JP6724478B2 - 無方向性電磁鋼板、モータコア、及び無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

無方向性電磁鋼板、モータコア、及び無方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、無方向性電磁鋼板、モータコア、及び無方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
近年、地球環境問題に対する取り組みへの高まりから、例えば、自動車(ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車など)や家電製品(エアコン、冷蔵庫など)の分野では、消費エネルギーの少ない製品の普及が進んでいる。これらの製品には、高速回転する高効率モータが使用されており、高効率モータのモータコア(以下、モータコアを単に「コア」と称する場合がある)の材料として無方向性電磁鋼板が使用されている。
高効率モータのコアに用いられる無方向性電磁鋼板は、高速回転に耐え得る強度、及びリラクタンストルクを有効活用するために、高い飽和磁束密度が要求される。高い飽和磁束密度を得るためには、低合金系の無方向性電磁鋼板を採用することが好適である。しかしながら、低合金系の無方向性電磁鋼板は、鉄損が大きく、鋼板の強度も低い。そのため、低合金系の無方向性電磁鋼板は、高速回転する高効率モータのコアに用いることは不向きとされている。
したがって、高効率モータのコアに用いるための無方向性電磁鋼板としては、高合金化された鋼板が求められている。例えば、Si、Al、Mnなどの成分を添加して高合金化された無方向性電磁鋼板は、強度が向上する点で有効である。
一方、単純に強度を高めた無方向性電磁鋼板とするのみでは、高効率モータのコアに適用したとき、特に、モータ駆動時のトルクの低下が顕著となる。これは、高合金化したことによるBs(飽和磁化)の低下が大きな要因となっていると考えられる。
そのため、強度の上昇と、Bs(飽和磁化)の低下とのバランスを図る点から、高合金化された無方向性電磁鋼板としては、Pが添加された鋼板が知られている。
例えば、特許文献1には、Pの含有量が質量%で、0.100%以上0.30%以下であり、磁束密度がB50で1.70T以上、降伏強度が300MPa以上である無方向性電磁鋼板が開示されている。
また、特許文献2には、Pの含有量が質量%で、0.25%以下であり、再結晶部分の面積比率が90%未満、圧延方向から45°方向の引張り強さが600MPa以上、圧延方向から45°方向の磁束密度がB50で1.68T以上である無方向性電磁鋼板が開示されている。
特許第3870725号公報 特開2009−299102号公報
ところで、Pを含有している無方向性電磁鋼板は、単純に降伏点および引張強さを向上させても、高効率モータのコアに適用された場合、磁気特性が低下し易い。
例えば、上記の特許文献1及び特許文献2に開示された無方向性電磁鋼板は、良好な強度特性と磁気特性とを兼ね備えており、高効率モータへの適用が好適であるとされている。
しかしながら、高効率モータは、さらなる高速回転化の検討が進められている。そのため、Pが添加された従来の無方向性電磁鋼板は、従来の高効率モータよりも、さらに高速回転で回転する高効率モータのコアの材料として適用された場合、磁気特性が低下する傾向が見られることが分かった。
このように、従来のPが添加された無方向性電磁鋼板は、従来の高効率モータよりも、さらに高速回転化された高効率モータのコアに適用される場合、十分な磁気特性が得られ難いため、さらなる磁気特性の向上が求められていた。
したがって、本発明の課題は、高速回転する高効率モータのコアとして使用された場合であっても、磁気特性の低下が抑制された無方向性電磁鋼板を提供するものである。また、この無方向性電磁鋼板を用いたモータコアを提供するものである。さらに、この無方向性電磁鋼板の製造方法を提供するものである。
本発明者らは、上記事情に鑑み、Pが添加された無方向性電磁鋼板について、高速回転する高効率モータのコアに適用する場合に求められる磁気特性に着目して検討を進めた。
ところで、高速回転する高効率モータのコアとして、無方向性電磁鋼板を適用すると、無方向性電磁鋼板には、遠心力による応力が加えられるために変形が生じる。その一方で、モータの回転が止まると、無方向性電磁鋼板の変形は戻る。これまで、無方向性電磁鋼板の磁気特性に及ぼす応力の影響ついて、磁歪との関連で検討された報告は見られる。しかしながら、弾性域から塑性域へ遷移する過程での微小な変形挙動(転位形成挙動)を制御することで高速回転モータの効率向上を図るという観点では、一般的には認識されていなかった。そこで、本発明者らは、この過程における無方向性電磁鋼板の変形を制御することで高速回転モータの効率を好ましく制御できると考え、検討を進めた。本発明者らの検討によれば、弾性域から塑性域へ遷移する過程における無方向性電磁鋼板の変形挙動が磁気特性に影響を及ぼすことが分かってきた。そこで、本発明者らは、上記過程での磁気特性の影響についてさらに検討を進めた。
その結果、本発明者らは、特にPを質量%で、0.010%〜0.150%の範囲で含有する無方向性電磁鋼板において、伸び0.1%における引張強さをσ、及び伸び0.2%における引張強さをσとしたとき、σとσとの差(σ−σ)が、40MPa〜200MPa(40MPa≦(σ−σ)≦200MPa)の範囲にあることで、高い磁気特性が確保され、高速回転する高効率モータのコアの材料に適用した場合でも、磁気特性の低下を抑制できるとの知見を得た。さらに、磁気特性の低下をより抑制するために検討を進めたところ、(σ−σ)≧1000×P+30の関係を満足することで、高速回転する高効率モータのコアに使用された場合の鉄損をより低減できるとの知見を得た。
また、本発明者らは、特にPを質量%で、0.010%〜0.150%の範囲で含有する無方向性電磁鋼板を製造するにあたり、製造工程の検討を進めた。その結果、仕上げ焼鈍工程の冷却過程において、鋼板の温度が、80℃から40℃までの間の冷却速度を5℃/秒以上とした条件で製造されることにより、伸び0.1%における引張強さをσ、及び伸び0.2%における引張強さをσとしたとき、σとσとの差(σ−σ)が、40MPa〜200MPaの範囲となる無方向性電磁鋼板が得られた。さらに、磁気特性の低下をより抑制するために、製造工程の検討をさらに行ったところ、上記の80℃から40℃までの間の冷却速度の条件に加えて、仕上げ焼鈍工程の冷却過程において、800℃から500℃になるまでの間の張力を4MPa以下とすることで、(σ−σ)が上記範囲であって、(σ−σ)≧1000×P+30の関係を満足する無方向性電磁鋼板が得られた。そして、この製造方法によって無方向性電磁鋼板を得ることにより、得られた無方向性電磁鋼板は、高い磁気特性が確保されており、高速回転する高効率モータのコアの材料に適用した場合でも、磁気特性の低下を抑制できるとの知見を得た。
すなわち、本発明は、これらの知見を元になされたものである。つまり、本発明の要旨は次の通りである。
<1> 質量%で、
0.5%≦Si≦4.0%、
0.2%≦Al≦2.0%、
0.1%≦Mn≦3.0%、
0.010%≦P≦0.150%、
C≦0.005%、
S≦0.010%、
N≦0.005%、
並びに、残部としてFeおよび不純物元素を含有し、
鋼板の伸び0.1%における引張強さをσA、および鋼板の伸び0.2%における引張強さをσとしたとき、前記σと前記σとの差(σ−σ)が、40MPa≦(σ−σ)≦200MPaである無方向性電磁鋼板。
<2> 前記Pの含有量をP(質量%)をとしたとき、前記σと前記σとの差、及び前記Pの関係が、(σ−σ)≧1000×P+30を満足する<1>に記載の無方向性電磁鋼板。
<3> <1>又は<2>に記載の無方向性電磁鋼板を使用したモータコアであって、回転数10000rpm以上で回転するモータに使用されるモータコア。
<4> <1>に記載の化学組成を有するスラブを加熱した後、熱間圧延する熱間圧延工程と、
前記熱間圧延後の鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程と、
前記焼鈍後の鋼板を冷間圧延する冷間圧延工程と、
前記冷間圧延後の鋼板を仕上げ焼鈍する仕上げ焼鈍工程であって、仕上げ焼鈍工程における鋼板の温度が80℃から40℃になるまでの間、5℃/秒以上の冷却速度で冷却する仕上げ焼鈍工程と、
を有する<1>または<2>に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
<5> 前記仕上げ焼鈍工程における鋼板の温度が850℃から500℃になるまでの間、4MPa以下の張力で冷却する<4>に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、高速回転する高効率モータのコアとして使用された場合であっても、磁気特性の低下が抑制された無方向性電磁鋼板が提供できる。また、この無方向性電磁鋼板を用いたモータコアが提供できる。さらに、この無方向性電磁鋼板の製造方法が提供できる。
無方向性電磁鋼板の応力−歪曲線を示す模式図である。 本発明のモータコアの構造の一例を示す模式図である。 本発明のモータコアの構造の他の例を示す模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書中において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
<無方向性電磁鋼板>
本発明者らは、研究の結果、無方向性電磁鋼板が上記構成を有することで、高速回転する高効率モータのコアとして使用された場合であっても、磁気特性の低下が抑制されることを見出した。そして、本発明の無方向性電磁鋼板を高速回転する高効率モータのコアとして適用すると、モータ効率が向上することを見出した。その理由は定かではないが、例えば、次のように推測している。
一般的に、金属材料の変形は弾性域と塑性域とに区別されるが、現実的な材料では、これらの各領域の境界は明確とは言えない。
例えば、図1は、無方向性電磁鋼板の応力−歪曲線(stress−strain curve)を示す模式図である。図1に示すように、電磁鋼板に荷重を負荷したときに変形する初期の領域(本明細書中では「比例域」と称する。)では、応力と歪との関係は、ほぼ完全に弾性率(ヤング率)に比例する。この比例域は、基本的には結晶格子の変形の範囲内の現象として理解される。
しかし、一般的には降伏応力以下と考えられている応力範囲(弾性域)でも、無方向性電磁鋼板に荷重をかけたときの変形が一定値を超えると、応力と歪との関係は、弾性率との厳密な比例関係から外れて変形が進行する領域(本明細書中では「初期硬化域」と称する。)となる。この初期硬化域では、何らかの新たな格子欠陥が発生していると考えられる。これは一般的には転位と考えることが自然であり、本明細書では新たな転位が発生するものとして説明する。初期硬化域では、荷重による変形により転位は発生するものの、荷重を除けば、転位のほとんどは、転位の発生とは逆方向に移動して、転位が消滅する。
ところで、高速回転下にあるモータのコアは、モータが回転する遠心力のため、コアに適用した無方向性電磁鋼板の一部が少なからず変形してしまう。その際に、「初期硬化域」での硬化が大きい材料ほど、コアに適用した無方向性電磁鋼板自体の変形を抑制し得る。これは逆の見方をすると、遠心力による荷重が一定であれば変形量が小さく、形成される転位の密度が低下することとなる。転位密度の低下は磁壁移動の障害が減ることになるため透磁率の低下を回避でき、結果として、高速回転に伴う磁気特性の低下が抑制される。
本発明者らは、この現象を添加元素の種類、量、及び製造方法などを変化させて広範に調査した。その結果、固溶強化元素として活用されるAlやSiではその含有量を高めても、初期硬化域での硬化挙動はそれほど大きくは変化しないが、Pを特定の範囲で含有する無方向性電磁鋼板については、初期硬化域での硬化挙動が大きく変化することを明確に確認できた。
上記の現象は、特に初期硬化域の硬化挙動に関連して発生するものである。初期硬化域での硬化挙動は、鋼板の弾性域での歪量が異なる2点での引張強さの差により表すことができる。つまり、初期硬化域での硬化挙動は、初期硬化が起きていないか、または初期硬化が小さい歪量での引張強さσと、初期硬化が発生している大きい歪み量での引張強さσの差により表される。
引張強さσは、比例域内、又は初期硬化域内のいずれで測定した値であっても構わない。初期硬化域内での硬化挙動の差異を明確にするため、引張強さσは、比例域内であっても初期硬化域に近く、又は初期硬化域内であっても低歪量となる領域で測定した値を採用することがよい。一般的な無方向性電磁鋼板は、無方向性電磁鋼板の伸びを0.1%としたときに、この領域での値を表す指標として妥当なものとなると考えられる。そこで、本発明の無方向性電磁鋼板では、引張強さσを鋼板の伸び0.1%における引張強さの値で規定する。
また、引張強さσは、少なくとも初期硬化域内の歪量で得られるものとする。一般的な無方向性電磁鋼板では、引張伸び0.2%において、比例域を超え、初期硬化域内となることが妥当と考えられる。そこで、本発明の無方向性電磁鋼板では、σを引張伸び0.2%における引張強さの値で規定する。
上記の挙動を模式的に図1で説明する。図1に示す無方向性電磁鋼板の応力−歪曲線において、本発明の無方向性電磁鋼板(図1中、本発明鋼と表記)のσおよび降伏応力は、従来の無方向性電磁鋼板(図1中、従来鋼と表記)と同じである。しかし、本発明鋼のσは、従来鋼のσに比べ高い。これは、本発明鋼は、従来鋼よりも、初期硬化域での硬化が大きい(つまり、初期硬化能が高い)ことを示している。
図1より、σが高い本発明鋼に相当する初期硬化挙動を有する材料は、鋼板が微小に変形する程度の初期硬化域において、一定応力下での歪量、特に比例域を超えた範囲での歪量が、従来鋼よりも小さくなることが理解できる。
この結果、本発明の無方向性電磁鋼板が、高速回転(例えば、10000rpm以上)するモータのコアの材料に適用された場合、遠心力による負荷が加えられても、初期硬化域での変形が抑制され、転位密度が少なくなる。そのため、磁壁移動の障害が減り透磁率の低下が回避され、結果として磁気特性の低下が抑制される。
なお、上記の説明において、「比例域」と「初期硬化域」とを用いて説明したが、注意を要するのは、上記の「比例域」と「初期硬化域」との境界は、無方向性電磁鋼板の組成や製法などにより変化するものである。また、これらの各領域を厳密に区別することはできないものである。そして、本発明では、この境界を厳密に決定するものではなく、その必要があるものでもない。
本発明の無方向性電磁鋼板は、鋼板の引張伸び0.1%における引張強さをσ、及び鋼板の引張伸び0.2%における引張強さをσとしたとき、σとσとの差(σ−σ)が40MPa〜200MPaの範囲である。σ−σが40MPa〜200MPaであることは、前述のように、初期硬化能が高められた鋼板であることを意味しており、この値が高いほど、高速回転するモータのコアに適用した場合の磁気特性の低下(モータ効率の低下)を抑制する効果が顕著になる。σ−σが40MPa未満では、初期硬化域での硬化挙動の変化が小さく、高速回転する高効率モータのコアに適用したとしても上記効果は発現しない。
σ−σは、上記効果をより得やすくする点で、45MPa以上が好ましく、50MPa以上がより好ましい。一方、この値を非常に大きくするには粒界への元素偏析が必要となるため粒界が脆化する傾向がある。このため、σ−σの上限は200MPa以下とする。σ−σの上限は170MPa以下が好ましく、120MPa以下がより好ましい。
なお、σおよびσは、JIS Z2241に準拠した引張試験を行い得られた応力-ひずみ曲線から読み取る。
本発明の無方向性電磁鋼板が、40MPa≦(σ−σ)≦200MPaの関係を満足するためには、例えば、Pの含有量(質量%)が0.010%〜0.150%である鋼板を仕上げ焼鈍するとき、後述する仕上げ焼鈍工程の冷却過程における80℃〜40℃に至るまでの間の冷却速度を5℃/秒以上とすることがよい。
その理由としては、定かではないが次のように考えられる。仕上げ焼鈍工程での冷却過程において、Pが上記の範囲で添加されている鋼板を、上記条件で冷却する場合、Pが粒界近傍に偏析する。粒界は変形時の転位発生源となることが知られており、粒界近傍にPが偏析することによって粒界から転位が発生するとき、粒界近傍領域で早期に硬化が起きるものと考えられる。その結果として、本発明の無方向性電磁鋼板は、Pの粒界偏析に伴って、鋼板の初期硬化能が大きくなる。
このように、Pの偏析は転位発生源となる粒界近傍領域での硬化を促進する効果を発揮すると考えられるが、一方で、CもPと同様に粒界に偏析することが知られており、Cの偏析はPが発揮する効果を打ち消してしまうものと思われる。
しかしながら、鋼板の温度が80℃から40℃に至るまでの間、5℃/秒以上の冷却速度で冷却することで、鋼中のPは粒界へ偏析されるものの、鋼中のCは粒界への偏析が抑制される。以上から、鋼板の初期硬化能が高められるのは、このような現象に関連していると推測される。
また、本発明の無方向性電磁鋼板は、(σ−σ)≧1000×P+30の関係を満足することが好ましい。この関係を満たす無方向性電磁鋼板であれば、粒界脆化の問題を回避した上で、過剰なPが粒内に残留することが無く、高速回転する高効率モータのコアに使用された場合の鉄損が低減され、磁気特性の低下抑制効果を十分に得ることができる。なお、PはPの含有量(質量%)である。
本発明の無方向性電磁鋼板が、(σ−σ)≧1000×P+30(PはPの含有量(質量%)を表す)の関係を満足するためには、例えば、Pの含有量(質量%)が0.010%〜0.150%である鋼板を仕上げ焼鈍するとき、後述する仕上げ焼鈍工程の冷却過程における鋼板の温度が80℃〜40℃に至るまでの間の冷却速度を5℃/秒以上とすることに加えて、仕上げ焼鈍工程の冷却過程における鋼板の温度が850℃から500℃になるまでの間の張力を4MPa以下とすることがよい。このように冷却することで、上記特定範囲で含有する鋼板は、Pの含有量の増加と共に(σ−σ)の値の上昇効果が大きくなる。
この理由としては、例えば、次のように考えられる。仕上げ焼鈍工程での冷却過程において、鋼板の温度が850℃から500℃になるまでの間、鋼板の圧延方向に対する張力を4MPa以下とすることで、Cのトラップサイトとなり得る残留ひずみが適度に導入される。それによって、Cの粒界への偏析が抑制され、過剰なPが粒内に残ることが無く、Pを上記範囲で含有することで得られる効果が顕著になると考えられる。一方で、鋼板の温度が850℃から500℃になるまでの間の張力が4MPa超の場合、鋼板に過剰な残留ひずみが導入されるため、鉄損が低減されない。
そして、仕上げ焼鈍工程の冷却過程における鋼板の温度が80℃〜40℃に至るまでの間の冷却速度を5℃/秒以上とすることで、前述の作用が得られ、Pの含有量が上記範囲内で増加すると、鋼板の初期硬化能も増加する。よって、上記理由により、Pの含有量の増加と共に、(σ−σ)が増加すると推測している。
上記関係を満たす無方向性電磁鋼板であれば、粒界脆化の問題を回避した上で、高速回転する高効率モータのコアに使用された場合の磁気特性の低下抑制効果を十分に得ることができる。
本発明の無方向性電磁鋼板の成分組成の詳細を説明する。
なお、鋼板の成分組成について、「%」は「質量%」である。
本発明の無方向性電磁鋼板は、質量%で、0.5%≦Si≦4.0%、0.2%≦Al≦2.0%、0.1%≦Mn≦3.0%、0.010%≦P≦0.150%、C≦0.005%、S≦0.010%、N≦0.005%、並びに、残部としてFeおよび不純物元素からなる。
(0.5%≦Si≦4.0%)
Siは鋼板の電気抵抗を高めて渦電流損を減少させ、鉄損を低減する作用がある。さらに、鋼板の集合組織を電磁鋼板に好ましいものとして磁束密度を向上させる。また鋼板の強度を高めるためにも利用される。
これらの効果を得るために、Siの含有量は、0.5%以上とする。Siの含有量は、1.5%以上であることが好ましく、2.0%以上であることがより好ましい。
Siの含有量が多すぎると、鋼板の飽和磁束密度が低下する。また、冷間圧延時の鋼板の割れが発生し易い。そのため、Siの含有量は4.0%以下とする。Siの含有量は3.8%以下であることが好ましく、3.6%以下であることがより好ましい。
ただし、Siを増加させても、初期硬化域での硬化挙動はそれほど大きくは変化しない。
(0.1%≦Al≦2.0%)
Alは、Siとほぼ同程度の鋼の電気抵抗を高める作用があり、渦電流損を低減して鉄損を低減させることができる。さらに、鋼板の集合組織を電磁鋼板に好ましいものとして磁束密度を向上させる。また鋼板の強度を高めるためにも利用される。
そのため、Alの含有量は0.1%以上とする。Alの含有量は0.15%以上であることが好ましく、0.2%以上であることがより好ましい。
一方、Alの含有量が多すぎると、鋼板の飽和磁束密度が低下する。そのため、Alの含有量は2.0%以下とする。Al含有量は1.5%以下であることが好ましく、1.2%以下であることがより好ましい。
ただし、Alを増加させても、初期硬化域での硬化挙動はそれほど大きくは変化しない。
(0.1%≦Mn≦2.0%)
MnはSiと同様に鋼の電気抵抗を高め、鉄損を低減する作用がある。さらに、鋼板の集合組織を電磁鋼板に好ましいものとして磁束密度を向上させる。しかも、Mnは鋼板の飽和磁束密度低下量が小さい点も有利である。また鋼板の強度を高めるためにも利用される。そのため、Mnの含有量は0.1%以上とする。Mnの含有量は0.2%以上であることが好ましく、0.5%以上であることがより好ましい。
Mnの含有量が多すぎると、合金コストが上昇するため、Mnの含有量は2.0%以下とする。Mnの含有量は1.8%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。ただし、Mnを増加させても、初期硬化域での硬化挙動はそれほど大きくは変化しない。
(0.010%≦P≦0.150%)
Pは鋼の磁束密度を低下させることなく強度を高める作用がある。また、Pは、前述のように、初期硬化挙動に関する初期硬化能を高めるために重要な元素である。このため、Pの含有量は、0.010%〜0.150%に限定する。
本発明の効果をより効果的に得る点で、Pの含有量は、好ましくは0.020%以上、さらに好ましくは0.030%以上である。他方、Pを過剰に含有させると鋼の靱性を損ない、鋼板に破断が生じやすくなる。そのため、Pの含有量は0.150%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.120%以下、さらに好ましくは0.100%以下である。
(C≦0.005%)
Cは、含有量が多いと、炭化物の析出量が増加することにより、鉄損に悪影響を及ぼすので少ないほどよい。したがって、Cの含有量は0.005%以下とすることがよい。
Cの含有量の下限は特に限定されないが、工業的な純化技術を考慮すると実用的にはCの含有量は0.0001%以上であり、製造コストも考慮すると0.0005%以上となる。
(S≦0.010%)
Sは、含有量が多いと、硫化物の増加により、鉄損に悪影響を及ぼすので少ないほどよい。したがって、Sの含有量は0.010%以下とすることがよい。
Sの含有量の下限は特に限定されないが、工業的な純化技術を考慮すると実用的にはSの含有量は0.0001%以上であり、製造コストも考慮すると0.0005%以上となる。
(N≦0.005%)
Nは、含有量が多いと、窒化物の増加により、鉄損に悪影響を及ぼすので少ないほどよい。したがって、Nの含有量としては0.005%以下とすることがよい。
Nの含有量の下限は特に限定されないが、工業的な純化技術を考慮すると実用的にはNの含有量は0.0001%以上であり、製造コストも考慮すると0.0005%以上となる。
(Feおよび不純物元素)
鋼板の残部は、Feおよび不純物元素である。さらにFeに代えて任意元素として、Sn、Cr、Cu、Ni、Ti、Nb、Ca、Mg、REMなどを、無方向性電磁鋼板において公知の範囲で含有することは本発明の効果を失わせるものではない。ここで、不純物元素とは、原材料に含まれる成分、または、製造の過程で混入する成分であって、意図的に鋼板に含有させたものではない成分を指す。
<無方向性電磁鋼板の製造方法>
次に、本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
本発明の電磁鋼板は、特にPが前述の範囲の量で添加されており、前述の通り、粒界に偏析したPの作用、及びCの粒界偏析が抑制される作用が本発明の特徴的な初期硬化能の向上を発現させる一因となっていると考えているが、単純にPを含有させただけでは初期硬化能の向上は十分に得られるものではない。初期硬化能が高められた無方向性電磁鋼板は、鋼成分に加えて、以下の製造方法によることで得ることが可能なものである。
なお、本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、本発明の無方向性電磁鋼板が有する初期硬化挙動を示す鋼板が得られるのであれば、その製造方法は、特に限定されるものでないことは言うまでもない。
本発明の無方向性電磁鋼板は、上記本発明の無方向性電磁鋼板の化学組成のスラブを加熱した後、熱間圧延する熱間圧延工程と、前記熱間圧延後の鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程と、前記焼鈍後の鋼板を冷間圧延する冷間圧延工程と、前記冷間圧延後の鋼板を仕上げ焼鈍する仕上げ焼鈍工程であって、仕上げ焼鈍工程における鋼板の温度が80℃から40℃になるまでの間、5℃/秒以上の冷却速度で冷却する仕上げ焼鈍工程と、を有する製造工程を経ることで得ることができる。
鋼板の温度が80℃から40℃になるまでの間の冷却速度は、透磁率の低下をより抑制する点で、8℃/秒以上とすることがより好ましい。一方、冷却速度の上限は特に限定されないが、例えば、生産性の点から、50℃/秒以下とすることがよい。
上記の冷却速度を得る方法としては、例えば、鋼板の温度が80℃になった時点で、鋼板を20℃の冷却水に浸漬するなどの方法が挙げられる。
また、過剰なPが粒内に残留することが無く、高速回転する高効率モータのコアに使用された場合の鉄損をより低減する点で、仕上げ焼鈍工程における鋼板の温度が850℃から500℃になるまでの間、4MPa以下(好ましくは、3MPa以下)の張力で冷却することがよい。張力の下限値としては、特に限定されないが、1MPa以上であることがよい。なお、この張力は、圧延方向に付加する張力を表す。
以下、上述の仕上げ焼鈍の冷却過程以外の製造条件について説明する。この製造条件については、本発明の効果を得るうえで特別な条件とする必要はなく、一般的に知られている条件を適用すれば良い。注意するとすれば、Pの粒界偏析について一般的に知られている製法を適用してこれを促進することは、本発明の効果を得る上で積極的に適用してもよい。
(熱間圧延工程)
熱間圧延工程は、例えば、上記の化学組成を有するスラブを加熱した後、熱間圧延する工程である。具体的には、上記の化学組成を有する鋼を、連続鋳造法又は鋼塊を分塊圧延する方法等の一般的な方法により得られたスラブとし、加熱炉に装入して熱間圧延を施す工程である。なお、スラブ温度が高い場合には加熱炉に装入しないで熱間圧延を施してもよい。この工程によって、熱間圧延板が得られる。
熱間圧延を施すときのスラブ加熱温度は特に限定されるものではないが、コストおよび熱間圧延性の観点から1000℃〜1300℃とすることが好ましい。スラブ加熱温度は、より好ましくは1050℃〜1250℃である。
熱間圧延を施すときの各条件は特に限定するものではないが、例えば、仕上げ温度は800℃〜1100℃、巻き取り温度は500℃〜750℃で行うことがよい。
(熱延板焼鈍工程)
熱延板焼鈍工程は、熱間圧延工程後の鋼板(熱間圧延板)を焼鈍する工程である。熱延板焼鈍は、箱焼鈍および連続焼鈍のいずれの方法で実施してもよい。
熱延板焼鈍を施す条件は特に限定されないが、例えば、設備への負荷や製造コストの観点から、焼鈍温度は800℃〜1250℃(好ましくは900℃〜1100℃)とし、焼鈍時間は1秒〜2時間(好ましくは20秒〜1時間)とすることがよい。
なお、必要に応じて、焼鈍する前の鋼板(熱間圧延板)、又は熱間圧延板を焼鈍した後の鋼板(焼鈍鋼板)を酸洗する酸洗工程を設けてもよい。
(冷間圧延工程)
冷間圧延工程は、熱延板焼鈍工程で得た鋼板(焼鈍鋼板)を、冷間圧延する工程である。冷間圧延工程では、焼鈍鋼板を1回の冷間圧延により、所定の板厚の冷間圧延板としてもよく、又は、焼鈍鋼板に中間焼鈍を介して2回以上の冷間圧延により、所定の板厚の冷間圧延板としてもよい。最終の冷間圧延における圧下率(最終冷間圧下率)は78%以上とすることがよい。また、冷間圧延終了後の冷間圧延板の板厚は、目的とする板厚にすればよいが、例えば、0.15mm〜0.50mmの範囲とするのがよい。
(仕上げ焼鈍工程)
仕上げ焼鈍工程は、冷間圧延工程後の鋼板(冷間圧延板)を仕上げ焼鈍する工程である。仕上げ焼鈍工程における諸条件は特に規定されるものではないが、設備への負荷や製造コストの観点から、仕上げ焼鈍温度は850℃〜1100℃(好ましくは850℃〜1050℃)、仕上げ焼鈍時間は5秒〜5時間(好ましくは10秒〜3時間)とすることが好ましい。
(その他の工程)
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、例えば、必要に応じて、仕上げ焼鈍工程後の鋼板(無方向性電磁鋼板)の表面に絶縁膜を設ける絶縁膜形成工程を有していてもよい。絶縁膜は、例えば、有機成分のみ、無機成分のみ、又は有機成分と無機成分との混合物からなる絶縁被膜が挙げられる。また、絶縁膜は、加熱・加圧することにより接着能を発揮する絶縁膜であってもよい。接着能を発揮する絶縁膜の材料としては、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、又はメラミン樹脂などが挙げられる。
以上から、本発明の製造方法によって得られた無方向性電磁鋼板は、初期硬化能が高いため、高速回転する高効率モータのコアとして使用された場合であっても、磁気特性の低下が抑制された無方向性電磁鋼板が得られる。
したがって、本発明の無方向性電磁鋼板は、モータコアの材料として好適である。具体的には、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等に搭載される駆動モータ;エアコンや冷蔵庫などのコンプレッサーモータ;二輪車および家庭用コージェネレーションシステムに搭載される小型発電機;などの高速回転(例えば、10000rpm)する高効率モータのコアの材料として好適である。
<モータコア>
次に、本発明の無方向性電磁鋼板を使用したモータコアの一例について図を参照して説明する。
図2は、本発明のモータコアの構造の一例を示す模式図である。図2に示すモータコア100は、無方向性電磁鋼板の打ち抜き板11を複数枚積層して一体化した積層体21として形成されている。打ち抜き板11は、図2に示すように、永久磁石を埋め込むため矩形の切欠き13が4か所形成されている。なお、図2に示す切欠き13は、打ち抜き板11に4か所形成されているが、これに限定されるものではない。切欠き13に永久磁石を埋め込んだときに、隣り合った永久磁石が反対の磁極を持つようにするために、切欠き13は偶数か所設けられていればよい。
図3は、本発明のモータコアの構造の他の例を示す模式図である。図3に示すモータコア120は、無方向性電磁鋼板の打ち抜き板15を複数枚積層して一体化した積層体23として形成されている。打ち抜き板15は、図3に示すように、円弧上のヨーク部19と、ヨーク部19の内周壁面から径方向内側に向かって突出しているティース部17とを有している。ヨーク部19とティース部17とは打ち抜き板15にそれぞれ3か所形成されている。なお、図3に示すヨーク部19及びティース部17は、打ち抜き板11に3か所形成されているが、これに限定されるものではない。ヨーク部19及びティース部17は、目的とする個数に応じて設ければよい。図3に示すモータコア120は、積層体23のティース部17に銅線コイルを巻きつけて使用され得る。
なお、図2、図3に示すモータコア100は、本発明のモータコアの構造を示す一例として説明したものであり、本発明のモータコアは、これに限定されるわけではない。
モータコアを製造する方法の一例について、符号は省略して説明する。
モータコアを製造する方法としては、特に限定されず、通常工業的に採用されている製造方法によって製造すればよい。具体的には、例えば、まず、本発明の無方向性電磁鋼板を所定の形状に打ち抜き、所定の枚数の打ち抜き板を作製する。打ち抜き板は、所定の形状に打ち抜かれるときに、積層して一体化するための凹凸部が形成される。
次に、所定の形状に打ち抜かれた打ち抜き板は、所定の枚数の打ち抜き板が積層され、かしめ加工される。かしめ加工により、各々の打ち抜き板に形成された凹凸部が機械的に相互に嵌め合わされて固定され、打ち抜き板が一体化された積層体が得られる。この得られた積層体をモータコアとする。又は、必要に応じて、この積層体に焼鈍を施した後、モータコアとしてもよい。
本発明の無方向性電磁鋼板を用いたモータコアは、回転数10000rpm以上(好ましくは15000rpm以上)で回転するモータ(高効率モータ)に使用されるのがよい。この高効率モータの回転数の上限は特に限定されないが、高効率モータの生産性等の点から、17000rpm以下であることがよい。
なお、本発明は、上記に限定されるものではない。上記は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を例示して、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
表1に示す化学組成を有するスラブを準備し、このスラブを1150℃で加熱する。その後、820℃で仕上げ熱間圧延を行い、650℃で巻き取り、厚さが2.0mmの熱間圧延鋼板を得る。熱間圧延鋼板の酸洗後、熱延板焼鈍を行い、1回の冷間圧延により板厚0.27mmの冷間圧延板を得る。冷間圧延板に、1000℃で30秒間保持して仕上げ焼鈍を行い、仕上げ焼鈍終了後の鋼板の温度が850℃から500℃になるまでの間の張力、及び仕上げ焼鈍終了後の鋼板の温度が80℃から40℃になるまでの間の冷却速度を表1に示す条件で冷却を行う。
以上の工程により、種々の無方向性電磁鋼板を得る。種々の無方向性電磁鋼板について、後述する評価を行う。
なお、表1において、「FA工程」は「仕上げ焼鈍工程」を示す。
<評価>
得られた各例の無方向性電磁鋼板について、下記に示す各評価を行う。
(磁気特性)
単板特性及び引張り歪0.2%付与時の特性の各条件において、下記物性を測定して磁気特性を評価する。
・単板特性(無負荷):単板磁気特性試験法(JIS C 2556)の条件で測定する。
・引張り歪0.2%付与時の特性:単板特性での評価に用いた装置と同じ装置を使用し、引張り変形を付加(引張り変形は励磁方向に平行な向きに伸び0.2%を付加)した状態で磁気特性を測定する。
・磁束密度:B50(T)(磁化力5000A/mにおける磁束密度)
・鉄損:W10/800(最大磁束密度1.0T、周波数800Hzの条件下での鉄損)
(機械的特性)
・σ、σ、及びσ−σ
無方向性電磁鋼板の伸び0.1%における引張強さ(σ)、及び、伸び0.2%における引張強さ(σ)を既述の方法により測定する。そして、得られた各値から、σ−σを求める。なお、単位は、MPaである。
・ビッカース硬さ
各例で得られた無方向性電磁鋼板について、JIS Z2244に準拠した方法で測定する。測定する面は鋼板の板面に垂直な面とし、測定する位置は、板厚中心の位置である。
表2に示す評価結果から、発明例の鋼板は、比較例の鋼板よりも、単板特性での磁束密度と引張り歪0.2%付与時の特性での磁束密度との差が小さいことがわかる。また、発明例の鋼板は、比較例の鋼板よりも、単板特性での鉄損と引張り歪0.2%付与時の特性での鉄損との差が小さいことがわかる。これにより、発明例の鋼板は、比較例の鋼板と比べて、磁気特性の低下が抑制されることがわかる。なお、鋼板22は、Pの含有量が0.150%を超えているが、この鋼板は脆化のため、生産性が低下する。また、発明例の鋼板と比べて、磁気特性が低下することがわかる。
(モータ効率の評価)
種々の無方向性電磁鋼板から、圧延方向のサイズが300mm、圧延方向に直交する方向のサイズが60mmの鋼板を30枚打ち抜く。その後、30枚の鋼板を互いに積層して、かしめ加工により積層体を得る。続いて、この積層体を750℃、2時間の条件で焼鈍を行う。そして、この焼鈍後の積層体をモータコアとする。
次に、このモータコアをインバータ制御で駆動される4極の永久磁石埋め込み式同期モータに組み込み、モータ効率の評価を行う。モータ効率は、回転数5000rpmで回転させた場合、10000rpmで回転させた場合、及び、回転数15000rpm回転で回転させた場合について評価する。
なお、モータ効率は、下記式で表される入力電気エネルギーに対する出力電気エネルギーの比で算出される値である。
式:モータ効率=(出力電気エネルギー/入力電気エネルギー)×100
表3に示す評価結果から、実施例の鋼板は、比較例の鋼板に比べ、高速回転する高効率モータに適用した場合でも、モータ効率が良好であることがわかる。
11、15 打ち抜き板 13 切欠き 17 ティース部 19 ヨーク部 21、23積層体 100、120 モータコア

Claims (5)

  1. 質量%で
    0.5%≦Si≦4.0%、
    0.2%≦Al≦2.0%、
    0.1%≦Mn≦3.0%、
    0.010%≦P≦0.150%、
    C≦0.005%、
    S≦0.010%、
    N≦0.005%、
    並びに、残部としてFeおよび不純物元素からなる
    鋼板の伸び0.1%における引張強さをσA、及び鋼板の伸び0.2%における引張強さをσとしたとき、前記σと前記σとの差(σ−σ)が、40MPa≦(σ−σ)≦200MPaである無方向性電磁鋼板。
  2. 前記Pの含有量をP(質量%)としたとき、前記σと前記σとの差、及び前記Pの関係が、(σ−σ)≧1000×P+30を満足する請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の無方向性電磁鋼板を使用したモータコアであって、回転数10000rpm以上で回転するモータに使用されるモータコア。
  4. 請求項1に記載の化学組成を有するスラブを加熱した後、熱間圧延する熱間圧延工程と、
    前記熱間圧延後の鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程と、
    前記焼鈍後の鋼板を冷間圧延する冷間圧延工程と、
    前記冷間圧延後の鋼板を仕上げ焼鈍する仕上げ焼鈍工程であって、仕上げ焼鈍工程における鋼板の温度が80℃から40℃になるまでの間、5℃/秒以上の冷却速度で冷却する仕上げ焼鈍工程と、
    を有する請求項1または請求項2に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 前記仕上げ焼鈍工程における鋼板の温度が850℃から500℃になるまでの間、4MPa以下の張力で冷却する請求項4に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
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