JP7493215B2 - 軸受装置 - Google Patents
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Description
本発明に係る軸受装置1は、外側部材2と、外側部材2に対して同軸回転する内側部材5と、外側部材2と内側部材5との間を密封するシール部材8とを備えている。シール部材8は、外側部材2に嵌合される芯金9と、芯金9に固着され内側部材5側に摺接し弾性体からなる複数のシールリップ部10とを有する。複数のシールリップ部10が摺接する内側部材5側には、内側部材5側の周方向及び径方向の少なくともいずれか一方に沿って、内側部材5の回転方向に応じて隣接して配されるシールリップ部10,10間の流体を逃さないように形成された筋目20が設けられた筋加工領域100を有している。以下、詳述する。
まずは第1実施形態について、図1~図5を参照しながら説明する。
本実施形態では、左右一対に設けられる車輪のそれぞれに、左右対称に設けられる車両用の一対の軸受装置1に適用した例を示し、図1は一対の軸受装置の片側(右側)のみを示している。
図1に示す軸受装置1は、自動車の車輪(不図示)を同軸回転可能に支持し、この軸受装置1は、大略的に、上述の外側部材に相当する外輪2と、上述の内側部材に相当する内輪5と、外輪2と内輪5との間に介装される2列の転動体(ボール)6…とを含んで構成される。内輪5は、ハブ輪3と内輪部材4とで回転部材として構成され、内輪部材4はハブ輪3の車体側に嵌合一体とされる。ハブ輪3にはドライブシャフト(不図示)が同軸的にスプライン嵌合され、ドライブシャフトは等速ジョイント(不図示)を介して駆動源(駆動伝達部)に連結される。ドライブシャフトはナット(不図示)によって、ハブ輪3と一体化され、ハブ輪3のドライブシャフトからの脱落が防止されている。内輪5(ハブ輪3及び内輪部材4)は、外輪2に対して、軸L回りに回転可能な回転部材とされ、外輪2と、内輪5とにより、相対的に回転する2部材が構成され、環状の被シール空間となる軸受空間Sが形成される。軸受空間S内には、2列の転動体6…が、リテーナ6aに保持された状態で、外輪2の軌道輪2a、ハブ輪3の駆動輪3a、内輪部材4の軌道輪4aに転動可能に設けられている。ハブ輪3は、円筒形状の本体部30と、本体部30から外径方向に立ち上がる立上基部31と、立上基部31を経て外径方向に延出して形成される鍔状のフランジ部32とを備えるとともに、フランジ部32を介してさらに径方向外方に延出するよう形成されたハブフランジ33とを有している。ハブフランジ33には、ボルト34によって車輪が取付固定される。以下において、軸L方向に沿って車輪に向く側(図1において右側)を車輪側、車体に向く側(図1において左側)を車体側と言う。車輪側となる外輪2とハブ輪3との間(図1・X部)には、シール部材8が装着され、車体側となる外輪2と内輪部材4との間にはシール部材7が装着され、これらシール部材7,8によって、軸受空間Sが密封される。
図2に示す例では、ハブ輪3の外周面30a及び径方向に延びるフランジ面32aに細溝状の筋目20が設けられている。本実施形態では、筋加工領域100は、外周面30aにおけるグリースリップ12の摺接部位から径方向に湾曲して立ち上がる立上基部31を経てサイドリップ11の摺接部位までの領域をいう。筋目20は外周面30a及びフランジ面32a自体に直接加工されており、図2において図面上筋目20が現れるのは3か所であるが、実際には、図3(a)や図3(b)に示すように4重の螺旋状に形成されている。そして螺旋状の筋目20の始点、終点、そして筋目20,20同士の間隔によって、流体の流れをコントロールしている。図例の場合は、筋目20,20同士の間隔は均一に形成されているが、図2の白抜き矢印方向Dからハブ輪3を見た場合にハブ輪3の内径側から外径側に向かうにつれて筋目20,20同士の間隔が拡がるように見えている。図中、32bはフランジ面32aの縁部を示している。
また、グリースリップ12は、軸受空間S内部から正圧を受けやすく、摺接面となる外周面30aに吸着されやすいので、グリースリップ12の摺接位置を筋加工領域100とすることで、グリースリップ12の先端部12aが摺接面に吸着することを抑制できる。
さらに図2に示す例では、グリースリップ12及びサイドリップ11のそれぞれ先端部12a,11aの摺接部位に筋目20が形成されているが、これに限定されない。例えばグリースリップ12側については、図6に示すように若干手前位置となるグリースリップ12の摺接部位のサイドリップ11側の近傍部位、すなわちグリースリップ12が摺接していない部位に筋目20が形成されるものとしてもよい。この場合も、軸受空間Sとグリースリップ12と隣接するサイドリップ11との間の圧力の釣り合いが取れるように、筋目20によってリップ間の空間から軸受空間Sに空気がある程度吐き出されると同時に流入するので、グリースリップ12の先端部12aが摺接面に吸着することを抑制できる。
図3(a)に示す筋目20は、ハブ輪3(内輪5)の回転方向A1に沿って、内径側から外径側へ(矢印A2参照)螺旋状に形成されている。
一方、図3(b)に示す筋目20は、ハブ輪3(内輪5)の回転方向B1に沿って、内径側から外径側へ(矢印B2参照)螺旋状に形成されている。
よって、本実施形態における軸受装置1は、左右一対に設けられる車輪のそれぞれに、左右対称に設けられるので、ハブ輪3(内輪5)の回転方向に応じて図3(a)に示す筋目20が加工された軸受装置1の左右反対側には、図3(b)に示す筋目20が加工された軸受装置1が設けられる。また図3(a)及び(b)に示すように螺旋状の筋目20の場合は、加工が容易というメリットがある。
図4(a)及び図4(b)は、図2の白抜き矢印方向Dからハブ輪3の外周面30a及びフランジ面32aに形成される筋目20の別例を模式的に示す図である。これらの図中、矢印C1及び矢印D1はハブ輪3(内輪5)の回転方向を示している。
図4(a)に示す筋目20は、ハブ輪3(内輪5)の回転方向C1に湾曲したように傾斜し、外径側の筋目20の先が回転方向C1に沿うように(矢印C2参照)逆行しないように形成されている。
一方、図4(b)に示す筋目20も、ハブ輪3(内輪5)の回転方向D1に湾曲したように傾斜し、外径側の筋目20の先が回転方向D1に沿うように(矢印D2参照)逆行しないように形成されている。
この例においても、図4(a)、図4(b)に示すとおり、一対に左右対称に設けられる軸受装置1に形成された筋目20はそれぞれの回転方向に応じた流体流れが生じるように形成されることになり、上記効果を発揮して、車両用軸受装置として、低トルク化、低燃費化に貢献できる。またこの例においても、筋目20によって、グリースリップ12及びサイドリップ11の間に空気をとどめる領域を形成できるので、より一層グリースリップ12及びサイドリップ11間が負圧になることによるグリースリップ12及びサイドリップ11の吸着を抑制することができる。
続いて第2実施形態に係る軸受装置1について、図6、図7を参照して説明する。なお、第1実施形態と共通する部分には、可能な限り同一の符号を付し、その構成及び作用・効果等の説明は省略する。
第2実施形態は、第1実施形態と、シール部材8の構成が異なる。また第2の筋加工領域200を備えている点でも異なる。よって図6では、筋目を区別するため、第1の筋目を20a、第2の筋目を20bとしているが、筋目自体の形成要領は第1実施形態と同様でよい。
以上によれば、最も外径側に設けられ外部空間に近い外径側サイドリップ11は、第1の筋目20aの加工がされている部位に摺接させることで、内部(外径側サイドリップ11~グリースリップ12の間)の圧力の変動を抑え、外径側及び内径側サイドリップ11,11のフランジ面32aへの吸着を防止することができる。一方グリースリップ12は、軸受空間S内部から正圧を受けやすく、摺接面となる外周面30aに吸着されやすいので、グリースリップ12の摺接部位の手前位置(グリースリップ12の摺接部位のサイドリップ11側の近傍部位)を筋加工領域100とすることで、軸受空間Sとグリースリップ12と隣接するサイドリップ11との間の圧力の釣り合いが取れるように、筋目20によってリップ間の空間から軸受空間Sに空気がある程度吐き出されると同時に流入するので、グリースリップ12の先端部12aが摺接面に吸着することを抑制できる。さらに上述のように筋加工領域100を設けることで、外径シールリップ、内径シールリップの過剰な吸着を抑制するとともに、従来から問題になっていた旋盤目の影響を受けることなく、外径側及び内径側サイドリップ11,11とグリースリップ12との間に保持しておきたいグリース(流体)が筋加工領域100内で保持され、グリースの漏出を抑制することができる。
図6において図面上、第1の筋目20aが現れるのは5か所であるが、実際には、図7(a)及び図7(b)に示すように6重の螺旋状に形成されている。また図6において図面上、第2の筋目20bが現れるのは2か所であるが、実際には、図7(a)及び図7(b)に示すように3重螺旋状に形成されている。螺旋状の第1の筋目20a,第2の筋目20bの始点、終点、そして筋目同士の間隔によって、流体の流れをコントロールしている。図例の場合は、第1の筋目20a同士,第2の筋目20b同士の間隔は均一に形成されているが、図6の白抜き矢印方向Dからハブ輪3を見た場合にハブ輪3の内径側から外径側に向かうにつれて筋目同士の間隔が拡がるように見えている
この構成によれば、第2の筋加工領域200として、上述の筋加工領域100とは逆方向に向かう第2の筋目20bが形成されているので、浸入しようとする泥水等の吐き出し効果を発揮する。よって、このように筋加工領域100だけでなく、第2の筋加工領域200を設けることで、第2の筋目20bと第1の筋目20aによって、泥水等の浸入防止と吐き出しの両立を図ることができる。
また図7の例においても、図3の例と同様に逆方向流体の流れを形成する逆流れの筋加工領域100,200を他方側の軸受装置1に設けることで、上記同様の効果を得ることができる。
そして上記各実施形態で説明した芯金9の形状・構成も図例のものに限定されず、シールリップ部10の構成も図例に限定されない。また筋目20の構成、形状も図例に限定されず、シールリップ部10間の流体(空気、グリース等)を逃さないように形成されていればよい。
2 外側部材(外輪)
3 ハブ輪
5 内側部材(内輪)
10 シールリップ部
11 サイドリップ
12 グリースリップ
20 筋目
20a 第1の筋目
20b 第2の筋目
100 筋加工領域
200 第2の筋加工領域
30 本体部
32 フランジ部
Claims (6)
- 外側部材と、前記外側部材に対して同軸回転する内側部材と、前記外側部材と前記内側部材との間を密封するシール部材とを備えた軸受装置において、
前記シール部材は、前記外側部材に嵌合される芯金と、前記芯金に固着され前記内側部材側の摺接対象に摺接する弾性体からなる複数のシールリップ部とを有し、
前記摺接対象には、周方向及び径方向の少なくともいずれか一方に沿って筋目が形成された筋加工領域が設けられ、
前記筋目は、前記内側部材の回転方向に応じて隣接して配される前記シールリップ部間の流体を逃さないように形成されるとともに、前記摺接対象の最も内径側に配されている前記シールリップ部の摺接部位または近接部位から前記摺接対象の最も外径側に配されている前記シールリップ部の摺接部位まで形成され、且つ、前記内側部材の回転方向の上流側よりも前記回転方向の先側である下流側が外径側に位置する螺旋状に形成されていることを特徴とする軸受装置。 - 外側部材と、前記外側部材に対して同軸回転する内側部材と、前記外側部材と前記内側部材との間を密封するシール部材とを備えた軸受装置において、
前記シール部材は、前記外側部材に嵌合される芯金と、前記芯金に固着され前記内側部材側の摺接対象に摺接する弾性体からなる複数のシールリップ部とを有し、
前記摺接対象には、少なくとも径方向に筋目が形成された筋加工領域が設けられ、
前記筋目は、前記内側部材の回転方向に応じて隣接して配される前記シールリップ部間の流体を逃さないように形成されるとともに、前記摺接対象の最も内径側に配されている前記シールリップ部の摺接部位または近接部位から前記摺接対象の最も外径側に配されている前記シールリップ部の摺接部位まで少なくとも形成され、且つ前記周方向に間隔を空けて複数形成されており、
それぞれの前記筋目は前記摺接対象の内径側から外径側へ延び、且つ外径側が回転方向の先側である下流側に傾斜して形成されていることを特徴とする軸受装置。 - 請求項1または請求項2において、
前記内側部材は、円筒形状の本体部と、前記本体部から外径方向に湾曲して立ち上がる立上基部と、前記立上基部を経て外径方向に延出して形成されるフランジ部とを備え、
前記摺接対象が、前記本体部、前記立上基部及び前記フランジ部の少なくともいずれか一方か、または前記本体部に嵌合されたデフレクターであることを特徴とする軸受装置。 - 請求項3において、
前記内側部材における前記外径シールリップの前記摺接部位のさらに外径側には、第2の筋目が形成された第2の筋加工領域が設けられ、
前記第2の筋目は、前記筋目とは流体が逆方向に向かうように形成されていることを特徴とする軸受装置。 - 請求項1~請求項4のいずれか1項において、
前記複数のシールリップ部は、軸方向外向きに延びる1本以上のサイドリップと、径方向内向きに延びるグリースリップとで構成されていることを特徴とする軸受装置。 - 左右一対に設けられる車輪のそれぞれに、左右対称に設けられる請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の車両用の一対の軸受装置であって、
前記筋目は、それぞれの内側部材の回転方向に応じて形成されることを特徴とする軸受装置。
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