JPH0885782A - 不凍液組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】安価で、優れた腐食抑制作用をもつ不凍液組成
物を提供する 【構成】エチレングリコール、プロピレングリコール、
もしくはジエチレングリコール、またはそれらの混合物
を主成分とする不凍液組成物であって、１）ドデカン二
酸またはそのナトリウム塩もしくはカリウム塩を０．５
から５ｗｔ％と、ｐ−ｔｅｒｔブチル安息香酸またはそ
のナトリウム塩もしくはカリウム塩を０．１から６ｗｔ
％と、トリアゾール類を０．０５から１．０ｗｔ％とを
含有し、さらに２）ケイ酸塩、モリブデン酸塩、硝酸
塩、安息香酸塩、チアゾール塩からなる群の内少なくと
も一つを含有し、３）アミン塩、リン酸塩、ホウ酸塩、
亜硝酸塩を含有しないことを特徴とする不凍液組成物。 【効果】内燃機関に使用される金属の腐食抑制力に優
れ、かつドデカン二酸を単独で使用するよりも、少ない
添加量で優れた腐食抑制力を有する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、主に自動車エンジンな
どの内燃機関の冷却液に使用される不凍液組成物に関
し、特に冷却系を構成する金属の腐食防止機能を有する
不凍液組成物に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車エンジンのような内燃機関の冷却
系には、アルミニウムやアルミニウム合金、鋳鉄、鋼
鉄、黄銅、はんだ、銅などが用いられ、その系内を冷却
媒体である不凍液組成物が流れる。

【０００３】その不凍液組成物は、従来からアルコール
類やグリコール類が凝固点を降下させる成分として使用
されている。アルコール類やグリコール類は、腐食抑制
作用がないばかりでなく、実際の使用において酸素など
により酸化され、その酸化物が冷却系内の上記構成金属
を腐食する。そのために、種々の腐食抑制剤が添加され
ている。

【０００４】一般に使用される腐食抑制剤としては、リ
ン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸
塩、モリブデン酸塩、安息香酸塩、ケイ酸塩、ベンゾト
リアゾール、トリルトリアゾール、トリエタノールアミ
ン塩やメルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩があ
り、これらの中から適宜選定し、腐食の抑制を行ってい
る。

【０００５】しかし、これら腐食抑制剤のいくつかは、
以下の問題があり、その使用が好ましくない。

【０００６】例えば、リン酸塩は優れたｐＨ緩衝剤であ
り、鉄やアルミニウム系金属に対し腐食抑制剤となる
が、リン酸塩を含む水が河川、海水に流れ込むと、富栄
養化して、生息している生物に悪影響を及ぼし、環境悪
化が問題となっている今日、その使用が著しく限定され
る。

【０００７】また、トリエタノールアミン塩も鉄、アル
ミニウム金属に対し優れた腐食抑制剤となっているが、
亜硝酸と共存した場合、反応して発癌性を有するという
問題があった。ホウ酸塩もまた優れた緩衝剤である一方
で、アルミニウム系金属を腐食するという問題があり、
アルミニウム系金属が多用化されてきている近年の内燃
機関に対して使用できない。

【０００８】このような問題を解決するために、少なく
とも７個以上の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸塩
２種を併用する不凍液が開発され、これはアルミニウム
系金属の腐食に有効なものである（特開平２−１８２７
８２号）。さらに、他の脂肪族ジカルボン酸よりも高い
腐食抑制作用を有するドデカン二酸を含む不凍液組成物
が開発され（特開昭６３−１９０１８４号を参照）、
鉄、アルミニウム系金属の腐食の抑制がはかられた。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】しかし、ドデカン二酸
は高価であり、これを含む不凍液も高価となり、その使
用が限定されていた。

【００１０】そこで、本願発明の目的は、ドデカン二酸
を含むが、安価で、優れた腐食抑制作用をもつ不凍液組
成物を提供することである。

【００１１】さらに、本願発明の他の目的は、トデカン
二酸を単独で使用するよりより優れた腐食抑制作用をも
つ上記不凍液組成物を提供することである。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本願
発明は、エチレングリコール、プロピレングリコール、
もしくはジエチレングリコール、またはこれらの混合物
を主成分とする不凍液組成物であって、１）ドデカン二
酸またはそのナトリウム塩もしくはカリウム塩の内の一
種以上を０．５から５ｗｔ％と、ｐ−ｔｅｒｔブチル安
息香酸またはそのナトリウム塩もしくはカリウム塩の内
の一種以上を０．１から６ｗｔ％と、トリアゾール類を
０．０５から１．０ｗｔ％とを含有し、さらに２）ケイ
酸塩、モリブデン酸塩、硝酸塩、安息香酸塩、チアゾー
ル塩からなる群の内少なくとも一つを含有し、３）アミ
ン塩、リン酸塩、ホウ酸塩、亜硝酸塩を含有しないこ
と、を特徴とする。

【００１３】ドデカン二酸またはそのナトリウム塩もし
くはカリウム塩の内の少なくとも一種の添加量を０．５
から４ｗｔ％としたのは、０．５ｗｔ％未満の添加量で
は十分な妨食性を得ることができず、また５ｗｔ％を越
えて添加しても腐食抑制効果が上がらず、経済的でない
からである。同様の理由で、ｐ−ｔｅｒｔブチル安息香
酸、そのナトリウム塩、カリウム塩の添加量、トリアゾ
ール類の添加量を上記の範囲としている。

【００１４】

【作用】本発明の組成物の主成分のエチレングリコー
ル、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ま
たはこれらの混合物は冷却水の凍結温度を低下させる作
用を有し、その中に含有するドデカン二酸とｐ−ｔｅｒ
ｔブチル安息香酸は、鉄、アルミニウム系金属の腐食を
抑制する。また、トリアゾール類は、銅、アルミニウム
系金属の腐食を抑制する。

【００１５】ケイ酸塩あるいは硝酸塩の添加によりアル
ミニウム系金属の腐食抑制能力がさらに向上し、モリブ
デン酸塩あるいは安息香酸の添加により鉄、アルミニウ
ム系金属の腐食抑制能力がさらに向上する。このとき、
添加量分だけ、同じ抑制効果を保ちつつ、ドデカン二酸
およびｐ−ｔｅｒｔブチル安息香酸の添加量をおさえる
こともできる。

【００１６】また、チアゾール類を添加することによ
り、銅系金属、はんだの腐食抑制能力がさらに向上す
る。

【００１７】前記したように、不凍液組成物にドデカン
二酸を利用することは知られているものの、本願発明者
は、ドデカン二酸を単独で使用するよりも、ｐ−ｔｅｒ
ｔブチル安息香酸とを併用することで、それぞれから得
られる腐食抑制作用以上の優れた抑制作用を得ることを
見いだし、同時に併用することで、高価なドデカン二酸
の量を減らすことができること見いだしたのである。

【００１８】

【実施例】以下、実施例および比較例により具体的に説
明するが、本願発明の冷却液組成物は、通常２０から６
０ｖｏｌ％に希釈されて使用される。

【００１９】なお、以下表において実施例を説明する
が、これにより、本発明の組成物が限定されることはな
い。また以下にいう％は特に定義しない限りｗｔ％を意
味する。

【００２０】本願発明にしたがった実施例１乃至６の構
成を表１に示す。実施例１から３は、ドデカン二酸、ｐ
−ｔｅｒｔブチル安息香酸、ベンゾトリアゾール、硝酸
ソーダ、水酸化カリウム、エチレングリコールより構成
されるが、実施例４はさらにメタケイ酸ソーダを含む。
なお、本願発明の不凍液組成物に、さらに消泡剤、着色
剤などを含めることができる。

【００２１】

【表１】

【００２２】比較例１乃至６の構成を表２に示す。比較
例１および２は、ドデカン二酸、ベンゾトリアゾール、
硝酸ソーダ、水酸化カリウム、エチレングリコールから
構成され、比較例３および４は、ｐ−ｔｅｒｔブチル安
息香酸、ベンゾトリアゾール、硝酸ソーダ、水酸化ナト
リウム、エチレングリコールから構成され、比較例５お
よび６は、ｐ−ｔｅｒｔブチル安息香酸、アゼライン
酸、ベンゾトリアゾール、硝酸ソーダ、水酸化ナトリウ
ム、エチレングリコールから構成される。

【００２３】

【表２】

【００２４】これらの実施例１乃至４および比較例１乃
至６についてＪＩＳ Ｋ2234金属腐食性試験に基づく試
験を行った。試験終了後の試験片の質量変化および外観
変化、試験後のｐＨ変化を表３、４に示す。

【００２５】

【表３】

【００２６】

【表４】

【００２７】表３に示すように、実施例１から４は、ア
ルミニウム鋳物、鋳鉄、鋼、黄銅、はんだ、銅のいずれ
の金属に対しても優れた防腐性能をもっている。

【００２８】また、表４に示すように、アルミニウム鋳
物に関し、ドデカン二酸、ｐ−ｔｅｒｔブチル安息香酸
はその含有量が増加すると、その腐食抑制作用は高まる
ものであり、したがって、それらの量を減らすと腐食抑
制作用は減少することが予想される。

【００２９】しかし、表３と表４とを比較すると明らか
なように、ドデカン二酸とｐ−ｔｅｒｔブチル安息香酸
とを併存させたとき、それぞれの含有量が減少したにも
拘わらず、ドデカン二酸またはｐ−ｔｅｒｔブチル安息
香酸単独のものよりもドデカン二酸およびｐ−ｔｅｒｔ
ブチル安息香酸の両方を含むものの方が優れた腐食抑制
作用をもつことがわかる。

【００３０】欧州特許第242900号明細書には、芳香族
酸、好ましくはｐ−ｔｅｒｔブチル安息香酸とアゼライ
ン酸とを含む不凍液が開示され、その中で腐食抑制性能
が優れていると説明されている。しかし、比較例５、６
と実施例１から４との比較例から明らかなように、その
ような事実は確認されず、ドデカン酸とｐ−ｔｅｒｔブ
チル安息香酸の併用の方が優れていることがわかった。

【００３１】

【効果】本発明の不凍液組成物により、以下の効果が得
られる。

【００３２】内燃機関に使用される金属の腐食抑制力に
優れ、かつドデカン二酸を単独で使用するよりも、少な
い添加量で優れた腐食抑制力を有するために、安価なも
のを提供できる。

【００３３】また、アミン、リン酸塩、亜硝酸塩を含有
していないため、発癌性物質であるニトロソアミンの生
成や、河川水などの富栄養化により公害の心配もない。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｃ１０Ｍ 105:14 125:20 125:26 125:10 129:42 129:50 135:36） Ｃ１０Ｎ 10:02 30:08 40:00 Ｚ

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】エチレングリコール、プロピレングリコー
   ル、もしくはジエチレングリコール、またはこれらの混
   合物を主成分とする不凍液組成物であって、 １）ドデカン二酸またはそのナトリウム塩もしくはカリ
   ウム塩の内の一種以上を０．５から５ｗｔ％と、 ｐ−ｔｅｒｔブチル安息香酸またはそのナトリウム塩も
   しくはカリウム塩の内の一種以上を０．１から６ｗｔ％
   と、 トリアゾール類を０．０５から１．０ｗｔ％とを含有
   し、さらに ２）ケイ酸塩、モリブデン酸塩、硝酸塩、安息香酸塩、
   チアゾール塩からなる群の内少なくとも一つを含有し、 ３）アミン塩、リン酸塩、ホウ酸塩、亜硝酸塩を含有し
   ないこと、を特徴とする不凍液組成物。
2. 【請求項２】前記トリアゾール類は、ベンゾトリアゾー
   ル、トリルトリアゾールまたはこれらの混合物である、
   請求項１に記載の不凍液組成物。