JPH0151913B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は回転圧縮機に関し、特に自動車用空調
装置の冷媒圧縮機として用いる。

〔従来の技術〕

従来より、自動車用の回転圧縮機として、ハウ
ジング、ハウジング側板、ロータおよびベーンに
よつて形成されるシリンダ室の容積変動によつて
冷媒の吸入圧縮吐出を行ういわゆるベーンタイプ
の回転圧縮機は知られている。

このようなベーンタイプの回転圧縮機において
は、圧縮機の効率を悪化させないためにも、ベー
ンの先端はハウジング内面に良好に押しつけられ
ていることが必要とされる。そのため、従来の圧
縮機ではベーンの背面に油圧等を導いて、その油
圧によりベーンをハウジング内面側に押しつける
ようにしていた（例えば実開昭52−35512号公報、
実開昭54−25506号公報）。そして、これらの従来
技術では、ベーン溝底部と対向する位置に背圧空
間を形成し、この背圧空間に高圧の潤滑油を供給
するようにしていた。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかしながら、本発明者らの検討によれば、こ
の冷媒形式の回転圧縮機では、圧縮機の起動直後
いおいてベーンの挙動が不安定になることが認め
られた。これは圧縮機起動直後においては背圧空
間に十分な圧力が供給されていないからである。
ここで、密封状態である背圧空間に十分な圧力が
供給されていれば、その圧力によりベーンをハウ
ジング側に押し出させることができるのである
が、起動時のように背圧空間に加わる圧力が発生
していない状態では、ベーンをハウジング内面側
に押し出すことができないのみならず、この密封
状態にある背圧空間がかえつてロータの飛び出し
を阻害することになるからである。

本発明は、上記点に着目して案出されたもので
あり、背圧空間を備える回転圧縮機において、圧
縮機起動直後よりベーンが確実の飛び出るように
することをその目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

上記目的を達成するため、本発明圧縮機では、
シリンダ室の容積増加位置におけるベーン溝底部
と対向する部位に形成された背圧空間を、連通手
段を介して気冷媒の空間と連通させるという構成
を採用する。

また、本発明の回転圧縮機においては、背圧空
間はハウジング側板のシリンダ室側の面であつて
少なくともシリンダ室が容積増加する位置におけ
るベーン溝底部と対向する部位に構成する。更
に、本発明圧縮機ではハウジング側板はロータの
端部に所定の微小間〓を介して配設されるように
し、圧縮機は潤滑油を含む気冷媒をシリンダ室に
吸入するという構成とする。

〔作用〕

上記構成の採用により、本発明圧縮機では起動
時から圧縮時の定常運転時に至るまでベーンの挙
動を良好なものとし、確実な圧縮ができることと
なる。

まず、起動時であるが、本発明の圧縮機では背
圧空間が連通手段を介して、気冷媒部分と連通し
ているため、背圧空間が密閉される事態が確実に
防止される。従つて、起動時の如く、背圧空間内
に所定の高圧が保持されていないような状態にあ
つても、ベーンの飛び出しにより背圧空間内圧力
が負圧となるという事態は確実に防止できる。す
なわち、起動時では背圧空間内圧力がベーンの押
出に寄与することがないものではあつても、背圧
空間内圧力低下により、ベーンの飛び出しを阻害
するという事態は生じない。また、定常運転時に
あつては、ロータ端部とハウジング側板との間の
潤滑を行う潤滑油等が背圧空間内に流入すること
になる。そして、ロータ端部とハウジング側板と
の間に微小間〓があることともあいまつて、背圧
空間内の圧力は吸入圧力と吐出圧力との間の圧力
に保持されることになる。換言すれば、背圧空間
内の潤滑油等の圧力は吸入圧よりは高い圧力に保
持される。従つて、この圧力によりベーンをハウ
ジング内面側に飛び出る方向に付勢することがで
き、定常運転時にあつては、ベーン先端とハウジ
ング内面との面圧を所定圧に保持することができ
圧縮機の圧縮効率を良好なものとすることができ
る。

〔発明の効果〕

上述の次第であり、本発明回転圧縮機では圧縮
機起動直後より定常運転に運転時に至るまで幅広
い領域で良好な圧縮作動を達成させることができ
るという優れた効果有する。

〔実施例〕

以下本発明を図に示す一実施例に基づいて説明
する。

第１〜第３図において、１は円筒状の内壁１ａ
を有するハウジング、２はこのハウジング１内に
偏心して配設された円筒状のロータで、回転軸３
を圧入固定し、回転軸３と一体に回転するように
なつている。また、ロータ２にはベーン溝２ａが
周方向に等間隔離れた４ケ所設けてあり、このベ
ーン溝２ａ内にはベーン４が摺動自在に挿入され
ている。

また、ハウジング１の側部にはハウジング側板
６，７がＯリング８，８を介して固定され、前記
回転軸３はこのハウジング側板６，７にベアリン
グ９，９を介して回転自在に支持されるようにな
つている。

そして、このハウジング側板６，７と、ハウジ
ング内壁１ａとロータ２と相隣り合う２つのベー
ン４とによつてシリンダ室Ｒが形成される。１０
はハウジング１に形成された吐出口で、一端１０
ａがこのシリンダ室Ｒに開口し、他端１０ｂ側に
は吐出弁１１を介して吐出室２３に連通してい
る。１２は吐出弁１１のストツパーである。

７ｂ，７ｃはハウジング側板６，７のうちリア
側のハウジング側板７（以下後部側部７という）
のシリンダ室Ｒ端面に形成された第１・第２背圧
空間で、それぞれベーン溝２ａの底部２a′と対向
する部位に形成されている。そして、第１背圧空
間７ｂは吐出口１０を通過した後でベーン４がベ
ーン溝２ａの最も奥まで引込んだ位置から、シリ
ンダ室Ｒ容積が最大となつてベーン４がベーン溝
２ａより最も飛び出す位置までの部位、換言すれ
ばシリンダ室Ｒが容積増加している部位のほぼ全
長にわたつて形成されており、また第２背圧空間
７ｃはシリンダ室Ｒが容積減少している部位のう
ち中間部の所定角度間に形成されている。

１４はフロント側の側部ハウジング（以下フロ
ントハウジングという）で、ハウジング側板６，
７のうちフロント側の側板６（以下前部側板６と
いう）により密着固定されている。そしてこのフ
ロントハウジングには図示しない蒸発器より冷媒
を吸入する吸入連通ポートが開口しており、冷媒
は吸入連通ポートより一旦このフロントハウジン
グ１４の吸入室５内に導入され、ついで前記側板
６に設けられた吸入穴１３よりシリンダ室Ｒ内に
導入されるようになつている。

１５はフロントハウジング１４と回転軸３との
間に配設された軸封装置で、潤滑油や冷媒が回転
軸３に沿つて外部へ流出するのを防止するもので
ある。

１６はリア側の側部ハウジング（以下リアハウ
ジング１６という）で、このリアハウジング１６
内には多孔板製のフイルタ１７がねじ１８によつ
て固定され、さらにフイルタ１７とリアハウジン
グ１６との間には三次元方向に不規則にからみあ
つた構造の金属製不織布よりなるオイルセパレー
タ１９が充填してある。

２０は後部側板７のリアハウジング１６側面に
ボルト２１によつて固定された押え板で、この押
え板２０にはリアハウジング１６下部の潤滑油溜
り部１６ｂと後部側板７の給油穴７ｄとを結ぶ結
油通路２０ａが形成されており、この給油通路２
０ａと給油穴７ａとを介して油溜り部１６ｂ内の
潤滑油が差圧に基いて回転軸３端面に吸い上げら
れるようになつている。そして、この回転軸３端
面に供給された潤滑油は回転軸３外周よりハウジ
ング側板６，７とロータ２端面との間に流れ、軸
受９やロータ２端面の給油を行う。

また、後部側板７には第１背圧空間７ｂの始端
部近傍とリアハウジング１６の吐出通路室１６ａ
とを連通する連通手段７ｅが穿設されている。本
例では連通手段７ｅは後部側板に穿設された穴よ
りなる。ただ、この連通手段７ｅはその径があま
り大きくなると吐出通路室１６ａ内の冷媒を第１
背圧空間７ｂ側へ多量に流してしまい、圧縮機の
効率を低下させることになるので、第４図に示す
ように、途中に直径0.8mm程度の絞り部７e′が形
成してあつて連通手段７ｅの流通抵抗が高くなる
ようにしてある。

なお、フロントハウジング１４、ハウジング側
板６、ハウジング１、ハウジング側板７、および
リアハウジング１６はいずれもアルミニウム合金
でできており、各部材はボルト２６，２８により
一体に連結されている。第１図のａ１〜ａ６はハ
ウジング１に設けたボルト穴である。

又、後部側板７にはシリンダ室Ｒが容積減少し
つつある位置で、かつシリンダ室Ｒと吐出口１０
とがまだ連通していない位置、換言すれば圧縮を
開始する位置に、シリンダ室Ｒとリアハウジング
６の吐出通路室１６ａとを連通する連通孔２２が
設けてあり、この連通孔２２の内部にはシリンダ
室Ｒの圧力が吐出通路内１６ａの圧力より所定圧
（例えば１〜５気圧の間で望ましくは１気圧程度）
以上上昇したときのみ連通孔２２を開いてシリン
ダ室Ｒ内の冷媒を吐出通路室１６ａ側へ逃がす逆
止弁２４が配設されている。

逆止弁２４は、第２図に示すように、連通孔２
２のテーパ面２２ａに当接して連通孔２２を塞ぐ
弁体２５と、この弁体２５を閉方向に付勢するス
プリング２７とよりなるこのスプリング２７は押
え板２０によつて係止されるようになつている。
なお、弁体２５は鋼球製である。

次に上記構成よりなる圧縮機の作動を説明す
る。

自動車エンジン等の図示しない駆動源より駆動
力を受け回転軸３が回転すると、この回転によつ
てロータ２およびベーン４が回転し、シリンダ室
Ｒが容積変動を行うことになる。そして、容積が
増加する位置では、図示しない冷凍サイクルより
一旦フロントハウジング１４内に導入された冷媒
が、その後吸入口１３よりシリンダ室Ｒに吸い込
まれる。そしてこの気冷媒はシリンダ室Ｒの回転
に伴つてその後吸入口１３と遮断され、次にシリ
ンダ室Ｒの容積が減少することによつて圧縮され
更にシリンダ室Ｒの容積が最も減少した状態で吐
出口１０と連絡し、吐出便１１を介して吐出室２
３に吐出される。

そして、吐出室２３に吐出した気冷媒は後部側
板７に設けた吐出連通穴７ａを介してリアハウジ
ング１６の吐出通路室１６ａに流出し、次いでオ
イルセパレータ１９で潤滑油を分離除去した後、
図示しない吐出通路を通り冷凍サイクルの凝縮器
に吐出されることになる。

そして、この作動時においてベーン４は主に遠
心力によつてベーン溝２ａより飛び出してハウジ
ング内壁１ａと摺接するようになつているのであ
るが、特に本構成の圧縮機では後部側板７にベー
ン溝２ａ底部と連通する背圧空間７ｂ，７ｃが形
成されており、背圧空間７ｂ，７ｃ中には潤滑油
が充満しているので、ベーン４がベーン溝２ａよ
り飛び出そうとする吸入行程部では第１背圧空間
７ｂ内の圧力を受けてベーン４がより良好にハウ
ジング内面１ａ側に押し出されるようになつてい
る。ロータ２端部とハウジング側板７との間はロ
ータ２の回転を許すべく微小の間隙が形成されて
いる。そして、この微小間〓間にはロータ２や回
転軸３等の回転部の摺動を行うべく潤滑油が供給
されるものとなつている。そして、供給された潤
滑油はその一部が背圧空間７ｂ，７ｃに流入する
ことになる。背圧空間７ｂ，７ｃ内に潤滑油の圧
力はシリンダ室Ｒが吸入圧から吐出圧まで変動す
ることともあいまつて、吸入圧と吐出圧との間の
圧力に保持されることになる。したがつて、第１
背圧空間７ｂ内の圧力は吸入圧以上の圧力である
ため、その圧力を受けてベーン４がハウジング内
面１ａ側に押しつけられることになる。同様にベ
ーン４がベーン溝２ａ内に押し込められようとす
る圧縮行程部では、その行程途中で第２背圧空間
７ｃからベーン溝底部２a′内に潤滑油が供給され
るようになつているため、第２背圧空間７ｃ通過
後のベーン４はベーン溝２ａ内に充填された潤滑
油を圧縮しながらベーン溝２ａ内に押し込められ
ることになり、その反力によつてベーン４先端と
ハウジング内面１ａとの面圧が充分高くなるよう
になつている。

従つて本構成よりなる圧縮機では、背圧空間７
ｂ，７ｃを設けたことによつて吸入行程時、圧縮
機行程時共にベーン４先端がハウジング内面１ａ
に良好に押しつけられることになり、その結果ベ
ーン４がベーン溝２ａ内で跳ねることがなくなつ
て極めて静粛な運転ができるようになつている。

ただ、このような構成の圧縮機では起動時に第
１背圧空間７ｂが密封状態となり易く、その為ベ
ーン４が飛び出ようとする時に密封状態の第１背
圧空間溝７ｂ、ベーン溝２ａ内の圧力が低下し
て、ベーン４がベーン溝２ａから正常に飛び出
ず、圧縮機能が発揮されなくなるという問題があ
る。

しかしながら上記構成よりなる圧縮機では、後
部側板７に設けられた第１背圧空間７ｂは、連通
孔７ｅを介してリアハウジング１６の吐出通路室
１６ａを通じており、起動時において第１背圧空
間７ｂが密封されることがないようになつている
ので、ベーン４背後の圧力が低下することがな
く、従つてベーン４はロータ２の回転と共に、遠
心力により滑らかにベーン溝２ａより飛び出、ス
ムーズに圧縮を開始することができる。

しかも連通孔７ｅには絞り部７e′が形成してあ
るので、運転開始後、圧縮機が定常運転状態に達
して第１オイル溝７ｂ内圧力より吐出通路１６ａ
内の圧力が上昇したとしても、吐出通路室１６ａ
内の冷媒が第１オイル溝７ｂ側へ多量に洩れ出る
という事態は発生しなく、圧縮機の効率を損なう
こともない。

なお上述したのは本発明の望しい態様である
が、本発明はこの一例に限定されるべきでなく、
他に種々の態様がある。

即ち、上述の例では連通孔７ｅを後部側板７に
のみ形成していたが、第５図に示すように押え板
２０にも連通孔２０ｂを穿設し、両連通孔７ｅ，
２０ｂによつて第１オイル溝７ｂと吐出通路室１
６ａとを連通するようにしてもよい。特にこの場
合には押え板２０の連通孔２０ｂを小径とするこ
とによつて絞り部の効果を兼用させることができ
る。

ただ、この第５図図示の例であつても第４図図
示の例と同様、連通穴７ｅ，２０ｂは絞り部７
e′，２０ｂを介するものの常時開口するようにな
つている。第６図ないし第９図はこの連通穴７ｅ
に開閉弁３０を配設したもので、この弁３０によ
つて、連通孔７ｅは起動時のように両端に差圧が
ほとんど発生ていない時のみ開き、所定圧以上の
差圧が生じている定常運転時には閉じるようにな
つている。なお、３０ａ，３０ｃはスプリング、
３０ｂは弁体、３０ｅは弁３０に形成された連通
穴、３０ｄはスプリング３０ｃを係止するととも
にスプリング設定圧を調整する係止板である。

また上述の例では背圧空間７ｂ，７ｃを後部側
板７に形成していたが、前部側板６にオイル溝を
形成するようにしても同様の効果が得られる。こ
の場合、回転軸３に油溜り部１６ｂからの潤滑油
を前部のベアリング９まで導くような給油穴を設
ける等として、前部側板６とロータ２端面との間
へも充分な量の潤滑油が供給されるようにすれば
更に有効である。そして、この場合には連通孔は
勿論前部側板に形成するようにして、フロントハ
ウジング１４の吸入冷媒通路部分と背圧空間とを
連通するようにする。

また、上述した実施例ではベーン４は４枚備え
た圧縮機を示したが、ベーン４の数は４枚以外で
あつてもよいことは勿論である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明圧縮機の一実施例を示す断面図
で、第２図の−矢視断面に沿う形状を示す。
第２図は第１図の−矢視断面図、第３図は第
２図の−矢視正面図、第４図は第２図の連通
孔部分を拡大して示す断面図、第５図ないし第９
図はそれぞれ本発明圧縮機の他の例の要部を示す
断面図である。 １……ハウジング、２……ロータ、２ａ……ベ
ーン溝、４……ベーン、６，７……ハウジング側
板、７ｂ，７ｃ……オイル溝、７ｅ……連通孔、
１４，１６……側部ハウジング。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 筒状のハウジングと、このハウジング内に回
   転自在に配設されたロータと、このロータの端部
   に所定の微小間〓を介して配設されたハウジング
   側板と、このロータに形成されたベーン溝内に摺
   動自在に保持された複数のベーンとを備え、前記
   ハウジング、ハウジング側板、ロータ、およびベ
   ーンによつて形成されるシリンダ室の容積変動に
   よつて潤滑油を含む気冷媒の圧縮を行う回転圧縮
   機において、前記ハウジング側板の前記シリンダ
   室側の面であつて少なくとも前記シリンダ室が容
   積増加する位置における前記ベーン溝底部と対向
   する部位に背圧空間を設けて、この背圧空間内に
   潤滑油を含む所定圧の流体を保持し、この潤滑油
   を含む所定圧の流体により前記ベーンを前記ベー
   ン溝底部より前記ハウジング側に押圧付勢し、か
   つ前記背圧空間を形成したハウジング側板の外方
   に気冷媒通路をなす側部ハウジングを配設し、更
   にこの側部ハウジングの前記冷媒通路と前記背圧
   空間とを連通する連通手段を設けたことを特徴と
   する回転圧縮機。 ２ 前記連通手段内には、前記側部ハウジング内
   圧力と前記背圧空間内圧力との差圧が所定圧以下
   の時連通手段を開き、前記側部ハウジング内圧力
   が前記背圧空間内圧力より所定圧以上高い時には
   連通手段を閉じる弁が配設されていることを特徴
   とする特許請求の範囲第１項記載の回転圧縮機。