JP6062326B2 - 鋳造用Ni基合金およびタービン鋳造部品 - Google Patents

鋳造用Ni基合金およびタービン鋳造部品 Download PDF

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Description

本発明の実施の形態は、鋳造用Ni基合金およびタービン鋳造部品に関する。
近年、発電効率を向上させるため、高温高圧の作動流体を使用した発電プラントが注目されている。また、このような発電プラントは、地球環境保護の観点からも注目されている。
作動流体として蒸気を使用した場合、蒸気タービンの発電効率を上げるためには、蒸気の温度を高温化することが有効である。近年の蒸気タービンを備える火力発電プラントにおいて、その蒸気温度は600℃以上まで上昇している。将来的には、蒸気の温度は、700℃を超えることが想定される。
作動流体がCOのタービンでは、天然ガスを燃焼させ、COと水が生成し、超臨界COを媒体としてタービンを回し、発電する。このタービンにおける発電効率は高い。さらに、生成されたCOの大部分は、燃焼器に循環され、COの外部への排出が削減される。
高温高圧の作動流体に曝される、タービンケーシング、バルブケーシング、ノズルボックスおよび配管などは、周囲に高温高圧の作動流体が回流し高温になるとともに、高い応力が発生する。そのため、これらは、高温、高応力に耐える必要があり、これらを構成する材料として、室温から高温度領域において優れた強度、延性、靭性を有するものが求められている。
特に、作動流体の温度が650℃を超える場合には、従来の鉄系材料では高温強度が不足するため、Ni基合金の適用が必要となる。Ni基合金は、高温強度特性、耐食性に優れていることから、主にジェットエンジンやガスタービンの材料として広く適用されてきた。その代表例として、インコネル617合金(スペシャルメタル社製)やインコネル718合金(スペシャルメタル社製)などがある。
Ni基合金の高温強度を強化するために、AlやTiを添加することによりNi基合金の母相材内に、γ’(ガンマプライム:Ni(Al,Ti))相、γ”(ガンマダブルプライム:NiNb)相と呼ばれるいずれかの析出相、あるいは双方の析出相を析出させることによって、高温強度を確保する方法がある。このγ’(Ni(Al,Ti))相およびγ”(NiNb)相の双方の析出相を析出させて高温強度を確保するものとして、例えばインコネル718合金が挙げられる。
一方、インコネル617合金のように、Co、Moを添加することにより、Ni基の母相を強化(固溶強化)して高温強度を確保するものがある。
特開平7−150277号公報
上記したように、650℃を超える作動流体のタービン構成部品の材料として使用可能なNi基合金において、優れた高温強度特性および鋳造性を備えることが要求される。
本発明が解決しようとする課題は、高温強度特性および鋳造性に優れた鋳造用Ni基合金およびタービン鋳造部品を提供することである。
実施形態の鋳造用Ni基合金は、質量%で、C:0.005〜0.01未満、Cr:15〜25、Co:10〜15、Mo:5〜12、Al:0.5〜2、Ti:0.3〜2、B:0.001〜0.006、Ta:0.05〜1、Si:0.15〜0.5を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる。
図1は、(M1)の組成範囲のNi基合金を、1175℃の温度で溶体化処理し、780℃の温度で時効処理を施したときの組織の電子顕微鏡写真(10000倍)を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
実施の形態の鋳造用Ni基合金は、以下に示す(M1)、(M2)または(M3)の組成成分範囲のNi合金で構成される。なお、以下の説明において組成成分を表す%は、特に明記しない限り質量%とする。
実施の形態の鋳造用Ni基合金(M1)は、C:0.005〜0.01%未満、Cr:15〜25%、Co:10〜15%、Mo:5〜12%、Al:0.5〜2%、Ti:0.3〜2%、B:0.001〜0.006%、Ta:0.05〜1%、Si:0.15〜0.5%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる。
実施の形態の鋳造用Ni基合金(M2)は、C:0.005〜0.01%未満、Cr:15〜25%、Co:10〜15%、Mo:5〜12%、Al:0.5〜2%、Ti:0.3〜2%、B:0.001〜0.006%、Nb:0.025〜0.5%、Si:0.15〜0.5%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる。
実施の形態の鋳造用Ni基合金(M3)は、C:0.005〜0.01%未満、Cr:15〜25%、Co:10〜15%、Mo:5〜12%、Al:0.5〜2%、Ti:0.3〜2%、B:0.001〜0.006%、Si:0.15〜0.5%、Taが0.05〜1質量%含まれると想定したきのTaのモル数と同じモル数になるように、Taの一部をNbに置き換えてTaとNbを含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる。
ここで、上記した(M1)〜(M3)のNi基合金において、Alを0.5〜1.4%含有することが好ましい。また、上記した(M1)〜(M3)のNi基合金において、AlとTiとを合計して1〜3質量%含有することが好ましい。
上記した(M1)〜(M3)のNi基合金における不可避的不純物としては、例えば、Cu、Fe、P、S、MnおよびNなどが挙げられる。また、これらの不可避的不純物の中でも、少なくともNは、0.01%以下に抑制されていることが好ましい。
上記した組成成分範囲のNi基合金は、運転時の温度が650℃以上、さらには、700℃以上となるタービン鋳造部品を構成する材料として好適である。タービン鋳造部品として、例えば、タービンケーシング、バルブケーシング、ノズルボックス、配管などが挙げられる。また、上記した、Ni基合金やタービン鋳造部品は、例えば、蒸気タービン、ガスタービン、COタービンなどの発電用タービンに適用することができる。
ここで、タービンケーシングは、動翼が植設されたタービンロータが貫通し、内周面にノズル(静翼)が配設され、高温高圧の作動流体が導入されるタービン車室である。バルブケーシングは、タービンに供給する、高温高圧の作動流体の流量を調整したり、作動流体の流れを遮断したりする弁として機能するバルブのケーシングである。
ノズルボックスは、タービン内に導入された高温高圧の作動流体を、第1段のノズル(静翼)を介して第1段の動翼に向けて導出する環状の作動流体流路を構成する部品である。配管としては、例えば、発電用タービンプラントなどに設置され、高温高圧の作動流体が通過する配管などを例示することができる。これらのタービンケーシング、バルブケーシング、ノズルボックス、配管は、いずれも高温高圧の作動流体に曝される環境に設置される。
ここで、上記したタービン鋳造部品のすべての部位を、本実施の形態の鋳造用Ni基合金で構成してもよい。また、例えば、温度が650℃以上となるタービン鋳造部品の一部の部位を、本実施の形態の鋳造用Ni基合金で構成してもよい。
上記した本実施の形態の鋳造用Ni基合金は、従来の鋳造用Ni基合金よりも、高温強度特性および鋳造性に優れている。そのため、本実施の形態の鋳造用Ni基合金を用いて作製された、タービンケーシング、バルブケーシング、ノズルボックス、配管などのタービン鋳造部品は、高温環境下においても高い信頼性を有する。
次に、上記した実施の形態の鋳造用Ni基合金における各組成成分範囲の限定理由を説明する。
(1)C(炭素)
Cは、強化相であるM23型炭化物の構成元素として有用であり、特に650℃以上の高温環境下では、蒸気タービンの運転中にM23型炭化物を析出させることが合金のクリープ強度を維持させる要因の一つである。しかしながら、本発明では主にγ’(ガンマプライム:Ni(Al,Ti))相の析出により機械的強度を向上させているため、Cの含有率を0.01%未満とした。また、Cは、鋳造時の溶湯の流動性を確保する効果も併せ持つ。Cの含有率が0.005未満では、溶湯の流動性が確保されない。そのため、Cの含有率を0.005〜0.01%未満とした。さらに好ましいCの含有率は、0.0085〜0.0095%である。
(2)Cr(クロム)
Crは、Ni基合金の耐酸化性、耐食性および機械的強度を高めるのに不可欠な元素である。さらにM23型炭化物の構成元素として不可欠であり、特に650℃以上の高温環境下では、タービンの運転中にM23型炭化物を析出させることで、合金のクリープ強度が維持される。また、Crは、高温環境下における耐酸化性を高める。Crの含有率が15%未満の場合には、耐酸化性が低下する。一方、Crの含有率が25%を超えると、M23型炭化物の析出を著しく促進することによって粗大化傾向を高める。また、有害相であるσ相の析出により機械的強度が低下する。そのため、Crの含有率を15〜25%とした。さらに好ましいCrの含有率は、15〜20%である。
(3)Co(コバルト)
Coは、Ni基合金において、母相内に固溶して母相の機械的強度を向上させる。しかしながら、Coの含有率が15%を超えると、機械的強度を低下させる金属間化合物相を生成し、機械的強度が低下する。一方、Coの含有率が10%未満の場合には、鋳造性が低下し、さらに機械的強度が低下する。そのため、Coの含有率を10〜15%とした。さらに好ましいCoの含有率は、10〜13%である。
(4)Mo(モリブデン)
Moは、Ni母相中に固溶して母相の機械的強度を向上させる効果を有し、また、MC、M23型炭化物中に一部が置換することによって炭化物の安定性を高める。Moの含有率が5%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Moの含有率が12%を超えると、大型鋳塊作製時の成分偏析傾向が増加するとともに、σ相析出により機械的強度が低下する。そのため、Moの含有率を5〜12%とした。さらに好ましいMoの含有率は、8〜10%である。
(5)Al(アルミニウム)
Alは、Niとともにγ’(NiAl)相を生成し、析出によるNi基合金の機械的強度を向上させる。Alの含有率が0.5%未満の場合には、従来鋼と比べて機械的強度の向上が図れない。一方、Alの含有率が2%を超えると、大気鋳造において酸化が著しい。そのため、Alの含有率を0.5〜2%とした。さらに好ましいAlの含有率は、0.5〜1.4%である。
(6)Ti(チタン)
Tiは、γ’(NiAl)相中のAlと置換してγ’(Ni(Al,Ti))となり、γ’相の固溶強化に役立つ元素である。Tiの含有率が0.3%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Tiの含有率が2%を超えると、大気鋳造において酸化が著しい。そのため、Tiの含有率を0.3〜2%とした。さらに好ましいTiの含有率は、0.3〜1.5%である。
ここで、上記したAlおよびTiを、AlとTiを合計(Al+Ti)した含有率が1〜3%となるように含有することが好ましい。AlとTiを合計(Al+Ti)した含有率を1〜3%とすることで、γ’(Ni(Al,Ti))相をさらに強化し、機械的強度をさらに向上させることができる。
(7)B(ホウ素)
Bは、Ni母相中に析出して母相の機械的強度を向上させる効果を有する。Bの含有率が0.001%未満の場合には、母相の機械的強度を向上させる効果が発揮されない。一方、Bの含有率が0.006%を超えると、粒界脆化を招く恐れがある。そのため、Bの含有率を0.001〜0.006%とした。さらに好ましいBの含有率は、0.002〜0.005%である。
(8)Si(ケイ素)
鋳造の場合、Siは鋳造時の湯流れを向上させる効果がある。Siの含有率が0.15%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Siの含有率が0.5%を超えると、鋳造性や機械的強度を低下させる。そのため、Siの含有率を0.15〜0.5%とした。さらに好ましいSiの含有率は、0.2〜0.4%である。
(9)Ta(タンタル)
Taは、γ’(Ni(Al,Ti))相に固溶して、γ’相を強化し、γ’相の安定化を図ることができる。Taの含有率が0.05%未満の場合には、上記した効果において従来鋼と比べて向上がみられない。一方、Taの含有率が1%を超えると、経済性が損なわれ、製造コストが増加する。そのため、Taの含有率を0.05〜1%とした。さらに好ましいTaの含有率は、0.05〜0.5%である。
(10)Nb(ニオブ)
Nbは、Taと同様に、γ’(Ni(Al,Ti))相に固容して、γ’相を強化し、安定化させる。Nbは、Taに比べ価格が安く、経済的である。Nbの含有率が0.025%未満の場合には、上記した効果において従来鋼と比べて向上がみられない。一方、Nbの含有率が0.5%を超えると、機械的強度は向上するが、鋳造性が低下する。そのため、Nbの含有率を0.025〜0.5%とした。さらに好ましいNbの含有率は、0.1〜0.5%である。
また、上記したTaとNbの双方を含有する場合において、Taが0.05〜1質量%含まれると想定したきのTaのモル数と同じモル数になるように、Taの一部をNbに置き換えてNbを含有する。上記したように、Nbは、Taと同様の効果を奏する添加物であるため、Taのモル数と同じモル数になるように、Taの一部をNbに置き換えてNbを含有しても、Taを0.05〜1質量%含有する場合と同様の効果を得ることができる。さらに、NbはTaに比べ価格が安いことから製造コストの削減にもつながる。
ここで、TaとNbのモル数を合計した総モル数をTaのみのモル数とみなす換算方法について説明する。
TaとNbの合計した質量をTaの質量として換算したときのTaのモル数をAmolとする。TaとNbの双方を含有する場合においても、TaとNbのモル数の合計である総モル数が、このAmolとなるように構成する。
例えば、このTaの質量として換算したときのTaのモル数であるAmolのうちのB%をNbに置き換えて添加したとすると、Nbの添加モル数は、「A×B/100=Cmol」となり、Nbの添加量は、「C×92.91(g)(Nbの原子量)」となる。また、AmolのうちのB%をNbに置き換えた後のTaの添加モル数は、「A−C=Dmol」となり、Taの添加量は、「D×180.9(g)(Ta原子量)」となる。
さらに、具体的に説明する。例えば、Ni基合金100(kg)中にTaのみが0.5%添加されている場合のTa質量は、「100000(g)×0.005=500(g)」で、Taの総モル数は、「500(g)/180.9(g)(Ta原子量)=2.764(mol)」となる。例えば、Taの総モル数のうち40%をNbに置き換えたとすると、Nbの添加量は、「2.764(mol)×0.4×92.91(g)(Nbの原子量)=102.72(g)」となり、Nbの添加率は、Ni基合金100(kg)に対して、「102.72(g)/100000(g)×100=0.1%」となる。
一方、Taの添加量は、「2.764(mol)×0.6×180.9(g)=300(g)」となり、Taの添加率は、Ni基合金100(kg)に対して、「300(g)/100000(g)×100=0.3%」となる。よって、Ni基合金中におけるTaとNbを合計した添加率は、「0.3+0.1=0.4%」となり、TaとNbを合計した総添加量は、「300(g)+102.72(g)=402.72(g)」となる。
(11)Cu(銅)、Fe(鉄)、P(リン)、S(硫黄)、Mn(マンガン)およびN(窒素)
Cu、Fe、P、S、MnおよびNは、実施の形態の鋳造用Ni基合金においては、不可避的不純物に分類されるものである。これらの不可避的不純物は、可能な限りその残存含有率を0%に近づけることが好ましい。これらの不可避的不純物の中でも、Nは、材料中のTiと反応することでTiNを形成し、γ’相の生成に寄与するTiを減少させ、結果として強度低下を招く。Nの含有率を0.01%以下に制限することで、上記した強度低下を防止することができる。そのため、Nの残存含有率を0.01%以下とし、可能な限り0%に近づけることとした。
ここで、実施の形態の鋳造用Ni基合金、およびこの鋳造用Ni基合金を用いて製造されるタービン鋳造部品の製造方法について説明する。
実施の形態の鋳造用Ni基合金は、例えば、次のように製造される。まず、鋳造用Ni基合金を構成する組成成分を真空誘導溶解(VIM)し、その溶湯を所定の型枠に注入して鋳塊を形成する。そして、鋳塊に溶体化処理および時効処理を施して、鋳造用Ni基合金が作製される。
タービン鋳造部品であるタービンケーシング、バルブケーシング、ノズルボックスは、例えば、次のように製造される。まず、鋳造用Ni基合金を構成する組成成分を真空誘導溶解(VIM)し、その溶湯をタービンケーシング、バルブケーシングまたはノズルボックスの形状に形成するための型枠に注入し、大気鋳造して構造体を作製する。そして、構造体に溶体化処理および時効処理を施して、タービンケーシング、バルブケーシングまたはノズルボックスが作製される。
他の方法として、まず、鋳造用Ni基合金を構成する組成成分を電気炉溶解(EF)し、アルゴン−酸素脱炭(AOD)を行い、その溶湯をタービンケーシング、バルブケーシングまたはノズルボックスの形状に形成するための型枠に注入し、大気鋳造して構造体を作製する。そして、構造体に溶体化処理および時効処理を施して、タービンケーシング、バルブケーシングまたはノズルボックスが作製される。
タービン鋳造部品である配管は、例えば、次のように製造される。まず、鋳造用Ni基合金を構成する組成成分を、真空誘導溶解(VIM)を行い溶湯とし、または電気炉溶解(EF)してアルゴン−酸素脱炭(AOD)を行い溶湯とし、円筒形の型を高速回転させた状態でこの溶湯を流し込む。続いて、回転の遠心力を利用して溶湯を加圧し、配管形状の構造体を作製する(遠心鋳造法)。そして、構造体に溶体化処理および時効処理を施して、配管が作製される。
なお、上記したタービン鋳造部品を作製する方法は、上記した方法に限定されるものではない。
ここで、鋳造用Ni基合金において、十分な機械的強度を発揮するためには、結晶粒内に、γ’(ガンマプライム:Ni(Al,Ti))相を析出させることが好ましい。γ’相は、粗大化すると十分な機械的強度が得られないため、多量にかつ微細に析出させることが好ましい。そこで、鋳造用Ni基合金において、的確にγ’相を析出させるためには、合金の結晶粒内組織の調整を図る必要がある。
鋳造用Ni基合金における結晶粒内組織を定める一つの因子として、溶体化処理および時効処理が考えられる。以下に、溶体化処理および時効処理の温度範囲について説明する。
まず、溶体化処理について説明する。溶体化処理では、1150〜1200℃の温度に維持することが好ましい。溶体化処理は、合金元素を母相に十分に固溶させ、固溶強化の効果を十分に得るとともに、その後の熱処理による析出物の析出制御を可能にするためになされる。また、溶体化処理は、結晶粒径を調整する目的でも行われることもある。
溶体化処理の温度が1150℃よりも低い場合、合金元素は、母相に完全に固溶せず、固溶強化元素による強化が十分に行われない。さらに、溶体化処理後の熱処理による析出相の析出形態の制御も困難となる。一方、溶体化処理の温度が1200℃を超える場合、結晶粒径の粗大化を引き起こし、機械的強度が低下する。そのため、溶体化処理の温度を1150〜1200℃とした。また、溶体化処理において、1150〜1180℃の温度に維持することがさらに好ましい。なお、溶体化処理された鋳造用Ni基合金やタービン鋳造部品は、例えば、水冷や強制空冷などによって室温まで冷却される。
次に、溶体化処理後に室温まで冷却された鋳造用Ni基合金やタービン鋳造部品に施される時効処理について説明する。時効処理は、750〜850℃の温度に維持することが好ましい。時効処理後、鋳造用Ni基合金や蒸気タービン鋳造部品は、例えば、水冷や炉冷によって室温まで冷却される。
時効処理の温度が750℃よりも低い場合、γ’相の成長が著しく遅く、γ’相が析出することによる機械的強度の向上が得られない。一方、時効処理の温度が850℃を超える場合、γ’相の析出量が少なく、析出したγ’相が粗大化して機械的強度が低下する。そのため、上記したように時効処理の温度を750〜850℃とした。また、時効処理の温度を750〜820℃とすることがさらに好ましい。
上記した溶体化処理および時効処理の時間は、一般的に製品では、例えば、製品の厚さ1cm当り10〜25分とされていている。
ここで、図1は、上記した(M1)の組成範囲のNi基合金を、1175℃の温度で溶体化処理し、780℃の温度で時効処理を施したときの組織の電子顕微鏡写真(10000倍)を示す図である。
なお、鋳造用Ni基合金の組織を観察するための表面処理の際、γ’相は除去されてしまうため、図1には、γ’相が除去された後の穴10が示されている。図1に示すように、穴10の直径および分布から、結晶粒内のγ’相は、微細な粒状で、かつ多量に析出していることがわかる。
(高温強度特性および鋳造性の評価)
ここでは、実施の形態の鋳造用Ni基合金が、高温強度特性および鋳造性に優れていることを説明する。
(化学組成の影響)
表1は、高温強度特性および鋳造性の評価に用いられた試料1〜試料23の化学組成を示す。なお、試料1〜試料9は本実施の形態の化学組成範囲にあるNi基合金であり、試料10〜試料23は、その組成が本実施の形態の化学組成範囲にないNi基合金であり、比較例である。なお、ここで使用した本発明の化学組成範囲にあるNi基合金には、不可避的不純物として、Fe、Cu、Sが含まれている。
試料1〜試料23のNi基合金について、高温強度特性を引張強度試験およびクリープ破断試験により評価した。鋳造性を鋳造割れの有無に基づいて評価した。それぞれの試験に使用する試験片は、次のように作製された。
表1に示す化学組成を有する試料1〜試料23のNi基合金を構成する組成成分を得るために必要な原材料を真空誘導溶解炉にて溶解し、それぞれ20kgの鋳塊を作製した。
続いて、試料1〜試料23の鋳塊に対して、1175℃で5時間溶体化処理を施し、空冷によって室温まで冷却した。時効処理として780℃で10時間施した。
ここで、時効処理後、空冷によって室温まで冷却した。そして、鋳塊から所定のサイズの試験片を作製した。
引張強度試験は、各試料による試験片に対して、温度が室温(24℃)および750℃の条件で引張試験はJIS G 0567(鉄鋼材料および耐熱合金の高温引張試験方法)に準拠して実施し、0.2%耐力を測定した。
クリープ破断試験は、各試料による試験片に対して、温度が750℃、10万時間におけるクリープ破断強度をJIS Z 2271に準拠して実施した。
鋳造性の評価では、上記した鋳塊を縦に2分割に切断し、切断面についてJIS Z 2343−1(非破壊試験−浸透探傷試験−第1部:一般通則:浸透探傷試験方法及び浸透指示模様の分類)に準拠して、浸透探傷試験(PT)を行い、鋳造割れの有無を目視観察した。
上記した各評価結果を表2に示す。表2において、鋳造割れがない場合には「無」と示し、一方、鋳造割れがある場合には「有」と示している。なお、鋳造割れがない場合が鋳造性に優れている。
表2に示すように、試料1〜試料9は、各温度において、0.2%耐力およびクリープ破断強度が双方とも高く、かつ鋳造性にも優れていることがわかった。試料1〜試料9において、0.2%耐力およびクリープ破断強度が高い値となったのは、析出強化と固溶強化のバランスおよび時効処理により強度を高めたからと考えられる。
一方、比較例に係る試料10〜試料23では、高温強度特性および鋳造性の双方に優れた結果は得られなかった。
(時効処理の影響)
ここでは、上記した試料3の化学組成を有するNi基合金にいて、時効処理の温度を変化させ、高温強度特性および鋳造性を評価した。
表1に示した試料3を使用し、表3に示した、溶体化処理、時効処理の各条件で熱処理を施した。なお、熱処理以外の工程は、前述した、試験片の作製方法と同じである。高温強度特性および鋳造性を評価方法は、前述した方法と同じとした。
各評価結果を表4に示す。表4に示すように、時効処理の温度が750〜850℃に範囲で時効処理された試料3においては、前述したように、0.2%耐力およびクリープ破断強度が双方とも高く、かつ鋳造性にも優れていることがわかった。
一方、時効処理を施さない場合(試料24)、時効処理の温度が750℃よりも低い場合(試料25)には、高温強度特性に優れた結果は得られなかった。
以上説明した実施形態によれば、優れた高温強度特性および鋳造性を得ることが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10…穴。

Claims (7)

  1. 質量%で、C:0.005〜0.01未満、Cr:15〜25、Co:10〜15、Mo:5〜12、Al:0.5〜2、Ti:0.3〜2、B:0.001〜0.006、Ta:0.05〜1、Si:0.15〜0.5を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなることを特徴とする鋳造用Ni基合金。
  2. 質量%で、C:0.005〜0.01未満、Cr:15〜25、Co:10〜15、Mo:5〜12、Al:0.5〜2、Ti:0.3〜2、B:0.001〜0.006、Nb:0.025〜0.5、Si:0.15〜0.5を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなることを特徴とする鋳造用Ni基合金。
  3. 質量%で、C:0.005〜0.01未満、Cr:15〜25、Co:10〜15、Mo:5〜12、Al:0.5〜2、Ti:0.3〜2、B:0.001〜0.006、Si:0.15〜0.5、Taが0.05〜1質量%含まれると想定したきのTaのモル数と同じモル数になるように、Taの一部をNbに置き換えてTaとNbを含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなることを特徴とする鋳造用Ni基合金。
  4. Alを0.5〜1.4質量%含有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の鋳造用Ni基合金。
  5. AlとTiとを合計して1〜3質量%含有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の鋳造用Ni基合金。
  6. 前記不可避的不純物のうち、少なくともNが0.01%以下に抑制されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の鋳造用Ni基合金。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項記載の鋳造用Ni基合金を用いて、少なくとも所定部位が作製されたことを特徴とするタービン鋳造部品。
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