JP7187911B2 - 吸湿性アクリロニトリル系繊維、該繊維の製造方法および該繊維を含有する繊維構造体 - Google Patents
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Description
(1) 共有結合による架橋構造を実質的に有さない重合体で構成されている吸湿性アクリロニトリル系繊維であって、繊維中のカルボキシル基量が0.2~4.5mmol/gであること、及び繊維の20℃×65%RHでの飽和吸湿率が5重量%以上であり、かつ水膨潤度が10倍以下であることを特徴とする吸湿性アクリロニトリル系繊維。
(2) JISZ8781-4「CIE 1976 L*a*b*色空間」に記載の表示方法において、a*が-4~2である(1)に記載の吸湿性アクリロニトリル系繊維。
(3) カルボキシル基が繊維全体にわたって均一に存在していることを特徴とする(1)または(2)に記載の吸湿性アクリロニトリル系繊維。
(4) カルボキシル基が繊維表層部に局在化していることを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載の吸湿性アクリロニトリル系繊維。
(5) カルボキシル基の中和度が25%以上であることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の吸湿性アクリロニトリル系繊維。
(6) アクリロニトリル系重合体を含有する紡糸原液をノズルから紡出後、凝固、水洗、延伸の各工程を経て得られた未乾燥繊維を加水分解することを含むことを特徴とする(3)に記載の吸湿性アクリロニトリル系繊維の製造方法。
(7) アクリロニトリル系重合体を含有する紡糸原液をノズルから紡出後、凝固、水洗、延伸の各工程を経て得られた未乾燥繊維を熱処理することで緻密化させた繊維または緻密化後さらに弛緩処理した繊維を加水分解することを含むことを特徴とする(4)に記載の吸湿性アクリロニトリル系繊維の製造方法。
(8) 未乾燥繊維の水分率が20~250%であることを特徴とする(6)または(7)に記載の吸湿性アクリロニトリル系繊維の製造方法。
(9) (1)~(5)のいずれかに記載の吸湿性アクリロニトリル繊維を含有する繊維構造体。
乾燥した試料約1gを精秤し(W1[g])、100mlの58%チオシアン酸ナトリウム水溶液を加え、80℃で1時間浸漬させた後にろ過、水洗し、乾燥する。乾燥後の試料を精秤し(W2[g])次式によって溶解度を算出する。
溶解度[%]=(1-W2/W1)×100
かかる溶解度が95%以上である場合、共有結合による架橋構造を実質的に有さないと判断する。
試料を約1g秤量し、1mol/l塩酸50mlに30分浸漬後、水洗し浴比1:500で純水に15分間浸漬する。浴pHが4以上となるまで水洗した後、熱風乾燥機にて105℃で5時間乾燥させる。乾燥した試料を約0.2g精秤し(W3[g])、これに100mlの水と0.1mol/l水酸化ナトリウム15ml、塩化ナトリウム0.4gを加えて攪拌する。次いで金網を用いて試料を漉しとり、水洗する。得られたろ液(水洗液も含む)にフェノールフタレイン液を2~3滴を加え、0.1mol/l塩酸で常法に従って滴定を行い消費された塩酸量(V1[ml])を求め、次式により全カルボキシル基量を算出する。
全カルボキシル基量[mmol/g]=(0.1×15-0.1×V1)/W3
試料を熱風乾燥機で105℃、16時間乾燥して重量を測定する(W4[g])。次に該試料を20℃×65%RHの条件に調節した恒温恒湿器に24時間入れておく。このようにして吸湿させた試料の重量を測定する。(W5[g])。以上の測定結果から、次式によって算出する。
飽和吸湿率[%]=(W5-W4)/W4×100
試料を純水中に浸漬した後、卓上遠心脱水機で1200rpmにて5分間脱水する。脱水後の試料の重量を測定(W6[g])後、かかる試料を115℃で3時間乾燥して重量を測定(W7[g])し、次式により水膨潤度を算出する。
水膨潤度[倍]=W6/W7-1
熱風乾燥機にて105℃で5時間乾燥した試料を約0.2g精秤し(W8[g])、これに100mlの水と0.1mol/l水酸化ナトリウム15ml、塩化ナトリウム0.4gを加えて攪拌する。次いで金網を用いて試料を漉しとり、水洗する。得られたろ液(水洗液も含む)にフェノールフタレイン液を2~3滴を加え、0.1mol/l塩酸で常法に従って滴定を行い消費された塩酸量(V2[ml])を求める。次式によって、試料に含まれるH型カルボキシル基量を算出し、その結果と上述の全カルボキシル基量から中和度を求める。
H型カルボキシル基量[mmol/g]=(0.1×15-0.1×V2)/W8
中和度[%]=[(全カルボキシル基量-H型カルボキシル基量)/全カルボキシル基量]×100
開繊し熱風乾燥機で105℃、16時間乾燥した試料0.5gを用いて、コニカミノルタ社製色相色差計CR-300型にて測色した。
繊維試料を、繊維に含まれるカルボキシル基量の2倍に相当する硝酸マグネシウムを溶解させた水溶液に50℃×1時間浸漬することによりイオン交換処理を実施し、水洗、乾燥することにより、カルボキシル基の対イオンをマグネシウムとする。マグネシウム塩型とした繊維試料を、エネルギー分散型X線分光器(EDS)により繊維断面の外縁から中心にかけて概ね等間隔で10点の測定点を選び、各測定点におけるマグネシウム元素の含有割合を測定する。得られた各測定点の数値から次式により変動係数CV[%]を算出する。
変動係数CV[%]=(標準偏差/平均値)×100
試料繊維を、繊維重量に対して2.5%のカチオン染料(Nichilon Black G 200)および2%の酢酸を含有する染色浴に、浴比1:80となるように浸漬し、30分間煮沸処理した後に、水洗、脱水、乾燥する。得られた染色済みの繊維を、繊維軸に垂直に薄くスライスし、繊維断面を光学顕微鏡で観察する。このとき、アクリロニトリル系重合体からなる中心部は黒く染色され、カルボキシル基が多く有する表層部は染料が十分に固定されず緑色になる。繊維断面における、繊維の直径(D1)、および、緑色から黒色へ変色し始める部分を境界として黒く染色されている中心部の直径(D2)を測定し、以下の式により表層部面積割合を算出する。なお、10サンプルの表層部面積割合の平均値をもって、試料繊維の表層部面積割合とする。
表層部面積割合(%)=[{((D1)/2)2π-((D2)/2)2π}/((D1)/2)2π]×100
延伸後の未乾燥繊維を純水中に浸漬した後、遠心脱水機(国産遠心機(株)社製TYPE H-770A)で遠心加速度1100G(Gは重力加速度を示す)にて2分間脱水する。脱水後重量を測定(W8[g]とする)後、該未乾燥繊維を120℃で15分間乾燥して重量を測定(W9[g]とする)し、次式により計算する。
延伸後の未乾燥繊維の水分率(%)=(W8-W9)/W8×100
AN90%及びアクリル酸メチル10%からなるAN系重合体10部を44%のチオシアン酸ナトリウム水溶液90部に溶解した紡糸原液を、-2.5℃の凝固浴に紡出し、凝固、水洗、12倍延伸して水分率が35%のゲル状アクリロニトリル系繊維を得た。該繊維を2.5%の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、絞った後に、湿熱雰囲気中で、123℃×25分間加水分解処理を行い、水洗、乾燥して、実施例1の吸湿性アクリロニトリル系繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
実施例1の処方において、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を、実施例2では7.5%、実施例3では10%、実施例4では15%、実施例5では20%に変更すること以外は同様にして、実施例2~5の吸湿性アクリロニトリル系繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
実施例3の吸湿性アクリロニトリル系繊維を硝酸水溶液に浸漬し、浴pH5.0に調整し、60℃で30分間加熱した。次いで、水洗、乾燥を行い、実施例6の吸湿性アクリロニトリル系繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
実施例6の処方において、実施例3の吸湿性アクリロニトリル系繊維の代わりに、実施例5の吸湿性アクリロニトリル系繊維を用いること以外は同様にして、実施例7の吸湿性アクリロニトリル系繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
実施例2において、ゲル状アクリロニトリル系繊維の代わりに、該繊維に対して、110℃×2.5分間の乾熱処理と60℃×2.5分間の湿熱処理を交互に2回行って得た緻密化繊維を使用したこと以外は同様にして、芯鞘構造を有する実施例8の吸湿性アクリロニトリル系繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
実施例8において、緻密化繊維の代わりに、該繊維に対して、さらに120℃×10分間のオートクレーブ処理行うことで弛緩させた弛緩繊維を使用したこと以外は同様にして、芯鞘構造を有する実施例9の吸湿性アクリロニトリル系繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
AN90%及びアクリル酸メチル10%からなるAN系重合体10部を44%のチオシアン酸ナトリウム水溶液90部に溶解した紡糸原液を、-2.5℃の凝固浴に紡出し、凝固、水洗、12倍延伸した後、乾球/湿球=120℃/60℃の雰囲気下で乾燥して原料繊維を得た。該原料繊維を、表1に示した条件で35%ヒドラジン水溶液中で100℃3時間処理し、次いで5%水酸化ナトリウム水溶液中で90℃2時間処理した後、脱水、水洗、乾燥を行い、架橋構造とカルボキシル基を有する繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
AN88%及びメタクリル酸12%からなるAN系重合体10部を44%のチオシアン酸ナトリウム水溶液90部に溶解した紡糸原液を、常法に従って紡出し、凝固、水洗、延伸した後、乾燥してカルボキシル基を有するアクリル繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
比較例2のアクリル繊維をソーダ灰1g/l水溶液にて90℃で30分加熱処理した後、水洗、乾燥して、中和されたカルボキシル基を有するアクリル繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
比較例3の処方において、ソーダ灰1g/l水溶液での処理温度を100℃に変更すること以外は同様にして、中和されたカルボキシル基を有するアクリル繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
Claims (9)
- 共有結合による架橋構造を実質的に有さない重合体で構成されている吸湿性アクリロニトリル系繊維であって、繊維中のカルボキシル基量が0.2~4.5mmol/gであること、及び繊維の20℃×65%RHでの飽和吸湿率が5重量%以上であり、かつ水膨潤度が10倍以下であることを特徴とする吸湿性アクリロニトリル系繊維。
- JISZ8781-4「CIE 1976 L*a*b*色空間」に記載の表示方法において、a*が-4~2である請求項1に記載の吸湿性アクリロニトリル系繊維。
- カルボキシル基が繊維全体にわたって均一に存在していることを特徴とする請求項1または2に記載の吸湿性アクリロニトリル系繊維。
- カルボキシル基が繊維表層部に局在化していることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の吸湿性アクリロニトリル系繊維。
- カルボキシル基の中和度が25%以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の吸湿性アクリロニトリル系繊維。
- アクリロニトリル系重合体を含有する紡糸原液をノズルから紡出後、凝固、水洗、延伸の各工程を経て得られた未乾燥繊維を加水分解することを含むことを特徴とする請求項3に記載の吸湿性アクリロニトリル系繊維の製造方法。
- アクリロニトリル系重合体を含有する紡糸原液をノズルから紡出後、凝固、水洗、延伸の各工程を経て得られた未乾燥繊維を熱処理することで緻密化させた繊維または緻密化後さらに弛緩処理した繊維を加水分解することを含むことを特徴とする請求項4に記載の吸湿性アクリロニトリル系繊維の製造方法。
- 未乾燥繊維の水分率が20~250%であることを特徴とする請求項6または7に記載の吸湿性アクリロニトリル系繊維の製造方法。
- 請求項1~5のいずれかに記載の吸湿性アクリロニトリル繊維を含有する繊維構造体。
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