JPWO2017073364A1 - 印刷用導電性ペーストおよびその調製方法、ならびに銀ナノ粒子分散液の調製方法 - Google Patents
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Abstract
Description
表面に被覆剤分子からなる被覆層を有する平均粒子径5〜20nmの銀ナノ粒子の分散液を調製する方法であって、
a)炭化水素溶媒中において、粉末状酸化銀(I)にギ酸を作用させ、粉末状酸化銀(I)をギ酸銀(I)に変換する工程、および、
b)前記炭化水素溶媒中で、ギ酸銀(I)中に含まれる銀カチオンを、炭素数8〜11のモノカルボン酸の存在下、アミン化合物による還元反応により銀原子に還元することにより、アミン化合物及びモノカルボン酸によって表面が被覆された平均粒子径5〜20nmの銀ナノ粒子を形成する工程
を含み、
前記アミン化合物として、炭素数9〜11の1級アミンと、2級アミンの両方を用いる
ことを特徴とする銀ナノ粒子分散液の調製方法が提供される。
工程aにおいて、前記粉末状酸化銀(I)100質量部当たり、前記炭化水素溶媒を400質量部〜700質量部用いる
ことが好ましい。
前記1級アミンが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する
ことが好ましい。
前記2級アミンが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する
ことが好ましい。
前記モノカルボン酸を0.05モル量〜0.3モル量用い、
前記1級アミンを0.05モル量〜0.3モル量用い、
1級アミンと2級アミンの総モル量が1.1モル量〜1.5モル量の範囲となるように前記2級アミンを用いる
ことが好ましい。
c)工程bから得られる反応液から、前記炭化水素溶媒を減圧下で気化させて除去することにより、前記銀ナノ粒子を含有する残渣を回収する工程;
d)該残渣をアルコールで洗浄する工程;および、
e)工程dで洗浄した後の残渣を、前記炭化水素溶媒と同一のもしくは異なる炭化水素溶媒に分散させて、銀ナノ粒子分散液を得る工程
をさらに含む
ことが好ましい。
前記方法によって調製された銀ナノ粒子分散液を用いて印刷用導電性ペーストを調製する、印刷用導電性ペーストの調製方法が提供される。
表面に被覆剤分子からなる被覆層を有する平均粒子径5〜20nmの銀ナノ粒子を含む印刷用導電性ペーストであって、
前記被覆層が、炭素数8〜11のモノカルボン酸および炭素数9〜11の1級アミンを含む、
印刷用導電性ペーストが提供される。
本明細書において、平均粒子径はレーザー回折法により測定された粒度分布(体積基準)において積算値50%の粒子径を指す。
用語「沸点」は、1気圧における沸点を意味する。
用語「インク」は、ペーストのうちの特に印刷に好適なものを意味する。
また、銀ナノ粒子の量(質量や含有量)に言及する場合、特に断りのない限り、銀ナノ粒子のみ(したがって被覆剤は含まない)の量を意味する。一方、銀ナノ粒子の粒径に言及する場合、特に断りのない限り、銀ナノ粒子の表面に付着した被覆剤を含んだ粒径を意味する。
用語「1級アミン」は、分子中に1級アミノ基を1つだけ有する化合物を意味する。2級アミノ基および/または3級アミノ基を有していても、1級アミノ基を1つ有する化合物であれば、1級アミンに該当する。
用語「2級アミン」は、分子中にアミノ基を唯1つ有し、そのアミノ基が2級アミノ基である化合物を意味する。
本発明においては、工程aおよびbを行う。
a)炭化水素溶媒中において、粉末状酸化銀(I)にギ酸を作用させ、粉末状酸化銀(I)をギ酸銀(I)に変換する工程。
b)前記炭化水素溶媒中で、ギ酸銀(I)中に含まれる銀カチオンを、炭素数8〜11のモノカルボン酸の存在下、アミン化合物による還元反応により銀原子に還元することにより、アミン化合物及びモノカルボン酸によって表面が被覆された平均粒子径5〜20nmの銀ナノ粒子を形成する工程。
炭化水素溶媒は一般に極性を持たない、あるいは極性が非常に低い非極性溶媒である。炭化水素溶媒は、粉末状酸化銀(I)の分散媒として利用され、また、モノカルボン酸、アミン化合物(1級アミンと2級アミン)を溶解する溶媒としても利用される。
出発原料として、粉末状酸化銀(I)(Ag2O、式量231.74、密度7.22g/cm3)が使用される。粉末状酸化銀(I)の粒子径は適宜選ぶことができるが、炭化水素溶媒に均一に分散させる観点から、粉末状酸化銀(I)の粒径分布が200メッシュ以下(75μm以下)の範囲に収まるものが好適に利用される。
工程aでは、炭化水素溶媒中で、粉末状酸化銀(I)にギ酸(HCOOH)を作用させて、粉末状酸化銀(I)をギ酸銀(I)に変換する。このために、炭化水素溶媒に粉末状酸化銀(I)を加えて分散させ、その分散液にギ酸を加えることができる。反応に際しては、適宜攪拌を行うことができる。
AgI 2O+(HCOOH:HOOCH)→2[(HCOO−)(AgI)+]+H2O
なお、式iの反応で副生する水分子(H2O)の大半部分は、生成する[(HCOO−)(AgI)+]の凝集体中に、「結晶水」の形態で取り込まれていると、推定される。
2[(HCOO−)(AgI)+]+HCOOH→2Ag+2HCOOH+CO2↑、
式A2:
2[(HCOO−)(AgI)+]→2Ag+HCOOH+CO2↑。
工程aの後、引き続き前記炭化水素溶媒中で、ギ酸銀(I)中に含まれる銀カチオンを、炭素数8〜11のモノカルボン酸の存在下で、アミン化合物(1級アミンおよび2級アミン)による還元反応により銀原子に還元する。これにより、モノカルボン酸およびアミン化合物によって表面が被覆された銀ナノ粒子が形成される。
2(Ra−NH2:Ag−OOCH)
→2[Ra−NH2:Ag]+HCOOH+CO2↑、
式iii:
2(RbRc−NH:Ag−OOCH)
→2[RbRc−NH:Ag]+HCOOH+CO2↑。
銀ナノ粒子の調製容易性の観点から、1級アミンの分子量が、120以上200以下であることが好ましい。分子量が200以下の1級アミンを用いて銀ナノ粒子を調製すると、その粒子を用いて導電性ペーストとして利用する場合に、焼成プロセス時の銀からの1級アミンの脱離および分解が容易であり、導通特性の観点から好ましい。一方、分子量が120以上の1級アミンを用いて銀ナノ粒子の作製をすると、安定な銀ナノ粒子の作製が容易である。具体的には、粒子作製時に反応容器側面の鏡面化(銀の析出)が生じるといった現象を回避することが容易である。
銀ナノ粒子作製時の反応性の観点から、2級アミンの分子量が、100以上150以下であることが好ましい。分子量が150以下の2級アミンは還元力の点で好ましく、反応を進行させることが容易である。また、分子量100以上のアミンは沸点の観点から好ましく、反応中に速やかに蒸散してしまうことを防止することが容易である。
工程bにおいて炭素数が11以下のモノカルボン酸を用いて銀ナノ粒子を調製すると、その粒子を用いて導電性ペーストとして利用する場合に、焼成プロセス時の銀からのモノカルボン酸の脱離および分解が容易であり、導通特性の観点から好ましい。一方、炭素数が8以上のモノカルボン酸を用いて銀ナノ粒子の作製をすると、銀ナノ粒子を被覆している1級アミンに加えモノカルボン酸も銀ナノ粒子を被覆するため、立体的に銀ナノ粒子同士の接触が抑制され、安定な銀ナノ粒子の作製が容易である。
工程bにおいて、炭素数8〜11のモノカルボン酸、1級アミンおよび2級アミンの量を、それぞれ、それぞれ次の量で用いることが好ましい。
炭素数8〜11のモノカルボン酸:ギ酸銀(I)に含まれる銀カチオン1モル量当たり、0.05モル量〜0.3モル量。
1級アミン:ギ酸銀(I)に含まれる銀カチオン1モル量当たり、0.05モル量〜0.3モル量。
2級アミン:1級アミンと2級アミンの総モル量が、ギ酸銀(I)に含まれる銀カチオン1モル量当たり、1.1モル量〜1.5モル量の範囲となるように2級アミンを用いる。
工程aおよびbに続けて、工程c〜eをこの順に行うことができる。それによって、銀ナノ粒子が、或る炭化水素溶媒(工程eで用いる炭化水素溶媒)中に分散した分散液を得ることができる。
c)工程bから得られる反応液から、前記炭化水素溶媒を減圧下で気化させて除去することにより、前記銀ナノ粒子を含有する残渣を回収する工程。
d)該残渣をアルコールで洗浄する工程。
e)工程dで洗浄した後の残渣を、前記炭化水素溶媒と同一のもしくは異なる炭化水素溶媒に分散させて、銀ナノ粒子分散液を得る工程。
・工程a
粉末状の酸化銀(I)(Ag2O、式量231.735)100質量部(0.43モル部)をメチルシクロヘキサン(沸点100.9℃、密度0.7737)550質量部に分散させた。得られた分散液に、室温(25℃)で攪拌しつつ、ギ酸(HCOOH、式量46.03、沸点100.75℃)41.3質量部(0.90モル部)を3〜5分かけて滴下した。酸化銀(I)のAg1モル当たり、ギ酸1.04モル量を添加したことになる。炭化水素溶媒であるメチルシクロヘキサン中では、ギ酸銀が生成される。ギ酸の添加により、発熱反応が進み液温は45℃付近まで上昇した。粉末状の酸化銀がギ酸銀に変換されると、その後は反応液の温度が降下した。
工程aから得られた反応液の温度が27℃以下まで降下した時点で、反応液にネオデカン酸(C10H20O2、式量172.26)18.4質量部を添加した。酸化銀(I)のAg1モル当たり、ネオデカン酸0.12モル量を添加したことになる。
得られた濃紺色の分散液をナス型フラスコに移し、減圧下で反応溶剤のメチルシクロヘキサンやジイソプロピルアミンを留去した。
減圧下で溶剤等を留去する際の温度は40℃とし、減圧度は150hPaからスタートした。溶剤等が留去される状態を確認しながら、突沸に注意しながら徐々に減圧度を上げ、最終的に60hPaにした。60hPaで脱溶剤を進めていくと、ナスフラスコ内の銀ナノ粒子を含む内容物は溶剤等が除去されるためスラリー状に変化した。温度を45℃に上げてさらに10min程度減圧で脱溶剤を行った。
脱溶剤処理後の残渣にメタノール(沸点64.7℃)280質量部、蒸留水50質量部を添加した。
デカンテーションから得られた沈降相に、メチルシクロヘキサン120質量部を添加した。沈降した銀ナノ粒子はメチルシクロヘキサンに分散した。沈降した銀粒子に残存していたメタノールはメチルシクロヘキサンとの相溶性が乏しいため相分離した。相分離したメタノール相部分を除去した。
銀ナノ粒子が分散したメチルシクロヘキサン相中には、若干量のメタノールが溶解し、混入していた。減圧下、混入しているメタノールを留去した。メタノールとメチルシクロヘキサンの沸点の差を利用してメタノールを選択的に留去した。具体的には、45℃(浴温)、150hPaで5min脱メタノールを行った後、減圧度を120hPaに上げて、さらに3min脱メタノールを行った。
得られた銀ナノ粒子分散液に含まれる金属銀の総量を測定し、出発原料の酸化銀(I)中に含まれる銀の含有量を基準とする収率を算出した。算出された収率は98%であった。
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液を、この分散液に含有される銀の量が70質量部となる量用い、これにIPソルベント2028(商品名、出光興産製、沸点213〜262℃、密度0.789g/cm3)30質量部を混合した。
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液を、この分散液に含有される銀の量が87質量部となる量用い、これにIPソルベント2835(商品名、出光興産製、沸点277〜353℃、密度0.82g/cm3)13質量部を混合した。
実施例3で得られた導電性ペーストを、このペーストに含有される銀の量が50質量部となる量用い、これに銀粉Ag−SHA−224(商品名、同和エレクトロ二クス製、平均粒子径0.5μm)50質量部と、IPソルベント2835(沸点277〜353℃、密度0.82g/cm3、出光興産)2.0質量部とを混合し、攪拌脱泡装置で銀粉を均一に分散させ、導電性ペーストを得た。
ネオデカン酸(モノカルボン酸)の添加量を18.4質量部から10質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を調製した。銀ナノ粒子の収率は低下したが、分散安定性は良好であった。
実施例1で得た銀ナノ粒子分散液に替えて、実施例5で得た銀ナノ粒子分散液を使用したこと以外は実施例3と同様にして、印刷用導電性ペーストを作製し、印刷および焼成を行った。導電性ペーストは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で7μΩ・cm(焼成後膜厚4μm)の導通性が得られた。
ネオデカン酸(モノカルボン酸)の添加量を18.4質量部から25質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を調製した。分散安定性の良い銀ナノ粒子が得られたが、被覆剤量はやや増加した。
実施例1で得た銀ナノ粒子分散液に替えて、実施例7で得た銀ナノ粒子分散液を使用したこと以外は実施例3と同様にして、印刷用導電性ペーストを作製し、印刷および焼成を行った。導電性ペーストは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で9.5μΩ・cm(焼成後膜厚5μm)の導通性が得られた。
モノカルボン酸として、ネオデカン酸(炭素数10)18.4質量部に替えて、2エチルへキサン酸(炭素数8)15.4質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を調製した。ただし、モノカルボン酸のモル量は実施例1と同じである。モノカルボン酸の種類を変更しても高収率で分散安定性の良い銀ナノ粒子が得られた。
実施例9で得られた銀ナノ粒子分散液を、この分散液に含有される銀の量が65質量部となる量用い、これにナフテゾール220(商品名、JX日鉱日石エネルギー製、沸点221〜240℃、密度0.814g/cm3)35質量部を混合した。この点以外は実施例2と同様にして、ナフテゾール220を分散溶剤とする導電性インクを調製し、評価した。導電性インクは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で3.9μΩ・cm(焼成後膜厚1.1μm)の導通性が得られた。
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、実施例9で得られた銀ナノ粒子分散液を使用したこと以外は実施例3と同様にして、印刷用導電性ペーストを作製した。導電性ペーストは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で6.8μΩ・cm(焼成後膜厚5μm)の導通性が得られた。
2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(1級アミン)の添加量を23.1質量部から15質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を調製した。銀ナノ粒子の収率はやや低下したが、分散安定性の良い粒子が得られた。
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、実施例12で得られた銀ナノ粒子分散液を使用したこと以外は実施例3と同様にして、印刷用導電性ペーストを作製した。導電性ペーストは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で6.7μΩ・cm(焼成後膜厚3.2μm)の導通性が得られた。
1級アミンを2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(炭素数11)からジブチルアミノプロピルアミン(炭素数11)に変更したこと以外は実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散液を作製した。1級アミンの種類を変更しても高収率で分散安定性の良い銀ナノ粒子が得られた。
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、実施例14で得られたナノ粒子を使用したこと以外は実施例3と同様にして、印刷用導電性ペーストを作製した。導電性ペーストは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で8.2μΩ・cm(焼成後膜厚3μm)の導通が得られた。
1級アミンを、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(炭素数11)23.1質量部からデシルアミン(炭素数10)19.4質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散液を作製した。1級アミンの種類を変更しても高収率で分散安定性の良い銀ナノ粒子が得られた。
実施例16で得られた銀ナノ粒子分散液を、この分散液に含有される銀の量が65質量部となる量用い、これにIPソルベント2028(商品名、出光興産製、沸点213〜262℃、密度0.789g/cm3)35質量部を混合した。この点以外は実施例2と同様にして、IPソルベント2028を分散溶剤とする導電性インクを調製し、評価した。
導電性インクは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で4.2μΩ・cm(焼成後膜厚1.2μm)の導通性が得られた。
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、実施例16で得られたナノ粒子を使用したこと以外は実施例3と同様にして、印刷用導電性ペーストを作製した。導電性ペーストは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で7μΩ・cm(焼成後膜厚3.8μm)の導通性が得られた。
2級アミンの種類を、ジイソプロピルアミンからジブチルアミンに変更したこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を調製した。2級アミンの種類を変更しても高収率で分散安定性の良い銀ナノ粒子が得られた。
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、実施例19で得られたナノ粒子を使用したこと以外は実施例3と同様にして、印刷用導電性ペーストを作製した。導電性ペーストは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で7.5μΩ・cm(焼成後膜厚3.6μm)の導通性が得られた。
本例では、ネオデカン酸を配合せず、またアミンとして1級アミンのみを用いて銀ナノ粒子分散液を調製した。
粉末状の酸化銀(I)100質量部(0.43モル部)をメチルシクロヘキサン550質量部に分散させた。得られた分散液に、室温(25℃)で攪拌しつつ、ギ酸41.3質量部(0.90モル部)を3〜5分かけて滴下した。酸化銀(I)のAg1モル当たり、ギ酸1.04モル量を添加したことになる。
反応液の温度が27℃以下まで降下した時点で、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン138質量部をメチルシクロヘキサン92質量部に溶解した溶液を、反応液に添加した。出発原料の酸化銀(I)のAg1モル当たり、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン0.86モル量を添加したことになる。
得られた濃紺色の分散液について、実施例1の工程c、dおよびeと同様の操作を行って、銀ナノ粒子分散液を得た。
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、比較例1で得られた銀ナノ粒子分散液を使用したこと以外は実施例2と同様にして、印刷用導電性インクを作製し、インクジェット印刷および焼成を行った。
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、比較例1で得られた銀ナノ粒子分散液を使用したこと以外は実施例3と同様にして、導電性ペーストを作製した。
1級アミンを、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(炭素数11)23.1質量部から、ドデシルアミン(炭素数12)22.9質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を作製した。1級アミンの種類を変更しても高収率で分散安定性の良い銀ナノ粒子が得られた。
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、比較例4で得られた銀ナノ粒子分散液を使用したこと以外は実施例3と同様にして、導電性ペーストを作製した。導電性ペーストは均一に仕上がったが、120℃、60分の焼成では導通性が得られなかった。200℃、30分の焼成では6μΩ・cm(焼成後膜厚3μm)の導通性が得られた。
1級アミンを、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(炭素数11)23.1質量部から、2−エチルヘキシルアミン(炭素数8)15.9質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を作製しようと試みた。1級アミンの種類を変更してもアミンによるギ酸銀の還元反応によって銀ナノ粒子が生成したが、沈降する銀粒子も混在した。また、メタノール添加によるナノ粒子の洗浄工程で次第に沈降する粒子が増え、メチルシクロへキサンに再分散(工程e)可能なナノ粒子は得られなかった。
2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(1級アミン)を使用せず、ジイソプロピルアミン(2級アミン)を128質量部使用したこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を作製しようと試みた。2級アミン添加後、反応液が発熱し、紺色の均一状態となった後、銀粒子が肥大化し沈降した。溶剤のメチルシクロへキサンに分散している粒子は無く、灰色の銀粒子が沈降していた。
モノカルボン酸を添加せずに銀ナノ粒子分散液を調製した。すなわち、比較例1の工程a1と同様の操作を行い、次いで実施例1の工程b、c、dおよびeと同様の操作を行って、銀ナノ粒子分散液を調製した。収率は低下するものの、銀ナノ粒子が均一に分散した銀ナノ粒子分散液が得られた。しかし、室温で1日程度放置すると沈降が生じ、分散の安定性が維持できなかった。
モノカルボン酸を、ネオデカン酸(炭素数10)18.4質量部から、ヘプタン酸(炭素数7)13.9質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を調製した。モノカルボン酸の種類を変更しても高収率で分散安定な粒子が得られたが、被覆剤量は多くなった。
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、比較例9で得られた銀ナノ粒子分散液を使用したこと以外は実施例2と同様にして、導電性ペーストを作製し、インクジェット印刷および焼成を行った。導電性インクは均一に仕上がったが、120℃、60分の焼成では導通が得られなかった。180℃、60分の焼成では8μΩ・cm(焼成後膜厚0.8μm)の導通性が得られた。カルボン酸の鎖長が短い分、銀への配位力が強くなるためと思われる。
Claims (8)
- 表面に被覆剤分子からなる被覆層を有する平均粒子径5〜20nmの銀ナノ粒子の分散液を調製する方法であって、
a)炭化水素溶媒中において、粉末状酸化銀(I)にギ酸を作用させ、粉末状酸化銀(I)をギ酸銀(I)に変換する工程、および、
b)前記炭化水素溶媒中で、ギ酸銀(I)中に含まれる銀カチオンを、炭素数8〜11のモノカルボン酸の存在下、アミン化合物による還元反応により銀原子に還元することにより、アミン化合物及びモノカルボン酸によって表面が被覆された平均粒子径5〜20nmの銀ナノ粒子を形成する工程
を含み、
前記アミン化合物として、炭素数9〜11の1級アミンと、2級アミンの両方を用いる
ことを特徴とする銀ナノ粒子分散液の調製方法。 - 前記炭化水素溶媒は、65℃〜155℃の沸点を有する、炭素数6〜9の直鎖もしくは環状のアルカンであり、
工程aにおいて、前記粉末状酸化銀(I)100質量部当たり、前記炭化水素溶媒を400質量部〜700質量部用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の銀ナノ粒子分散液の調製方法。 - 前記1級アミンの分子量が120〜200であり、
前記1級アミンが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の銀ナノ粒子分散液の調製方法。 - 前記2級アミンの分子量が100〜150であり、
前記2級アミンが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子分散液の調製方法。 - 工程bにおいて、ギ酸銀(I)に含まれる銀カチオン1モル量当たり、
前記モノカルボン酸を0.05モル量〜0.3モル量用い、
前記1級アミンを0.05モル量〜0.3モル量用い、
1級アミンと2級アミンの総モル量が1.1モル量〜1.5モル量の範囲となるように前記2級アミンを用いる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子分散液の調製方法。 - 下記の工程c〜e
c)工程bから得られる反応液から、前記炭化水素溶媒を減圧下で気化させて除去することにより、前記銀ナノ粒子を含有する残渣を回収する工程;
d)該残渣をアルコールで洗浄する工程;および、
e)工程dで洗浄した後の残渣を、前記炭化水素溶媒と同一のもしくは異なる炭化水素溶媒に分散させて、銀ナノ粒子分散液を得る工程
をさらに含む
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子分散液の調製方法。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって調製された銀ナノ粒子分散液を用いて印刷用導電性ペーストを調製する、印刷用導電性ペーストの調製方法。
- 表面に被覆剤分子からなる被覆層を有する平均粒子径5〜20nmの銀ナノ粒子を含む印刷用導電性ペーストであって、
前記被覆層が、炭素数8〜11のモノカルボン酸および炭素数9〜11の1級アミンを含む、
印刷用導電性ペースト。
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