JPH0790865B2 - プルオープン缶蓋および缶 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、食品を缶詰にするため
の缶の蓋に関するものであり、特に、蓋の表面に引き環
を一体に成形したポリエチレン（ＰＥ）射出被覆層を有
する構造とした、安全で便利な開けやすい食品缶の蓋
（以下、「プルオープン缶蓋」と称する）に関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】従来、一般に市販されているプルオープ
ン式の食品缶の蓋は、ほとんどが１枚のアルミ製蓋に引
き環をつけ、この引き環を強く引くことによって、アル
ミ製の蓋を引き裂いて開ける構成になっている。こうし
た従来のプルオープン式の食品缶の蓋は、アルミの蓋が
１枚構造であるため、厚さが比較的あり、引き環の構成
にはだいたい２種類ある。

【０００３】その１つは、蓋に形成した引き裂き凹線の
内側に引き環を固着し、引き環を垂直に上方に強く引く
ことによって、蓋を引き裂き凹線に沿って引き裂く構成
となっている。

【０００４】もう１つの構成は、てこ式であり、引き環
を上方に引き上げると缶の他端が下方に押圧されて蓋の
口を開かせてから、引続き上方に引っ張り、それからア
ルミ蓋を環状の引き裂き凹線に沿って引き裂く構成とな
っている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
プルオープン缶蓋には、次のような欠点がある。

【０００６】（１） 蓋を引き裂くとき、微量のアルミ
の切屑が、缶内の食品の中に落ちる。このアルミの切屑
は、微量といえども危険性があり、食品に混入すること
は好ましくない。

【０００７】（２） 引き裂いたアルミの蓋の周囲は非
常に鋭く、使用者の指を傷つけやすい。

【０００８】（３） アルミ製の蓋は、銀白色の単一色
で美的感覚に欠ける。しかも、缶体の色彩に合わせて着
色を施すことが難しく、コスト高になる。

【０００９】（４） アルミ製の蓋は、引き裂くのに比
較的大きな力を要し、引き環もかなり強い材質を使用し
なければならず、アルミ蓋に材料とは異なった材料で作
製して、それを蓋に鋲接しなければならず、１回で成形
することはできないので、製造コストが高くなる。

【００１０】（５） 缶を開けるときは、先に爪で引き
環をこじあげて、引き環や蓋の鋲接点の周囲に穴があい
てから、引続き力強く引っ張って缶蓋が開けられる。し
かし、時には、引き環が先に折れたり鋲接が外れたりす
ることがあり、そういうことが起きると蓋を引き開ける
ことができなくなる。

【００１１】本発明の目的の一つは、上述の問題を解決
し、食品缶の蓋を引き裂いて開けるときに、鉄やアルミ
などの切屑が缶内の食品の中に持ち込まない、プルオー
プン缶蓋を提供することにある。

【００１２】本発明のもう１つの目的は、蓋を引き裂い
て開けるときに、指を傷つけることのない、安全で使い
やすいプルオープン缶蓋を提供することにある。

【００１３】本発明のさらにもう１つの目的は、引き環
と蓋の表が同一弾性のポリエチレン材料で一体に作ら
れ、引き環が先に折れることのない、プルオープン缶蓋
を提供することにある。

【００１４】この他、本発明の目的には、表面に缶体の
色に合わせて着色が容易にできる、プルオープン缶蓋を
提供することもある。

【００１５】

【課題を解決するための手段】本発明のプルオープン缶
蓋は、内周に鉤状のカーリング部を形成した環状の内フ
ランジと段部を介して内フランジの外周側に延在する外
フランジとを有する金属板製の環状の枠と、上面と下面
にそれぞれ樹脂膜を形成したアルミ箔より構成され枠の
中央開放部を封じるとともに環状の枠の内フランジと外
フランジのそれぞれの下面に密着される蓋体と、蓋体の
上面およひ枠の内フランジの上面にプラスチックを射出
成形して形成しそのプラスチックの一部が枠の鉤状カー
リング部に溶入して係着するとともに蓋体の上面に接着
して蓋体を枠に結合させてなるとともに引き裂き凹線を
形成した被覆層と、被覆層の引き裂き凹線の一端部に被
覆層と同一材質のプラスチックで被覆層と一体に成形さ
れてなる引き環とを備え、枠の外フランジの下面には凹
部が形成され、この凹部にシール部材としての合成ゴム
を塗布している。

【００１６】

【００１７】また、好ましくは、外周に色彩を施し、こ
の色彩に合わせて着色されるとよい。

【００１８】

【作用】本発明によれば、アルミ箔とブリキ板製の蓋の
枠とをポリエチレン被覆層を射出成形することによって
結合し、ポリエチレン被覆層に引き環を一体に成形した
プルオープン缶蓋を提供することができる。

【００１９】また、本発明によれば、アルミ箔の表面に
ポリエチレンを射出成形することによって形成された被
覆層を有し、それを缶蓋の枠と結合させたプルオープン
缶蓋を提供することができる。

【００２０】本発明のプルオープン缶蓋は、上述の特徴
や利点の他に、プラスチック材料を枠体の周辺凹部に被
覆して、枠体と缶体の結合部が気密に封止めされるよう
にしたので、酸素や水分の浸入を完全に防止し、缶内食
品を３年間変質させずに保存することを可能にし、品質
保証をさらに確実にする効果がある。

【００２１】

【実施例】本発明のプルオープン缶蓋は、図２に示すよ
うに、次に説明する３つの部材、すなわち、蓋体３、枠
４およびプラスチック被覆層５により構成される。

【００２２】（１） 蓋体３ この蓋体３は、皿状に成形されたアルミ箔３Ａの上面と
下面に樹脂層３Ｂ、３Ｃ（厚さ約３０〜４０μｍ）を被
覆してなる３層の積層シートで構成され、アルミ箔３Ａ
の周辺は段部Ｓを形成して外フランジ３Ｄを形成してい
る。

【００２３】（２） 枠４ この枠４は、錫メッキ鉄板（ブリキ板）などを環状に打
ち抜いて形成したもので、空間部６を有し、段部Ｈで外
フランジＦ１と内フランジＦ２を形成し、外フランジＦ
１には凹部１３を、内フランジＦ２には線に沿って上方
向に外向きに曲げ回した鉤形のカーリング部７が形成さ
れている。そして、前記凹部１３には、シール用の合成
ゴム１４が塗布されている。

【００２４】段部Ｈと凹部１３には、前記の蓋体３の外
フランジ３Ｄが凹部１３に密着し、蓋体３の本体部の外
周部が、枠４の内フランジＦ２の下面に密接し得るよう
に形成されている。

【００２５】（３） プラスチック被覆層５ この被覆体は、前記蓋体３を前記枠４の下面に当接させ
た状態で、枠４の上面にインサート成形（ＩＮＳＥＲＴ
ＭＯＬＤＩＮＧ）で成形してなるものである。図には
分解図で表示したが、この被覆層は単独で成形されるも
のではなく、蓋体３と枠４を成形金型に入れて一体に射
出成形してなる。そして、この被覆層５には、引き裂き
凹線をつけるとともに、引き裂き凹線の始発点に、引き
裂き用の環を被覆体と一体に成形してなる。

【００２６】次に、本発明のプルオープン缶蓋の構成を
詳細に説明する。図１は、本発明の缶の一実施例であ
る。図１を参照して、この缶は、プルオープン缶蓋２
が、缶体１の上端にカシメによって結合されている。

【００２７】図２は、本発明の一実施例のプルオープン
缶蓋の３つの主要部分の分解図である。図２を参照し
て、３はアルミ箔３Ａの上下表面にレジン層３Ｂ，３Ｃ
を薄く塗った３層構成の蓋体、４は円い枠、５は射出成
形にて一体に形成されたプラスチック被覆層、６は円い
枠の中空部分、Ｆ２は内フランジ、Ｆ１は外フランジ、
Ｈは段部、７は枠４の内フランジＦ２の内周縁を上方と
外方に曲げ返して形成された鉤状のカーリング部、８は
プラスチック被覆層５上に一体に成形してなる引き環、
９はプラスチック被覆層５の上、引き環８から被覆層円
周に沿って延在する引き裂き凹線である。

【００２８】図中プラスチック被覆層５は、蓋体３と一
体に成形したもので、別に単独に成形したものではな
い。この図中で分解図にしているのは、各層の構造を表
示するためにしたのであって、３件それぞれ別々に単独
で製造してから、あとで組合せて作製したことを表示し
ているのではない（蓋体３と枠４は予め先に単独で製造
する）。

【００２９】本実施例のプルオープン缶蓋の製作につい
て、図３〜図５の順序で説明する。まず、図３（ａ）に
おいて、１１は錫メッキ鉄板で、これをパンチプレスで
打ち抜いて皿状の缶蓋１２を成形する。缶蓋１２は図に
おいて半分だけを表示し、断面の形状がわかりやすいよ
うに表示している。

【００３０】図３（ｂ）において、缶蓋１２の周縁に段
部Ｈを形成して、ほぼＺ字型に似た外フランジを作製
し、この外フランジＦ１には凹部１３を形成し、シール
材料として合成ゴム１４を塗りつける。なお、図３
（ａ）、図３（ｂ）中の缶蓋１２は、上下方向を逆にし
て表示している。

【００３１】このシール材料１４は、蓋体３と枠４とを
組合せプラスチック被覆層５と一体に成形する場合に、
蓋体３の外フランジ３Ｄを枠４の外フランジＦ１の凹部
１３に接着させるとともに、缶体に蓋を取り付ける際、
シールとしてカシメ部の気密を保つ効果がある。

【００３２】図３（ｃ）は、図３（ｂ）に示す缶蓋１２
の中央部を切り除いてできた環状の円い枠で、中空の部
分６が成形される。

【００３３】図３（ｄ）は図３（ｃ）に示す円い枠にお
いて、環状の内フランジＦ２の外周に段部Ｈを形成し、
そのさらに外側に外フランジＦ１が形成され、内フラン
ジＦ２の内周縁には鉤状のカーリング部７が形成されて
いる。

【００３４】図４は３層構成の蓋体３の形状を示す図
で、アルミ箔層３Ａの上下表面のそれぞれに樹脂を塗布
（３０〜４０μｍ）した膜層３Ｂと３Ｃを有し、周辺部
は段部Ｓを介して外フランジ３Ｄを形成し、上記の枠４
の外フランジＦ１の下面に係合するように形成されてい
る。

【００３５】図５（ａ）は枠４と蓋体３とを重ね合わせ
た状態を示す図で、蓋体３の外周縁３Ｄは、枠４の外フ
ランジＦ１の下面凹部１３に係合する。これを図示しな
い射出成形金型に入れて、ＰＥなどのプラスチックを成
形注入して枠４の上面に被覆層５を形成する。このと
き、射出成形型に注入されたＰＥ溶融体は、前記鉤状の
カーリング部７に溶入して係着するとともに、蓋体３の
上面全面に溶着して、蓋体３と枠４との接着をより完全
にする。また、射出成形型には、引き裂き凹線９を形成
するための突起と、引き環を形成するキャビティを設け
て、引き裂き凹線９を形成した被覆層５（厚さ約０．５
〜１．５ｍｍ）を形成すると同時に、引き環８を被覆層
５と一体に成形する。

【００３６】図６は、本発明のプルオープン缶蓋の一例
の断面図である。図中に拡大された部分で、３Ｂ，３Ｃ
は蓋体３の上下２層の樹脂膜で、３Ａはアルミ箔層、５
は射出成形による被覆層である。

【００３７】図７は、本発明のプルオープン缶蓋が食品
缶上に使用された例を示す図である。図を参照して、缶
蓋を開けるときには、指で引き缶を直接上方に引くと、
被覆層５と蓋体３はそれぞれの引き裂き凹線の端部から
引き裂き凹線に沿って引き裂かれ、蓋体３は容易に開け
られる。そして、アルミ箔が引き裂かれる際に切屑が発
生することはなく、また、切屑が発生したとしても、被
覆層のプラスチックに付着した状態で取り除かれるの
で、食品に混入することはない。

【００３８】

【発明の効果】本発明のプルオープン缶蓋は、非常に容
易に缶蓋を開けることができ、指をけがすることもな
く、鉄やアルミなどの屑が缶内の食品中に落ちることも
なく、プラスチックによって一体に成形された引き環と
蓋面の材質が同じであるので、大量生産が可能であると
ともに、加工製造のコストダウンにつながり、しかも引
き環が容易に切れたり外れたりすることはない。さら
に、プラスチック缶蓋の表面は缶体の色に合わせて多様
に着色することができるので、美的効果を高めることが
でき、また、缶体との結合部を高度の気密に保つ効果が
あるので、新規性、進歩性と実用性を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例のプルオープン缶蓋が、食品
缶に使用された状態を示す図である。

【図２】本発明の一実施例のプルオープン缶蓋の３つの
部分の分解図である。

【図３】本発明のプルオープン缶蓋に使用される枠の製
造工程を示す図である。

【図４】本発明のプルオープン缶蓋に使用される蓋体３
の断面を示す図である。

【図５】（ａ）は図３（ｄ）の枠と図４の蓋体３を重ね
た場合の断面を示す図であり、（ｂ）は被覆層を射出成
形によって図５（ａ）に表わす蓋体３と枠４に形成して
プルオープン缶蓋を完成した図である。

【図６】本発明のプルオープン缶蓋の実施例の断面を示
す図である。

【図７】本発明を食品缶上で使用する状態を示す図であ
り、蓋を開けるとき引き環を引き裂き凹線の端部から引
き裂き、路線に沿って凹んだ痕に沿って蓋を引き離すと
ころを示す図である。

【符号の説明】

２ プルオープン缶蓋 ３ 蓋体 ４ 枠 ５ プラスチック被覆層 ７ カーリング部 ８ 引き環 ９ 引き裂き凹線 なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を示す。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｂ６５Ｄ 17/353

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内周に鉤状のカーリング部を形成した環
   状の内フランジと段部を介して前記内フランジの外周側
   に延在する外フランジとを有する金属板製の環状の枠
   と、 上面と下面にそれぞれ樹脂膜を形成したアルミ箔より構
   成され、前記枠の中央開放部を封じるとともに、前記環
   状の枠の内フランジと外フランジのそれぞれの下面に密
   着される蓋体と、 前記蓋体の上面および枠の内フランジの上面にプラスチ
   ックを射出成形して形成し、そのプラスチックの一部が
   前記枠の前記鉤状カーリング部に溶入して係着するとと
   もに、前記蓋体の上面に接着して蓋体を前記枠に結合さ
   せてなるとともに、引き裂き凹線を形成した被覆層と、 前記被覆層の引き裂き凹線の一端部に、前記被覆層と同
   一材質のプラスチックで被覆層と一体に成形されてなる
   引き環とを備え、 前記枠の外フランジの下面には凹部が形成され、この凹
   部にシール部材としての合成ゴムを塗布した、プルオー
   プン缶蓋。
2. 【請求項２】 前記外周に色彩を施し、この色彩に合わ
   せて着色された、請求項１記載のプルオープン缶蓋を取
   付けた缶。