JP7339667B2 - 結晶化ガラス及びその製造方法 - Google Patents
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Description
Li2O:7.5~13.0モル%、
Na2O:2.0~5.0モル%、
K2O:0~3.5モル%、
(但し、Li2O+Na2O+K2O:9.5~15.0モル%)
ZnO:12.0~14.0モル%、
MgO:0.5~2.5モル%、
CaO:0~2.5モル%、
(但し、ZnO+MgO+CaO:12.5~15.0モル%)
GeO2:53.5~65.0モル%、
SiO2:5.0~14.5モル%、
Al2O3:0.5~10.0モル%、
ZrO2:0~2.5モル%、
P2O5:0~0.3モル%、及び
Ga2O3:0~7.0モル%、
(但し、GeO2+SiO2+Al2O3+ZrO2+P2O5+Ga2O3:70.0~78.0モル%)
の組成(但し、マンガンを考慮しない組成)を有し、
(SiO2+Al2O3)/(GeO2+SiO2+Al2O3+ZrO2+P2O5+Ga2O3)で表されるモル比(X)が0.075以上0.310以下であり、
MgO/(ZnO+MgO+CaO)で表されるモル比(Y)が0.034以上0.170以下である、成分群を含有するとともに、
マンガン(但し、価数は限定されない)を、前記成分群の酸化物換算の合計100質量部に対する外割りで0.0189~1.27質量部含有する結晶化ガラスであって、
Mn4+ドープのLi2Ge4O9結晶及び/又はLiNaGe4O9結晶を有し、且つ、
厚み10mmにおける波長700nmの光の透過率が60%以上である、ことを特徴とする。かかる結晶化ガラスは、透明性が保持されつつ、可視光励起により深赤色の波長領域でシャープな発光を示す結晶が内部に形成されている。
R=(Vc1-Vg)/(Vc2-Vg)
で表されるピーク強度比Rが1.0未満であることが好ましい。
原料を加熱して熔融し、酸化物換算で、
Li2O:7.5~13.0モル%、
Na2O:2.0~5.0モル%、
K2O:0~3.5モル%、
(但し、Li2O+Na2O+K2O:9.5~15.0モル%)
ZnO:12.0~14.0モル%、
MgO:0.5~2.5モル%、
CaO:0~2.5モル%、
(但し、ZnO+MgO+CaO:12.5~15.0モル%)
GeO2:53.5~65.0モル%、
SiO2:5.0~14.5モル%、
Al2O3:0.5~10.0モル%、
ZrO2:0~2.5モル%、
P2O5:0~0.3モル%、及び
Ga2O3:0~7.0モル%、
(但し、GeO2+SiO2+Al2O3+ZrO2+P2O5+Ga2O3:70.0~78.0モル%)
の組成(但し、Mnを考慮しない組成)を有し、
(SiO2+Al2O3)/(GeO2+SiO2+Al2O3+ZrO2+P2O5+Ga2O3)で表されるモル比(X)が0.075以上0.310以下であり、
MgO/(ZnO+MgO+CaO)で表されるモル比(Y)が0.034以上0.170以下である、成分群を含有するとともに、
マンガン(但し、価数は限定されない)を、前記成分群の酸化物換算の合計100質量部に対する外割りで0.0189~1.27質量部含有するガラスを作製するガラス化工程と、
前記ガラスを熱処理し、内部にMn4+ドープのLi2Ge4O9結晶及び/又はLiNaGe4O9結晶を析出させて、結晶化ガラスを得る熱処理工程と、
を備え、
前記ガラス化工程において原料を熔融する際の加熱温度(Z)を1200℃以上1350℃以下とし、
前記熱処理工程における熱処理温度(W)を520~540℃とする、ことを特徴とする。かかる製造方法によれば、透明性が保持されつつ、可視光励起により深赤色の波長領域でシャープな発光を示す結晶が内部に形成された結晶化ガラスを製造することができる。
本発明の一実施形態の結晶化ガラス(以下、「本実施形態の結晶化ガラス」と称することがある。)は、
酸化物換算で、
Li2O:7.5~13.0モル%、
Na2O:2.0~5.0モル%、
K2O:0~3.5モル%、
(但し、Li2O+Na2O+K2O:9.5~15.0モル%)
ZnO:12.0~14.0モル%、
MgO:0.5~2.5モル%、
CaO:0~2.5モル%、
(但し、ZnO+MgO+CaO:12.5~15.0モル%)
GeO2:53.5~65.0モル%、
SiO2:5.0~14.5モル%、
Al2O3:0.5~10.0モル%、
ZrO2:0~2.5モル%、
P2O5:0~0.3モル%、及び
Ga2O3:0~7.0モル%、
(但し、GeO2+SiO2+Al2O3+ZrO2+P2O5+Ga2O3:70.0~78.0モル%)
の組成(但し、マンガン(Mn)を考慮しない組成)を有し、
(SiO2+Al2O3)/(GeO2+SiO2+Al2O3+ZrO2+P2O5+Ga2O3)で表されるモル比(X)が0.075以上0.310以下であり、
MgO/(ZnO+MgO+CaO)で表されるモル比(Y)が0.034以上0.170以下である、成分群を含有するとともに、
マンガン(但し、価数は限定されない)を、前記成分群の酸化物換算の合計100質量部に対する外割りで0.0189~1.27質量部含有する結晶化ガラスであって、
Mn4+ドープのLi2Ge4O9結晶及び/又はLiNaGe4O9結晶を有し、且つ、
厚み10mmにおける波長700nmの光の透過率が60%以上である、ことを特徴とする。
本実施形態の結晶化ガラスは、組成の適正化が図られるとともに、後述の所定の製造方法により製造され得るものである。そのため、本実施形態の結晶化ガラスは、透明性が保持されながらも、所望の結晶(蛍光体材料)を内部に有することができ、従って、可視光励起により深赤色の波長領域でシャープな発光を示すことができる。このような結晶化ガラスは、様々な分野への応用範囲が広がる上、それによる新たな効果が期待できる。
本実施形態において、Li2Oは、Li2Ge4O9結晶及びLiNaGe4O9結晶の析出に寄与する重要な成分である。但し、Li2Oの割合が13.0モル%を超えると、熱処理時に結晶成長が過度に促進され、透明性が失われる。一方、Li2Oの割合が7.5モル%未満であると、原料を熔融するための温度が高くなることで、Mn4+がMn2+に還元され、結果として熱処理後にMn4+由来の発光が生じなくなる。そのため、Li2Oの割合は、7.5~13.0モル%とした。同様の観点から、Li2Oの割合は、7.5モル%以上であることが好ましく、9.5モル%以上であることがより好ましい。
本実施形態において、Na2Oは、LiNaGe4O9結晶の析出に寄与し、且つ、ガラス融液の安定性を高める重要な成分である。但し、Na2Oの割合が5.0モル%を超えると、熱処理時に所望の結晶以外の結晶が析出して、透明性が失われる。一方、Na2Oの割合が2.0モル%未満であると、ガラス融液の安定性が悪化するとともに、熱処理時に結晶成長が過度に促進され、透明性が失われる。そのため、Na2Oの割合は、2.0~5.0モル%とした。同様の観点から、Na2Oの割合は、2.2モル%以上であることが好ましく、2.8モル%以上であることがより好ましく、また、4.8モル%以下であることが好ましく、4.0モル%以下であることがより好ましい。
本実施形態において、K2Oは、ガラス融液の安定性を高める成分である。但し、K2Oの割合が3.5モル%を超えると、熱処理時に所望の結晶以外の結晶が析出して、透明性が失われる。そのため、K2Oの割合は、0~3.5モル%とした。同様の観点から、K2Oの割合は、2.0モル%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、また、ガラス融液の安定性をより高める観点から、0.1モル%以上であることが好ましく、0.4モル%以上であることがより好ましい。
本実施形態において、Li2O、Na2O及びK2Oの合計の割合が9.5モル%未満であると、原料を熔融するための温度が高くなることで、Mn4+がMn2+に還元され、結果として熱処理後にMn4+由来の発光が生じなくなる。一方、Li2O、Na2O及びK2Oの合計の割合が15.0モル%を超えると、熱処理時に所望の結晶以外の結晶が析出して、透明性が失われる。そのため、Li2O、Na2O及びK2Oの合計の割合は、9.5~15.0モル%とした。同様の観点から、Li2O、Na2O及びK2Oの合計の割合は、10.0モル%以上であることが好ましく、また、13.0モル%以下であることが好ましい。
本実施形態において、ZnOは、ガラス融液の安定性を高めるとともに、結晶の析出や成長を調整し得る重要な成分である。但し、ZnOの割合が14.0モル%を超えると、熱処理時に所望の結晶以外の結晶が析出して、透明性が失われる。一方、ZnOの割合が12.0モル%未満であると、熱処理時に結晶成長が過度に促進され、透明性が失われる。そのため、ZnOの割合は、12.0~14.0モル%とした。同様の観点から、ZnOの割合は、12.7%以上であることが好ましく、13.1%以上であることがより好ましく、また、13.8モル%以下であることが好ましく、13.5%以下であることがより好ましい。
本実施形態において、MgOは、ガラス融液の安定性を高めるとともに、結晶成長を調整し得る重要な成分である。但し、MgOの割合が2.5モル%を超えると、かえってガラス融液の安定性が悪化するとともに、原料を熔融するための温度が高くなることで、Mn4+がMn2+に還元され、結果として熱処理後にMn4+由来の発光が生じなくなる。一方、MgOの割合が0.5モル%未満であると、熱処理時に結晶成長が過度に促進され、透明性が失われる。そのため、MgOの割合は、0.5~2.5モル%とした。同様の観点から、MgOの割合は、0.7モル%以上であることが好ましく、0.9モル%以上であることがより好ましく、また、2.0%以下であることが好ましく、1.8%以下であることがより好ましい。
本実施形態において、CaOは、ガラス融液の安定性を高める成分である。但し、CaOの割合が2.5モル%を超えると、かえってガラス融液の安定性が悪化して、冷却後にガラスが形成されない虞がある。そのため、CaOの割合は、0~2.5モル%とした。同様の観点から、CaOの割合は、2.0モル%以下であることが好ましく、1.6%以下であることがより好ましく、また、ガラス融液の安定性をより高める観点から、0.2モル%以上であることが好ましく、0.4モル%以上であることがより好ましい。
本実施形態において、ZnO、MgO及びCaOの合計の割合が12.5モル%未満であると、熱処理時に結晶成長が過度に促進され、透明性が失われる。一方、ZnO、MgO及びCaOの合計の割合が15.0モル%を超えると、熱処理時に所望の結晶以外の結晶が析出して、透明性が失われる。そのため、ZnO、MgO及びCaOの合計の割合は、12.5~15.0モル%とした。同様の観点から、ZnO、MgO及びCaOの合計の割合は、13.5モル%以上であることが好ましく、また、14.5モル%以下であることが好ましい。
本実施形態において、GeO2は、ガラス融液の安定性を高めるとともに、Li2Ge4O9結晶及びLiNaGe4O9結晶の析出に寄与する重要な成分である。但し、GeO2の割合が65.0モル%を超えると、熱処理時に結晶成長が過度に促進され、透明性が失われる。一方、GeO2の割合が53.5モル%未満であると、ガラス融液の安定性を十分に高めることができず、冷却後にガラスが形成されない虞がある。そのため、GeO2の割合は、53.5~65.0モル%とした。同様の観点から、GeO2の割合は、55.5モル以上であることが好ましく、57.0モル%以上であることがより好ましく、また、64.5モル%以下であることが好ましく、63.0モル%以下であることがより好ましい。
本実施形態において、SiO2は、ガラス融液の安定性を高めるとともに、結晶成長を調整し得る重要な成分である。但し、SiO2の割合が14.5モル%を超えると、熱処理をしても結晶を析出させることができない虞がある。一方、SiO2の割合が5.0モル%未満であると、熱処理時に結晶成長が過度に促進され、透明性が失われる。そのため、SiO2の割合は、5.0~14.5モル%とした。同様の観点から、SiO2の割合は、6.5モル%以上であることが好ましく、7.5モル%以上であることがより好ましく、また、11.0モル%以下であることが好ましく、10.0モル%以下であることがより好ましい。
本実施形態において、Al2O3は、ガラス融液の安定性を高めるとともに、結晶成長を調整し得る重要な成分である。但し、Al2O3の割合が10.0モル%を超えると、原料を熔融するための温度が高くなることで、Mn4+がMn2+に還元され、結果として熱処理後にMn4+由来の発光が生じなくなる。一方、Al2O3の割合が0.5モル%未満であると、熱処理時に結晶成長が過度に促進され、透明性が失われる。そのため、Al2O3の割合は、0.5~10.0モル%とした。同様の観点から、Al2O3の割合は、0.6モル%以上であることが好ましく、0.8モル%以上であることがより好ましく、また、8.0%以下であることが好ましく、5.0%以下であることがより好ましい。
本実施形態において、ZrO2は、ガラス融液の安定性を高める成分である。但し、ZrO2の割合が2.5モル%を超えると、原料を熔融するための温度が高くなることで、Mn4+がMn2+に還元され、結果として熱処理後にMn4+由来の発光が生じなくなる。そのため、ZrO2の割合は、0~2.5モル%とした。同様の観点から、ZrO2の割合は、2.0モル%以下であることが好ましく、1.0モル%以下であることがより好ましく、また、ガラス融液の安定性をより高める観点から、0.2モル%以上であることが好ましく、0.5モル%以上であることがより好ましい。
本実施形態において、P2O5は、原料を熔融するための温度を低下させる成分である。但し、P2O5の割合が0.3モル%を超えると、ガラス融液の安定性が悪化して、冷却後にガラスが形成されない虞がある。そのため、P2O5の割合は、0~0.3モル%とした。同様の観点から、P2O5の割合は、0.25モル%以下であることが好ましく、また、原料を熔融するための温度を効果的に低下させる観点から、0.1モル%以上であることが好ましく、0.15モル%以上であることがより好ましい。
本実施形態において、Ga2O3は、ガラス融液の安定性を高める成分である。但し、Ga2O3の割合が7.0モル%を超えると、熱処理時に所望の結晶以外の結晶が析出して、透明性が失われる。そのため、Ga2O3の割合は、0~7.0モル%とした。同様の観点から、Ga2O3の割合は、5.0モル%以下であることが好ましく、2.0モル%以下であることがより好ましく、また、ガラス融液の安定性をより高める観点から、0.2モル%以上であることが好ましく、0.5モル%以上であることがより好ましい。
本実施形態において、GeO2、SiO2、Al2O3、ZrO2、P2O5及びGa2O3の合計の割合が70.0モル%未満であると、ガラス融液の安定性を十分に高めることができず、冷却後にガラスが形成されない虞がある。一方、GeO2、SiO2、Al2O3、ZrO2、P2O5及びGa2O3の合計の割合が78.0モル%を超えると、熱処理時に結晶成長が過度に促進され、透明性が失われる。そのため、GeO2、SiO2、Al2O3、ZrO2、P2O5及びGa2O3の合計の割合は、70.0~78.0モル%とした。同様の観点から、GeO2、SiO2、Al2O3、ZrO2、P2O5及びGa2O3の合計の割合は、71.0モル%以上であることが好ましく、また、75.0モル%以下であることが好ましい。
本実施形態の結晶化ガラスにおいては、(SiO2+Al2O3)/(GeO2+SiO2+Al2O3+ZrO2+P2O5+Ga2O3)で表されるモル比(X)を、0.075以上0.310以下とする。上記モル比(X)が0.075未満であると、熱処理時に所望の結晶以外の結晶が析出して、透明性が失われるからである。また、上記モル比(X)が0.310を超えると、原料を熔融するための温度が高くなることで、Mn4+がMn2+に還元され、結果として熱処理後にMn4+由来の発光が生じなくなるからである。
本実施形態の結晶化ガラスにおいては、MgO/(ZnO+MgO+CaO)で表されるモル比(Y)を、0.034以上0.170以下とする。上記モル比(Y)が0.034未満であると、熱処理時に所望の結晶以外の結晶が析出して、透明性が失われるからである。また、上記モル比(Y)が0.170を超えると、原料を熔融するための温度が高くなることで、Mn4+がMn2+に還元され、結果として熱処理後にMn4+由来の発光が生じなくなるからである。
本実施形態の結晶化ガラスは、目的を外れない限り、上述した成分以外のその他の成分、例えば、酸化物表記で、Fe2O3、Cr2O3、NiO、TiO2、Nb2O5、SnO2、Bi2O3、Ta2O5、WO3、RE2O3(REは、希土類元素、即ち、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)~Lu(ルテチウム)(但し、Pm(プロメチウム)を除く)を表す)などを適宜含有することができる。但し、より確実に所望の効果を得る観点から、本実施形態の結晶化ガラスにおける上述のその他の成分の割合は、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、3モル%以下であることが更に好ましく、1モル%以下であることが一層好ましく、実質的に0モル%であることが特に好ましい。
なお、本明細書において「実質的に含有しない」とは、当該成分が不純物として不可避的に混入する、具体的には、当該成分が0.2モル%以下の割合で含有する場合を包含するものとする。
本実施形態の結晶化ガラスは、上述した成分群に加え、マンガン(Mn)を含有する。本実施形態の結晶化ガラスにおいて、マンガンは、例えば、2価(酸化物表記でMnO)、3価(酸化物表記でMn2O3)、4価(酸化物表記でMnO2)等の状態で存在することができる。そして、本実施形態の結晶化ガラスは、少なくとも4価のマンガン(Mn4+)を含有することを要する。4価のマンガン(Mn4+)は、可視光励起により深赤色の波長領域でシャープな発光を示すための発光中心となる重要なカチオンである。
なお、本明細書において「上述した成分のみからなる」とは、当該成分以外の不純物成分が不可避的に混入する、具体的には、不純物成分の割合が0.2モル%以下である場合を包含するものとする。
なお、結晶化ガラスが上述した結晶を含むか否かの判断は、X線回折により求めることができる。
R=(Vc1-Vg)/(Vc2-Vg)
で表されるピーク強度比Rが1.0未満であることが好ましい。換言すると、本実施形態の結晶化ガラスは、DTA曲線において、第1結晶化ピーク温度での強度が、第2結晶化ピーク温度での強度よりも小さいことが好ましい。この場合、熱処理時における過度な結晶成長が抑えられるため、透明性を良好に保持することができる。同様の観点から、上記ピーク強度比Rは、0.9以下であることがより好ましく、0.7以下であることが更に好ましい。
本発明の一実施形態の結晶化ガラスの製造方法(以下、「本実施形態の製造方法」と称することがある。)は、上述した結晶化ガラスを製造するための方法である。そして、本実施形態の製造方法は、
原料を加熱して熔融し、酸化物換算で、
Li2O:7.5~13.0モル%、
Na2O:2.0~5.0モル%、
K2O:0~3.5モル%、
(但し、Li2O+Na2O+K2O:9.5~15.0モル%)
ZnO:12.0~14.0モル%、
MgO:0.5~2.5モル%、
CaO:0~2.5モル%、
(但し、ZnO+MgO+CaO:12.5~15.0モル%)
GeO2:53.5~65.0モル%、
SiO2:5.0~14.5モル%、
Al2O3:0.5~10.0モル%、
ZrO2:0~2.5モル%、
P2O5:0~0.3モル%、及び
Ga2O3:0~7.0モル%、
(但し、GeO2+SiO2+Al2O3+ZrO2+P2O5+Ga2O3:70.0~78.0モル%)
の組成(但し、Mnを考慮しない組成)を有し、
(SiO2+Al2O3)/(GeO2+SiO2+Al2O3+ZrO2+P2O5+Ga2O3)で表されるモル比(X)が0.075以上0.310以下であり、
MgO/(ZnO+MgO+CaO)で表されるモル比(Y)が0.034以上0.170以下である、成分群を含有するとともに、
マンガン(但し、価数は限定されない)を、前記成分群の酸化物換算の合計100質量部に対する外割りで0.0189~1.27質量部含有するガラスを作製するガラス化工程と、
前記ガラスを熱処理し、内部にMn4+ドープのLi2Ge4O9結晶及び/又はLiNaGe4O9結晶を析出させて、結晶化ガラスを得る熱処理工程と、
を備える。そして、本実施形態の製造方法は、
前記ガラス化工程において原料を熔融する際の加熱温度(Z)を1200℃以上1350℃以下とし、
前記熱処理工程における熱処理温度(W)を520~540℃とする、ことを一特徴とする。
かかる本実施形態の製造方法によれば、上述した結晶化ガラス、即ち、透明性が保持されつつ、可視光励起により深赤色の波長領域でシャープな発光を示す蛍光体材料が内部に形成されたガラスを作製することができる。
上述の通り、ガラス化工程では、原料を加熱して全て熔融し、所定の組成を有するガラス(未結晶化)を作製する。なお、ガラス化工程で作製するガラスにおける各成分の好適な割合等は、上述した結晶化ガラスについて既述した各成分の好適な割合等と同様である。
なお、上述したマンガンの割合「0.0189~1.27質量部」は、MnO2に換算すると、およそ0.03~2.0質量部に相当する。
なお、ガラス化工程では、原料が所定の加熱温度(Z)で確実に熔融するように、原料の種類やガラスの組成を適宜調整することが肝要である。
熱処理工程では、上記で作製したガラスを熱処理する。この熱処理では、ガラス化工程で3価(Mn3+)に制御されたマンガンが、何らかのエネルギーの受け渡しにより、4価に変わるものと考えられる。そして、この熱処理により、Mn4+ドープのLi2Ge4O9結晶及び/又はLiNaGe4O9結晶がガラス内部で析出し、結晶化ガラスが得られる。
各成分のガラス原料として、各々相当する酸化物、炭酸塩又は硝酸塩を準備し、ガラス化した後の組成が表1~表4に示す通りとなるように秤量し、混合して、調合原料を得た。なお、マンガンの原料としては、MnO2を用いた。この調合原料を白金坩堝に投入し、電気炉にて原則1200~1350℃の範囲内の温度まで加熱して数時間熔融し、適時撹拌して均質化を図った。次いで、清澄化してから、金型に流し出し、除歪及び冷却を行って、ガラスを得た。このとき、熔融時の加熱温度(Z)及び安定性の評価を、下記手順に従い行った。結果を表1~表4に示す。
また、得られたガラスブロック(熱処理前のガラス)を、10mm×10mm×10mm(縦×横×厚さ)に加工し、両面を光学研磨して、評価用サンプルを得た。かかるサンプルは、後述する熱処理後のサンプルとともに、透明性及び析出結晶の評価に用いた。
熔融時の加熱温度(Z)は、温度設定がなされた電気炉に入れておいた白金坩堝に調合原料を投入し、1時間経過した後に、均一な液面(結晶が析出しておらず、膜が形成されていない状態)が観察されたときの、当該電気炉の温度とした。
熔融した後の融液を、白金坩堝ごと炉外へ取り出し、撹拌してから失透が生じるまでの時間を計測した。そして、以下の基準に従い、安定性の評価を行った。
1分未満(ガラス化しない)・・・×
1分以上2分未満・・・△
2分以上・・・〇
上記のようにして得られたガラスを、およそ530℃で1時間熱処理した。これにより、いくつかの例においては、ガラスの一部が結晶化した。得られたガラスブロック(結晶化ガラス)を、10mm×10mm×10mm(縦×横×厚さ)に加工し、両面を光学研磨して、評価用サンプルを得た。かかるサンプルを用い、透明性、発光特性、析出結晶及び結晶化温度のピーク強度比Rの評価を、下記手順に従い行った。透明性、発光特性及び析出結晶の評価結果を表1~表4に示す。
上記サンプル(熱処理前のガラス及び熱処理後のガラス)について、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、紫外可視近赤外分光光度計、「U-4100」)を用い、透過スペクトルを得た。そして、得られたスペクトルから、波長700nmの光の透過率(700nm透過率)を読み取り、以下の基準に従い、透明性の評価を行った。なお、ガラスが形成されない等により評価できなかったものは、表中で「-」と示した。
熱処理前及び熱処理後のサンプルのいずれも、700nm透過率60%以上・・・〇
少なくとも熱処理後のサンプルが、700nm透過率60%未満・・・×
発光特性は、発光スペクトルを用いて評価した。より具体的に、上記サンプル(熱処理後のガラス)について、蛍光光度計を用い、励起光として430nmの光を照射した際に得られる発光スペクトルを得た。そして、630nm~700nm(深赤色の波長領域)において比較的シャープなスペクトルが観測された場合(ピークの半値幅が25nm以下であった場合)には、Mn4+の存在が認められるため「4+」と評価し、560nm~700nm付近において比較的ブロードなスペクトルが観測された場合(ピークの半値幅が25nm超であった場合)には、Mn4+の存在が認められず、「2+」と評価した。なお、ガラスが形成されない等により評価できなかったものは、表中で「-」と示した。
上記サンプル(熱処理前のガラス及び熱処理後のガラス)について、X線回折装置(株式会社リガク製、試料水平型X線回折装置「Ultima IV」)を用い、X線回折パターンを得た。そして、得られたX線回折パターンから、析出した結晶を確認した。熱処理後のガラスにおいて、Li2Ge4O9結晶及びLiNaGe4O9結晶の少なくともいずれかのみが確認された場合を「L」と評価し、Li2Ge4O9結晶及びLiNaGe4O9結晶の少なくともいずれかに加え、これら以外の結晶が確認された場合を「M」と評価し、結晶が確認されなかった場合を「N」と評価した。なお、ガラスが形成されない等により評価できなかったものは、表中で「-」と示した。
上記サンプル(熱処理後のガラス)について、示差熱分析装置(株式会社マック・サイエンス製、「TG-DTA2000S」)を用い、DTA曲線(横軸:温度(℃)、縦軸:起電力(μV))を得た。そして、得られたDTA曲線から、ガラス転移温度(Tg)と、Tg以上の温度領域における第1結晶化ピーク温度(Tc1、560℃付近)と、Tc1以上の温度領域における第2結晶化ピーク温度(Tc2、600℃付近)とを求めた。そして、Tg、Tc1及びTc2における起電力をそれぞれVg、Vc1及びVc2(いずれもμV)としたときに、下式:
R=(Vc1-Vg)/(Vc2-Vg)
で表されるピーク強度比Rを求めた。その結果、実施例の熱処理後のガラス(結晶化ガラス)はいずれも、R<1.0であることを確認した。
比較例2のガラスは、深赤色の波長領域でシャープな発光を示さなかった。これは、Li2Oの量が少なすぎて、原料を熔融するための温度が高くなり、結果としてMn4+がMn2+に還元されたことに因るものと考えられる。
比較例4の熱処理後のガラスは、透明性に劣っていた。これは、Na2Oの量が少なすぎて、ガラス融液の安定性が悪化したことや、熱処理時に結晶成長が過度に促進されたことに因るものと考えられる。
比較例7の熱処理後のガラスは、透明性に劣っていた。これは、ZnOの量が少なすぎて、熱処理時に結晶成長が過度に促進されたことに因るものと考えられる。
比較例9の熱処理後のガラスは、透明性に劣っていた。これは、MgOの量が少なすぎて、熱処理時に結晶成長が過度に促進されたことに因るものと考えられる。
比較例12では、ガラス融液の安定性が悪く、冷却後にガラスを形成しなかった。これは、GeO2の量が少なすぎたことに因るものと考えられる。
比較例14の熱処理後のガラスは、透明性に劣っていた。これは、SiO2の量が少なすぎて、熱処理時に結晶成長が過度に促進されたことに因るものと考えられる。
比較例16の熱処理後のガラスは、透明性に劣っていた。これは、Al2O3の量が少なすぎて、熱処理時に結晶成長が過度に促進されたことに因るものと考えられる。
比較例21の熱処理後のガラスは、深赤色の波長領域でシャープな発光を示さなかった。これは、Mnの量が少なすぎて、熱処理後に4価のMnを保持することができなかったことに因るものと考えられる。
比較例23の熱処理後のガラスは、透明性に劣っていた。これは、モル比(X)が小さすぎて、熱処理時に所望の結晶以外の結晶が析出したことに因るものと考えられる。
比較例25の熱処理後のガラスは、透明性に劣っていた。これは、モル比(Y)が小さすぎて、熱処理時に所望の結晶以外の結晶が析出したことに因るものと考えられる。
比較例27では、均一なガラスを得ることができなかった。これは、熔融時の加熱温度(Z)が低すぎたことに因るものと考えられる。
比較例28~30の熱処理後のガラスは、いずれも、Mn4+ドープのLi2Ge4O9結晶又はLiNaGe4O9結晶が確認されたが、透明性に劣っていた。これは、組成が適正化されたものではないため、熱処理時に結晶成長が過度に促進されたことに因るものと考えられる。
比較例31の熱処理後のガラスは、Li2Ge4O9結晶が確認されたが、透明性に劣り、また、深赤色の波長領域でシャープな発光を示さなかった。これは、更に析出したZn2GeO4結晶の影響により透明性が失われ、また、Mn2+ドープのZn2GeO4結晶による緑色の波長領域での発光が支配的になったことに因るものと考えられる。
Claims (4)
- 酸化物換算で、
Li2O:7.5~13.0モル%、
Na2O:2.0~5.0モル%、
K2O:0~3.5モル%、
(但し、Li2O+Na2O+K2O:9.5~15.0モル%)
ZnO:12.0~14.0モル%、
MgO:0.5~2.5モル%、
CaO:0~2.5モル%、
(但し、ZnO+MgO+CaO:12.5~15.0モル%)
GeO2:53.5~65.0モル%、
SiO2:5.0~14.5モル%、
Al2O3:0.5~10.0モル%、
ZrO2:0~2.5モル%、
P2O5:0~0.3モル%、及び
Ga2O3:0~7.0モル%、
(但し、GeO2+SiO2+Al2O3+ZrO2+P2O5+Ga2O3:70.0~78.0モル%)
の組成(但し、マンガンを考慮しない組成)を有し、
(SiO2+Al2O3)/(GeO2+SiO2+Al2O3+ZrO2+P2O5+Ga2O3)で表されるモル比(X)が0.075以上0.310以下であり、
MgO/(ZnO+MgO+CaO)で表されるモル比(Y)が0.034以上0.170以下である、成分群を含有するとともに、
マンガン(但し、価数は限定されない)を、前記成分群の酸化物換算の合計100質量部に対する外割りで0.0189~1.27質量部含有する結晶化ガラスであって、
Mn4+ドープのLi2Ge4O9結晶及び/又はLiNaGe4O9結晶を有し、且つ、
厚み10mmにおける波長700nmの光の透過率が60%以上である、ことを特徴とする、結晶化ガラス。 - 430nmの光を照射した際の発光スペクトルにおける、630nm~700nmの範囲内にあるピークの半値幅が25nm以下である、請求項1に記載の結晶化ガラス。
- 示差熱分析(DTA)により得られるDTA曲線(横軸:温度(℃)、縦軸:起電力(μV))において、ガラス転移温度(Tg)での起電力をVg(μV)とし、前記ガラス転移温度(Tg)以上の温度領域における第1結晶化ピーク温度での起電力をVc1(μV)とし、前記第1結晶化ピーク温度以上の温度領域における第2結晶化ピーク温度での起電力をVc2(μV)としたときに、下式:
R=(Vc1-Vg)/(Vc2-Vg)
で表されるピーク強度比Rが1.0未満である、請求項1又は2に記載の結晶化ガラス。 - 請求項1~3のいずれかに記載の結晶化ガラスの製造方法であって、
原料を加熱して熔融し、酸化物換算で、
Li2O:7.5~13.0モル%、
Na2O:2.0~5.0モル%、
K2O:0~3.5モル%、
(但し、Li2O+Na2O+K2O:9.5~15.0モル%)
ZnO:12.0~14.0モル%、
MgO:0.5~2.5モル%、
CaO:0~2.5モル%、
(但し、ZnO+MgO+CaO:12.5~15.0モル%)
GeO2:53.5~65.0モル%、
SiO2:5.0~14.5モル%、
Al2O3:0.5~10.0モル%、
ZrO2:0~2.5モル%、
P2O5:0~0.3モル%、及び
Ga2O3:0~7.0モル%、
(但し、GeO2+SiO2+Al2O3+ZrO2+P2O5+Ga2O3:70.0~78.0モル%)
の組成(但し、Mnを考慮しない組成)を有し、
(SiO2+Al2O3)/(GeO2+SiO2+Al2O3+ZrO2+P2O5+Ga2O3)で表されるモル比(X)が0.075以上0.310以下であり、
MgO/(ZnO+MgO+CaO)で表されるモル比(Y)が0.034以上0.170以下である、成分群を含有するとともに、
マンガン(但し、価数は限定されない)を、前記成分群の酸化物換算の合計100質量部に対する外割りで0.0189~1.27質量部含有するガラスを作製するガラス化工程と、
前記ガラスを熱処理し、内部にMn4+ドープのLi2Ge4O9結晶及び/又はLiNaGe4O9結晶を析出させて、結晶化ガラスを得る熱処理工程と、
を備え、
前記ガラス化工程において原料を熔融する際の加熱温度(Z)を1200℃以上1350℃以下とし、
前記熱処理工程における熱処理温度(W)を520~540℃とする、ことを特徴とする、結晶化ガラスの製造方法。
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星野愛信,外3名,"Mn添加Li2O-ZnO-GeO2系ガラスの結晶化時間による発光色の変化",第75回応用物理学会学術講演会講演予稿集,日本,応用物理学会,2014年09月01日,2014年秋,16-018,18p-A26-9 |
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