JP7228483B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Description
従来のトナーの結着樹脂として汎用されているビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を用いたポリエステル樹脂にワックスを含有させたトナーでは、低温定着性、耐ホットオフセット、及び耐久性の性能を満たすことが困難である。何故ならば、ポリエステル樹脂にワックスを含有させたことにより、低温定着性と耐ホットオフセット性は向上する。しかしながら、マシンの高速化によって、より低温定着性と耐ホットオフセット性の向上が必要になるためワックス配合量を増加させると、ポリエステル樹脂とワックスの相溶性が低いため、ポリエステル樹脂中でのワックスの分散性が悪化するからである。その結果、トナー表面上にワックスが露出しやすくなり、耐久性の低下する傾向があるからである。
特許文献1では、短鎖の疎水モノマーをポリエステル樹脂に組み込むことで低温定着性と耐ホットオフセット性は良化するが、トナーのガラス転移温度の低下により熱的に弱くなるため、耐久性が悪化する。
特許文献2では、炭素数2又は3のα-オレフィン重合体のような結晶性のワックス相溶化剤を用いると、耐ホットオフセット性は向上するが耐久性が悪化する。
特許文献3では、結晶性のポリプロピレン重合体を用いると、特許文献2と同様に、耐ホットオフセット性は向上するが耐久性が悪化する。
〔1〕 ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分由来の構成単位と、非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aを含むカルボン酸成分由来の構成単位とを有する非晶質ポリエステル樹脂A、及びワックスを含有する、静電荷像現像用トナー、
〔2〕 ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分と、非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aを含むカルボン酸成分との重縮合物である非晶質ポリエステル樹脂A、及びワックスを含有する、静電荷像現像用トナー、並びに
〔3〕 ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分と非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物A以外のカルボン酸成分との重縮合物に、該酸変性物Aが重縮合した重縮合物である非晶質ポリエステル樹脂A、及びワックスを含有する、静電荷像現像用トナー
に関する。
酸変性物の結晶性は、後述の樹脂の結晶性と同様に結晶性指数([軟化点/吸熱の最高ピーク温度])によって表わされる。非晶質の酸変性物は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上の樹脂であるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下の樹脂である。また、吸熱の最高ピーク温度が検出されないものも非晶質であると判断する。
で表される化合物が好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。吸熱の最高ピーク温度が検出されないものは非晶質であり、検出される場合は樹脂と同様の方法により軟化点を測定して、結晶性指数(軟化点/吸熱の最高ピーク温度)を算出して判断する。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフランに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量分布測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(Mw 5.0×102)、A-1000(Mw 1.01×103)、A-2500(Mw 2.63×103)、A-5000(Mw 5.97×103)、F-1(Mw 1.02×104)、F-2(Mw 1.81×104)、F-4(Mw 3.97×104)、F-10(Mw 9.64×104)、F-20(Mw 1.90×105)、F-40(Mw 4.27×105)、F-80(Mw 7.06×105)、F-128(Mw 1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー(株)製)
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
JIS K0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
示差走査熱量計「DSC Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度をワックスの融点とする。
JIS K2235に従って測定する。
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター(株)製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマン・コールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマン・コールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
表1に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1に示すテレフタル酸を添加し、160℃まで昇温し、表1に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃まで昇温し、235℃で10時間反応させた後、235℃、8.0kPaにて1時間反応させた。160℃まで冷却し、表1に示す酸変性物を添加し、再度、235℃まで昇温し、235℃で5時間重縮合反応させた後、200℃まで冷却し、無水トリメリット酸を添加し、200℃で1時間重縮合反応させ、さらに200℃、8.0kPaにて表1に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A1~A6)を得た。
表1に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1に示すテレフタル酸を添加し、160℃まで昇温し、表1に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃まで昇温し、235℃で10時間反応させた後、235℃、8.0kPaにて1時間反応させた。その後、200℃まで冷却し、表1に示す無水トリメリット酸を添加し、200℃で5時間重縮合反応させ、さらに200℃、8.0kPaにて表1に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A7)を得た。
表1に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1に示すテレフタル酸を添加し、160℃まで昇温し、表1に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃まで昇温し、235℃で10時間反応させた後、235℃、8.0kPaにて1時間反応させた。160℃まで冷却し、表1に示す炭素数10~14のアルケニル基で置換されたアルケニル無水コハク酸及び無水トリメリット酸を添加し、200℃まで昇温し、200℃で1時間重縮合反応させ、さらに200℃、8.0kPaにて表1に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A8)を得た。
表1に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1に示すテレフタル酸を添加し、160℃まで昇温し、表1に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃まで昇温し、235℃で10時間反応させた後、235℃、8.0kPaにて1時間反応させた。160℃まで冷却し、表1に示す酸変性物を添加し、再度、235℃まで昇温し、235℃で5時間重縮合反応させた後、200℃まで冷却し、表1に示す無水トリメリット酸を添加し、200℃で1時間重縮合反応させ、さらに200℃、8.0kPaにて表1に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A9)を得た。
表2に示す結着樹脂及びワックスと、着色剤「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー(P.B.15:3))3.0質量部及び荷電制御剤「ボントロンE-304」(オリエント化学工業(株)製)0.5質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて1分間攪拌した後、以下に示す条件で溶融混練した。
同方向回転二軸押出機「PCM-30」((株)池貝製、軸の直径 2.9cm、軸の断面積 7.06cm2)を使用した。運転条件は、バレル設定温度 120℃、軸回転数 200r/min(軸の回転の周速 0.30m/sec)、混合物供給速度 10kg/h(軸の単位断面積あたりの混合物供給量 1.42kg/h・cm2)であった。
未定着画像を取れるように改造した、プリンター「OKI MICROLINE 5400」(沖データ社製)にトナーを充填し、2cm角のベタ画像の未定着画像を印刷した。「OKI MICROLINE 3010」(沖データ社製)を改造した外部定着装置を使用して、定着ロールの回転速度150mm/secにて、定着ロールの温度を100℃から200℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度でこの未定着画像の定着処理を行い、定着画像を得た。各定着温度で得られた画像にメンディングテープ(住友スリーエム社製)を付着させた後、500gの円筒上の重石を載せることにより、十分にテープを定着画像に付着させた。その後、ゆっくりとテープを定着画像より剥がした。テープを貼る前と剥がした後の画像濃度を画像濃度測定器「Gretag SPM50」(GretagMacbeth社製)を用いて測定し、擦り前後の画像濃度比率([剥離後/貼付前]×100)が最初に90%を超える温度を最低定着温度とし、低温定着性の指標とした。結果を表2に示す。最低定着温度が低いほど低温定着性に優れることを示す。
試験例1の定着性試験で得られた100℃~200℃の定着画像を目視で確認し、ホットオフセットの発生が見られない定着ロールの最高温度を最高定着温度とした。結果を表2に示す。
現像ローラを目視で見ることができるように改造した沖データ社製のIDカートリッジ「ML-5400用、イメージドラム」にトナーを実装し、温度30℃、相対湿度50%の条件下で、70r/min(36ppm相当)で空回し運転を行い、現像ローラ上のフィルミングを目視にて観察した。フィルミング発生までの時間を耐久性の指標とした。結果を表2に示す。フィルミング発生までの時間が長いほど、耐久性に優れることを示す。
なかでも、実施例1~4の対比から、酸変性物の増量とともに、ワックスの分散性が向上し、耐ホットオフセット性と耐久性をより高いレベルで両立することができ、非晶質の酸変性部位の増加により低温定着性も向上していることが分かる。
フィッシャートロプシュワックスを使用している実施例3は、ポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックスを使用している実施例5、6と対比すると、ワックスの分散性がより向上し、かつ、耐ホットオフセット性と耐久性もより向上している。また、実施例3は、エステルワックスを使用している実施例7と対比すると、離形性が高く熱的に強いため、耐久性がより向上する。
さらに、実施例3は、フィッシャートロプシュワックスとエステルワックスを混合している実施例8と対比すると、低温定着性と耐ホットオフセット性は同等であるが、耐久性がより向上している。
実施例9、10のように、酸変性物を高濃度で使用したポリエステル樹脂を、他のポリエステル樹脂と混合して用いることもできる。
これに対して、酸変性物Aを使用していない比較例1では、ワックスとの相溶化剤がないためか、ワックスの分散性が悪く、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐久性に欠けている。
また、ワックスを含有しない比較例2では、耐ホットオフセット性に欠けている。
また、酸変性物Aの代わりに、アルケニル無水コハク酸を使用した比較例3では、α-オレフィンの重合体ではなく分子量が小さくポリエステル部位と相溶するためか、実施例3と比べて、熱的に弱いためか、耐ホットオフセット性及び耐久性が悪化している。
また、結晶性を有する酸変性物を使用した比較例4では、結晶由来の凝集性が高いためか、実施例3と比べると、ワックスのブリードアウト性が悪化し、またポリエステル樹脂中でのワックス分散が悪いためか、低温定着性と耐久性が悪化している。
Claims (9)
- ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分由来の構成単位と、非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aを含むカルボン酸成分由来の構成単位とを有する非晶質ポリエステル樹脂Aを80質量%以上含有する結着樹脂、及びワックスを含有する、静電荷像現像用トナー。
- 非晶質ポリエステル樹脂Aが、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分由来の構成単位と、非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aを含むカルボン酸成分由来の構成単位とが、エステル結合により連結した構造を有するポリエステル樹脂である、請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
- ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分と、非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aを含むカルボン酸成分との重縮合物である非晶質ポリエステル樹脂Aを80質量%以上含有する結着樹脂、及びワックスを含有する、静電荷像現像用トナー。
- ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分と非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物A以外のカルボン酸成分との重縮合物に、該酸変性物Aが重縮合した重縮合物である非晶質ポリエステル樹脂Aを80質量%以上含有する結着樹脂、及びワックスを含有する、静電荷像現像用トナー。
- 非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aの重量平均分子量が、500以上5,000以下である、請求項1~4いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
- 非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aが、炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体が、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びこれらの酸の無水物からなる群より選ばれた少なくとも1種の酸により変性された酸変性物である、請求項1~5いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
- 非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aが、炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の片末端が酸により変性された酸変性物である、請求項1~6いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
- ワックスが、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、及びエステルワックスからなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1~7いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
- ワックスの融点が、80℃以上130℃以下である、請求項1~8いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
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