。
【0012】
図4に、鋼板の剪断端面の形状を示す。
また、図5に、クリアランスを5%として剪断した時の鋼板のダレとモータ効率との関係について調べた結果を示す。
なお、ダレは剪断端面の光学顕微鏡観察により求め、板厚に対する比率で示した。また、使用した鋼板の各特性値はそれぞれ次のとおりである。W15/50(L):0.76〜1.20W/kg、B50(L) :1.80〜1.93T、B50(C) :1.80〜1.89T、B50(D):1.58〜1.68T。
図5に示したとおり、ダレの大きさが15%を超えると、モータ効率が急激に劣化することが明らかとなった。
【0013】
このように、B50(D) を1.58T以上にすると共に、ダレの大きさを15%以下に抑制した場合においてのみ、良好なモータ特性が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察できる。
つまり、ティース部とコアバック部を分割した場合、磁束の流れは素材の主に長手方向に流れる。その際、ティース部とコアバック部の結合部分では、コアバック部が長手方向に伸長することによってティース部は材料の幅方向に圧縮応力が加わるため、さらに磁束は長手方向を流れようとする。従って、磁束が素材の長手方向からずれて対角方向や直角方向に流れる領域は非常に小さくなり、接合部のごく近傍だけとなる。体積的にはこの部分の影響度は非常に小さいと考えられるが、この部分の素材の磁束密度が低いと、つまりこの部分の磁気抵抗が高いと、磁束はこの部分を避けようとして板面から漏れて進もうとするため、この局所集中的な漏れの磁束によって、板面内に渦電流損が発生すると共に、いわゆる漂遊負荷損が発生する。
これが、モータコアの全損失に占める割合が大きいものと考えられる。
【0014】
かような損失を回避するためには、長手方向すなわち圧延方向に対する相対的な対角方向および圧延直角方向の磁束密度を良好にして、局所集中的な漏れの磁束を軽減することが重要であると考えられる。
また、鋼板のダレが大きい場合には、継ぎ目の部分で隣接する鋼板に磁束が渡りにくくなって磁束の漏れがさらに増加し、板面内渦電流損および漂遊負荷損を増大させるものと考えられる。
なお、板面内渦電流損を軽減するためには、板厚を薄くしたり、素材の元々の損失を低減しておくことも重要である。
【0015】
上記の知見に基づき、この発明では、L方向、C方向およびD方向のエプスタイン試験片(L,CおよびD片)を用いた磁気特性測定値において、L片を用いた測定による 50Hz, 1.5Tにおける鉄損W15/50(L)を 1.2 W/kg以下にすると共に、L,C片を用いた測定による5000 A/mにおける磁束密度B50(L), B50(C)をともに1.80T以上とし、かつD片を用いた測定によるB50(D) を1.58T以上とし、さらにクリアランス:5%で打ち抜いたときの鋼板端面のダレを板厚の15%以下に抑制することとしたのである。
【0016】
次に、この発明の素材である鋼スラブの好適成分組成範囲について説明する。C:0.05mass%以下
Cは、0.05mass%を超えると脱炭焼鈍によっても目標とする 50ppm以下まで除去することが困難となり、磁気時効による鉄損の劣化を招く。また、最終冷延前の焼鈍の際にγ相が生じ、結晶粒を平均粒径を 100μm 以上の大きさに成長させるのが困難となる。これらの理由により、C量は0.05mass%以下とすることが好ましい。
なお、一方でCは、冷延時に結晶粒内における局所変形を促進させ{100}<001>組織の発達を促す効果もある。この作用は、0.003 mass%以上で発生し0.01mass%以上でより強くなるため、Cは0.01mass%以上添加することが好ましい。
【0017】
Si:1.5 〜4.5 mass%
Siは、電気抵抗を増加させて鉄損を低減する作用がある。また、最終冷延前の焼鈍の際におけるγ相の発生を抑制して粒成長を促進する作用があるので、1.5mass%以上含有させることが好ましい。一方、4.5 mass%を超えると加工性が劣化し、最終冷延の隙に割れが発生し易くなるので、4.5 mass%以下とすることが好ましい。
【0018】
Mn:0.005 〜1.0 mass%
Mnは、熱間加工性を改善するのに有用な元素であるが、含有量が0.005 mass%未満ではその効果に乏しく、一方1.0 mass%を超えると二次再結晶が困難になるので、 0.005〜1.0 mass%の範囲とすることが好ましい。
【0019】
Al:0.001 〜0.020 mass%
Al量が 0.001mass%に満たないと{100}<001>方位の集積度が低下したり、二次再結晶が不安定となり、一方 0.020mass%を超えると{110}<001>方位が増加してC方向の磁気特性が劣化するので、Al量は 0.001〜0.020mass%の範囲にすることが好ましい。特にAl量が 0.001〜0.010 mass%の範囲では、仕上げ焼鈍後の鉄損が低減されるのでより有利である。この理由は定かではないが、鋼板内部のAl窒化物あるいは酸化物が低減されるためではないかと考えられる。なお、Alは、製品板中では 100 ppm以下まで低減される。
【0020】
Se, S合計で 150 ppm以下
SeおよびSは、Mnと化合物を形成して結晶粒の成長を抑制する作用があり、{100}<001>方位の集積度を低下させる。特に、合計量が 150 ppmを超えると、磁気特性の劣化が避けられないので、これらは合計量で 150 ppm以下に制御することが好ましい。なお、SeやSはそれぞれ、製品板中では 50 ppm 以下まで低減される。
【0021】
O:60 ppm以下
Oは、鋼中で酸化物を形成し、結晶粒の成長を抑制して{100}<001>方位の集積度を低下させる。また、焼鈍による除去も因難で、60 ppmを超えると磁気特性の劣化が避けられないので、Oは60 ppm以下とすることが好ましい。
【0022】
N:50 ppm以下
Nは、鋼中でAlやSiの窒化物を形成し、結晶粒の成長を抑制して{100}<001>方位の集積度を低下させるので、50 ppm以下とするのが好ましい。
【0023】
B:1〜100 ppm
Bは、二次再結晶を安定して発現させる効果がある有用元素である。しかしながら、含有量が1ppm に満たないとその添加効果に乏しく、一方 100 ppmを超えると二次再結晶が生じなくなるので、B量は必要に応じ1〜100 ppm の範囲で添加することが好ましい。なお、多量の添加は板の脆化をもたらし、曲げ加工によって割れ易くなるので、より好ましくは1〜20 ppmの範囲である。
【0024】
その他、この発明では、鉄損の改善成分として、Ni:1.5 mass%以下、Cu:0.5 mass%以下、Mo:0.5 mass%以下、Sn:0.5 mass%以下、Sb:0.5 mass%以下、Cu:1mass%以下を適宜含有させることができる。また、不可避的不純物として、0.05mass%以下であれば、P, Cu, Ni, Cr, Mo等を含んでいても特に問題はない。
【0025】
次に、この発明鋼の好適製造条件について述べる。
上記の好適成分に調整された鋼スラブを、常法に従い加熱したのち、熱間圧延する。ついで、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行って最終板厚に仕上げる。
この発明では、この最終冷延の前段階で結晶粒の大きさを平均粒径で 100μm以上にしておくことが好ましく、かくして{100}<001>方位の集積度の向上ひいてはB50(L) およびB50(C) 等の磁気特性の向上を図ることができる。これに対し、平均結晶粒径が 100μm 未満の場合あるいは圧延による伸長粒が残存している場合には、一次再結晶後に{111}組織が発達し、{110}<001>方位の二次再結晶が成長し易くなり、L方向の磁気特性は向上するものの、C方向の磁気特性の劣化を招く。ここに、最終冷延前に 100μm 以上の平均結晶粒径を得るためには、最終冷延前に 900℃以上、1250℃以下の温度で熱延板焼鈍あるいは中間焼鈍を行うことが有効である。
【0026】
また、最終冷延工程では、圧下率を80%以上にすることが重要であり、かくして{100}<001>方位の集積度を有利に向上させることができる。
さらに、上記の最終冷延を3パス以上で行い、しかも 120℃以上でかつ圧下率:25%以上(1パス当たり)の圧延パスを少なくとも1パス施すことにより、B50(D) が高まり、かつ打ち抜き形状を良好に保つのに必要な集合組織に制御することができる。なお、温間圧延区間について特に制限はなく、圧延の全区間を上述したような温間圧延としてもかまわない。ここに、温間圧延の温度を 120℃以上とした理由は、圧延温度が 120℃未満では温度上昇の効果が少なく上述した効果が得られないからである。とはいえ、 450℃を超えると導入した転位の回復が生じ、{100}<001>方位への集積があまり期待できなくなるため、圧延温度は 120〜450 ℃程度とすることが好ましい。かかる温間圧延は、C含有量が0.01mass%以上の場合に、最も有効に{100}<001>方位の集積度を高める効果がある。
【0027】
ついで、再結晶焼鈍を施す。好ましくは、焼鈍温度:760 〜950 ℃、焼鈍時間:10〜200 秒として一次再結晶を生じさせる。この時、一次再結晶粒の粒径が大きすぎると、仕上げ焼鈍で二次再結晶が生じなくなる。ここに、粒径の上限値はAl量や不純物量によって変化するが、概ね70μm 程度である。また、磁気時効による磁気特性の劣化を防止するためには、雰囲気を湿潤水素雰囲気としてC量を50 ppm以下好ましくは30 ppm以下まで低減することが望ましい。
【0028】
引き続く仕上げ焼鈍工程では、 825〜1050℃の温度範囲に10時間以上保持して二次再結晶を生じさせることが好ましい。焼鈍雰囲気は非酸化性雰囲気とする必要があるが、5vol %以上の窒素を含有させることによって二次再結晶を安定化させることができる。また、この仕上げ焼鈍中における鋼板同士の密着を防止するために、マグネシア、アルミナ、シリカ等の粉末やシートを焼鈍分離剤として用いることも可能である。
【0029】
さらに、積層鉄心として用いるためには、仕上げ焼鈍後の鋼板表面に絶縁コーティング処理を施すことが望ましい。かかる絶縁コーティングには、従来の電磁鋼板に用いられている無機、半有機、有機コーティングが使用できる。また、張力を付与するシリカ−りん酸塩系のコーティングを施すことも、騒音の低減および歪感受性の低減に有効である。また、コイル形状で仕上げ焼鈍を行った場合には、鋼板に張力を付与しながら 750〜900 ℃の温度で平坦化焼鈍を施すのが、形状矯正および磁性改善のために有効であり、さらにかかる焼鈍の雰囲気を湿潤水素雰囲気として脱炭を併せて行うことも可能である。
【0030】
次に、打ち抜き事におけるダレの大きさを15%以下に低減するには、前述の温間圧延による集合組織の制御が最も効果的である。加えて、Si量を1.5 mass%以上として鋼板の強度、硬度を高めることによって、より有利に達成することができる。
【0031】
【実施例】
実施例1
C:0.023 mass%,Si:3.0 mass%,Mn:0.22mass%,Al:0.006 mass%およびN:23 ppmを含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、連続鋳造によって製造したのち、熱間圧延により2.6 mm厚の熱延板とし、ついで1050℃で60秒の熱延板焼鈍を施した。この時、平均結晶粒径は 200μm を上回っていた。ついで、1回の冷間圧延で0.35mmの最終板厚に仕上げた。この冷間圧延条件を変化させることにより、表1に示すA〜Fの素材を作製した。
これらの材料を用いて、図2(a) 〜(c) に示す3タイプの形状の分割型のステータコアを作製し、積層後、巻き線を施してステータに組み上げた。ロータは、市販の表面磁石タイプのものを用いた。このモータの定格出力は 300Wで、2000rpm 付近での最大効率を測定した。
【0032】
素材は、圧延方向、圧延直角方向および対角方向にエプスタイン試験片を採取し、JIS C 2550に準拠して磁気特性を測定した。また、クリアランスを5%として円盤打ち抜き金型により30mmφの円盤を打ち抜き、その時に発生したダレを光学顕微鏡観察により測定した。
得られた結果を表1に併記する。
【0033】
【表1】
【0034】
同表から明らかなように、この発明に従う材料を使用することにより、いずれの分割タイプのコアであっても、優れた効率を得ることができた。
【0035】
【発明の効果】
かくして、この発明によれば、分割型のコア形状を有する回転機において、その効率を安定して向上させることができる回転機器用の電磁鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ステータを作成する際の無方向性電磁鋼板の一般的な打ち抜き形状を示した図である。
【図2】ティース部とコアバック部が分割された分割型スタータの形状を示した図である。
【図3】磁束密度B50(D) とモータ効率との関係を示したグラフである。
【図4】鋼板の剪断端面形状を示した図である。
【図5】鋼板のダレとモータ効率との関係を示したグラフである。
Claims (1)
- 圧延方向(L方向)、圧延直角方向(C方向)および対角方向(圧延方向から45°の方向;D方向)のエプスタイン試験片(L,CおよびD片)を用いた磁気特性測定値において、L片を用いた測定による 50Hz, 1.5Tにおける鉄損W15/50(L)が1.2 W/kg以下でかつ、L,C片を用いた測定による5000 A/mにおける磁束密度B50(L), B50(C) が共に1.80T以上、D片を用いた測定によるB50(D) が1.58T以上であり、さらにクリアランス:5%で打ち抜いた時の鋼板端面のダレが板厚の15%以下であることを特徴とする、ティース部とコアバック部が分割されたタイプの分割型のコア形状を有する回転機器用の電磁鋼板。
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