JP7385206B2 - 免疫賦活剤 - Google Patents

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Description

本発明は、免疫賦活剤等に関する。
近年、免疫学の医療応用が益々進んでおり、ワクチン、免疫療法等の開発が進んでいる。医療応用する際には、免疫賦活剤が使用されることがある。例えば、免疫賦活剤により、抗原による免疫効果を高めることが可能である。
免疫賦活剤としては、水酸化アルミニウム等のアルミニウム塩に代表される抗体誘導に優れたもの、CpG核酸に代表される細胞性免疫誘導に優れたものがある。アルミニウム塩は実際のワクチンに使用されているが、細胞性免疫誘導は出来ない。一方、CpG核酸は実験的には細胞性免疫誘導できるが、少ない抗原量で効率良く細胞性免疫を誘導できるわけではない。より効果的なワクチンの開発には細胞性免疫の誘導も視野に入れた最適化が重要である。
特許文献1には、カチオン性脂質を免疫賦活剤として利用することが開示されている。しかし、特許文献1においては、細胞性免疫の誘導も視野に入れた最適化が不十分である。
特表2015-521601号公報
本発明は、細胞性免疫の誘導作用(特に、CD8T細胞誘導作用及び/又はCD4T細胞誘導作用)がより高い免疫賦活剤を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、(A)カチオン性脂質含有脂質粒子a、並びにCpGオリゴデオキシヌクレオチド及びアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、又は(B)粒径100nm未満のカチオン性脂質含有脂質粒子bを含有する、免疫賦活剤、であれば、上記課題を解決できることを見出した。この知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明が完成した。
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
項1. (A)カチオン性脂質含有脂質粒子a、並びにCpGオリゴデオキシヌクレオチド及びアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、又は
(B)粒径100nm未満のカチオン性脂質含有脂質粒子bを含有する、
免疫賦活剤。
項2. 前記カチオン性脂質含有脂質粒子aがナノサイズである、項1に記載の免疫賦活剤。
項3. 前記カチオン性脂質含有脂質粒子bの粒径が15~80nmである、項1又は2に記載の免疫賦活剤。
項4. 前記カチオン性脂質が1,2-ジオレオイルオキシ-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、ジオレオイルジメチルアミノプロパン(DODAP)、N-1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、及びジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)からなる群より選択される少なくとも1種である、項1~3のいずれかに記載の免疫賦活剤。
項5. 前記カチオン性脂質の含有量が、前記脂質粒子を構成する脂質100質量%に対して80質量%以上である、項1~4のいずれかに記載の免疫賦活剤。
項6. 前記カチオン性脂質の含有量が、前記脂質粒子を構成する脂質100質量%に対して95質量%以上である、項1~5のいずれかに記載の免疫賦活剤。
項7. 前記カチオン性脂質含有脂質粒子a、前記CpGオリゴデオキシヌクレオチド、及び前記アルミニウム塩を含有する、項1~6のいずれかに記載の免疫賦活剤。
項8. 前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドがAタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドである、項7に記載の免疫賦活剤。
項9. 項1~8のいずれかに記載の免疫賦活剤を含有する、医薬。
項10. ワクチン組成物である、項9に記載の医薬。
項11. さらに抗原を含有する、項9又は10に記載の医薬。
項12. 抗ウイルス用である、項9~11のいずれかに記載の医薬。
本発明によれば、細胞性免疫の誘導作用がより高い免疫賦活剤を提供することができる。さらに、本発明によれば、細胞性免疫の誘導作用がより高いワクチン組成物等を提供することもできる。
試験例1-2の免疫賦活試験において、刺激に257-264ペプチドを使用した場合の結果を示す。縦軸は、細胞上清中のIFN-γ量を示す。横軸は免疫した物質を示し、257は257-264ペプチドを示し、DOTAP(037)は脂質粒子を示す。DOTAP(037)は、試験例2のDOTAP-Nano(041)と同一条件で製造された脂質粒子である。 試験例1-2の免疫賦活試験において、刺激にオボアルブミンを使用した場合の結果を示す。縦軸は、細胞上清中のIFN-γ量を示す。横軸は免疫した物質を示し、OVAはオボアルブミンを示し、DOTAP(037)は脂質粒子を示す。 脂質粒子(DOTAP-Nano(041)とDOTAP-Roche)及び脂質粒子とオボアルブミンとの複合体(+OVA)の粒径を示す(試験例2-3)。各プロットは、3回の測定値それぞれを表し、バーはこれらの平均値である。 試験例2-4の免疫賦活試験の結果を示す。縦軸は、細胞上清中のIFN-γ量を示す。横軸は、抗原(OVA)に加えて免疫した脂質粒子示す。 試験例3-4の免疫賦活試験の結果を示す。縦軸は、細胞上清中のIFN-γ量を示す。横軸は免疫した物質を示し、OVAはオボアルブミンを示し、その他は抗原(OVA)に加えて免疫した脂質粒子(括弧内は粒径)を示す。 試験例4の免疫賦活試験の結果を示す。縦軸は、細胞上清中のIFN-γ量を示す。横軸は免疫した物質を示し、OVAはオボアルブミンを示し、その他は抗原(OVA)に加えて免疫した物質(脂質粒子(037)、CpG核酸(A型(D35又はA2216)、B型(K3)、C型(2395)、又はP型(21889)))を示す。 試験例5の免疫賦活試験において、刺激にOVA323-339ペプチドを使用した場合の結果を示す。縦軸は、細胞上清中のIFN-γ量を示す。横軸は免疫した物質を示し、323はOVA323-339ペプチドを示し、その他は抗原(OVA)に加えて免疫した物質(脂質粒子(037)、CpG核酸(A型(D35))、アルミニウム塩(Alum))を示す。 試験例5の免疫賦活試験1において、刺激にオボアルブミンを使用した場合の結果を示す。縦軸は、細胞上清中のIFN-γ量を示す。横軸は免疫した物質を示し、OVAはオボアルブミンを示し、その他は抗原(OVA)に加えて免疫した物質(脂質粒子(037)、CpG核酸(A型(D35))、アルミニウム塩(Alum))を示す。 試験例5の免疫賦活試験2におけるTotal IgGの定量結果を示す。縦軸は、血清中の抗体価を示す。横軸中、横軸は免疫した物質を示し、OVAはオボアルブミンを示し、その他は抗原(OVA)に加えて免疫した物質(脂質粒子(037)、CpG核酸(A型(D35))、アルミニウム塩(Alum))を示す。 試験例5の免疫賦活試験2におけるIgG1の定量結果を示す。縦軸は、血清中の抗体価を示す。横軸中、横軸は免疫した物質を示し、OVAはオボアルブミンを示し、その他は抗原(OVA)に加えて免疫した物質(脂質粒子(037)、CpG核酸(A型(D35))、アルミニウム塩(Alum))を示す。 試験例5の免疫賦活試験2におけるIgG2cの定量結果を示す。縦軸は、血清の抗体価を示す。横軸中、横軸は免疫した物質を示し、OVAはオボアルブミンを示し、その他は抗原(OVA)に加えて免疫した物質(脂質粒子(037)、CpG核酸(A型(D35))、アルミニウム塩(Alum))を示す。 試験例6の免疫賦活試験におけるIFN-γ量測定結果を示す。縦軸は、細胞上清中のIFN-γ量を示す。横軸は、抗原(インフルエンザウイルススプリットワクチン抗原)に加えて免疫した物質(脂質粒子(DOTAP-Nano)、アルミニウム塩(Alum))示す。 試験例6の免疫賦活試験における抗体価測定結果を示す。縦軸は、血清の抗体価を示す。横軸は、抗原(インフルエンザウイルススプリットワクチン抗原)に加えて免疫した物質(脂質粒子(DOTAP-Nano)、アルミニウム塩(Alum))示す。 試験例7の免疫賦活試験の結果を示す。縦軸は、HHV-6Bに由来するT細胞反応性p43ペプチドで刺激した場合の細胞上清中のIFN-γ量を示す。横軸は、抗原(HHV-6B)に加えて免疫した物質(脂質粒子(DOTAP-Nano)、CpG核酸(D35)、アルミニウム塩(Alum))示す。
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
本明細書において、「粒径」は、動的光散乱(DLS)法により測定した散乱光強度基準の平均粒子径である。
1.免疫賦活剤
本発明は、その一態様において、(A)カチオン性脂質含有脂質粒子a、並びにCpGオリゴデオキシヌクレオチド及びアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、又は(B)粒径100nm未満のカチオン性脂質含有脂質粒子bを含有する、免疫賦活剤(本明細書において、「本発明の免疫賦活剤」と示すこともある。)に係る。以下に、これについて説明する。
カチオン性脂質は、生理的pHにおいて正味の正電荷を帯びるか、プロトン化可能な基を有し、pKa未満のpHで正に荷電するような、多数の脂質種のうちいずれかである限り、特に制限されない。カチオン性脂質としては、例えば次に列挙する脂質が挙げられる。3-β[4N-(1N,8-ジグアニジノスペルミジン)-カルバモイル]コレステロール(BGSC);3-β[N,N-ジグアニジノエチル-アミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(BGTC);N,N1N2N3テトラ-メチルテトラパルミチルスペルミン(cellfectin);N-t-ブチル-N’-テトラデシル-3-テトラデシル-アミノプロピオン-アミジン(CLONfectin);ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB);1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE);2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート)(DOSPA);1,3-ジオレオイルオキシ-2-(6-カルボキシスペルミル)-プロピルアミド(DOSPER);4-(2,3-ビス-パルミトイルオキシ-プロピル)-1-メチル-1H-イミダゾール(DPIM);N,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,3-ジオレオイルオキシ-1,4-ブタン-ジアンモニウムヨージド)(Tfx-50);N-1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)または他のN-(N,N-1-ジアルコキシ)-アルキル-N,N,N-三置換アンモニウム界面活性剤;1,2ジオレオイル-3-(4’-トリメチルアンモニオ)ブタノール-sn-グリセロール(DOBT)またはコレステリル(4’トリメチルアンモニア)ブタノエート(ChOTB)(ここで、トリメチルアンモニウム基は、ブタノールスペーサーアームを介して、二重鎖(DOTBの場合)またはコレステリル基(ChOTBの場合)に連結される);DORI(DL-1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアミノプロピル-β-ヒドロキシエチルアンモニウム)またはDORIE(DL-1,2-O-ジオレオイル-3-ジメチルアミノプロピル-β-ヒドロキシエチルアンモニウム)(DORIE)またはその類縁体(たとえば、WO93/03709に開示されているものなど);1,2-ジオレオイル-3-スクシニル-sn-グリセロールコリンエステル(DOSC);コレステリルヘミコハク酸エステル(ChOSC);リポポリアミン、たとえば、ジオクタデシルアミドリシルスペルミン(DOGS)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミルスペルミン(DPPES)、コレステリル-3β-カルボキシル-アミド-エチレントリメチルアンモニウムヨージド、1-ジメチルアミノ-3-トリメチルアンモニオ-DL-2-プロピル-コレステリルカルボキシレートヨージド、コレステリル-3-O-カルボキシアミドエチレンアミン、コレステリル-3-β-オキシスクシンアミド-エチレントリメチルアンモニウムヨージド、1-ジメチルアミノ-3-トリメチルアンモニオ-DL-2-プロピル-コレステリル-3-β-オキシスクシネートヨージド、2-(2-トリメチルアンモニオ)-エチルメチルアミノエチル-コレステリル-3-β-オキシスクシネートヨージド、3-β-N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイルコレステロール(DC-chol)、3-β-N-(ポリエチレンイミン)-カルバモイルコレステロール;O,O’-ジミリスチル-N-リジルアスパルテート(DMKE);O,O’-ジミリスチル-N-リジル-グルタメート(DMKD);1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE);1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DLEPC);1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DMEPC);1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC);1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DPEPC);1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DSEPC);1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);ジオレオイルジメチルアミノプロパン(DODAP);1,2-パルミトイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DPTAP);1,2-ジステアロイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DSTAP)、1,2-ミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP);ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(D-Lin-MC3-DMA)。さらに、表記のカチオン性脂質いずれかの構造的な変異体および誘導体も企図される。
カチオン性脂質としては、免疫賦活作用の観点から、好ましくはDOTAP、DODAP、DOTMA、DDAB等が挙げられ、特に好ましくはDOTAPが挙げられる。
カチオン性脂質は、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
カチオン性脂質含有脂質粒子aは、カチオン性脂質を含有する脂質粒子である限り特に制限されない。カチオン性脂質含有脂質粒子aの粒径は、特に制限されない。該粒径は、好ましくはナノサイズであり、具体的には例えば10~700nm、好ましくは10~400nm、より好ましくは10~200nm、さらに好ましくは10~150nmであり、特に好ましくは100nm未満である。本発明においては、カチオン性脂質含有脂質粒子aの内、粒径100nm未満のものを「カチオン性脂質含有脂質粒子b」と示すこともある。また、カチオン性脂質含有脂質粒子a、カチオン性脂質含有脂質粒子bのどちらについても言及する場合、「カチオン性脂質含有脂質粒子」と示すこともある。カチオン性脂質含有脂質粒子bの粒径は、好ましくは15~80nm、より好ましくは15~60nmである。
カチオン性脂質含有脂質粒子は、粒子を構成する脂質として、カチオン性脂質以外の他の脂質(リン脂質、糖脂質等の両親媒性脂質、ステロール、飽和又は不飽和の脂肪酸等)を含有するものであってもよい。ただ、本発明において、免疫賦活作用の観点から、他の脂質の含有量はより少ない方が好ましい。例えば、カチオン性脂質の含有量が、前記脂質粒子を構成する脂質100質量%に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることがよりさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
他の脂質は、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
カチオン性脂質含有脂質粒子は、脂質以外にも他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば膜安定化剤、荷電物質、抗酸化剤、膜タンパク質、ポリエチレングリコール(PEG)、抗体、ペプチド、糖鎖等が挙げられる。
抗酸化剤は、膜の酸化防止のために含有させることができ、膜の構成成分として必要に応じて使用される。膜の構成成分として使用される抗酸化剤としては、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、トコフェロール、酢酸トコフェロール、濃縮混合トコフェロール、ビタミンE、アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル、パルミチン酸アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、クエン酸等が例示される。
膜タンパク質は、膜への機能付加又は膜の構造安定化を目的として含有させることができ、膜構成成分として必要に応じて使用される。膜タンパク質としては、例えば、膜表在性タンパク質、膜内在性タンパク質、アルブミン、組換えアルブミン等が挙げられる。
他の成分の含有量は、カチオン性脂質含有脂質粒子100質量%に対して、例えば10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。
他の成分は、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
カチオン性脂質含有脂質粒子は、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
カチオン性脂質含有脂質粒子は、通常、水系溶液中で形成されている。水系溶液としては、例えば各種緩衝液が挙げられる。水系溶液のpHは、好ましくは6.8以上、より好ましくは7.0以上、さらに好ましくは7.2以上である。該pHの上限は、例えば9、8.5、8、7.8、7.6である。
カチオン性脂質含有脂質粒子は、脂質粒子の公知の方法に従って又は準じて製造することができる。カチオン性脂質含有脂質粒子は、好適には、脂質(カチオン性脂質含む)を含有するアルコール溶液と、水系溶液とを混合する工程(工程1)を含む方法によって、製造することができる。
アルコール溶液の溶媒であるアルコールとしては、カチオン性脂質を溶解可能なアルコールである限り特に制限されない。アルコールとしては、エタノールが好ましく挙げられる。
アルコール溶液中の脂質濃度は、例えば0.1~20質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~3.0質量%である。
水系溶液は、通常、溶媒である水の他に、例えば緩衝剤が含まれ得る。水系溶液のpHは、好ましくは6.8以上、より好ましくは7.0以上、さらに好ましくは7.2以上である。該pHの上限は、例えば9、8.5、8、7.8、7.6である。
水系溶液とアルコール溶液との混合比(水系溶液/アルコール溶液、v/v)は、例えば20/1~1/1、好ましくは4/1~2/1である。
混合は、脂質粒子が可能な態様である限り特に制限されないが、通常は、ボルテックス等で激しく撹拌する。或いは、マイクロ流路を用いた反応系で行う場合は、反応系内で混合される。
工程1は、通常、室温下又は加温下で実行される。工程1の温度は、例えば15℃~60℃、好ましくは15℃~45℃である。
本発明の免疫賦活剤は、カチオン性脂質含有脂質粒子に加えて、さらにCpGオリゴデオキシヌクレオチドを含有することが好ましい。これにより、免疫賦活作用(特に、CD4T細胞誘導作用)が大きく向上し得る。CpGオリゴデオキシヌクレオチドとしては、特に制限されず、例えばAタイプ、Bタイプ、Cタイプ、Pタイプ等が挙げられる。これらの中でも、後述のアルミニウム塩を組み合わせた際の免疫賦活作用がより高いという観点から、Aタイプが好ましい。
AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)は、形質細胞様樹状細胞からのI型IFN(特に、IFN-α)の産生を誘導する機能を有するODNであり、この限りにおいて特に制限されない。典型的には、AタイプCpG ODNは、中心塩基配列(CG(非メチル化))を中心とした回文配列からなるコア部と、その片側に配置されるGオリゴマー部を含む。コア部の塩基長は、特に制限されないが、例えば5~30、好ましくは7~20、より好ましくは9~15、さらに好ましくは10~14である。コア部の塩基配列としては、中心塩基配列(CG)を中心とした回文配列である限り特に制限されない。コア部のヌクレオシド間の結合は、全てホスホジエステル結合である。Gオリゴマーの塩基長は、特に制限されず、例えば2~10である。該塩基長は、好ましくは3~8、より好ましくは5~7、さらに好ましくは6である。Gオリゴマーは、コア部の3´側に配置されることが好ましい。コア部において、上記Gオリゴマーが配置される側の反対側には、他の塩基が存在しなくともよいし、他の塩基部が配置されていてもよい。他の塩基としては、好ましくはGのみからなる塩基/塩基配列が挙げられる。該塩基/塩基配列の塩基長は、特に制限されず、例えば1~10、好ましくは1~4、より好ましくは2である。コア部以外の部位(Gオリゴマー部、他の塩基部)においては、末端(3´末端、5´末端)から数個(例えば2~5、好ましくは2~3、より好ましくは2)のヌクレオシドが、隣接するヌクレオシドとホスホロチオエート結合していることが好ましい。なお、ホスホロチオエート結合以外の結合部分は、通常、ホスホジエステル結合である。
CpGオリゴデオキシヌクレオチドの含有量は、カチオン性脂質含有脂質粒子の構成脂質100質量部に対して、例えば1~100質量部、好ましくは10~100質量部、より好ましくは10~20質量部である。
CpGオリゴデオキシヌクレオチドは、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
本発明の免疫賦活剤は、カチオン性脂質含有脂質粒子に加えて、さらにアルミニウム塩を含有することが好ましい。これにより、特にCpGオリゴデオキシヌクレオチドも組み合わされている場合に、免疫賦活作用(特に、CD4T細胞誘導作用)が大きく向上し得る。アルミニウム塩としては、アジュバントとして使用されているものである限り特に制限されず、例えば水酸化アルミニウム、リン酸化アルミニウム等が挙げられる。
アルミニウム塩の含有量は、カチオン性脂質含有脂質粒子の構成脂質100質量部に対して、例えば10~100質量部、好ましくは20~100質量部、より好ましくは40~100質量部である。
アルミニウム塩は、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
本発明の免疫賦活剤は、上記した物質以外にも、さらに他の物質を含み得る。
他の物質の含有量は、本発明の免疫賦活剤100質量%に対して、例えば10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。
他の成分は、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
本発明の免疫賦活剤は、カチオン性脂質含有脂質粒子をそのまま、或いは該粒子に上記した成分/物質を添加することにより、得ることができる。添加の際には、特段の処理は必要ない。
2.用途
本発明の免疫賦活剤は、細胞性免疫の誘導作用(特に、CD8T細胞誘導作用及び/又はCD4T細胞誘導作用)(例えばIFN-γ誘導作用)をより高く発揮することができる。さらには、抗体誘導能をもより高く発揮することも可能である。このため、本発明の免疫賦活剤は、その免疫賦活作用を利用した種々の用途、例えば医薬、試薬等(本明細書において、「本発明の薬剤」と示すこともある。)に、より具体的には、ワクチン組成物、抗ウイルス用薬剤等に利用が可能である。
本発明の薬剤は、本発明の免疫賦活剤を含有する限りにおいて特に制限されず、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、薬学的に許容される成分であれば特に限定されるものではない。他の成分としては、薬理作用を有する成分のほか、添加剤も含まれる。添加剤としては、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤等が挙げられる。
本発明の薬剤は、好適には抗原を含有する。抗原は、免疫系を有する哺乳動物に(直接あるいは、たとえばDNAワクチンなどでの発現時に)導入されると、この哺乳動物の免疫系によって認識され、免疫応答を誘発できるあらゆる作用剤(たとえば、タンパク質、ペプチド、多糖、糖タンパク質、糖脂質、核酸またはそれらの組み合わせ)をいう。本明細書で定義する場合、抗原誘発免疫応答は、液性であっても細胞性であってもよいし、両方であってもよい。作用剤は、免疫グロブリン(抗体)またはT細胞抗原受容体(TCR)などの免疫系の抗原認識分子と特異的に相互作用できるときに、「抗原性」であるとされる。
いくつかの実施形態では、1種類以上の抗原は、タンパク質に基づく抗原である。他の実施形態では、1種類以上の抗原は、ペプチドに基づく抗原である。さまざまな実施形態において、1種類以上の抗原は、がん抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、および病原体抗原からなる群から選択される。「微生物抗原」とは、本明細書で使用する場合、微生物の抗原であり、感染性ウイルス、感染性細菌、感染性寄生虫、感染性真菌を含むが、これらに限定されるものではない。微生物抗原は、インタクトな微生物ならびにその天然単離物、断片または誘導体のほか、天然に生じる微生物抗原と同一または類似であり、好ましくは、(天然に生じる微生物抗原が由来する)対応の微生物に特異的な免疫応答を誘導する合成化合物であってもよい。一実施形態では、抗原は、がん抗原である。一実施形態では、抗原は、ウイルス抗原である。もうひとつの実施形態では、抗原は、細菌抗原である。さまざまな実施形態において、抗原は、病原体抗原である。いくつかの実施形態では、病原体抗原は、合成抗原または組換え抗原である。
抗原としては、好ましくはウイルス抗原が挙げられる。抗原の由来ウイルスとしては、特に制限されないが、例えばインフルエンザウイルス(例えばA型、B型等)、風疹ウイルス、エボラウイルス、コロナウイルス、麻疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ムンプスウイルス、アルボウイルス、RSウイルス、SARSウイルス、肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス等)、黄熱ウイルス、エイズウイルス、狂犬病ウイルス、ハンタウイルス、デングウイルス、ニパウイルス、リッサウイルス等のエンベロープウイルス(エンベロープを有するウイルス); アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス、ポリオウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ヒトパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、ライノウイルス等の非エンベロープウイルス(エンベロープを有さないウイルス)等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはエンベロープウイルスが挙げられ、より好ましくはインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス等が挙げられる。
本発明の薬剤の使用態様は、特に制限されず、その種類に応じて適切な使用態様を採ることができる。本発明の薬剤は、その用途に応じて、例えばin vitroで使用する(例えば、培養細胞の培地に添加する。)こともできるし、in vivoで使用する(例えば、動物に投与する。)こともできる。
本発明の薬剤の適用対象は特に限定されないが、哺乳動物では、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、シカ等が挙げられる。また、細胞としては、動物細胞等が挙げられる。細胞の種類も特に制限されず、例えば血液細胞、造血幹細胞・前駆細胞、配偶子(***、卵子)、線維芽細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、神経細胞、肝細胞、ケラチン生成細胞、筋細胞、表皮細胞、内分泌細胞、ES細胞、iPS細胞、組織幹細胞、がん細胞等が挙げられる。
本発明の薬剤は、任意の剤形、例えば錠剤(口腔内側崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(ドリンク剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゼリー剤などの経口製剤形態や、注射用製剤(例えば、点滴注射剤(例えば点滴静注用製剤等)、静脈注射剤、筋肉注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤)、外用剤(例えば、軟膏剤、パップ剤、ローション剤)、坐剤吸入剤、眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、点耳剤、リポソーム剤等の非経口製剤形態を採ることができる。
本発明の薬剤の投与経路としては、所望の効果が得られる限り特に制限されず、経口投与、経管栄養、注腸投与等の経腸投与; 経静脈投与、経動脈投与、筋肉内投与、心臓内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与等の非経口投与等が挙げられる。
本発明の薬剤中の本発明の免疫賦活剤の含有量は、使用態様、適用対象、適用対象の状態等に左右されるものであり、限定はされないが、例えば0.0001~100重量%、好ましくは0.001~50重量%とすることができる。
本発明の薬剤を動物に投与する場合の投与量は、薬効を発現する有効量であれば特に限定されず、通常は、本発明の免疫賦活剤の重量として、一般に経口投与の場合には一日あたり0.1~1000 mg/kg体重、好ましくは一日あたり0.5~500 mg/kg体重であり、非経口投与の場合には一日あたり0.01~100 mg/kg体重、好ましくは0.05~50 mg/kg体重である。上記投与量は、年齢、病態、症状等により適宜増減することもできる。
本発明の免疫賦活剤は、医薬及び試薬以外にも、例えば食品添加剤、食品組成物(健康食品、健康増進剤、栄養補助食品(サプリメントなど)を包含する)、化粧品などの組成物(本明細書において、「本発明の組成物」と示すこともある。)の成分として、用いることができる。より具体的には、免疫賦活用のこれらの組成物として、用いることができる。
本発明の組成物の形態は、特に限定されず、用途に応じて、各用途において通常使用される形態をとることができる。
本発明の組成物の形態としては、用途が食品添加剤、健康増進剤、栄養補助食品(サプリメントなど)などである場合は、例えば錠剤(口腔内側崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゼリー剤などが挙げられる。
本発明の組成物の形態としては、用途が食品組成物の場合は、液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えばジュース、清涼飲料、茶、スープ、豆乳などの飲料、サラダ油、ドレッシング、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ふりかけ、育児用粉乳、ケーキミックス、乳製品(例えば、粉末状、液状、ゲル状、固形状等)、パン、菓子(例えば、クッキー等)などが挙げられる。
本発明の組成物は、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、食品添加剤、食品組成物、健康増進剤、栄養補助食品(サプリメントなど)、化粧品などに配合され得る成分である限り特に限定されるものではないが、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、着色料、香料、キレート剤などが挙げられる。
その他、本発明の組成物に関しては、本発明の薬剤と同様である。
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
試験例1.カチオン性脂質含有脂質粒子の免疫賦活作用
カチオン性脂質含有脂質粒子の免疫賦活作用を調べた。具体的には以下のようにして行った。
<試験例1-1.脂質粒子の調製>
溶質としてDOTAP(Lipoid社)のみを含有(DOTAP濃度1.0質量%)するエタノール溶液と25mM Sodium Acetate(pH4.0)とを、NanoAssemblr(Precision NanoSystems社製)を用いて1:3(エタノール溶液:Sodium Acetate、混合比)、15 mL/minで混合してリピッドナノ粒子(Lipid nanoparticle:LNP)化し、透析(5%グルコース水溶液)を行い、脂質粒子(DOTAP(037)又はDOTAP-Nano(037))を得た。
<試験例1-2.免疫賦活試験>
脂質粒子(DOTAP-Nano(037)又はDOTAP-Roche)と、抗原としてclassII 応答(CD4T細胞)を誘導するOVA(オボアルブミン)とを10:1(脂質:抗原、質量比)で混合してワクチン組成物を調製した。得られたワクチン組成物を、マウスの皮下(尻尾の付け根)に免疫(1匹あたり、脂質100ug)した。7日後に脾臓細胞を回収し、classI 応答(CD8T細胞)を誘導する257-264ペプチド(Eurofins社製)257-264ペプチド、又はOVAで刺激し、1日後の細胞上清中のIFN-γ量をELISA法で定量した。
刺激に257-264ペプチドを使用した場合の結果を図1Aに示し、刺激にOVAを使用した場合の結果を図1Bに示す。カチオン性脂質含有脂質粒子の使用により、IFN-γ量が顕著に上昇した。このことから、カチオン性脂質含有脂質粒子が免疫賦活作用(細胞性免疫誘導作用)を有することが分かった。
試験例2.免疫賦活作用に対する粒径の影響1
粒径が異なる2種類のカチオン性脂質含有脂質粒子の免疫賦活作用を調べた。具体的には以下のようにして行った。
<試験例2-1.脂質粒子の調製1>
試験例1-1と同一条件で脂質粒子(DOTAP-Nano(041))を得た。
<試験例2-2.脂質粒子の調製2>
DOTAP Liposomal Transfection Reagent(Roche社製)を脂質粒子(DOTAPのみから構成される粒子)を使用した。この脂質粒子は、MES(2-(N-morpholino)ethanesulfonic acid)緩衝液(pH6.3)中で調製されているので、この脂質粒子の緩衝液をDOTAP-Nanoと同じ緩衝液(PBS)に置換して、使用した(DOTAP-Roche)。
<試験例2-3.粒径の測定>
DOTAP-Nano(041)とDOTAP-Rocheの粒径(散乱光強度基準)を動的光散乱(DLS)法により測定した。さらに、これらの脂質粒子とモデルワクチン抗原であるOVAとを10:1(脂質:OVA、質量比)で混合した後、同様して動的光散乱(DLS)法により測定した。
結果を図2Aに示す。DOTAP-Nano(041)の粒径は40nmであり、DOTAP-Rocheの粒径は130nmであった。また、OVAとの混合により、粒径が大きく変化した。このことから、脂質粒子と抗原(OVA)とが複合体を形成していると考えられる。
<試験例2-4.免疫賦活試験>
刺激に257-264ペプチド(classI 応答(CD8T細胞)を誘導)のみを使用する以外は、試験例1-2と同様にして行った。
結果を図2Bに示す。粒径が100nm未満であるDOTAP-Nano(041)の方が顕著に強い免疫賦活作用を有することが分かった。
試験例3.免疫賦活作用に対する粒径の影響2
粒径が異なる3種類のカチオン性脂質含有脂質粒子の免疫賦活作用を調べた。具体的には以下のようにして行った。
<試験例3-1.脂質粒子の調製1>
1:2(エタノール溶液:Sodium Acetate、混合比)、12 mL/min以外は、試験例1-1と同一条件で脂質粒子(DOTAP-Nano(050))を得た。試験例2-3と同様にして粒径を測定した結果、その粒径は50nmであった。
<試験例3-2.脂質粒子の調製2>
1:3(エタノール溶液:Sodium Acetate、混合比)、12 mL/min以外は、試験例1-1と同一条件で脂質粒子(DOTAP-Nano(051))を得た。試験例2-3と同様にして粒径を測定した結果、その粒径は30nmであった。
<試験例3-3.脂質粒子の調製3>
1:4(エタノール溶液:Sodium Acetate、混合比)、12 mL/min以外は、試験例1-1と同一条件で脂質粒子(DOTAP-Nano(052))を得た。試験例2-3と同様にして粒径を測定した結果、その粒径は20nmであった。
<試験例3-4.免疫賦活試験>
刺激に257-264ペプチド(classI 応答(CD8T細胞)を誘導)のみを使用する以外は、試験例1-2と同様にして行った。
結果を図3に示す。本試験例の条件では、粒子サイズがより小さくなるにつれて免疫賦活作用が上昇する傾向が見られた。
試験例4.脂質粒子とCpG核酸との組合せ
脂質粒子にCpG核酸を組み合わせた場合の免疫賦活作用を調べた。具体的には以下のようにして行った。
脂質粒子(DOTAP-Nano(037))、CpG核酸(A型(D35又はA2216)、B型(K3)、C型(2395)、又はP型(21889))、及び抗原としてOVA(classII 応答(CD4T細胞)を誘導)を10:1:1(脂質:CpG核酸:抗原、質量比)で混合してワクチン組成物を調製した以外は、試験例1-2と同様にして免疫賦活試験を行った。
結果を図4に示す。脂質粒子にCpG核酸を組み合わせることにより、免疫賦活作用が10倍以上に高まることが分かった。
試験例5.脂質粒子とCpG核酸とアルミニウム塩との組合せ
脂質粒子にCpG核酸を組み合わせ、さらにアルミニウム塩を組合せた場合の免疫賦活作用を調べた。具体的には以下のようにして行った。
<試験例5-1.免疫賦活試験1>
脂質粒子(DOTAP-Nano(037))、CpG核酸(A型(D35))、アルミニウム塩(水酸化アルミニウム)、及び抗原としてOVAを10:1:4:1(脂質:CpG核酸:アルミニウム塩:抗原、質量比)で混合してワクチン組成物を調製した以外は、試験例1-2と同様にして免疫賦活試験を行った。
刺激にOVA323-339ペプチド(Eurofins社製、classII 応答(CD4T細胞)を誘導)を使用した場合の結果を図5Aに示し、刺激にOVAを使用した場合の結果を図5Bに示す。脂質粒子とCpG核酸との組合せに対してさらにアルミニウム塩を組み合わせることにより、免疫賦活作用が顕著に高まることが分かった。また、別の試験より、アルミニウム塩を組み合わせる場合においては、免疫賦活作用の観点からA型のCpG核酸が望ましいことも分かった。
<試験例5-2.免疫賦活試験2(抗体誘導試験)>
試験例5-1において、免疫から7日後に血清を回収し、OVAに対する抗体価をELISA法で定量した。
Total IgGの定量結果を図5Cに示し、IgG1の定量結果を図5Dに示し、IgG2cの定量結果を図5Eに示す。脂質粒子とCpG核酸との組合せに対してさらにアルミニウム塩を組み合わせることにより、免疫賦活作用(抗体誘導能)が顕著に高まることが分かった。
<試験例5-3.免疫賦活試験3(アルミニウム塩の種類)>
アルミニウム塩として水酸化アルミニウム以外にもリン酸化アルミニウムを使用する以外は、試験例5-1と同様にして行った。その結果、いずれのアルミニウム塩を使用した場合でも、免疫賦活作用は同程度であることが分かった。
試験例6.インフルエンザウイルス抗原への応用
アジュバントとして脂質粒子(DOTAP-Nano(037))又は水酸化アルミニウムと、抗原としてclassII 応答(CD4T細胞)を誘導するインフルエンザウイルススプリットワクチン抗原とを100:0.04(アジュバント:抗原、質量比)で混合してワクチン組成物を調製した。得られたワクチン組成物を、マウスの皮下(尻尾の付け根)に免疫(1匹あたり、アジュバント100ug)した。7日後に脾臓細胞を回収し、インフルエンザウイルススプリットワクチン抗原で刺激し、1日後の細胞上清中のIFN-γ量をELISA法で定量した。
また、免疫から7日後に血清を回収し、インフルエンザウイルススプリットワクチン抗原に対する抗体価(IgG2a)をELISA法で定量した。
IFN-γ量の測定結果を図6Aに示し、抗体価の測定結果を図6Bに示す。脂質粒子が他のアジュバントに比べて顕著に高い免疫賦活作用を発揮することが示された。
試験例7.ヘルペスウイルス抗原への応用
アジュバントとして脂質粒子(DOTAP-Nano(037))、CpG核酸(A型(D35))、又は水酸化アルミニウムと、抗原としてHHV-6Bとを100:10(アジュバント:抗原、質量比)で混合してワクチン組成物を調製した。得られたワクチン組成物を、マウスの皮下(尻尾の付け根)に免疫(1匹あたり、アジュバント100ug)した。7日後に脾臓細胞を回収し、p43ペプチドで刺激し、1日後の細胞上清中のIFN-γ量をELISA法で定量した。
結果を図7に示す。脂質粒子が他のアジュバントに比べて顕著に高い免疫賦活作用を発揮することが示された。

Claims (10)

  1. (A)カチオン性脂質含有脂質粒子a、CpGオリゴデオキシヌクレオチド及びアルミニウム塩を含有する
    疫賦活剤。
  2. 前記カチオン性脂質含有脂質粒子aがナノサイズである、請求項1に記載の免疫賦活剤。
  3. 前記カチオン性脂質が1,2-ジオレオイルオキシ-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、ジオレオイルジメチルアミノプロパン(DODAP)、N-1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、及びジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の免疫賦活剤。
  4. 前記カチオン性脂質の含有量が、前記脂質粒子を構成する脂質100質量%に対して80質量%以上である、請求項1~のいずれかに記載の免疫賦活剤。
  5. 前記カチオン性脂質の含有量が、前記脂質粒子を構成する脂質100質量%に対して95質量%以上である、請求項1~のいずれかに記載の免疫賦活剤。
  6. 前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドがAタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドである、請求項1~5のいずれかに記載の免疫賦活剤。
  7. 請求項1~のいずれかに記載の免疫賦活剤を含有する、医薬。
  8. ワクチン組成物である、請求項に記載の医薬。
  9. さらに抗原を含有する、請求項又はに記載の医薬。
  10. 抗ウイルス用である、請求項のいずれかに記載の医薬。
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