JP7229867B2 - トナー用結着樹脂組成物 - Google Patents
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Description
そこで、結晶性ポリエステル樹脂の帯電安定性を向上させる手段として、例えば、モノマー構造中に電荷の溜まりやすい芳香環を有するテレフタル酸を組み込んだ場合、一定の帯電安定性は得られるものの、結晶性ポリエステル樹脂の結晶構造が崩れ、結晶化度が低下することで、非晶性ポリエステル樹脂を可塑化し、保存性が低下する。
また、芳香環を有するテレフタル酸導入以外の手段として、芳香環を有する結晶性のモノマーとして、例えば、炭素数2又は3のα-オレフィンの重合体の酸変性物のようなアルキル基を有する結晶性のマクロモノマーを結晶性ポリエステル樹脂に組み込んだ場合、結晶性ポリエステル樹脂中での結晶性マクロモノマーの分散性が悪いためか、充分な帯電安定性は確認されなかった(例えば、特許文献2、3参照)。また、ドデセニル無水コハク酸のようなアルキル基を有する非晶性のモノマーを結晶性ポリエステル樹脂に組み込んだ場合は、芳香環を有するテレフタル酸を組み込んだ場合と同様に、結晶性ポリエステル樹脂の結晶構造が崩れ、結晶化度が低下することで、非晶性ポリエステル樹脂を可塑化し、保存性が低下した。(例えば、特許文献1参照)。
〔1〕 炭素数2以上12以下の直鎖脂肪族ジオールを95モル%以上含むアルコール成分と、非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物A、及び炭素数2以上14以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸系化合物を該酸変性物A以外のカルボン酸成分中90モル%以上を含むカルボン酸成分との重縮合物Cである結晶性ポリエステル樹脂Cを含有する、トナー用結着樹脂組成物、並びに
〔2〕 前記〔1〕記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、静電荷像現像用トナー
に関する。
酸変性物の結晶性は、後述の樹脂の結晶性と同様に結晶性指数([軟化点/吸熱の最高ピーク温度])によって表わされる。非晶質の酸変性物は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上のものであるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下のものである。また、吸熱の最高ピーク温度が検出されないものも非晶質であると判断する。
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、Rがプロピレン基であるビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、Rがエチレン基であるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができ、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物とビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の併用が好ましい。
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。吸熱の最高ピーク温度が検出されないものは非晶質であり、検出される場合は樹脂と同様の方法により軟化点を測定して、結晶性指数(軟化点/吸熱の最高ピーク温度)を算出して判断する。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフランに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量分布測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(Mw 5.0×102)、A-1000(Mw 1.01×103)、A-2500(Mw 2.63×103)、A-5000(Mw 5.97×103)、F-1(Mw 1.02×104)、F-2(Mw 1.81×104)、F-4(Mw 3.97×104)、F-10(Mw 9.64×104)、F-20(Mw 1.90×105)、F-40(Mw 4.27×105)、F-80(Mw 7.06×105)、F-128(Mw 1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー(株)製)
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
JIS K 0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、非晶質樹脂はアセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に、結晶性樹脂はクロロホルム:ジメチルホルムアミドの混合溶媒(クロロホルム:ジメチルホルムアミド=7:3(容量比))に、それぞれ変更する。
示差走査熱量計「DSC Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とする。
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター(株)製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマン・コールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマン・コールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
表1に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1に示すセバシン酸を添加し、140℃で6時間反応させた後、200℃まで6時間かけて昇温後、表1に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、200℃、8.0kPaにて1時間反応させた。160℃まで冷却し、表1に示す酸変性物を添加し、再度、200℃で5時間重縮合反応させ、さらに200℃、8.0kPaにて1時間反応させて、結晶性ポリエステル樹脂(樹脂C1~C4)を得た。
表1に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1に示すセバシン酸を添加し、140℃で6時間反応させた後、200℃まで6時間かけて昇温後、表1に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、200℃、8.0kPaにて1時間反応させて、結晶性ポリエステル樹脂(樹脂C5)を得た。
表1に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1に示すセバシン酸及びテレフタル酸を添加し、140℃で6時間反応させた後、200℃まで6時間かけて昇温後、表1に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、200℃、8.0kPaにて1時間反応させて、結晶性ポリエステル樹脂(樹脂C6)を得た。
表1に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1に示すセバシン酸及び酸変性物を添加し、140℃で6時間反応させた後、200℃まで6時間かけて昇温後、表1に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、200℃、8.0kPaにて1時間反応させて、結晶性ポリエステル樹脂(樹脂C7)を得た。
表2に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表2に示すテレフタル酸を添加し、160℃まで昇温し、表2に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃で10時間反応させた後、235℃、8.0kPaにて1時間反応させた。200℃まで冷却し、表2に示す無水トリメリット酸を添加し、200℃で1時間重縮合反応させ、さらに200℃、8.0kPaにて表2に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂AH)を得た。
表2に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表2に示すテレフタル酸を添加し、160℃まで昇温し、表2に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃で10時間反応させた後、235℃、8.0kPaにて1時間反応させて、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂AL)を得た。
表3に示す結着樹脂100質量部、着色剤「ファストゲンスーパーマゼンタR」(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)6質量部、荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット社製)1質量部、及び離型剤「SP-105」(加藤洋行社製、フィッシャートロプシュワックス、融点:105℃)4質量部を、ヘンシェルミキサーでよく攪拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。ロールの回転速度は200r/min、ロール内の加熱設定温度は100℃であり、混練物の温度は160℃、混練物の供給速度は10kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。冷却後、ジェットミルで体積中位粒径(D50)6.5μmのトナー粒子を得た。
カラープリンター「C612dnw」(商品名、沖データ(株)製)にトナーを実装し、未定着で画像出し(印刷面積:6cm×6cm、0.5mg/cm2)を行った。
未定着画像を、前記プリンターの定着機をオフラインで使用し、100mm/secにて100℃から5℃ずつ温度を上げて定着させた。なお、定着紙にはJ紙(富士ゼロックス製、坪量:82g/m2、紙厚:97μm)を使用した。
定着画像に「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆社、幅:18mm、JISZ-1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前)が最初に90%を超える定着ローラーの温度を最低定着温度とし、低温定着性を評価した。結果を表3に示す。
トナーを温度25℃、相対湿度50%の環境下で72時間放置した後、それぞれのトナーについて、トナー0.6gとシリコーンフェライトキャリア(関東電化工業(株)製、平均粒子径:90μm)19.4gとを50mL容のポリエチレン製の容器に入れ、ボールミルを用いて250r/minで混合し、60秒、3600秒混合後のトナーの帯電量を、以下の方法により、Q/Mメーター(EPPING社製)を用いて測定した。
所定の混合時間後、Q/Mメーター付属のセルに規定量のトナーとキャリアの混合物を投入し、目開き32μmのふるい(ステンレス製、綾織、線径:0.0035mm)を通してトナーのみを90秒間吸引した。そのとき発生するキャリア上の電圧変化をモニターし、〔90秒後の総電気量(μC)/吸引されたトナー量(g)〕の値を帯電量(μC/g)とした。
混合時間60秒後の帯電量と混合時間3600秒後の帯電量の比率(混合時間3600秒後の帯電量/混合時間60秒後の帯電量)を算出した。結果を表3に示す。帯電量の比率が1に近いほど、帯電安定性に優れており、現像不良による印刷不良が発生しにくい。
トナー5gを円柱型容器に入れ、温度50℃、相対湿度50%の高温環境下で72時間放置後、200メッシュ(目開き:75μm)の篩にかけ、通過したトナーの割合(質量%)を秤量した。通過したトナーの質量が多いほど保存性に優れており、トナーの凝集による印刷不良が発生しにくい。結果を表3に示す。
これに対し、酸変性物を用いていないポリエステル樹脂を含有する比較例1のトナーは、電荷がリークしやすいため、低温定着性には優れているが、帯電安定性が悪化している。また、結晶性ポリエステル樹脂にテレフタル酸を導入した比較例2のトナーは、帯電性は改善されているものの、樹脂の結晶化度の低下により保存性が悪化している。結晶性の酸変性物を用いた結晶性ポリエステル樹脂を含有する比較例3のトナーは、酸変性物の分散性が不十分であるため、特に帯電安定性の低下が著しい。
Claims (4)
- 炭素数2以上12以下の直鎖脂肪族ジオールを95モル%以上含むアルコール成分と、非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物A、及び炭素数2以上14以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸系化合物を該酸変性物A以外のカルボン酸成分中90モル%以上を含むカルボン酸成分との重縮合物Cである結晶性ポリエステル樹脂Cを含有する、トナー用結着樹脂組成物であって、前記非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aが、炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の片末端が酸により変性された酸変性物であり、前記結晶性ポリエステル樹脂Cが、炭素数2以上12以下の直鎖脂肪族ジオールを含む前記アルコール成分と前記酸変性物A以外のカルボン酸成分との重縮合物に、該酸変性物Aが重縮合した重縮合物である、トナー用結着樹脂組成物。
- 非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aの重量平均分子量が、500以上5,000以下である、請求項1記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aが、炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体が、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びこれらの酸の無水物からなる群より選ばれた少なくとも1種の酸により変性された酸変性物である、請求項1又は2記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 請求項1~3いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、静電荷像現像用トナー。
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