JP7177987B2 - 易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維、該繊維の製造方法および該繊維を含有する繊維構造体 - Google Patents
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Description
(1)共有結合による架橋構造を実質的に有さない重合体で構成されている吸湿性アクリロニトリル系繊維であって、繊維中に0.2~2.0mmol/gのカルボキシル基を含有し、20℃×65%RHでの飽和吸湿率が3~15.8重量%であり、沸水処理後の捲縮減少係数が0.7以下であって、かつ水膨潤度が10倍以下であることを特徴とする易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維。
(2)カルボキシル基が繊維全体にわたって均一に存在していることを特徴とする(1)に記載の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維。
(3)カルボキシル基が繊維表層部に局在化していることを特徴とする(1)に記載の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維。
(4)カルボキシル基の中和度が25%以上であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維。
(5)アクリロニトリル系重合体を含有する紡糸原液をノズルから紡出後、凝固、水洗、延伸の各工程を経て得られた未乾燥繊維を加水分解した後に緊張又は延伸状態で熱処理を行い、その後に捲縮を付与させる工程を経ることを含むことを特徴とする(2)に記載の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維の製造方法。
(6)アクリロニトリル系重合体を含有する紡糸原液をノズルから紡出後、凝固、水洗、延伸の各工程を経て得られた未乾燥繊維を熱処理することで緻密化させた繊維または緻密化後さらに弛緩処理した繊維を加水分解した後に緊張又は延伸状態で熱処理を行い、その後に捲縮を付与させる工程を経ることを含むことを特徴とする(3)に記載の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維の製造方法。
(7)未乾燥繊維の水分率が20~250重量%であることを特徴とする(5)または(6)に記載の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維の製造方法。
(8)(1)~(4)のいずれかに記載の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維を含有する繊維構造体。
かかる加水分解処理の手段としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アンモニア等の塩基性水溶液、あるいは、硝酸、硫酸、塩酸等の水溶液を含浸、または浸漬した状態で加熱処理する手段が挙げられる。具体的な処理条件としては、上述したカルボキシル基量の範囲などを勘案し、処理薬剤の濃度、反応温度、反応時間等の諸条件を適宜設定すればよいが、一般的には、0.5~20重量%、好ましくは1.0~15重量%の処理薬剤を含浸、絞った後、湿熱雰囲気下で、温度100~140℃、好ましくは110~135℃で10~60分処理する条件の範囲内で設定することが工業的、繊維物性的にも好ましい。なお、湿熱雰囲気とは、飽和水蒸気または過熱水蒸気で満たされた雰囲気のことを言う。該処理により、ゲル状アクリロニトリル系繊維、またはさらに熱処理を施された繊維中のニトリル基が加水分解され、カルボキシル基が生成される。
乾燥した試料約1gを精秤し(W1[g])、100mlの58%チオシアン酸ナトリウム水溶液を加え、80℃で1時間浸漬させた後にろ過、水洗し、乾燥する。乾燥後の試料を精秤し(W2[g])次式によって溶解度を算出する。
溶解度[%]=(1-W2/W1)×100
かかる溶解度が95%以上である場合、共有結合による架橋構造を実質的に有さないと判断する。
試料を約1g秤量し、1mol/l塩酸50mlに30分浸漬後、水洗し浴比1:500で純水に15分間浸漬する。浴pHが4以上となるまで水洗した後、熱風乾燥機にて105℃で3時間乾燥させる。乾燥した試料を約0.2g精秤し(W3[g])、これに100mlの水と0.1mol/l水酸化ナトリウム15ml、塩化ナトリウム0.4gを加えて攪拌する。次いで金網を用いて試料を漉しとり、水洗する。得られたろ液(水洗液も含む)にフェノールフタレイン液を2~3滴を加え、0.1mol/l塩酸で常法に従って滴定を行い消費された塩酸量(V1[ml])を求め、次式により全カルボキシル基量を算出する。
全カルボキシル基量[mmol/g]=(0.1×15-0.1×V1)/W3
試料を熱風乾燥機で105℃、3時間乾燥して重量を測定する(W4[g])。次に該試料を20℃×65%RHの条件に調節した恒温恒湿器に24時間入れておく。このようにして吸湿させた試料の重量を測定する。(W5[g])。以上の測定結果から、次式によって算出する。
飽和吸湿率[%]=(W5-W4)/W4×100
試料を純水中に浸漬した後、卓上遠心脱水機で1200rpmにて5分間脱水する。脱水後の試料の重量を測定(W6[g])後、かかる試料を105℃で5時間乾燥して重量を測定(W7[g])し、次式により水膨潤度を算出する。
水膨潤度[倍]=W6/W7-1
熱風乾燥機にて105℃で3時間乾燥した試料を約0.2g精秤し(W8[g])、これに100mlの水と0.1mol/l水酸化ナトリウム15ml、塩化ナトリウム0.4gを加えて攪拌する。次いで金網を用いて試料を漉しとり、水洗する。得られたろ液(水洗液も含む)にフェノールフタレイン液を2~3滴を加え、0.1mol/l塩酸で常法に従って滴定を行い消費された塩酸量(V2[ml])を求める。次式によって、試料に含まれるH型カルボキシル基量を算出し、その結果と上述の全カルボキシル基量から中和度を求める。
H型カルボキシル基量[mmol/g]=(0.1×15-0.1×V2)/W8
中和度[%]=[(全カルボキシル基量-H型カルボキシル基量)/全カルボキシル基量]×100
試料繊維を20℃×65%RHの雰囲気下で24時間静置することで調湿したサンプルについて、JIS L 1015:2010 「8.12.1けん縮数」の方法に準じて、初荷重(0.18mN×繊度(tex))をかけたときの25mm間の山と谷の数(A)を数え、次式にて捲縮数(B)を計算する。
捲縮数(B)=A/2
別途、試料繊維を沸騰した水中で30分間処理して、脱捲縮させた繊維を得る。かかる脱捲縮させた繊維について、上記と同様に調湿、測定することにより捲縮数(C)を求める。以上のようにして得られた捲縮数(B)と捲縮数(C)を用いて、次式に従って捲縮減少係数を計算する。
捲縮減少係数(%)=C/B×100
繊維試料を、繊維に含まれるカルボキシル基量の2倍に相当する硝酸マグネシウムを溶解させた水溶液に50℃×1時間浸漬することによりイオン交換処理を実施し、水洗、乾燥することにより、カルボキシル基の対イオンをマグネシウムとする。マグネシウム塩型とした繊維試料を、エネルギー分散型X線分光器(EDS)により繊維断面の外縁から中心にかけて概ね等間隔で10点の測定点を選び、各測定点におけるマグネシウム元素の含有割合を測定する。得られた各測定点の数値から次式により変動係数CV[%]を算出する。
変動係数CV[%]=(標準偏差/平均値)×100
試料繊維を、繊維重量に対して2.5%のカチオン染料(Nichilon Black G 200)および2%の酢酸を含有する染色浴に、浴比1:80となるように浸漬し、30分間煮沸処理した後に、水洗、脱水、乾燥する。得られた染色済みの繊維を、繊維軸に垂直に薄くスライスし、繊維断面を光学顕微鏡で観察する。このとき、アクリロニトリル系重合体からなる中心部は黒く染色され、カルボキシル基が多く有する表層部は染料が十分に固定されず緑色になる。繊維断面における、繊維の直径(D1)、および、緑色から黒色へ変色し始める部分を境界として黒く染色されている中心部の直径(D2)を測定し、以下の式により表層部面積割合を算出する。なお、10サンプルの表層部面積割合の平均値をもって、試料繊維の表層部面積割合とする。
表層部面積割合(%)=[{((D1)/2)2π-((D2)/2)2π}/((D1)/2)2π]×100
延伸後の未乾燥繊維を純水中に浸漬した後、遠心脱水機(国産遠心機(株)社製TYPE H-770A)で遠心加速度1100G(Gは重力加速度を示す)にて2分間脱水する。脱水後重量を測定(W9[g]とする)後、該未乾燥繊維を120℃で15分間乾燥して重量を測定(W10[g]とする)し、次式により計算する。
延伸後の未乾燥繊維の水分率(%)=(W9-W10)/W9×100
アクリロニトリル90%及びアクリル酸メチル10%からなるアクリロニトリル系重合体10部を48%のチオシアン酸ナトリウム水溶液90部に溶解した紡糸原液を、-2.5℃の凝固浴に紡出し、凝固、水洗、12倍延伸して水分率が35%のゲル状アクリロニトリル系繊維を得た。該繊維を2.0%の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、繊維重量に対する吸液量が100%になるように絞った後に、湿熱雰囲気中で、123℃×25分間加水分解処理を行い、水洗、乾燥した後、延伸をかけて熱処理を行い、捲縮工程を経て本発明の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
実施例1において、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を表1に記載の数値に変更すること以外は同様にして、実施例2~6の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
加水分解処理後、室温で30分6%の硝酸水溶液での処理を加えた以外は実施例4と同様にして、本発明の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
実施例4において、ゲル状アクリロニトリル系繊維の代わりに、該繊維に対して、110℃×2.5分間の乾熱処理と60℃×2.5分間の湿熱処理を交互に2回行って得た緻密化繊維を使用したこと以外は同様にして、本発明の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
実施例3において、ゲル状アクリロニトリル系繊維の代わりに、該繊維に対して、110℃×2.5分間の乾熱処理と60℃×2.5分間の湿熱処理を交互に2回行って緻密化させ、次に120℃×10分間のオートクレーブ処理行うことで弛緩させた弛緩繊維を使用すること以外は同様にして、本発明の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
実施例3において、加水分解後の乾熱延伸処理を省略したこと以外は同様にして、易脱捲縮性が無い吸湿アクリロニトリル系繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
Claims (8)
- 共有結合による架橋構造を実質的に有さない重合体で構成されている吸湿性アクリロニトリル系繊維であって、繊維中に0.2~2.0mmol/gのカルボキシル基を含有し、20℃×65%RHでの飽和吸湿率が3~15.8重量%であり、沸水処理後の捲縮減少係数が0.7以下であって、かつ水膨潤度が10倍以下であることを特徴とする易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維。
- カルボキシル基が繊維全体にわたって均一に存在していることを特徴とする請求項1に記載の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維。
- カルボキシル基が繊維表層部に局在化していることを特徴とする請求項1に記載の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維。
- カルボキシル基の中和度が25%以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維。
- アクリロニトリル系重合体を含有する紡糸原液をノズルから紡出後、凝固、水洗、延伸の各工程を経て得られた未乾燥繊維を加水分解した後に緊張又は延伸状態で熱処理を行い、その後に捲縮を付与させる工程を経ることを含むことを特徴とする請求項2に記載の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維の製造方法。
- アクリロニトリル系重合体を含有する紡糸原液をノズルから紡出後、凝固、水洗、延伸の各工程を経て得られた未乾燥繊維を熱処理することで緻密化させた繊維または緻密化後さらに弛緩処理した繊維を加水分解した後に緊張又は延伸状態で熱処理を行い、その後に捲縮を付与させる工程を経ることを含むことを特徴とする請求項3に記載の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維の製造方法。
- 未乾燥繊維の水分率が20~250重量%であることを特徴とする請求項5または6に記載の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維の製造方法。
- 請求項1~4のいずれかに記載の易脱捲縮性吸湿アクリロニトリル系繊維を含有する繊維構造体。
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