JPS6330880B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は、レーザ光の照射により光学的に情報
の記録を行なう情報記録部材に係り、更に詳細に
は、防塵、防傷、防食、高感度化の観点から、有
機高分子保護膜を記録媒体上に設け、長期間安定
な記録、再生、追加記録を可能にした光記録部材
に関する。 従来、この種の情報記録部材は第１図に示すよ
うにガラス又はプラスチツクの基板１上にTeや
Bi、Mn等の記録媒体２を蒸着したものが基本で
あるが、ゴミの付着防止や取扱い中に記録媒体２
を傷つけないようにするため、かつ、記録媒体２
が空気中の水蒸気や酸素等により酸化されるのを
防ぐため、最近では第２図に示すようにこの上に
透明な有機の保護膜３を設けることが考えられて
いる。 この有機の保護膜は、Bi、Be、Si等の半金属
元素の酸化物からなる無機薄膜を保護膜とした場
合に比べ、一般に防食性は劣るものの、(1)記録媒
体の書き込み感度をあまり低下させない、(2)保護
膜の膜厚調整により保護膜上に付着した塵のため
に生ずる書き込み読み出しの際の情報の欠落をな
くすることができる、等の利点がある。 そのため、特開昭51−75523号公報は有機高分
子フイルムを接着剤によりないしは熱圧着により
記録媒体上にラミネートした記録部材が述べられ
ている。しかし、このような記録部材は、レーザ
ーをあて書き込みを行なう際、記録媒体の蒸発ガ
スの行き場がないため、書き込みに多くのレーザ
ーパワーを要し、また記録ビツトの形状に乱れを
生ずる。 また、塗料用樹脂を保護膜として、溶媒に溶か
し塗布することも試みられているが、このような
記録部材も種々の欠点をもつている。例えば、ポ
リ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタ
ン、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂等を溶
液にしてロールコーター、スピンナー、アプリケ
ーター等で記録媒体上に塗布して保護膜とするわ
けであるが、基板がプラスチツクの場合、溶媒の
選択が限られる。また基板を溶解しない溶媒を用
いたとしても、記録媒体２にクラツクや流動現象
がほんの一部ではあるが発生する。またこれら溶
液タイプの樹脂はスピンナー等で面精度良く塗布
することが難しく、保護膜側から書き込み、読み
とりをすることが困難である。さらに、塗布後の
乾燥時に溶媒の揮発による小さな穴が多数発生す
るため記録媒体２の耐食性に限度がある。 そこで、本発明者らは、紫外線硬化型塗料のよ
うな無溶剤タイプの塗料を保護膜とすべく鋭意研
究の結果、不飽和カルボン酸で変性されたエポキ
シ樹脂をベースとして含有する紫外線硬化型塗料
による硬化膜を保護膜として用いることにより、
耐食性、耐湿性に優れ、かつＳ／Ｎ比の高い高寿
命、高感度の情報記録部材が得られることを見出
した。 ここで、不飽和カルボン酸としては、アクリル
酸またはメタクリル酸あるいは炭素数５以上の長
鎖不飽和脂肪酸等を用い得る。また紫外線硬化型
塗料による硬化膜を、軟質膜を下地としてこれに
硬化膜を積ねた２層構造とすることも有効であ
る。 第３図、第４図は本発明の記録部材の構成例を
示すので、１１はガラス、プラスチツク等の基
板、１２はTe、Bi、Mn等の記録媒体、１３が不
飽和カルボン酸で変性されたエポキシ樹脂をベー
スレジンとして含有する紫外線硬化型塗料の硬化
膜による保護膜である。第４図では保護膜１３を
軟質膜１３₁と硬質膜１３₂とから構成している。 一般に、紫外線硬化型塗料は、感光性オリゴマ
ーであるベースレジンと光重合開始剤、反応性希
釈剤、および重合禁止剤からなり立つているが、
本発明者の実験により、ベースレジンとして不飽
和カルボン酸で変性されたエポキシ樹脂を用いる
と、記録部材に対してすぐれた保護膜特性を示す
ことがわかつたものである。すなわち該塗料は、
一般に光硬化型塗料についても言えることである
が溶媒を用いないため、塗布後、膜が自由表面に
なつてから紫外線を照射して硬化させることがで
き、従つて面精度良く硬化させることができると
共に金属簿膜の記録媒体が溶媒により変化するこ
とがないため、優れたＳ／Ｎ比およびエラー率を
もつ保護膜つき記録部材が得られる。エラー率と
は、記録媒体に生じたピンホール欠陥および、保
護膜の凹凸等による光学的変調をドロツプアウト
ノイズとして見た場合のドロツプアウトの発生確
率を言う。また、紫外線硬化型塗料を用いること
により、高温熱処理を施すことなく保護膜を単時
間に硬化させることができるので、製造歩留り及
びスループツトの向上をはかり得る。一方、耐湿
性の試験からも該塗料は長寿命の記録部材の保護
膜材料であることがわかつた。これは、(1)溶媒が
含まれていないため、溶媒の揮発による小さな穴
の発生が全く無く空気中の酸素、水蒸気等酸化性
気体の通過が遮られている、(2)不飽和カルボン酸
で変性されたエポキシ樹脂をベースレジンとして
塗料に含有されることにより、塗膜と記録媒体た
る金属膜との密着性が向上されている、(3)変性用
不飽和カルボン酸が長鎖の不飽和脂肪酸である場
合には得られた塗膜の熱履歴、湿度履歴によるひ
ずみが特に少ないため、これでおおわれた記録媒
体が、物理的に非常に安定である、等によるもの
と思われる。また、該記録部材の感度を挙げるた
めには、塗料の含有成分の組成比を変え保護膜を
軟質にすれば良いが、軟質層と硬質層との２層構
造からなる保護膜にすることにより高感度化と耐
傷性共にすぐれた記録部材が得られる。以下、実
施例でもつて詳細に説明する。 実施例 １ 紫外線硬化型塗料のベースレジンとしてエポキ
シリアクリレート20部、反応性希釈剤として１，
６−ヘキサンジオールジアクリレート30部、トリ
メチロールプロパントリアクリレート40部、光重
合開始剤として、ベンゾフエノン７部、アセトフ
エノン３部とを混合調製した。得られた紫外線硬
化型塗料（）をスピンナーでTeを蒸着したア
クリル基板上に塗布し紫外線照射で硬化し、20μ
ｍの保護膜付き記録部材を作成した。紫外線照射
は、80W／cmの集光型紫外線ランプ３本の下を５
ｍ／minのスピードで試料を通過させる条件で行
なつた。この記録部材の保護膜の面精度は非常に
優れ、また顕微鏡観察では塗料を塗布したときの
記録媒体の変化も全く見られなかつた。そのた
め、この記録媒体の保護膜側からHe−Neレーザ
ーを当て、読みとりの際のノイズを調べたところ
非常に小さく（Ｓ／Ｎ比40dB）、また書き込みを
10ｍＷ、500n secで可能であり高感度記録媒体で
あつた。この記録部材を温度50℃、湿度90％の恒
温恒湿槽に15時間入れて耐湿性の加速試験を行な
つても記録媒体Teの酸化及び保護膜のブリスタ
ー現象も見られなかつた。加速試験前後でのエラ
ー率の増大も殆ど見られなかつた。これは、この
塗膜の金属との密着性が非常に優れており、また
透湿率含水率がかなり低いためと思われる。 実施例 ２ 実施例１で調製した紫外線硬化型塗料の成分の
うちエポキシアクリレートを60部に、１，６−ヘ
キサンジオールジアクリレートを10部に、トリメ
チロールプロパントリアクリレートを20部に変え
た塗料を調製し、これを紫外線硬化型塗料（）
とする。Teを蒸着したアクリル基板上にこの塗
料（）をスピンナーで塗布し実施例１と同様に
紫外線照射で硬化させ10μｍ厚の保護膜を作成し
た。塗膜の硬度は、鉛筆硬度でＢであつた。この
保護膜の上にさらに紫外線硬化型塗料（）をス
ピンナーで塗布、その後紫外線照射で硬化させ合
わせて20μｍ厚の二層保護膜を作成した。上層の
保護膜の硬度は、鉛筆硬度でＨであつた。この記
録部材も保護膜の面精度が優れ、かつ保護膜塗布
による記録媒体Teの変化も見られず、He−Ne
レーザーでの読みとりの際のノイズも同様に小さ
く（Ｓ／Ｎ比40dB）、初期エラー率でも2.8×10^-4
とかなり小さかつた。書き込み感度は実施例１よ
りもさらに優れ、６ｍＷ、500n secで可能であつ
た。これは、二層保護膜にして、記録媒体Teと
接する層を軟質膜にしたためと思われる。この記
録部材は、加速試験結果から、実施例１と同様に
耐湿性にも優れていた。 実施例 ３ 実施例１の紫外線硬化型塗料の成分のうちエポ
キシアクリレートをオレイン酸変性エポキシ樹脂
に変えた（組成比は同じ）塗料を調製して、同様
に記録し媒体の保護膜として検討した結果、耐湿
性のすぐれた長寿命光記録媒体用保護膜であるこ
とがわかつた。 比較例 １ 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の酢酸ブチル
溶液（電気化学工業社製デンカラツク31K）をス
ピナーでTeを蒸着したアクリル基板上に塗布し、
室温乾燥後80℃で２時間ベーキングを行ない、
20μｍ厚の保護膜付き記録部材を作成した。この
保護膜の面精度は実施例１、２に比べ劣つてお
り、また記録媒体Teの一部が溶媒により劣化し
ていることが顕微鏡観察からわかつた。そのため
と思われるが、保護膜からHe−Neレーザーを当
てて読みとりを行う際のノイズは、Ｓ／Ｎ比
20dBと高く、加速試験前のエラー率にしても、
3.1×10^-3と高かつた。一方、加速試験による記
録部材の劣化も著しかつた。 比較例 ２ 紫外線硬化型塗料のベースレジンとしてポリエ
ステルアクリレートを30部、反応性希釈剤として
ネオペンチルグリコールジアクリレートを20部、
２−エチルヘキシルアクリレートを10部、光重合
開始剤として２，２−ジエトキシアセトフエノン
を1.0部混合調製した。得られた紫外線硬化型塗
料をTe蒸着アクリル基板上に塗布硬化させた。
得られた記録部材の保護膜の膜厚は20μｍであつ
た。実施例１と同様にノイズを調べたところ非常
に小さく（Ｓ／Ｎ比約40dB）、また加速試験前の
エラー率も低かつた。ところが、実施例１と同様
の加速試験を行なつたところ記録媒体Teの酸化、
保護膜のブリスター現象が著しく、エラー率の増
大も著しかつた。これは保護膜の含水率が高くか
つ、記録媒体の金属簿膜との密着性が悪いためと
思われる。 以上の実施例、比較例の結果をまとめて下表に
示す。

【表】 以上のように本発明によれば、不飽和カルボン
酸で変性されたエポキシ樹脂をベースとして含有
する紫外線硬化型塗料による硬化膜を保護膜とす
ることにより、耐食性、耐湿性に優れ、Ｓ／Ｎ比
が高く、長寿命、高感度の情報記録部材を提供す
ることができる。 なお、本発明において、記録媒体を被着する基
板はデイスク状のものに限らず、テープ状であつ
てもよい。またレーザ光による情報書込みの態様
は、記録媒体に情報に応じて凹部あるいは孔部を
形成するものに限らず、レーザ光照射による屈折
率や反射率の変化を利用するものでもよい。更
に、凹部、孔部による記録を行つた場合には、レ
ーザ光を利用した情報読出しの他、電気的な容量
変化を利用した読出し方式を採用することも可能
である。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は従来の情報記録部材を示
す図、第３図および第４図はそれぞれ本発明の実
施例の情報記録部材を示す図である。 １１……基板、１２……記録媒体、１３……保
護膜、１３₁……軟質膜、１３₂……硬質膜。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 所定の基板上に被着された記録媒体にレーザ
   光の照射により情報を記録する情報記録部材にお
   いて、前記記録媒体の表面保護膜として、不飽和
   カルボン酸で変性されたエポキシ樹脂をベースと
   して含有する紫外線硬化型塗料による硬化膜を用
   いたことを特徴とする情報記録部材。 ２ 不飽和カルボン酸はアクリル酸またはメタク
   リル酸である特許請求の範囲第１項記載の情報記
   録部材。 ３ 不飽和カルボン酸は炭素数５以上の長鎖不飽
   和脂肪酸である特許請求の範囲第１項記載の情報
   記録部材。 ４ 保護膜は軟質膜を下地としてその上に硬質膜
   を積ねた２層構造である特許請求の範囲第１項記
   載の情報記録部材。