JP2004083293A - フラーレンを用いたカーボンナノチューブの製造方法 - Google Patents
フラーレンを用いたカーボンナノチューブの製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004083293A JP2004083293A JP2002242321A JP2002242321A JP2004083293A JP 2004083293 A JP2004083293 A JP 2004083293A JP 2002242321 A JP2002242321 A JP 2002242321A JP 2002242321 A JP2002242321 A JP 2002242321A JP 2004083293 A JP2004083293 A JP 2004083293A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- carbon
- carbon nanotubes
- fullerene
- carbon nanotube
- producing
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Classifications
-
- B—PERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
- B82—NANOTECHNOLOGY
- B82Y—SPECIFIC USES OR APPLICATIONS OF NANOSTRUCTURES; MEASUREMENT OR ANALYSIS OF NANOSTRUCTURES; MANUFACTURE OR TREATMENT OF NANOSTRUCTURES
- B82Y30/00—Nanotechnology for materials or surface science, e.g. nanocomposites
Abstract
【課題】微細直径でカイラリティーが良好に制御されたカーボンナノチューブを製造するための方法を提供する。
【解決手段】触媒金属を含む層に接してフラーレンを配置し、それを熱処理して、前記層中の触媒金属と、フラーレンを構成するカーボンの一部とを反応させて、カーボンナノチューブの成長のための核を形成させ、その核からカーボンナノチューブを成長させる、カーボンナノチューブの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】触媒金属を含む層に接してフラーレンを配置し、それを熱処理して、前記層中の触媒金属と、フラーレンを構成するカーボンの一部とを反応させて、カーボンナノチューブの成長のための核を形成させ、その核からカーボンナノチューブを成長させる、カーボンナノチューブの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はカーボンナノチューブの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブは、その独特の特性から最近注目を浴びている新しい炭素系材料である。カーボンナノチューブの製造方法としては、アーク放電法、レーザ蒸発法、熱CVD(ケミカルベーパーデポジション)法、プラズマCVD法などがある。アーク放電法、レーザ蒸発法により製造されるカーボンナノチューブには、グラフェンシートが1層のみの単層カーボンナノチューブ(SWNT)(Single Wall Nanotube)と、複数のグラフェンシートからなる多層カーボンナノチューブ(MWNT)(Multi Wall Nanotube)が存在する。一般に、熱CVD又はプラズマCVD法ではMWNTが製造できる。SWNTにおいては炭素原子同士がsp2+という強い結合で6員環状に組み上げられたグラフェンシート1枚が筒状に巻かれた構造をしていて、チューブの先端は5員環を含むいくつかの6員環で閉じられている。チューブの直径は最小で0.4ナノメートル、長さは数100μmに達する。また、カーボンナノチューブは炭素原子が自己組織的に成長したナノ構造体であるため、寸法ゆらぎは極めて少ないという特徴がある。さらに、カーボンナノチューブはグラフェンの螺旋構造(ねじれ方、すなわち、「カイラリティー」)によって、半導体的伝導性と金属的伝導性が現れることが示されている。図1はカーボンナノチューブのそれぞれのカイラリティーを表わす模式図である。図1(a)は「アームチェア型」と呼ばれ、金属的電気伝導性を示し、図1(b)は「ジグザグ型」、図1(c)は「カイラル型」と呼ばれ、金属と半導体の両方の電気伝導性を示す。アームチェア型のような金属的な電気伝導度を持つカーボンナノチューブの場合、格子欠陥などがないと、無散乱(バリスティック)伝導を示し、抵抗はその長さに依存しない量子抵抗値(6.5Ω)を示すことが知られている。
【0003】
しかし、アーク放電法、レーザ蒸発法で成長するSWNTは煤状で大量の不純物を含有しているため、高純度化が困難であり、パターニングされた基板への成長は実際上不可能である。熱CVDやプラズマCVD法ではカーボンナノチューブの形成のための触媒として遷移金属類(ニッケル、コバルト、鉄など)の蒸着膜、スパッタ膜又は超微粒子などが用いられている。これらの触媒上にカーボンナノチューブを成長させると、チューブの直径は触媒金属薄膜の粒界、膜厚などによって影響を受ける。このため、アニールによる触媒金属の微粒子化により、得られるカーボンナノチューブの直径の制御を行っていた。このような方法による微粒子化プロセスにおいては、微粒子の直径は数nm程度が限界である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、微細直径でカイラリティーが良好に制御されたカーボンナノチューブを製造するための方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの態様によると、触媒金属を含む層に接してフラーレンを配置し、それを熱処理して、前記層中の触媒金属と、フラーレンを構成するカーボンの一部とを反応させて、カーボンナノチューブの成長のための核を形成させ、その核からカーボンナノチューブを成長させる、カーボンナノチューブの製造方法が提供される。
上記方法によると、フラーレンに基づく核からカーボンナノチューブを成長させるため、フラーレンの直径及び炭素配列にしたがった、微細でカイラリティーのそろったカーボンナノチューブを製造することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
図2(図2(a)〜(c))には、本発明のカーボンナノチューブ製造方法の1態様を示す工程図が示されている。図2(a)において、金属触媒を含む層に接してフラーレンが配置される。図2(b)において、金属触媒を含む層に接して配置されたフラーレンを熱処理して、層中の触媒金属と、フラーレンを構成するカーボンの一部とを反応させて、カーボンナノチューブの成長のための核を形成させる。図(c)において、カーボンナノチューブの製造に適切な方法によりカーボンナノチューブを成長させる。
図3(図3(a)〜(d))には、本発明のカーボンナノチューブ製造方法の別態様を示す工程図が示されている。図3(a)において、金属触媒を含む層に接してフラーレンが配置される。図3(b)において、金属触媒を含む層に接して配置されたフラーレンを熱処理して、層中の触媒金属と、フラーレンを構成するカーボンの一部とを反応させて、カーボンナノチューブの成長のための核を形成させる。図3(c)において、カーボンナノチューブの成長のための核の上に触媒金属を含む層をさらに配置する。図3(d)において、カーボンナノチューブの製造に適切な方法によりカーボンナノチューブを成長させる。
【0007】
カーボンナノチューブの製造について、以下にさらに詳細に説明する。まず、触媒金属を含む層を用意する。この層は、例えば、触媒を支持するための基材(支持基材)として、シリコン(Si)基板、石英、アルミナ、ガリウムヒ素(GaAs)基板などの平滑な基材を用い、この基材上に触媒金属からなる材料又は触媒金属を含む材料の層を設けることにより得ることができる。触媒金属を含む層は、触媒金属とともに炭素を含むこともできる。触媒金属を含む層が炭素を含む場合には、カーボンナノチューブの成長のための炭素源材料として機能することができる。
【0008】
触媒金属としては、ニッケル、コバルト、鉄、パラジウム又はそれらの合金或いはそれらの混合物を用いることができる。触媒金属の層は、室温で1×107トルの条件下での真空蒸着により支持基材上に形成される。
触媒金属及びフラーレンの不必要な部分には、あらかじめレジストを設けておき、フラーレンの配置後に除去して、パターン状にカーボンナノチューブを形成することも考えられる。
【0009】
触媒金属を含む層を設けた基材上にフラーレンを配置する。フラーレンは製造するカーボンナノチューブの直径に応じて、炭素数60、84、240のフラーレンなどが適宜選択される。例えば、炭素数60のフラーレンの直径は約7Åであり、これを核として、この直径のカーボンナノチューブを成長させることが可能となる。フラーレンは触媒金属との親和性が高いので、触媒金属を含む層の上にフラーレンを配置して、これを800℃〜1000℃で熱処理すると、触媒金属とフラーレンは反応して、フラーレンの一部が触媒金属に取り込まれる。ここで、フラーレンは5員環炭素構造と6員環炭素構造の両方を含む炭素構造体であるが、5員環構造は6員環構造よりもエネルギー的に安定性が低いので、5員環炭素構造が切れ、フラーレンの底部が全て6員環構造となった段階で半球状の核を触媒金属上で形成する。このような核に基づいて後述のとおりにカーボンナノチューブを形成すると、アームチェア型のカイラリティーのナノチューブが得られる。また、フラーレンは、ファンデルワールス力により結合し、一層の場合には約3Åの間隔で三角格子を形成して、周期的に配列する。このため、カーボンナノチューブは周期的に配列して成長する。
【0010】
次に、触媒金属上で形成された核に基づいてカーボンナノチューブの成長を行う。カーボンナノチューブの成長には、熱CVD法又はプラズマCVD法などのCVD法を用いることができる。以下において、プラズマCVDを用いたカーボンナノチューブの成長方法について図4を参照しながら説明する。プラズマCVD装置(反応容器)10内に、フラーレンによる核を触媒上に形成した基材1をセットし、加熱装置11で基材1の温度を400〜600℃程度にする。この装置10内で反応性ガス(炭素源材料)供給装置12からの反応性ガスのプラズマ(P)を発生させる。プラズマ(P)は、反応性ガスを充填したCVD装置10を、ポンプ13により1〜10トルの圧力に保持し、マイクロ波発生装置14によりマイクロ波(M)をCVD装置10内で照射することにより発生させることができる。マイクロ波(M)の周波数は、通常、2.45GHzであり、そのマイクロ波の出力は0.5〜6KW程度で十分である。基材1に印加する電圧は0〜500Vであり、通常、200V程度である。基材に対して垂直方向の電場の存在下に、CVD法でナノチューブを成長させると、基材1に対して垂直に配向したナノチューブを得ることが可能である。
【0011】
上記の炭素源材料としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、軽油などの炭化水素が挙げられる。プラズマ発生源となる反応性ガスはこのような炭化水素と水素との混合物、さらには、アルゴンなどのキャリアを加えた混合物として使用される。メタンと水素の混合物からなる反応性ガスの供給速度は、通常、水素が60〜90sccmであり、メタンが10〜40sccmである。
【0012】
本発明をその様々な実施形態とともに付記として列挙すれば、以下のとおりである。
(付記1) 触媒金属を含む層に接してフラーレンを配置し、それを熱処理して、前記層中の触媒金属と、フラーレンを構成するカーボンの一部とを反応させて、カーボンナノチューブの成長のための核を形成させ、その核からカーボンナノチューブを成長させる、カーボンナノチューブの製造方法。
(付記2) 触媒金属を含む層は触媒金属とともに炭素を含む、付記1記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(付記3) 触媒金属を含む層は支持基材上に形成される、付記1又は2記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(付記4) 前記カーボンナノチューブの成長の核の形成の後に、核の上に触媒金属を含む層をさらに配置する、付記1〜3のいずれかに記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(付記5) 前記触媒金属はニッケル、コバルト、鉄、パラジウム及びそれらの合金並びにそれらの混合物からなる群より選ばれる遷移金属である、付記1〜4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ製造方法。
(付記6) 前記フラーレンの直径を制御することによりカーボンナノチューブの直径を制御する、カーボンナノチューブの製造方法。
(付記7) フラーレンは炭素数が60であるフラーレンであり、この直径と同一の直径のカーボンナノチューブを成長させる、付記6記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(付記8) 形成される核の炭素配列に基づいてカーボンナノチューブのカイラリティーを制御する、付記1〜6のいずれかに記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(付記9) 前記カイラリティーはアームチェア型である、付記7記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(付記10) フラーレンが周期的に配列しており、そのため、カーボンナノチューブが周期的に配列して成長する、付記1〜7のいずれか1項記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【0013】
【発明の効果】
本発明の方法によると、フラーレンに基づく核からカーボンナノチューブを成長させるため、フラーレンの直径及び炭素配列にしたがった、微細でカイラリティーのそろったカーボンナノチューブを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】カーボンナノチューブのそれぞれのカイラリティーを表わす模式図である。
【図2】本発明のカーボンナノチューブ製造方法の1態様を示す工程図である。
【図3】本発明のカーボンナノチューブ製造方法の別態様を示す工程図である。
【図4】プラズマCVD装置の模式図を示す。
【符号の説明】
1…基材
10…プラズマCVD装置
11…加熱装置
12…反応性ガス(炭素源材料)供給装置
13…ポンプ
14…マイクロ波発生装置
【発明の属する技術分野】
本発明はカーボンナノチューブの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブは、その独特の特性から最近注目を浴びている新しい炭素系材料である。カーボンナノチューブの製造方法としては、アーク放電法、レーザ蒸発法、熱CVD(ケミカルベーパーデポジション)法、プラズマCVD法などがある。アーク放電法、レーザ蒸発法により製造されるカーボンナノチューブには、グラフェンシートが1層のみの単層カーボンナノチューブ(SWNT)(Single Wall Nanotube)と、複数のグラフェンシートからなる多層カーボンナノチューブ(MWNT)(Multi Wall Nanotube)が存在する。一般に、熱CVD又はプラズマCVD法ではMWNTが製造できる。SWNTにおいては炭素原子同士がsp2+という強い結合で6員環状に組み上げられたグラフェンシート1枚が筒状に巻かれた構造をしていて、チューブの先端は5員環を含むいくつかの6員環で閉じられている。チューブの直径は最小で0.4ナノメートル、長さは数100μmに達する。また、カーボンナノチューブは炭素原子が自己組織的に成長したナノ構造体であるため、寸法ゆらぎは極めて少ないという特徴がある。さらに、カーボンナノチューブはグラフェンの螺旋構造(ねじれ方、すなわち、「カイラリティー」)によって、半導体的伝導性と金属的伝導性が現れることが示されている。図1はカーボンナノチューブのそれぞれのカイラリティーを表わす模式図である。図1(a)は「アームチェア型」と呼ばれ、金属的電気伝導性を示し、図1(b)は「ジグザグ型」、図1(c)は「カイラル型」と呼ばれ、金属と半導体の両方の電気伝導性を示す。アームチェア型のような金属的な電気伝導度を持つカーボンナノチューブの場合、格子欠陥などがないと、無散乱(バリスティック)伝導を示し、抵抗はその長さに依存しない量子抵抗値(6.5Ω)を示すことが知られている。
【0003】
しかし、アーク放電法、レーザ蒸発法で成長するSWNTは煤状で大量の不純物を含有しているため、高純度化が困難であり、パターニングされた基板への成長は実際上不可能である。熱CVDやプラズマCVD法ではカーボンナノチューブの形成のための触媒として遷移金属類(ニッケル、コバルト、鉄など)の蒸着膜、スパッタ膜又は超微粒子などが用いられている。これらの触媒上にカーボンナノチューブを成長させると、チューブの直径は触媒金属薄膜の粒界、膜厚などによって影響を受ける。このため、アニールによる触媒金属の微粒子化により、得られるカーボンナノチューブの直径の制御を行っていた。このような方法による微粒子化プロセスにおいては、微粒子の直径は数nm程度が限界である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、微細直径でカイラリティーが良好に制御されたカーボンナノチューブを製造するための方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの態様によると、触媒金属を含む層に接してフラーレンを配置し、それを熱処理して、前記層中の触媒金属と、フラーレンを構成するカーボンの一部とを反応させて、カーボンナノチューブの成長のための核を形成させ、その核からカーボンナノチューブを成長させる、カーボンナノチューブの製造方法が提供される。
上記方法によると、フラーレンに基づく核からカーボンナノチューブを成長させるため、フラーレンの直径及び炭素配列にしたがった、微細でカイラリティーのそろったカーボンナノチューブを製造することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
図2(図2(a)〜(c))には、本発明のカーボンナノチューブ製造方法の1態様を示す工程図が示されている。図2(a)において、金属触媒を含む層に接してフラーレンが配置される。図2(b)において、金属触媒を含む層に接して配置されたフラーレンを熱処理して、層中の触媒金属と、フラーレンを構成するカーボンの一部とを反応させて、カーボンナノチューブの成長のための核を形成させる。図(c)において、カーボンナノチューブの製造に適切な方法によりカーボンナノチューブを成長させる。
図3(図3(a)〜(d))には、本発明のカーボンナノチューブ製造方法の別態様を示す工程図が示されている。図3(a)において、金属触媒を含む層に接してフラーレンが配置される。図3(b)において、金属触媒を含む層に接して配置されたフラーレンを熱処理して、層中の触媒金属と、フラーレンを構成するカーボンの一部とを反応させて、カーボンナノチューブの成長のための核を形成させる。図3(c)において、カーボンナノチューブの成長のための核の上に触媒金属を含む層をさらに配置する。図3(d)において、カーボンナノチューブの製造に適切な方法によりカーボンナノチューブを成長させる。
【0007】
カーボンナノチューブの製造について、以下にさらに詳細に説明する。まず、触媒金属を含む層を用意する。この層は、例えば、触媒を支持するための基材(支持基材)として、シリコン(Si)基板、石英、アルミナ、ガリウムヒ素(GaAs)基板などの平滑な基材を用い、この基材上に触媒金属からなる材料又は触媒金属を含む材料の層を設けることにより得ることができる。触媒金属を含む層は、触媒金属とともに炭素を含むこともできる。触媒金属を含む層が炭素を含む場合には、カーボンナノチューブの成長のための炭素源材料として機能することができる。
【0008】
触媒金属としては、ニッケル、コバルト、鉄、パラジウム又はそれらの合金或いはそれらの混合物を用いることができる。触媒金属の層は、室温で1×107トルの条件下での真空蒸着により支持基材上に形成される。
触媒金属及びフラーレンの不必要な部分には、あらかじめレジストを設けておき、フラーレンの配置後に除去して、パターン状にカーボンナノチューブを形成することも考えられる。
【0009】
触媒金属を含む層を設けた基材上にフラーレンを配置する。フラーレンは製造するカーボンナノチューブの直径に応じて、炭素数60、84、240のフラーレンなどが適宜選択される。例えば、炭素数60のフラーレンの直径は約7Åであり、これを核として、この直径のカーボンナノチューブを成長させることが可能となる。フラーレンは触媒金属との親和性が高いので、触媒金属を含む層の上にフラーレンを配置して、これを800℃〜1000℃で熱処理すると、触媒金属とフラーレンは反応して、フラーレンの一部が触媒金属に取り込まれる。ここで、フラーレンは5員環炭素構造と6員環炭素構造の両方を含む炭素構造体であるが、5員環構造は6員環構造よりもエネルギー的に安定性が低いので、5員環炭素構造が切れ、フラーレンの底部が全て6員環構造となった段階で半球状の核を触媒金属上で形成する。このような核に基づいて後述のとおりにカーボンナノチューブを形成すると、アームチェア型のカイラリティーのナノチューブが得られる。また、フラーレンは、ファンデルワールス力により結合し、一層の場合には約3Åの間隔で三角格子を形成して、周期的に配列する。このため、カーボンナノチューブは周期的に配列して成長する。
【0010】
次に、触媒金属上で形成された核に基づいてカーボンナノチューブの成長を行う。カーボンナノチューブの成長には、熱CVD法又はプラズマCVD法などのCVD法を用いることができる。以下において、プラズマCVDを用いたカーボンナノチューブの成長方法について図4を参照しながら説明する。プラズマCVD装置(反応容器)10内に、フラーレンによる核を触媒上に形成した基材1をセットし、加熱装置11で基材1の温度を400〜600℃程度にする。この装置10内で反応性ガス(炭素源材料)供給装置12からの反応性ガスのプラズマ(P)を発生させる。プラズマ(P)は、反応性ガスを充填したCVD装置10を、ポンプ13により1〜10トルの圧力に保持し、マイクロ波発生装置14によりマイクロ波(M)をCVD装置10内で照射することにより発生させることができる。マイクロ波(M)の周波数は、通常、2.45GHzであり、そのマイクロ波の出力は0.5〜6KW程度で十分である。基材1に印加する電圧は0〜500Vであり、通常、200V程度である。基材に対して垂直方向の電場の存在下に、CVD法でナノチューブを成長させると、基材1に対して垂直に配向したナノチューブを得ることが可能である。
【0011】
上記の炭素源材料としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、軽油などの炭化水素が挙げられる。プラズマ発生源となる反応性ガスはこのような炭化水素と水素との混合物、さらには、アルゴンなどのキャリアを加えた混合物として使用される。メタンと水素の混合物からなる反応性ガスの供給速度は、通常、水素が60〜90sccmであり、メタンが10〜40sccmである。
【0012】
本発明をその様々な実施形態とともに付記として列挙すれば、以下のとおりである。
(付記1) 触媒金属を含む層に接してフラーレンを配置し、それを熱処理して、前記層中の触媒金属と、フラーレンを構成するカーボンの一部とを反応させて、カーボンナノチューブの成長のための核を形成させ、その核からカーボンナノチューブを成長させる、カーボンナノチューブの製造方法。
(付記2) 触媒金属を含む層は触媒金属とともに炭素を含む、付記1記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(付記3) 触媒金属を含む層は支持基材上に形成される、付記1又は2記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(付記4) 前記カーボンナノチューブの成長の核の形成の後に、核の上に触媒金属を含む層をさらに配置する、付記1〜3のいずれかに記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(付記5) 前記触媒金属はニッケル、コバルト、鉄、パラジウム及びそれらの合金並びにそれらの混合物からなる群より選ばれる遷移金属である、付記1〜4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ製造方法。
(付記6) 前記フラーレンの直径を制御することによりカーボンナノチューブの直径を制御する、カーボンナノチューブの製造方法。
(付記7) フラーレンは炭素数が60であるフラーレンであり、この直径と同一の直径のカーボンナノチューブを成長させる、付記6記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(付記8) 形成される核の炭素配列に基づいてカーボンナノチューブのカイラリティーを制御する、付記1〜6のいずれかに記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(付記9) 前記カイラリティーはアームチェア型である、付記7記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(付記10) フラーレンが周期的に配列しており、そのため、カーボンナノチューブが周期的に配列して成長する、付記1〜7のいずれか1項記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【0013】
【発明の効果】
本発明の方法によると、フラーレンに基づく核からカーボンナノチューブを成長させるため、フラーレンの直径及び炭素配列にしたがった、微細でカイラリティーのそろったカーボンナノチューブを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】カーボンナノチューブのそれぞれのカイラリティーを表わす模式図である。
【図2】本発明のカーボンナノチューブ製造方法の1態様を示す工程図である。
【図3】本発明のカーボンナノチューブ製造方法の別態様を示す工程図である。
【図4】プラズマCVD装置の模式図を示す。
【符号の説明】
1…基材
10…プラズマCVD装置
11…加熱装置
12…反応性ガス(炭素源材料)供給装置
13…ポンプ
14…マイクロ波発生装置
Claims (6)
- 触媒金属を含む層に接してフラーレンを配置し、それを熱処理して、前記層中の触媒金属と、フラーレンを構成するカーボンの一部とを反応させて、カーボンナノチューブの成長のための核を形成させ、その核からカーボンナノチューブを成長させる、カーボンナノチューブの製造方法。
- 前記カーボンナノチューブの成長の核の形成の後に、核の上に触媒金属を含む層をさらに配置する、請求項1記載のカーボンナノチューブの製造方法。
- 前記触媒金属はニッケル、コバルト、鉄、パラジウム及びそれらの合金並びにそれらの混合物からなる群より選ばれる遷移金属である、請求項1又は2記載のカーボンナノチューブ製造方法。
- 前記フラーレンの直径を制御することによりカーボンナノチューブの直径を制御する、請求項1〜3のいずれか1項記載のカーボンナノチューブの製造方法。
- 形成される核の炭素配列に基づいてカーボンナノチューブのカイラリティーを制御する、請求項1〜4のいずれか1項記載のカーボンナノチューブの製造方法。
- フラーレンが周期的に配列しており、そのため、カーボンナノチューブが周期的に配列して成長する、請求項1〜5のいずれか1項記載のカーボンナノチューブの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002242321A JP2004083293A (ja) | 2002-08-22 | 2002-08-22 | フラーレンを用いたカーボンナノチューブの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002242321A JP2004083293A (ja) | 2002-08-22 | 2002-08-22 | フラーレンを用いたカーボンナノチューブの製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004083293A true JP2004083293A (ja) | 2004-03-18 |
Family
ID=32051436
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002242321A Withdrawn JP2004083293A (ja) | 2002-08-22 | 2002-08-22 | フラーレンを用いたカーボンナノチューブの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004083293A (ja) |
Cited By (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100745734B1 (ko) | 2005-12-13 | 2007-08-02 | 삼성에스디아이 주식회사 | 탄소나노튜브의 형성방법 및 이를 이용한 전계방출소자의제조방법 |
EP1871934A1 (en) * | 2005-03-29 | 2008-01-02 | Hyperion Catalysis International, Inc. | Method for preparing single walled carbon nanotubes from a metal layer |
JP2008037670A (ja) * | 2006-08-02 | 2008-02-21 | Fujitsu Ltd | カーボンナノチューブの製造方法 |
EP2001794A2 (en) * | 2006-03-29 | 2008-12-17 | Hyperion Catalysis International, Inc. | Method for preparing single walled carbon nanotubes from a metal layer |
EP2001795A2 (en) * | 2006-03-29 | 2008-12-17 | Hyperion Catalysis International, Inc. | Method for preparing uniform single walled carbon nanotubes |
JP2009280450A (ja) * | 2008-05-23 | 2009-12-03 | Nagoya Institute Of Technology | カーボンナノチューブの製造方法及び製造装置 |
US7683528B2 (en) | 2004-10-14 | 2010-03-23 | Canon Kabushiki Kaisha | Structure, electron emitting device, secondary battery, electron source, and image display device |
JP2011173739A (ja) * | 2010-02-23 | 2011-09-08 | Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> | カーボンナノチューブの製造方法 |
JP2011201735A (ja) * | 2010-03-26 | 2011-10-13 | Fujitsu Ltd | グラフェン膜の製造方法及び半導体装置の製造方法 |
JP2017528413A (ja) * | 2014-06-24 | 2017-09-28 | テヒニシュ ウニヴェルズィテート ドレスデン | 同一の電気特性を有する垂直配向した単層カーボンナノチューブを成長する方法、及び、同一の電気特性を有する単層カーボンナノチューブを複製する方法 |
-
2002
- 2002-08-22 JP JP2002242321A patent/JP2004083293A/ja not_active Withdrawn
Cited By (15)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7683528B2 (en) | 2004-10-14 | 2010-03-23 | Canon Kabushiki Kaisha | Structure, electron emitting device, secondary battery, electron source, and image display device |
EP1871934A4 (en) * | 2005-03-29 | 2012-06-20 | Hyperion Catalysis Int | PROCESS FOR THE PREPARATION OF SINGLE-WALL CARBON NANOTUBES FROM A METAL LAYER |
EP1871934A1 (en) * | 2005-03-29 | 2008-01-02 | Hyperion Catalysis International, Inc. | Method for preparing single walled carbon nanotubes from a metal layer |
US8529862B2 (en) | 2005-03-29 | 2013-09-10 | Hyperion Catalysis International, Inc. | Method for preparing single walled carbon nanotubes from a metal layer |
KR100745734B1 (ko) | 2005-12-13 | 2007-08-02 | 삼성에스디아이 주식회사 | 탄소나노튜브의 형성방법 및 이를 이용한 전계방출소자의제조방법 |
EP2001794A4 (en) * | 2006-03-29 | 2012-06-20 | Hyperion Catalysis Int | METHOD FOR PRODUCING CONVENIENT CARBON NANOTONES FROM A METAL LAYER |
EP2001794A2 (en) * | 2006-03-29 | 2008-12-17 | Hyperion Catalysis International, Inc. | Method for preparing single walled carbon nanotubes from a metal layer |
EP2001795A2 (en) * | 2006-03-29 | 2008-12-17 | Hyperion Catalysis International, Inc. | Method for preparing uniform single walled carbon nanotubes |
EP2001795A4 (en) * | 2006-03-29 | 2012-06-27 | Hyperion Catalysis Int | PROCESS FOR PREPARING SINGLE-WALL UNIFORM CARBON NANOTUBES |
JP2008037670A (ja) * | 2006-08-02 | 2008-02-21 | Fujitsu Ltd | カーボンナノチューブの製造方法 |
JP2009280450A (ja) * | 2008-05-23 | 2009-12-03 | Nagoya Institute Of Technology | カーボンナノチューブの製造方法及び製造装置 |
JP2011173739A (ja) * | 2010-02-23 | 2011-09-08 | Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> | カーボンナノチューブの製造方法 |
JP2011201735A (ja) * | 2010-03-26 | 2011-10-13 | Fujitsu Ltd | グラフェン膜の製造方法及び半導体装置の製造方法 |
JP2017528413A (ja) * | 2014-06-24 | 2017-09-28 | テヒニシュ ウニヴェルズィテート ドレスデン | 同一の電気特性を有する垂直配向した単層カーボンナノチューブを成長する方法、及び、同一の電気特性を有する単層カーボンナノチューブを複製する方法 |
US11649167B2 (en) | 2014-06-24 | 2023-05-16 | Smartnanotubes Technologies Gmbh | Method for growing vertically oriented single-walled carbon nanotubes with the same electronic properties and for reproducing single-walled carbon nanotubes with the same electronic properties |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4436821B2 (ja) | 単層カーボンナノチューブ配列の成長装置及び単層カーボンナノチューブ配列の成長方法 | |
Öncel et al. | Carbon nanotube synthesis via the catalytic CVD method: a review on the effect of reaction parameters | |
Hong et al. | Controlling the growth of single-walled carbon nanotubes on surfaces using metal and non-metal catalysts | |
KR100923304B1 (ko) | 그라펜 시트 및 그의 제조방법 | |
Ren et al. | Aligned carbon nanotubes: physics, concepts, fabrication and devices | |
US7011884B1 (en) | Carbon nanotube with a graphitic outer layer | |
JP3363759B2 (ja) | カーボンナノチューブデバイスおよびその製造方法 | |
Choi et al. | Low temperature synthesis of carbon nanotubes by microwave plasma-enhanced chemical vapor deposition | |
JP2006007213A (ja) | 炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法 | |
US20050214197A1 (en) | Methods for producing and using catalytic substrates for carbon nanotube growth | |
US8038795B2 (en) | Epitaxial growth and cloning of a precursor chiral nanotube | |
JP2017019718A (ja) | カーボンナノチューブの製造方法 | |
JP3913583B2 (ja) | カーボンナノチューブの製造方法 | |
JP2004083293A (ja) | フラーレンを用いたカーボンナノチューブの製造方法 | |
Mann | Synthesis of carbon nanotubes | |
JP2005238142A (ja) | 触媒構造体およびこれを用いたカーボンナノチューブの製造方法 | |
Das et al. | Carbon nanotubes synthesis | |
KR101313753B1 (ko) | 탄소나노플레이크의 성장 방법 및 이에 의해 형성된 탄소나노플레이크 구조물 | |
Wang et al. | Low-temperature catalytic growth of carbon nanotubes under microwave plasma assistance | |
JP2004051432A (ja) | カーボンナノチューブの製造用基板及びそれを用いたカーボンナノチューブの製造方法 | |
JP2004075422A (ja) | オフ基板上でのカーボンナノチューブの製造方法 | |
Lin et al. | Growth mechanism and properties of the large area well-aligned carbon nano-structures deposited by microwave plasma electron cyclotron resonance chemical vapor deposition | |
JP5196417B2 (ja) | カーボンナノコイル製造用触媒およびカーボンナノコイルの製造方法 | |
Ganji | Hill model for the base growths and tip growths of doped and undoped carbon nanotubes | |
JP2012140268A (ja) | カーボンナノチューブ生成用基材の判定方法およびカーボンナノチューブの製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20051101 |