JPH06116764A - 不凍液組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 内燃機関に使用するアルミニウム合金などの
金属材料類に対して優れた腐食防止効果を有するととも
に毒性や公害問題などのない不凍液組成物を提供する。 【構成】 ケイ酸塩化合物以外の腐食防止剤を添加した
グリコール類を主成分とする不凍液に必須成分としてク
エン酸および／または塩類を０．００５〜０．５重量％
を配合してなることを特徴とする不凍液組成物により上
記目的を達成できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は不凍液組成物に関するも
のであり、更に詳しくは内燃機関に使用するアルミニウ
ム合金などの金属材料類に対して優れた腐食防止効果を
有する不凍液組成物に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】エンジンブロック、シリンダーヘッド、
ラジエータ、ウォータポンプ等は主にアルミニウム合金
や銅および銅合金等の金属材料から成るが、これら金属
材料は冷却液中の水に含まれる腐食性の塩類、あるいは
不凍液に含まれるアルコール類によって腐食を受け易い
ため、前記不凍液には腐食防止剤を添加する必要があっ
た。従来の不凍液中に添加する腐食防止剤として代表的
なものは、英国規格ＢＳ３１５０およびＢＳ３１５１、
ＢＳ３１５２を挙げることができるが、これらはエチレ
ングリコールを基剤とし、ＢＳ３１５０は、燐酸トリエ
タノールアミン塩およびメルカプトベンゾチアゾールの
ナトリウム塩を、ＢＳ３１５１は、安息香酸ナトリウム
および亜硝酸ナトリウムを、ＢＳ３１５２は、硼砂を各
々腐食防止剤として添加するものであった。しかしなが
ら、前記腐食防止剤を単独で添加したものは前記冷却系
統の金属材料に対して満足な腐食防止効果が得られなか
った。

【０００３】従って、これらの腐食防止剤を混合使用し
たり、アミン塩、ケイ酸塩、Ｍｇ・Ｃａ・Ｚｎ等の２価
金属化合物などの新たな腐食防止剤を追加して解決しよ
うとしする提案が多くなされている（特公平１−４０９
１６号公報、特公平２−１４３８５号公報、特公平２−
２８６２５号公報、特公平３−１３５５号公報、特公平
３−５６２７２号公報、特公平４−１４１９３号公報な
ど）。しかし、腐食防止剤としてアミン塩を用いると亜
硝酸塩の存在下では、毒性のあるニトロソアミンを生成
する問題があり、またケイ酸塩は、熱安定性に欠けると
ともにケイ酸塩を添加した不凍液のｐＨが不安定であ
り、他の塩類との共存時には容易にゲル化を起こして本
来の腐食防止効果が低下する欠点がある。また、２価金
属化合物は、燐酸塩および脂肪酸塩の共存時には容易に
不凍液に不溶解な塩を生成して沈殿してしまい、腐食防
止効果が低下するなど他の腐食防止剤との併用による弊
害発生の問題があった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、内燃
機関に使用するアルミニウム合金などの金属材料類に対
して優れた腐食防止効果を有するとともに毒性や公害問
題などのない不凍液組成物を提供することである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者等は上記の点に
鑑み、鋭意研究した結果、ケイ酸塩化合物以外の腐食防
止剤を添加したグリコール類を主成分とする不凍液に、
クエン酸やその塩類を特定量だけ配合することにより上
記の課題を解決できることを見いだして本発明をなすに
至った。本発明の請求項１の発明は、ケイ酸塩化合物以
外の腐食防止剤を添加したグリコール類を主成分とする
不凍液に必須成分としてクエン酸および／またはその塩
類を０．００５〜０．５重量％配合してなることを特徴
とする不凍液組成物である。

【０００６】本発明の請求項２の発明は、該腐食防止剤
が、燐酸塩、アミン塩、ホウ酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、
モリブデン酸塩、タングステン酸塩、安息香酸塩、トリ
アゾール類、チアゾール類、脂肪酸塩およびこれらの混
合物から選択される少なくとも１種であることを特徴と
する請求項１記載の不凍液組成物である。

【０００７】本発明で用いるグリコール類は、エチレン
グリコール、プロピレングリコール、１，３−ブチレン
グリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコ
ール、グリセリン等があるが、その中でも特にエチレン
グリコールあるいはプロピレングリコールが望ましい。

【０００８】本発明で用いる腐食防止剤はケイ酸塩化合
物以外の腐食防止剤である。ケイ酸塩化合物は、それ自
体熱安定性が悪く、ケイ酸塩化合物を添加すると不凍液
のｐＨが不安定となり、また他の塩類との共存時には容
易にゲル化を起こして本来の腐食防止効果が低下するの
で好ましくない。好ましい腐食防止剤としては、燐酸
塩、アミン塩、ホウ酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、モリブデ
ン酸塩、タングステン酸塩、安息香酸塩、トリアゾール
類、チアゾール類、脂肪酸塩およびこれらの混合物から
選択される少なくとも１種を挙げることができる。本発
明で用いる腐食防止剤の具体的例としては通常用いられ
ている公知のものでよく、オルト燐酸、オクタン酸、セ
バシン酸、パラターシャリーブチル安息香酸、安息香酸
ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、メルカプトベン
ゾチアゾールのナトリウム塩、ベンゾトリアゾール、ト
リルトリアゾール、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウ
ム、硼砂、トリエタノールアミン、水酸化カリウムなど
を挙げることができる。

【０００９】本発明においては上記の腐食防止剤の外
に、クエン酸および／またはその塩類を不凍液組成物中
に０．００５〜０．５重量％、好ましくは０．０３〜
０．１重量％、さらに好ましくは０．０４〜０．０６重
量％配合することが肝要である。クエン酸やその塩類以
外の、水酸基を有するか、あるいは水酸基を有しない有
機酸および三塩基有機酸並び二塩基有機酸の添加では、
十分な腐食防止効果が得られない。不凍液中のクエン酸
および／またはその塩類の濃度が０．００５重量％以下
であると腐食による金属材料の重量減量が大きくまた、
金属材料が黒化するなど外観変化があり十分な腐食防止
効果が得られない。また、０．５重量％以上になるとア
ルミニウム鋳物試験片について腐食による重量減量が大
きくなり、また、アルミニウム合金鋳物試験片が黒化す
るなど外観変化があり十分な腐食防止効果が得られな
い。

【００１０】本発明の不凍液組成物には本発明の主旨を
逸脱しない限り消泡剤、染料、苦味剤などの添加剤を添
加しても差し支えない。

【００１１】

【作用】本発明において、ケイ酸塩化合物以外の腐食防
止剤を添加したグリコール類を主成分とする不凍液にク
エン酸やその塩類を特定量添加すると、内燃機関に使用
するアルミニウム合金などの金属材料類に対して優れた
腐食防止効果が得られ、クエン酸やその塩類以外の、水
酸基を有するか、あるいは水酸基を有しない有機酸およ
び三塩基有機酸並び二塩基有機酸の添加では、十分な腐
食防止効果が得られない理由は明確でないが、上記腐食
防止剤、グリコール類および特定量のクエン酸やその塩
類の相乗作用および相互作用によるものと考えられる。

【００１２】

【実施例】以下、本発明の不凍液組成物を実施例により
詳細に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り実施
例によって限定されるものではない。 （実施例１〜８）表１に示した配合で本発明の不凍液組
成物を製造した。そしてＡＳＴＭ Ｄ４３４０−８４
（Ｃｏｒｒｏｓｉｏｎ ｏｆ Ｃａｓｔ Ａｌｕｍｉｎ
ｕｍ Ａｌｌｏｙｓ ｉｎ Ｅｎｇｉｎｅ Ｃｏｏｌａ
ｎｔ Ｕｎｄｅｒ Ｈｅａｔ−Ｒｅｊｅｃｔｉｎｇ Ｃ
ｏｎｄｉｔｉｏｎｓ）に規定されているアルミニウム合
金伝熱面腐食試験法およびＪＩＳ Ｋ ２２３４−１９
８７不凍液７．４金属腐食性試験法に従って試験した。
上記ＡＳＴＭの試験項目と試験条件、および規格値を表
２に示す。上記ＪＩＳの試験項目と試験条件、および規
格値を表３に示す。試験結果を表４および表５にまとめ
て示す。

【００１３】

【表１】

【００１４】

【表２】

【００１５】

【表３】

【００１６】

【表４】

【００１７】

【表５】

【００１８】（比較例１〜１８）比較のために表６およ
び表７に示した配合で不凍液組成物を製造した。そして
実施例と同様にして上記ＡＳＴＭと上記ＪＩＳの試験を
行った。試験結果を表８〜表１１にまとめて示す。

【００１９】

【表６】

【００２０】

【表７】

【００２１】

【表８】

【００２２】

【表９】

【００２３】

【表１０】

【００２４】

【表１１】

【００２５】比較例１〜２、比較例４〜１８において
は、ＡＳＴＭ試験のアルミ伝熱面試験片の重量変化量が
全て１．０ｍｇ／ｃｍ² を超えて規格に適合せず、比較
例３では、ＡＳＴＭ試験のアルミ伝熱面試験片の重量変
化量には問題がないが、ＪＩＳ金属腐食試験において外
観および重量変化が不合格となる。クエン酸を不凍液中
に０．００５重量％以下（比較例２の場合０．００１重
量％）では、ＡＳＴＭ試験でアルミ伝熱面試験片の重量
減量が−１．４３ｍｇ／ｃｍ² と大きく、また、黒化変
色もあり十分な腐食防止効果が得られない。またクエン
酸を不凍液中に０．５重量％以上（比較例３の場合１．
０重量％）ではＪＩＳ金属腐食試験ではアルミニウム鋳
物試験片の重量減量が−０．３６ｍｇ／ｃｍ² と規格以
上に大きくなり、外観も不合格となった。また、比較例
１０〜１８の結果からクエン酸以外の有機酸および三塩
基有機酸並びに二塩基有機酸の添加では、ＡＳＴＭ試験
のアルミ伝熱面腐食試験で試験片の重量変化量が全て
１．０ｍｇ／ｃｍ³ を超え良好な結果が得られなかっ
た。また、比較例１９では、ＡＳＴＭ試験とＪＩＳ金属
腐食試験においては合格するものの、試料保存中（約３
０日後）にゲルが発生してしまい、商品価値がなくなっ
た。比較例２０では、ＡＳＴＭ試験では試験後の液の外
観も含めて問題がなかったが、ＪＩＳ金属腐食試験後の
液にゲルの発生が認められた。

【００２６】これに対して、実施例１〜８の本発明の不
凍液組成物は、アミンタイプ、硼砂タイプ、芳香族カル
ボン酸タイプ、脂肪酸タイプ、亜硝酸タイプなどの腐食
防止剤を用い、それにクエン酸あるいはその塩類を添加
したものであり、ＡＳＴＭ試験のアルミニウム伝熱面腐
食試験での試験片の重量変化が極めて少なく、かつ試験
片の外観変化も少なく、更に不凍液組成物自体の外観変
化もなく腐食防止効果に優れた不凍液組成物であること
が判る。

【００２７】

【発明の効果】本発明の不凍液組成物は、ケイ酸塩化合
物以外の腐食防止剤を添加したグリコール類を主成分と
する不凍液にクエン酸やその塩類が特定量配合されてい
るために、自動車エンジンの冷却系の金属部分、とくに
アルミ合金などの金属材料類の伝熱面部分に優れた腐食
防止効果を有しており、今後更に進むであろう自動車部
品のアルミ化およびそれに伴う燃費の節約等に対して十
分に対応できることが期待できるので、その産業上の利
用価値は大きい。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ケイ酸塩化合物以外の腐食防止剤を添加
   したグリコール類を主成分とする不凍液に必須成分とし
   てクエン酸および／またはその塩類を０．００５〜０．
   ５重量％配合してなることを特徴とする不凍液組成物。
2. 【請求項２】 該腐食防止剤が、燐酸塩、アミン塩、ホ
   ウ酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、モリブデン酸塩、タングス
   テン酸塩、安息香酸塩、トリアゾール類、チアゾール
   類、脂肪酸塩およびこれらの混合物から選択される少な
   くとも１種であることを特徴とする請求項１記載の不凍
   液組成物。