JPH0423651B2 - - Google Patents

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JPH0423651B2
JPH0423651B2 JP60175650A JP17565085A JPH0423651B2 JP H0423651 B2 JPH0423651 B2 JP H0423651B2 JP 60175650 A JP60175650 A JP 60175650A JP 17565085 A JP17565085 A JP 17565085A JP H0423651 B2 JPH0423651 B2 JP H0423651B2
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carbon fiber
composite material
fiber
strength
resin
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Akimitsu Matsuzaki
Toshio Muraki
Akira Takeo
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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、従来公知の炭素繊維を補強繊維とす
る複合材料に比較して軽量で強度の優れた炭素繊
維強化複合材料に関するものである。
[従来の技術] 従来、炭素繊維を用いた複合材料は、その優れ
た比強度、比弾性率を生かしてコルフシヤフトや
釣竿等のプレミア・スポーツ用途、および航空機
等の構造材料用途に広く使用されている。しか
し、近年、航空機の一次構造材や宇宙構造材の用
途並びに各種産業用途等で複合材料を使用し、よ
り一層の軽量化を図るという観点から、従来の複
合材料よりも軽量ではるかに優れた強度を有する
複合材料の出現が強く望まれている。
複合材料の強度向上に関しては、これまでいく
つかの提案がなされている。その一つは炭素繊維
自身の強度および伸度の向上に関するものであ
り、例えば炭素繊維そのものの強度を改良するた
めに、炭素繊維を高濃度の硫酸、硝酸、燐酸など
の無機酸中に長時間浸漬して該繊維表面をエツチ
ングし、次いで高温の不活性雰囲気中で加熱処理
して前記無機酸処理によつて発生した繊維表面の
官能基を除去する方法が提案されており(例え
ば、特開昭54−59497号公報、特公昭52−35796号
公報)、特開昭54−59497号公報によれば、このよ
うなエツチング処理によつて、炭素繊維の製造工
程で形成された該繊維表面の傷が除去され、それ
によつて炭素繊維の機械的強度が向上するとされ
ている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、炭
素繊維の機械的強度が向上しても、必ずしも複合
材料の引張強度向上に寄与しないことがわかつ
た。
複合材料の強度を向上させる他の一つの方法と
して、マトリツクス樹脂に高伸度樹脂を使用する
方法が提案されている(例えば、特開昭59−
217721号公報)。しかし、これらの技術によつて
確かに複合材料の強度は向上するものの強度向上
には限度がある。
複合材料を軽量化する方法としては、複合材料
中の樹脂含有率を減らす方法、すなわち、複合材
料の高VF化がある。しかしながら、本発明者ら
が検討によれば、従来一般的に使用されている断
面が円形でない炭素繊維では、VFを70%のレベ
ルにするとVFが60%の時に比べて炭素繊維自身
の強度利用率が著しく低下するのである。
[発明が解決しようとする問題点] 本発明者らは、軽量で強度の優れた炭素繊維強
化複合材料について鋭意検討した結果、次の発明
に到達した。特に、炭素繊維自身の強度が従来の
炭素繊維に比較して優れており、しかも、高VF
においても強度利用率の低下がない炭素繊維強化
複合材料を提供することを目的とする。
[問題を解決するための手段] 本発明は、上記問題点を解決するために次の構
成を有する。すなわち、 樹脂含浸ストランドの引張強度が600Kg/mm2
上で、断面形状が実質的に円形の炭素繊維と、引
張破断伸度が3%以上のマトリツクス樹脂で構成
され、かつ複合材料中の繊維体積分率(VF)が
70%の時の引張強度が370Kg/mm2以上である一方
向炭素繊維強化高強度複合材料である。
すなわち、まず、本発明の軽量かつ強度の優れ
た一方向炭素繊維強化複合材料は、高強度で円形
断面を持つ炭素繊維と高伸度のマトリツクス樹脂
で構成されている。
本発明で使用される炭素繊維は、樹脂含浸スト
ランドの引張強度が600Kg/mm2以上のものである。
この引張強度が600Kg/mm2未満では複合材料とし
た場合に十分な引張強度を発現することができな
い。
また、この炭素繊維は断面形状が実質的に円形
のものである。複合材料を軽量化するためには、
複合材料中の樹脂含有率を低下させる、すなわち
高VF化する方法がある。従来、複合材料は通常
VFが60%以下の領域で使用されることが多く、
さらに軽量化するためにはVF65%以上にするこ
とが必要であるが、炭素繊維により高VF化する
と強度利用率が著しく低下するものと、変らない
ものがあることを本発明者らは見い出した。本発
明で使用される断面形状が円形の炭素繊維では、
VFが70%になつても炭素繊維の強度利用率は低
下しないが、従来一般的に使用されてきた断面が
円形でない炭素繊維ではVFが65%以上になると
強度利用率が低下して複合材料としての強度も向
上しないため、軽量化には活かせない。具体的に
は断面の長径と短径の比(断面変形度)が好まし
くは1.4以下であり、より好ましくは1.2以下であ
る。1.1以下は特に好ましい。真円に近くなれば
高VF時の強度利用率の低下が小さくなり、今ま
で予想できなかつたような高強度複合材料の製造
が可能になる。
本発明で使用される好ましい炭素繊維は、繊維
の中心部と対比して結晶の完全性が実質的に同一
レベルにある表層部を有し、かつ該表層部は前記
繊維中心部に対比して結晶の完全性が小である超
薄最外層を有し、さらに熱分解性有機物含有量が
0.05〜0.5重量%の範囲内およびX線電子分光法
(ESCA)によつて検出される炭素繊維表面の官
能基量(O1s/C1s)比が0.1〜0.4の範囲内である
炭素繊維である。
ここで、結晶の完全性とは、炭素繊維を構成す
る結晶の寸法および炭素網面配列の秩序性によつ
て決定される特性であり、結晶の寸法がより大き
く、かつ炭素網面配列の秩序性がより大きい場合
に、結晶の完全性がより大きいといわれている。
ここで、繊維の中心部、表層部および該表層部
の超薄最外層の結晶の完全性は、それぞれ透過型
電子線回折(TEM)によつて測定され、具体的
には後述するように、繊維中心部の結晶の完全性
を基準として繊維表層部および該表層部の超薄最
外層の結晶の完全性の程度を対比した場合に、該
表層部は繊維中心部と対比して実質的に同一レベ
ルの結晶の完全性を示し、該表層部の超薄最外層
は繊維中心部に対比して小さい結晶の完全性を示
すことをいう。後述する測定法から、該表層部は
炭素繊維の表面から平均約1.5ミクロン領域の層
であり、該超薄最外層は繊維の表面から平均約
0.2ミクロン、より好ましくは0.1ミクロン以下の
領域の層をいう。
また、繊維中心部と対比して実質的に同一レベ
ルの結晶の完全性とは、繊維中心部における結晶
の完全性に対する該表層部の結晶の完全性の比率
がほぼ同一もしくは大であることを意味し、数値
で表示すれば、約0.98以上、好ましくは1.0以上
であることをいう。
さらに、本発明で使用される好ましい炭素繊維
の熱分解性有機物含有量は、炭素繊維の表面およ
び内部に存在する化学的官能基の量、特に主とし
て前記の超薄最外層の化学的官能基の量を示す1
尺度であり、この量が前記0.05〜0.5重量%、好
ましくは0.1〜0.4重量%、より好ましくは0.15〜
0.30重量%の範囲内である。この量が0.05重量%
よりも少なくなると、炭素繊維と樹脂との接着性
が低下し過ぎるため好ましくないし、他方、0.5
重量%よりも多くなると、不活性化が不充分にな
り、複合材料の引張強度が低下する場合があり、
好ましくない。
そして、このような超薄最外層を有する炭素繊
維は、X線電子分光法によつて検出される官能基
量(O1s/C1s)比が好ましくは0.1〜0.4、より好
ましくは0.20〜0.25の範囲である。すなわち、不
活性化された炭素繊維の表層部の官能基量が上記
範囲外の場合は、引張強度の高い複合材料は得ら
れない場合がある。
本発明で使用される好ましい炭素繊維は、この
ような構造的特徴を有し、そうすることによつて
その機械的強度を複合材料の強度として、より大
きく発現させることができる。このような繊維構
造は、炭素繊維構造の製造工程で炭素繊維に形成
された物理的歪みが緩和され、かつ炭素繊維表面
の構造的欠陥が修復されていることを示し、この
ことが該炭素繊維の有する機械的強度を複合材料
の機械的強度に反映させる上で有利な役割を果た
していると考えられる。
以上のように、樹脂含浸ストランドの引張強度
が600Kg/mm2以上の断面形状が実質的に円形であ
り、かつ好ましい構造的特徴を持つ炭素繊維は、
従来公知の前述した電解処理または濃厚無機酸に
よるエツチング処理−不活性化処理によつては得
られ難く、以下で説明する方法により得ることが
好ましい。
すなわち、まず炭素繊維を硝酸イオンを必須成
分として含有する高温の電解質水溶液中で電解処
理する、すなわち、電機・化学的に酸化すること
によつて炭素繊維の結晶の完全性をできる限り損
なうことなく、繊維の極く限られた最表面、すな
わち超薄最外層のみを選択的に非晶化、すなわち
炭素繊維の中心部に対比して結晶の完全性が小さ
く、脱官能基の容易な層を形成せしめ、次いで不
活性化雰囲気中で加熱処理して、該酸化によつて
該超薄最外層領域に形成された官能基を実質的に
不活性化、すなわち脱官能基する、より具体的に
は、前記熱分解性有機物の量が0.05〜0.5重量%
およびX線電子分光法によつて検出される
(O1s/C1s)比が約0.1〜0.4の範囲内になるよう
に不活性化処理して、繊維の超薄最外層に形成さ
れた官能基を実質的に除去する方法により、本発
明で使用される炭素繊維は得られ易い。
本発明で使用されるマトリツクス樹脂は、JIS
−K7113に規定された試験法に準じて測定した引
張破断伸度が3.0%以上の樹脂である。この引張
破断伸度が3.0%に達しない脆い樹脂を使用する
と、本発明が目的とする高強度複合材料、特に高
VFにおいても強度利用率の低下しない複合材料
を得ることができない。
かかるマトリツクス樹脂としては、エポキシ樹
脂、ビスマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹
脂、ビニルエステル樹脂などを使用することがで
きるが、中でもエポキシ樹脂が最も好ましい。
本発明で使用される好ましいエポキシ樹脂は、
下記するポリエポキシドと硬化剤および/または
硬化触媒を組合せることにより調整される。
ポリエポキシドは、分子中に平均して一個より
多いエポキシ基を有する化合物であり、このエポ
キシ基は末端基として存在するものであつてもよ
く、また分子内部にあつてもよい。ポリエポキシ
ドは、飽和あるいは不飽和の脂肪族、環状脂肪
族、芳香族または複素環式化合物であつてもよ
く、更にハロゲン原子、水酸基、エーテル基等を
含む化合物であつてもよく、例えば、ビスフエノ
ールA、FおよびSのグリシジル化合物、クレゾ
ールノボラツクまたはフエノールノボラツクのグ
リシジル化合物、芳香族アミンのグリシジル化合
物および環状脂肪族エポキシ樹脂などがある。
そのようなポリエポキシドの具体例には、1,
4−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゼ
ン、4,4′−ビス(2,3−エポキシプロポキ
シ)ジフエニルエーテルがある。
ポリエポキシドの別の例として多価フエノール
のグリシジル化合物がある。これに使用し得る多
価フエノールとしては、例えばレゾルシノール、
カテコール、ヒドロキノン、2,2−ビス(4−
ヒドロキシフエニル)プロパン(ビスフエノール
A)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフエニル)
ブタン、ビス(4−ヒドロキシフエニル)スルホ
ン(ビスフエノールS)、ビス(4−ヒドロキシ
フエニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフエ
ニル)メタン、3,9−ビス(3−メトキシ、4
−ヒドロキシフエニル)−2,4,8,10−テト
ラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、更にハロ
ゲン含有フエノールとして2,2−ビス(4−ヒ
ドロキシテトラブロムフエニル)プロパンなどが
含まれる。
ポリエポキシドの別の例として、多価アルコー
ルのグリシジル化合物がある。この目的に使用し
得るアルコールとしては、例えばグリセロール、
エチレングリコール、ペンタエリスルトール、
2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)
プロパンなどが挙げられる。
内部エポキシ基を有するポリエポキシドの例と
して、4−(1,2−エポキシエチル)−1,2−
エポキシシクロヘキサン、ビス(2,3−エポキ
シシクロペンチル)エーテル、3,4−エポキシ
シクロヘキシルメチル−(3,4−エポキシ)シ
クロヘキサンカルボキシレートなどが挙げられ
る。
ポリエポキシドの別の例として、芳香族アミン
のグリシジル化合物がある。この目的に使用し得
る芳香族アミンとしては、ジアミノジフエニルメ
タン、メタキシリレンジアミン、m−アミノフエ
ノール、P−アミノフエノールなどがある。
これらのポリエポキシドのうち、ビスフエノー
ルAのジグリシジルエーテル、クレゾールノボラ
ツクあるいはフエノールノボラツクのグリシジル
化合物、ジアミノジフエニルメタンのグリシジル
化合物およびアミノフエノールのグリシジル化合
物が好ましく使用される。
本発明で使用される硬化剤としては、メタフエ
ニレンジアミン、ジアミノジフエニルメタン、ジ
アミノジフエニルスルホン、メタあるいはパラア
ミノ安息香酸のジグリコールエステルなどの芳香
族アミン系硬化剤、ジシアンジアミドおよびビス
(パラヒドロキシフエニル)スルホンで代表され
るフエノール系硬化剤などが挙げられる。また、
三フツ化ホウ素・アミン錯体、イミダゾール化合
物、トルエンジイソシアネートとジメチルアミン
の付加反応によつて得られる尿素化合物などの硬
化触媒を単独で、あるいは上記硬化剤と併用して
使用することができる。
本発明で使用される引張破断伸度が3%以上の
エポキシ樹脂は上記したポリエポキシドの単独あ
るいは複数を、上記した硬化剤あるいは硬化触媒
の単独あるいは複数と組合せて調製することがで
きる。これらの組合せにより目的とする物性を有
するエポキシ樹脂を調製することは当該業界にお
ける周知の手法で実施することができる。このよ
うなエポキシ樹脂の典型的な例は実施例において
明らかにされる。
本発明で使用されるエポキシ樹脂は、マトリツ
クス樹脂の粘度を適度に高めて成形性を向上させ
たり、複合材料の靭性を高める目的で熱可塑性樹
脂あるいはエラストマーを含有するものがしばし
ば好ましく使用される。含有される樹脂として、
ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリエステ
ル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ
エーテルイミド、ポリアリレート、ポリアミドイ
ミド、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステ
ルおよびニトリルゴムなどを挙げることができ
る。
次に、本発明の一方向炭素繊維強化複合材料
は、複合材料中の繊維体積分率(VF)が70%の
時の引張強度が370Kg/mm2以上の物性を具備する
ものである。この引張強度が370Kg/mm2未満では
複合材料とした場合に、十分な引張強度を得るこ
とができない。
かかる複合材料の製造法は、上述した高強度で
円形断面を持つ炭素繊維と高伸度のマトリツクス
樹脂を用いる限り特に制限がなく、当業界で公知
の種々の方法が用いられる。その典型的な例とし
ては、炭素繊維糸条に未硬化のマトリツクス樹脂
を含浸させて中間体(プリプレグ)とし、それを
数枚〜数十枚積層した後、オートクレーブあるい
は熱プレスにより硬化して製造する方法がある。
上述した炭素繊維の諸特性は、次の方法により
測定される。
透過型電子線回折法(TEM) 炭素繊維をその繊維軸方向に引揃えて常温硬化
型のエポキシ樹脂に包埋し、硬化する。硬化した
炭素繊維包埋ブロツクを包埋された炭素繊維の少
なくとも2〜3本が露出するようにトリミングし
た後、ダイヤモンドナイフを装備したミクロトー
ムを用いて、厚さ150〜200オングストローム
(Å)の超薄切片を作製する。この超薄切片を金
で蒸着したマイクログリド上に載置して、高分解
能電子顕微鏡を用いて電子線回折を行なう。この
場合に、炭素繊維の内外構造差を検出するため
に、制限視野電子線回折法を用いて、特性部分か
らの電子線回折像を調べる。
測定条件としては、日立(株)製の電子顕微鏡H−
800型(透過型)を用い、加速電圧200KV、直径
0.2ミクロンの制限視野絞りで、超薄切片のエツ
ジ(edge)からコア(core)までの電子線回折
写真を撮影する。
超薄最外層は、繊維表面から約0.1ミクロン深
さの部分、正確には、直径0.2ミクロンの制限視
野絞りの半分が繊維最外層にかかり、他の半分は
繊維からはずれている状態で撮影する。また、表
層部は繊維表面から約1.5ミクロン以内の部分の
電子線回折写真を用い、繊維中心部は、ほぼ繊維
の中心近傍の電子線回折写真を用いて、それら電
子線回折像の(002)についてそれぞれ赤道線方
向の回折強度の走査プロフイルを作製し、これら
の走査プロフイルにつき、半価巾を求める。半価
巾の逆数が結晶の完全性の尺度になるから、繊維
の中心部に対する超薄最外層および表層部の半価
巾の逆数の比をそれぞれ求めた。
熱分解性有機物量 約20mgの炭素繊維(サンプル)を溶剤で洗浄
し、繊維表面に付着するサイジングなどを除去
し、柳本製作所製のCHNコーダー・MT−3型
装置を用いて、次の条件で測定した。
CHNコーダーの試料燃焼炉を950℃、酸化炉を
850℃、還元炉を550℃にそれぞれ昇温し、ヘリウ
ムを180ml/分の速度で流し、上記洗浄した炭素
繊維を精密に秤量した後、前記試料燃焼炉に入れ
る。
吸水ポンプを用いて該試料燃焼炉中の分解ガス
の一部を約5分間、酸化炉および還元炉を経由し
て吸引した後、CHNコーダーの熱伝導度型検出
器によつてCO2量として定量し、検量によつて熱
分解製有機物量を試料に対するC(wt%)として
求める。この測定法の特徴は、通常のC、H、N
元素分析装置において酸素ガスを流さないで、ヘ
リウムガスのみの雰囲気下で炭素繊維を加熱する
ことで、炭素繊維中のCO、CO2、CH4などの熱
分解性有機物量を定量できることである。
X線光電子分光法(ESCA) 具体的な装置として、国際電機(株)製のモデル
ES−200を用いた。
炭素繊維(サンプル)を溶剤で洗浄し、サイジ
ングなどの表面付着物を除去した後、該炭素繊維
をカツトし、銅製の試料支持台上に拡げて並べた
後、X線源としてAlKα1、2を用い、試料チヤ
ンバー中を1:10E(−8)Torrに保つ。そして
運動エネルギーが955eVのO1sピーク面積および
1202eVのC1sピーク面積の比から表面酸素原子/
表面炭素原子(O1s/C1s)の比を求める。
樹脂含浸ストランド強度測定法 JIS−R−7601に規定されている樹脂含浸スト
ランド試験法に準じて測定した。この場合に次の
樹脂処方並びに硬化条件を用いて試験した。
樹脂処方: ●“チツソノツクス”221 100部 ●3−フツ化硼素モノエチルアミン(BF3MEA)
3部 ●アセトン 4部 硬化条件:130℃、30分 各10回のストランドの試験値の平均値をもつて
示した。
[作用] 本発明では、特定の炭素繊維と特定の樹脂を組
合せることにより、軽量で強度の優れた複合材料
が取得できる。理由は明らかでないが、炭素繊維
が断面円形の場合に限つて、高強度、高VFの特
徴が活かせるのである。
[実施例] 以下の実施例によつて本発明を更に詳細に説明
する。以下の例で各成分の量は重量部を表わす。
実施例 1 アクリロニトリル(AN)99.5モル%、イタコ
ン酸0.5モル%からなる固有粘度[η]が1.80の
AN共重合体のジメチルスルホキシド(DMSO)
溶液にアンモニアを吹込み、該共重合体のカルボ
キシル末端基水素をアンモニウム基で置換してポ
リマを変性し、この変性ポリマの濃度が20重量%
であるDMSO溶液を作製した。
この溶液を目開き5μの焼結金属フイルターを
材として過した後、孔径0.15mm、孔数1500ホ
ールの紡糸口金を通して一旦空気中に吐出し、約
3mmの空間を走行させた後、約30℃、30%の
DMSO水溶液中に導入して吐出繊維糸条を凝固
せしめた。得られた凝固繊維糸条を水洗し、温水
中で4倍に延伸して水膨潤繊維糸条を得た。この
水膨潤繊維糸条をポリエチレングリコール
(PEG)変性ポリジメチルシロキサン(PEG変性
量50重量%)の0.8%水溶液とアミノ変性ポリジ
メチルシロキサン(アミノ変性量1重量%)85部
とノニオン系界面活性剤15部からなる0.8%水分
散液の混合油剤浴中に浸漬した後、表面温度130
℃の加熱ロール上で乾燥、緻密化した。乾燥、緻
密化した繊維糸条を加熱スチーム中で3倍に延伸
し、単糸繊度が0.8デニール(d)、トータルデニー
ル1200(D)のアクリル系繊維糸条を得た。
このトータルデニールが1200Dのアクリル系繊
維糸条を3本合糸し、リング条ノズルを用いて、
圧力0.7Kg/cm2のエアー開繊処理を施し、240〜
260℃の空気中で延伸倍率1.05の下に加熱し水分
率が4.5%の酸化繊維糸条を作製した。
次いで、この酸化繊維糸条を最高温度が140℃
の窒素雰囲気中で300〜700℃の温度域における昇
温速度を約250℃/分、1000〜1200℃の温度域に
おける昇温速度を約400℃/分に設定して炭素化
し、炭素繊維糸条を得た。
得られた炭素繊維糸条の樹脂含浸ストランド強
度は560Kg/mm2であつた。また、この炭素繊維糸
条単繊維の縦断面の超薄切片を作製し、制限視野
電子線回折法によつて繊維中心部、繊維表面から
約0.1μの深さの領域(超薄最外層領域)および繊
維表面から約0.4ミクロンの領域(表面層領域)
のそれぞれ結晶の完全性を測定し、繊維中心部の
結晶の完全性に対する繊維表面から0.1ミクロン
および0.4ミクロンの深さの領域の結晶の完全性
の比率を求めた結果、それぞれ1.05および1.03で
あり、約0.1ミクロンの深さの領域(超薄最外層)
の結晶の完全性は繊維中心部のそれよりも大きい
結晶性を示し、かつ約0.4ミクロンの深さの領域
(表面層)の結晶の完全性は繊維中心部のそれと
実質的に同じ結晶性を示した。
かくして得られた原料炭素繊維糸条を温度80
℃、濃度5規定の硝酸水溶液を満した処理浴槽中
に、セラミツクス製ガイドを介して導入し、糸速
0.3m/分で連続的に走行させ、かつ処理浴槽の
直前に設置した金属製ガイドローラによつて該炭
素繊維糸条に陽電圧を印加し、処理浴槽中に設置
した印極板との間に0.12Aの電流を流した。ここ
で炭素繊維糸条の処理浴槽における浸漬長は、約
0.2m、処理時間は約40秒、炭素繊維1g当りの
電気量は150クローンであつた。
このような電気化学的酸化処理の施された炭素
繊維糸条を水洗し、約200℃の加熱空気中で乾燥
した後、700℃の窒素雰囲気中で約1分間加熱し
て、前記処理によつて形成された繊維中の官能基
を脱官能基した。得られた炭素繊維糸条の樹脂含
浸ストランド強度を測定した結果、670Kg/mm2
あつた。
かくして得られた炭素繊維糸条の超薄切片を作
製し、前述した方法と同様にして、繊維中心部、
繊維表面からそれぞれ約0.1ミクロンおよび約0.4
ミクロンの深さの領域における結晶の完全製を測
定し、繊維中心部の結晶の完全性に対する表面か
ら約0.1ミクロンおよび約0.4ミクロンの領域の結
晶の完全性の比を求めたところ、それぞれ0.92お
よび1.03であり、表面から約0.1ミクロン深さの
領域(超薄最外層)は低い結晶の完全性を示し、
表面から約0.4ミクロンの深さの領域(表面層)
は繊維中心部と実質的に同じ結晶性を示した。
また、この炭素繊維の断面形状は平均断面変形
度1.05以下で、ほぼ真円であつた。
次にマトリツクス樹脂であるが、ビスフエノー
ルAジグリシジルエーテル(油化シエルエポキシ
(株)製エピコート828)35部、ジアミノジフエニル
メタンのテトラグリシジル化合物(住友化学(株)製
ELM434)35部およびテトラブロムビスフエノー
ルAジグリシジルエーテル(大日本インキ(株)製エ
ピクロン152)30部からなるエポキシ化合物混合
物にジアミノジフエニルスルホン32部を添加混合
しプリプレグ用樹脂を調製した。このエポキシ樹
脂をオーブン中で180℃、2時間の条件で硬化し
て厚さ2mmの透明な樹脂硬化板を得た。JIS−
K7113の試験法に準じて測定した引張破断伸度は
4.4%であつた。
上記炭素繊維を一方向に引揃え、上記プリプレ
グ用樹脂を含浸させ、炭素繊維目付145g/m2
樹脂含量34%のプリプレグを得た。このプリプレ
グを8枚積層し、オートクレーブを使用して180
℃、2時間、圧力6Kg/cm2の条件で成形し、厚さ
0.91mm、VF70.3%の複合材を得た。この複合材か
ら繊維方向に長さ230mm、幅12.72mmの引張用試験
片を切り出した。この試験片の両端の上下両面に
長さ50mm、幅12.72mmで一方の端に10mmのテーパ
部を持つガラスクロス/エポキシ樹脂タブを接着
した。この試験片を1mm/分の引張速度で引張試
験した結果、引張強度は386Kg/mm2であつた。
この時のストランド強度に対する複合材料の強
度利用率は82.0%であつた。また、同様にVF58.2
%の複合材料を作製し、同様の試験を行なつた結
果、引張強度は319Kg/mm2、強度利用率は81.8%
であつた。
比較例 1 ストランド強度530Kg/mm2で、断面変形度の平
均値が1.05のほぼ真円形断面の炭素繊維を用い
て、実施例1と同じプリプレグ用樹脂(破断伸度
4.4%)および成形法にてVFが70.5%および60.2%
の複合材料を作製した。実施例1と同じ試験法で
引張強度を測定したところ、それぞれ282Kg/mm2
および305Kg/mm2であつた。この時の強度利用率
はそれぞれ75.5%および90.5%であつた。明らか
に強度利用率が低下しており、高VFによる軽量
効果が望めない。
比較例 2 ストランド強度530Kg/mm2で、断面変形度の平
均値が1.60のまゆ型断面の炭素繊維を用いて、実
施例1と同じプリプレグ用樹脂および成形法にて
VFが69.9%および59.3%の複合材料を作製した。
得られた複合材料について実施例1と同じ試験法
で引張強度を測定したところ、それぞれ283Kg/
mm2および282Kg/mm2であつた。この時の強度利用
率はそれぞれ76.4%および89.7%であつた。
実施例 2 ビスフエノールAジグリシジルエーテル(エピ
コート828)40部、3,9−ビス(3−メトキシ、
4−ヒドロキシフエニル)−2,4,8,10−テ
トラオキサスピロ[5,5]ウンデカン30部およ
びテトラブロムビスフエノールAジグリシジルエ
ーテル(エピクロン152)30部からなるエポキシ
化合物混合物にジアミノジフエニルスルホン24部
を添加混合しプリプレグ用樹脂を調製した。この
エポキシ樹脂を実施例1と同様にして硬化させた
ところ、引張破断伸度は6.1%であつた。
上記樹脂と実施例1と同様の炭素繊維を用い、
実施例1と同様の方法で2種類のVFの複合材料
を作製した。この時のVFは70.1%および57.3%で
あつた。実施例1と同じ方法で引張試験を行なつ
たところ、引張強度は413Kg/mm2および338Kg/mm2
であつた。この時の強度利用率はそれぞれ87.9%
および88.1%であつた。
比較例 3 ジアミノジフエニルメタンのテトラグリシジル
化合物(住友化学(株)製ELM434)120部およびジ
アミノジフエニルスルホン32部を添加混合してプ
リプレグ用樹脂を調製した。このエポキシ樹脂を
オーブン中で180℃、2時間の条件で硬化して、
厚さ2mmの透明な樹脂硬化板を得た。JIS−
K7113の試験法に準じて測定した引張破断伸度は
2.5%であつた。
上記樹脂と実施例1と同様の炭素繊維を用い、
実施例1と同じ方法で2種類のVFの複合材料を
作製した。この時のVFは69.8%および56.5%であ
つた。実施例1と同じ方法で引張試験を行なつた
ところ、引張強度はそれぞれ351Kg/mm2および367
Kg/mm2であり、強度利用率は75.0%、および92.0
%であつた。
[発明の効果] 極めて高強度でしかも軽量な複合材料が取得
できる。
品質の安定した複合材料が取得できる。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 樹脂含浸ストランドの引張強度が600Kg/mm2
    以上で、断面形状が実質的に円形の炭素繊維と、
    引張破断伸度が3%以上のマトリツクス樹脂で構
    成され、かつ複合材料中の繊維体積分率(VF
    が70%の時の引張強度が370Kg/mm2以上である一
    方向炭素繊維強化高強度複合材料。 2 特許請求の範囲第1項において、複合材料中
    の繊維体積分率が65%以上である一方向炭素繊維
    強化高強度複合材料。 3 特許請求の範囲第1項または第2項におい
    て、炭素繊維の表層部は結晶の完全性が繊維中心
    部と対比して実質的に同一レベルにあり、かつそ
    の表層部には前記繊維中心部に対比して結晶の完
    全性が小である超薄最外層を有する一方向炭素繊
    維強化高強度複合材料。 4 特許請求の範囲第1項、第2項または第3項
    において、炭素繊維の超薄最外層の厚さが平均
    0.2ミクロン以下である一方向炭素繊維強化高強
    度複合材料。 5 特許請求の範囲第1項、第2項、第3項また
    は第4項において、炭素繊維の熱分解性有機物量
    が0.05〜0.5重量%の範囲内およびX線電子分光
    法(ESCA)によつて検出される表面の官能基量
    (O1s/C1s)比が0.1〜0.4の範囲内である一方向
    炭素繊維強化高強度複合材料。
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