JPS6361513B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、ベーン型圧縮機に関するものであ
り、特に起動性の改善に係るものである。

ベーン型圧縮機は構成が簡単で高速回転に適す
るため、車輌用空気調和装置の冷媒圧縮機として
多く適用されている。このベーン型圧縮機ではロ
ータの回転と共にベーンがポンプハウジングの内
周面に接触して回転しポンプ室の容積を変化さ
せ、流体を吸入、圧縮、吐出するが、上記ポンプ
室を形成するにはベーンはポンプハウジングの内
周面に十分密接されなければならない。この圧接
力を発生させるのはロータの回転によるベーンの
遠心力とロータのスリツト下部のベーン背圧室に
働く圧力とによる。ベーン背圧室の圧力はポンプ
室の圧縮流体がベーンとスリツト、ロータ及びベ
ーン両端面とポンプハウジング内側面との間の各
クリアランス等を通つてベーン背圧室に流入する
ことによつて与えられる。しかしながら圧縮機が
長時間停止された場合、一部のベーンが自重によ
りスリツト内をロータの中心方向に落込みベーン
先端がポンプハウジングの内周面から離れている
ことがある。この状態で圧縮機を起動し、特に起
動直後の回転数が低い時はベーンに働く遠心力も
小さく、又圧縮機の吐出圧力も上昇していないた
めベーン背圧室の空間を拡張させてベーンを突出
させるに必要なベーン背圧室の圧力が十分得られ
ず、ベーンはポンプハウジングの内周面に追従で
きない。このため起動後圧縮流体の圧力が上昇す
るまで暫くの間ベーンがポンプハウジングの内周
面に離接を繰返して打撃音を発生し、又部材を損
傷したりする。一方フロントヘツドの軸シール室
へは前記ベーン背圧室に流入する圧縮ガスの一部
が更に軸受部を通じて流入しシール部を潤滑して
いるため、圧縮機の停止時にはこの高圧力が長時
間軸シール室に残存して軸シール室からの流体洩
れ、潤滑油洩れの原因となつている。

上記圧縮機の起動時におけるベーンの突出不良
を解決するため特開昭56−107992号において、ポ
ンプハウジングの側板にベーン溝底部（前記説明
におけるベーン背圧室）と連通するオイル溝を設
け、このオイル溝と吐出通路室（前記説明におけ
る吐出圧室と同じ）とを絞り部を有する連通孔で
連通し、又は前記連通孔に弁を設けて吐出通路室
とオイル溝との内圧力の差が所定圧以下の時連通
孔を開き、吐出通路室内圧がオイル溝の内圧より
所定圧以上高い時には連通孔を閉じるようにし、
圧縮機の起動時に吐出通路室から流体をベーン溝
底部に導くようにしてベーンの突出を容易にした
構成が提案されている。しかしながらこの構成で
はオイル溝の形状が複雑であり、また連通孔の絞
り部は極めて小径の孔とする必要があり、これら
の加工性に不利がある。

上記欠点を解消するため本願出願人は先の特願
昭58−52059号において、ベーン型圧縮機のポン
プハウジング側壁に連通孔を穿設して吐出圧室と
ベーン背圧室とをローラベアリングを介して連通
せしめ、上記連通孔には吐出圧室の圧力が所定値
より低い時には連通孔を開き、吐出圧室の圧力が
所定値より高い時には連通孔を閉じるチエツク弁
を設け、圧縮機の起動時ベーンに働らく遠心力が
小さく、かつベーン背圧室の背圧が上昇していな
い時には吐出圧室から連通孔を通じて直接背圧室
に流体を導いてベーンの突出を容易にしたベーン
型圧縮機を提案した。しかしながら該構成によれ
ば吐出圧室は前記連通孔及びローラベアリングの
アウタレースを貫通した孔によつてベーン背圧室
に連通されているため、ローラベアリングは一般
市販品が使用できずコスト高となるという問題が
ある。

本発明はベーン型圧縮機の起動時ベーンの突出
を容易にして圧縮機が直ちに正常な運転状態に入
ることができると共に、ローラベアリングに加工
を要せず一般市販品のローラベアリングの使用を
可能にしてコストダウンを図つたベーン型圧縮機
を提供することを目的とし、吐出圧室を外部に形
成しているポンプハウジングと、該ポンプハウジ
ングの対向する側壁に回転軸が支承されるロータ
と、該ロータの半径方向に進退自在に設けられる
複数のベーンと、前記一方の側壁に取付けられる
と共に、前記ベーンの後退側に形成されるベーン
背圧室に前記転軸を軸支するころがり軸受部を介
して連通するシール室を形成すべく該軸受部の近
傍に設けられる隔壁と、前記一方の側壁に形成さ
れると共に、前記ロータの回動により圧縮された
流体が吐出される前記吐出圧室と前記シール室と
を連通する連通孔と、該連通孔に設けられ、前記
吐出圧室の圧力が所定値に達しないときには前記
連通孔を開いている一方、前記吐出圧室の圧力が
前記所定値に達したときには前記連通孔を速やか
に閉じるチエツク弁とを設けたことを特徴とす
る。

以下本発明の一実施例を第１図乃至第３図に基
づいて説明する。円筒形のケース１ａの前面がフ
ロントヘツド１ｂにより密閉されて圧縮機ケース
１を形成し、圧縮機ケース１内にフロントサイド
ブロツク２ａ、リヤサイドブロツク２ｂ及びカム
リング２ｃとにより形成されたポンプハウジング
２が収容されている。ポンプハウジング２内には
回転軸３に嵌着された円筒形のロータ４が嵌入さ
れ、ロータ４の半経方向に設けられた複数のスリ
ツト４ａに板状のベーン５が進退自在に挿入さ
れ、ポンプハウジング２の内面、ロータ４の外周
面及びベーン５によつて囲まれた空間によつてポ
ンプ室６が形成されている。ロータ４の前後両端
面の中心部には環状溝７，７′が形成され、この
環状溝７，７′はスリツト４ａの下部に形成され
たベーン背圧室４ｂに連通されている。一方フロ
ントサイドブロツク２ａ及びリヤサイドブロツク
２ｂの内面に上記環状溝７，７′に一部対向し一
部ロータ４端面と重合する環状油溝８，８′が設
けられ、ロータ４とフロント及びリヤサイドブロ
ツク２ａ，２ｂとの摺動面の潤滑を確保するよう
にしている。前記回転軸３はフロントサイドブロ
ツク２ａ及びリヤサイドブロツク２ｂに夫々設け
られた前部及び後部ローラベアリング９，９′に
支持されると共に、フロントヘツド１ｂに形成さ
れた軸シール室１０を軸シール部１０ａに気密を
保持されて貫通している。リヤサイドブロツク２
ｂの後部には隔壁１２ａが接合され、リヤサイド
ブロツク２ｂの後端面との間に吸入室１２が形成
されている。この吸入室１２は圧縮機ケース１の
後部に設けられた吸入口１３に連通され、又リヤ
サイドブロツク２ｂに設けられた吸入ポート１４
によりポンプ室６の吸入部に連通されている。リ
ヤサイドブロツク２ｂの後端面にローラベアリン
グ９′と同心に形成されたボス部２b′にはキヤツ
プ状の隔壁１５ａが嵌着され、ローラベアリング
９′の反ロータ側を密閉するシール室１５を画成
しベーン背圧室４ｂの圧力をローラベアリング
９′の間隙を通じて吸入室１２に逃がさないよう
にしている。ポンプ室６の吐出部においてカムリ
ング２ｃに吐出ポート１６が吐出弁１７を備えて
設けられ、ポンプハウジング２外周面と圧縮機ケ
ース１内周面との間に吐出圧室１８が形成され、
吐出圧室１８にはオイルセパレータ１９が取付け
られ、ポンプ室６で圧縮された圧縮ガスは吐出弁
１７を押上げて吐出圧室１８に吐出される時オイ
ルセパレータ１９を通過して混入している潤滑油
が分離され、更にＳ字通路２０を通つて脈動が緩
和されて圧縮機ケース１後部に設けられた吐出口
２１より吐出されるようになつている。

以上の構成は従来のベーン型圧縮機と基本的に
は同様である。

ここで本発明では、リヤサイドブロツク２ｂに
吐出圧室１８と後部ローラベアリング９′の外端
面のシール室１５とを連通する連通孔２２が穿設
され、この連通孔２２にチエツク弁２３が設けら
れる。詳しくは連通孔２２はチエツク弁２３のボ
ール弁体２３ａを収容する大径孔２２ａ、ボール
弁体２３ａを吐出圧室１８側に付勢して該連通孔
２２を開くスプリング２３ｂを収容した中径孔２
２ｂ、その下部の小径孔２２ｃ及びボス部２b′を
軸方向に貫通しシール室１５に開口する孔２２ｄ
が順次連設されてなる。そして大径孔２２ａと中
径孔２２ｂとの段部はテーパが付されボール弁体
２３ａの弁座２３ｃを形成し、又大径孔２２ａの
上部にはボール弁体２３ａのストツパピン２３ｄ
が挿入されている。そしてチエツク弁２３は、吐
出圧室１８の流体圧力が所定値以下の時はボール
弁体２３ａがスプリング２３ｂに押圧されて連通
孔２２を開き、吐出圧室１８の流体圧力が所定値
以上となるとボール弁体２３ａはスプリング２３
ｂを圧縮して連通孔２２を閉じるように設定され
ている。

ここで該圧縮機の運転中の吐出圧をPd、吸入
圧をPsとすると、圧縮機の運転中のベーン背圧
室４ｂの圧力PvはPv＝（Ps＋Pd）／２にほぼ等
しく維持され、又圧縮機停止後の吐出圧室１８の
圧力は流体（冷媒）の外気温に対する飽和圧力
P₀まで降下し、この圧力はP₀＞Pvである。そこ
で前記チエツク弁２３を開閉する所定圧Pcはほ
ぼPc＝Pv＝（Ps＋Pd）／２に設定される。

以上のように構成される本発明の作用について
次に説明する。回転軸３が機関等により駆動され
ロータ４が転されるとベーン５の先端はカムリン
グ４ｃの内周面に密接し、ポンプハウジング２の
内面、ロータ４及びベーン５によつて形成された
ポンプ室６はその容積を拡大する吸入行程で流体
を吸入口１３から吸入室１２及び吸入ポート１４
を通じて吸入し、容積を縮小する圧縮行程で流体
を圧縮し、圧縮行程末期の吐出行程で吐出弁１７
を押圧げて吐出ポート１６から吐出圧室１８に吐
出する。この圧縮流体は吐出圧室１８のオイルセ
パレータ１９を通過する時混入している潤滑油を
分離し、その後吐出口２１より外部回路に供給さ
れる。上記正規の作動に対して圧縮機が長時間停
止され、一部のベーン５が自重によりスリツト４
ａ内をロータ４の中心方向に落込み、先端がカム
リング２ｃの内周面から離れている状態で圧縮機
を起動させ、しかも起動直後の回転数が低い場
合、吐出圧室１８の圧力が所定値以下であるため
連通孔２２は開かれ、ベーン背圧室４ｂは後部環
状溝７′、後部ローラベアリング９′の間隙、シー
ル室１５及び連通孔２２を通じて吐出圧室１８に
開放されている。従つて該圧縮機の起動時、ベー
ン５に働く遠心力が小さく、ベーン背圧室４ｂの
背圧が上昇していなくてもベーン背圧室４ｂには
ベーン５が突出するのに必要な量の流体が吐出圧
室１８から連通孔２２、シール室１５、後部ロー
ラベアリング９′、後部環状溝７′ｂを通じて補給
され、ベーン５は遠心力で速やかに突出したカム
リング２ｃの内周面に密接して圧縮機は直ちに正
常な作動状態に入ることができる。圧縮機の作動
により吐出圧室１８の圧力が所定値以上に上昇す
るとチエツク弁２３は連通孔２２を閉じ、高圧の
吐出圧がベーン背圧室４ｂに働くのを防止するか
らベーン５先端の圧接力は適正に保持される。尚
上記圧縮機の起動時において吐出圧室１８の流体
は後部ローラベアリング９′と共に前部ローラベ
アリング９にも後部環状溝７′、ベーン背圧室４
ｂ、前部環状溝７ａを通じて流れ、更に軸シール
室１０に流入し混入している潤滑油を供給するか
ら圧縮機が長時間停止されていて前後部のローラ
ベアリング９，９′及び軸シール部１０ａが油切
れを起していても潤滑及びシールが支障なく開始
される。圧縮機が停止され吐出圧室１８の流体圧
力が所定値以下に低下するとチエツクク弁２３は
連通孔２２を開き、軸シール室１０に付加してい
た流体の高圧力は吐出圧室１８に解放され、圧縮
機停止中の軸シール室１０からの流体洩れ、潤滑
油洩れを防ぐことができる。そしてローラベアリ
ングは何ら加工を要しないから一般の市販品を使
用してコストダウンを図ることができる。

以上のように本発明によれば、吐出圧室を外部
に形成しているポンプハウジングと、該ポンプハ
ウジングの対向する側壁に回転軸が支承されるロ
ータと、該ロータの半径方向に進退自在に設けら
れる複数のベーンと、前記一方の側壁に取付けら
れると共に、前記ベーンの後退側に形成されるベ
ーン背圧室に前記回転軸を軸支するころがり軸受
部を介して連通するシール室を形成すべく該軸受
部の近傍に設けられる隔壁と、前記一方の側壁に
形成されると共に、前記ロータの回動により圧縮
された流体が吐出される前記吐出圧室と前記シー
ル室とを連通する連通孔と、該連通孔に設けら
れ、前記吐出圧室の圧力が所定値に達しないとき
には前記連通孔を開いている一方、前記吐出圧室
の圧力が前記所定値に達したときには前記連通孔
を速やかに閉じるチエツク弁とを設ける構成とし
たので、ロータの回転軸端部のシール室を効果的
に利用して上記起動性の改善に貢献させることが
でき、また、ポンプハウジング内にチエツク弁等
が収納されるから、全体形状の大型化を回避でき
る。この場合、瞬時的に作動するチエツク弁はボ
ール弁等を用いた一般市販のものを流用できるか
ら製造が容易であり、また、チエツク弁が閉じた
後はベーン背圧室と吐出圧室との連通が断たれる
ので、ベーンとシリンダ内面との摩擦抵抗を増大
させることはなく圧縮工程を円滑に行なえる。該
圧縮機の起動時ベーンに働く遠心力が小さく、か
つベーン背圧室の背圧が上昇していなくてもベー
ン背圧室にベーンが突出するのに必要な量の流体
が吐出圧室から補給されてスリツト内に落込んで
いたベーンは遠心力で速やかに突出し、カムリン
グの内周面に密接して圧縮機は直ちに正常な作動
状態に入ることができ、ベーンがカムリングの内
周面を叩く打撃音を解消し、かつ部材の損傷を防
止する。

又起動時ころがり軸受部及び軸シール室に潤滑
油を混入した流体が流入するから、圧縮機が長時
間停止されていてころがり軸受部及び軸シール部
が油切れを起していても潤滑及びシールが支障な
く開始される。更に圧縮機の停止時は軸シール室
に付加していた流体の高圧力は連通孔から吐出圧
室へ解放され軸シール室は低圧に保たれるから、
圧縮機停止中の軸シール室からの流体洩れ、潤滑
油洩れを防ぐことができる。

さらに、特段の細工を要しない連通孔を側壁に
形成するという簡単な加工で済み、従前のような
加工上厄介な小径孔や複雑なオイル溝を形成する
必要がないので、コストアツプ回避の面で有利で
ある。さらに、ころがり軸受部には何等特別の加
工を施す必要がないから軸受部に加工を施すもの
に比べてコストダウンを実現できる。

尚本発明では加工に不利な小径孔や複雑なオイ
ル溝がないため製作が容易であり、かつ従来の圧
縮機を本発明のものに改造することも容易であ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係るベーン型圧縮機の一実施
例を示す垂直縦断面図、第２図は第１図の―
線矢視断面図、第３図は要部拡大断面図である。 ２……ポンプハウジング、２ｂ……リヤサイド
ブロツク（一方の側壁）、３……回転軸、４……
ロータ、４ｂ……ベーン背圧室、５……ベーン、
９′……後部ローラベアリング（ころがり軸受
部）、１５……シール室、１８……吐出圧室、２
２……連通孔、２３……チエツク弁。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 吐出圧室を外部に形成しているポンプハウジ
   ングと、該ポンプハウジングの対向する側壁に回
   転軸が支承されるロータと、該ロータの半径方向
   に進退自在に設けられる複数のベーンと、前記一
   方の側壁に取付けられると共に、前記ベーンの後
   退側に形成されるベーン背圧室に前記回転軸を軸
   支するころがり軸受部を介して連通するシール室
   を形成すべく該軸受部の近傍に設けられる隔壁
   と、前記一方の側壁に形成されると共に、前記ロ
   ータの回動により圧縮された流体が吐出される前
   記吐出圧室と前記シール室とを連通する連通孔
   と、該連通孔に設けられ、前記吐出圧室の圧力が
   所定値に達しないときには前記連通孔を開いてい
   る一方、前記吐出圧室の圧力が前記所定値に達し
   たときには前記連通孔を速やかに閉じるチエツク
   弁とを設けたことを特徴とするベーン型圧縮機。