JPH10141335A - 釘 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 短くても大きい保持力を持つ特開平８−１７
０６２０記載の開脚釘よりも、さらに短くて大きい保持
力を持つ強力開脚釘、及び尖脚釘（普通釘）よりも短く
ても大きい保持力を持つ強力尖脚釘を提供する。 【構成】 釘の先端内孔内または先端外周凹部内に接着
剤を封入して置き、釘の打込時にその接着剤が釘と打込
相手部材の接触面に浸透拡散して両者を接着固定するよ
うに構成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は各種の圧縮成形ボードと
か合板のような打込相手部材（以下これを特異相手部材
という）を貫通する長い普通釘でも効きの悪い特異相手
部材に打ち込んだ場合に、取付部材と相手部材の合計厚
さより短くても、大きい保持力（引抜抵抗力）を持つ特
開平８−１７０６２０記載の釘（以下これを普通開脚釘
という）の先端部改変により普通開脚釘よりもさらに保
持力を大きくした強力開脚釘（請求項１乃至３）、及び
尖脚釘（以下これを普通尖脚釘という）の先端部改変に
より保持力を普通尖脚釘よりも大幅に大きくして、上記
のような特異相手部材にも有効な強力尖脚釘（請求項
４、５）に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来は上記のような特異相手部材用の適
当な打込釘がなく、保持力を大きくするため相手部材を
貫通して先端が裏側へ突き抜ける長さの木ねじを使用し
ていたが、最近開発された上記の普通開脚釘の出現によ
って、かなりの範囲の特異相手部材に対する保持力不足
が解消された。しかしまだ下記のように特異相手部材の
種類と厚さによっては問題が残っている。また従来の普
通尖脚釘は特異相手部材用としては保持力が極めて小さ
く、相手部材を貫通して先端が裏側へ突き抜ける長さで
もまだ保持力が足りないので全く使用出来なかった。

【０００３】相手部材が強度の弱い軟質木材、軟質合
板、軟質圧縮ボード、発泡コンクリートボードの場合に
は普通開脚釘でも保持力が不足することがある。セメ
ント系成形ボードのように相手部材が硬質で強度が強く
ても厚さが薄い場合は、必要な保持力をもつ普通開脚釘
の長さでは相手部材の裏面が円錐状に破損するので、そ
の破損を防ぐため普通改脚釘の長さを短くすると、保持
力不足の問題があるので、この普通開脚釘の用途がかな
り限定される。勿論普通尖脚釘の場合は普通開脚釘よ
りもさらに長い釘でないと保持力が不足するので、薄い
特異相手部材用としては到底使用不可能である。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明は普通開脚釘
の上記問題点を解消し、特異相手部材の硬軟とか厚薄に
も関係なく、広範囲の用途に使用出来る強力開脚釘を提
供すると共に、従来は全く使用出来なかった普通尖脚釘
の保持力も強化して、一部の特異相手部材打込用として
提供することを課題とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】開脚釘の筒状開脚部内ま
たは尖脚釘の脚部外周に設けた切込溝部内に予め接着剤
を薄膜で閉じ込めて置き、釘を特異相手部材に打ち込ん
だ瞬間に薄膜が破損し、薄膜内部の接着剤が強力開脚釘
の開脚部の内外または強力尖脚釘の脚部と特異相手部材
の各接触面に浸透拡散して、強力開脚釘または強力尖脚
釘と特異相手部材を強力に接着することにより保持力を
高めると同時に、軟かくて薄い特異相手部材の内部組織
に接着剤の一部が浸透拡散して軟弱な特異相手部材の材
質を局部的に補強してその破損を防止する。

【０００６】本発明の強力開脚釘並びに強力尖脚釘の接
着剤封入方法としては、開脚釘の先端筒状部内に接着
剤を封入したカプセルを挿入する方法、開脚釘の先端
筒状部または切割溝内、または尖脚釘の先端部外周の切
込溝内に先ず接着剤を充填した後、各接着剤充填部の外
側に薄膜を作って接着剤を封じ込む方法、開脚釘の先
端筒状部または切割溝内、または尖脚釘の先端部に設け
た切込溝内に外気の成分ガスと反応固化する接着剤を充
填した後、その釘をその成分ガス濃度の高い雰囲気中を
通過させて接着剤表面に薄膜を作る方法等がある。

【０００７】

【作用】上記のように加工された本発明強力開脚釘を相
手部材に打込むと、特開平８−１７０６２０で詳述した
普通開脚釘と全く同様に、釘の先端部が相手部材中で分
裂開脚するが、先端筒状部または切割溝内に薄膜で密封
されている接着剤が、釘先端が打ち込まれる瞬間に***
した脚部の内外面と相手部材の接触面並びに相手部材の
微小な隙間に浸透拡散し、釘の先端部と相手部材とが強
固に接着一体化されるので、普通開脚釘よりも大きい保
持力を発揮する。また本発明強力尖脚釘を相手部材に打
込んだ場合も同様に、釘の先端部切込溝内に充填されて
薄膜で封じ込まれている接着剤の浸透拡散により、釘の
先端部と相手部材とが接着されて普通尖脚釘よりも大き
い保持力を持つことになる。

【０００８】なお本発明の強力開脚釘並びに強力尖脚釘
の場合は、どちらも釘と相手部材との接触面に弾力性が
ある接着剤が介在して強固に一体化されているので、単
に静的保持力が高いだけでなく動的保持力も大きく、衝
撃・振動等に対する抵抗力が充分あり、地震等の繰り返
し振動に対しても安全性が高い。

【０００９】

【実施例】以下図１、図２によって本発明の実施例を説
明する。図１は本発明の強力開脚釘（請求項１乃至
３）、図２は本発明の強力尖脚釘（請求項４、５）の夫
々一例の作用を示すものである。各図において、Ｐは既
に釘の打込穴が明けてある取付部材、Ｑは釘打込相手部
材である。図１（ａ）及び図２（ａ）は釘を相手部材Ｑ
に打込む直前の状態であり、図１（ｂ）及び図２（ｂ）
は釘を半分程度相手部材Ｑに打込んだ時の状態、図１
（ｃ）及び図２（ｃ）は釘を完全に相手部材Ｑに打込ん
で取付部材の固定が完了した状態である。

【００１０】図１（ａ）において、本発明の強力開脚釘
の軸部２先端の脚部３内部には、接着剤４が薄膜５で封
入されている。釘の頭部１を手打ハンマーまたは空圧ハ
ンマー等で叩いて、釘を図１（ｂ）のように相手部材Ｑ
に打込むと、接着剤４の内圧が瞬間的に上昇し、接着剤
４を封じ込んでいる薄膜５が破れると同時に、接着剤４
が釘の脚部３と相手部材Ｑの接触面並びに取付部材Ｐの
相互間隙間を通り、図示６のように各部へ浸透拡散す
る。

【００１１】さらに図１（ｃ）のように釘を相手部材Ｑ
に完全に打込むと、特開平８−１７０６２０の釘の開脚
原理により、脚部３の開脚と同時に図１（ｂ）の脚部３
内に一部残っていた接着剤４が、図示６のようにあらゆ
る隙間に浸透拡散して、釘と相手部材Ｑ並びに取付材Ｐ
の相互間接触面及び隙間は完全に接着剤が充填されるの
で、接着剤の硬化に伴う接着によって強化された開脚釘
の大きい保持力と、接着剤４による取付部材Ｐと相手部
材Ｑの直接接着力との相乗効果により、取付部材Ｐは相
手部材Ｑに強力確実に固定される。

【００１２】次に図２の本発明の強力尖脚釘の場合に
は、軸部２先端の脚部３に切込まれた複数の溝の凹部に
接着剤４が薄膜５で閉じ込められている。この強力尖脚
釘を打込んだ場合も、前記の強力開脚釘と同様に薄膜５
が破れて接着剤４が図示６のように各部へ浸透拡散し、
釘と相手部材Ｑ、取付部材Ｐの相互間接触面及び隙間は
完全に接着剤が充填されて三者は相互に接着される。

【００１３】試作実験結果によれば、厚さ約２０ｍｍの
セメント系耐火ボードに対し、直径４ｍｍ×首下長２２
ｍｍ保持力１００Ｋｇ程度の普通開脚釘と同寸法の本発
明強力開脚釘では２００Ｋｇ以上の保持力が得られ、釘
の有効打込深さを５０％以下にカット可能となったの
で、最近市場に出現した厚さ１５ｍｍの軽量低価格の薄
手特異相手部材にも充分対応が可能となった。また従来
の軟質合板に対する普通尖脚釘の保持力が僅かに１５Ｋ
ｇ程度であるのに対し、本発明強力尖脚釘は５０Ｋｇ以
上を示したので、従来の普通尖脚釘が使用出来なかった
特異相手部材にも対応可能な強力尖脚釘が実現出来た。

【００１４】本発明の釘に封じ込まれる接着剤の種類と
しては、流動性のある接着剤であって、外気に触れない
ように薄膜で封入可能なものであれば良い。その実例と
しては、市販の合成ゴム系（クロロプレンゴム、シリコ
ーンゴム等）、合成樹脂系（塩化ビニル、酢酸ビニル、
イソシアネート、シアノアクリレート等）その他多種多
様の接着剤が使用可能である。なお変性シリコーンゴ
ム、シアノアクリレートは、水分子と反応して凝固する
接着剤である。接着剤封入用薄膜剤としては、パラフィ
ン系、エチレン系等各種の合成樹脂が使用出来る。これ
らの接着剤と薄膜剤の組合わせは釘の使用箇所に応じて
自由に選択すれば良い。

【００１５】

【発明の効果】以上に詳述したことから明白なように、
本発明は普通の釘（普通尖脚釘）では効きにくい圧縮成
形ボード等の特異相手部材に打込んで、効果的に使用出
来る釘として開発された特開平８−１７０６２０による
開脚釘（普通開脚釘）の保持力を一段と強化し、軽量低
価格の普及版として最近出現した軟質薄手の新型特異相
手部材（新型耐火ボード）に対応する強力開脚釘を提供
する一方、従来は特異相手部材用としては全く使用出来
なかった普通尖脚釘の保持力を大幅に上回る強力尖脚釘
も実現出来るので、従来は安直な打込釘その他のファス
ナーが見当たらず作業性の悪いネジ釘を使用していた建
築業界において、作業能率向上と品質確保に大きい効果
が期待出来る。特に最近の阪神淡路大震災その他各地で
続発している地震で、被害の大きかった木造建物の倒壊
防止並びに火災の発生予防と延焼防止対策用の耐火ボー
ドの使用容易化に大きく役立つと思われる。

【００１６】さらに上記実施例の説明図１，２で明らか
なように、本発明の強力開脚釘または強力尖脚釘を使用
した時は、釘とその周辺の取付部材及び相手部材の三者
が相互に接着剤で隙間なく接着され、釘打部分は自動的
に完全な水密構造となるので、特殊な防水処理等の付加
工事をしなくても従来の釘打構造部の雨水侵入等の欠点
は完全に解消される。これは建築物の外壁部、屋根等の
防水対策上特筆できる大きい利点であり、本発明釘の大
きい保持力と相俟って、台風時の暴風雨による雨漏りと
屋根瓦の飛散防止に一石二鳥の大きい効果が期待出来る
上、従来は対策困難であった耳障りな屋内の床鳴り（床
板打付の釘と根太の間のギーギーという摩擦音）が、本
発明強力尖脚釘を使用すれば、釘と根太間に接着剤が自
動的に充填されるので、床鳴り現象は完全に解消すると
いう効果もある。

【図面の簡単な説明】

【図１】は、本発明の強力開脚釘の実施例の作用説明図
であって、（ａ）図は、釘の打込み直前の状態、（ｂ）
図は、釘を相手部材に一部打込んだ状態、（ｃ）図は、
釘を相手部材に打込完了状態を夫々示す部分縦断面図で
ある。

【図２】は、本発明の強力尖脚釘の作用説明図であっ
て、（ａ）図は、釘の打込み直前の状態、（ｂ）図は、
釘を相手部材に一部打込んだ状態、（ｃ）図は、釘を相
手部材に打込を終了した状態を夫々示す部分縦断面図で
ある。

【符号の説明】

１…釘の頭部 ２…釘の軸部 ３…釘の脚部 ４…封入接着剤 ５…接着剤封入薄膜 ６…釘打込みによる接着剤の浸透拡散状態 Ｐ…釘による取付部材 Ｑ…釘の打込相手部材

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 釘の打込時に釘の先端筒状部に設けた切
   込部が***して放射状に開く開脚釘の先端筒状部内に、
   接着剤を封入した薄膜カプセルを予め挿入して置くこと
   により、釘の打込時に発生する衝撃圧力でそのカプセル
   が瞬間的に破壊して、カプセル内に封入された接着剤が
   流出し、釘と打込相手部材の接触面に浸透拡散して両者
   を接着するようにした釘。
2. 【請求項２】 釘の打込時に釘の先端筒状部に設けた切
   込部が***して放射状に開くか、または先端部に設けた
   切割部が放射状に開く開脚釘の先端筒状部内または先端
   切割部内に接着剤を充填し、その接着剤外面を薄膜コー
   ティングして内部の接着剤を封じ込めて置くことによ
   り、釘の打込時に発生する衝撃圧力でその薄膜コーティ
   ングが瞬間的に破壊して、その内部に封じ込まれていた
   接着剤が流出し、釘と打込相手部材の接触面に浸透拡散
   して両者を接着するようにした釘。
3. 【請求項３】 釘の打込時に釘の先端筒状部に設けた切
   込部が***して放射状に開くか、または先端部に設けた
   切割部が放射状に開く開脚釘の先端筒状部内または先端
   切割部内に、外気の成分ガス（例えば水蒸気）と反応し
   て固化する接着剤を充填し、その接着剤表面が外気と反
   応して生成した薄膜で内部の未反応接着剤を封じ込めて
   置くことにより、釘の打込時に発生する衝撃圧力でその
   薄膜が瞬間的に破壊して、その内部に封じ込まれていた
   接着剤が流出し、釘と打込相手部材の接触面に浸透拡散
   後、その接触面に付着している外気の成分ガスと反応し
   て両者を接着するようにした釘。
4. 【請求項４】 釘の脚部先端が尖っている尖脚釘の脚部
   外周に設けた切込溝の凹部内に接着剤を充填し、その接
   着剤外面を薄膜コーティングして内部の接着剤を封じ込
   めて置くことにより、釘の打込時に発生する衝撃圧力で
   その薄膜コーティングが瞬間的に破壊して、その内部に
   封じ込まれていた接着剤が流出し、釘と打込相手部材の
   接触面に浸透拡散して両者を接着するようにした釘。
5. 【請求項５】 釘の脚部先端が尖っている尖脚釘の脚部
   外周に設けた切込溝の凹部内に、外気の成分ガス（例え
   ば水蒸気）と反応して固化する接着剤を充填し、その接
   着剤表面が外気と反応して生成した薄膜で内部の未反応
   接着剤を封じ込めて置くことにより、釘の打込時に発生
   する衝撃圧力でその薄膜が瞬間的に破壊して、その内部
   に封じ込まれていた接着剤が流出し、釘と打込相手部材
   の接触面に浸透拡散後、その接触面に付着している外気
   の成分ガスと反応して両者を接着するようにした釘。