JPWO2016142962A1 - 鋳造用Ni基合金およびタービン用鋳造部品 - Google Patents
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Abstract
本発明は、高温強度特性および鋳造性に優れた鋳造用Ni基合金およびタービン用鋳造部品を提供することを目的とする。実施形態の鋳造用Ni基合金は、質量%で、C:0.005〜0.100、Cr:15.0〜25.0、Co:10.0〜15.0、Mo:5.0〜12.0、Al:0.5〜2.0、Ti:0.3〜2.0、B:0.001〜0.006、Ta:0.05〜1.00、Si:0.1〜0.5、Mn:0.1〜0.5、La:0.05〜0.20を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる。
Description
本発明の実施の形態は、鋳造用Ni基合金およびタービン用鋳造部品に関する。
高温高圧の作動流体を媒体として用いたプラントは、発電効率を向上することができることから、地球環境保護の観点から注目され、ニーズが高まっている。例えば作動流体に蒸気を利用した蒸気タービンの場合、蒸気タービンの発電効率を上げるためには、蒸気タービンの蒸気温度を高温化することが有効である。近年の蒸気タービンを備える火力発電プラントにおいて、その蒸気温度は600℃以上まで上昇している。将来的には、蒸気温度は700℃へと上昇する傾向がみられる。また、作動流体にCO2を利用したCO2タービンの場合では、天然ガスを燃焼させてCO2と水を生成し、超臨界CO2を媒体としてタービンを回して発電する。CO2タービンは、発電効率が高く、CO2を100%回収し、外部にCO2を排出しないシステムである。
高温高圧の作動流体に曝される、タービンケーシング、バルブケーシング、ノズルボックス、燃焼器および配管などのタービン用部品は、周囲に高温高圧の作動流体が回流し高温になるとともに、高い応力が発生する。そのため、これらは、高温、高応力に耐える必要があり、これらを構成する材料として、室温から高温度領域において優れた強度、延性、靭性を有するものが求められている。
特に、作動流体の温度が650℃を超える場合には、従来の鉄系材料では高温強度が不足するため、Ni基合金の適用が必要となる。Ni基合金は、高温強度特性、耐食性に優れていることから、主にジェットエンジンやガスタービンの材料として広く適用されてきた。その代表例として、インコネル617合金(スペシャルメタル社製)やインコネル718合金(スペシャルメタル社製)などがある。
Ni基合金の高温強度を強化するために、AlやTiを添加することによりNi基合金の母相材内に、γ’(ガンマプライム:Ni3(Al,Ti))相、γ”(ガンマダブルプライム:Ni3Nb)相と呼ばれるいずれかの析出相、あるいは双方の析出相を析出させることによって、高温強度を確保する方法がある。これらのγ’(Ni3(Al,Ti))相およびγ”(Ni3Nb)相の双方の析出相を析出させて高温強度を確保するものとして、例えばインコネル718合金が挙げられる。
一方、インコネル617合金のように、Co、Moを添加することにより、Ni基の母相を強化(固溶強化)して高温強度を確保するものがある。
上記したように、650℃を超える作動流体を利用したタービンの構成部品の材料として様々なNi基合金が使用されているが、さらに高温強度特性および鋳造性を向上させる余地があると考えられる。
本発明が解決しようとする課題は、高温強度特性および鋳造性に優れた鋳造用Ni基合金およびタービン用鋳造部品を提供することである。
実施形態の鋳造用Ni基合金は、質量%で、C:0.005〜0.100、Cr:15.0〜25.0、Co:10.0〜15.0、Mo:5.0〜12.0、Al:0.5〜2.0、Ti:0.3〜2.0、B:0.001〜0.006、Ta:0.05〜1.00、Si:0.1〜0.5、Mn:0.1〜0.5、La:0.05〜0.20を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる。
高温強度特性および鋳造性に優れた鋳造用Ni基合金およびタービン用鋳造部品を提供することができる。
以下、実施の形態を説明する。
実施の形態の鋳造用Ni基合金は、以下に示す(M1)〜(M3)の化学組成範囲を有するNi合金で構成される。なお、以下の説明において、化学組成を表す%は、特に明記しない限り質量%とする。
実施の形態の鋳造用Ni基合金(M1)は、C:0.005〜0.100%、Cr:15.0〜25.0%、Co:10.0〜15.0%、Mo:5.0〜12.0%、Al:0.5〜2.0%、Ti:0.3〜2.0%、B:0.001〜0.006%、Ta:0.05〜1.00%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.1〜0.5%、La:0.05〜0.20%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる。
実施の形態の鋳造用Ni基合金(M2)は、C:0.005〜0.100%、Cr:15.0〜25.0%、Co:10.0〜15.0%、Mo:5.0〜12.0%、Al:0.5〜2.0%、Ti:0.3〜2.0%、B:0.001〜0.006%、Nb:0.05〜1.00%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.1〜0.5%、La:0.05〜0.20%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる。
実施の形態の鋳造用Ni基合金(M3)は、C:0.005〜0.100%、Cr:15.0〜25.0%、Co:10.0〜15.0%、Mo:5.0〜12.0%、Al:0.5〜2.0%、Ti:0.3〜2.0%、B:0.001〜0.006%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.1〜0.5%、La:0.05〜0.20%、Ta+Nb:0.05〜1.00%を含有し、TaおよびNbを含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる。
上記した(M1)〜(M3)の鋳造用Ni基合金における不可避的不純物としては、例えば、Cu、Fe、P、SおよびNなどが挙げられる。また、これらの不可避的不純物の中でも、少なくともNは、0.02%以下に抑制されていることが好ましい。
上記した化学組成範囲を有する鋳造用Ni基合金は、運転時の温度が650℃以上、さらには、700℃以上となるタービン用鋳造部品を構成する材料として好適である。タービン用鋳造部品として、例えば、タービンケーシング、バルブケーシング、ノズルボックス、配管などが挙げられる。また、上記した、鋳造用Ni基合金やタービン用鋳造部品は、例えば、蒸気タービン、ガスタービン、CO2タービンなどの発電用タービンに適用することができる。
ここで、タービンケーシングは、動翼が植設されたタービンロータが貫通し、内周面にノズル(静翼)が配設され、高温高圧の作動流体が導入されるタービン車室である。バルブケーシングは、タービンに供給する、高温高圧の作動流体の流量を調整したり、作動流体の流れを遮断したりする弁として機能するバルブのケーシングである。ノズルボックスは、タービン内に導入された高温高圧の作動流体を、第1段のノズル(静翼)を介して第1段の動翼に向けて導出する環状の作動流体流路を構成する部品である。配管としては、例えば、発電用タービンプラントなどに設置され、高温高圧の作動流体が通過する配管などを例示することができる。これらのタービンケーシング、バルブケーシング、ノズルボックス、配管は、いずれも高温高圧の作動流体に曝される環境に設置される。
ここで、上記したタービン用鋳造部品のすべての部位を実施の形態の鋳造用Ni基合金で構成してもよいし、タービン用鋳造部品の少なくとも所定部位を実施の形態の鋳造用Ni基合金で構成してもよい。例えば、温度650℃以上となるタービン用鋳造部品の一部の部位が、実施の形態の鋳造用Ni基合金で製造される。
実施の形態の鋳造用Ni基合金は、従来の鋳造用Ni基合金よりも、高温強度特性および鋳造性に優れている。そのため、実施の形態の鋳造用Ni基合金を用いて製造された、タービンケーシング、バルブケーシング、ノズルボックス、配管などのタービン用鋳造部品は、高温環境下においても高い信頼性を有する。
次に、上記した実施の形態の鋳造用Ni基合金における各化学組成範囲の限定理由を説明する。
(1)C(炭素)
Cは、強化相であるM23C6型炭化物の構成元素として有用である。特に650℃以上の高温環境下では、タービンの運転中にM23C6型炭化物を析出させることが鋳造用Ni基合金のクリープ強度を維持させる要因の一つである。また、Cは、鋳造時の溶湯の流動性を確保する効果も併せ持つ。Cの含有率が0.005%未満の場合には、上記炭化物の十分な析出量を確保することができないため、機械的強度(高温強度特性、以下同じ)が低下するとともに、鋳造時の溶湯の流動性が著しく低下する。一方、Cの含有率が0.100%を超えると、大型鋳塊製造時の成分偏析傾向が増加する。そのため、Cの含有率を0.005〜0.100%とした。さらに好ましいCの含有率は、0.008〜0.030%である。
Cは、強化相であるM23C6型炭化物の構成元素として有用である。特に650℃以上の高温環境下では、タービンの運転中にM23C6型炭化物を析出させることが鋳造用Ni基合金のクリープ強度を維持させる要因の一つである。また、Cは、鋳造時の溶湯の流動性を確保する効果も併せ持つ。Cの含有率が0.005%未満の場合には、上記炭化物の十分な析出量を確保することができないため、機械的強度(高温強度特性、以下同じ)が低下するとともに、鋳造時の溶湯の流動性が著しく低下する。一方、Cの含有率が0.100%を超えると、大型鋳塊製造時の成分偏析傾向が増加する。そのため、Cの含有率を0.005〜0.100%とした。さらに好ましいCの含有率は、0.008〜0.030%である。
(2)Cr(クロム)
Crは、Ni基合金の耐酸化性、耐食性および機械的強度を高めるのに不可欠である。さらにM23C6型炭化物の構成元素として不可欠であり、特に650℃以上の高温環境下では、タービンの運転中にM23C6型炭化物を析出させることで、合金のクリープ強度が維持される。また、Crは、高温環境下における耐酸化性を高める。Crの含有率が15.0%未満の場合には、耐酸化性が低下する。一方、Crの含有率が25.0%を超えると、M23C6型炭化物の析出を著しく促進することによって粗大化傾向を高める。また、有害相であるσ相の析出により機械的強度が低下する。そのため、Crの含有率を15.0〜25.0%とした。さらに好ましいCrの含有率は、15.0〜20.0%である。
Crは、Ni基合金の耐酸化性、耐食性および機械的強度を高めるのに不可欠である。さらにM23C6型炭化物の構成元素として不可欠であり、特に650℃以上の高温環境下では、タービンの運転中にM23C6型炭化物を析出させることで、合金のクリープ強度が維持される。また、Crは、高温環境下における耐酸化性を高める。Crの含有率が15.0%未満の場合には、耐酸化性が低下する。一方、Crの含有率が25.0%を超えると、M23C6型炭化物の析出を著しく促進することによって粗大化傾向を高める。また、有害相であるσ相の析出により機械的強度が低下する。そのため、Crの含有率を15.0〜25.0%とした。さらに好ましいCrの含有率は、15.0〜20.0%である。
(3)Co(コバルト)
Coは、Ni基合金において、母相内に固溶して母相の機械的強度を向上させる。しかしながら、Coの含有率が15.0%を超えると、機械的強度を低下させる金属間化合物相を生成し、機械的強度が低下する。一方、Coの含有率が10.0%未満の場合には、鋳造性が低下し、さらに機械的強度が低下する。そのため、Coの含有率を10.0〜15.0%とした。さらに好ましいCoの含有率は、10.0〜13.0%である。
Coは、Ni基合金において、母相内に固溶して母相の機械的強度を向上させる。しかしながら、Coの含有率が15.0%を超えると、機械的強度を低下させる金属間化合物相を生成し、機械的強度が低下する。一方、Coの含有率が10.0%未満の場合には、鋳造性が低下し、さらに機械的強度が低下する。そのため、Coの含有率を10.0〜15.0%とした。さらに好ましいCoの含有率は、10.0〜13.0%である。
(4)Mo(モリブデン)
Moは、Ni母相中に固溶して母相の機械的強度を向上させる効果を有し、また、M6C、M23C6型炭化物中に一部が置換することによって炭化物の安定性を高める。Moの含有率が5.0%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Moの含有率が12.0%を超えると、大型鋳塊製造時の成分偏析傾向が増加するとともに、σ相析出により機械的強度が低下する。そのため、Moの含有率を5.0〜12.0%とした。さらに好ましいMoの含有率は、8.0〜10.0%である。
Moは、Ni母相中に固溶して母相の機械的強度を向上させる効果を有し、また、M6C、M23C6型炭化物中に一部が置換することによって炭化物の安定性を高める。Moの含有率が5.0%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Moの含有率が12.0%を超えると、大型鋳塊製造時の成分偏析傾向が増加するとともに、σ相析出により機械的強度が低下する。そのため、Moの含有率を5.0〜12.0%とした。さらに好ましいMoの含有率は、8.0〜10.0%である。
(5)Al(アルミニウム)
Alは、Niとともにγ’(Ni3Al)相を生成し、析出によるNi基合金の機械的強度を向上させる。Alの含有率が0.5%未満の場合には、従来鋼と比べて機械的強度の向上が図れない。一方、Alの含有率が2.0%を超えると、大気鋳造において酸化が著しい。そのため、Alの含有率を0.5〜2.0%とした。さらに好ましいAlの含有率は、0.5〜1.4%である。
Alは、Niとともにγ’(Ni3Al)相を生成し、析出によるNi基合金の機械的強度を向上させる。Alの含有率が0.5%未満の場合には、従来鋼と比べて機械的強度の向上が図れない。一方、Alの含有率が2.0%を超えると、大気鋳造において酸化が著しい。そのため、Alの含有率を0.5〜2.0%とした。さらに好ましいAlの含有率は、0.5〜1.4%である。
(6)Ti(チタン)
Tiは、γ’(Ni3Al)相中のAlと置換してγ’(Ni3(Al,Ti))となり、γ’相の固溶強化に役立つ。Tiの含有率が0.3%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Tiの含有率が2.0%を超えると、大気鋳造において酸化が著しい。そのため、Tiの含有率を0.3〜2.0%とした。さらに好ましいTiの含有率は、0.3〜1.5%である。
Tiは、γ’(Ni3Al)相中のAlと置換してγ’(Ni3(Al,Ti))となり、γ’相の固溶強化に役立つ。Tiの含有率が0.3%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Tiの含有率が2.0%を超えると、大気鋳造において酸化が著しい。そのため、Tiの含有率を0.3〜2.0%とした。さらに好ましいTiの含有率は、0.3〜1.5%である。
また、AlとTiを合計した(Al+Ti)の含有率が1.0〜3.0%となるように、鋳造用Ni基合金はAlおよびTiを含有することが好ましい。(Al+Ti)の含有率を1.0〜3.0%とすることで、γ’(Ni3(Al,Ti))相をさらに強化し、機械的強度をさらに向上させることができる。
(7)B(ホウ素)
Bは、Ni母相中に析出して母相の機械的強度を向上させる効果を有する。Bの含有率が0.001%未満の場合には、母相の機械的強度を向上させる効果が発揮されない。一方、Bの含有率が0.006%を超えると、粒界脆化を招く恐れがある。そのため、Bの含有率を0.001〜0.006%とした。さらに好ましいBの含有率は、0.002〜0.005%である。
Bは、Ni母相中に析出して母相の機械的強度を向上させる効果を有する。Bの含有率が0.001%未満の場合には、母相の機械的強度を向上させる効果が発揮されない。一方、Bの含有率が0.006%を超えると、粒界脆化を招く恐れがある。そのため、Bの含有率を0.001〜0.006%とした。さらに好ましいBの含有率は、0.002〜0.005%である。
(8)Si(ケイ素)
Siは、鋳造時の湯流れを向上させる効果がある。Siの含有率が0.1%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Siの含有率が0.5%を超えると、鋳造性や機械的強度を低下させる。そのため、Siの含有率を0.1〜0.5%とした。さらに好ましいSiの含有率は、0.2〜0.4%である。
Siは、鋳造時の湯流れを向上させる効果がある。Siの含有率が0.1%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Siの含有率が0.5%を超えると、鋳造性や機械的強度を低下させる。そのため、Siの含有率を0.1〜0.5%とした。さらに好ましいSiの含有率は、0.2〜0.4%である。
(9)Mn(マンガン)
Mnは、普通鋼の場合、脆性に起因するS(硫黄)をMnSとして脆性を防止し、強度を向上させる。Mnの含有率が0.1%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Mnの含有率が0.5%を超えると、機械的強度が低下する。そのため、Mnの含有率を0.1〜0.5%とした。さらに好ましいMnの含有率は、0.2〜0.4%である。
Mnは、普通鋼の場合、脆性に起因するS(硫黄)をMnSとして脆性を防止し、強度を向上させる。Mnの含有率が0.1%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Mnの含有率が0.5%を超えると、機械的強度が低下する。そのため、Mnの含有率を0.1〜0.5%とした。さらに好ましいMnの含有率は、0.2〜0.4%である。
(10)Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)
Taは、γ’(Ni3(Al,Ti))相に固溶して、γ’相を強化し、γ’相の安定化を図ることができる。Taの含有率が0.05%未満の場合には、上記した効果において従来鋼と比べて向上がみられない。一方、Taの含有率が1.00%を超えると、経済性が損なわれ、製造コストが増加する。そのため、Taの含有率を0.05〜1.00%とした。さらに好ましいTaの含有率は、0.05〜0.50%である。
Taは、γ’(Ni3(Al,Ti))相に固溶して、γ’相を強化し、γ’相の安定化を図ることができる。Taの含有率が0.05%未満の場合には、上記した効果において従来鋼と比べて向上がみられない。一方、Taの含有率が1.00%を超えると、経済性が損なわれ、製造コストが増加する。そのため、Taの含有率を0.05〜1.00%とした。さらに好ましいTaの含有率は、0.05〜0.50%である。
Nbは、Taと同様に、γ’(Ni3(Al,Ti))相に固容して、γ’相を強化し、安定化させる。Nbは、Taに比べ価格が安く、経済的である。Nbの含有率が0.05%未満の場合には、上記した効果において従来鋼と比べて向上がみられない。一方、Nbの含有率が1.00%を超えると、機械的強度は向上するが、鋳造性が低下する。そのため、Nbの含有率を0.05〜1.00%とした。さらに好ましいNbの含有率は、0.05〜0.50%である。
また、鋳造用Ni基合金は、TaとNbの両方を含有してもよい。NbはTaに比べ価格が安いことから製造コストを削減することができる。TaとNbを合計した(Ta+Nb)の含有率が0.05未満の場合には、Taと同様に、上記した効果において従来鋼と比べて向上がみられない。一方、(Ta+Nb)の含有率が1.00%を超えると、経済性が損なわれ、製造コストが増加する。そのため、(Ta+Nb)の含有率を0.05〜1.00%とした。さらに好ましい(Ta+Nb)の含有率は、0.05〜0.50%である。
(11)La(ランタン)
Laは、接種材として添加し、La2O3が溶湯全体に分散して核となり微細な等軸晶組織が得られることで、機械的強度を向上させる効果を有する。Laの含有率が0.05%未満の場合には、機械的強度を向上させる効果が発揮されない。一方、Laの含有率が0.20%を超えると、Laの過剰添加となり加工性が低下することがある。そのため、Laの含有率を0.05〜0.20%とした。さらに好ましいLaの含有率は、0.05〜0.10%である。
Laは、接種材として添加し、La2O3が溶湯全体に分散して核となり微細な等軸晶組織が得られることで、機械的強度を向上させる効果を有する。Laの含有率が0.05%未満の場合には、機械的強度を向上させる効果が発揮されない。一方、Laの含有率が0.20%を超えると、Laの過剰添加となり加工性が低下することがある。そのため、Laの含有率を0.05〜0.20%とした。さらに好ましいLaの含有率は、0.05〜0.10%である。
(12)Cu(銅)、Fe(鉄)、P(リン)、S(硫黄)およびN(窒素)
Cu、Fe、P、SおよびNは、実施の形態の鋳造用Ni基合金において、不可避的不純物に分類されるものである。これらの不可避的不純物は、可能な限りその残存含有率を0%に近づけることが好ましい。これらの不可避的不純物の中でも、Nは、鋳造用Ni基合金に含まれるTiと反応することでTiNを形成することから、γ’相の生成に寄与するTiの含有量を減少させる。その結果、鋳造用Ni基合金の強度低下を招く。Nの含有率を0.02%以下に制限することで、上記した強度低下を防止することができる。そのため、鋳造用Ni基合金に含まれる不可避的不純物のうち、少なくともNの含有率は、0.02%以下とし、可能な限り0%に近づけることが好ましい。
Cu、Fe、P、SおよびNは、実施の形態の鋳造用Ni基合金において、不可避的不純物に分類されるものである。これらの不可避的不純物は、可能な限りその残存含有率を0%に近づけることが好ましい。これらの不可避的不純物の中でも、Nは、鋳造用Ni基合金に含まれるTiと反応することでTiNを形成することから、γ’相の生成に寄与するTiの含有量を減少させる。その結果、鋳造用Ni基合金の強度低下を招く。Nの含有率を0.02%以下に制限することで、上記した強度低下を防止することができる。そのため、鋳造用Ni基合金に含まれる不可避的不純物のうち、少なくともNの含有率は、0.02%以下とし、可能な限り0%に近づけることが好ましい。
ここで、実施の形態の鋳造用Ni基合金、およびこの鋳造用Ni基合金を用いて製造されるタービン用鋳造部品の製造方法について説明する。
実施の形態の鋳造用Ni基合金は、例えば、次のように製造される。まず、鋳造用Ni基合金を構成する組成成分を真空誘導溶解(VIM)し、その溶湯を所定の型枠に注入して鋳塊を形成する。そして、鋳塊に溶体化処理および時効処理を施して、鋳造用Ni基合金が製造される。
タービン用鋳造部品であるタービンケーシング、バルブケーシング、ノズルボックスは、例えば、次のように製造される。まず、鋳造用Ni基合金を構成する組成成分を真空誘導溶解(VIM)し、その溶湯をタービンケーシング、バルブケーシングまたはノズルボックスの形状に形成するための型枠に注入し、大気鋳造して構造体を製造する。そして、構造体に溶体化処理および時効処理を施して、タービンケーシング、バルブケーシングまたはノズルボックスが製造される。
また、タービンケーシング、バルブケーシング、ノズルボックスの他の製造方法として、まず、鋳造用Ni基合金を構成する組成成分を電気炉溶解(EF)し、アルゴン−酸素脱炭(AOD)を行い、その溶湯をタービンケーシング、バルブケーシングまたはノズルボックスの形状に形成するための型枠に注入し、大気鋳造して構造体を製造する。そして、構造体に溶体化処理および時効処理を施して、タービンケーシング、バルブケーシングまたはノズルボックスが製造される。
タービン用鋳造部品である配管は、例えば、次のように製造される。まず、鋳造用Ni基合金を構成する組成成分を、真空誘導溶解(VIM)を行い溶湯とし、または電気炉溶解(EF)してアルゴン−酸素脱炭(AOD)を行い溶湯とし、円筒形の型を高速回転させた状態でこの溶湯を流し込む。続いて、回転の遠心力を利用して溶湯を加圧し、配管形状の構造体を製造する(遠心鋳造法)。そして、構造体に溶体化処理および時効処理を施して、配管が製造される。
なお、上記したタービン用鋳造部品を製造する方法は、上記した方法に限定されるものではない。
ここで、鋳造用Ni基合金において、十分な機械的強度を発揮するためには、結晶粒内に、γ’(ガンマプライム:Ni3(Al,Ti))相を析出させることが好ましい。さらに、γ’相は、粗大化すると十分な機械的強度が得られないため、多量にかつ微細に析出させることが好ましい。そこで、鋳造用Ni基合金において、的確にγ’相を析出させるためには、鋳造用Ni基合金の結晶粒内組織の調整を図る必要がある。
鋳造用Ni基合金における結晶粒内組織を定める一つの因子として、溶体化処理および時効処理が考えられる。以下に、溶体化処理および時効処理の温度範囲について説明する。
まず、溶体化処理について説明する。溶体化処理では、鋳造用Ni基合金を1100〜1200℃の温度に維持することが好ましい。溶体化処理は、合金元素を母相に十分に固溶させ、固溶強化の効果を十分に得るとともに、その後の熱処理による析出物の析出制御を可能にするために施される。また、溶体化処理は、結晶粒径を調整する目的でも行われることがある。
溶体化処理の温度が1100℃よりも低い場合、合金元素は、母相に完全に固溶せず、固溶強化元素による強化が十分に行われない。さらに、溶体化処理後の熱処理による析出相の析出形態の制御も困難となる。一方、溶体化処理の温度が1200℃を超える場合、結晶粒径の粗大化を引き起こし、機械的強度が低下する。そのため、溶体化処理の温度を1100〜1200℃とした。また、溶体化処理において、1100〜1150℃の温度に維持することがさらに好ましい。なお、溶体化処理された鋳造用Ni基合金は、例えば、水冷や強制空冷などによって室温まで冷却される。
次に、溶体化処理後に室温まで冷却された鋳造用Ni基合金に施される時効処理について説明する。時効処理は、鋳造用Ni基合金を750〜850℃の温度に維持することが好ましい。時効処理後、鋳造用Ni基合金は、例えば、水冷や炉冷によって室温まで冷却される。
時効処理の温度が750℃よりも低い場合、γ’相の成長が著しく遅く、γ’相が析出することによる機械的強度の向上が得られない。一方、時効処理の温度が850℃を超える場合、γ’相の析出量が少なく、析出したγ’相が粗大化して機械的強度が低下する。そのため、上記したように時効処理の温度を750〜850℃とした。また、時効処理の温度を750〜820℃とすることがさらに好ましい。
上記した溶体化処理および時効処理の時間は、例えば、鋳造用Ni基合金の厚さ1cm当り10〜25分である。
以下、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されない。
(実施例1)
表1に示す化学組成を有する試料1の鋳造用Ni基合金を得るために必要な原材料を真空誘導溶解炉にて溶解し、鋳塊20kgを得た。続いて、鋳塊に対して、1110℃で24時間溶体化処理を施した後、空冷によって室温まで冷却して溶体化処理試料を得た。そして、溶体化処理試料に対して、780℃で10時間時効処理を施した後、空冷によって室温まで冷却して、鋳塊の鋳造用Ni基合金(試料1)を製造した。
表1に示す化学組成を有する試料1の鋳造用Ni基合金を得るために必要な原材料を真空誘導溶解炉にて溶解し、鋳塊20kgを得た。続いて、鋳塊に対して、1110℃で24時間溶体化処理を施した後、空冷によって室温まで冷却して溶体化処理試料を得た。そして、溶体化処理試料に対して、780℃で10時間時効処理を施した後、空冷によって室温まで冷却して、鋳塊の鋳造用Ni基合金(試料1)を製造した。
(実施例2〜実施例31)
表1に示す化学組成を有する試料2〜試料31の鋳造用Ni基合金を得るために必要な原材料を用いた以外は実施例1と同様にして鋳造用Ni基合金(試料2〜試料31)を製造した。
表1に示す化学組成を有する試料2〜試料31の鋳造用Ni基合金を得るために必要な原材料を用いた以外は実施例1と同様にして鋳造用Ni基合金(試料2〜試料31)を製造した。
(比較例1〜比較例14)
表1に示す化学組成を有する試料32〜試料45(比較例1〜比較例14)の鋳造用Ni基合金を得るために必要な原材料を用いた以外は実施例1と同様にして鋳造用Ni基合金(試料32〜試料45)を製造した。
表1に示す化学組成を有する試料32〜試料45(比較例1〜比較例14)の鋳造用Ni基合金を得るために必要な原材料を用いた以外は実施例1と同様にして鋳造用Ni基合金(試料32〜試料45)を製造した。
なお、表1に示すように、製造した試料1〜試料45には、不可避的不純物として、Fe、Cu、Sが含まれている。
上記実施例および比較例で製造した試料1〜試料45について、下記の特性を評価した。
(高温強度特性)
高温強度特性は、引張強度試験により評価した。製造した鋳塊の試料1〜試料45を切断して、所定のサイズを有する試験片を得た。そして、各試料による試験片に対して、温度が室温(24℃)および750℃の条件で、JIS G 0567(鉄鋼材料および耐熱合金の高温引張試験方法)に準拠して引張強度試験を行い、引張強度および0.2%耐力を測定した。
高温強度特性は、引張強度試験により評価した。製造した鋳塊の試料1〜試料45を切断して、所定のサイズを有する試験片を得た。そして、各試料による試験片に対して、温度が室温(24℃)および750℃の条件で、JIS G 0567(鉄鋼材料および耐熱合金の高温引張試験方法)に準拠して引張強度試験を行い、引張強度および0.2%耐力を測定した。
(鋳造性)
鋳造性は、鋳造割れの有無に基づいて評価した。製造した鋳塊の各種試料を縦に2分割に切断し、切断面についてJIS Z 2343−1(非破壊試験−浸透探傷試験−第1部:一般通則:浸透探傷試験方法及び浸透指示模様の分類)に準拠して浸透探傷試験(PT)を行い、鋳造割れの有無を目視観察した。
鋳造性は、鋳造割れの有無に基づいて評価した。製造した鋳塊の各種試料を縦に2分割に切断し、切断面についてJIS Z 2343−1(非破壊試験−浸透探傷試験−第1部:一般通則:浸透探傷試験方法及び浸透指示模様の分類)に準拠して浸透探傷試験(PT)を行い、鋳造割れの有無を目視観察した。
上記した高温強度特性および鋳造性の評価結果を表2に示す。表2において、鋳造割れがない場合には「無」と示し、鋳造割れがある場合には「有」と示している。なお、鋳造割れがない場合が鋳造性に優れている。
表2に示すように、試料1〜試料31は、各温度において、引張強度および0.2%耐力は高く、かつ鋳造性にも優れていることがわかった。試料1〜試料31において、引張強度および0.2%耐力が高い値となったのは、時効処理による析出強化と固溶強化とのバランス、および結晶粒の微細化が、強度を高めたからであると考えられる。
一方、比較例に係る試料32〜試料45では、高温強度特性および鋳造性の双方に優れた結果は得られなかった。
上記したように、実施の形態の鋳造用Ni基合金は、優れた高温強度特性および鋳造性を有する。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.005〜0.100、Cr:15.0〜25.0、Co:10.0〜15.0、Mo:5.0〜12.0、Al:0.5〜2.0、Ti:0.3〜2.0、B:0.001〜0.006、Ta:0.05〜1.00、Si:0.1〜0.5、Mn:0.1〜0.5、La:0.05〜0.20を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなることを特徴とする鋳造用Ni基合金。
- 質量%で、C:0.005〜0.100、Cr:15.0〜25.0、Co:10.0〜15.0、Mo:5.0〜12.0、Al:0.5〜2.0、Ti:0.3〜2.0、B:0.001〜0.006、Nb:0.05〜1.00、Si:0.1〜0.5、Mn:0.1〜0.5、La:0.05〜0.20を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなることを特徴とする鋳造用Ni基合金。
- 質量%で、C:0.005〜0.100、Cr:15.0〜25.0、Co:10.0〜15.0、Mo:5.0〜12.0、Al:0.5〜2.0、Ti:0.3〜2.0、B:0.001〜0.006、Si:0.1〜0.5、Mn:0.1〜0.5、La:0.05〜0.20、Ta+Nb:0.05〜1.00を含有し、TaおよびNbを含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなることを特徴とする鋳造用Ni基合金。
- Laが0.05〜0.10質量%含有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の鋳造用Ni基合金。
- 前記不可避的不純物のうち、少なくともNが0.02質量%以下に抑制されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の鋳造用Ni基合金。
- 請求項1乃至5のいずれか1項記載の鋳造用Ni基合金を用いて、少なくとも所定部位が製造されたことを特徴とするタービン用鋳造部品。
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