JPWO2009044834A1 - 偏光補償光学系及びこの光学系に用いられる偏光補償光学素子 - Google Patents
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Abstract
偏光補償光学系は、偏光子Pを介して標本4に照明光を照射する光源1、コレクタレンズ2及びコンデンサレンズ3と、標本4からの光を集光し、検光子Aを介して結像する対物レンズ5と、偏光子Pと標本4の間又は標本4と検光子Aの間の少なくとも一方に配設され、有効径内を複数の領域に分割して偏光子Pと検光子Aの間に配設されている光学素子により発生する偏光方向の回転及び位相差を当該領域の各々で補償する偏光補償光学素子C(C1,C2)とを有して構成される偏光補償光学系において、偏光補償光学素子C(C1,C2)の領域分割数を8以上とする。
Description
本発明は、偏光補償光学系及びこの光学系に用いられる偏光補償光学素子に関する。
直線偏光とされた光を用いる顕微鏡光学系において、この顕微鏡光学系を構成するレンズの屈折面やレンズに施されている各種コートの作用により、直線偏光の偏光方向が回転すると共に、楕円偏光化し、得られる像のコントラストやS/Nが悪化するという問題がある。この問題は、レンズの屈折面数が多い、屈折面の屈折力が強い、或いは屈折面に施される反射防止膜が多層であるなどの場合に顕著であるため、特に収差を高度に補正した高NAの対物レンズで問題となる。このような問題を解決するために顕微鏡光学系とほぼ同等の偏光特性を持つ、屈折力がゼロのレンズと1/2波長位相板を組み合わせることにより、直線偏光の楕円偏光化を補償する偏光補償光学素子が知られている(例えば、特公昭37−5782号公報参照)。
しかしながら、従来の偏光補償光学素子では、1つ乃至複数のかさばる素子を顕微鏡光路中の所定の場所に精度良く配置することが必要であり、顕微鏡の対物レンズの変更等による偏光補償光学素子の交換が容易ではない。また、偏光補償光学素子が特定の光学系に対して固定されたものとならざるを得ず、この結果、特定の対物レンズの使用時には顕微鏡光学系に起因する偏光方向の回転と楕円偏光化を補償できるものの、対物レンズを交換した場合には補償が不十分で得られる像のコントラストやS/Nが充分ではないという課題がある。
しかしながら、従来の偏光補償光学素子では、1つ乃至複数のかさばる素子を顕微鏡光路中の所定の場所に精度良く配置することが必要であり、顕微鏡の対物レンズの変更等による偏光補償光学素子の交換が容易ではない。また、偏光補償光学素子が特定の光学系に対して固定されたものとならざるを得ず、この結果、特定の対物レンズの使用時には顕微鏡光学系に起因する偏光方向の回転と楕円偏光化を補償できるものの、対物レンズを交換した場合には補償が不十分で得られる像のコントラストやS/Nが充分ではないという課題がある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、対物レンズを交換した場合でも偏光光学系の偏光方向の回転や位相差を高精度に補償できる偏光補償光学素子を含む偏光補償光学系を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、第1の本発明に係る偏光補償光学系は、偏光子を介して物体(例えば、実施形態における標本4)に照明光を照射する照明光学系(例えば、実施形態における光源1、コレクタレンズ2及びコンデンサレンズ3)と、物体からの光を集光し、検光子を介して結像する結像光学系(例えば、実施形態における対物レンズ5)と、偏光子と物体の間又は物体と検光子の間の少なくとも一方に配設され、有効径内を複数の領域に分割して偏光子と検光子の間に配設されている光学素子により発生する偏光方向の回転及び位相差を当該領域の各々で補償する偏光補償光学素子とを有して構成され、この偏光補償光学素子の領域分割数をNとしたとき、次式
N ≧ 8
を満足する。
また、第2の本発明に係る偏光補償光学系は、偏光子を介した照明光を偏向素子(例えば、実施形態におけるビームスプリッタBS)を介して物体に照射する照明光学系と、物体からの光を集光し、偏向素子及び検光子を介して結像する結像光学系と、偏光子と偏向素子の間又は偏向素子と検光子の間の少なくとも一方に配設され、有効径内を複数の領域に分割して偏光子と検光子との間に配設されている光学素子により発生する偏光方向の回転及び位相差を当該領域の各々で補償する偏光補償光学素子とを有して構成され、この偏光補償光学素子の領域分割数をNとしたとき、次式
N ≧ 8
を満足する。
また、第3の本発明に係る偏光補償光学系は、物体に偏光した照明光を照射する照明光学系と、物体からの光を検光子を介して集光する集光光学系と、照明光学系又は物体と検光子の間の少なくとも一方に配設され、有効径内を複数の領域に分割して集光光学系の物体から検光子までの光学素子及び照明光学系の光学素子により発生する偏光方向の回転及び位相差を当該領域の各々で補償する偏光補償光学素子とを有して構成され、この偏光補償光学素子の領域分割数をNとしたとき、次式
N ≧ 8
を満足する。
このような第1〜第3の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子の領域の各々には位相板が配置されており、当該位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることが好ましい。
あるいはこのような第1〜第3の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子の領域の各々には位相板が配置されており、当該位相板は、フォトニック結晶から形成されていることが好ましい。
あるいはこのような第1〜第3の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子は、位相差の異なる複数の領域のそれぞれに対応する、複数の1/4波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第1の分割型位相板と、位相差の異なる複数の領域のそれぞれに対応する、複数の1/2波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第2の分割型位相板とを含む複数の層から形成されていることが好ましい。
このとき、第1〜3の発明において、1/4波長位相板及び1/2波長位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることが好ましい。
あるいは、第1〜3の発明において、1/4波長位相板及び1/2波長位相板は、フォトニック結晶から形成されていることが好ましい。
またこのような第1〜第3の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子は円周方向ならびに半径方向に分割されており、半径方向の分割数をαとし、円周方向の分割数をβとしたとき、
2 ≦ β/α ≦ 3
であることが好ましい。
さらにこのような第1〜第3の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子は格子状に分割されていることが好ましい。
また、第4の本発明に係る偏光補償光学素子は、偏光方向の回転及び位相差を補償する偏光補償光学素子であって、有効径内を周方向及び半径方向に複数の領域に分割し、それぞれの分割領域に所定の方向に向けたそれぞれ異なる方向の位相軸を有し、異なる位相差を与えるように少なくとも1層の部材よりなる位相板を配置しており、領域の分割数をNとしたとき、次式
N ≧ 8
を満足する。
このような第4の本発明に係る偏光補償光学素子において、位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることが好ましい。
あるいは、このような第4の本発明に係る偏光補償光学素子において、位相板は、フォトニック結晶から形成されていることが好ましい。
あるいは、このような第4の本発明に係る偏光補償光学素子において、位相板は、それぞれの分割領域に対応する、複数の1/4波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第1の分割型位相板と、それぞれの分割領域に対応する、複数の1/2波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第2の分割型位相板を含む複数の層から形成されていることが好ましい。
このとき、第4の発明において、1/4波長位相板及び1/2波長位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることが好ましい。
あるいは、第4の発明において、1/4波長位相板及び1/2波長位相板は、フォトニック結晶から形成されていることが好ましい。
このような第4の本発明に係る偏光補償光学素子は、半径方向の分割数をαとし、円周方向の分割数をβとしたとき、次式
2 ≦ β/α ≦ 3
を満足することが好ましい。
また、このような第4の本発明に係る偏光補償光学素子において、有効径内は格子状に分割されていることが好ましい。
本発明に係る偏光補償光学系及びこの光学系に用いられる偏光補償光学素子を以上のように構成すると、対物レンズを交換した場合でも偏光光学系の偏光方向の回転や位相差を高精度に補償することができる。
前記課題を解決するために、第1の本発明に係る偏光補償光学系は、偏光子を介して物体(例えば、実施形態における標本4)に照明光を照射する照明光学系(例えば、実施形態における光源1、コレクタレンズ2及びコンデンサレンズ3)と、物体からの光を集光し、検光子を介して結像する結像光学系(例えば、実施形態における対物レンズ5)と、偏光子と物体の間又は物体と検光子の間の少なくとも一方に配設され、有効径内を複数の領域に分割して偏光子と検光子の間に配設されている光学素子により発生する偏光方向の回転及び位相差を当該領域の各々で補償する偏光補償光学素子とを有して構成され、この偏光補償光学素子の領域分割数をNとしたとき、次式
N ≧ 8
を満足する。
また、第2の本発明に係る偏光補償光学系は、偏光子を介した照明光を偏向素子(例えば、実施形態におけるビームスプリッタBS)を介して物体に照射する照明光学系と、物体からの光を集光し、偏向素子及び検光子を介して結像する結像光学系と、偏光子と偏向素子の間又は偏向素子と検光子の間の少なくとも一方に配設され、有効径内を複数の領域に分割して偏光子と検光子との間に配設されている光学素子により発生する偏光方向の回転及び位相差を当該領域の各々で補償する偏光補償光学素子とを有して構成され、この偏光補償光学素子の領域分割数をNとしたとき、次式
N ≧ 8
を満足する。
また、第3の本発明に係る偏光補償光学系は、物体に偏光した照明光を照射する照明光学系と、物体からの光を検光子を介して集光する集光光学系と、照明光学系又は物体と検光子の間の少なくとも一方に配設され、有効径内を複数の領域に分割して集光光学系の物体から検光子までの光学素子及び照明光学系の光学素子により発生する偏光方向の回転及び位相差を当該領域の各々で補償する偏光補償光学素子とを有して構成され、この偏光補償光学素子の領域分割数をNとしたとき、次式
N ≧ 8
を満足する。
このような第1〜第3の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子の領域の各々には位相板が配置されており、当該位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることが好ましい。
あるいはこのような第1〜第3の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子の領域の各々には位相板が配置されており、当該位相板は、フォトニック結晶から形成されていることが好ましい。
あるいはこのような第1〜第3の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子は、位相差の異なる複数の領域のそれぞれに対応する、複数の1/4波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第1の分割型位相板と、位相差の異なる複数の領域のそれぞれに対応する、複数の1/2波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第2の分割型位相板とを含む複数の層から形成されていることが好ましい。
このとき、第1〜3の発明において、1/4波長位相板及び1/2波長位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることが好ましい。
あるいは、第1〜3の発明において、1/4波長位相板及び1/2波長位相板は、フォトニック結晶から形成されていることが好ましい。
またこのような第1〜第3の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子は円周方向ならびに半径方向に分割されており、半径方向の分割数をαとし、円周方向の分割数をβとしたとき、
2 ≦ β/α ≦ 3
であることが好ましい。
さらにこのような第1〜第3の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子は格子状に分割されていることが好ましい。
また、第4の本発明に係る偏光補償光学素子は、偏光方向の回転及び位相差を補償する偏光補償光学素子であって、有効径内を周方向及び半径方向に複数の領域に分割し、それぞれの分割領域に所定の方向に向けたそれぞれ異なる方向の位相軸を有し、異なる位相差を与えるように少なくとも1層の部材よりなる位相板を配置しており、領域の分割数をNとしたとき、次式
N ≧ 8
を満足する。
このような第4の本発明に係る偏光補償光学素子において、位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることが好ましい。
あるいは、このような第4の本発明に係る偏光補償光学素子において、位相板は、フォトニック結晶から形成されていることが好ましい。
あるいは、このような第4の本発明に係る偏光補償光学素子において、位相板は、それぞれの分割領域に対応する、複数の1/4波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第1の分割型位相板と、それぞれの分割領域に対応する、複数の1/2波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第2の分割型位相板を含む複数の層から形成されていることが好ましい。
このとき、第4の発明において、1/4波長位相板及び1/2波長位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることが好ましい。
あるいは、第4の発明において、1/4波長位相板及び1/2波長位相板は、フォトニック結晶から形成されていることが好ましい。
このような第4の本発明に係る偏光補償光学素子は、半径方向の分割数をαとし、円周方向の分割数をβとしたとき、次式
2 ≦ β/α ≦ 3
を満足することが好ましい。
また、このような第4の本発明に係る偏光補償光学素子において、有効径内は格子状に分割されていることが好ましい。
本発明に係る偏光補償光学系及びこの光学系に用いられる偏光補償光学素子を以上のように構成すると、対物レンズを交換した場合でも偏光光学系の偏光方向の回転や位相差を高精度に補償することができる。
図1は、第1の実施形態に係る偏光補償光学系である透過照明型偏光顕微鏡の概略構成図である。
図2Aは、レンズを透過する光が大きな角度を有する場合の光学系における偏光方向の回転を示す模式図である。
図2Bは、レンズ表面に反射防止コートが多用されている場合の光学系における偏光方向の回転を示す模式図である。
図3Aは、偏光補償光学素子である分割型位相板の一例の模式図である。
図3Bは、偏光補償光学素子であるグラジェント位相板の一例の模式図である。
図4A〜図4Cは、構造複屈折部材の第1の構成方法の効果を示す模式図である。
図5A〜図5Cは、構造複屈折部材の第2の構成方法の効果を示す模式図である。
図6は、第1の実施形態の変形例を示す概略構成図である。
図7は、第2の実施形態に係る偏光補償光学系である透過照明型偏光顕微鏡の概略構成図である。
図8は、第2の実施形態の変形例を示す概略構成図である。
図9は、偏光軸の回転の入射角依存特性を示すグラフである。
図10は、位相差の入射角依存特性を示すグラフである。
図11Aは、シミュレーションに用いた偏光補償光学素子の模式図であって、円周方向及び半径方向に等分した場合を示す。
図11Bは、シミュレーションに用いた偏光補償光学素子の模式図であって、円周方向は等分しているが、半径方向はNAが大きくなるに従って細かく分割した場合を示す。
図12は、格子状に分割した偏光補償光学素子の模式図である。
図13は、1つの偏光補償光学素子をコンデンサレンズの前側焦点面近傍に配置し、偏光補償光学素子の円周方向分割数と半径方向分割数に対する、光学系1の消光比の変化をプロットしたグラフである。
図14は、偏光補償光学素子の円周方向分割数と半径方向分割数に対する、光学系2の消光比の変化をプロットしたグラフである。
図15は偏光補償光学素子の円周方向分割数と半径方向分割数に対する、光学系3の消光比の変化をプロットしたグラフである。
図16は、消光比と分割数の関係を示すグラフである。
図2Aは、レンズを透過する光が大きな角度を有する場合の光学系における偏光方向の回転を示す模式図である。
図2Bは、レンズ表面に反射防止コートが多用されている場合の光学系における偏光方向の回転を示す模式図である。
図3Aは、偏光補償光学素子である分割型位相板の一例の模式図である。
図3Bは、偏光補償光学素子であるグラジェント位相板の一例の模式図である。
図4A〜図4Cは、構造複屈折部材の第1の構成方法の効果を示す模式図である。
図5A〜図5Cは、構造複屈折部材の第2の構成方法の効果を示す模式図である。
図6は、第1の実施形態の変形例を示す概略構成図である。
図7は、第2の実施形態に係る偏光補償光学系である透過照明型偏光顕微鏡の概略構成図である。
図8は、第2の実施形態の変形例を示す概略構成図である。
図9は、偏光軸の回転の入射角依存特性を示すグラフである。
図10は、位相差の入射角依存特性を示すグラフである。
図11Aは、シミュレーションに用いた偏光補償光学素子の模式図であって、円周方向及び半径方向に等分した場合を示す。
図11Bは、シミュレーションに用いた偏光補償光学素子の模式図であって、円周方向は等分しているが、半径方向はNAが大きくなるに従って細かく分割した場合を示す。
図12は、格子状に分割した偏光補償光学素子の模式図である。
図13は、1つの偏光補償光学素子をコンデンサレンズの前側焦点面近傍に配置し、偏光補償光学素子の円周方向分割数と半径方向分割数に対する、光学系1の消光比の変化をプロットしたグラフである。
図14は、偏光補償光学素子の円周方向分割数と半径方向分割数に対する、光学系2の消光比の変化をプロットしたグラフである。
図15は偏光補償光学素子の円周方向分割数と半径方向分割数に対する、光学系3の消光比の変化をプロットしたグラフである。
図16は、消光比と分割数の関係を示すグラフである。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る偏光補償光学系の概略図である。本第1の実施形態では、偏光補償光学系の代表例として透過照明型偏光顕微鏡を取り上げ、その光学系にて発生する偏光方向の回転と位相差を補償した偏光補償光学系について説明する。
図1において、光源1からの照明光は、コレクタレンズ2によって集光された後、コンデンサレンズ3を介して不図示のスライドガラス上に載置された標本4を照明する。照明された標本4からの光は、対物レンズ5によって集光され、拡大像6が形成される。観察者はこの拡大像6を不図示の接眼レンズを介して肉眼で観察する。コレクタレンズ2とコンデンサレンズ3の間の光路中には、偏光子Pが、また対物レンズ5と拡大像6の間の光路中には検光子Aがそれぞれ配置されている。偏光子Pと検光子Aは、一般にその透過方位が直交するように配置される(クロスニコルの配置)。なお、物体を照明する照明光は、偏光子Pを透過した偏光に限定されず、偏光子を反射することによって生じる偏光、又は光源から直接偏光を発生させるレーザ光源などでも良い。
このような構成において、スライドガラス上に標本4が載置されていない場合、視野は暗黒となる。この状態で、例えば鉱物等の薄い標本4を置くと、その組織構造が標本4の各部の偏光状態の違いによって明暗が生じ可視化される。このような偏光顕微鏡においては、試料による僅かな偏光状態の変化を可視化して高精度に検出するために試料以外の光学系で発生する偏光状態の乱れを極力避けなければならない。
ところが、偏光子Pと検光子Aの間にはコンデンサレンズ3や対物レンズ5等の光学系が置かれていることが多く、たとえ偏光子Pと検光子Aがクロスニコルの配置であったとしても、光学系による偏光状態の乱れによって消光比が低下し顕微鏡の検出能力を低くしてしまう。これは高倍の対物レンズ5ほど顕著である。その主な原因は対物レンズ5内に配置されているレンズ屈折面が多いことやレンズ面による屈折角度が大きいこと、またレンズ表面に施されている反射防止コート等の偏光特性にある。
これらのコートの特性は、一般に光がコートに対して垂直入射する場合に最適となるように設計されており、高倍の対物レンズ5のようにレンズを通過する光がレンズ面に対して大きな角度を持つ場合には、x軸及びy軸以外の領域において図2Aに示すような偏光方向の回転を引き起こす(入射光がy軸方向に偏光している場合)。これは、入射直線偏光のうちP偏光成分とS偏光成分が入射角度によって屈折率が異なることによるものであり、その結果レンズを射出する光は入射直線偏光に対して回転する。さらに、レンズ表面に多層反射防止膜が多用されている場合には、P偏光成分とS偏光成分の間に位相差が付き、その影響で直線偏光が回転するだけでなく、図2Bに示すような楕円偏光となってしまう。この図2A、図2Bに示すような、偏光方向の回転や位相差の発生による楕円偏光化は、偏光顕微鏡の消光比を低下させ、像のコントラストやS/Nを低下させる。
さて、本第1の実施形態に係る偏光補償光学系(透過照明型偏光顕微鏡)では、光学系に起因する偏光方向の回転や位相差を補償する目的で、図1の照明光学系のコンデンサレンズ3の前側焦点面近傍に偏光子Pからコンデンサレンズ3の間の光学系に起因する偏光方向の回転や位相差を補償する偏光補償光学素子C1を挿入する。また結像光学系の対物レンズ5と検光子A間の光学系に起因する偏光方向の回転や位相差を補償する偏光補償光学素子C2を挿入して構成されている。
偏光補償光学素子C1及びC2は、図3Aに示されるように、光学系の有効径内を円周方向及び半径方向に分割し、それぞれの分割領域(例えば、図中の1a〜1h,2a〜2h)の偏光方向の回転や位相差に対応した位相板を配置した所謂分割型位相板である。また分割型位相板中のそれぞれの位相板の軸(進相軸又は遅相軸)は光学系の特性に応じてそれぞれ異なった方向に向けて配置されている。なお、図3A、及び、後述する図3Bは各々、偏光補償光学系C1、C2を同じ図面で説明しているが、位相板の位相差及び位相板の軸の方向は、偏光補償光学素子C1、C2が挿入される光学系の特性によってそれぞれ異なっている。
分割型位相板である偏光補償光学素子C1の分割領域1a〜1h,2a〜2hそれぞれの位相板の位相差をδ1a〜δ1h,δ2a〜δ2hとすると、それらの位相差は分割領域それぞれを通過する光線に対して、図1において偏光補償光学素子C1を除く偏光子Pからコンデンサレンズ3までの光学素子に起因する偏光方向の回転や位相差を全て補償するように設計させている。また、同様に分割型位相板である偏光補償光学素子C2の分割領域1a〜1h,2a〜2hそれぞれの位相板の位相差をδ1a〜δ1h、δ2a〜δ2hとすると、それらの位相差は分割領域それぞれを通過する光線に対して、図1において偏光補償光学素子C2を除く対物レンズ5から検光子Aまでの光学素子に起因する偏光方向の回転や位相差を全て補償するように設計されている。
なお、偏光補償光学素子C1およびC2の分割数や分割形状は図3Aに限られるものではなく、任意の分割数および分割形状とすることができる。また分割領域の一部に位相差を付与しない、すなわち位相板としての効果をもたない領域を設けることも可能である。
この結果、図1の透過照明型偏光顕微鏡の光学系を通過した光は(標本を載置していない状態)、光学系の偏光特性による偏光方向の回転や位相差が偏光補償光学素子C1、及びC2によって補償されるため、高い消光比を確保することができ、標本4を観察した際にコントラストの良い拡大像6を形成することができる。
なお、偏光補償光学素子C1,C2は、構造複屈折光学部材、樹脂製位相板、又はフォトニック結晶などで形成することができる。構造複屈折光学部材とは、波長より十分ピッチの小さい格子が位相板や偏光板として作用することを利用するもので、格子のピッチなどを変えることによって任意の位相差と位相軸を付与することができるものである。図3Aの分割領域1a〜1h,2a〜2hごとに、格子の方向やピッチなどを変えることにより、この図3Aに示すような分割型位相板を実現することができる。また、図3Bに示すように光学系の有効径内の位相軸と位相差が徐々に変わるように格子の方向やピッチを変えることによってグラディエント位相板を実現することができる。また、通常の樹脂製位相板では、樹脂の複屈折を利用して位相軸や位相差を付与するもので、異なる位相軸と位相差の樹脂製位相板を接合することにより、図3Aに示すような分割型位相板を実現することができる。また、樹脂では、樹脂製位相板作成時に引っ張り応力を各方向に応じて制御することによって、1枚の樹脂製位相板で位相軸と位相差を連続的に可変することが可能であり、図3Bのグラディエント位相板を実現することができる。
またフォトニック結晶は、三次元構造を持つ光機能結晶であり、三次元構造パラメータを変えることにより、位相差や位相軸などの任意の光学特性を作ることが可能である。このフォトニック結晶を用いて図3Aに示すような分割型位相板をつくる場合には、設計自由度が高いため、広帯域の波長特性を持つ位相板を作ることが可能であり、例えば、白色光源でのカラー観察光学系などに効果的である。また、図3Bに示すように光学系の有効径内の位相軸と位相差が徐々に変わるように三次元構造のパラメータを変えることによりグラディエント位相板を実現することができる。
このように、偏光補償光学素子C1とC2は、光学系に対して同様の作用、効果を有するので、以降、偏光補償光学素子C1を代表として説明する。
偏光補償光学素子C1を、構造複屈折光学部材で構成した場合の、偏光方向の回転及び位相差の補償について詳説する。偏光補償光学素子C1を構造複屈折光学部材で構成する場合二つの構成方法がある。
(第1の構成方法)
第1の構成方法は、偏光方法の回転の補償と位相差の補償を一面の構造複屈折光学部材で達成するものである。図4A〜図4Cにおいて、y軸方向に偏光された入射直線偏光は、光学系で発生した偏光方向の回転と位相差δにより楕円偏光化し、図4Aの楕円で示される状態となる。この時、楕円に外接する四角形ABCDを描く。この四角形ABCDは、対角線上の角ACがy軸上に存在するようなものを選択する。そしてAx′/Ay′=tanθとなるように構造複屈折光学部材の進相軸(図中のy′軸)の方位θを選ぶ。
図4Bに示すように、位相差δを補償するように形成された構造複屈折光学部材を光が通過すると、楕円化していた光は偏光方向が矢印の方向の直線偏光Mに変換される。さらに図4Cに示すように構造複屈折光学部材に1/2波長位相板の特性(位相差πを与える)を付与することにより、直線偏光Nは入射された入射直線偏光と同じy軸に偏光されたものとなる。このように構造複屈折光学部材を位相差δ及びπを付与するように形成することで、光学系で楕円偏光化した光(図4A)を、元の入射直線偏光に戻すことが可能になる。
この第1の構成方法は、一枚の構造複屈折光学部材が2種類の位相差δ及びπを合算した位相差を補償するように構成することで達成できる。
(第2の構成方法)
第2の構成方法は、少なくとも二面(表裏)の構造複屈折光学部材で構成する方法である。図5A〜図5Cにおいて、y軸方向に偏光された入射直線偏光は、光学系で発生した偏光方向の回転と位相差δにより楕円偏光化し、図5Aの楕円で示される状態となる。元の直線偏光の軸(y軸)と楕円偏光の長軸(進相軸:y′軸)のなす角度をθとする。ここで第1の構造複屈折部材が位相差π/2を付与するように構成されていると、この第1の構造複屈折光学部材を通過した楕円偏光の光は、y′軸に対して角度αを有する直線偏光0に変換される。そして、第2の構造複屈折光学部材の進相軸(y″軸)の方位をθ′=(θ+α)/2となるように構成して、位相差πを付与すると、第2の構造複屈折部材を透過した直線偏光0の光は、y軸に平行な直線偏光Pの光に変換され、入射直線偏光の方向に戻すことができる。
このように、第1の構造複屈折部材はπ/2の位相差を与える特性(すなわち、1/4波長位相板と同特性)を有し、第2の構造複屈折部材はπの位相差を与える特性(すなわち、1/2波長位相板と同特性)を有する構成とすることによって、光学系で楕円化した光を元の入射直線偏光に戻すことができる。すなわち、第2の構成方法は、1/4波長位相板と1/2波長位相板とを組み合わせることによって偏光方向の回転や位相差を補償することができ、製造するのが簡単であるという特徴を有する。
なお、図1において、偏光補償光学素子C1、及びC2は、それぞれの光学系中の任意の位置に配置することが可能であるが、照明光学系では照明光学系の瞳位置(すなわち、コンデンサレンズ3の前側焦点位置)に配置することが望ましい。また、結像光学系では対物レンズ5の後側焦点面近傍に配置することもできるが、偏光補償光学素子C2が分割型位相板では分割領域境界近傍の構造などが結像性能に与える収差劣化を考慮する必要がある。
また、本実施形態の偏光補償光学素子は、平行平板状の薄板形状であるため、光路中に容易に挿脱可能であり、例えば倍率切り替えにおけるレンズ交換時にも偏光補償光学素子を容易に入れ替えることができる。また、レンズ系に組み込む必要がないので、通常のレンズがそのまま使用できる。
なお、第1および第2の構成方法のいずれも、必要とされる位相差を構造複屈折光学部材などを複数重ね合わせることで構成することも可能である。すなわち、図3Aに示す領域2aにおける位相差をδ2aとするとき、次式(1)となるように位相差δ2aをn分割し、分割したそれぞれの位相差を持つn個の構造複屈折光学部材を重ね合わせて合計でδ2aとなるようにすることで実現できる。但し、上記n個の構造複屈折光学部材の位相軸の方向は全て同一方向である。これは、分割位相板に限らずグラディエント位相板でも同様である。なお、上記構成は、構造複屈折光学部材に限らず、樹脂製位相板、或いはフォトニック結晶を用いることも可能である。
δ2a=δ2a1+δ2a2+δ2a3+δ2a4+・・・+δ2a(n−1)+δ2an (1)
(変形例)
図6は、本発明の第1の実施形態の変形例を示す。本変形例は、図1の透過照明型偏光顕微鏡において偏光補償光学素子を1枚用いた例である。第1の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し説明を省略する。この図6において、透過照明型偏光顕微鏡中の照明光学系に偏光補償光学素子Cを配設して構成されている。偏光補償光学素子Cはコンデンサレンズ3の前側焦点面近傍に配設されている。そして、この偏光補償光学素子Cは、標本4を除いた状態における光学系全体の偏光方向の回転及び位相差を補償する特性を有している。このように構成することで、偏光補償光学素子Cが1個で光学系全体の偏光方向の回転や位相差を補償することができる。なお、偏光補償光学素子Cは、上記構造複屈折光学部材の第1の構成方法と第2のいずれも使用することができる。また、樹脂製位相板、フォトニック結晶なども同様に使用することができる。なお、物体を照明する照明光は、偏光子Pを透過した偏光に限定されず、偏光子を反射することによって生じる偏光、または光源から直接偏光を発生させるレーザ光源などでも良い。
(第2の実施形態)
図7は本発明の第2の実施形態に係る偏光補償光学系の概略構成図である。本第2の実施形態では、落射照明型偏光顕微鏡を取り上げ、その光学系にて発生する偏光方向の回転と位相差を補償する偏光補償光学系について説明する。この図7において、光源11からの照明光は、コレクタレンズ12によって集光された後、偏光子P、偏光補償光学素子C1を通過してビームスプリッタBSに入射する。そしてこのビームスプリッタBSで反射された照明光は、対物レンズ15に入射し、この対物レンズ15を介して不図示のスライドガラス上に載置された標本14を照明する。照明された標本14からの光は、対物レンズ15によって集光され、拡大像16が形成される。観察者はこの拡大像16を不図示の接眼レンズを介して肉眼で観察する。また対物レンズ15と拡大像16との間の光路中には偏光補償光学素子C2、検光子Aがそれぞれ配置されている。偏光子Pと検光子Aは、一般にその透過方位が直交するように配置される(すなわちクロスニコルの配置)。なお、物体を照明する照明光は、偏光子Pを透過した偏光に限定されず、偏光子を反射することによって生じる偏光、または光源から直接偏光を発生させるレーザ光源などでも良い。偏光補償光学素子C1、C2は、第1の実施形態と同様の、構造複屈折光学部材の第1の構成方法、または第2の構成方法のいずれも使用することができる。また、樹脂製位相板、フォトニック結晶なども同様に、利用することができる。このようにして、落射照明型偏光顕微鏡が構成されている。また、作用、効果は第1の実施形態と同様であり説明を省略する。
(変形例)
図8は、本発明の第2の実施形態の変形例を示す。本変形例は、図7の落射照明型偏光顕微鏡において偏光補償光学素子を一枚用いた例である。第2の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し説明を省略する。この図8において、落射照明型偏光顕微鏡中の照明光学系に偏光補償光学素子Cを配設して構成されている。偏光補償光学素子Cは偏光子PとビームスプリッタBSの間に配設されている。そして、この偏光補償光学素子Cは、標本14を除いた状態における落射照明型偏光顕微鏡の光学系全体の偏光方向の回転及び位相差を補償する特性を有している。このように構成することで、偏光補償光学素子Cが1個で光学系の偏光方向の回転と位相差を補償することができる。なお、偏光補償光学素子Cは、上記構造複屈折光学部材の第1の構成方法または第2の構成方法のいずれも使用することができる。また、樹脂製位相板、フォトニック結晶なども同様に使用することができる。また、偏光補償光学素子Cは偏光子Pと検光子Aの任意の場所に配置することができるが、図8に示すように照明光学系の偏光子PとビームスプリッタBSの間に配置するほうが分割型位相板の結合部分の結像性能への影響を小さくすることができるので望ましい。なお、物体を照明する照明光は、偏光子Pを透過した偏光に限定されず、偏光子を反射することによって生じる偏光、または光源から直接偏光を発生させるレーザ光源などでも良い。
上記実施の形態では、代表的な偏光顕微鏡光学系に適用する場合について述べたが、これに限定されるものではなく、偏光を利用する、例えばエリプソメータや微分干渉顕微鏡など、あらゆる光学系に適用可能であり、その光学系自身が有する偏光特性を補償することが可能である。また、上述の実施の形態は例に過ぎず、上述の構成や形状に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜修正、変更が可能である。
(シミュレーションに基づく検討)
さて、以下では本実施の形態におけるシミュレーションの計算結果を引用しながら、偏光補償効果について、より詳細に述べる。図9は、縦軸を偏光方向の回転角、横軸を光の入射角とし、屈折率1.5の媒質での屈折による偏光方向の回転角の入射角依存性について表している。入射角の増大と共に偏光の方向の回転角は急激に上昇することがわかる。また、単層反射防止膜、多層反射防止膜を蒸着すると、膜をつけていない時よりも、偏光方向の回転角が小さい値になることもわかる。
次に、図10について説明する。この図10は縦軸を位相差、横軸に入射角を取り、位相差の入射角依存性について表している。膜をつけていない場合、位相差は生じないが、単層反射防止膜、多層反射防止膜を蒸着した場合、入射角の増大とともに位相差が急激に上昇することがわかる。
コンデンサレンズ及び対物レンズでは開口数の上昇と共に、光線の各レンズでの入射角も平均的に大きくなる。また、コンデンサレンズや対物レンズには様々な種類があり、それぞれを構成する光学素子には様々な種類の単層および多層反射防止膜が使われている。しかし、偏光方向の回転や位相差の発生を起こす理由は同じである。つまり、コンデンサレンズや対物レンズの組み合わせによって、偏光方向の回転や位相差の絶対量は違っても、開口数の大きい光線が偏光方向の回転や位相差が大きくなることは変わらない。つまり、図9及び図10から、光学系の開口数の上昇と共に、偏光の方向の回転角及び位相差も上昇してしまうことがわかる。
直線偏光された光を用いる顕微鏡光学系において、得られる像のコントラストやS/Nを規定するパラメータの1つに消光比が挙げられる。消光比とは、光学系を透過する光の最大値と最小値の比のことをいう。偏光顕微鏡では、透過光が最大値をとるのは、偏光子と検光子の透過軸が平行であるオープンニコル状態で、最小値をとるのは、偏光子と検光子の透過軸が直交しているクロスニコル状態である。そこで、本発明による偏光補償光学系の効果を示すパラメータとして消光比を採用する。
このシミュレーションに使用する偏光補償光学素子の1つは、例えば図11Aに示すような素子である。偏光方向の回転角及び楕円率角は円周方向及び半径方向に従って変化している。従って偏光補償光学素子も円周方向ならびに半径方向に分割してある。分割領域は有限の大きさをもつので、同一領域を通る光束の中でも偏光方向の回転及び位相差が異なる。そこで、各領域を円周方向及び半径方向に等分した位置を通る光線をその領域を代表する光線とし、各領域の補正量はその光線の偏光方向の回転及び位相差を補正するように設定してある。
このシミュレーションでは、半径方向ならびに円周方向ともに等分割の偏光補償光学素子を使用しているが、図9及び図10から分かる通り、入射角が大きくなるに従い、偏光方向の回転角、位相差は急激に上昇するので、図11Bに示すように開口数が大きくなるに従って、領域を細かく分割することが望ましい。また、円周方向ならびに半径方向の分割では、図11Aや図11Bから分かるように、1領域の形状は2つの円弧を持つ複雑な形状となり、作成上の不便が生じる。そこで図12のように、格子状の領域に分けるように構成することも可能である。また、この場合も開口数が大きくなる周辺で1つの領域の面積を小さくすることが望ましい。
図13は、偏光補償光学系を含む光学系で、第1の実施形態の変形例のように、1つの偏光補償光学素子をコンデンサレンズ3の前側焦点面近傍に配置し、偏光補償光学素子の円周方向分割数と半径方向分割数に対する、光学系の消光比の変化をプロットしたものである。開口数が1.4で倍率が60倍の油浸対物レンズと開口数が1.4の油浸コンデンサレンズを使用している(「光学系1」とする)。開口数が1.4で倍率が60倍の油浸対物レンズには膜が17面使用されており、そのうち多層膜は4枚含まれている。開口数が1.4の油浸コンデンサレンズには膜が5面使用されており、単層膜のみ使用されている。図14及び図15は、図13と異なる高開口数の光学系に対して、同様の計算を行った結果である。図14は開口数が1.4で倍率が60倍の油浸対物レンズと開口数が0.88のドライコンデンサレンズの光学系(「光学系2」とする)で、膜は合計で23面使用されており、多層膜は4枚使用されている。図15は開口数が1.25で倍率が100倍の油浸対物レンズと開口数が0.9のドライコンデンサレンズ(「光学系3」とする)で、膜は合計で13面使用されおり、多層膜は使用されていない。このように開口数、倍率、単層、多層の膜の違いがあるにもかかわらず、図13〜図15からわかるように、最も効率良く消光比が上昇するのは、半径方向の分割数をαとし、円周方向の分割数をβとした時、次式(2)の条件を満足し、特に、次式(3)の構成の場合、分割数に対する消光比の上昇が大きい。
2 ≦ β/α ≦ 3 (2)
α:β = 3:8 (3)
このことからわかるように、本発明では、第1の実施形態、及び第2の実施形態、それぞれについての変形例を実施例として挙げたが、このシミュレーション結果ならびに本発明の効果は、全ての形態に関して、その一般性を失っていない。
図16は、上述の光学系1〜3において、縦軸が偏光補償光学素子を外した時の消光比で規格化された値で、横軸がα:β=3:8とした場合の全分割数である。光学系によらず、同様の割合で消光比が上昇していることがわかる。
偏光顕微鏡による目視観察時において、標本の位相差検出感度は、消光比の平方根にほぼ反比例することが知られている。さて、偏光顕微鏡の用途は標本の光学的等方性、異方性を調べるためのものであり、これまでは一般的に岩石、鉱物、高分子などに使われることが多かった。しかし、昨今生物標本を観察する機会も増えてきている。鉱物などに比べて微小な構造を持つ生物標本を観察するには、分解能(開口数に比例)と位相差検出感度の両立が求められる。しかし、前に述べた通り、高開口数の光学系では消光比は急激に低下し102〜103になってしまう。特に開口数が1を越える光学系では、消光比は102程度であることが知られている。しかし、開口数の低い低倍の光学系では、消光比が104程度であるので、高開口数の光学系で同程度の位相検出感度を持つためには、消光比を10倍以上にする必要がある。図16によると分割数と規格化された消光比はほぼ線型関係であるので、分割数を102以上にすれば、消光比を10倍以上にすることができることが分かる。また微分干渉顕微鏡においては、偏光顕微鏡ほどの消光比は必要ではないが、生物細胞など微小な構造を持つ生物標本においては、最低でも2×102の消光比が必要であり、これ以上は、消光比に比例してコントラストや位相差検出感度が上昇することが分かっている(Pluta.M Advanced Light Microscopy vol.2)。
最後に、既に知られているこれらの事実と今回の計算結果をふまえて、偏光補償光学素子の最適な領域分割について述べる。すでに述べたように、偏光顕微鏡の高開口数観察で、開口数の低い光学系と同様の消光比を得るためには、領域分割数を102以上にする必要がある。しかし、微分干渉顕微鏡においては、経験上3倍以上消光比が上昇すると、観察者がコントラストの上昇または位相差検出感度の上昇を実感することができる。図16によると分割数と規格化された消光比はほぼ線型関係であるので、分割数をおよそ30にすれば、消光比が3倍以上上昇すると分かる。特に最も効率良く消光比が上昇するα:β=3:8の時、つまり分割数24が適当である。また、光軸対称である光学系で、偏光子と検光子の透過軸が直交するクロスニコル状態のとき、偏光子と検光子の透過軸を境界線とした4つの領域を通る光線の偏光状態は、それぞれの軸に対して対称である。このことから、円周方向の最も少ない分割数は4と決まる。一方半径方向には対称性がないので、最も少ない分割数は2となる。つまり、偏光補償光学素子として効果を発揮するための最小領域分割数は8であることがわかる。すなわち、この偏光補償光学素子は、その領域分割数をNとしたとき、次式(4)を満足するように構成される。
N ≧ 8 (4)
但し、これまでに述べた通り、分割数が8では消光比の上昇が十分でないことが分かっている。しかし、図11Bのように、半径方向の分割を等間隔にせず、非線形に分割すれば、より少ない分割数で効果を発揮することができる。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る偏光補償光学系の概略図である。本第1の実施形態では、偏光補償光学系の代表例として透過照明型偏光顕微鏡を取り上げ、その光学系にて発生する偏光方向の回転と位相差を補償した偏光補償光学系について説明する。
図1において、光源1からの照明光は、コレクタレンズ2によって集光された後、コンデンサレンズ3を介して不図示のスライドガラス上に載置された標本4を照明する。照明された標本4からの光は、対物レンズ5によって集光され、拡大像6が形成される。観察者はこの拡大像6を不図示の接眼レンズを介して肉眼で観察する。コレクタレンズ2とコンデンサレンズ3の間の光路中には、偏光子Pが、また対物レンズ5と拡大像6の間の光路中には検光子Aがそれぞれ配置されている。偏光子Pと検光子Aは、一般にその透過方位が直交するように配置される(クロスニコルの配置)。なお、物体を照明する照明光は、偏光子Pを透過した偏光に限定されず、偏光子を反射することによって生じる偏光、又は光源から直接偏光を発生させるレーザ光源などでも良い。
このような構成において、スライドガラス上に標本4が載置されていない場合、視野は暗黒となる。この状態で、例えば鉱物等の薄い標本4を置くと、その組織構造が標本4の各部の偏光状態の違いによって明暗が生じ可視化される。このような偏光顕微鏡においては、試料による僅かな偏光状態の変化を可視化して高精度に検出するために試料以外の光学系で発生する偏光状態の乱れを極力避けなければならない。
ところが、偏光子Pと検光子Aの間にはコンデンサレンズ3や対物レンズ5等の光学系が置かれていることが多く、たとえ偏光子Pと検光子Aがクロスニコルの配置であったとしても、光学系による偏光状態の乱れによって消光比が低下し顕微鏡の検出能力を低くしてしまう。これは高倍の対物レンズ5ほど顕著である。その主な原因は対物レンズ5内に配置されているレンズ屈折面が多いことやレンズ面による屈折角度が大きいこと、またレンズ表面に施されている反射防止コート等の偏光特性にある。
これらのコートの特性は、一般に光がコートに対して垂直入射する場合に最適となるように設計されており、高倍の対物レンズ5のようにレンズを通過する光がレンズ面に対して大きな角度を持つ場合には、x軸及びy軸以外の領域において図2Aに示すような偏光方向の回転を引き起こす(入射光がy軸方向に偏光している場合)。これは、入射直線偏光のうちP偏光成分とS偏光成分が入射角度によって屈折率が異なることによるものであり、その結果レンズを射出する光は入射直線偏光に対して回転する。さらに、レンズ表面に多層反射防止膜が多用されている場合には、P偏光成分とS偏光成分の間に位相差が付き、その影響で直線偏光が回転するだけでなく、図2Bに示すような楕円偏光となってしまう。この図2A、図2Bに示すような、偏光方向の回転や位相差の発生による楕円偏光化は、偏光顕微鏡の消光比を低下させ、像のコントラストやS/Nを低下させる。
さて、本第1の実施形態に係る偏光補償光学系(透過照明型偏光顕微鏡)では、光学系に起因する偏光方向の回転や位相差を補償する目的で、図1の照明光学系のコンデンサレンズ3の前側焦点面近傍に偏光子Pからコンデンサレンズ3の間の光学系に起因する偏光方向の回転や位相差を補償する偏光補償光学素子C1を挿入する。また結像光学系の対物レンズ5と検光子A間の光学系に起因する偏光方向の回転や位相差を補償する偏光補償光学素子C2を挿入して構成されている。
偏光補償光学素子C1及びC2は、図3Aに示されるように、光学系の有効径内を円周方向及び半径方向に分割し、それぞれの分割領域(例えば、図中の1a〜1h,2a〜2h)の偏光方向の回転や位相差に対応した位相板を配置した所謂分割型位相板である。また分割型位相板中のそれぞれの位相板の軸(進相軸又は遅相軸)は光学系の特性に応じてそれぞれ異なった方向に向けて配置されている。なお、図3A、及び、後述する図3Bは各々、偏光補償光学系C1、C2を同じ図面で説明しているが、位相板の位相差及び位相板の軸の方向は、偏光補償光学素子C1、C2が挿入される光学系の特性によってそれぞれ異なっている。
分割型位相板である偏光補償光学素子C1の分割領域1a〜1h,2a〜2hそれぞれの位相板の位相差をδ1a〜δ1h,δ2a〜δ2hとすると、それらの位相差は分割領域それぞれを通過する光線に対して、図1において偏光補償光学素子C1を除く偏光子Pからコンデンサレンズ3までの光学素子に起因する偏光方向の回転や位相差を全て補償するように設計させている。また、同様に分割型位相板である偏光補償光学素子C2の分割領域1a〜1h,2a〜2hそれぞれの位相板の位相差をδ1a〜δ1h、δ2a〜δ2hとすると、それらの位相差は分割領域それぞれを通過する光線に対して、図1において偏光補償光学素子C2を除く対物レンズ5から検光子Aまでの光学素子に起因する偏光方向の回転や位相差を全て補償するように設計されている。
なお、偏光補償光学素子C1およびC2の分割数や分割形状は図3Aに限られるものではなく、任意の分割数および分割形状とすることができる。また分割領域の一部に位相差を付与しない、すなわち位相板としての効果をもたない領域を設けることも可能である。
この結果、図1の透過照明型偏光顕微鏡の光学系を通過した光は(標本を載置していない状態)、光学系の偏光特性による偏光方向の回転や位相差が偏光補償光学素子C1、及びC2によって補償されるため、高い消光比を確保することができ、標本4を観察した際にコントラストの良い拡大像6を形成することができる。
なお、偏光補償光学素子C1,C2は、構造複屈折光学部材、樹脂製位相板、又はフォトニック結晶などで形成することができる。構造複屈折光学部材とは、波長より十分ピッチの小さい格子が位相板や偏光板として作用することを利用するもので、格子のピッチなどを変えることによって任意の位相差と位相軸を付与することができるものである。図3Aの分割領域1a〜1h,2a〜2hごとに、格子の方向やピッチなどを変えることにより、この図3Aに示すような分割型位相板を実現することができる。また、図3Bに示すように光学系の有効径内の位相軸と位相差が徐々に変わるように格子の方向やピッチを変えることによってグラディエント位相板を実現することができる。また、通常の樹脂製位相板では、樹脂の複屈折を利用して位相軸や位相差を付与するもので、異なる位相軸と位相差の樹脂製位相板を接合することにより、図3Aに示すような分割型位相板を実現することができる。また、樹脂では、樹脂製位相板作成時に引っ張り応力を各方向に応じて制御することによって、1枚の樹脂製位相板で位相軸と位相差を連続的に可変することが可能であり、図3Bのグラディエント位相板を実現することができる。
またフォトニック結晶は、三次元構造を持つ光機能結晶であり、三次元構造パラメータを変えることにより、位相差や位相軸などの任意の光学特性を作ることが可能である。このフォトニック結晶を用いて図3Aに示すような分割型位相板をつくる場合には、設計自由度が高いため、広帯域の波長特性を持つ位相板を作ることが可能であり、例えば、白色光源でのカラー観察光学系などに効果的である。また、図3Bに示すように光学系の有効径内の位相軸と位相差が徐々に変わるように三次元構造のパラメータを変えることによりグラディエント位相板を実現することができる。
このように、偏光補償光学素子C1とC2は、光学系に対して同様の作用、効果を有するので、以降、偏光補償光学素子C1を代表として説明する。
偏光補償光学素子C1を、構造複屈折光学部材で構成した場合の、偏光方向の回転及び位相差の補償について詳説する。偏光補償光学素子C1を構造複屈折光学部材で構成する場合二つの構成方法がある。
(第1の構成方法)
第1の構成方法は、偏光方法の回転の補償と位相差の補償を一面の構造複屈折光学部材で達成するものである。図4A〜図4Cにおいて、y軸方向に偏光された入射直線偏光は、光学系で発生した偏光方向の回転と位相差δにより楕円偏光化し、図4Aの楕円で示される状態となる。この時、楕円に外接する四角形ABCDを描く。この四角形ABCDは、対角線上の角ACがy軸上に存在するようなものを選択する。そしてAx′/Ay′=tanθとなるように構造複屈折光学部材の進相軸(図中のy′軸)の方位θを選ぶ。
図4Bに示すように、位相差δを補償するように形成された構造複屈折光学部材を光が通過すると、楕円化していた光は偏光方向が矢印の方向の直線偏光Mに変換される。さらに図4Cに示すように構造複屈折光学部材に1/2波長位相板の特性(位相差πを与える)を付与することにより、直線偏光Nは入射された入射直線偏光と同じy軸に偏光されたものとなる。このように構造複屈折光学部材を位相差δ及びπを付与するように形成することで、光学系で楕円偏光化した光(図4A)を、元の入射直線偏光に戻すことが可能になる。
この第1の構成方法は、一枚の構造複屈折光学部材が2種類の位相差δ及びπを合算した位相差を補償するように構成することで達成できる。
(第2の構成方法)
第2の構成方法は、少なくとも二面(表裏)の構造複屈折光学部材で構成する方法である。図5A〜図5Cにおいて、y軸方向に偏光された入射直線偏光は、光学系で発生した偏光方向の回転と位相差δにより楕円偏光化し、図5Aの楕円で示される状態となる。元の直線偏光の軸(y軸)と楕円偏光の長軸(進相軸:y′軸)のなす角度をθとする。ここで第1の構造複屈折部材が位相差π/2を付与するように構成されていると、この第1の構造複屈折光学部材を通過した楕円偏光の光は、y′軸に対して角度αを有する直線偏光0に変換される。そして、第2の構造複屈折光学部材の進相軸(y″軸)の方位をθ′=(θ+α)/2となるように構成して、位相差πを付与すると、第2の構造複屈折部材を透過した直線偏光0の光は、y軸に平行な直線偏光Pの光に変換され、入射直線偏光の方向に戻すことができる。
このように、第1の構造複屈折部材はπ/2の位相差を与える特性(すなわち、1/4波長位相板と同特性)を有し、第2の構造複屈折部材はπの位相差を与える特性(すなわち、1/2波長位相板と同特性)を有する構成とすることによって、光学系で楕円化した光を元の入射直線偏光に戻すことができる。すなわち、第2の構成方法は、1/4波長位相板と1/2波長位相板とを組み合わせることによって偏光方向の回転や位相差を補償することができ、製造するのが簡単であるという特徴を有する。
なお、図1において、偏光補償光学素子C1、及びC2は、それぞれの光学系中の任意の位置に配置することが可能であるが、照明光学系では照明光学系の瞳位置(すなわち、コンデンサレンズ3の前側焦点位置)に配置することが望ましい。また、結像光学系では対物レンズ5の後側焦点面近傍に配置することもできるが、偏光補償光学素子C2が分割型位相板では分割領域境界近傍の構造などが結像性能に与える収差劣化を考慮する必要がある。
また、本実施形態の偏光補償光学素子は、平行平板状の薄板形状であるため、光路中に容易に挿脱可能であり、例えば倍率切り替えにおけるレンズ交換時にも偏光補償光学素子を容易に入れ替えることができる。また、レンズ系に組み込む必要がないので、通常のレンズがそのまま使用できる。
なお、第1および第2の構成方法のいずれも、必要とされる位相差を構造複屈折光学部材などを複数重ね合わせることで構成することも可能である。すなわち、図3Aに示す領域2aにおける位相差をδ2aとするとき、次式(1)となるように位相差δ2aをn分割し、分割したそれぞれの位相差を持つn個の構造複屈折光学部材を重ね合わせて合計でδ2aとなるようにすることで実現できる。但し、上記n個の構造複屈折光学部材の位相軸の方向は全て同一方向である。これは、分割位相板に限らずグラディエント位相板でも同様である。なお、上記構成は、構造複屈折光学部材に限らず、樹脂製位相板、或いはフォトニック結晶を用いることも可能である。
δ2a=δ2a1+δ2a2+δ2a3+δ2a4+・・・+δ2a(n−1)+δ2an (1)
(変形例)
図6は、本発明の第1の実施形態の変形例を示す。本変形例は、図1の透過照明型偏光顕微鏡において偏光補償光学素子を1枚用いた例である。第1の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し説明を省略する。この図6において、透過照明型偏光顕微鏡中の照明光学系に偏光補償光学素子Cを配設して構成されている。偏光補償光学素子Cはコンデンサレンズ3の前側焦点面近傍に配設されている。そして、この偏光補償光学素子Cは、標本4を除いた状態における光学系全体の偏光方向の回転及び位相差を補償する特性を有している。このように構成することで、偏光補償光学素子Cが1個で光学系全体の偏光方向の回転や位相差を補償することができる。なお、偏光補償光学素子Cは、上記構造複屈折光学部材の第1の構成方法と第2のいずれも使用することができる。また、樹脂製位相板、フォトニック結晶なども同様に使用することができる。なお、物体を照明する照明光は、偏光子Pを透過した偏光に限定されず、偏光子を反射することによって生じる偏光、または光源から直接偏光を発生させるレーザ光源などでも良い。
(第2の実施形態)
図7は本発明の第2の実施形態に係る偏光補償光学系の概略構成図である。本第2の実施形態では、落射照明型偏光顕微鏡を取り上げ、その光学系にて発生する偏光方向の回転と位相差を補償する偏光補償光学系について説明する。この図7において、光源11からの照明光は、コレクタレンズ12によって集光された後、偏光子P、偏光補償光学素子C1を通過してビームスプリッタBSに入射する。そしてこのビームスプリッタBSで反射された照明光は、対物レンズ15に入射し、この対物レンズ15を介して不図示のスライドガラス上に載置された標本14を照明する。照明された標本14からの光は、対物レンズ15によって集光され、拡大像16が形成される。観察者はこの拡大像16を不図示の接眼レンズを介して肉眼で観察する。また対物レンズ15と拡大像16との間の光路中には偏光補償光学素子C2、検光子Aがそれぞれ配置されている。偏光子Pと検光子Aは、一般にその透過方位が直交するように配置される(すなわちクロスニコルの配置)。なお、物体を照明する照明光は、偏光子Pを透過した偏光に限定されず、偏光子を反射することによって生じる偏光、または光源から直接偏光を発生させるレーザ光源などでも良い。偏光補償光学素子C1、C2は、第1の実施形態と同様の、構造複屈折光学部材の第1の構成方法、または第2の構成方法のいずれも使用することができる。また、樹脂製位相板、フォトニック結晶なども同様に、利用することができる。このようにして、落射照明型偏光顕微鏡が構成されている。また、作用、効果は第1の実施形態と同様であり説明を省略する。
(変形例)
図8は、本発明の第2の実施形態の変形例を示す。本変形例は、図7の落射照明型偏光顕微鏡において偏光補償光学素子を一枚用いた例である。第2の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し説明を省略する。この図8において、落射照明型偏光顕微鏡中の照明光学系に偏光補償光学素子Cを配設して構成されている。偏光補償光学素子Cは偏光子PとビームスプリッタBSの間に配設されている。そして、この偏光補償光学素子Cは、標本14を除いた状態における落射照明型偏光顕微鏡の光学系全体の偏光方向の回転及び位相差を補償する特性を有している。このように構成することで、偏光補償光学素子Cが1個で光学系の偏光方向の回転と位相差を補償することができる。なお、偏光補償光学素子Cは、上記構造複屈折光学部材の第1の構成方法または第2の構成方法のいずれも使用することができる。また、樹脂製位相板、フォトニック結晶なども同様に使用することができる。また、偏光補償光学素子Cは偏光子Pと検光子Aの任意の場所に配置することができるが、図8に示すように照明光学系の偏光子PとビームスプリッタBSの間に配置するほうが分割型位相板の結合部分の結像性能への影響を小さくすることができるので望ましい。なお、物体を照明する照明光は、偏光子Pを透過した偏光に限定されず、偏光子を反射することによって生じる偏光、または光源から直接偏光を発生させるレーザ光源などでも良い。
上記実施の形態では、代表的な偏光顕微鏡光学系に適用する場合について述べたが、これに限定されるものではなく、偏光を利用する、例えばエリプソメータや微分干渉顕微鏡など、あらゆる光学系に適用可能であり、その光学系自身が有する偏光特性を補償することが可能である。また、上述の実施の形態は例に過ぎず、上述の構成や形状に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜修正、変更が可能である。
(シミュレーションに基づく検討)
さて、以下では本実施の形態におけるシミュレーションの計算結果を引用しながら、偏光補償効果について、より詳細に述べる。図9は、縦軸を偏光方向の回転角、横軸を光の入射角とし、屈折率1.5の媒質での屈折による偏光方向の回転角の入射角依存性について表している。入射角の増大と共に偏光の方向の回転角は急激に上昇することがわかる。また、単層反射防止膜、多層反射防止膜を蒸着すると、膜をつけていない時よりも、偏光方向の回転角が小さい値になることもわかる。
次に、図10について説明する。この図10は縦軸を位相差、横軸に入射角を取り、位相差の入射角依存性について表している。膜をつけていない場合、位相差は生じないが、単層反射防止膜、多層反射防止膜を蒸着した場合、入射角の増大とともに位相差が急激に上昇することがわかる。
コンデンサレンズ及び対物レンズでは開口数の上昇と共に、光線の各レンズでの入射角も平均的に大きくなる。また、コンデンサレンズや対物レンズには様々な種類があり、それぞれを構成する光学素子には様々な種類の単層および多層反射防止膜が使われている。しかし、偏光方向の回転や位相差の発生を起こす理由は同じである。つまり、コンデンサレンズや対物レンズの組み合わせによって、偏光方向の回転や位相差の絶対量は違っても、開口数の大きい光線が偏光方向の回転や位相差が大きくなることは変わらない。つまり、図9及び図10から、光学系の開口数の上昇と共に、偏光の方向の回転角及び位相差も上昇してしまうことがわかる。
直線偏光された光を用いる顕微鏡光学系において、得られる像のコントラストやS/Nを規定するパラメータの1つに消光比が挙げられる。消光比とは、光学系を透過する光の最大値と最小値の比のことをいう。偏光顕微鏡では、透過光が最大値をとるのは、偏光子と検光子の透過軸が平行であるオープンニコル状態で、最小値をとるのは、偏光子と検光子の透過軸が直交しているクロスニコル状態である。そこで、本発明による偏光補償光学系の効果を示すパラメータとして消光比を採用する。
このシミュレーションに使用する偏光補償光学素子の1つは、例えば図11Aに示すような素子である。偏光方向の回転角及び楕円率角は円周方向及び半径方向に従って変化している。従って偏光補償光学素子も円周方向ならびに半径方向に分割してある。分割領域は有限の大きさをもつので、同一領域を通る光束の中でも偏光方向の回転及び位相差が異なる。そこで、各領域を円周方向及び半径方向に等分した位置を通る光線をその領域を代表する光線とし、各領域の補正量はその光線の偏光方向の回転及び位相差を補正するように設定してある。
このシミュレーションでは、半径方向ならびに円周方向ともに等分割の偏光補償光学素子を使用しているが、図9及び図10から分かる通り、入射角が大きくなるに従い、偏光方向の回転角、位相差は急激に上昇するので、図11Bに示すように開口数が大きくなるに従って、領域を細かく分割することが望ましい。また、円周方向ならびに半径方向の分割では、図11Aや図11Bから分かるように、1領域の形状は2つの円弧を持つ複雑な形状となり、作成上の不便が生じる。そこで図12のように、格子状の領域に分けるように構成することも可能である。また、この場合も開口数が大きくなる周辺で1つの領域の面積を小さくすることが望ましい。
図13は、偏光補償光学系を含む光学系で、第1の実施形態の変形例のように、1つの偏光補償光学素子をコンデンサレンズ3の前側焦点面近傍に配置し、偏光補償光学素子の円周方向分割数と半径方向分割数に対する、光学系の消光比の変化をプロットしたものである。開口数が1.4で倍率が60倍の油浸対物レンズと開口数が1.4の油浸コンデンサレンズを使用している(「光学系1」とする)。開口数が1.4で倍率が60倍の油浸対物レンズには膜が17面使用されており、そのうち多層膜は4枚含まれている。開口数が1.4の油浸コンデンサレンズには膜が5面使用されており、単層膜のみ使用されている。図14及び図15は、図13と異なる高開口数の光学系に対して、同様の計算を行った結果である。図14は開口数が1.4で倍率が60倍の油浸対物レンズと開口数が0.88のドライコンデンサレンズの光学系(「光学系2」とする)で、膜は合計で23面使用されており、多層膜は4枚使用されている。図15は開口数が1.25で倍率が100倍の油浸対物レンズと開口数が0.9のドライコンデンサレンズ(「光学系3」とする)で、膜は合計で13面使用されおり、多層膜は使用されていない。このように開口数、倍率、単層、多層の膜の違いがあるにもかかわらず、図13〜図15からわかるように、最も効率良く消光比が上昇するのは、半径方向の分割数をαとし、円周方向の分割数をβとした時、次式(2)の条件を満足し、特に、次式(3)の構成の場合、分割数に対する消光比の上昇が大きい。
2 ≦ β/α ≦ 3 (2)
α:β = 3:8 (3)
このことからわかるように、本発明では、第1の実施形態、及び第2の実施形態、それぞれについての変形例を実施例として挙げたが、このシミュレーション結果ならびに本発明の効果は、全ての形態に関して、その一般性を失っていない。
図16は、上述の光学系1〜3において、縦軸が偏光補償光学素子を外した時の消光比で規格化された値で、横軸がα:β=3:8とした場合の全分割数である。光学系によらず、同様の割合で消光比が上昇していることがわかる。
偏光顕微鏡による目視観察時において、標本の位相差検出感度は、消光比の平方根にほぼ反比例することが知られている。さて、偏光顕微鏡の用途は標本の光学的等方性、異方性を調べるためのものであり、これまでは一般的に岩石、鉱物、高分子などに使われることが多かった。しかし、昨今生物標本を観察する機会も増えてきている。鉱物などに比べて微小な構造を持つ生物標本を観察するには、分解能(開口数に比例)と位相差検出感度の両立が求められる。しかし、前に述べた通り、高開口数の光学系では消光比は急激に低下し102〜103になってしまう。特に開口数が1を越える光学系では、消光比は102程度であることが知られている。しかし、開口数の低い低倍の光学系では、消光比が104程度であるので、高開口数の光学系で同程度の位相検出感度を持つためには、消光比を10倍以上にする必要がある。図16によると分割数と規格化された消光比はほぼ線型関係であるので、分割数を102以上にすれば、消光比を10倍以上にすることができることが分かる。また微分干渉顕微鏡においては、偏光顕微鏡ほどの消光比は必要ではないが、生物細胞など微小な構造を持つ生物標本においては、最低でも2×102の消光比が必要であり、これ以上は、消光比に比例してコントラストや位相差検出感度が上昇することが分かっている(Pluta.M Advanced Light Microscopy vol.2)。
最後に、既に知られているこれらの事実と今回の計算結果をふまえて、偏光補償光学素子の最適な領域分割について述べる。すでに述べたように、偏光顕微鏡の高開口数観察で、開口数の低い光学系と同様の消光比を得るためには、領域分割数を102以上にする必要がある。しかし、微分干渉顕微鏡においては、経験上3倍以上消光比が上昇すると、観察者がコントラストの上昇または位相差検出感度の上昇を実感することができる。図16によると分割数と規格化された消光比はほぼ線型関係であるので、分割数をおよそ30にすれば、消光比が3倍以上上昇すると分かる。特に最も効率良く消光比が上昇するα:β=3:8の時、つまり分割数24が適当である。また、光軸対称である光学系で、偏光子と検光子の透過軸が直交するクロスニコル状態のとき、偏光子と検光子の透過軸を境界線とした4つの領域を通る光線の偏光状態は、それぞれの軸に対して対称である。このことから、円周方向の最も少ない分割数は4と決まる。一方半径方向には対称性がないので、最も少ない分割数は2となる。つまり、偏光補償光学素子として効果を発揮するための最小領域分割数は8であることがわかる。すなわち、この偏光補償光学素子は、その領域分割数をNとしたとき、次式(4)を満足するように構成される。
N ≧ 8 (4)
但し、これまでに述べた通り、分割数が8では消光比の上昇が十分でないことが分かっている。しかし、図11Bのように、半径方向の分割を等間隔にせず、非線形に分割すれば、より少ない分割数で効果を発揮することができる。
【書類名】 明細書
【発明の名称】 偏光補償光学系及びこの光学系に用いられる偏光補償光学素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光補償光学系及びこの光学系に用いられる偏光補償光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
直線偏光とされた光を用いる顕微鏡光学系において、この顕微鏡光学系を構成するレンズの屈折面やレンズに施されている各種コートの作用により、直線偏光の偏光方向が回転すると共に、楕円偏光化し、得られる像のコントラストやS/Nが悪化するという問題がある。この問題は、レンズの屈折面数が多い、屈折面の屈折力が強い、或いは屈折面に施される反射防止膜が多層であるなどの場合に顕著であるため、特に収差を高度に補正した高NAの対物レンズで問題となる。このような問題を解決するために顕微鏡光学系とほぼ同等の偏光特性を持つ、屈折力がゼロのレンズと1/2波長位相板を組み合わせることにより、直線偏光の楕円偏光化を補償する偏光補償光学素子が知られている(例えば、特公昭37−5782号公報参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の偏光補償光学素子では、1つ乃至複数のかさばる素子を顕微鏡光路中の所定の場所に精度良く配置することが必要であり、顕微鏡の対物レンズの変更等による偏光補償光学素子の交換が容易ではない。また、偏光補償光学素子が特定の光学系に対して固定されたものとならざるを得ず、この結果、特定の対物レンズの使用時には顕微鏡光学系に起因する偏光方向の回転と楕円偏光化を補償できるものの、対物レンズを交換した場合には補償が不十分で得られる像のコントラストやS/Nが充分ではないという課題がある。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、対物レンズを交換した場合でも偏光光学系の偏光方向の回転や位相差を高精度に補償できる偏光補償光学素子を含む偏光補償光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、第1の本発明に係る偏光補償光学系は、標本に偏光照明光を照射する照明光学系と、検光子を介して前記標本に起因して前記偏光照明光の偏光状態が変化した観察光を結像する結像光学系と、前記照明光学系及び前記標本から前記検光子までの間に少なくとも一つ配置され、前記照明光学系及び前記標本から前記検光子までの間に配置された光学素子に起因して発生する偏光方向の回転及び位相差を補償する偏光補償光学素子と、を備え、前記偏光補償光学素子は、前記照明光学系及び前記結像光学系の光軸を中心にして、円周方向及び半径方向において複数の領域に分割され、前記領域分割数をNとし、前記半径方向の分割数をαとし、前記円周方向の分割数をβとしたとき、次式
N ≧ 8
2 ≦ β/α ≦ 3
を満足する。
【0006】
このような第1の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子の領域の各々には位相板が配置されており、当該位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることが好ましい。
【0007】
あるいはこのような第1の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子の領域の各々には位相板が配置されており、当該位相板は、フォトニック結晶から形成されていることが好ましい。
【0008】
あるいはこのような第1の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子は、位相差の異なる複数の領域のそれぞれに対応する、複数の1/4波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第1の分割型位相板と、位相差の異なる複数の領域のそれぞれに対応する、複数の1/2波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第2の分割型位相板とを含む複数の層から形成されていることが好ましい。
【0009】
このとき、第1の発明において、1/4波長位相板及び1/2波長位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることが好ましい。
【0010】
あるいは、第1の発明において、1/4波長位相板及び1/2波長位相板は、フォトニック結晶から形成されていることが好ましい。
【0011】
さらにこのような第1の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子は格子状に分割されていることが好ましい。
【0012】
また、第1の発明に係る偏光補償光学系において、前記照明光学系は、偏光子を含み、前記偏光照明光は前記偏光子により形成されることが好ましい。
【0013】
また、第2の本発明に係る偏光補償光学素子は、入射した光の偏光方向の回転及び位相差を補償する偏光補償光学素子であって、前記偏光補償光学素子の円周方向及び半径方向において複数の領域に分割され、前記複数の領域はそれぞれ位相差及び位相軸の方向が異なる位相板からなり、前記分割領域の分割数をNとし、半径方向の分割数をαとし、円周方向の分割数をβとしたとき、次式
N ≧ 8
2 ≦ β/α ≦ 3
を満足する。
【0014】
このような第2の本発明に係る偏光補償光学素子において、位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることが好ましい。
【0015】
あるいは、このような第2の本発明に係る偏光補償光学素子において、位相板は、フォトニック結晶から形成されていることが好ましい。
【0016】
あるいは、このような第2の本発明に係る偏光補償光学素子において、位相板は、それぞれの分割領域に対応する、複数の1/4波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第1の分割型位相板と、それぞれの分割領域に対応する、複数の1/2波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第2の分割型位相板を含む複数の層から形成されていることが好ましい。
【0017】
このとき、第2の発明において、1/4波長位相板及び1/2波長位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることが好ましい。
【0018】
あるいは、第2の発明において、1/4波長位相板及び1/2波長位相板は、フォトニック結晶から形成されていることが好ましい。
【0019】
また、このような第2の本発明に係る偏光補償光学素子において、有効径内は格子状に分割されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る偏光補償光学系及びこの光学系に用いられる偏光補償光学素子を以上のように構成すると、対物レンズを交換した場合でも偏光光学系の偏光方向の回転や位相差を高精度に補償することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る偏光補償光学系の概略図である。本第1の実施形態では、偏光補償光学系の代表例として透過照明型偏光顕微鏡を取り上げ、その光学系にて発生する偏光方向の回転と位相差を補償した偏光補償光学系について説明する。
【0023】
図1において、光源1からの照明光は、コレクタレンズ2によって集光された後、コンデンサレンズ3を介して不図示のスライドガラス上に載置された標本4を照明する。照明された標本4からの光は、対物レンズ5によって集光され、拡大像6が形成される。観察者はこの拡大像6を不図示の接眼レンズを介して肉眼で観察する。コレクタレンズ2とコンデンサレンズ3の間の光路中には、偏光子Pが、また対物レンズ5と拡大像6の間の光路中には検光子Aがそれぞれ配置されている。偏光子Pと検光子Aは、一般にその透過方位が直交するように配置される(クロスニコルの配置)。なお、物体を照明する照明光は、偏光子Pを透過した偏光に限定されず、偏光子を反射することによって生じる偏光、又は光源から直接偏光を発生させるレーザ光源などでも良い。
【0024】
このような構成において、スライドガラス上に標本4が載置されていない場合、視野は暗黒となる。この状態で、例えば鉱物等の薄い標本4を置くと、その組織構造が標本4の各部の偏光状態の違いによって明暗が生じ可視化される。このような偏光顕微鏡においては、試料による僅かな偏光状態の変化を可視化して高精度に検出するために試料以外の光学系で発生する偏光状態の乱れを極力避けなければならない。
【0025】
ところが、偏光子Pと検光子Aの間にはコンデンサレンズ3や対物レンズ5等の光学系が置かれていることが多く、たとえ偏光子Pと検光子Aがクロスニコルの配置であったとしても、光学系による偏光状態の乱れによって消光比が低下し顕微鏡の検出能力を低くしてしまう。これは高倍の対物レンズ5ほど顕著である。その主な原因は対物レンズ5内に配置されているレンズ屈折面が多いことやレンズ面による屈折角度が大きいこと、またレンズ表面に施されている反射防止コート等の偏光特性にある。
【0026】
これらのコートの特性は、一般に光がコートに対して垂直入射する場合に最適となるように設計されており、高倍の対物レンズ5のようにレンズを通過する光がレンズ面に対して大きな角度を持つ場合には、x軸及びy軸以外の領域において図2Aに示すような偏光方向の回転を引き起こす(入射光がy軸方向に偏光している場合)。これは、入射直線偏光のうちP偏光成分とS偏光成分が入射角度によって屈折率が異なることによるものであり、その結果レンズを射出する光は入射直線偏光に対して回転する。さらに、レンズ表面に多層反射防止膜が多用されている場合には、P偏光成分とS偏光成分の間に位相差が付き、その影響で直線偏光が回転するだけでなく、図2Bに示すような楕円偏光となってしまう。この図2A、図2Bに示すような、偏光方向の回転や位相差の発生による楕円偏光化は、偏光顕微鏡の消光比を低下させ、像のコントラストやS/Nを低下させる。
【0027】
さて、本第1の実施形態に係る偏光補償光学系(透過照明型偏光顕微鏡)では、光学系に起因する偏光方向の回転や位相差を補償する目的で、図1の照明光学系のコンデンサレンズ3の前側焦点面近傍に偏光子Pからコンデンサレンズ3の間の光学系に起因する偏光方向の回転や位相差を補償する偏光補償光学素子C1を挿入する。また結像光学系の対物レンズ5と検光子A間の光学系に起因する偏光方向の回転や位相差を補償する偏光補償光学素子C2を挿入して構成されている。
【0028】
偏光補償光学素子C1及びC2は、図3Aに示されるように、光学系の有効径内を円周方向及び半径方向に分割し、それぞれの分割領域(例えば、図中の1a〜1h,2a〜2h)の偏光方向の回転や位相差に対応した位相板を配置した所謂分割型位相板である。また分割型位相板中のそれぞれの位相板の軸(進相軸又は遅相軸)は光学系の特性に応じてそれぞれ異なった方向に向けて配置されている。なお、図3A、及び、後述する図3Bは各々、偏光補償光学系C1、C2を同じ図面で説明しているが、位相板の位相差及び位相板の軸の方向は、偏光補償光学素子C1、C2が挿入される光学系の特性によってそれぞれ異なっている。
【0029】
分割型位相板である偏光補償光学素子C1の分割領域1a〜1h,2a〜2hそれぞれの位相板の位相差をδ1a〜δ1h,δ2a〜δ2hとすると、それらの位相差は分割領域それぞれを通過する光線に対して、図1において偏光補償光学素子C1を除く偏光子Pからコンデンサレンズ3までの光学素子に起因する偏光方向の回転や位相差を全て補償するように設計させている。また、同様に分割型位相板である偏光補償光学素子C2の分割領域1a〜1h,2a〜2hそれぞれの位相板の位相差をδ1a〜δ1h、δ2a〜δ2hとすると、それらの位相差は分割領域それぞれを通過する光線に対して、図1において偏光補償光学素子C2を除く対物レンズ5から検光子Aまでの光学素子に起因する偏光方向の回転や位相差を全て補償するように設計されている。
【0030】
なお、偏光補償光学素子C1およびC2の分割数や分割形状は図3Aに限られるものではなく、任意の分割数および分割形状とすることができる。また分割領域の一部に位相差を付与しない、すなわち位相板としての効果をもたない領域を設けることも可能である。
【0031】
この結果、図1の透過照明型偏光顕微鏡の光学系を通過した光は(標本を載置していない状態)、光学系の偏光特性による偏光方向の回転や位相差が偏光補償光学素子C1、及びC2によって補償されるため、高い消光比を確保することができ、標本4を観察した際にコントラストの良い拡大像6を形成することができる。
【0032】
なお、偏光補償光学素子C1,C2は、構造複屈折光学部材、樹脂製位相板、又はフォトニック結晶などで形成することができる。構造複屈折光学部材とは、波長より十分ピッチの小さい格子が位相板や偏光板として作用することを利用するもので、格子のピッチなどを変えることによって任意の位相差と位相軸を付与することができるものである。図3Aの分割領域1a〜1h,2a〜2hごとに、格子の方向やピッチなどを変えることにより、この図3Aに示すような分割型位相板を実現することができる。また、図3Bに示すように光学系の有効径内の位相軸と位相差が徐々に変わるように格子の方向やピッチを変えることによってグラディエント位相板を実現することができる。また、通常の樹脂製位相板では、樹脂の複屈折を利用して位相軸や位相差を付与するもので、異なる位相軸と位相差の樹脂製位相板を接合することにより、図3Aに示すような分割型位相板を実現することができる。また、樹脂では、樹脂製位相板作成時に引っ張り応力を各方向に応じて制御することによって、1枚の樹脂製位相板で位相軸と位相差を連続的に可変することが可能であり、図3Bのグラディエント位相板を実現することができる。
【0033】
またフォトニック結晶は、三次元構造を持つ光機能結晶であり、三次元構造パラメータを変えることにより、位相差や位相軸などの任意の光学特性を作ることが可能である。このフォトニック結晶を用いて図3Aに示すような分割型位相板をつくる場合には、設計自由度が高いため、広帯域の波長特性を持つ位相板を作ることが可能であり、例えば、白色光源でのカラー観察光学系などに効果的である。また、図3Bに示すように光学系の有効径内の位相軸と位相差が徐々に変わるように三次元構造のパラメータを変えることによりグラディエント位相板を実現することができる。
【0034】
このように、偏光補償光学素子C1とC2は、光学系に対して同様の作用、効果を有するので、以降、偏光補償光学素子C1を代表として説明する。
【0035】
偏光補償光学素子C1を、構造複屈折光学部材で構成した場合の、偏光方向の回転及び位相差の補償について詳説する。偏光補償光学素子C1を構造複屈折光学部材で構成する場合二つの構成方法がある。
【0036】
(第1の構成方法)
第1の構成方法は、偏光方法の回転の補償と位相差の補償を一面の構造複屈折光学部材で達成するものである。図4A〜図4Cにおいて、y軸方向に偏光された入射直線偏光は、光学系で発生した偏光方向の回転と位相差δにより楕円偏光化し、図4Aの楕円で示される状態となる。この時、楕円に外接する四角形ABCDを描く。この四角形ABCDは、対角線上の角ACがy軸上に存在するようなものを選択する。そしてAx′/Ay′=tanθとなるように構造複屈折光学部材の進相軸(図中のy′軸)の方位θを選ぶ。
【0037】
図4Bに示すように、位相差δを補償するように形成された構造複屈折光学部材を光が通過すると、楕円化していた光は偏光方向が矢印の方向の直線偏光Mに変換される。さらに図4Cに示すように構造複屈折光学部材に1/2波長位相板の特性(位相差πを与える)を付与することにより、直線偏光Nは入射された入射直線偏光と同じy軸に偏光されたものとなる。このように構造複屈折光学部材を位相差δ及びπを付与するように形成することで、光学系で楕円偏光化した光(図4A)を、元の入射直線偏光に戻すことが可能になる。
【0038】
この第1の構成方法は、一枚の構造複屈折光学部材が2種類の位相差δ及びπを合算した位相差を補償するように構成することで達成できる。
【0039】
(第2の構成方法)
第2の構成方法は、少なくとも二面(表裏)の構造複屈折光学部材で構成する方法である。図5A〜図5Cにおいて、y軸方向に偏光された入射直線偏光は、光学系で発生した偏光方向の回転と位相差δにより楕円偏光化し、図5Aの楕円で示される状態となる。元の直線偏光の軸(y軸)と楕円偏光の長軸(進相軸:y′軸)のなす角度をθとする。ここで第1の構造複屈折部材が位相差π/2を付与するように構成されていると、この第1の構造複屈折光学部材を通過した楕円偏光の光は、y′軸に対して角度αを有する直線偏光Oに変換される。そして、第2の構造複屈折光学部材の進相軸(y″軸)の方位をθ′=(θ+α)/2となるように構成して、位相差πを付与すると、第2の構造複屈折部材を透過した直線偏光Oの光は、y軸に平行な直線偏光Pの光に変換され、入射直線偏光の方向に戻すことができる。
【0040】
このように、第1の構造複屈折部材はπ/2の位相差を与える特性(すなわち、1/4波長位相板と同特性)を有し、第2の構造複屈折部材はπの位相差を与える特性(すなわち、1/2波長位相板と同特性)を有する構成とすることによって、光学系で楕円化した光を元の入射直線偏光に戻すことができる。すなわち、第2の構成方法は、1/4波長位相板と1/2波長位相板とを組み合わせることによって偏光方向の回転や位相差を補償することができ、製造するのが簡単であるという特徴を有する。
【0041】
なお、図1において、偏光補償光学素子C1、及びC2は、それぞれの光学系中の任意の位置に配置することが可能であるが、照明光学系では照明光学系の瞳位置(すなわち、コンデンサレンズ3の前側焦点位置)に配置することが望ましい。また、結像光学系では対物レンズ5の後側焦点面近傍に配置することもできるが、偏光補償光学素子C2が分割型位相板では分割領域境界近傍の構造などが結像性能に与える収差劣化を考慮する必要がある。
【0042】
また、本実施形態の偏光補償光学素子は、平行平板状の薄板形状であるため、光路中に容易に挿脱可能であり、例えば倍率切り替えにおけるレンズ交換時にも偏光補償光学素子を容易に入れ替えることができる。また、レンズ系に組み込む必要がないので、通常のレンズがそのまま使用できる。
【0043】
なお、第1および第2の構成方法のいずれも、必要とされる位相差を構造複屈折光学部材などを複数重ね合わせることで構成することも可能である。すなわち、図3Aに示す領域2aにおける位相差をδ2aとするとき、次式(1)となるように位相差δ2aをn分割し、分割したそれぞれの位相差を持つn個の構造複屈折光学部材を重ね合わせて合計でδ2aとなるようにすることで実現できる。但し、上記n個の構造複屈折光学部材の位相軸の方向は全て同一方向である。これは、分割位相板に限らずグラディエント位相板でも同様である。なお、上記構成は、構造複屈折光学部材に限らず、樹脂製位相板、或いはフォトニック結晶を用いることも可能である。
δ2a = δ2a1+δ2a2+δ2a3+δ2a4+・・・+δ2a( n - 1 )+δ2an (1)
【0044】
(変形例)
図6は、本発明の第1の実施形態の変形例を示す。本変形例は、図1の透過照明型偏光顕微鏡において偏光補償光学素子を1枚用いた例である。第1の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し説明を省略する。この図6において、透過照明型偏光顕微鏡中の照明光学系に偏光補償光学素子Cを配設して構成されている。偏光補償光学素子Cはコンデンサレンズ3の前側焦点面近傍に配設されている。そして、この偏光補償光学素子Cは、標本4を除いた状態における光学系全体の偏光方向の回転及び位相差を補償する特性を有している。このように構成することで、偏光補償光学素子Cが1個で光学系全体の偏光方向の回転や位相差を補償することができる。なお、偏光補償光学素子Cは、上記構造複屈折光学部材の第1の構成方法と第2のいずれも使用することができる。また、樹脂製位相板、フォトニック結晶なども同様に使用することができる。なお、物体を照明する照明光は、偏光子Pを透過した偏光に限定されず、偏光子を反射することによって生じる偏光、または光源から直接偏光を発生させるレーザ光源などでも良い。
【0045】
(第2の実施形態)
図7は本発明の第2の実施形態に係る偏光補償光学系の概略構成図である。本第2の実施形態では、落射照明型偏光顕微鏡を取り上げ、その光学系にて発生する偏光方向の回転と位相差を補償する偏光補償光学系について説明する。この図7において、光源11からの照明光は、コレクタレンズ12によって集光された後、偏光子P、偏光補償光学素子C1を通過してビームスプリッタBSに入射する。そしてこのビームスプリッタBSで反射された照明光は、対物レンズ15に入射し、この対物レンズ15を介して不図示のスライドガラス上に載置された標本14を照明する。照明された標本14からの光は、対物レンズ15によって集光され、拡大像16が形成される。観察者はこの拡大像16を不図示の接眼レンズを介して肉眼で観察する。また対物レンズ15と拡大像16との間の光路中には偏光補償光学素子C2、検光子Aがそれぞれ配置されている。偏光子Pと検光子Aは、一般にその透過方位が直交するように配置される(すなわちクロスニコルの配置)。なお、物体を照明する照明光は、偏光子Pを透過した偏光に限定されず、偏光子を反射することによって生じる偏光、または光源から直接偏光を発生させるレーザ光源などでも良い。偏光補償光学素子C1、C2は、第1の実施形態と同様の、構造複屈折光学部材の第1の構成方法、または第2の構成方法のいずれも使用することができる。また、樹脂製位相板、フォトニック結晶なども同様に、利用することができる。このようにして、落射照明型偏光顕微鏡が構成されている。また、作用、効果は第1の実施形態と同様であり説明を省略する。
【0046】
(変形例)
図8は、本発明の第2の実施形態の変形例を示す。本変形例は、図7の落射照明型偏光顕微鏡において偏光補償光学素子を一枚用いた例である。第2の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し説明を省略する。この図8において、落射照明型偏光顕微鏡中の照明光学系に偏光補償光学素子Cを配設して構成されている。偏光補償光学素子Cは偏光子PとビームスプリッタBSの間に配設されている。そして、この偏光補償光学素子Cは、標本14を除いた状態における落射照明型偏光顕微鏡の光学系全体の偏光方向の回転及び位相差を補償する特性を有している。このように構成することで、偏光補償光学素子Cが1個で光学系の偏光方向の回転と位相差を補償することができる。なお、偏光補償光学素子Cは、上記構造複屈折光学部材の第1の構成方法または第2の構成方法のいずれも使用することができる。また、樹脂製位相板、フォトニック結晶なども同様に使用することができる。また、偏光補償光学素子Cは偏光子Pと検光子Aの任意の場所に配置することができるが、図8に示すように照明光学系の偏光子PとビームスプリッタBSの間に配置するほうが分割型位相板の結合部分の結像性能への影響を小さくすることができるので望ましい。なお、物体を照明する照明光は、偏光子Pを透過した偏光に限定されず、偏光子を反射することによって生じる偏光、または光源から直接偏光を発生させるレーザ光源などでも良い。
【0047】
上記実施の形態では、代表的な偏光顕微鏡光学系に適用する場合について述べたが、これに限定されるものではなく、偏光を利用する、例えばエリプソメータや微分干渉顕微鏡など、あらゆる光学系に適用可能であり、その光学系自身が有する偏光特性を補償することが可能である。また、上述の実施の形態は例に過ぎず、上述の構成や形状に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜修正、変更が可能である。
【0048】
(シミュレーションに基づく検討)
さて、以下では本実施の形態におけるシミュレーションの計算結果を引用しながら、偏光補償効果について、より詳細に述べる。図9は、縦軸を偏光方向の回転角、横軸を光の入射角とし、屈折率1.5の媒質での屈折による偏光方向の回転角の入射角依存性について表している。入射角の増大と共に偏光の方向の回転角は急激に上昇することがわかる。また、単層反射防止膜、多層反射防止膜を蒸着すると、膜をつけていない時よりも、偏光方向の回転角が小さい値になることもわかる。
【0049】
次に、図10について説明する。この図10は縦軸を位相差、横軸に入射角を取り、位相差の入射角依存性について表している。膜をつけていない場合、位相差は生じないが、単層反射防止膜、多層反射防止膜を蒸着した場合、入射角の増大とともに位相差が急激に上昇することがわかる。
【0050】
コンデンサレンズ及び対物レンズでは開口数の上昇と共に、光線の各レンズでの入射角も平均的に大きくなる。また、コンデンサレンズや対物レンズには様々な種類があり、それぞれを構成する光学素子には様々な種類の単層および多層反射防止膜が使われている。しかし、偏光方向の回転や位相差の発生を起こす理由は同じである。つまり、コンデンサレンズや対物レンズの組み合わせによって、偏光方向の回転や位相差の絶対量は違っても、開口数の大きい光線が偏光方向の回転や位相差が大きくなることは変わらない。つまり、図9及び図10から、光学系の開口数の上昇と共に、偏光の方向の回転角及び位相差も上昇してしまうことがわかる。
【0051】
直線偏光された光を用いる顕微鏡光学系において、得られる像のコントラストやS/Nを規定するパラメータの1つに消光比が挙げられる。消光比とは、光学系を透過する光の最大値と最小値の比のことをいう。偏光顕微鏡では、透過光が最大値をとるのは、偏光子と検光子の透過軸が平行であるオープンニコル状態で、最小値をとるのは、偏光子と検光子の透過軸が直交しているクロスニコル状態である。そこで、本発明による偏光補償光学系の効果を示すパラメータとして消光比を採用する。
【0052】
このシミュレーションに使用する偏光補償光学素子の1つは、例えば図11Aに示すような素子である。偏光方向の回転角及び楕円率角は円周方向及び半径方向に従って変化している。従って偏光補償光学素子も円周方向ならびに半径方向に分割してある。分割領域は有限の大きさをもつので、同一領域を通る光束の中でも偏光方向の回転及び位相差が異なる。そこで、各領域を円周方向及び半径方向に等分した位置を通る光線をその領域を代表する光線とし、各領域の補正量はその光線の偏光方向の回転及び位相差を補正するように設定してある。
【0053】
このシミュレーションでは、半径方向ならびに円周方向ともに等分割の偏光補償光学素子を使用しているが、図9及び図10から分かる通り、入射角が大きくなるに従い、偏光方向の回転角、位相差は急激に上昇するので、図11Bに示すように開口数が大きくなるに従って、領域を細かく分割することが望ましい。また、円周方向ならびに半径方向の分割では、図11Aや図11Bから分かるように、1領域の形状は2つの円弧を持つ複雑な形状となり、作成上の不便が生じる。そこで図12のように、格子状の領域に分けるように構成することも可能である。また、この場合も開口数が大きくなる周辺で1つの領域の面積を小さくすることが望ましい。
【0054】
図13は、偏光補償光学系を含む光学系で、第1の実施形態の変形例のように、1つの偏光補償光学素子をコンデンサレンズ3の前側焦点面近傍に配置し、偏光補償光学素子の円周方向分割数と半径方向分割数に対する、光学系の消光比の変化をプロットしたものである。開口数が1.4で倍率が60倍の油浸対物レンズと開口数が1.4の油浸コンデンサレンズを使用している(「光学系1」とする)。開口数が1.4で倍率が60倍の油浸対物レンズには膜が17面使用されており、そのうち多層膜は4枚含まれている。開口数が1.4の油浸コンデンサレンズには膜が5面使用されており、単層膜のみ使用されている。図14及び図15は、図13と異なる高開口数の光学系に対して、同様の計算を行った結果である。図14は開口数が1.4で倍率が60倍の油浸対物レンズと開口数が0.88のドライコンデンサレンズの光学系(「光学系2」とする)で、膜は合計で23面使用されており、多層膜は4枚使用されている。図15は開口数が1.25で倍率が100倍の油浸対物レンズと開口数が0.9のドライコンデンサレンズ(「光学系3」とする)で、膜は合計で13面使用されおり、多層膜は使用されていない。このように開口数、倍率、単層、多層の膜の違いがあるにもかかわらず、図13〜図15からわかるように、最も効率良く消光比が上昇するのは、半径方向の分割数をαとし、円周方向の分割数をβとした時、次式(2)の条件を満足し、特に、次式(3)の構成の場合、分割数に対する消光比の上昇が大きい。
2 ≦ β/α ≦ 3 (2)
α:β = 3:8 (3)
【0055】
このことからわかるように、本発明では、第1の実施形態、及び第2の実施形態、それぞれについての変形例を実施例として挙げたが、このシミュレーション結果ならびに本発明の効果は、全ての形態に関して、その一般性を失っていない。
【0056】
図16は、上述の光学系1〜3において、縦軸が偏光補償光学素子を外した時の消光比で規格化された値で、横軸がα:β=3:8とした場合の全分割数である。光学系によらず、同様の割合で消光比が上昇していることがわかる。
【0057】
偏光顕微鏡による目視観察時において、標本の位相差検出感度は、消光比の平方根にほぼ反比例することが知られている。さて、偏光顕微鏡の用途は標本の光学的等方性、異方性を調べるためのものであり、これまでは一般的に岩石、鉱物、高分子などに使われることが多かった。しかし、昨今生物標本を観察する機会も増えてきている。鉱物などに比べて微小な構造を持つ生物標本を観察するには、分解能(開口数に比例)と位相差検出感度の両立が求められる。しかし、前に述べた通り、高開口数の光学系では消光比は急激に低下し102〜103になってしまう。特に開口数が1を越える光学系では、消光比は102程度であることが知られている。しかし、開口数の低い低倍の光学系では、消光比が104程度であるので、高開口数の光学系で同程度の位相検出感度を持つためには、消光比を10倍以上にする必要がある。図16によると分割数と規格化された消光比はほぼ線型関係であるので、分割数を102以上にすれば、消光比を10倍以上にすることができることが分かる。また微分干渉顕微鏡においては、偏光顕微鏡ほどの消光比は必要ではないが、生物細胞など微小な構造を持つ生物標本においては、最低でも2×102の消光比が必要であり、これ以上は、消光比に比例してコントラストや位相差検出感度が上昇することが分かっている(Pluta.M Advanced Light Microscopy vol.2)。
【0058】
最後に、既に知られているこれらの事実と今回の計算結果をふまえて、偏光補償光学素子の最適な領域分割について述べる。すでに述べたように、偏光顕微鏡の高開口数観察で、開口数の低い光学系と同様の消光比を得るためには、領域分割数を102以上にする必要がある。しかし、微分干渉顕微鏡においては、経験上3倍以上消光比が上昇すると、観察者がコントラストの上昇または位相差検出感度の上昇を実感することができる。図16によると分割数と規格化された消光比はほぼ線型関係であるので、分割数をおよそ30にすれば、消光比が3倍以上上昇すると分かる。特に最も効率良く消光比が上昇するα:β=3:8の時、つまり分割数24が適当である。また、光軸対称である光学系で、偏光子と検光子の透過軸が直交するクロスニコル状態のとき、偏光子と検光子の透過軸を境界線とした4つの領域を通る光線の偏光状態は、それぞれの軸に対して対称である。このことから、円周方向の最も少ない分割数は4と決まる。一方半径方向には対称性がないので、最も少ない分割数は2となる。つまり、偏光補償光学素子として効果を発揮するための最小領域分割数は8であることがわかる。すなわち、この偏光補償光学素子は、その領域分割数をNとしたとき、次式(4)を満足するように構成される。
N ≧ 8 (4)
【0059】
但し、これまでに述べた通り、分割数が8では消光比の上昇が十分でないことが分かっている。しかし、図11Bのように、半径方向の分割を等間隔にせず、非線形に分割すれば、より少ない分割数で効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る偏光補償光学系である透過照明型偏光顕微鏡の概略構成図である。
【図2A】レンズを透過する光が大きな角度を有する場合の光学系における偏光方向の回転を示す模式図である。
【図2B】レンズ表面に反射防止コートが多用されている場合の光学系における偏光方向の回転を示す模式図である。
【図3A】偏光補償光学素子である分割型位相板の一例の模式図である。
【図3B】偏光補償光学素子であるグラジェント位相板の一例の模式図である。
【図4A】構造複屈折部材の第1の構成方法の効果を示す模式図である。
【図4B】構造複屈折部材の第1の構成方法の効果を示す模式図である。
【図4C】構造複屈折部材の第1の構成方法の効果を示す模式図である。
【図5A】構造複屈折部材の第2の構成方法の効果を示す模式図である。
【図5B】構造複屈折部材の第2の構成方法の効果を示す模式図である。
【図5C】構造複屈折部材の第2の構成方法の効果を示す模式図である。
【図6】第1の実施形態の変形例を示す概略構成図である。
【図7】第2の実施形態に係る偏光補償光学系である透過照明型偏光顕微鏡の概略構成図である。
【図8】第2の実施形態の変形例を示す概略構成図である。
【図9】偏光軸の回転の入射角依存特性を示すグラフである。
【図10】位相差の入射角依存特性を示すグラフである。
【図11A】シミュレーションに用いた偏光補償光学素子の模式図であって、円周方向及び半径方向に等分した場合を示す。
【図11B】シミュレーションに用いた偏光補償光学素子の模式図であって、円周方向は等分しているが、半径方向はNAが大きくなるに従って細かく分割した場合を示す。
【図12】格子状に分割した偏光補償光学素子の模式図である。
【図13】1つの偏光補償光学素子をコンデンサレンズの前側焦点面近傍に配置し、偏光補償光学素子の円周方向分割数と半径方向分割数に対する、光学系1の消光比の変化をプロットしたグラフである。
【図14】偏光補償光学素子の円周方向分割数と半径方向分割数に対する、光学系2の消光比の変化をプロットしたグラフである。
【図15】偏光補償光学素子の円周方向分割数と半径方向分割数に対する、光学系3の消光比の変化をプロットしたグラフである。
【図16】消光比と分割数の関係を示すグラフである。
【発明の名称】 偏光補償光学系及びこの光学系に用いられる偏光補償光学素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光補償光学系及びこの光学系に用いられる偏光補償光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
直線偏光とされた光を用いる顕微鏡光学系において、この顕微鏡光学系を構成するレンズの屈折面やレンズに施されている各種コートの作用により、直線偏光の偏光方向が回転すると共に、楕円偏光化し、得られる像のコントラストやS/Nが悪化するという問題がある。この問題は、レンズの屈折面数が多い、屈折面の屈折力が強い、或いは屈折面に施される反射防止膜が多層であるなどの場合に顕著であるため、特に収差を高度に補正した高NAの対物レンズで問題となる。このような問題を解決するために顕微鏡光学系とほぼ同等の偏光特性を持つ、屈折力がゼロのレンズと1/2波長位相板を組み合わせることにより、直線偏光の楕円偏光化を補償する偏光補償光学素子が知られている(例えば、特公昭37−5782号公報参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の偏光補償光学素子では、1つ乃至複数のかさばる素子を顕微鏡光路中の所定の場所に精度良く配置することが必要であり、顕微鏡の対物レンズの変更等による偏光補償光学素子の交換が容易ではない。また、偏光補償光学素子が特定の光学系に対して固定されたものとならざるを得ず、この結果、特定の対物レンズの使用時には顕微鏡光学系に起因する偏光方向の回転と楕円偏光化を補償できるものの、対物レンズを交換した場合には補償が不十分で得られる像のコントラストやS/Nが充分ではないという課題がある。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、対物レンズを交換した場合でも偏光光学系の偏光方向の回転や位相差を高精度に補償できる偏光補償光学素子を含む偏光補償光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、第1の本発明に係る偏光補償光学系は、標本に偏光照明光を照射する照明光学系と、検光子を介して前記標本に起因して前記偏光照明光の偏光状態が変化した観察光を結像する結像光学系と、前記照明光学系及び前記標本から前記検光子までの間に少なくとも一つ配置され、前記照明光学系及び前記標本から前記検光子までの間に配置された光学素子に起因して発生する偏光方向の回転及び位相差を補償する偏光補償光学素子と、を備え、前記偏光補償光学素子は、前記照明光学系及び前記結像光学系の光軸を中心にして、円周方向及び半径方向において複数の領域に分割され、前記領域分割数をNとし、前記半径方向の分割数をαとし、前記円周方向の分割数をβとしたとき、次式
N ≧ 8
2 ≦ β/α ≦ 3
を満足する。
【0006】
このような第1の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子の領域の各々には位相板が配置されており、当該位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることが好ましい。
【0007】
あるいはこのような第1の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子の領域の各々には位相板が配置されており、当該位相板は、フォトニック結晶から形成されていることが好ましい。
【0008】
あるいはこのような第1の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子は、位相差の異なる複数の領域のそれぞれに対応する、複数の1/4波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第1の分割型位相板と、位相差の異なる複数の領域のそれぞれに対応する、複数の1/2波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第2の分割型位相板とを含む複数の層から形成されていることが好ましい。
【0009】
このとき、第1の発明において、1/4波長位相板及び1/2波長位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることが好ましい。
【0010】
あるいは、第1の発明において、1/4波長位相板及び1/2波長位相板は、フォトニック結晶から形成されていることが好ましい。
【0011】
さらにこのような第1の本発明に係る偏光補償光学系において、偏光補償光学素子は格子状に分割されていることが好ましい。
【0012】
また、第1の発明に係る偏光補償光学系において、前記照明光学系は、偏光子を含み、前記偏光照明光は前記偏光子により形成されることが好ましい。
【0013】
また、第2の本発明に係る偏光補償光学素子は、入射した光の偏光方向の回転及び位相差を補償する偏光補償光学素子であって、前記偏光補償光学素子の円周方向及び半径方向において複数の領域に分割され、前記複数の領域はそれぞれ位相差及び位相軸の方向が異なる位相板からなり、前記分割領域の分割数をNとし、半径方向の分割数をαとし、円周方向の分割数をβとしたとき、次式
N ≧ 8
2 ≦ β/α ≦ 3
を満足する。
【0014】
このような第2の本発明に係る偏光補償光学素子において、位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることが好ましい。
【0015】
あるいは、このような第2の本発明に係る偏光補償光学素子において、位相板は、フォトニック結晶から形成されていることが好ましい。
【0016】
あるいは、このような第2の本発明に係る偏光補償光学素子において、位相板は、それぞれの分割領域に対応する、複数の1/4波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第1の分割型位相板と、それぞれの分割領域に対応する、複数の1/2波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第2の分割型位相板を含む複数の層から形成されていることが好ましい。
【0017】
このとき、第2の発明において、1/4波長位相板及び1/2波長位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることが好ましい。
【0018】
あるいは、第2の発明において、1/4波長位相板及び1/2波長位相板は、フォトニック結晶から形成されていることが好ましい。
【0019】
また、このような第2の本発明に係る偏光補償光学素子において、有効径内は格子状に分割されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る偏光補償光学系及びこの光学系に用いられる偏光補償光学素子を以上のように構成すると、対物レンズを交換した場合でも偏光光学系の偏光方向の回転や位相差を高精度に補償することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る偏光補償光学系の概略図である。本第1の実施形態では、偏光補償光学系の代表例として透過照明型偏光顕微鏡を取り上げ、その光学系にて発生する偏光方向の回転と位相差を補償した偏光補償光学系について説明する。
【0023】
図1において、光源1からの照明光は、コレクタレンズ2によって集光された後、コンデンサレンズ3を介して不図示のスライドガラス上に載置された標本4を照明する。照明された標本4からの光は、対物レンズ5によって集光され、拡大像6が形成される。観察者はこの拡大像6を不図示の接眼レンズを介して肉眼で観察する。コレクタレンズ2とコンデンサレンズ3の間の光路中には、偏光子Pが、また対物レンズ5と拡大像6の間の光路中には検光子Aがそれぞれ配置されている。偏光子Pと検光子Aは、一般にその透過方位が直交するように配置される(クロスニコルの配置)。なお、物体を照明する照明光は、偏光子Pを透過した偏光に限定されず、偏光子を反射することによって生じる偏光、又は光源から直接偏光を発生させるレーザ光源などでも良い。
【0024】
このような構成において、スライドガラス上に標本4が載置されていない場合、視野は暗黒となる。この状態で、例えば鉱物等の薄い標本4を置くと、その組織構造が標本4の各部の偏光状態の違いによって明暗が生じ可視化される。このような偏光顕微鏡においては、試料による僅かな偏光状態の変化を可視化して高精度に検出するために試料以外の光学系で発生する偏光状態の乱れを極力避けなければならない。
【0025】
ところが、偏光子Pと検光子Aの間にはコンデンサレンズ3や対物レンズ5等の光学系が置かれていることが多く、たとえ偏光子Pと検光子Aがクロスニコルの配置であったとしても、光学系による偏光状態の乱れによって消光比が低下し顕微鏡の検出能力を低くしてしまう。これは高倍の対物レンズ5ほど顕著である。その主な原因は対物レンズ5内に配置されているレンズ屈折面が多いことやレンズ面による屈折角度が大きいこと、またレンズ表面に施されている反射防止コート等の偏光特性にある。
【0026】
これらのコートの特性は、一般に光がコートに対して垂直入射する場合に最適となるように設計されており、高倍の対物レンズ5のようにレンズを通過する光がレンズ面に対して大きな角度を持つ場合には、x軸及びy軸以外の領域において図2Aに示すような偏光方向の回転を引き起こす(入射光がy軸方向に偏光している場合)。これは、入射直線偏光のうちP偏光成分とS偏光成分が入射角度によって屈折率が異なることによるものであり、その結果レンズを射出する光は入射直線偏光に対して回転する。さらに、レンズ表面に多層反射防止膜が多用されている場合には、P偏光成分とS偏光成分の間に位相差が付き、その影響で直線偏光が回転するだけでなく、図2Bに示すような楕円偏光となってしまう。この図2A、図2Bに示すような、偏光方向の回転や位相差の発生による楕円偏光化は、偏光顕微鏡の消光比を低下させ、像のコントラストやS/Nを低下させる。
【0027】
さて、本第1の実施形態に係る偏光補償光学系(透過照明型偏光顕微鏡)では、光学系に起因する偏光方向の回転や位相差を補償する目的で、図1の照明光学系のコンデンサレンズ3の前側焦点面近傍に偏光子Pからコンデンサレンズ3の間の光学系に起因する偏光方向の回転や位相差を補償する偏光補償光学素子C1を挿入する。また結像光学系の対物レンズ5と検光子A間の光学系に起因する偏光方向の回転や位相差を補償する偏光補償光学素子C2を挿入して構成されている。
【0028】
偏光補償光学素子C1及びC2は、図3Aに示されるように、光学系の有効径内を円周方向及び半径方向に分割し、それぞれの分割領域(例えば、図中の1a〜1h,2a〜2h)の偏光方向の回転や位相差に対応した位相板を配置した所謂分割型位相板である。また分割型位相板中のそれぞれの位相板の軸(進相軸又は遅相軸)は光学系の特性に応じてそれぞれ異なった方向に向けて配置されている。なお、図3A、及び、後述する図3Bは各々、偏光補償光学系C1、C2を同じ図面で説明しているが、位相板の位相差及び位相板の軸の方向は、偏光補償光学素子C1、C2が挿入される光学系の特性によってそれぞれ異なっている。
【0029】
分割型位相板である偏光補償光学素子C1の分割領域1a〜1h,2a〜2hそれぞれの位相板の位相差をδ1a〜δ1h,δ2a〜δ2hとすると、それらの位相差は分割領域それぞれを通過する光線に対して、図1において偏光補償光学素子C1を除く偏光子Pからコンデンサレンズ3までの光学素子に起因する偏光方向の回転や位相差を全て補償するように設計させている。また、同様に分割型位相板である偏光補償光学素子C2の分割領域1a〜1h,2a〜2hそれぞれの位相板の位相差をδ1a〜δ1h、δ2a〜δ2hとすると、それらの位相差は分割領域それぞれを通過する光線に対して、図1において偏光補償光学素子C2を除く対物レンズ5から検光子Aまでの光学素子に起因する偏光方向の回転や位相差を全て補償するように設計されている。
【0030】
なお、偏光補償光学素子C1およびC2の分割数や分割形状は図3Aに限られるものではなく、任意の分割数および分割形状とすることができる。また分割領域の一部に位相差を付与しない、すなわち位相板としての効果をもたない領域を設けることも可能である。
【0031】
この結果、図1の透過照明型偏光顕微鏡の光学系を通過した光は(標本を載置していない状態)、光学系の偏光特性による偏光方向の回転や位相差が偏光補償光学素子C1、及びC2によって補償されるため、高い消光比を確保することができ、標本4を観察した際にコントラストの良い拡大像6を形成することができる。
【0032】
なお、偏光補償光学素子C1,C2は、構造複屈折光学部材、樹脂製位相板、又はフォトニック結晶などで形成することができる。構造複屈折光学部材とは、波長より十分ピッチの小さい格子が位相板や偏光板として作用することを利用するもので、格子のピッチなどを変えることによって任意の位相差と位相軸を付与することができるものである。図3Aの分割領域1a〜1h,2a〜2hごとに、格子の方向やピッチなどを変えることにより、この図3Aに示すような分割型位相板を実現することができる。また、図3Bに示すように光学系の有効径内の位相軸と位相差が徐々に変わるように格子の方向やピッチを変えることによってグラディエント位相板を実現することができる。また、通常の樹脂製位相板では、樹脂の複屈折を利用して位相軸や位相差を付与するもので、異なる位相軸と位相差の樹脂製位相板を接合することにより、図3Aに示すような分割型位相板を実現することができる。また、樹脂では、樹脂製位相板作成時に引っ張り応力を各方向に応じて制御することによって、1枚の樹脂製位相板で位相軸と位相差を連続的に可変することが可能であり、図3Bのグラディエント位相板を実現することができる。
【0033】
またフォトニック結晶は、三次元構造を持つ光機能結晶であり、三次元構造パラメータを変えることにより、位相差や位相軸などの任意の光学特性を作ることが可能である。このフォトニック結晶を用いて図3Aに示すような分割型位相板をつくる場合には、設計自由度が高いため、広帯域の波長特性を持つ位相板を作ることが可能であり、例えば、白色光源でのカラー観察光学系などに効果的である。また、図3Bに示すように光学系の有効径内の位相軸と位相差が徐々に変わるように三次元構造のパラメータを変えることによりグラディエント位相板を実現することができる。
【0034】
このように、偏光補償光学素子C1とC2は、光学系に対して同様の作用、効果を有するので、以降、偏光補償光学素子C1を代表として説明する。
【0035】
偏光補償光学素子C1を、構造複屈折光学部材で構成した場合の、偏光方向の回転及び位相差の補償について詳説する。偏光補償光学素子C1を構造複屈折光学部材で構成する場合二つの構成方法がある。
【0036】
(第1の構成方法)
第1の構成方法は、偏光方法の回転の補償と位相差の補償を一面の構造複屈折光学部材で達成するものである。図4A〜図4Cにおいて、y軸方向に偏光された入射直線偏光は、光学系で発生した偏光方向の回転と位相差δにより楕円偏光化し、図4Aの楕円で示される状態となる。この時、楕円に外接する四角形ABCDを描く。この四角形ABCDは、対角線上の角ACがy軸上に存在するようなものを選択する。そしてAx′/Ay′=tanθとなるように構造複屈折光学部材の進相軸(図中のy′軸)の方位θを選ぶ。
【0037】
図4Bに示すように、位相差δを補償するように形成された構造複屈折光学部材を光が通過すると、楕円化していた光は偏光方向が矢印の方向の直線偏光Mに変換される。さらに図4Cに示すように構造複屈折光学部材に1/2波長位相板の特性(位相差πを与える)を付与することにより、直線偏光Nは入射された入射直線偏光と同じy軸に偏光されたものとなる。このように構造複屈折光学部材を位相差δ及びπを付与するように形成することで、光学系で楕円偏光化した光(図4A)を、元の入射直線偏光に戻すことが可能になる。
【0038】
この第1の構成方法は、一枚の構造複屈折光学部材が2種類の位相差δ及びπを合算した位相差を補償するように構成することで達成できる。
【0039】
(第2の構成方法)
第2の構成方法は、少なくとも二面(表裏)の構造複屈折光学部材で構成する方法である。図5A〜図5Cにおいて、y軸方向に偏光された入射直線偏光は、光学系で発生した偏光方向の回転と位相差δにより楕円偏光化し、図5Aの楕円で示される状態となる。元の直線偏光の軸(y軸)と楕円偏光の長軸(進相軸:y′軸)のなす角度をθとする。ここで第1の構造複屈折部材が位相差π/2を付与するように構成されていると、この第1の構造複屈折光学部材を通過した楕円偏光の光は、y′軸に対して角度αを有する直線偏光Oに変換される。そして、第2の構造複屈折光学部材の進相軸(y″軸)の方位をθ′=(θ+α)/2となるように構成して、位相差πを付与すると、第2の構造複屈折部材を透過した直線偏光Oの光は、y軸に平行な直線偏光Pの光に変換され、入射直線偏光の方向に戻すことができる。
【0040】
このように、第1の構造複屈折部材はπ/2の位相差を与える特性(すなわち、1/4波長位相板と同特性)を有し、第2の構造複屈折部材はπの位相差を与える特性(すなわち、1/2波長位相板と同特性)を有する構成とすることによって、光学系で楕円化した光を元の入射直線偏光に戻すことができる。すなわち、第2の構成方法は、1/4波長位相板と1/2波長位相板とを組み合わせることによって偏光方向の回転や位相差を補償することができ、製造するのが簡単であるという特徴を有する。
【0041】
なお、図1において、偏光補償光学素子C1、及びC2は、それぞれの光学系中の任意の位置に配置することが可能であるが、照明光学系では照明光学系の瞳位置(すなわち、コンデンサレンズ3の前側焦点位置)に配置することが望ましい。また、結像光学系では対物レンズ5の後側焦点面近傍に配置することもできるが、偏光補償光学素子C2が分割型位相板では分割領域境界近傍の構造などが結像性能に与える収差劣化を考慮する必要がある。
【0042】
また、本実施形態の偏光補償光学素子は、平行平板状の薄板形状であるため、光路中に容易に挿脱可能であり、例えば倍率切り替えにおけるレンズ交換時にも偏光補償光学素子を容易に入れ替えることができる。また、レンズ系に組み込む必要がないので、通常のレンズがそのまま使用できる。
【0043】
なお、第1および第2の構成方法のいずれも、必要とされる位相差を構造複屈折光学部材などを複数重ね合わせることで構成することも可能である。すなわち、図3Aに示す領域2aにおける位相差をδ2aとするとき、次式(1)となるように位相差δ2aをn分割し、分割したそれぞれの位相差を持つn個の構造複屈折光学部材を重ね合わせて合計でδ2aとなるようにすることで実現できる。但し、上記n個の構造複屈折光学部材の位相軸の方向は全て同一方向である。これは、分割位相板に限らずグラディエント位相板でも同様である。なお、上記構成は、構造複屈折光学部材に限らず、樹脂製位相板、或いはフォトニック結晶を用いることも可能である。
δ2a = δ2a1+δ2a2+δ2a3+δ2a4+・・・+δ2a( n - 1 )+δ2an (1)
【0044】
(変形例)
図6は、本発明の第1の実施形態の変形例を示す。本変形例は、図1の透過照明型偏光顕微鏡において偏光補償光学素子を1枚用いた例である。第1の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し説明を省略する。この図6において、透過照明型偏光顕微鏡中の照明光学系に偏光補償光学素子Cを配設して構成されている。偏光補償光学素子Cはコンデンサレンズ3の前側焦点面近傍に配設されている。そして、この偏光補償光学素子Cは、標本4を除いた状態における光学系全体の偏光方向の回転及び位相差を補償する特性を有している。このように構成することで、偏光補償光学素子Cが1個で光学系全体の偏光方向の回転や位相差を補償することができる。なお、偏光補償光学素子Cは、上記構造複屈折光学部材の第1の構成方法と第2のいずれも使用することができる。また、樹脂製位相板、フォトニック結晶なども同様に使用することができる。なお、物体を照明する照明光は、偏光子Pを透過した偏光に限定されず、偏光子を反射することによって生じる偏光、または光源から直接偏光を発生させるレーザ光源などでも良い。
【0045】
(第2の実施形態)
図7は本発明の第2の実施形態に係る偏光補償光学系の概略構成図である。本第2の実施形態では、落射照明型偏光顕微鏡を取り上げ、その光学系にて発生する偏光方向の回転と位相差を補償する偏光補償光学系について説明する。この図7において、光源11からの照明光は、コレクタレンズ12によって集光された後、偏光子P、偏光補償光学素子C1を通過してビームスプリッタBSに入射する。そしてこのビームスプリッタBSで反射された照明光は、対物レンズ15に入射し、この対物レンズ15を介して不図示のスライドガラス上に載置された標本14を照明する。照明された標本14からの光は、対物レンズ15によって集光され、拡大像16が形成される。観察者はこの拡大像16を不図示の接眼レンズを介して肉眼で観察する。また対物レンズ15と拡大像16との間の光路中には偏光補償光学素子C2、検光子Aがそれぞれ配置されている。偏光子Pと検光子Aは、一般にその透過方位が直交するように配置される(すなわちクロスニコルの配置)。なお、物体を照明する照明光は、偏光子Pを透過した偏光に限定されず、偏光子を反射することによって生じる偏光、または光源から直接偏光を発生させるレーザ光源などでも良い。偏光補償光学素子C1、C2は、第1の実施形態と同様の、構造複屈折光学部材の第1の構成方法、または第2の構成方法のいずれも使用することができる。また、樹脂製位相板、フォトニック結晶なども同様に、利用することができる。このようにして、落射照明型偏光顕微鏡が構成されている。また、作用、効果は第1の実施形態と同様であり説明を省略する。
【0046】
(変形例)
図8は、本発明の第2の実施形態の変形例を示す。本変形例は、図7の落射照明型偏光顕微鏡において偏光補償光学素子を一枚用いた例である。第2の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し説明を省略する。この図8において、落射照明型偏光顕微鏡中の照明光学系に偏光補償光学素子Cを配設して構成されている。偏光補償光学素子Cは偏光子PとビームスプリッタBSの間に配設されている。そして、この偏光補償光学素子Cは、標本14を除いた状態における落射照明型偏光顕微鏡の光学系全体の偏光方向の回転及び位相差を補償する特性を有している。このように構成することで、偏光補償光学素子Cが1個で光学系の偏光方向の回転と位相差を補償することができる。なお、偏光補償光学素子Cは、上記構造複屈折光学部材の第1の構成方法または第2の構成方法のいずれも使用することができる。また、樹脂製位相板、フォトニック結晶なども同様に使用することができる。また、偏光補償光学素子Cは偏光子Pと検光子Aの任意の場所に配置することができるが、図8に示すように照明光学系の偏光子PとビームスプリッタBSの間に配置するほうが分割型位相板の結合部分の結像性能への影響を小さくすることができるので望ましい。なお、物体を照明する照明光は、偏光子Pを透過した偏光に限定されず、偏光子を反射することによって生じる偏光、または光源から直接偏光を発生させるレーザ光源などでも良い。
【0047】
上記実施の形態では、代表的な偏光顕微鏡光学系に適用する場合について述べたが、これに限定されるものではなく、偏光を利用する、例えばエリプソメータや微分干渉顕微鏡など、あらゆる光学系に適用可能であり、その光学系自身が有する偏光特性を補償することが可能である。また、上述の実施の形態は例に過ぎず、上述の構成や形状に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜修正、変更が可能である。
【0048】
(シミュレーションに基づく検討)
さて、以下では本実施の形態におけるシミュレーションの計算結果を引用しながら、偏光補償効果について、より詳細に述べる。図9は、縦軸を偏光方向の回転角、横軸を光の入射角とし、屈折率1.5の媒質での屈折による偏光方向の回転角の入射角依存性について表している。入射角の増大と共に偏光の方向の回転角は急激に上昇することがわかる。また、単層反射防止膜、多層反射防止膜を蒸着すると、膜をつけていない時よりも、偏光方向の回転角が小さい値になることもわかる。
【0049】
次に、図10について説明する。この図10は縦軸を位相差、横軸に入射角を取り、位相差の入射角依存性について表している。膜をつけていない場合、位相差は生じないが、単層反射防止膜、多層反射防止膜を蒸着した場合、入射角の増大とともに位相差が急激に上昇することがわかる。
【0050】
コンデンサレンズ及び対物レンズでは開口数の上昇と共に、光線の各レンズでの入射角も平均的に大きくなる。また、コンデンサレンズや対物レンズには様々な種類があり、それぞれを構成する光学素子には様々な種類の単層および多層反射防止膜が使われている。しかし、偏光方向の回転や位相差の発生を起こす理由は同じである。つまり、コンデンサレンズや対物レンズの組み合わせによって、偏光方向の回転や位相差の絶対量は違っても、開口数の大きい光線が偏光方向の回転や位相差が大きくなることは変わらない。つまり、図9及び図10から、光学系の開口数の上昇と共に、偏光の方向の回転角及び位相差も上昇してしまうことがわかる。
【0051】
直線偏光された光を用いる顕微鏡光学系において、得られる像のコントラストやS/Nを規定するパラメータの1つに消光比が挙げられる。消光比とは、光学系を透過する光の最大値と最小値の比のことをいう。偏光顕微鏡では、透過光が最大値をとるのは、偏光子と検光子の透過軸が平行であるオープンニコル状態で、最小値をとるのは、偏光子と検光子の透過軸が直交しているクロスニコル状態である。そこで、本発明による偏光補償光学系の効果を示すパラメータとして消光比を採用する。
【0052】
このシミュレーションに使用する偏光補償光学素子の1つは、例えば図11Aに示すような素子である。偏光方向の回転角及び楕円率角は円周方向及び半径方向に従って変化している。従って偏光補償光学素子も円周方向ならびに半径方向に分割してある。分割領域は有限の大きさをもつので、同一領域を通る光束の中でも偏光方向の回転及び位相差が異なる。そこで、各領域を円周方向及び半径方向に等分した位置を通る光線をその領域を代表する光線とし、各領域の補正量はその光線の偏光方向の回転及び位相差を補正するように設定してある。
【0053】
このシミュレーションでは、半径方向ならびに円周方向ともに等分割の偏光補償光学素子を使用しているが、図9及び図10から分かる通り、入射角が大きくなるに従い、偏光方向の回転角、位相差は急激に上昇するので、図11Bに示すように開口数が大きくなるに従って、領域を細かく分割することが望ましい。また、円周方向ならびに半径方向の分割では、図11Aや図11Bから分かるように、1領域の形状は2つの円弧を持つ複雑な形状となり、作成上の不便が生じる。そこで図12のように、格子状の領域に分けるように構成することも可能である。また、この場合も開口数が大きくなる周辺で1つの領域の面積を小さくすることが望ましい。
【0054】
図13は、偏光補償光学系を含む光学系で、第1の実施形態の変形例のように、1つの偏光補償光学素子をコンデンサレンズ3の前側焦点面近傍に配置し、偏光補償光学素子の円周方向分割数と半径方向分割数に対する、光学系の消光比の変化をプロットしたものである。開口数が1.4で倍率が60倍の油浸対物レンズと開口数が1.4の油浸コンデンサレンズを使用している(「光学系1」とする)。開口数が1.4で倍率が60倍の油浸対物レンズには膜が17面使用されており、そのうち多層膜は4枚含まれている。開口数が1.4の油浸コンデンサレンズには膜が5面使用されており、単層膜のみ使用されている。図14及び図15は、図13と異なる高開口数の光学系に対して、同様の計算を行った結果である。図14は開口数が1.4で倍率が60倍の油浸対物レンズと開口数が0.88のドライコンデンサレンズの光学系(「光学系2」とする)で、膜は合計で23面使用されており、多層膜は4枚使用されている。図15は開口数が1.25で倍率が100倍の油浸対物レンズと開口数が0.9のドライコンデンサレンズ(「光学系3」とする)で、膜は合計で13面使用されおり、多層膜は使用されていない。このように開口数、倍率、単層、多層の膜の違いがあるにもかかわらず、図13〜図15からわかるように、最も効率良く消光比が上昇するのは、半径方向の分割数をαとし、円周方向の分割数をβとした時、次式(2)の条件を満足し、特に、次式(3)の構成の場合、分割数に対する消光比の上昇が大きい。
2 ≦ β/α ≦ 3 (2)
α:β = 3:8 (3)
【0055】
このことからわかるように、本発明では、第1の実施形態、及び第2の実施形態、それぞれについての変形例を実施例として挙げたが、このシミュレーション結果ならびに本発明の効果は、全ての形態に関して、その一般性を失っていない。
【0056】
図16は、上述の光学系1〜3において、縦軸が偏光補償光学素子を外した時の消光比で規格化された値で、横軸がα:β=3:8とした場合の全分割数である。光学系によらず、同様の割合で消光比が上昇していることがわかる。
【0057】
偏光顕微鏡による目視観察時において、標本の位相差検出感度は、消光比の平方根にほぼ反比例することが知られている。さて、偏光顕微鏡の用途は標本の光学的等方性、異方性を調べるためのものであり、これまでは一般的に岩石、鉱物、高分子などに使われることが多かった。しかし、昨今生物標本を観察する機会も増えてきている。鉱物などに比べて微小な構造を持つ生物標本を観察するには、分解能(開口数に比例)と位相差検出感度の両立が求められる。しかし、前に述べた通り、高開口数の光学系では消光比は急激に低下し102〜103になってしまう。特に開口数が1を越える光学系では、消光比は102程度であることが知られている。しかし、開口数の低い低倍の光学系では、消光比が104程度であるので、高開口数の光学系で同程度の位相検出感度を持つためには、消光比を10倍以上にする必要がある。図16によると分割数と規格化された消光比はほぼ線型関係であるので、分割数を102以上にすれば、消光比を10倍以上にすることができることが分かる。また微分干渉顕微鏡においては、偏光顕微鏡ほどの消光比は必要ではないが、生物細胞など微小な構造を持つ生物標本においては、最低でも2×102の消光比が必要であり、これ以上は、消光比に比例してコントラストや位相差検出感度が上昇することが分かっている(Pluta.M Advanced Light Microscopy vol.2)。
【0058】
最後に、既に知られているこれらの事実と今回の計算結果をふまえて、偏光補償光学素子の最適な領域分割について述べる。すでに述べたように、偏光顕微鏡の高開口数観察で、開口数の低い光学系と同様の消光比を得るためには、領域分割数を102以上にする必要がある。しかし、微分干渉顕微鏡においては、経験上3倍以上消光比が上昇すると、観察者がコントラストの上昇または位相差検出感度の上昇を実感することができる。図16によると分割数と規格化された消光比はほぼ線型関係であるので、分割数をおよそ30にすれば、消光比が3倍以上上昇すると分かる。特に最も効率良く消光比が上昇するα:β=3:8の時、つまり分割数24が適当である。また、光軸対称である光学系で、偏光子と検光子の透過軸が直交するクロスニコル状態のとき、偏光子と検光子の透過軸を境界線とした4つの領域を通る光線の偏光状態は、それぞれの軸に対して対称である。このことから、円周方向の最も少ない分割数は4と決まる。一方半径方向には対称性がないので、最も少ない分割数は2となる。つまり、偏光補償光学素子として効果を発揮するための最小領域分割数は8であることがわかる。すなわち、この偏光補償光学素子は、その領域分割数をNとしたとき、次式(4)を満足するように構成される。
N ≧ 8 (4)
【0059】
但し、これまでに述べた通り、分割数が8では消光比の上昇が十分でないことが分かっている。しかし、図11Bのように、半径方向の分割を等間隔にせず、非線形に分割すれば、より少ない分割数で効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る偏光補償光学系である透過照明型偏光顕微鏡の概略構成図である。
【図2A】レンズを透過する光が大きな角度を有する場合の光学系における偏光方向の回転を示す模式図である。
【図2B】レンズ表面に反射防止コートが多用されている場合の光学系における偏光方向の回転を示す模式図である。
【図3A】偏光補償光学素子である分割型位相板の一例の模式図である。
【図3B】偏光補償光学素子であるグラジェント位相板の一例の模式図である。
【図4A】構造複屈折部材の第1の構成方法の効果を示す模式図である。
【図4B】構造複屈折部材の第1の構成方法の効果を示す模式図である。
【図4C】構造複屈折部材の第1の構成方法の効果を示す模式図である。
【図5A】構造複屈折部材の第2の構成方法の効果を示す模式図である。
【図5B】構造複屈折部材の第2の構成方法の効果を示す模式図である。
【図5C】構造複屈折部材の第2の構成方法の効果を示す模式図である。
【図6】第1の実施形態の変形例を示す概略構成図である。
【図7】第2の実施形態に係る偏光補償光学系である透過照明型偏光顕微鏡の概略構成図である。
【図8】第2の実施形態の変形例を示す概略構成図である。
【図9】偏光軸の回転の入射角依存特性を示すグラフである。
【図10】位相差の入射角依存特性を示すグラフである。
【図11A】シミュレーションに用いた偏光補償光学素子の模式図であって、円周方向及び半径方向に等分した場合を示す。
【図11B】シミュレーションに用いた偏光補償光学素子の模式図であって、円周方向は等分しているが、半径方向はNAが大きくなるに従って細かく分割した場合を示す。
【図12】格子状に分割した偏光補償光学素子の模式図である。
【図13】1つの偏光補償光学素子をコンデンサレンズの前側焦点面近傍に配置し、偏光補償光学素子の円周方向分割数と半径方向分割数に対する、光学系1の消光比の変化をプロットしたグラフである。
【図14】偏光補償光学素子の円周方向分割数と半径方向分割数に対する、光学系2の消光比の変化をプロットしたグラフである。
【図15】偏光補償光学素子の円周方向分割数と半径方向分割数に対する、光学系3の消光比の変化をプロットしたグラフである。
【図16】消光比と分割数の関係を示すグラフである。
Claims (32)
- 偏光子を介して物体に照明光を照射する照明光学系と、
前記物体からの光を集光し、検光子を介して結像する結像光学系と、
前記偏光子と前記物体の間又は前記物体と前記検光子の間の少なくとも一方に配設され、有効径内を複数の領域に分割して前記偏光子と前記検光子の間に配設されている光学素子により発生する偏光方向の回転及び位相差を当該領域の各々で補償する偏光補償光学素子とを有して構成され、
前記偏光補償光学素子の領域分割数をNとしたとき、次式
N ≧ 8
を満足することを特徴とする偏光補償光学系。 - 前記偏光補償光学素子の前記領域の各々には位相板が配置されており、
当該位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の偏光補償光学系。 - 前記偏光補償光学素子の前記領域の各々には位相板が配置されており、
当該位相板は、フォトニック結晶から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の偏光補償光学系。 - 前記偏光補償光学素子は、前記位相差の異なる複数の領域のそれぞれに対応する、複数の1/4波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第1の分割型位相板と、前記位相差の異なる複数の領域のそれぞれに対応する、複数の1/2波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第2の分割型位相板とを含む複数の層から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の偏光補償光学系。
- 前記1/4波長位相板及び前記1/2波長位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることを特徴とする請求項4に記載の偏光補償光学系。
- 前記1/4波長位相板及び前記1/2波長位相板は、フォトニック結晶から形成されていることを特徴とする請求項4に記載の偏光補償光学系。
- 前記偏光補償光学素子は円周方向ならびに半径方向に分割されており、半径方向の分割数をαとし、円周方向の分割数をβとしたとき、
2 ≦ β/α ≦ 3
であることを特徴とする請求項1から6いずれか一項に記載の偏光補償光学系。 - 前記偏光補償光学素子は格子状に分割されている請求項1から6いずれか一項に記載の偏光補償光学系。
- 偏光子を介した照明光を偏向素子を介して物体に照射する照明光学系と、
前記物体からの光を集光し、前記偏向素子及び検光子を介して結像する結像光学系と、
前記偏光子と前記偏向素子の間又は前記偏向素子と前記検光子の間の少なくとも一方に配設され、有効径内を複数の領域に分割して前記偏光子と前記検光子の間に配設されている光学素子により発生する偏光方向の回転及び位相差を当該領域の各々で補償する偏光補償光学素子とを有して構成され、
前記偏光補償光学素子の領域分割数をNとしたとき、次式
N ≧ 8
を満足することを特徴とする偏光補償光学系。 - 前記偏光補償光学素子の前記領域の各々には位相板が配置されており、
当該位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることを特徴とする請求項9に記載の偏光補償光学系。 - 前記偏光補償光学素子の前記領域の各々には位相板が配置されており、
当該位相板は、フォトニック結晶から形成されていることを特徴とする請求項9に記載の偏光補償光学系。 - 前記偏光補償光学素子は、前記位相差の異なる複数の領域のそれぞれに対応する、複数の1/4波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第1の分割型位相板と、前記位相差の異なる複数の領域のそれぞれに対応する、複数の1/2波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第2の分割型位相板とを含む複数の層から形成されていることを特徴とする請求項9に記載の偏光補償光学系。
- 前記1/4波長位相板及び前記1/2波長位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることを特徴とする請求項12に記載の偏光補償光学系。
- 前記1/4波長位相板及び前記1/2波長位相板は、フォトニック結晶から形成されていることを特徴とする請求項12に記載の偏光補償光学系。
- 前記偏光補償光学素子は円周方向ならびに半径方向に分割されており、半径方向の分割数をαとし、円周方向の分割数をβとしたとき、
2 ≦ β/α ≦ 3
であることを特徴とする請求項9から14いずれか一項に記載の偏光補償光学系。 - 前記偏光補償光学素子は格子状に分割されている請求項1から14いずれか一項に記載の偏光補償光学系。
- 物体に偏光した照明光を照射する照明光学系と、
前記物体からの光を検光子を介して集光する集光光学系と、
前記照明光学系又は前記物体と前記検光子の間の少なくとも一方に配設され、有効径内を複数の領域に分割して前記集光光学系の前記物体から前記検光子までの光学素子及び前期照明光学系の光学素子により発生する偏光方向の回転及び位相差を当該領域の各々で補償する偏光補償光学素子とを有して構成され、
前記偏光補償光学素子の領域分割数をNとしたとき、次式
N ≧ 8
を満足することを特徴とする偏光補償光学系。 - 前記偏光補償光学素子の前記領域の各々には位相板が配置されており、
当該位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることを特徴とする請求項17に記載の偏光補償光学系。 - 前記偏光補償光学素子の前記領域の各々には位相板が配置されており、
当該位相板は、フォトニック結晶から形成されていることを特徴とする請求項17に記載の偏光補償光学系。 - 前記偏光補償光学素子は、前記位相差の異なる複数の領域のそれぞれに対応する、複数の1/4波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第1の分割型位相板と、前記位相差の異なる複数の領域のそれぞれに対応する、複数の1/2波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第2の分割型位相板とを含む複数の層から形成されていることを特徴とする請求項17に記載の偏光補償光学系。
- 前記1/4波長位相板及び前記1/2波長位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることを特徴とする請求項20に記載の偏光補償光学系。
- 前記1/4波長位相板及び前記1/2波長位相板は、フォトニック結晶から形成されていることを特徴とする請求項20に記載の偏光補償光学系。
- 前記偏光補償光学素子は円周方向ならびに半径方向に分割されており、半径方向の分割数をαとし、円周方向の分割数をβとしたとき、
2 ≦ β/α ≦ 3
であることを特徴とする請求項17から21いずれか一項に記載の偏光補償光学系。 - 前記偏光補償光学素子は格子状に分割されている請求項1から21いずれか一項に記載の偏光補償光学系。
- 偏光方向の回転及び位相差を補償する偏光補償光学素子であって、
有効径内を周方向及び半径方向に複数の領域に分割し、それぞれの分割領域に所定の方向に向けたそれぞれ異なる方向の位相軸を有し、異なる位相差を与えるように少なくとも1層の部材よりなる位相板を配置しており、前記分割領域の分割数をNとしたとき、次式
N ≧ 8
を満足することを特徴とする偏光補償光学素子。 - 前記位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることを特徴とする請求項25に記載の偏光補償光学素子。
- 前記位相板は、フォトニック結晶から形成されていることを特徴とする請求項25に記載の偏光補償光学素子。
- 前記位相板は、前記それぞれの分割領域に対応する、複数の1/4波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第1の分割型位相板と、前記それぞれの分割領域に対応する、複数の1/2波長位相板のそれぞれの位相軸を所定の方向に向けて配置し接合して形成された第2の分割型位相板を含む複数の層から形成されていることを特徴とする請求項25に記載の偏光補償光学素子。
- 前記1/4波長位相板及び前記1/2波長位相板は、構造複屈折光学部材から形成されていることを特徴とする請求項28に記載の偏光補償光学素子。
- 前記1/4波長位相板及び前記1/2波長位相板は、フォトニック結晶から形成されていることを特徴とする請求項28に記載の偏光補償光学素子。
- 半径方向の分割数をαとし、円周方向の分割数をβとしたとき、次式
2 ≦ β/α ≦ 3
を満足することを特徴とする請求項25〜30いずれか一項に記載の偏光補償光学素子。 - 前記有効径内は格子状に分割されている請求項25〜30いずれか一項に記載の偏光補償光学素子。
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