JP6315669B2 - 銀微粒子の調製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、酸化銀を出発原料として、銀微粒子を調製する方法に関する。
金属の微粒子は、それを構成する金属の特性を利用して、配線材料、磁気材料、センサ材料、触媒などの各方面で幅広く使用されている。近年、これらの金属の微粒子に関して、その粒径が、かかる微粒子を利用する最終製品の性能に対しても、大きな影響を与えることが見出されてきた。その観点から、最終製品の高機能化ならびに小型化を目的として、粒径の極めて細かい微粒子、より具体的には、平均粒子径が、ナノメートルのスケールである、金属ナノ粒子が作製されるに至っている。
平均粒子径が、ナノメートルのスケールである金属微粒子(金属ナノ粒子)においては、かかる微粒子表面に表出する金属元素は、微細なステップ状の格子段差で構成される球状表面に位置するため、例えば、表面上における移動能が格段に大きくなるなどの、特有の性質(ナノサイズ効果)を示す。この様な金属ナノ粒子とすることにより初めて現れる特性を利用することで、派生する製品の高性能化および新しい機能の付与の可能性を目標として、近年、金属ナノ粒子の新たな用途開発が益々盛んになってきている。中でも、熱伝導率や電気伝導度の高い銀ナノ粒子を利用する導電性ペーストは、例えば、微細な配線層の形成に利用されている。
なお、銀ナノ粒子は、その表面の銀原子は、表面上における移動能が格段に大きいため、銀ナノ粒子相互が接触すると、表面の銀原子が相互に移動することで、融着を起こす傾向が強い。この融着は、室温付近でも進行する。そのため、導電性ペースト中に含有される銀ナノ粒子が相互に融着し、凝集粒子を形成することを防止するため、銀ナノ粒子の表面を被覆剤分子で被覆し、銀ナノ粒子相互が直接その金属表面を接することを防止している。
特許文献1には、非極性溶媒中に粉末状酸化銀を分散させ、過剰量のギ酸を添加して、該粉末状酸化銀にギ酸を作用させて、粉末状ギ酸銀(HCOOAg)に変換し、該粉末状ギ酸銀に1級アミンを作用させ、ギ酸銀の1級アミン付加塩とした上で、液温70℃程度で該ギ酸銀の1級アミン付加塩の分解的還元反応を行い、1級アミンからなる表面被覆層を有する銀ナノ粒子を調製する方法が記載される。
特許文献2には、2級アミンを含むアミン化合物、金属前駆体及び非極性溶媒を含む混合物を60ないし300℃に加熱して、少なくともロッド形状の金属酸化物ナノ粒子を有する金属酸化物ナノ粒子中間体を形成する段階と、前記混合物にキャッピング分子及び還元剤を添加し、90ないし150℃に加熱して金属ナノ粒子を形成する段階と、前記金属ナノ粒子を回収する段階と、を含む、ロッド形状のナノ粒子を含む金属ナノ粒子の製造方法が記載される。
特許文献3には、1級アミン及び3級アミンを含む溶液中にて金属化合物を加熱・還元することにより、ナノメートル級の金属微粒子を溶液中に分散した金属微粒子分散液を得る金属微粒子分散液の製造方法であり、前記3級アミンは、炭素数が2以上のアルキル基を含むことを特徴とする金属微粒子分散液の製造方法が記載される。
特許文献4には、カルボキシル基を有する有機化合物からなる保護剤が金属ナノ粒子表面に被覆された被覆金属ナノ粒子を、多価アルコールエーテルを含む極性分散溶媒に対して分散してなる、金属ナノ粒子分散液が記載される。
特許文献5には、凸版反転印刷法により導電性パターンを形成するための実質的にバインダー成分を含まない導電性インキであって、体積平均粒径(Mv)が10〜700nmの導電性粒子、離型剤、表面エネルギー調整剤、溶剤成分を必須成分とし、前記溶剤成分が25℃での表面エネルギーが27mN/m以上の溶剤と、大気圧下での沸点が120℃以下の揮発性の溶剤との混合物であり、25℃におけるインキの表面エネルギーが10〜21mN/mであることを特徴とする導電性インキが記載される。
特開2011−153362号公報 特開2009−084677号公報 特開2008−081828号公報 特開2011−038128号公報 WO2008/11484A1
銀微粒子を含有する導電性ペーストは、例えば反転印刷法やインクジェット法等の印刷法によって基材上に所望のパターン状に印刷されるが、印刷法によって、望ましい銀微粒子の大きさが異なる。
このように、銀微粒子の用途によって、望ましい粒子径は様々であり、したがって、銀微粒子の粒子径を広い範囲で容易に制御できる銀微粒子の調製方法が望まれる。同一のプロセスによって粒子径が大きく異なる銀微粒子を調製することができれば、同一のもしくは殆ど同一の製造装置を用いて、様々な粒子径の銀微粒子を得ることが可能になり、また、様々な粒子径の銀微粒子を含む導電性ペーストを得ることが可能になる。
しかし、銀微粒子の粒子径を広い範囲で容易に制御できる銀微粒子の調製方法は、従来知られていなかった。例えば、特許文献1記載の方法では、平均粒子径が5〜20nmの範囲の銀ナノ粒子しか製造できず、平均粒子径が数百nmから数μmの銀微粒子は製造できなかった。特許文献2〜5においても、粒子径制御を広い範囲で行うことのできる銀微粒子の調製方法は開示されていない。
本発明の目的は、銀微粒子の粒子径を広い範囲で容易に制御できる銀微粒子の調製方法を提供することである。
本発明の別の目的は、このような調製方法により得られた銀微粒子を含む印刷用導電ペースト、特には反転印刷用導電性ペーストを提供することである。
本発明の各態様によれば、以下に示す銀微粒子の調製方法、印刷用導電性ペースト、反転印刷用導電性ペーストが提供される。ただし、以下の10)に係る印刷用導電性ペーストならびに15)〜18)に係る反転印刷用導電性ペーストは参考用である。
1)粉末状酸化銀(I)を原料として用いて銀微粒子を調製する、銀微粒子の調製方法であって、
a)炭化水素溶媒中で、粉末状酸化銀(I)にギ酸を作用させて、粉末状酸化銀(I)をギ酸銀(I)に変換する工程、および
b)前記炭化水素溶媒中で、前記ギ酸銀(I)中に含まれる銀カチオンを、アミン化合物による還元反応により銀原子に還元して、アミン化合物によって表面が被覆された銀微粒子を形成する工程
を含み、
前記アミン化合物として、1級アミンと2級アミンの両方を用いる
ことを特徴とする銀微粒子の調製方法。
2)工程bにおいて、粒子径が相対的に小さな銀微粒子を形成する場合に前記アミン化合物に占める1級アミンの割合を相対的に大きくし、粒子径が相対的に大きな銀微粒子を形成する場合に前記アミン化合物に占める1級アミンの割合を相対的に小さくすることにより、銀微粒子の粒子径を制御する
ことを特徴とする1)記載の銀微粒子の調製方法。
3)前記炭化水素溶媒が、炭素数6以上9以下の直鎖のアルカンまたは炭素数6以上9以下のシクロアルカンであって、65℃以上155℃以下の沸点を有し、
工程aにおいて、前記炭化水素溶媒を、前記粉末状酸化銀(I)100質量部当たり350質量部以上600質量部以下用いる
ことを特徴とする1)または2)に記載の銀微粒子の調製方法。
4)前記1級アミンの分子量が、120以上300以下であり、
前記1級アミンが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する
ことを特徴とする1)〜3)のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
5)前記2級アミンの分子量が、100以上190以下であり、
前記2級アミンが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する
ことを特徴とする1)〜4)のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
6)工程bにおいて、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオンを基準として、1級アミンと2級アミンを合計で110モル%以上150モル%以下用いる
ことを特徴とする1)〜5)のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
7)工程bにおいて、炭化水素溶媒中で分散した銀微粒子を形成する場合には相対的に分子量が大きい1級アミンを用い、炭化水素溶媒中で沈殿した銀微粒子を形成する場合には相対的に分子量が小さい1級アミンを用いることにより、銀微粒子の分散状態を制御することを特徴とする1)〜6)のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
8)工程bにおいて、炭化水素溶媒中で分散した銀微粒子を形成し、
工程bの後に、
c)工程bから得られる反応液から、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒を減圧下で気化させて除去し、銀微粒子を含む残渣を回収する工程、
d)工程cから得られる残渣をアルコールで洗浄する工程、および、
e)工程dから得られるアルコール洗浄した残渣を、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒と同一のもしくは異なる炭化水素溶媒に分散させて、銀微粒子を含む分散液を得る工程
を含むことを特徴とする1)〜7)のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
9)工程bにおいて、炭化水素溶媒中で沈殿した銀微粒子を形成し、
工程bの後に、
f)工程bから得られる反応液から、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒を除去し、銀微粒子を含む残渣を回収する工程、
g)工程fから得られる残渣をアルコールで洗浄する工程、および、
h)工程gから得られる残渣を回収して、銀微粒子を得る工程
を含むことを特徴とする1)〜7)のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
10)前記8)または9)に記載の方法により得られた銀微粒子と、溶剤とを含む
ことを特徴とする印刷用導電性ペースト。
11)工程bにおいて、炭化水素溶媒中で分散した銀微粒子を形成し、
工程bの後に、
c)工程bから得られる反応液から、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒を減圧下で気化させて除去し、銀微粒子を含む残渣を回収する工程、
d)工程cから得られる残渣をアルコールで洗浄する工程、および、
i)アルコール中で、工程dから得られる残渣に含まれる銀微粒子の表面を被覆しているアミン化合物を、極性溶媒に対して親和性を有する保護剤で置換して、前記保護剤によって表面が被覆された銀微粒子を形成する工程、
j)工程iから得られる、銀微粒子とアルコールとを含む混合物に対して、アルコール除去、および炭化水素溶媒による洗浄を行う工程、
k)工程jから得られる炭化水素溶媒で洗浄した残渣を、極性溶媒に分散させて、銀微粒子を含む分散液を得る工程
を含むことを特徴とする1)〜7)のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
12)工程bにおいて、炭化水素溶媒中で沈殿した銀微粒子を形成し、
工程bの後に、
f)工程bから得られる反応液から、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒を除去し、銀微粒子を含む残渣を回収する工程、
g)工程fから得られる残渣をアルコールで洗浄する工程、および、
l)アルコール中で、工程gから得られる残渣に含まれる銀微粒子の表面を被覆しているアミン化合物を、極性溶媒に対して親和性を有する保護剤で置換して、前記保護剤によって表面が被覆された銀微粒子を形成する工程、
m)工程lから得られる、銀微粒子とアルコールとを含む混合物から、アルコールを除去し、得られた残渣を炭化水素溶媒で洗浄する工程、および
n)工程mから得られる残渣を回収して、銀微粒子を得る工程
を含むことを特徴とする1)〜7)のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
13)前記保護剤が、有機酸およびアミノ基を二つ以上有するポリアミンのうちのいずれか一方またはそれらの組み合わせである
ことを特徴とする11)に記載の銀微粒子の調製方法。
14)前記保護剤が、有機酸およびアミノ基を二つ以上有するポリアミンのうちのいずれか一方またはそれらの組み合わせである
ことを特徴とする12)に記載の銀微粒子の調製方法。
15)前記11)〜14)のいずれか一項に記載の方法により得られた銀微粒子と、溶剤とを含む
ことを特徴とする印刷用導電性ペースト。
16)バインダー樹脂成分を含有しておらず、13)に記載の方法により得られた、極性溶媒に対して親和性を有する保護剤によって表面が被覆された銀微粒子と、溶剤とを含み、
前記溶剤が、50℃以上120℃以下の沸点を有する低沸点溶剤と、150℃以上300℃以下の沸点を有する高沸点溶剤とからなり、
前記低沸点溶剤として、12mN/m以上18mN/m以下の表面張力(25℃)を有するフッ素系溶剤を、前記溶剤の総量に対して10質量%以上50質量%以下含む
ことを特徴とする反転印刷用導電性ペースト。
17)前記フッ素系溶剤が、ハイドロフルオロエーテル類であることを特徴とする16)に記載の反転印刷用導電性ペースト。
18)前記銀微粒子を被覆する保護剤が、有機酸であることを特徴とする16)または17)に記載の反転印刷用導電性ペースト。
19)前記アルコールがすべてメタノールであることを特徴とする8)、9)、11)または12)に記載の銀微粒子の調製方法。
本発明によれば、銀微粒子の粒子径を広い範囲で容易に制御できる銀微粒子の調製方法が提供される。
また、本発明によれば、このような調製方法により得られた銀微粒子を含む印刷用導電ペースト、特には反転印刷用導電性ペーストが提供される。
本発明者らは、炭化水素溶媒中で、粉末状酸化銀(I)とギ酸とを作用させてギ酸銀(I)を得、次いで、ギ酸銀(I)に含まれる銀カチオンをアミン化合物で銀原子に還元して、アミン化合物によって表面が被覆された銀微粒子を製造する際に、アミン化合物として1級アミンと2級アミンとを併用することによって、還元反応の反応速度と微粒子生成時の粒子凝集の進行を制御できることを見出した。そして、1級アミンと2級アミンとの配合比を変えることにより、得られる銀微粒子の粒子径を制御することができることを見出した。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
本発明は、粉末状酸化銀(I)を出発原料として用いて銀微粒子を調製する方法に関する。
本発明によれば、平均粒子径がナノメートルオーダーの銀微粒子を製造することができ、また、平均粒子径がマイクロメートルオーダーの銀微粒子を製造することができる。例えば平均粒子径が5nm〜10μmの範囲にある銀微粒子を製造することができる。なお、平均粒子径はレーザー回折法により測定された粒度分布において積算値50%の粒子径を指す。
本発明においては、工程aおよびbを行う。そして、工程bで用いるアミン化合物として、1級アミンと2級アミンの両方を用いる。
a)炭化水素溶媒中で、粉末状酸化銀(I)にギ酸を作用させ、粉末状酸化銀(I)をギ酸銀(I)に変換する工程。
b)前記炭化水素溶媒中で、前記ギ酸銀(I)中に含まれる銀カチオンを、アミン化合物による還元反応により銀原子に還元して、アミン化合物によって表面が被覆された銀微粒子を形成する工程。
工程bは、工程aに引き続いて、工程aで用いた炭化水素溶媒中で行うことができる。したがって、工程aから得られた反応液に、アミン化合物(1級アミンおよび2級アミン)を添加し、必要に応じて攪拌することにより工程bを行うことができる。工程aから得られた反応液に、1級アミンと2級アミンを予め混合して得た混合物を添加してもよいし、1級アミンと2級アミンを別々に添加してもよい。これらを別々に添加する場合、これらを同時に添加してもよいし、順次添加してもよい。好ましくは、1級アミンと2級アミンとの混合物を添加する。
工程bにおいて、工程aで用いたのと同じ炭化水素溶媒を追加してもよい。これにより、アミン化合物を炭化水素溶媒で希釈し、アミン化合物の濃度を調整することができる。例えば粉末状酸化銀(I)100質量部当たり50質量部以上150質量部以下の炭化水素溶媒を追加して、アミン化合物の濃度を調節する(希釈する)こともできる。
工程aおよびbを行うことによって、銀微粒子を炭化水素溶媒中で調製することができる。銀微粒子の分散状態によって、工程aおよびbの後に、銀微粒子が炭化水素溶媒中に分散した分散液の形態で銀微粒子を得ることができ、あるいは、銀微粒子が炭化水素溶媒中で沈殿した形態で銀微粒子を得ることができ、あるいは、分散した形態の銀微粒子と沈殿した形態の銀微粒子とが炭化水素溶媒中に併存する形態で銀微粒子を得られることもある。
工程aおよびbの後に、必要に応じて、炭化水素溶媒から銀微粒子を分離することができる。分離のために、適宜の方法を用いることができる。例えば、炭化水素溶媒を減圧下で気化させて除去して、銀微粒子(炭化水素溶媒に含まれない状態)を得ることができる。
なお、1級アミンおよび2級アミンを所定の割合に混合することにより、銅微粒子をロッド形状に制御する技術が存在する(特許文献2参照。)。しかしながら、この技術では、銅カチオンを銅微粒子に還元するための還元剤と、銅微粒子の分散性を向上させるためのキャッピング分子とを別途添加する必要がある。
これに対して、本発明は、1級アミンおよび2級アミンを使用するだけで、銀カチオンを銀微粒子に還元して、表面が被覆された銀微粒子を形成することができる。すなわち、本発明では、還元剤やキャッピング分子を別途添加する必要がない。したがって、本発明は、簡易な工程で銀微粒子の粒子径を制御することができる技術であって、グリーンケミストリーの観点からも有用な技術である。
〔工程aおよびbで用いる炭化水素溶媒〕
炭化水素溶媒は一般に極性を持たない、あるいは極性が非常に低い非極性溶媒である。
炭化水素溶媒は、粉末状酸化銀(I)の分散媒として利用され、また、ギ酸およびアミン化合物(1級アミンと2級アミン)を溶解する溶媒としても利用される。
また、反応液(工程bで得られる銀微粒子を含む液)から銀微粒子を分離、回収する場合があるが、このとき反応液に含まれる炭化水素溶媒を、減圧下に留去することで、除去することができる。したがって、減圧下に留去が可能な蒸散性を示す、炭化水素溶媒が好ましい。
さらに、ギ酸の沸点(100.75℃)と同程度もしくはより低い沸点の炭化水素溶媒を用いると、ギ酸銀(I)生成反応における発熱に伴って反応液の液温が上昇した際に、液温が炭化水素溶媒の沸点を超えないため、ギ酸の蒸散を抑制できる。
以上のような点を考慮して、炭化水素溶媒は、炭素数6〜9の直鎖のアルカンまたは炭素数6〜9のシクロアルカンが好ましい。炭化水素溶媒の沸点は、65℃〜155℃が好ましく、80℃〜130℃がより好ましく、80℃〜101℃がさらに好ましい。
炭化水素溶媒の例としては、メチルシクロヘキサン(沸点101℃)、ヘプタン(沸点:98.42℃)を挙げることができる。
また、ギ酸銀(I)生成反応の発熱による反応液温上昇を防止する観点から、炭化水素溶媒を、工程aにおいて粉末状酸化銀(I)100質量部当たり350質量部以上600質量部以下用いることが好ましい。
〔粉末状酸化銀(I)〕
出発原料として、粉末状酸化銀(I)(AgO;式量:231.74、密度:7.22g/cm)が使用される。粉末状酸化銀(I)の粒子径は適宜選ぶことができるが、炭化水素溶媒に均一に分散させる観点から、粉末状酸化銀(I)の粒径分布が200メッシュ以下(75μm以下)の範囲に収まるものが好適に利用される。
〔ギ酸銀(I)の生成〕
工程aでは、炭化水素溶媒中で、粉末状酸化銀(I)にギ酸(HCOOH)を作用させて、粉末状酸化銀(I)をギ酸銀(I)に変換する。このために、炭化水素溶媒に粉末状酸化銀(I)を加えて分散させ、その分散液にギ酸を加えることができる。
反応に際しては、適宜攪拌を行うことができる。
ギ酸(HCOOH)は、水素結合により会合して、二量体(HCOOH:HOOCH)を形成している。炭化水素溶媒中でも、その大半は、二量体を形成した状態で溶解する。従って、ギ酸の二量体(HCOOH:HOOCH)が、分散液中の粉末状酸化銀(I)に作用して、下記式iで表記される反応によって、ギ酸銀(I)(HCOOAg)が生成される。
式i:
Ag O+(HCOOH:HOOCH)
→ 2[(HCOO)(Ag]+H
なお、式iの反応で副生する水分子(HO)の大半部分は、生成する[(HCOO)(Ag]の凝集体中に、「結晶水」の形態で取り込まれていると、推定される。
上記式iで表記される反応は、塩基性金属酸化物である酸化銀(I)と、ギ酸の二量体との「中和反応」に相当しており、発熱反応である。粉末状酸化銀(I)に対する、炭化水素溶媒量の比率を前述の範囲(粉末状酸化銀(I)100質量部当たり350質量部以上600質量部以下)に選択することにより、反応液の温度上昇を、40℃付近までに抑制することが容易である。すなわち、液温が上昇することを抑制することにより、副反応を抑制することが容易である。副反応としては、下記式A1で表記可能な還元反応や、下記式(A2)で表記可能な、生成するギ酸銀(I)(HCOOAg)自体の分解的還元反応がある。
式A1:
2[(HCOO)(Ag]+HCOOH
→ 2Ag+2HCOOH+CO↑、
式A2:
2[(HCOO)(Ag
→ 2Ag+HCOOH+CO↑。
上記式iの反応を行うため、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオン1モルあたり、ギ酸を好ましくは1.02モル〜1.4モル、より好ましくは、1.05モル〜1.2モルの範囲で使用することが好ましい。過剰量のギ酸を添加することで、原料の粉末状酸化銀(I)の全量を、ギ酸銀(I)に変換することができる。
過剰量のギ酸を添加した場合、未反応のギ酸が残余し、炭化水素溶媒中にギ酸の二量体として溶解していることになる。
〔アミン化合物による還元反応〕
工程aの後、引き続き前記炭化水素溶媒中で、ギ酸銀(I)中に含まれる銀カチオンを、アミン化合物による還元反応により銀原子に還元する。これにより、アミン化合物によって表面が被覆された銀微粒子が形成される。
具体的には、好ましくは工程aから得られる反応液の温度が30℃まで降下した時点で、工程aから得られる液にアミン化合物、すなわち1級アミン(NH−R)と2級アミン(NH−R)とを添加することができる。
これによって、ギ酸銀(I)のアミン錯体、すなわち1級アミン錯体(HCOOAg:NH−R)および2級アミン錯体(HCOOAg:NH−R)が生成される。
アミン錯体の生成に際して、ギ酸銀(I)の凝集体中にすなわち[(HCOO)(Ag]の凝集体中に「結晶水」の形態で取り込まれていた水分子が、アミン錯体のギ酸アニオン種(O−CHO)部分に「溶媒和」する状態となる、と推定される。従って、最終的に生成するギ酸銀(I)のアミン錯体は、上記の水分子(HO)が「溶媒和」する状態で、炭化水素溶媒中に溶解されると推定される。
工程aから得られる反応液中に未反応のギ酸が残余している場合、工程aから得られる反応液に前記アミン化合物を添加すると、アミン化合物が残余しているギ酸と反応し、ギ酸のアミン付加塩(HCOOH:NH−R、HCOOH:NH−R)が生成される。ギ酸のアミン付加塩形成反応は、酸・塩基の「中和反応」に相当しており、発熱反応である。よって、この反応の進行に伴って、反応液の温度が上昇する。なお、反応液の温度が、利用している炭化水素溶媒の沸点に近づくと、炭化水素溶媒の蒸散が開始するため、反応液の温度は、炭化水素溶媒の沸点を超えることはない。
液温が例えば55℃〜65℃程度に上昇すると、ギ酸銀(I)のアミン錯体(1級アミン錯体および2級アミン錯体)は、下記式iiまたはiiiで表記される分解的還元反応を開始する。これら分解的還元反応は、吸熱反応であるため、反応液の温度が一定温度以上に達するまでは、殆ど進行しない。
式ii:
2(R−NH:Ag−OOCH)
→ 2[R−NH:Ag]+HCOOH+CO
式iii:
2(R−NH:Ag−OOCH)
→ 2[R−NH:Ag]+HCOOH+CO
この反応で派生する二酸化炭素(CO)は気泡を形成するため、反応液では、発泡が観測される。
また、副生されるギ酸(HCOOH)は、一旦は、ギ酸の二量体(HCOOH:HOOCH)を形成するが、反応液中に溶解しているアミン化合物と反応してギ酸のアミン付加塩を生成することがある。
一方、分解的還元反応で生成する金属銀原子[Ag:NH−R]および[Ag:NH−R]は、凝集して、金属銀原子の凝集体を構成する。その際、金属銀原子の凝集体の形成に付随して、金属銀原子に配位している1級アミン(R−NH)および2級アミン(R−NH)の一部は、熱的に解離する。従って、形成された金属銀原子の凝集体は、金属原子からなる球状の核と、その核の表面を被覆するアミン化合物(1級アミン(R−NH)および2級アミン(R−NH))からなる被覆剤分子層で構成される、銀微粒子となる。
熱的に解離したアミン(R−NHおよびR−NH)は、ギ酸銀(I)のアミン錯体(HCOOAg:NH−RおよびHCOOAg:NH−R)の生成反応、ならびに、ギ酸のアミン付加塩形成反応に関与することもある。
工程aが完了した時点で残余する未反応のギ酸の量と、添加するアミン化合物の量、ならびに、全体の反応液の量を調節することで、工程bにおいて反応液の液温が70℃以上に上昇することを防止することができる。
工程bにおいて、反応液中に過剰量のアミン化合物が存在していれば、ギ酸のアミン付加塩形成反応が進行するため、溶解しているギ酸の濃度は、低い水準に維持される。従って、還元剤の機能を有するギ酸が作用して上記式A1で表される還元反応(副反応)が進行することを防止することができる。
また、工程bにおいて反応液の液温が70℃以上に上昇することを防止すれば、ギ酸銀(I)のアミン錯体の生成反応を優先的に進行させることが容易であり、副反応であるギ酸銀(I)自体の分解的反応の進行を抑制することが容易である。
〔1級アミン〕
銀微粒子の調製容易性の観点から、1級アミンの分子量が、120以上300以下であることが好ましい。分子量が300以下の1級アミンを用いて銀微粒子を調製すると、その粒子を用いて導電性ペーストとして利用する場合に、焼成プロセス時の銀からの1級アミンの脱離および分解が容易であり、導通特性の観点から好ましい。一方、分子量が120以上の1級アミンを用いて銀微粒子の作製をすると、安定な銀微粒子の作製が容易である。具体的には、粒子作製時に反応容器側面の鏡面化(銀の析出)が生じるといった現象を回避することが容易である。
また、銀微粒子の分散性の観点から、1級アミンが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有することが好ましい。すなわち、1級アミン(R−NH)を構成する原子団(水素以外の、窒素原子に結合する原子団)Rが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を含むことが好ましい。前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖をRが含むと、調製した銀微粒子が前記炭化水素溶媒に対して安定に分散することが容易である。具体的には分子内に6以上20以下の炭素原子を有する1級アミン(R−NH)を用いることが好ましい。具体的には、2−エチルヘキシルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、ドデシルアミン、3−(ラウリルオキシ)プロピルアミン、オレイルアミン、ステアリルアミンなどを挙げることができる。
〔2級アミン〕
銀微粒子作製時の反応性の観点から、2級アミンの分子量が、100以上190以下であることが好ましい。分子量が190以下の2級アミンは還元力の点で好ましく、反応を進行させることが容易である。また、分子量100以上のアミンは沸点の観点から好ましく、反応中に速やかに蒸散してしまうことを防止することが容易である。
また、銀微粒子の分散性の観点から、2級アミンが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有することが好ましい。すなわち、2級アミン(R−NH)を構成する原子団(水素以外の、窒素原子に結合する原子団)RおよびRのうちの一方もしくは両方が、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を含むことが好ましい。前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖をRおよびRのうちの一方もしくは両方が含むと、調製した銀微粒子が前記炭化水素溶媒に対して安定に分散することが容易である。具体的には、分子内に6以上12以下の炭素原子を有する2級アミン(R−NH)を用いることが好ましい。
このような2級アミンの例としては、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルヘキシルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどを挙げることができる。
〔銀微粒子の粒子径制御〕
工程bにおいて、例えば、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオンのモル量に対するアミン化合物のモル量(1級アミンと2級アミンの総モル量)が同じであっても、1級アミンと2級アミンのモル比を変更することによって工程bで得られる銀微粒子の平均粒子径を変えることができる。具体的には、1級アミンのモル量を減らすこと、つまり、2級アミンモル量に対する1級アミンモル量の比(1級アミンモル量/2級アミンモル量)を小さくすることによって、工程bで得られる銀微粒子の平均粒子径を大きくすることができる。なお、工程bの後に、後述するように更なる工程を行うことができるが、更なる工程の後に得られる銀微粒子の平均粒子径は、工程bで得られる銀微粒子の平均粒子径と実質的に同じである。
つまり、工程bにおいて、粒子径が相対的に小さな銀微粒子を形成する場合にはアミン化合物に占める1級アミンの割合を相対的に大きくし、粒子径が相対的に大きな銀微粒子を形成する場合に前記アミン化合物に占める1級アミンの割合を相対的に小さくすることにより、銀微粒子の粒子径を制御することができる。工程bにおいて、或る1級アミンの割合(アミン化合物に占める1級アミンの割合)r1の条件下で、或る平均粒子径D1の銀微粒子が調製される場合、r1よりも大きな1級アミンの割合r2の条件下(他の条件は同じでよい)で銀微粒子を調製すると、得られる銀微粒子の平均粒子径D2はD1よりも小さくなる。換言すれば、アミン化合物に占める1級アミンの割合を増加させることにより、工程bで形成される銀微粒子の粒子径(平均粒子径)を小さくすることができる。
このようにして、アミン化合物に占める1級アミンの割合を変化させるだけで、同一のプロセスによって異なる平均粒子径の銀微粒子を調製することが可能である。
〔銀微粒子の分散状態の制御〕
銀微粒子の平均粒子径によって、液(例えば工程bから得られる反応液)中での銀微粒子の分散状態が異なりうる。つまり、銀微粒子の平均粒子径が小さいほど液中での分散状態は良好であり、平均粒子径が大きくなると銀微粒子が液中で沈殿する傾向がある。さらに、工程bで使用する1級アミンの分子量を変えること(したがって使用する1級アミンの種類が変更される)によって、工程bから得られる反応液中の、銀微粒子の分散状態を制御することができる。具体的には、工程bで使用する1級アミンの分子量が大きいほど、工程bで得られる銀微粒子の炭化水素溶媒中での分散状態は良好になる傾向がある。つまり、工程bで、分子量が比較的大きい1級アミンを用いることにより、液中に銀微粒子が良好に分散した分散液の形態で銀微粒子を調製することができ、あるいは、分子量が比較的小さい1級アミンを用いることにより、液中に銀微粒子が沈殿した形態で銀微粒子を調製することができる。工程bで、中間的な分子量を有する1級アミンを用いれば、銀微粒子の一部が液中に分散し、残部が沈殿している形態で銀微粒子を調製することができる。
つまり、工程bにおいて、炭化水素溶媒中で分散した銀微粒子を形成する場合には相対的に分子量が大きい1級アミンを用い、炭化水素溶媒中で沈殿した銀微粒子を形成する場合には相対的に分子量が小さい1級アミンを用いることにより、銀微粒子の分散状態を制御することができる。工程bにおいて、或る分子量(M1)の1級アミンを用いて、沈殿した形態の銀微粒子を形成できる場合、M1より大きな分子量(M2)の1級アミンを用いて(他の条件は同じでよい)銀微粒子を形成すると、銀微粒子の炭化水素溶媒中での分散をより良好にすることができる。
〔工程bで用いるアミン化合物の量〕
工程bで用いるアミン化合物の量(1級アミンと2級アミンの合計量)は、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオンを基準(100モル%)として、110モル%以上150モル%以下とすることが好ましい。つまり、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオン1モルあたり、1級アミンと2級アミンの総量を、1.1モル以上1.5モル以下とする。このような量的バランスを選ぶことは、アミン化合物によって表面が被覆された銀微粒子を形成する観点から、好ましい。
〔形態1:工程bで炭化水素溶媒中に分散した銀微粒子を形成する形態〕
ここで、工程bにおいて、炭化水素溶媒中に分散した(沈殿していない)銀微粒子を形成する本発明の方法の一形態(形態1という)について説明する。この形態は、原料に用いた銀を基準として、50質量%を超える、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上の銀を、銀微粒子として炭化水素溶媒中に分散させたい場合に好適である。
分散した銀微粒子を形成するには、工程bで形成する銀微粒子の粒子径(平均粒子径)を小さくすることと、工程bにおいて使用する1級アミンの分子量を大きくすることが有効である。
1級アミンの分子量にもよるが、工程bにおいて、次の二つの条件を両方とも満たすことにより、平均粒子径が比較的小さい(例えば平均粒子径が5nm以上40nm以下、特には平均粒子径が5nm以上30nm以下)銀微粒子を形成することができる。
・1級アミンを、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオンを基準として(つまりこの銀カチオンを100モル%とした場合)、3.0モル%を超え50モル%以下の量で用いる。つまり、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオン1モルあたり、1級アミンを、0.030モルを超え0.50モル以下の量で用いる。
・2級アミンを、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオンを基準として、1級アミンと2級アミンの総量が110モル%以上150モル%以下になる量で用いる。つまり、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオン1モルあたり、1級アミンと2級アミンの総量を、1.1モル以上1.5モル以下とする。
形態1において、工程bの後に、次の工程をこの順に行うことができる。それによって、銀微粒子が、或る炭化水素溶媒(工程eで用いる炭化水素溶媒)中に分散した分散液を得ることができる。
c)工程bから得られる反応液から、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒を減圧下で気化させて除去し、(例えば平均粒子径5nm以上40nm以下、特には平均粒子径が5nm以上30nm以下の)銀微粒子を含む残渣を回収する工程
d)工程cから得られる残渣をアルコールで洗浄する工程、および、
e)工程dから得られるアルコール洗浄した残渣を、炭化水素溶媒(工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒と同じであっても異なっていてもよい)に分散させて、(例えば平均粒子径が5nm以上40nm以下、特には平均粒子径が5nm以上30nm以下の)銀微粒子を含む分散液を得る工程。
工程cにおいて、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒を減圧下で気化させて除去する。この操作は、例えばエバポレーターを用いる方法など、公知の方法で適宜行うことができる。例えば、液温40℃にてエバポレーターにより50hPa以下程度まで容器内の圧力を低下させ、炭化水素溶媒を除去させる。工程bで用いるアミン種によっては、例えば155℃以下の沸点を有するアミン化合物は、炭化水素溶媒と共に減圧下で気化されて除去される場合があるが、その場合において以降の工程に不具合が生じることは無い。
なお、形態1におけるアルコール(工程dで用いるアルコール)は、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノールが挙げられる。このうち、メタノールは、特に極性が高く、かつ後工程における除去の容易さという観点から、好適に用いることができる。以下の工程dの説明では、アルコールの一例としてメタノールを記載している。
工程dにおいて、メタノールで微粒子を洗浄する公知の方法を採用できる。例えば工程cから得られる残渣に、メタノールを加えて攪拌した後に、デカンテーションによりメタノールを取り除くことで、メタノールを実質的に残渣から除去することができる。この際、余剰のギ酸やアミン化合物、またはそれらを含有する塩などの成分の相当量は、メタノールに溶解されることで、銀微粒子の洗浄が行われる。効率よく洗浄を行うために、原料として用いる粉末状酸化銀(I)100質量部当たり500質量部以上1000質量部以下のメタノールを用い、2回以上4回以下の回数に分割して洗浄することが好ましい。
工程eで使用する炭化水素溶媒は、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒と同じ種類であっても異なる種類であってもよい。この炭化水素溶媒としては、先に〔工程aおよびbで用いる炭化水素溶媒〕において述べた炭化水素溶媒を用いることができる。原料として用いる粉末状酸化銀(I)100質量部当たり100質量部以上300質量部以下の炭化水素溶媒に銀微粒子を分散させることが好ましい。形態1にて得られる銀微粒子は、炭化水素鎖を持つアミン化合物を被覆してなる銀微粒子であるため、工程eにおいて炭化水素溶媒を用いることで、炭化水素溶媒中に均一に分散してなる銀微粒子を得ることができる。
銀微粒子の用途に応じて、工程eから得られる分散液をそのままインキ等の原料として用いることができる。特に、下記の手順に従って、導電性ペーストを調製することができる。
形態1における銀微粒子分散液(工程eで得られる分散液)の分散溶媒として沸点65℃〜155℃の範囲の炭化水素溶媒が好ましく用いられる。工程eで得られる分散液の炭化水素溶媒を、好ましくは沸点180℃〜350℃の範囲の高沸点炭化水素溶媒、より好ましくは沸点200℃〜310℃の範囲、さらに好ましくは沸点220℃〜310℃の範囲の高沸点炭化水素溶媒に置換することで導電性ペーストを調製できる。
利用可能な高沸点炭化水素溶媒の一例として、テトラデカン(沸点:253.6℃)などの炭素数12〜16の範囲のアルカン、あるいは、ナフテン/パラフィン系炭化水素の混合溶媒である、JX日鉱日石エネルギー製AFソルベント(商品名)などが挙げられる。また、複数種の高沸点炭化水素溶媒の混合物を利用することもできる。
導電性ペーストを印刷用インキのために使用することができる。印刷法の例としては、インクジェット印刷法や、スクリーン印刷法などが挙げられる。印刷用導電性ペーストに用いられる公知の他の成分(銀微粒子および溶剤以外の成分)を加えることもできる。
〔形態2:工程bで、炭化水素溶媒中で沈殿した銀微粒子を形成する形態〕
ここで、工程bにおいて、炭化水素溶媒中で沈殿した銀微粒子を形成する本発明の方法の一形態(形態2という)について説明する。この形態は、原料に用いた銀を基準として、50質量%を超える、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上の銀を、銀微粒子として炭化水素溶媒中で沈殿させたい場合に好適である。
沈殿した銀微粒子を形成するには、工程bで形成する銀微粒子の粒子径(平均粒子径)を大きくすることと、工程bにおいて使用する1級アミンの分子量を小さくすることが有効である。
1級アミンの分子量にもよるが、工程bにおいて、次の二つの条件を両方とも満たすことにより、平均粒子径が比較的大きい(例えば平均粒子径が50nm以上10μm以下、特には平均粒子径が50nm以上8μm以下)銀微粒子を形成することができる。
・1級アミンを、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオンを基準として、0.2モル%以上3.0モル%以下の量で用いる。つまり、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオン1モルあたり、1級アミンを0.002モル以上0.030モル以下の量で用いる。
・2級アミンを、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオンを基準として、1級アミンと2級アミンの総量が110モル%以上150モル%以下になる量で用いる。つまり、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオン1モルあたり、1級アミンと2級アミンの総量を、1.1モル以上1.5モル以下とする。
形態2において、工程bの後に、次の工程をこの順に行うことができる。それによって、液に含まれない形態で銀微粒子を得ることができる。
f)工程bから得られる反応液から、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒を除去し、(例えば平均粒子径50nm以上10μm以下、特には平均粒子径が50nm以上8μm以下の)銀微粒子を含む残渣を回収する工程、
g)工程fから得られる残渣をアルコールで洗浄する工程、および、
h)工程gから得られる残渣を回収して、(例えば平均粒子径50nm以上10μm以下、特には平均粒子径が50nm以上8μm以下の)銀微粒子を得る工程。
工程fにおいて、工程bから得られる反応液から、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒を除去し、残渣(例えば平均粒子径50nm以上10μm以下、特には平均粒子径が50nm以上8μm以下の銀微粒子を含む)を回収する。形態2では、炭化水素溶媒の分離は比較的容易であり、デカンテーションなどの適宜の分離方法によって工程fを行うことができる。
なお、形態2におけるアルコール(工程gで用いるアルコール)は、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノールが挙げられる。このうち、メタノールは、特に極性が高く、かつ後工程における除去の容易さという観点から、好適に用いることができる。以下の工程gの説明では、アルコールの一例としてメタノールを記載している。
工程gにおいて、メタノールで微粒子を洗浄する公知の方法を採用できる。例えば工程fから得られる残渣に、メタノールを加えて攪拌した後にデカンテーションによりメタノールを取り除くことで、メタノールを実質的に残渣から除去することができる。この際、余剰のギ酸やアミン化合物、またはそれらを含有する塩などの成分の相当量は、メタノールに溶解されることで、銀微粒子の洗浄が行われる。効率よく洗浄を行うために、原料として用いる粉末状酸化銀(I)100質量部当たり500質量部以上1000質量部以下のメタノールを用い、2回以上4回以下の回数に分割して洗浄することが好ましい。
このようにメタノール洗浄した残渣を集めて、(例えば平均粒子径50nm以上10μm以下、特には平均粒子径が50nm以上8μm以下の)銀微粒子を、液に含まれない状態で得ることができる。
形態2における銀微粒子(工程hで得られる銀微粒子)に、好ましくは沸点180℃〜350℃の範囲の高沸点炭化水素溶媒、より好ましくは沸点200℃〜310℃の範囲、さらに好ましくは沸点220℃〜310℃の範囲の高沸点炭化水素溶媒を加えることで導電性ペーストを調製できる。
利用可能な高沸点炭化水素溶媒の一例として、テトラデカン(沸点:235.6℃)などの炭素数12〜16の範囲のアルカン、あるいは、ナフテン/パラフィン系炭化水素の混合溶媒である、JX日鉱日石エネルギー製AFソルベント(商品名)などが挙げられる。また、複数種の高沸点炭化水素溶媒の混合物を利用することもできる。
導電性ペーストを印刷用インキのために使用することができる。印刷法の例としては、スクリーン印刷法などが挙げられる。印刷用導電性ペーストに用いられる公知の他の成分(銀微粒子および溶剤以外の成分)を加えることもできる。
〔極性分散型銀微粒子〕
工程a、bを行うこと、工程a、b、c、dおよびeを行うこと、あるいは工程a、b、f、gおよびhを行うことによって、炭化水素溶媒をはじめとする非極性溶媒と親和性のある銀微粒子、すなわち炭化水素溶媒をはじめとする非極性溶媒中で使用するに好適な銀微粒子(非極性分散型銀微粒子という)を得ることができる。
極性溶媒と親和性のある銀微粒子、すなわち極性溶媒中で使用するに好適な銀微粒子(極性分散型銀微粒子という)を得るため、工程aおよびbの後に、極性溶媒と親和性のある化合物によって銀微粒子を化学修飾することができる。
具体的には、形態1の場合、すなわち、工程bにおいて炭化水素溶媒中に分散した銀微粒子を形成する場合には、工程bの後に次の工程をこの順に行うことにより、極性分散型銀微粒子を調製することができる。
c)工程bから得られる反応液から、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒を減圧下で気化させて除去し、(例えば平均粒子径5nm以上40nm以下、特には平均粒子径が5nm以上30nm以下の)銀微粒子を含む残渣を回収する工程、
d)工程cから得られる残渣をアルコールで洗浄する工程、
i)アルコール中で、工程dから得られる残渣に含まれる銀微粒子の表面を被覆しているアミン化合物を、極性溶媒に対して親和性を有する保護剤で置換して、前記保護剤によって表面が被覆された銀微粒子を形成する工程
j)工程iから得られる、銀微粒子とアルコールとを含む混合物に対して、アルコール除去、および炭化水素溶媒による洗浄を行う工程、
k)工程jから得られる炭化水素溶媒で洗浄した残渣を、極性溶媒に分散させて、銀微粒子を含む分散液を得る工程。
なお、極性分散型銀微粒子の調製(工程d、i、j)におけるアルコールは、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノールが挙げられる。このうち、メタノールは、極性が高く、かつ後工程における除去の容易さという観点から、好適に用いることができる。以下の工程iおよび工程jの説明では、一例としてメタノールを記載している。なお、工程dで用いるアルコールと、工程iおよびjにおけるアルコールは異なっていてもよいが、同じアルコールを用いたほうが簡便であり、好ましい。
工程cおよびdについては前述のとおりである。
工程iは、工程dから得られる残渣と、原料として用いる粉末状酸化銀(I)100質量部当たり150質量部以上600質量部以下のメタノールと、極性溶媒に対して親和性を有する保護剤とを混合し、必要に応じて攪拌することによって、行うことができる。工程iでは、必要に応じて40℃以上60℃以下の加熱を行うことによって、効率良く保護剤の置換を進行させることができる。この際、導入する保護剤の種類によって、メタノールに分散する銀微粒子が得られる場合もあれば、メタノール中で沈殿する銀微粒子が得られる場合もある。
極性溶媒に対して親和性を有する保護剤として、有機酸や、アミノ基を二つ以上有するポリアミンが好ましい。導電性ペーストとして用いる場合の導通特性の観点から、焼成プロセス時の銀からの保護剤の脱離および分解を容易にするため、分子量が300以下の有機酸および分子量が450以下のポリアミンが好ましい。
有機酸は、典型的にはカルボキシル基を有する化合物である。カルボキシル基に加えて、極性溶媒に対して親和性を有する水酸基、ケトン基、エーテル基からなる群より選択される1種以上の官能基を有する有機酸が好ましい。具体的には、水酸基を1つ持つ有機酸であるリシノール酸や、ケトン基を1つ持つ有機酸であり、マレイン酸誘導体でもあるマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノオクチル等が挙げられる。
アミノ基を二つ以上有するポリアミンとしては、アミノ基以外の官能基として、極性溶媒に対して親和性を有する水酸基、ケトン基、エーテル基からなる群より選択される1種以上の官能基を有することが好ましく、特にポリエーテル骨格の末端に1級アミノ基を複数持つポリエーテルアミンがより好ましい。具体的には、ジェファーミンEDR−148、ジェファーミンT−403(いずれもハンツマン・コーポレーション製の商品名)、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテルなどが挙げられる。
これらの保護剤の中から、1種の保護剤を選んで利用しても良いし、2種以上の保護剤を併用することもできる。2種以上の保護剤を用いる場合、それらをメタノール中で同時に加えることもできるし、段階的に導入することもできる。2種以上の保護剤を段階的に導入する場合、導入の度(最後の導入を除く)に銀微粒子の洗浄工程を行うこともできる(工程iにおける洗浄)。工程iにおける洗浄とは、例えば2種の保護剤を段階的に導入する場合、1段階目の導入後2段階目の導入の前に行う洗浄を指す。工程iにおける洗浄に用いる溶媒にはアルコールを用いることができ、メタノールを用いることが好ましい。ここでも以下メタノールを一例として記載する。なお、保護剤を段階的に導入する場合、工程iにおける洗浄に用いるメタノールの質量を含め、工程i全体として、前述のとおり原料として用いる粉末状酸化銀(I)100質量部当たり150質量部以上600質量部以下のメタノールを用いることが好ましい。
工程iにおいて、銀微粒子を被覆しているアミン化合物に対して、これら保護剤を過剰量作用させることが好ましく、1.5倍〜5倍の範囲の質量比で作用させることがより好ましい。過剰量の保護剤を作用させることで、保護剤の置換を効率よく行うことができ、炭化水素溶媒と親和性を有するアミン化合物を、極性溶媒と親和性を有する保護剤に置換することが可能になる(銀微粒子を被覆していたアミン化合物のほぼ100%を保護剤で置換することが可能である)。
銀微粒子を被覆しているアミン化合物の質量は、熱分析により測定することができる。例えば、工程dで得られる銀微粒子に対して、任意の方法を用いて溶媒を完全に除去し、銀微粒子の乾燥粉を得る。乾燥粉に対して熱分析を行い、減少する質量を銀微粒子に被覆されていたアミン化合物の質量と考えることができる。前記保護剤についても同様に、必要に応じて溶媒を除去した後、熱分析によって質量を測定することができる。
工程iから、保護剤で表面が被覆された銀微粒子(保護剤被覆銀微粒子)とメタノールを含む混合物が得られるが、この混合物は、銀微粒子の分散状態に依存して、銀微粒子がメタノール中に分散した分散液の状態である場合があり、あるいはメタノール中で銀微粒子が沈殿した状態である場合もある。この混合物に対して、適宜の方法でメタノールを除去し、また炭化水素溶媒による洗浄を行うことにより、保護剤被覆銀微粒子を含む残渣を得ることができる(工程j)。メタノール除去の後に、炭化水素溶媒による洗浄を行うこともできるし、あるいは、後に実施例にて示すようにメタノール除去と炭化水素溶媒による洗浄とを同時に行うこともできる。
工程jにおいて使用する洗浄用溶媒は、工程aおよびbで用いる炭化水素溶媒と同じでも異なっていてもよい。ただし、一般的に、保護剤被覆銀微粒子が分散しうる極性溶媒よりも、非極性溶媒である炭化水素溶媒で洗浄を行うことが好ましい。ここで用いる洗浄用炭化水素溶媒は、後工程での除去のし易さを考慮し、ヘキサンやイソヘキサンといった低沸点炭化水素溶媒がより好ましい。ただし、保護剤被覆銀微粒子の各溶媒への分散性を考慮した上で、保護剤被覆銀微粒子が分散しない場合であれば、極性溶媒を用いて洗浄を行うことも可能である。導入する保護剤種と銀微粒子の溶媒への分散性を考慮した上で選択されるが、使用できる極性溶媒の例としては、アセトンが挙げられる。効率よく洗浄を行うために、原料として用いる粉末状酸化銀(I)100質量部当たり500質量部以上1000質量部以下の洗浄用溶媒(炭化水素溶媒および極性溶媒の少なくとも一方)を用い、2回以上4回以下の回数に分割して洗浄することが好ましい。
工程kにおいて使用する極性溶媒としては、得られる保護剤被覆銀微粒子を分散させることができる極性溶媒であれば特に限定されない。銀微粒子の各極性溶媒への分散性を考慮して選定することができる。ただし、導電性ペーストとしての利用を想定し、高沸点極性溶媒への置換が容易に行える、沸点が120℃以下の極性溶媒がより好ましい。そのような極性溶媒の例として、アルコールを挙げることができる。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノールなどのアルコールがより好ましい。原料として用いる粉末状酸化銀(I)100質量部当たり100質量部以上300質量部以下の極性溶媒に分散させることが好ましい。
保護剤の置換は、置換前後の銀微粒子の物性をそれぞれ測定することで確認することができる。分散しうる溶媒が炭化水素溶媒をはじめとする非極性溶媒から極性溶媒へ変化することに加え、例えば、銀微粒子の乾燥粉の熱分析結果により保護剤の置換を確認することができる。置換前(非極性型銀微粒子)と置換後(極性分散型銀微粒子)で、熱分解のパターンの変化や、被覆する分散剤質量の変化などを確認することで、保護剤の置換がなされたことを判断することができる。また、GC−MSなどによる有機分析においても、保護剤の置換を判断することができる。
形態1における極性分散型銀微粒子分散液(工程kから得られる分散液)の分散溶媒を、沸点180℃〜350℃の範囲の高沸点極性溶媒、好ましくは沸点200℃〜310℃の範囲、より好ましくは沸点220℃〜310℃の範囲の高沸点極性溶媒に置換することで導電性ペーストを調製できる。
利用可能な高沸点極性溶媒の一例として、アルコール系溶媒が挙げられるが、中でも、水酸基とエーテル基を持つグリコールエーテル、グリコールエーテルの誘導体であるグリコールエーテルアセテート、水酸基を二つ持つジオールなどが挙げられる。具体的には、ブチルカルビトール、ヘキシルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールなどが挙げられる。また、複数種の高沸点極性溶媒の混合物を利用することもできる。
導電性ペーストを印刷用インキのために使用することができる。印刷法の例としては、インクジェット印刷法や、スクリーン印刷法などが挙げられる。また、後述の通り、反転印刷法を挙げることができる。導電性ペーストに用いられる公知の他の成分(銀微粒子および溶剤以外の成分)を加えることもできる。
形態2の場合、すなわち、工程bにおいて炭化水素溶媒中で沈殿した銀微粒子を形成する場合には、工程bの後に次の工程をこの順に行うことにより、極性分散型銀微粒子を調製することができる。
f)工程bから得られる反応液から、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒を除去し、(例えば平均粒子径50nm以上10μm以下、特には平均粒子径が50nm以上8μm以下の)銀微粒子を含む残渣を回収する工程、
g)工程fから得られる残渣をアルコールで洗浄する工程、および、
l)アルコール中で、工程gから得られる残渣に含まれる銀微粒子の表面を被覆しているアミン化合物を、極性溶媒に対して親和性を有する保護剤で置換して、前記保護剤によって表面が被覆された銀微粒子を形成する工程、
m)工程lから得られる、銀微粒子とアルコールとを含む混合物から、アルコールを除去し、得られた残渣を炭化水素溶媒で洗浄する工程、
n)工程mから得られる残渣を回収して、銀微粒子を得る工程。
なお、極性分散型銀微粒子の調製(工程g、l、m)におけるアルコールは、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノールが挙げられる。このうち、メタノールは、特に極性が高く、かつ後工程における除去の容易さという観点から、好適に用いることができる。以下の工程lおよびmの説明では、一例としてメタノールを記載している。なお、工程gで用いるアルコールと、工程lおよびmにおけるアルコールは異なっていてもよいが、同じアルコールを用いたほうが簡便であり、好ましい。
工程fおよびgについては前述のとおりである。
工程lは、工程gから得られる残渣と、原料として用いる粉末状酸化銀(I)100質量部当たり150質量部以上500質量部以下のメタノールと、極性溶媒に対して親和性を有する保護剤を混合し、必要に応じて攪拌することによって、行うことができる。工程lでは、必要に応じて40℃以上60℃以下の加熱を行うことによって、効率良く保護剤の置換を進行させることができる。この場合、銀微粒子が比較的大きいため、工程lで得られる反応液からメタノールを分離して、液に含まれない状態の銀微粒子を得ることが容易である。
工程lで使用する保護剤については、工程iで使用する保護剤と同様である。工程iと同様に、1種の保護剤を選んで利用しても良いし、2種以上の保護剤を併用することもできる。2種以上の保護剤を用いる場合、それらをメタノール中で同時に加えることもできるし、段階的に導入することもできる。2種以上の保護剤を段階的に導入する場合、導入の度(最後の導入を除く)に銀微粒子の洗浄工程を行うこともできる(工程lにおける洗浄)。工程lにおける洗浄とは、例えば2種の保護剤を段階的に導入する場合、1段階目の導入後2段階目の導入の前に行う洗浄を指す。工程lにおける洗浄に用いる溶媒にはアルコールを用いることができ、メタノールを用いることが好ましい。ここでも以下メタノールを一例として記載する。なお、保護剤を段階的に導入する場合、工程lにおける洗浄に用いるメタノールの質量を含め、工程l全体として、前述のとおり原料として用いる粉末状酸化銀(I)100質量部当たり150質量部以上500質量部以下のメタノールを用いることが好ましい。
工程mにおいては、工程lから得られる混合物(保護剤被覆銀微粒子とメタノールとを含む混合物)から、デカンテーションなど適宜の方法でメタノールを除去する。そして、得られた残渣を炭化水素溶媒で洗浄する。炭化水素溶媒による洗浄については、工程jで用いるのと同様の炭化水素溶媒を用いて行うことができる。また、工程jと同様に、極性溶媒を用いて洗浄を行うことも可能である。使用できる極性溶媒の例としては、メタノール、アセトン等が挙げられる。効率よく洗浄を行うために、原料として用いる粉末状酸化銀(I)100質量部当たり200質量部以上800質量部以下の洗浄用溶媒(炭化水素溶媒および極性溶媒の少なくとも一方)を用い、2回以下の回数で洗浄することが好ましい。
工程nにおいては、工程mから得られる残渣を回収して、銀微粒子(極性分散型銀微粒子)を得ることができる。
形態2における(工程nで得られる)極性分散型銀微粒子に、好ましくは沸点180℃〜350℃の範囲の高沸点極性溶媒、より好ましくは沸点200℃〜310℃の範囲、さらに好ましくは沸点220℃〜310℃の範囲の高沸点極性溶媒を加えることで導電性ペーストを調製できる。
利用可能な高沸点極性溶媒の一例として、アルコール系溶媒が挙げられるが、中でも、水酸基とエーテル基を持つグリコールエーテル、グリコールエーテルの誘導体であるグリコールエーテルアセテート、水酸基を二つ持つジオールなどが挙げられる。具体的には、ブチルカルビトール、ヘキシルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールなどが挙げられる。また、複数種の高沸点極性溶媒の混合物を利用することもできる。
導電性ペーストを印刷用インキのために使用することができる。印刷法の例としては、スクリーン印刷法などが挙げられる。導電性ペーストに用いられる公知の他の成分(銀微粒子および溶剤以外の成分)を加えることもできる。
〔反転印刷用導電性ペースト〕
近年、最小ライン/スペース幅(L/S)=50μm/50μmを下回る精密パターンを形成するために有効な印刷法として、反転印刷法、より詳しくは凸版反転印刷法が紹介されている。反転印刷法は、ブランケット上にインキを塗布してインキ塗布面を形成し、そのインキ塗布面に凸版を押圧して凸版に接触する部分のインキをブランケット上から除去(初期転写)した後、ブランケット上に残ったインキを被印刷体に転写(最終転写)する印刷法である。
反転印刷法に用いるブランケットとしては、シリコンからなるシリコンブランケットが広く用いられる。シリコンブランケットは、インキの離型性に優れるため、基材へのパターンの転写性を向上させることができる。
しかし、通常のインキは濡れ性が低いことから、塗布されたインキがシリコンブランケット表面にはじかれやすい。インキのはじきによって、塗布層にピンホールやムラが生じる問題を招きやすい。ピンホールやムラが生じると、ブランケットからのインキの離型性が低下し、インキのパターンを、シリコンブランケットから基板に良好に転写させることができなくなる。
特許文献5には、シリコンブランケットに対して適度な濡れ性と離型性を兼ね備えたインキを得るために、調整剤を添加した反転印刷用導電性ペーストが記載されている。ここでは調整剤にフッ素系の界面活性剤やシリコンオイルを用いている。しかしながら、これら調整剤の利用は焼成後の金属膜の導通性の低下や、派生する製品の品質の悪化を引き起こす可能性があるため、それらを含有しない導電性ペーストが望まれる。
これに対して、本発明の反転印刷用導電性ペーストは、界面活性剤を始めとした調整剤を含まずに、シリコンブランケットに対しての適度な濡れ性と離型性を兼ね備えている。
本発明の反転印刷用導電性ペーストは、溶剤を含む。この溶剤としては、極性溶剤を使用することが好ましい。インキがシリコンブランケットに塗布されている間、シリコンブランケットはインキ中の溶媒を吸収し膨潤する。この際、膨潤の度合いが一定以上となると精密パターンの品質が低下する問題が生じる。一般的にシリコンブランケットは極性の高いアルコール系溶剤などに対する膨潤の度合いは小さく、極性の低い炭化水素系の溶剤などに対しては膨潤の度合いが大きい。
また、反転印刷用導電性ペーストを構成する溶剤としては乾燥性の早い低沸点溶剤(速乾性溶剤)を含むことが好ましい。この速乾性溶剤はブランケットにインキ塗布膜が形成される時には、インキ組成物が良好な流動性を有するために用いられ、その後、凸版にて初期転写されるまでの間に、短時間で大気中に揮発もしくはグランケットに吸収されることで、インキ粘度が上昇し、転写に適したな粘度を有するようにするために配合される。
また、シリコンブランケット上でインキのはじきが無く均一な塗布が行われるために、溶剤として表面張力の小さい溶剤を選定することが好ましい。
上記要求を考慮し、速乾性溶剤として、50℃〜120℃の沸点を有する溶剤(低沸点溶剤)、特には極性溶剤を用いることが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、2−ブタノールなどのアルコールが挙げられる。
また、これらの低沸点溶剤は、12mN/m〜18mN/mの表面張力(25℃)を有するフッ素系溶剤を含むことが好ましく、ハイドロフルオロエーテル類を利用することがより好ましい。ハイドロフルオロエーテルは、分子内にフッ化アルキル基とエーテル基をそれぞれ1つ以上有する化合物群と定義される。このような溶剤として、住友スリーエム製のNOVECシリーズが挙げられ、NOVEC7100(商品名。沸点:61℃、表面張力13.6mN/m)、NOVEC7200(商品名。沸点:76℃、表面張力13.6mN/m)、NOVEC7300(商品名。沸点:98℃、表面張力15mN/m)などを利用することができる。低沸点溶剤として、アルコール系溶剤に加え、12mN/m〜18mN/mの表面張力(25℃)を有するフッ素系溶剤を併用することで、反転印刷用導電性ペーストの表面張力を低下させることができ、このペーストをブランケットへ均一に塗布することができる。
フッ素系溶剤の表面張力が12mN/m以上であると、組み合わせる他の溶剤の物性にもよるが、シリコンブランケットの表面に対するインキの濡れ性が、好ましい範囲を超えることがない。そのため、インキのパターンを、シリコンブランケットから基板に良好に転写させることができる。一方、フッ素系溶剤の表面張力が18mN/m以下であると、シリコンブランケットの表面に対するインキの濡れ性を向上する効果に優れる。そのため、シリコンブランケットの表面にインキを塗布する際に、はじき等を生じにくい。その結果、はじき等に起因するインキ層のムラやピンホール等が生じにくい。
このフッ素系溶剤の含有率は、全溶剤中10〜50質量%、より好ましくは20〜45質量%とすることが好ましい。フッ素系溶剤の含有割合が10質量%以上であると、溶剤にフッ素系溶剤を含有させたときに、インキの表面張力が低下することがなく、それによりシリコンブランケットの表面に対するインキの濡れ性を向上させることができる。そのため、シリコンブランケットの表面にインキを塗布して層を形成する際に、はじき等を発生しにくい。そして、はじき等が原因となることがなく、インキ層にムラやピンホール等を生じにくい。一方、フッ素系溶剤の含有割合が50質量%以下であると、インキの分散性が低下することがなく、銀微粒子の凝集物が沈殿しにくい。
溶剤として、速乾性溶剤(低沸点溶剤)に加えて、遅乾性溶剤(高沸点溶剤)を利用することが好ましい。この遅乾性溶剤は速乾性溶剤と併用することで、インキの溶剤成分の急速な揮発を抑制し、ブランケットからのインキの転写が可能な時間を持続させることができる。遅乾性溶剤としては、沸点150℃以上、特には沸点150℃〜300℃の範囲の溶剤(高沸点溶剤)、特には極性溶媒が好ましい。具体的には、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、プロピレンカーボネート、等が挙げられる。この高沸点溶剤の含有率は、全溶剤中0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%とすることが好ましい。
形態1の場合の極性分散型銀微粒子は、反転印刷用導電性ペーストに用いる銀微粒子として好ましい。より詳しくは、工程a、b、c、d、i、jおよびkを含む銀微粒子の調製方法によって得られる、極性溶媒、特に低沸点のアルコール系溶剤に対して親和性を有する保護剤によって表面が被覆された銀微粒子(例えば平均粒子径が5nm以上40nm以下、特には平均粒子径が5nm以上30nm以下)を含む反転印刷用導電性ペーストを、製造することができる。
発明者らは、上記の範囲を満たす溶剤と、銀微粒子として、形態1の場合の極性分散型銀微粒子を用いて作製した導電性ペーストが、界面活性剤を始めとした調整剤を含有することなく、シリコンブランケットに対しての適度な濡れ性と離型性を兼ね備えた、反転印刷用導電性ペーストとして好適に利用できることを見出した。形態1に含まれる銀微粒子の中でも、有機酸を被覆した銀微粒子が好ましく、特に、リシノール酸とマレイン酸誘導体からなる保護剤を被覆した銀微粒子が好ましい。有機酸のみを被覆した銀微粒子を用いて作成した導電性ペーストは、ポリアミン誘導体を被覆した銀微粒子を用いた導電性ペーストに比べて、ブランケットから基材への転写性が向上する傾向にある。
本発明の反転印刷用導電性ペーストは、バインダー樹脂成分を含有しない。これは、ペースト(インキ)が乾燥した後に、銀微粒子の含有率を高くし、導電性を高めるためである。一般的な反転印刷用インキでは、反転印刷法におけるペーストの印刷性を調整するために、天然ゴム、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などのバインダー樹脂成分が配合される。本発明の反転印刷用導電性ペーストはバインダー樹脂成分を含有せずに、良好な印刷性を有することを特徴とする。
工程kから、極性溶媒に対して親和性を有する保護剤によって表面が被覆された銀微粒子(例えば平均粒子径5nm〜40nm、特には平均粒子径が5nm〜30nm)がアルコール中に分散した分散液が得られる。例えば、この分散液と、溶剤(特には前記低沸点溶剤と高沸点溶剤)とを混合し、適宜攪拌することにより、反転印刷用導電性ペーストすなわち反転印刷用導電性インキを得ることができる。反転印刷用導電性インキに使用される他の成分を配合することもできる。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
〔実施例1〕
・工程a
300mlビーカーに粉末状酸化銀(東洋化学工業製 酸化銀特級、粒度分布30μm以下、平均粒子径6μm)を10.85g、メチルシクロヘキサン(沸点101℃の非極性炭化水素溶媒)を45g加えて撹拌した後、30秒間かけてギ酸を4.56g加えて撹拌した。
・工程b
ギ酸銀生成による発熱がおさまり、液温が30℃になった時点で、オレイルアミン(1級アミン、分子量267.49)0.87g、ジブチルアミン(2級アミン、分子量129.24)12.8g、メチルシクロヘキサン8gを同時に加えて分解的還元反応を行った。液温は58℃まで上昇した。液温が40℃以下になった時点で撹拌を停止した。
本例では、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオンを基準として、工程bにおいて使用した1級アミン(オレイルアミン0.87g)は3.5モル%であり、工程bにおいて使用した1級アミンと2級アミン(ジブチルアミン12.8g)の総量は110モル%(銀カチオン1モルに対し、1.1モル)であった。
・工程bから得られる液中での、銀微粒子の分散状態のチェック
ここで、工程bから得られる液(銀微粒子と炭化水素溶媒との混合物)を10分間静置し、銀微粒子の分散状態を目視にて確認した。本例では、沈殿が確認されず、工程bから、銀微粒子がメチルシクロヘキサンに分散した分散液が得られた。
・工程c
得られた濃紺色の分散液を300mlナス型フラスコに移し、エバポレーター(商品名:N−1100S、東京理科器械製)を用いて、40℃50hPaの条件で、反応溶媒のメチルシクロヘキサンを留去した。銀微粒子を含有する、スラリー状の残渣を得た。
・工程d
脱メチルシクロヘキサン後の残渣にメタノールを40g加えた後3分間撹拌を行った。メタノールを加えると銀微粒子の凝集が起こり、1級アミンと2級アミンを被覆してなる銀微粒子はメタノール中に分散することなく、沈殿した。余剰のギ酸やアミン、またはそれらを含有する塩などの成分の相当量は、メタノールに溶解される。その後、上澄み層をデカンテーションにより除去した(1回目の洗浄)。次いで同様にメタノール25gを加え3分間撹拌を行い、上澄み層をデカンテーションにより除去した(2回目の洗浄)。さらに同様にメタノールを10g加え3分間撹拌し、上澄み層をデカンテーションにより除去し(3回目の洗浄)、洗浄工程を終了した。
・工程e
回収された沈殿層(工程dから得られたメタノール洗浄済みの残渣)にメチルシクロヘキサン15gを添加した後に撹拌を行い、銀微粒子をメチルシクロヘキサン中に分散させた。このメチルシクロヘキサン分散液中には洗浄工程で用いた若干のメタノールが混入している。エバポレーターを用いて40℃120hPaの条件でメタノールを選択的に除去した。この分散液を0.5μmのメンブランフィルター(アドバンテック製)で濾過することで、少量含まれる凝集物を除去し、アミン化合物を被覆した銀微粒子のメチルシクロヘキサン分散液を得た。
・物性評価
工程eから得られた分散液に含まれる銀微粒子につき、次の評価を行った。
銀微粒子の平均粒子径を、ナノトラック粒度分析計(日機装製)を用いて測定した。その測定結果から、銀微粒子の平均粒子径は18.2nmであることが判った。
銀微粒子を被覆するアミン化合物の質量を熱分析により測定すると、銀100質量部に対して、9質量部のアミン化合物が銀微粒子表面を被覆していることが判った。なお、このアミン化合物の質量は、工程dを終えた段階で測定した場合でも、同様の結果となることが別途検討により判った。
〔実施例2〜45、比較例1〜12〕
・実施例2〜12および比較例1〜2
比較例1、実施例2〜12および比較例2においては、表1に示すように、工程bで使用する1級アミン(オレイルアミン)の量を、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオンを基準として(銀カチオンの量を100モル%とする)、それぞれ110、50、40、30、4.2、3.0、2.3、1.5、1.4、0.7、0.5、0.2、0モル%とした。なお、表1において、実施例1は「実1」と、比較例1は「比1」と略記した(表3、5においても同様)。このとき、工程bにおいて使用した1級アミンと2級アミン(ジブチルアミン)の総量は実施例1と同様110モル%とした。したがって、工程bで使用する2級アミンの量も、1級アミンの量に応じて変更した。比較例1では工程bで2級アミンは使用せず、比較例2では工程bで1級アミンを使用しなかった。
・実施例13〜24および比較例3
比較例3および実施例13〜24においては、工程bで使用する1級アミンとして、オレイルアミンに替えて、3−(ラウリルオキシ)プロピルアミン(分子量243.43)を用いた。1級アミンの量は、表1に示すように、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオンを基準として、110モル%から0.3モル%まで変化させた。このとき、工程bにおいて使用する1級アミンと2級アミンの総量を実施例1と同様110モル%とするために、2級アミンの量も変化させた。
・実施例25〜33および比較例4
比較例4および実施例25〜33においては、工程bで使用する1級アミンとして、オレイルアミンに替えて、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン(分子量187.32)を用いた。1級アミンの量は、表1に示すように、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオンを基準として、110モル%から1.4モル%まで変化させた。このとき、工程bにおいて使用する1級アミンと2級アミンの総量を実施例1と同様110モル%とするために、2級アミンの量も変化させた。
・実施例34〜41および比較例5
比較例5および実施例34〜41においては、工程bで使用する1級アミンとして、オレイルアミンに替えて、2−エチルヘキシルアミン(分子量129.24)を用いた。1級アミンの量は、表1に示すように、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオンを基準として、110モル%から1.5モル%まで変化させた。このとき、工程bにおいて使用する1級アミンと2級アミンの総量を実施例1と同様110モル%とするために、2級アミンの量も変化させた。
・実施例42〜43および比較例6〜10
これらの例では、2級アミンとして、ジブチルアミンに替えて、ジイソプロピルアミンを用いた。また、表3に示す種類の1級アミンを、表3に示す配合量(原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオンを基準として、110、40、3.0または0モル%)で用いた。このとき、工程bにおいて使用する1級アミンと2級アミンの総量を実施例1と同様110モル%とするために、2級アミンの量も変化させた。
・実施例44〜45および比較例11〜12
これらの例では、工程bにおいて使用する1級アミンと2級アミン(ジブチルアミン)の総量を、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオンを基準として、150モル%とした。そして、表5に示す種類の1級アミンを、表5に示す配合量(原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオンを基準として、110、40、3.0または0モル%)で用いた。このとき、工程bにおいて使用する1級アミンと2級アミンの総量を150モル%とするために、2級アミンの量も変化させた。
実施例2〜45および比較例1〜12において、上記以外は実施例1と同様にして工程aおよびbの操作を行った。そして、工程bから得られる液(銀微粒子と炭化水素溶媒とを含む混合物)中での銀微粒子の分散状態を前述のようにチェックし、銀微粒子の沈殿が視認できず銀微粒子の分散液が得られる場合(表2、4、6において(S)と表記される場合)は、実施例1と同様にして、工程c〜eを行った。銀微粒子工程bから得られた液において、沈殿した銀微粒子と分散した銀微粒子が混在していた場合(表2、4、6において(S+A)と表記される場合)は、工程bを終えた段階で、実験を終了した。この場合は銀微粒子の粒子径の測定も行っていない(測定が容易ではないため)。工程bから得られた液において、銀微粒子が沈殿していた場合(表2、4、6において(A)と表記される場合)は、工程bの後に、工程c〜eに替えて、次に詳述するように工程f〜hを行った。
・工程f
工程bから得られた液から、上澄み液をデカンテーションにより除去し、銀微粒子の残渣を回収した。
・工程g
工程fから得られた残渣にメタノール40gを加え、3分間撹拌し、上澄み液をデカンテーションにより除去した(1回目の洗浄)。続いてメタノール30gを用いて2回目の洗浄を行った。
・工程h
洗浄後の残渣を回収し銀微粒子を得た。
なお、工程bにおける分解的還元反応によって液温が上昇するが、その際の最高温度は各例においてほぼ同レベルであった。例えば、実施例1では58℃まで液温が上昇したが、実施例30(1級アミンとして3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミンを用い、粉末状酸化銀中の銀カチオンを基準として、1級アミンを3.0モル%使用し、1級アミンと2級アミンの総量を110モル%とした例)では60℃まで液温が上昇した。
・物性評価
各例において、工程eから得られた分散液に含まれる銀微粒子、あるいは工程hから得られる銀微粒子について、実施例1と同様の物性評価を行った。すなわち、これら銀微粒子につき、平均粒子径を測定し、また、銀微粒子を被覆するアミン化合物の質量を熱分析により測定した。ただし、銀微粒子を被覆するアミン化合物の質量は、実施例1と、実施例30(1級アミンとして3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミンを用い、粉末状酸化銀中の銀カチオンを基準として、1級アミンを3.0モル%使用し、1級アミンと2級アミンの総量を110モル%とした例)についてのみ測定した。
表2、4、6に、各例において測定した平均粒子径を示す。実施例30において、銀微粒子を被覆するアミン化合物の質量は、銀100質量部に対して、2.6質量部であった。
・工程bで得られた銀微粒子の分散状態の詳細
表2、4、6に、各例において工程bから得られた液中の、銀微粒子の分散状態を示す。表中、工程bから得られる液(銀微粒子と炭化水素溶媒との混合物)を10分間静置した場合に、目視にて沈殿が確認されなかった場合を「(S)」で表し、目視にて沈殿が認められ液が清澄になったと認められた場合を「(A)」で表し、両者の中間的な状態を「S+A」で表す。
実施例1において、最終的に(工程eで)得られたメチルシクロヘキサン分散液中に含まれる銀の質量を測定すると、9.2gであった。実施例1では、銀換算で10gに当たる粉末状酸化銀(I)を原料に用いているため、実施例1においては、アミン化合物を被覆している銀微粒子が分散液の状態で92質量%の収率で得られたことが判った。したがって、工程bから、原料銀基準で92質量%の銀が、銀微粒子として液に分散した分散液が得られた。
実施例30において、最終的に(工程hで)得られた銀の質量を測定すると、9.3gであった。実施例30では、銀換算で10gに当たる粉末状酸化銀(I)を原料に用いているため、実施例30においては、アミン化合物を被覆している銀微粒子が沈殿した状態で93質量%の収率で得られたことが判った。したがって、工程bから、原料銀基準で93質量%の銀を銀微粒子の沈殿として含む液が得られた。
実施例1および30以外の例(表に「S+A」と示した例を除く)についても、同様に、最終的に得られた銀の質量に基づき、工程bにおいて得られた分散状態もしくは沈殿状態の銀微粒子の原料銀に対する割合を調べた、表に「S」と示した例では、いずれも、工程bから原料銀基準で90質量%の銀が銀微粒子として液に分散した分散液が得られたことが確認された。表に「A」と示した例では、いずれも、工程bから原料銀基準で90質量%の銀を銀微粒子の沈殿として含む液が得られたことが確認された。
〔実施例46〕
本例では、実施例1と途中まで同様の手法を用いて銀微粒子を作製し、引き続いての工程により極性溶媒に分散した形態の銀微粒子を作製する。
・まず、実施例1と同様に、工程a、b、cおよびdを行った。
・工程i
次に、極性溶媒に対して親和性を有する保護剤として、リシノール酸とジェファーミンEDR−148(商品名。ハンツマン・コーポレーション製のポリアミン)を導入する。実施例1において、工程dを終えた段階で、銀100質量部に対して、9質量部のアミン化合物が銀微粒子を被覆していることが判っている。保護剤の置換工程においては、導入する保護剤の質量を置換されるアミン化合物の質量に対して過剰に作用させることにより効率よく保護剤の置換が行われる。本実施例においても工程a〜dにて銀100質量部に対して9質量部のアミン化合物が銀微粒子を被覆しているものとみなした上で、銀100質量部に対して18質量部(後述するリシノール酸とジェファーミンEDR−148の合計量)にあたる保護剤を作用させる。
工程dから得られたメタノールで洗浄した残渣にメタノール25g、リシノール酸(極性溶媒に対して親和性を有する保護剤として使用される有機酸)0.6gを加えて40℃で15分撹拌を行った。この段階で、銀微粒子はメタノールに完全には分散しておらず、メタノール中で沈殿している。メタノールをデカンテーションにより除去した後、メタノール15gを加えて3分間撹拌することで洗浄を行い、メタノールをデカンテーションにより除去した(工程iにおける洗浄)。
得られた残渣にメタノール5gとジェファーミンEDR−148(極性溶媒に対して親和性を有する保護剤として使用されるポリアミン)1.2gを加えて40℃で15分撹拌した。この工程を経ることでリシノール酸とジェファーミンEDR−148を被覆した銀微粒子が調製される。この段階では、銀微粒子は完全にはメタノールに分散しておらず、銀微粒子とメタノールの混合物が得られた。
・工程j
工程iで得られた銀微粒子とメタノールとの混合物にヘキサンを20g加えて3分間撹拌した。この微粒子は極性溶媒に対して親和性を有するため、非極性溶媒であるヘキサンを加えることで凝集し沈殿する。メタノールとヘキサンの混合層をデカンテーションで除去することで微粒子の洗浄を行った(1回目の洗浄)。なお、ここではメタノール除去とヘキサンによる洗浄とを同時に行っている。
メタノールとヘキサンの混合層をデカンテーションにより除去した後、ヘキサン20gを加えて3分間撹拌し、ヘキサンをデカンテーションにより除去することで微粒子の洗浄を行った(2回目の洗浄)。得られた残渣にヘキサン20gを加えて3分間撹拌し、ヘキサンをデカンテーションにより除去すること(3回目の洗浄)で洗浄を終了した。
・工程k
得られた銀微粒子(工程jから得られた残渣)にイソプロパノール(IPA)すなわち2−プロパノールを30g加えて、IPA分散液(保護剤で被覆された銀微粒子がIPAに分散した分散液)を得た。このIPA分散液中には洗浄工程で用いた若干のメタノール、ヘキサンが混入している。エバポレーターを用いて40℃120hPaの条件でそれらの溶媒を蒸気圧の差を用いて選択的に除去した。IPA分散液を0.5μmのガラスフィルター(アドバンテック製)で濾過し、分散液中に少量含まれる凝集物を除去した。IPA分散液中に含まれる銀濃度(IPA分散液全体に対する、保護剤で被覆された銀微粒子の質量割合)を測定すると、28.2質量%であった。
・反転印刷用導電性インキの製造
得られたIPA分散液(固形分28.2質量%)を53質量%、IPAを14質量%、フッ素系溶剤Novec7200(商品名。住友スリーエム製)を32.5質量%、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを0.5質量%、配合することにより、反転印刷用導電性インキを製造した。このインキの表面張力を25℃で表面張力計(協和界面科学製)を用いて測定すると18.1mN/mであった。
ガラス製の凸版を用いた反転印刷法で、以下に示す手順にて線幅約40μmの導電性パターンを作製した。まず、シリコン製ブランケットにインキを均一に塗布し、次いでガラス凸版をブランケット上のインキ塗布面へ押し付けインキを転写除去した(初期転写)。さらにブランケット上に形成されたインクパターンを、ガラスを押し付けることによりガラス上に転写した(最終転写)。初期転写時及び最終転写時においてブランケットへのインキ残りはほぼなく、問題のない転写性を示した。
また、前記反転印刷用導電性インキを用いて、スピンコーター(1H−DX2、ミカサ製)により厚さ1mmのスライドガラス(松浪硝子工業製)上にインキ薄膜を作成し180℃で30分間焼成した後比抵抗を測定したところ、6.2×10−6Ω・cmであった。
〔実施例47〕
本例では、実施例1と途中まで同様の手法を用いて銀微粒子を作製し、引き続いての工程により極性溶媒に分散した形態の銀微粒子を作製する。
・まず、実施例1と同様に、工程a、b、cおよびdを行った。
・工程i
次に、極性溶媒に対して親和性を有する保護剤として、リシノール酸とマレイン酸モノエチルを導入する。実施例1において、工程dを終えた段階で、銀100質量部に対して、9質量部のアミン化合物が銀微粒子を被覆していることが判っている。保護剤の置換工程においては、導入する保護剤の質量を置換されるアミン化合物の質量に対して過剰に作用させることにより効率よく保護剤の置換が行われる。本実施例においても工程a〜dにて銀100質量部に対して9質量部のアミン化合物が銀微粒子を被覆しているものとみなした上で、銀100質量部に対して16質量部(後述するリシノール酸とマレイン酸モノエチルの合計量)にあたる保護剤を作用させる。
工程dから得られたメタノールで洗浄した残渣にメタノール25g、リシノール酸(極性溶媒に対して親和性を有する保護剤として使用される有機酸)0.6gを加えて40℃で15分撹拌を行った。この段階で、銀微粒子はメタノールに完全には分散しておらず、メタノール中で沈殿している。メタノールをデカンテーションにより除去した後、メタノール15gを加えて3分間撹拌することで洗浄を行い、メタノールをデカンテーションにより除去した(工程iにおける洗浄)。
得られた残渣にメタノール5gとマレイン酸モノエチル(極性溶媒に対して親和性を有する保護剤として使用される有機酸)1gを加えて40℃で15分撹拌した。この工程を経ることでリシノール酸とマレイン酸モノエチルを被覆した銀微粒子が調製される。この段階では、銀微粒子は完全にはメタノールに分散しておらず、銀微粒子とメタノールの混合物が得られる。
・工程j
得られた銀微粒子とメタノールとの混合物にヘキサンを20g加えて3分間撹拌した。この微粒子は極性溶媒に対して親和性を有するため、炭化水素溶媒であるヘキサンを加えることで凝集し沈殿する。メタノールとヘキサンの混合層をデカンテーションで除去することで微粒子の洗浄を行った(1回目の洗浄)。なお、ここではメタノール除去とヘキサンによる洗浄とを同時に行っている。
メタノールとヘキサンの混合層をデカンテーションにより除去した後、ヘキサン20gを加えて3分間撹拌し、ヘキサンをデカンテーションにより除去することで微粒子の洗浄を行った(2回目の洗浄)。得られた残渣にアセトン20gを加えて3分間撹拌し、アセトンをデカンテーションにより除去した(3回目の洗浄)。得られた残渣にヘキサン10gを加えて3分間撹拌し、ヘキサンをデカンテーションにより除去すること(4回目の洗浄)で洗浄を終了した。なお、極性溶媒に親和性を有する保護剤を導入した後は、ヘキサンのような炭化水素溶媒を用いて微粒子の洗浄を行うことが好ましいが、微粒子の各溶媒への分散性を考慮した上で、上記のようにアセトンを始めとする極性溶媒を用いて洗浄を行うことも可能である。
・工程k
得られた銀微粒子(工程jから得られた残渣)にイソプロパノール(IPA)を25g加えて、IPA分散液(保護剤で被覆された銀微粒子がIPAに分散した分散液)を得た。このIPA分散液中には洗浄工程で用いた若干のメタノール、ヘキサン、アセトンが混入している。エバポレーターを用いて40℃120hPaの条件でそれらの溶媒を蒸気圧の差を用いて選択的に除去した。IPA分散液を0.5μmのガラスフィルター(アドバンテック製)で濾過し、分散液中に少量含まれる凝集物を除去した。IPA分散液中に含まれる銀濃度(IPA分散液全体に対する、保護剤で被覆された銀微粒子の質量割合)を測定すると、27.4質量%であった。
・反転印刷用導電性インキの製造
得られたIPA分散液(固形分27.4質量%)を55質量%、IPAを12質量%、フッ素系溶剤Novec7200(商品名。住友スリーエム製)を32.5質量%、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを0.5質量%、配合することにより、反転印刷用導電性インキを製造した。このインキの表面張力を25℃で表面張力計(協和界面科学製)を用いて測定すると17.9mN/mであった。
ガラス製の凸版を用いた反転印刷法で、以下に示す手順にて線幅約40μmの導電性パターンを作製した。まず、シリコン製ブランケットにインキを均一に塗布し、次いでガラス凸版をブランケット上のインキ塗布面へ押し付けインキを転写除去した(初期転写)。さらにブランケット上に形成されたインクパターンを、ガラスを押し付けることによりガラス上に転写した(最終転写)。初期転写時及び最終転写においてブランケットへのインキ残りはなく、実施例46と比較して良好な転写性を示した。
また、前記反転印刷用導電性インキを用いて、スピンコーター(1H−DX2、ミカサ製)により厚さ1mmのスライドガラス(松浪硝子工業製)上にインキ薄膜を作成し180℃で30分間焼成した後比抵抗を測定したところ、6×10−6Ω・cmであった。
〔実施例48〕
本例では、実施例30と途中まで同様の手法を用いて銀微粒子を作製し、引き続いての工程により極性分散型銀微粒子を作製する。
・まず、実施例30と同様に、工程a、b、fおよびgを行った。
・工程l
極性溶媒に対して親和性を有する保護剤として、リシノール酸とジェファーミンEDR−148(商品名。ハンツマン・コーポレーション製のポリアミン)を導入する。実施例30において、工程gを終えた段階で、銀100質量部に対して、2.6質量部のアミン化合物が銀微粒子を被覆していることが判っている。保護剤の置換工程においては、導入する保護剤の質量を置換されるアミン化合物の質量に対して過剰に作用させることにより効率よく保護剤の置換が行われる。本実施例においても工程a、程b、fおよびgにて銀100質量部に対して2.6質量部のアミン化合物が銀微粒子を被覆しているものとみなした上で、銀100質量部に対して6質量部(後述するリシノール酸とジェファーミンEDR−148の合計量)にあたる保護剤を作用させる。
工程gから得られたメタノールで洗浄した残渣にメタノール25g、リシノール酸(極性溶媒に対して親和性を有する保護剤として使用される有機酸)0.2g、ジェファーミンEDR−148(極性溶媒に対して親和性を有する保護剤として使用されるポリアミン)0.4gを加えて40℃で15分撹拌を行った。この段階で、銀微粒子はメタノール中で沈殿していた。
・工程m
工程lから得られた液から、メタノールをデカンテーションにより除去した。得られた残渣にイソヘキサン(商品名:キョーワゾールC−600M、KHネオケム製)を30g加え、3分間撹拌を行い、イソヘキサンをデカンテーションにより除去した(洗浄操作)。
・工程n
洗浄後の残渣を回収し、銀微粒子を得た。
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Claims (14)

  1. 粉末状酸化銀(I)を原料として用いて銀微粒子を調製する、銀微粒子の調製方法であって、
    a)炭化水素溶媒中で、粉末状酸化銀(I)にギ酸を作用させて、粉末状酸化銀(I)をギ酸銀(I)に変換する工程、および
    b)前記炭化水素溶媒中で、前記ギ酸銀(I)中に含まれる銀カチオンを、アミン化合物による還元反応により銀原子に還元して、アミン化合物によって表面が被覆された銀微粒子を形成する工程
    を含み、
    前記アミン化合物として、1級アミンと2級アミンの両方を用いる
    ことを特徴とする銀微粒子の調製方法。
  2. 工程bにおいて、粒子径が相対的に小さな銀微粒子を形成する場合に前記アミン化合物に占める1級アミンの割合を相対的に大きくし、粒子径が相対的に大きな銀微粒子を形成する場合に前記アミン化合物に占める1級アミンの割合を相対的に小さくすることにより、銀微粒子の粒子径を制御する
    ことを特徴とする請求項1記載の銀微粒子の調製方法。
  3. 前記炭化水素溶媒が、炭素数6以上9以下の直鎖のアルカンまたは炭素数6以上9以下のシクロアルカンであって、65℃以上155℃以下の沸点を有し、
    工程aにおいて、前記炭化水素溶媒を、前記粉末状酸化銀(I)100質量部当たり350質量部以上600質量部以下用いる
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の銀微粒子の調製方法。
  4. 前記1級アミンの分子量が、120以上300以下であり、
    前記1級アミンが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
  5. 前記2級アミンの分子量が、100以上190以下であり、
    前記2級アミンが、前記炭化水素溶媒に対して親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
  6. 工程bにおいて、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオンを基準として、1級アミンと2級アミンを合計で110モル%以上150モル%以下用いる
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
  7. 工程bにおいて、炭化水素溶媒中で分散した銀微粒子を形成する場合には相対的に分子量が大きい1級アミンを用い、炭化水素溶媒中で沈殿した銀微粒子を形成する場合には相対的に分子量が小さい1級アミンを用いることにより、銀微粒子の分散状態を制御する
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
  8. 工程bにおいて、炭化水素溶媒中で分散した銀微粒子を形成し、
    工程bの後に、
    c)工程bから得られる反応液から、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒を減圧下で気化させて除去し、銀微粒子を含む残渣を回収する工程、
    d)工程cから得られる残渣をアルコールで洗浄する工程、および、
    e)工程dから得られるアルコール洗浄した残渣を、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒と同一のもしくは異なる炭化水素溶媒に分散させて、銀微粒子を含む分散液を得る工程
    を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
  9. 工程bにおいて、炭化水素溶媒中で沈殿した銀微粒子を形成し、
    工程bの後に、
    f)工程bから得られる反応液から、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒を除去し、銀微粒子を含む残渣を回収する工程、
    g)工程fから得られる残渣をアルコールで洗浄する工程、および、
    h)工程gから得られる残渣を回収して、銀微粒子を得る工程
    を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
  10. 工程bにおいて、炭化水素溶媒中で分散した銀微粒子を形成し、
    工程bの後に、
    c)工程bから得られる反応液から、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒を減圧下で気化させて除去し、銀微粒子を含む残渣を回収する工程、
    d)工程cから得られる残渣をアルコールで洗浄する工程、および、
    i)アルコール中で、工程dから得られる残渣に含まれる銀微粒子の表面を被覆しているアミン化合物を、極性溶媒に対して親和性を有する保護剤で置換して、前記保護剤によって表面が被覆された銀微粒子を形成する工程、
    j)工程iから得られる、銀微粒子とアルコールとを含む混合物に対して、アルコール除去、および炭化水素溶媒による洗浄を行う工程、
    k)工程jから得られる炭化水素溶媒で洗浄した残渣を、極性溶媒に分散させて、銀微粒子を含む分散液を得る工程
    を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
  11. 工程bにおいて、炭化水素溶媒中で沈殿した銀微粒子を形成し、
    工程bの後に、
    f)工程bから得られる反応液から、工程aおよびbで用いた炭化水素溶媒を除去し、銀微粒子を含む残渣を回収する工程、
    g)工程fから得られる残渣をアルコールで洗浄する工程、および、
    l)アルコール中で、工程gから得られる残渣に含まれる銀微粒子の表面を被覆しているアミン化合物を、極性溶媒に対して親和性を有する保護剤で置換して、前記保護剤によって表面が被覆された銀微粒子を形成する工程、
    m)工程lから得られる、銀微粒子とアルコールとを含む混合物から、アルコールを除去し、得られた残渣を炭化水素溶媒で洗浄する工程、および
    n)工程mから得られる残渣を回収して、銀微粒子を得る工程
    を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
  12. 前記保護剤が、有機酸およびアミノ基を二つ以上有するポリアミンのうちのいずれか一方またはそれらの組み合わせである
    ことを特徴とする請求項10に記載の銀微粒子の調製方法。
  13. 前記保護剤が、有機酸およびアミノ基を二つ以上有するポリアミンのうちのいずれか一方またはそれらの組み合わせである
    ことを特徴とする請求項11に記載の銀微粒子の調製方法。
  14. 前記アルコールがすべてメタノールであることを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の銀微粒子の調製方法。
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