JPWO2017073364A1 - 印刷用導電性ペーストおよびその調製方法、ならびに銀ナノ粒子分散液の調製方法 - Google Patents

印刷用導電性ペーストおよびその調製方法、ならびに銀ナノ粒子分散液の調製方法 Download PDF

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Abstract

導通性能が良好な導電体を作成するに好適な低温焼成可能な導電性ペーストを様々な粘度で調製することを可能とする。表面に被覆剤分子からなる被覆層を有する平均粒子径5〜20nmの銀ナノ粒子の分散液を調製する方法であって、a)炭化水素溶媒中において、粉末状酸化銀(I)にギ酸を作用させ、粉末状酸化銀(I)をギ酸銀(I)に変換する工程と、b)前記炭化水素溶媒中で、ギ酸銀(I)中に含まれる銀カチオンを、炭素数8〜11のモノカルボン酸の存在下、アミン化合物による還元反応により銀原子に還元することにより、アミン化合物及びモノカルボン酸によって表面が被覆された平均粒子径5〜20nmの銀ナノ粒子を形成する工程とを含み、アミン化合物として、炭素数9〜11の1級アミンと、2級アミンを用いる。この分散液を用いる、印刷用導電性ペーストの調製方法。

Description

本発明は、酸化銀を出発原料として、銀ナノ粒子分散液を調製する方法に関する。また本発明は、銀ナノ粒子を含む印刷用導電性ペーストおよびその調製方法に関する。
銀ナノ粒子を利用する導電性ペーストは、例えば、微細な配線層の形成に利用されている。
銀ナノ粒子表面の銀原子は、表面上における移動能が格段に大きいため、銀ナノ粒子相互が接触すると、表面の銀原子が相互に移動することで、融着を起こす傾向が強い。この融着は、室温付近でも進行する。したがって、導電性ペースト中に含有される銀ナノ粒子が相互に融着し、凝集粒子を形成することを防止するために、通常、銀ナノ粒子の表面を被覆剤分子で被覆し、銀ナノ粒子相互が直接その金属表面を接することを防止している。
特許文献1には、非極性溶媒中に粉末状酸化銀を分散させ、過剰量のギ酸を添加して、該粉末状酸化銀にギ酸を作用させて、粉末状ギ酸銀(HCOOAg)に変換し、該粉末状ギ酸銀に1級アミンを作用させ、ギ酸銀の1級アミン付加塩とした上で、液温70℃程度で該ギ酸銀の1級アミン付加塩の分解的還元反応を行い、1級アミンからなる表面被覆層を有する銀ナノ粒子を調製する方法が記載される。1級アミンとしては、炭素数7〜12のアルキルアミン等が使用される。
特許文献2には、2級アミンを含むアミン化合物、金属前駆体及び非極性溶媒を含む混合物を60ないし300℃に加熱して、少なくともロッド形状の金属酸化物ナノ粒子を有する金属酸化物ナノ粒子中間体を形成する段階と、前記混合物にキャッピング分子及び還元剤を添加し、90ないし150℃に加熱して金属ナノ粒子を形成する段階と、前記金属ナノ粒子を回収する段階と、を含む、ロッド形状のナノ粒子を含む金属ナノ粒子の製造方法が記載される。
特許文献3には、1級アミン及び3級アミンを含む溶液中にて金属化合物を加熱・還元することにより、ナノメートル級の金属微粒子を溶液中に分散した金属微粒子分散液を得る金属微粒子分散液の製造方法であり、前記3級アミンは、炭素数が2以上のアルキル基を含むことを特徴とする金属微粒子分散液の製造方法が記載される。
特許文献4には、カルボキシル基を有する有機化合物からなる保護剤が金属ナノ粒子表面に被覆された被覆金属ナノ粒子を、多価アルコールエーテルを含む極性分散溶媒に対して分散してなる、金属ナノ粒子分散液が記載される。
特許文献5には、ギ酸銀(I)中に含まれる銀カチオンを、アミン化合物による還元反応により銀原子に還元して、アミン化合物によって表面が被覆された銀ナノ粒子を形成する際に、アミン化合物として1級アミンと2級アミンの両方を用いる、銀ナノ粒子の調製方法が記載される。
特許文献6には、凸版反転印刷法により導電性パターンを形成するための実質的にバインダー成分を含まない導電性インキであって、体積平均粒径(Mv)が10〜700nmの導電性粒子、離型剤、表面エネルギー調整剤、溶剤成分を必須成分とし、前記溶剤成分が25℃での表面エネルギーが27mN/m以上の溶剤と、大気圧下での沸点が120℃以下の揮発性の溶剤との混合物であり、25℃におけるインキの表面エネルギーが10〜21mN/mであることを特徴とする導電性インキが記載される。
特開2011−153362号公報 特開2009−084677号公報 特開2008−081828号公報 特開2011−038128号公報 特開2015−161008号公報 WO2008/11484A1
特許文献1の方法で調製した銀ナノ粒子を用いると、120℃程度の低温で焼結して導電体を与えるような、いわゆる低温焼結タイプの導電性ペーストを得ることができる。しかし、このような銀ナノ粒子においては、銀を被覆する被覆剤の量が比較的多量である。つまり、銀に対する被覆剤の割合が比較的大きい。
したがって、このような銀ナノ粒子を含む導電性ペーストを用いて厚い導体膜を形成しようとすると、焼成時に被覆剤が導電性ペースト膜から抜けにくいことに起因して導体膜の導通性能が低下することがあり、あるいは、焼成時の体積収縮に起因して導体膜にクラックが発生することがあった。したがって、このような導電性ペーストを用いた場合に形成可能な膜厚が限られていた。
また、前述の理由(被覆剤量が多い)により、特許文献1の方法で調製した銀ナノ粒子を用いて導電性インクを製造する場合、比較的低粘度のインクしか提供することができなかった。したがって、このようなインクに好適な印刷もしくは塗布方法は、インクジェット等の印刷方式や、スピンコート、ディッピング等の塗布方法に限られていた。
つまり、低温焼結タイプの導電性ペーストに対して、焼結後にクラックが無く導通性能が良好な導電体を得ることができるとともに、様々な粘度に調整し得ることが求められていた。したがって、このような導電性ペーストを製造するに好適な、銀ナノ粒子分散液に対するニーズがあった。
特許文献2〜6も、この点において優れた銀ナノ粒子分散液を教示していない。
本発明の目的は、クラックが無く導通性能が良好な導電体を作成するに好適な低温焼成可能な導電性ペーストを、様々な粘度で調製することのできる、導電性ペーストの調製方法、特には印刷用導電性ペーストの調製方法を提供することである。
本発明の別の目的は、上記のような導電性ペーストを製造するに好適に用いることのできる銀ナノ粒子分散液を調製する方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、クラックが無く導通性能が良好な導電体を作成するに好適な低温焼成可能な印刷用導電性ペーストであって、様々な粘度を持ちうる印刷用導電性ペーストを提供することである。
本発明の一態様により、
表面に被覆剤分子からなる被覆層を有する平均粒子径5〜20nmの銀ナノ粒子の分散液を調製する方法であって、
a)炭化水素溶媒中において、粉末状酸化銀(I)にギ酸を作用させ、粉末状酸化銀(I)をギ酸銀(I)に変換する工程、および、
b)前記炭化水素溶媒中で、ギ酸銀(I)中に含まれる銀カチオンを、炭素数8〜11のモノカルボン酸の存在下、アミン化合物による還元反応により銀原子に還元することにより、アミン化合物及びモノカルボン酸によって表面が被覆された平均粒子径5〜20nmの銀ナノ粒子を形成する工程
を含み、
前記アミン化合物として、炭素数9〜11の1級アミンと、2級アミンの両方を用いる
ことを特徴とする銀ナノ粒子分散液の調製方法が提供される。
前記炭化水素溶媒は、65℃〜155℃の沸点を有する、炭素数6〜9の直鎖もしくは環状のアルカンであり、
工程aにおいて、前記粉末状酸化銀(I)100質量部当たり、前記炭化水素溶媒を400質量部〜700質量部用いる
ことが好ましい。
前記1級アミンの分子量が120〜200であり、
前記1級アミンが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する
ことが好ましい。
前記2級アミンの分子量が100〜150であり、
前記2級アミンが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する
ことが好ましい。
工程bにおいて、ギ酸銀(I)に含まれる銀カチオン1モル量当たり、
前記モノカルボン酸を0.05モル量〜0.3モル量用い、
前記1級アミンを0.05モル量〜0.3モル量用い、
1級アミンと2級アミンの総モル量が1.1モル量〜1.5モル量の範囲となるように前記2級アミンを用いる
ことが好ましい。
前記銀ナノ粒子分散液の調製方法が、下記の工程c〜e
c)工程bから得られる反応液から、前記炭化水素溶媒を減圧下で気化させて除去することにより、前記銀ナノ粒子を含有する残渣を回収する工程;
d)該残渣をアルコールで洗浄する工程;および、
e)工程dで洗浄した後の残渣を、前記炭化水素溶媒と同一のもしくは異なる炭化水素溶媒に分散させて、銀ナノ粒子分散液を得る工程
をさらに含む
ことが好ましい。
本発明の別の態様により、
前記方法によって調製された銀ナノ粒子分散液を用いて印刷用導電性ペーストを調製する、印刷用導電性ペーストの調製方法が提供される。
本発明の更なる態様により、
表面に被覆剤分子からなる被覆層を有する平均粒子径5〜20nmの銀ナノ粒子を含む印刷用導電性ペーストであって、
前記被覆層が、炭素数8〜11のモノカルボン酸および炭素数9〜11の1級アミンを含む、
印刷用導電性ペーストが提供される。
本発明によれば、クラックが無く導通性能が良好な導電体を作成するに好適な低温焼成可能な導電性ペーストを、様々な粘度で調製することのできる、導電性ペーストの調製方法、特には印刷用導電性ペーストの調製方法が提供される。
また本発明によれば、上記のような導電性ペーストを製造するに好適に用いることのできる銀ナノ粒子分散液を調製する方法が提供される。
さらに本発明によれば、クラックが無く導通性能が良好な導電体を作成するに好適な低温焼成可能な印刷用導電性ペーストであって、様々な粘度を持ちうる印刷用導電性ペーストが提供される。
本発明者らは、炭化水素溶媒中で、粉末状酸化銀(I)とギ酸とを作用させてギ酸銀(I)を得、次いで、ギ酸銀(I)に含まれる銀カチオンをアミン化合物で銀原子に還元して、アミン化合物によって表面が被覆された銀ナノ粒子を製造する際に、アミン化合物として1級アミン(炭素数9〜11)と2級アミンとを併用することによって、また、炭素数8〜11のモノカルボン酸の存在下でアミン化合物による還元を行うことによって、銀を被覆する被覆剤の量が少ない銀ナノ粒子を調製することができることを見出した。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
本発明は、表面に被覆剤分子からなる被覆層を有する銀ナノ粒子を調製する方法、特には銀ナノ粒子が液中に分散した銀ナノ粒子分散液を調製する方法に関する。
本発明によれば、平均粒子径がナノメートルオーダーの、特には平均粒子径が5nm以上20nm以下の、銀ナノ粒子を製造することができる。銀ナノ粒子分散液の良好な分散安定性と、銀ナノ粒子分散液を用いて作製した導電性ペーストが低温焼成可能であることの両者を勘案して、上記平均粒子径の範囲(5〜20nm)が選ばれる。
平均粒子径5〜20nmを達成するにはギ酸銀を還元する際に1級アミンの存在が必須である。ギ酸銀を還元する際に1級アミンが存在することで生成したナノ粒子に配位して、粒子の肥大化が抑制される。1級アミン未添加でギ酸銀の還元を行うと、ナノ粒子を経由した後、肥大化が進み沈降する。1級アミンの量が多い方が粒子径は小さくなる。1級アミンの使用量を増減することによって、平均粒子径を調整することができる。さらにモノカルボン酸が生成したナノ粒子に配位することで分散性安定性を向上させることができる。
〔用語〕
本明細書において、平均粒子径はレーザー回折法により測定された粒度分布(体積基準)において積算値50%の粒子径を指す。
用語「沸点」は、1気圧における沸点を意味する。
用語「インク」は、ペーストのうちの特に印刷に好適なものを意味する。
また、銀ナノ粒子の量(質量や含有量)に言及する場合、特に断りのない限り、銀ナノ粒子のみ(したがって被覆剤は含まない)の量を意味する。一方、銀ナノ粒子の粒径に言及する場合、特に断りのない限り、銀ナノ粒子の表面に付着した被覆剤を含んだ粒径を意味する。
用語「1級アミン」は、分子中に1級アミノ基を1つだけ有する化合物を意味する。2級アミノ基および/または3級アミノ基を有していても、1級アミノ基を1つ有する化合物であれば、1級アミンに該当する。
用語「2級アミン」は、分子中にアミノ基を唯1つ有し、そのアミノ基が2級アミノ基である化合物を意味する。
〔工程aおよびb〕
本発明においては、工程aおよびbを行う。
a)炭化水素溶媒中において、粉末状酸化銀(I)にギ酸を作用させ、粉末状酸化銀(I)をギ酸銀(I)に変換する工程。
b)前記炭化水素溶媒中で、ギ酸銀(I)中に含まれる銀カチオンを、炭素数8〜11のモノカルボン酸の存在下、アミン化合物による還元反応により銀原子に還元することにより、アミン化合物及びモノカルボン酸によって表面が被覆された平均粒子径5〜20nmの銀ナノ粒子を形成する工程。
工程bで用いるアミン化合物として、1級アミン(R−NH)と2級アミン(R−NH)の両方を用いる。
モノカルボン酸の添加時期は工程aおよびbの任意の時期でよい。例えば、工程aにおいて、炭化水素溶媒にモノカルボン酸を混合し、その後にギ酸を添加することができる。あるいは、工程aではモノカルボン酸は使用せず、工程bにおいて、アミン化合物と共にモノカルボン酸を添加してもよい。
工程bから、モノカルボン酸およびアミン化合物(特には1級アミン)が配位的な結合を介して表面に結合して被覆層を形成している、銀ナノ粒子を得ることができる。
工程bは、工程aに引き続いて、工程aで用いた炭化水素溶媒中で行うことができる。したがって、工程aから得られた反応液に、前記モノカルボン酸と、アミン化合物(1級アミンおよび2級アミン)を添加し、必要に応じて攪拌することにより工程bを行うことができる。
工程bにおいて、工程aで用いたのと同じ炭化水素溶媒を追加してもよい。これにより、アミン化合物を炭化水素溶媒で希釈し、アミン化合物の濃度を調整することができる。例えば粉末状酸化銀(I)100質量部当たり50質量部以上150質量部以下の炭化水素溶媒を追加して、アミン化合物の濃度を調節する(希釈する)こともできる。
工程aおよびbを行うことによって、銀ナノ粒子を炭化水素溶媒中で調製することができる。
工程aおよびbの後に、必要に応じて、炭化水素溶媒から銀ナノ粒子を分離することができる。分離のために、適宜の方法を用いることができる。例えば、炭化水素溶媒を減圧下で気化させて除去して、銀ナノ粒子(炭化水素溶媒に含まれない状態)を得ることができる(工程cを参照)。
〔工程aおよびbで用いる炭化水素溶媒〕
炭化水素溶媒は一般に極性を持たない、あるいは極性が非常に低い非極性溶媒である。炭化水素溶媒は、粉末状酸化銀(I)の分散媒として利用され、また、モノカルボン酸、アミン化合物(1級アミンと2級アミン)を溶解する溶媒としても利用される。
また、反応液(工程bで得られる銀ナノ粒子を含む液)から銀ナノ粒子を分離、回収する場合があるが、このとき反応液に含まれる炭化水素溶媒を、減圧下に留去することで、除去することができる。したがって、減圧下に留去が可能な蒸散性を示す、炭化水素溶媒が好ましい。また、2級アミンを、減圧下に留去することで、除去することもできる。
さらに、ギ酸の沸点(100.75℃)と同程度もしくはより低い沸点の炭化水素溶媒を用いると、ギ酸銀(I)生成反応における発熱に伴って反応液の液温が上昇した際に、液温が炭化水素溶媒の沸点を超えないため、ギ酸の蒸散を抑制できる。
以上のような点を考慮して、炭化水素溶媒は、炭素数6〜9の直鎖のアルカンまたは炭素数6〜9のシクロアルカンが好ましい。炭化水素溶媒の沸点は、65℃〜155℃が好ましく、80℃〜130℃がより好ましく、80℃〜101℃がさらに好ましい。
炭化水素溶媒の例としては、メチルシクロヘキサン(沸点101℃)、ヘプタン(沸点98.42℃)を挙げることができる。
また、ギ酸銀(I)生成反応の発熱による反応液温上昇を防止する観点から、工程aにおいて、粉末状酸化銀(I)100質量部当たり炭化水素溶媒を400質量部以上700質量部以下用いることが好ましい。
〔粉末状酸化銀(I)〕
出発原料として、粉末状酸化銀(I)(AgO、式量231.74、密度7.22g/cm)が使用される。粉末状酸化銀(I)の粒子径は適宜選ぶことができるが、炭化水素溶媒に均一に分散させる観点から、粉末状酸化銀(I)の粒径分布が200メッシュ以下(75μm以下)の範囲に収まるものが好適に利用される。
〔ギ酸銀(I)の生成〕
工程aでは、炭化水素溶媒中で、粉末状酸化銀(I)にギ酸(HCOOH)を作用させて、粉末状酸化銀(I)をギ酸銀(I)に変換する。このために、炭化水素溶媒に粉末状酸化銀(I)を加えて分散させ、その分散液にギ酸を加えることができる。反応に際しては、適宜攪拌を行うことができる。
ギ酸は、水素結合により会合して、二量体(HCOOH:HOOCH)を形成している。炭化水素溶媒中でも、その大半は、二量体を形成した状態で分散する。従って、ギ酸の二量体が、分散液中の粉末状酸化銀(I)に作用して、下記式iで表記される反応によって、ギ酸銀(I)(HCOOAg)が生成される。
式i:
Ag O+(HCOOH:HOOCH)→2[(HCOO)(Ag]+H
なお、式iの反応で副生する水分子(HO)の大半部分は、生成する[(HCOO)(Ag]の凝集体中に、「結晶水」の形態で取り込まれていると、推定される。
上記式iで表記される反応は、塩基性金属酸化物である酸化銀(I)と、ギ酸の二量体との「中和反応」に相当しており、発熱反応である。粉末状酸化銀(I)に対する、炭化水素溶媒量の比率を前述の範囲(粉末状酸化銀(I)100質量部当たり400質量部以上700質量部以下)に選択することにより、反応液の温度上昇を、40℃付近までに抑制することが容易である。すなわち、液温が上昇することを抑制することにより、副反応を抑制することが容易である。副反応としては、下記式A1で表記可能な還元反応や、下記式(A2)で表記可能な、生成するギ酸銀(I)自体の分解的還元反応がある。
式A1:
2[(HCOO)(Ag]+HCOOH→2Ag+2HCOOH+CO↑、
式A2:
2[(HCOO)(Ag]→2Ag+HCOOH+CO↑。
上記式iの反応を行うため、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオン1モルあたり、ギ酸を好ましくは1.02モル〜1.4モル、より好ましくは、1.05モル〜1.2モルの範囲で使用することが好ましい。過剰量のギ酸を添加することで、原料の粉末状酸化銀(I)の全量を、ギ酸銀(I)に変換することができる。
過剰量のギ酸を添加した場合、未反応のギ酸が残余し、炭化水素溶媒中にギ酸の二量体として分散していることになる。
〔アミン化合物による還元反応〕
工程aの後、引き続き前記炭化水素溶媒中で、ギ酸銀(I)中に含まれる銀カチオンを、炭素数8〜11のモノカルボン酸の存在下で、アミン化合物(1級アミンおよび2級アミン)による還元反応により銀原子に還元する。これにより、モノカルボン酸およびアミン化合物によって表面が被覆された銀ナノ粒子が形成される。
具体的には、好ましくは工程aから得られる反応液の温度が30℃まで降下した時点で、工程aから得られる液に、炭素数8〜11のモノカルボン酸とアミン化合物(1級アミン(NH−R)と2級アミン(NH−R))とを添加することができる。
これによって、ギ酸銀(I)のアミン錯体、すなわち1級アミン錯体(HCOOAg:NH−R)および2級アミン錯体(HCOOAg:NH−R)が生成される。
アミン錯体の生成に際して、ギ酸銀(I)の凝集体中にすなわち[(HCOO)(Ag]の凝集体中に「結晶水」の形態で取り込まれていた水分子が、アミン錯体のギ酸アニオン種(O−CHO)部分に「溶媒和」する状態となる、と推定される。従って、最終的に生成するギ酸銀(I)のアミン錯体は、上記の水分子(HO)が「溶媒和」する状態で、炭化水素溶媒中に溶解されると推定される。
工程aから得られる反応液中に未反応のギ酸が残余している場合、工程aから得られる反応液に前記アミン化合物を添加すると、アミン化合物が残余しているギ酸と反応し、ギ酸のアミン付加塩(HCOOH:NH−R、HCOOH:NH−R)が生成される。ギ酸のアミン付加塩形成反応は、酸・塩基の「中和反応」に相当しており、発熱反応である。よって、この反応の進行に伴って、反応液の温度が上昇する。なお、反応液の温度が、利用している炭化水素溶媒の沸点に近づくと、炭化水素溶媒の蒸散が開始するため、反応液の温度は、炭化水素溶媒の沸点を超えることはない。
液温が例えば55℃〜65℃程度に上昇すると、ギ酸銀(I)のアミン錯体(1級アミン錯体および2級アミン錯体)は、下記式iiまたはiiiで表記される分解的還元反応を開始する。
式ii:
2(R−NH:Ag−OOCH)
→2[R−NH:Ag]+HCOOH+CO↑、
式iii:
2(R−NH:Ag−OOCH)
→2[R−NH:Ag]+HCOOH+CO↑。
この反応で発生する二酸化炭素(CO)は気泡を形成するため、反応液では、発泡が観測される。
また、副生されるギ酸は、一旦は、ギ酸の二量体を形成するが、反応液中に溶解しているアミン化合物と反応してギ酸のアミン付加塩を生成することがある。
一方、分解的還元反応で生成する金属銀原子[Ag:NH−R]および[Ag:NH−R]は、凝集して、金属銀原子の凝集体を構成する。その際、金属銀原子の凝集体の形成に付随して、金属銀原子に配位している1級アミン(R−NH)および2級アミン(R−NH)の一部は、熱的に解離する。従って、形成された金属銀原子の凝集体は、金属原子からなる球状の核と、その核の表面を被覆するアミン化合物(1級アミン(R−NH))からなる被覆剤分子層で構成される、銀ナノ粒子となる。
熱的に解離したアミン(R−NHおよびR−NH)は、ギ酸銀(I)のアミン錯体(HCOOAg:NH−RおよびHCOOAg:NH−R)の生成反応、ならびに、ギ酸のアミン付加塩形成反応に関与することもある。
工程aが完了した時点で残余する未反応のギ酸の量と、添加するアミン化合物の量、ならびに、全体の反応液の量を調節することで、工程bにおいて反応液の液温が70℃以上に上昇することを防止することができる。
工程bにおいて、反応液中に過剰量のアミン化合物が存在していれば、ギ酸のアミン付加塩形成反応が進行するため、溶解しているギ酸の濃度は、低い水準に維持される。従って、還元剤の機能を有するギ酸が作用して上記式A1で表される還元反応(副反応)が進行することを防止することができる。
また、工程bにおいて反応液の液温が70℃以上に上昇することを防止すれば、ギ酸銀(I)のアミン錯体の生成反応を優先的に進行させることが容易であり、副反応であるギ酸銀(I)自体の分解的反応の進行を抑制することが容易である。
〔1級アミン〕
銀ナノ粒子の調製容易性の観点から、1級アミンの分子量が、120以上200以下であることが好ましい。分子量が200以下の1級アミンを用いて銀ナノ粒子を調製すると、その粒子を用いて導電性ペーストとして利用する場合に、焼成プロセス時の銀からの1級アミンの脱離および分解が容易であり、導通特性の観点から好ましい。一方、分子量が120以上の1級アミンを用いて銀ナノ粒子の作製をすると、安定な銀ナノ粒子の作製が容易である。具体的には、粒子作製時に反応容器側面の鏡面化(銀の析出)が生じるといった現象を回避することが容易である。
銀ナノ粒子の分散性の観点から、1級アミンが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有することが好ましい。すなわち、1級アミン(R−NH)を構成する原子団(水素以外の、窒素原子に結合する原子団)Rが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を含むことが好ましい。前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖をRが含むと、調製した銀ナノ粒子が前記炭化水素溶媒に対して安定に分散することが容易である。具体的には分子内に9以上11以下の炭素原子を有する1級アミン(R−NH)を用いることができる。また、導電性ペーストを120℃程度の低温で焼結した場合の焼結体の導電性の観点から、分子内に11以下の炭素原子を有する1級アミンを用いることが望まれる。
これらの観点から、好ましい1級アミンとして3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、デシルアミンなどを挙げることができる(これらの1級アミンは炭化水素系溶媒に対して親和性を有している)。
〔2級アミン〕
銀ナノ粒子作製時の反応性の観点から、2級アミンの分子量が、100以上150以下であることが好ましい。分子量が150以下の2級アミンは還元力の点で好ましく、反応を進行させることが容易である。また、分子量100以上のアミンは沸点の観点から好ましく、反応中に速やかに蒸散してしまうことを防止することが容易である。
また、銀ナノ粒子の分散性の観点から、2級アミンが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有することが好ましい。すなわち、2級アミン(R−NH)を構成する原子団(水素以外の、窒素原子に結合する原子団)RおよびRのうちの一方もしくは両方が、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を含むことが好ましい。前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖をRおよびRのうちの一方もしくは両方が含むと、調製した銀ナノ粒子が前記炭化水素溶媒に対して安定に分散することが容易である。具体的には、分子内に6以上12以下の炭素原子を有する2級アミン(R−NH)を用いることが好ましい。
このような2級アミンの例としては、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルヘキシルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミンなどを挙げることができる。
〔炭素数8〜11のモノカルボン酸〕
工程bにおいて炭素数が11以下のモノカルボン酸を用いて銀ナノ粒子を調製すると、その粒子を用いて導電性ペーストとして利用する場合に、焼成プロセス時の銀からのモノカルボン酸の脱離および分解が容易であり、導通特性の観点から好ましい。一方、炭素数が8以上のモノカルボン酸を用いて銀ナノ粒子の作製をすると、銀ナノ粒子を被覆している1級アミンに加えモノカルボン酸も銀ナノ粒子を被覆するため、立体的に銀ナノ粒子同士の接触が抑制され、安定な銀ナノ粒子の作製が容易である。
〔工程bで用いるモノカルボン酸およびアミン化合物の量〕
工程bにおいて、炭素数8〜11のモノカルボン酸、1級アミンおよび2級アミンの量を、それぞれ、それぞれ次の量で用いることが好ましい。
炭素数8〜11のモノカルボン酸:ギ酸銀(I)に含まれる銀カチオン1モル量当たり、0.05モル量〜0.3モル量。
1級アミン:ギ酸銀(I)に含まれる銀カチオン1モル量当たり、0.05モル量〜0.3モル量。
2級アミン:1級アミンと2級アミンの総モル量が、ギ酸銀(I)に含まれる銀カチオン1モル量当たり、1.1モル量〜1.5モル量の範囲となるように2級アミンを用いる。
このような量的バランスを選ぶことは、モノカルボン酸およびアミン化合物によって表面が被覆された銀ナノ粒子を形成する観点から、好ましい。
〔工程c〜e〕
工程aおよびbに続けて、工程c〜eをこの順に行うことができる。それによって、銀ナノ粒子が、或る炭化水素溶媒(工程eで用いる炭化水素溶媒)中に分散した分散液を得ることができる。
c)工程bから得られる反応液から、前記炭化水素溶媒を減圧下で気化させて除去することにより、前記銀ナノ粒子を含有する残渣を回収する工程。
d)該残渣をアルコールで洗浄する工程。
e)工程dで洗浄した後の残渣を、前記炭化水素溶媒と同一のもしくは異なる炭化水素溶媒に分散させて、銀ナノ粒子分散液を得る工程。
工程cにおいて、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒、減圧下で気化させて除去する。同時に、2級アミンを気化させて除去することができる。この操作は、例えばエバポレーターを用いる方法など、公知の方法で適宜行うことができる。例えば、液温40℃にてエバポレーターにより50hPa以下程度まで容器内の圧力を低下させ、炭化水素溶媒および2級アミンを除去する。
工程dで用いるアルコールは、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノールが挙げられる。このうち、メタノールは、特に極性が高く、かつ後工程における除去の容易さという観点から、好適に用いることができる。以下の工程dの説明では、アルコールの一例としてメタノールを記載している。
工程dにおいて、メタノールで微粒子を洗浄する公知の方法を採用できる。例えば工程cから得られる残渣に、メタノールを加えて攪拌した後に、デカンテーションによりメタノールを取り除くことで、メタノールを実質的に残渣から除去することができる。この際、余剰のギ酸やアミン化合物、またはそれらを含有する塩などの成分の相当量は、メタノールに溶解されることで、銀ナノ粒子の洗浄が行われる。効率よく洗浄を行うために、原料として用いる粉末状酸化銀(I)100質量部当たり500質量部以上1000質量部以下のメタノールを用い、2回以上4回以下の回数に分割して洗浄することが好ましい。
工程eで使用する炭化水素溶媒は、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒と同じ種類であっても異なる種類であってもよい。この炭化水素溶媒としては、先に〔工程aおよびbで用いる炭化水素溶媒〕において述べた炭化水素溶媒を用いることができる。原料として用いる粉末状酸化銀(I)100質量部当たり100質量部以上300質量部以下の炭化水素溶媒に銀ナノ粒子を分散させることが好ましい。得られる銀ナノ粒子は、モノカルボン酸および炭化水素鎖を持つアミン化合物で被覆した銀ナノ粒子であるため、工程eにおいて炭化水素溶媒を用いることにより、炭化水素溶媒中に均一に分散した銀ナノ粒子を得ることができる。
銀ナノ粒子の用途に応じて、工程eから得られる分散液をそのままインク等の原料として用いることができる。特に、下記手順に従って、導電性ペースト、特には印刷用の導電性ペーストを調製することができる。
工程eにおいて残渣(メタノール洗浄後)を再分散させる分散溶媒として、沸点65℃〜155℃の範囲の炭化水素溶媒が好ましく用いられる。必要に応じて、工程eの後に、工程eで得られた分散液の炭化水素溶媒を、好ましくは沸点180℃〜355℃の範囲の高沸点炭化水素溶媒、より好ましくは沸点200℃〜310℃の範囲、さらに好ましくは沸点220℃〜310℃の範囲の高沸点炭化水素溶媒に置換することで導電性ペーストを調製できる。
あるいは、場合によっては、工程eにおいて残渣(メタノール洗浄後)を分散させる分散溶媒として、前記高沸点炭化水素溶媒を用いることもできる。この場合、工程eから直接、導電性ペーストを得ることができる。
利用可能な高沸点炭化水素溶媒の一例として、テトラデカン(沸点253.6℃)などの炭素数12〜16の範囲のアルカン、あるいは、ナフテン/パラフィン系炭化水素の混合溶媒である、JX日鉱日石エネルギー製のAFソルベント(商品名)やナフテゾール(商品名)などが挙げられる。また、出光興産製のIPソルベント(商品名)も挙げられる。また、複数種の高沸点炭化水素溶媒の混合物を利用することもできる。
導電性ペーストを印刷用インクのために使用することができる。印刷法の例としては、インクジェット印刷法、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷法などが挙げられる。印刷用導電性ペーストに用いられる公知の成分を適宜加えることもできる。
被覆層を有する銀ナノ粒子において、分散安定性の観点から、銀100質量部当り被覆剤が10質量部以上であることが好ましい。また、焼成後数ミクロン以上の膜厚の膜を低温焼成で形成する観点から、銀100質量部当り被覆剤が22質量部以下であることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
〔実施例1〕
・工程a
粉末状の酸化銀(I)(AgO、式量231.735)100質量部(0.43モル部)をメチルシクロヘキサン(沸点100.9℃、密度0.7737)550質量部に分散させた。得られた分散液に、室温(25℃)で攪拌しつつ、ギ酸(HCOOH、式量46.03、沸点100.75℃)41.3質量部(0.90モル部)を3〜5分かけて滴下した。酸化銀(I)のAg1モル当たり、ギ酸1.04モル量を添加したことになる。炭化水素溶媒であるメチルシクロヘキサン中では、ギ酸銀が生成される。ギ酸の添加により、発熱反応が進み液温は45℃付近まで上昇した。粉末状の酸化銀がギ酸銀に変換されると、その後は反応液の温度が降下した。
・工程b
工程aから得られた反応液の温度が27℃以下まで降下した時点で、反応液にネオデカン酸(C1020、式量172.26)18.4質量部を添加した。酸化銀(I)のAg1モル当たり、ネオデカン酸0.12モル量を添加したことになる。
次いで2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(C1125NO、式量187.32、沸点235℃)23.1質量部とジイソプロピルアミン(C15N、式量101.19、沸点84℃)115.3質量部をメチルシクロヘキサン92質量部に溶解した溶液を、反応液に添加した。出発原料の酸化銀(I)のAg1モル当たり、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンを0.14モル量、ジイソプロピルアミンを1.32モル量、添加したことになる。
アミンの添加により酸塩基の中和反応により液温は65℃付近まで上昇した。液温の上昇に伴い、ギ酸銀のアミン錯体を経由して、ギ酸銀の分解的な還元反応が生じる。還元反応により析出した銀ナノ粒子は系内の1級アミン(2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン)およびネオデカン酸で保護され、これにより銀ナノ粒子の肥大化が抑制される。反応液の色は、ギ酸銀が懸濁している灰色の状態から、アミン添加によってギ酸銀の溶解と共に茶色に変化し、発泡を伴って濃紺色に変化した。液温が65℃付近まで上昇した後、反応液の攪拌を継続し、液温が45℃まで下降した時点で攪拌を停止した。
・工程c(脱溶剤)
得られた濃紺色の分散液をナス型フラスコに移し、減圧下で反応溶剤のメチルシクロヘキサンやジイソプロピルアミンを留去した。
減圧下で溶剤等を留去する際の温度は40℃とし、減圧度は150hPaからスタートした。溶剤等が留去される状態を確認しながら、突沸に注意しながら徐々に減圧度を上げ、最終的に60hPaにした。60hPaで脱溶剤を進めていくと、ナスフラスコ内の銀ナノ粒子を含む内容物は溶剤等が除去されるためスラリー状に変化した。温度を45℃に上げてさらに10min程度減圧で脱溶剤を行った。
・工程d(メタノール洗浄)
脱溶剤処理後の残渣にメタノール(沸点64.7℃)280質量部、蒸留水50質量部を添加した。
脱溶剤処理後の残渣中には、ネオデカン酸および2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子、ギ酸またはネオデカン酸のジイソプロピルアミン付加塩、ギ酸またはネオデカン酸の2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン付加塩、残留のメチルシクロヘキサンが含まれる。メタノールと蒸留水からなる混合溶媒中に、ギ酸またはネオデカン酸のジイソプロピルアミン付加塩、ギ酸またはネオデカン酸の2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン付加塩、ならびにメチルシクロヘキサンが溶解される。一方銀ナノ粒子は含水メタノールに分散することなく沈降する。
混合溶媒(含水メタノール)の上澄み相をデカンテーションにより除去した。
残留成分の除去効率を高めるために、デカンテーションから得られた沈降相に更にメタノールを280質量部添加して攪拌し、デカンテーションにより上澄み相を除去した。
・工程e(溶媒への再分散)
デカンテーションから得られた沈降相に、メチルシクロヘキサン120質量部を添加した。沈降した銀ナノ粒子はメチルシクロヘキサンに分散した。沈降した銀粒子に残存していたメタノールはメチルシクロヘキサンとの相溶性が乏しいため相分離した。相分離したメタノール相部分を除去した。
・精製工程
銀ナノ粒子が分散したメチルシクロヘキサン相中には、若干量のメタノールが溶解し、混入していた。減圧下、混入しているメタノールを留去した。メタノールとメチルシクロヘキサンの沸点の差を利用してメタノールを選択的に留去した。具体的には、45℃(浴温)、150hPaで5min脱メタノールを行った後、減圧度を120hPaに上げて、さらに3min脱メタノールを行った。
得られた銀ナノ粒子が分散しているメチルシクロヘキサン液を0.2μmメンブレンフィルターで濾過し凝集物を除去した。濾過から得られる濾液として、銀ナノ粒子分散液を得た。
・評価
得られた銀ナノ粒子分散液に含まれる金属銀の総量を測定し、出発原料の酸化銀(I)中に含まれる銀の含有量を基準とする収率を算出した。算出された収率は98%であった。
金属銀の総量の測定方法は以下のとおりである。得られた銀ナノ粒子分散液をるつぼに秤量し、熱風ドライヤーで含有されるメチルシクロへキサンを乾燥除去して固形物を得た後、るつぼをマッフル炉に入れ700℃で30min焼成した。焼成後は金属のみが残存するため、金属量を秤量し、分散液の濃度から金属銀の総量を算出した。
また、得られた銀ナノ粒子分散液を室温にて1週間静置した後、粒子の沈降の有無を目視にて観察した。粒子の沈降は観察されなかった。
得られた銀ナノ粒子分散液中に分散している銀ナノ粒子の粒子径を、光散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラックベル(株)製、商品名:ナノトラックUPA150)を利用して測定した。その測定結果から、濾液中に均一に分散している銀ナノ粒子の平均粒子径は9nmであることがわかった。
得られた銀ナノ粒子分散液中には、ネオデカン酸、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンで被覆された銀ナノ粒子100質量部(被覆剤を含まない銀だけの質量として100質量部)当たり、ネオデカン酸、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンの合計で14.0質量部が銀ナノ粒子の表面を被覆していた。
銀ナノ粒子を被覆している被覆剤の量の測定方法は次のとおりである。すなわち、銀ナノ粒子がメチルシクロへキサンに分散した分散液をガラス瓶に0.1g程度秤量し、ドライヤー(冷風)で溶剤分を乾燥させ粉状にした。乾燥粉約10mgを熱分析装置(商品名:TG/DTA6200、SIIナノテクノロジー(株)製)にて500℃まで昇温して測定し、重量減少率から被覆剤量を算出した。
〔実施例2〕
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液を、この分散液に含有される銀の量が70質量部となる量用い、これにIPソルベント2028(商品名、出光興産製、沸点213〜262℃、密度0.789g/cm)30質量部を混合した。
得られた混合液中に含まれるメチルシクロヘキサンを、減圧下で留去することでIPソルベント2028を分散溶剤とするインク(印刷用導電性ペースト)を調製した。
作製されたインクの粘度は11mPa・s(20℃)であり、金属含有量63質量%であった。この粘度はインクジェットで印刷することが可能な粘度である。
調製した導電性インクを用い、インクジェット印刷で幅25mm、長さ75mmのスライドガラス上に幅250μm、長さ15mmのパターンを塗布した。この塗布膜の平均膜厚は7μmであった。得られた塗布膜を大気中120℃で60分加熱処理し、含有される銀ナノ粒子の低温焼結を行った。作製された銀ナノ粒子の低温焼成膜についてその抵抗率を測定した。焼成後の膜厚は1.0μmであり、低温焼成膜の抵抗率は3.5μΩ・cmであった。
減圧下のメチルシクロへキサンの留去は、温度35〜40℃、減圧度50hPaで行った。メチルシクロへキサンの留出が少なくなった時点で減圧度を35hPaに上げ、温度を60℃にして30min程度減圧を行った。
得られたインクの粘度は、E型回転粘度計(商品名:ビスコメーターTV−25 TypeL、東機産業(株)製)を使用して20℃、60rpmで測定した。
金属含有量は、インクをるつぼに約0.8g秤量し、マッフル炉で700℃、30min焼成を行って金属量を秤量し、その値から算出した。
〔実施例3〕
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液を、この分散液に含有される銀の量が87質量部となる量用い、これにIPソルベント2835(商品名、出光興産製、沸点277〜353℃、密度0.82g/cm)13質量部を混合した。
得られた混合液中に含まれる、メチルシクロヘキサンを、減圧下で留去することでIPソルベント2835を分散溶剤とするペーストを調製した。
調製した導電性ペーストの粘度は、E型回転粘度計(商品名:ビスコメーターTV−25 TypeH、東機産業(株)製)を使用して25℃、60rpmで測定した。粘度は30Pa・s(25℃)であり、金属含有量79質量%であった。この粘度はグラビアオフセット印刷やスクリーン印刷で印刷することが可能な粘度である。
調製したペーストを用い、スクリーン印刷で幅25mm、長さ75mmのスライドガラス上に幅5mm、長さ30mmのパターンを印刷した。この塗布膜の平均膜厚は20μmであった。得られた塗布膜を大気中120℃で60分加熱処理し、含有される銀ナノ粒子の低温焼結を行った。作製された銀ナノ粒子の低温焼成膜についてその抵抗率を測定した。焼成後の膜厚は3.5μmであり、低温焼成膜の抵抗率は6.5μΩ・cmであった。
〔実施例4〕
実施例3で得られた導電性ペーストを、このペーストに含有される銀の量が50質量部となる量用い、これに銀粉Ag−SHA−224(商品名、同和エレクトロ二クス製、平均粒子径0.5μm)50質量部と、IPソルベント2835(沸点277〜353℃、密度0.82g/cm、出光興産)2.0質量部とを混合し、攪拌脱泡装置で銀粉を均一に分散させ、導電性ペーストを得た。
調製したペーストの粘度は50Pa・s(25℃)、金属含有量は87質量%であった。この粘度はグラビアオフセット印刷やスクリーン印刷で印刷することが可能な粘度である。
調製したペーストを用い、実施例3と同様にスクリーン印刷および低温焼成を行った。スクリーン印刷で形成した塗布膜の平均膜厚は25μmであった。焼成後の膜厚は7μmであり、低温焼成膜の抵抗率は8.5μΩ・cmであった。
〔実施例5〕
ネオデカン酸(モノカルボン酸)の添加量を18.4質量部から10質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を調製した。銀ナノ粒子の収率は低下したが、分散安定性は良好であった。
〔実施例6〕
実施例1で得た銀ナノ粒子分散液に替えて、実施例5で得た銀ナノ粒子分散液を使用したこと以外は実施例3と同様にして、印刷用導電性ペーストを作製し、印刷および焼成を行った。導電性ペーストは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で7μΩ・cm(焼成後膜厚4μm)の導通性が得られた。
〔実施例7〕
ネオデカン酸(モノカルボン酸)の添加量を18.4質量部から25質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を調製した。分散安定性の良い銀ナノ粒子が得られたが、被覆剤量はやや増加した。
〔実施例8〕
実施例1で得た銀ナノ粒子分散液に替えて、実施例7で得た銀ナノ粒子分散液を使用したこと以外は実施例3と同様にして、印刷用導電性ペーストを作製し、印刷および焼成を行った。導電性ペーストは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で9.5μΩ・cm(焼成後膜厚5μm)の導通性が得られた。
〔実施例9〕
モノカルボン酸として、ネオデカン酸(炭素数10)18.4質量部に替えて、2エチルへキサン酸(炭素数8)15.4質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を調製した。ただし、モノカルボン酸のモル量は実施例1と同じである。モノカルボン酸の種類を変更しても高収率で分散安定性の良い銀ナノ粒子が得られた。
〔実施例10〕
実施例9で得られた銀ナノ粒子分散液を、この分散液に含有される銀の量が65質量部となる量用い、これにナフテゾール220(商品名、JX日鉱日石エネルギー製、沸点221〜240℃、密度0.814g/cm)35質量部を混合した。この点以外は実施例2と同様にして、ナフテゾール220を分散溶剤とする導電性インクを調製し、評価した。導電性インクは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で3.9μΩ・cm(焼成後膜厚1.1μm)の導通性が得られた。
〔実施例11〕
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、実施例9で得られた銀ナノ粒子分散液を使用したこと以外は実施例3と同様にして、印刷用導電性ペーストを作製した。導電性ペーストは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で6.8μΩ・cm(焼成後膜厚5μm)の導通性が得られた。
〔実施例12〕
2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(1級アミン)の添加量を23.1質量部から15質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を調製した。銀ナノ粒子の収率はやや低下したが、分散安定性の良い粒子が得られた。
〔実施例13〕
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、実施例12で得られた銀ナノ粒子分散液を使用したこと以外は実施例3と同様にして、印刷用導電性ペーストを作製した。導電性ペーストは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で6.7μΩ・cm(焼成後膜厚3.2μm)の導通性が得られた。
〔実施例14〕銀ナノ粒子分散液の調製
1級アミンを2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(炭素数11)からジブチルアミノプロピルアミン(炭素数11)に変更したこと以外は実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散液を作製した。1級アミンの種類を変更しても高収率で分散安定性の良い銀ナノ粒子が得られた。
〔実施例15〕
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、実施例14で得られたナノ粒子を使用したこと以外は実施例3と同様にして、印刷用導電性ペーストを作製した。導電性ペーストは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で8.2μΩ・cm(焼成後膜厚3μm)の導通が得られた。
〔実施例16〕
1級アミンを、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(炭素数11)23.1質量部からデシルアミン(炭素数10)19.4質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散液を作製した。1級アミンの種類を変更しても高収率で分散安定性の良い銀ナノ粒子が得られた。
〔実施例17〕
実施例16で得られた銀ナノ粒子分散液を、この分散液に含有される銀の量が65質量部となる量用い、これにIPソルベント2028(商品名、出光興産製、沸点213〜262℃、密度0.789g/cm)35質量部を混合した。この点以外は実施例2と同様にして、IPソルベント2028を分散溶剤とする導電性インクを調製し、評価した。
導電性インクは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で4.2μΩ・cm(焼成後膜厚1.2μm)の導通性が得られた。
〔実施例18〕
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、実施例16で得られたナノ粒子を使用したこと以外は実施例3と同様にして、印刷用導電性ペーストを作製した。導電性ペーストは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で7μΩ・cm(焼成後膜厚3.8μm)の導通性が得られた。
〔実施例19〕
2級アミンの種類を、ジイソプロピルアミンからジブチルアミンに変更したこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を調製した。2級アミンの種類を変更しても高収率で分散安定性の良い銀ナノ粒子が得られた。
〔実施例20〕
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、実施例19で得られたナノ粒子を使用したこと以外は実施例3と同様にして、印刷用導電性ペーストを作製した。導電性ペーストは均一に仕上がり、120℃、60分の焼成で7.5μΩ・cm(焼成後膜厚3.6μm)の導通性が得られた。
〔比較例1〕
本例では、ネオデカン酸を配合せず、またアミンとして1級アミンのみを用いて銀ナノ粒子分散液を調製した。
・工程a1
粉末状の酸化銀(I)100質量部(0.43モル部)をメチルシクロヘキサン550質量部に分散させた。得られた分散液に、室温(25℃)で攪拌しつつ、ギ酸41.3質量部(0.90モル部)を3〜5分かけて滴下した。酸化銀(I)のAg1モル当たり、ギ酸1.04モル量を添加したことになる。
炭化水素溶媒であるメチルシクロヘキサン中では、ギ酸銀が生成される。ギ酸の添加により、発熱反応が進み液温は45℃付近まで上昇した。粉末状の酸化銀がギ酸銀に変換されると、その後は反応液の温度が降下した。
・工程b1
反応液の温度が27℃以下まで降下した時点で、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン138質量部をメチルシクロヘキサン92質量部に溶解した溶液を、反応液に添加した。出発原料の酸化銀(I)のAg1モル当たり、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン0.86モル量を添加したことになる。
アミンの添加により酸塩基の中和反応により液温は65℃付近まで上昇した。液温の上昇に伴い、ギ酸銀のアミン錯体を経由して、ギ酸銀の分解的な還元反応が生じる。還元反応により析出した銀ナノ粒子は系内の2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンで保護され、これにより銀ナノ粒子の肥大化が抑制される。反応液の色はギ酸銀が懸濁している灰色の状態から、アミン添加によってギ酸銀の溶解と共に茶色に変化し、発泡を伴って濃紺色に変化した。液温が65℃付近まで上昇した後、反応液の攪拌を継続し、液温が45℃まで下降した時点で攪拌を停止した。
・工程c〜e
得られた濃紺色の分散液について、実施例1の工程c、dおよびeと同様の操作を行って、銀ナノ粒子分散液を得た。
得られた銀ナノ粒子分散液について実施例1と同様の評価を行った。銀の収率は98%であった。銀ナノ粒子の平均粒子径は7nmであった。また銀ナノ粒子分散液中、銀ナノ粒子100質量部当たり、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン28.2質量部が銀ナノ粒子の表面を被覆していた。
〔比較例2〕
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、比較例1で得られた銀ナノ粒子分散液を使用したこと以外は実施例2と同様にして、印刷用導電性インクを作製し、インクジェット印刷および焼成を行った。
インクジェット印刷で形成した塗布膜の平均膜厚は7μmであった。焼成後の膜厚は0.7μmであり、低温焼成膜の抵抗率は5μΩ・cmであった。
〔比較例3〕
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、比較例1で得られた銀ナノ粒子分散液を使用したこと以外は実施例3と同様にして、導電性ペーストを作製した。
調製した導電性ペーストは粘着性が高く、全く流動しない状態であり、粘度測定できなかった。導電性ペーストは、印刷用としては不適正な状態であった。導電性ペーストを、金属のヘラを用いて手でガラス上に塗布して120℃で焼成を行ったが、膜割れが激しく導通性を測定することはできなかった。
〔比較例4〕
1級アミンを、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(炭素数11)23.1質量部から、ドデシルアミン(炭素数12)22.9質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を作製した。1級アミンの種類を変更しても高収率で分散安定性の良い銀ナノ粒子が得られた。
〔比較例5〕
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、比較例4で得られた銀ナノ粒子分散液を使用したこと以外は実施例3と同様にして、導電性ペーストを作製した。導電性ペーストは均一に仕上がったが、120℃、60分の焼成では導通性が得られなかった。200℃、30分の焼成では6μΩ・cm(焼成後膜厚3μm)の導通性が得られた。
〔比較例6〕
1級アミンを、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(炭素数11)23.1質量部から、2−エチルヘキシルアミン(炭素数8)15.9質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を作製しようと試みた。1級アミンの種類を変更してもアミンによるギ酸銀の還元反応によって銀ナノ粒子が生成したが、沈降する銀粒子も混在した。また、メタノール添加によるナノ粒子の洗浄工程で次第に沈降する粒子が増え、メチルシクロへキサンに再分散(工程e)可能なナノ粒子は得られなかった。
〔比較例7〕
2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(1級アミン)を使用せず、ジイソプロピルアミン(2級アミン)を128質量部使用したこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を作製しようと試みた。2級アミン添加後、反応液が発熱し、紺色の均一状態となった後、銀粒子が肥大化し沈降した。溶剤のメチルシクロへキサンに分散している粒子は無く、灰色の銀粒子が沈降していた。
〔比較例8〕
モノカルボン酸を添加せずに銀ナノ粒子分散液を調製した。すなわち、比較例1の工程a1と同様の操作を行い、次いで実施例1の工程b、c、dおよびeと同様の操作を行って、銀ナノ粒子分散液を調製した。収率は低下するものの、銀ナノ粒子が均一に分散した銀ナノ粒子分散液が得られた。しかし、室温で1日程度放置すると沈降が生じ、分散の安定性が維持できなかった。
〔比較例9〕
モノカルボン酸を、ネオデカン酸(炭素数10)18.4質量部から、ヘプタン酸(炭素数7)13.9質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、銀ナノ粒子分散液を調製した。モノカルボン酸の種類を変更しても高収率で分散安定な粒子が得られたが、被覆剤量は多くなった。
〔比較例10〕
実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液に替えて、比較例9で得られた銀ナノ粒子分散液を使用したこと以外は実施例2と同様にして、導電性ペーストを作製し、インクジェット印刷および焼成を行った。導電性インクは均一に仕上がったが、120℃、60分の焼成では導通が得られなかった。180℃、60分の焼成では8μΩ・cm(焼成後膜厚0.8μm)の導通性が得られた。カルボン酸の鎖長が短い分、銀への配位力が強くなるためと思われる。
表1に、実施例における主要成分の使用量(質量部)および評価結果を示す。表2に、比較例における主要成分の使用量(質量部)および評価結果を示す。
Figure 2017073364
Figure 2017073364

Claims (8)

  1. 表面に被覆剤分子からなる被覆層を有する平均粒子径5〜20nmの銀ナノ粒子の分散液を調製する方法であって、
    a)炭化水素溶媒中において、粉末状酸化銀(I)にギ酸を作用させ、粉末状酸化銀(I)をギ酸銀(I)に変換する工程、および、
    b)前記炭化水素溶媒中で、ギ酸銀(I)中に含まれる銀カチオンを、炭素数8〜11のモノカルボン酸の存在下、アミン化合物による還元反応により銀原子に還元することにより、アミン化合物及びモノカルボン酸によって表面が被覆された平均粒子径5〜20nmの銀ナノ粒子を形成する工程
    を含み、
    前記アミン化合物として、炭素数9〜11の1級アミンと、2級アミンの両方を用いる
    ことを特徴とする銀ナノ粒子分散液の調製方法。
  2. 前記炭化水素溶媒は、65℃〜155℃の沸点を有する、炭素数6〜9の直鎖もしくは環状のアルカンであり、
    工程aにおいて、前記粉末状酸化銀(I)100質量部当たり、前記炭化水素溶媒を400質量部〜700質量部用いる
    ことを特徴とする請求項1に記載の銀ナノ粒子分散液の調製方法。
  3. 前記1級アミンの分子量が120〜200であり、
    前記1級アミンが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の銀ナノ粒子分散液の調製方法。
  4. 前記2級アミンの分子量が100〜150であり、
    前記2級アミンが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子分散液の調製方法。
  5. 工程bにおいて、ギ酸銀(I)に含まれる銀カチオン1モル量当たり、
    前記モノカルボン酸を0.05モル量〜0.3モル量用い、
    前記1級アミンを0.05モル量〜0.3モル量用い、
    1級アミンと2級アミンの総モル量が1.1モル量〜1.5モル量の範囲となるように前記2級アミンを用いる
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子分散液の調製方法。
  6. 下記の工程c〜e
    c)工程bから得られる反応液から、前記炭化水素溶媒を減圧下で気化させて除去することにより、前記銀ナノ粒子を含有する残渣を回収する工程;
    d)該残渣をアルコールで洗浄する工程;および、
    e)工程dで洗浄した後の残渣を、前記炭化水素溶媒と同一のもしくは異なる炭化水素溶媒に分散させて、銀ナノ粒子分散液を得る工程
    をさらに含む
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子分散液の調製方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって調製された銀ナノ粒子分散液を用いて印刷用導電性ペーストを調製する、印刷用導電性ペーストの調製方法。
  8. 表面に被覆剤分子からなる被覆層を有する平均粒子径5〜20nmの銀ナノ粒子を含む印刷用導電性ペーストであって、
    前記被覆層が、炭素数8〜11のモノカルボン酸および炭素数9〜11の1級アミンを含む、
    印刷用導電性ペースト。
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