JP7177988B2 - 撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維、該繊維の製造方法および該繊維を含有する繊維構造体 - Google Patents
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Description
(1)共有結合による架橋構造を実質的に有さない重合体で構成されている吸湿性アクリロニトリル系繊維であって、繊維中に0.2~4.5mmol/gのカルボキシル基を含有し、20℃×65%RHでの飽和吸湿率が3重量%以上であり、かつ撥水処理前の繊維重量に対して0.2~5.0重量%の撥水剤を含有し、水上に静置してから水没するまでの時間が10分以上であることを特徴とする撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維。
(2)カルボキシル基が繊維全体にわたって均一に存在していることを特徴とする(1)に記載の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維。
(3)カルボキシル基が繊維表層部に局在化していることを特徴とする(1)に記載の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維。
(4)カルボキシル基の中和度が25%以上であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維。
(5)アクリロニトリル系重合体を含有する紡糸原液をノズルから紡出後、凝固、水洗、延伸の各工程を経て得られた未乾燥繊維を加水分解し、その後に撥水剤処理を行うことを含むことを特徴とする(2)に記載の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維の製造方法。
(6)アクリロニトリル系重合体を含有する紡糸原液をノズルから紡出後、凝固、水洗、延伸の各工程を経て得られた未乾燥繊維を熱処理することで緻密化させた繊維または緻密化後さらに弛緩処理した繊維を加水分解し、その後に撥水剤処理を行うことを含むことを特徴とする(3)に記載の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維の製造方法。
(7)未乾燥繊維の水分率が20~250%であることを特徴とする(5)または(6)に記載の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維の製造方法。
(8)(1)~(4)のいずれかに記載の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維を含有する繊維構造体。
乾燥した試料約1gを精秤し(W1[g])、100mlの58%チオシアン酸ナトリウム水溶液を加え、80℃で1時間浸漬させた後にろ過、水洗し、乾燥する。乾燥後の試料を精秤し(W2[g])次式によって溶解性を算出する。
溶解性[%]=(1-W2/W1)×100
かかる溶解性が95%以上である場合、共有結合による架橋構造を実質的に有さないと判断する。
試料を約1g秤量し、1mol/l塩酸50mlに30分浸漬後、水洗し浴比1:500で純水に15分間浸漬する。浴pHが4以上となるまで水洗した後、熱風乾燥機にて105℃で5時間乾燥させる。乾燥した試料を約0.2g精秤し(W3[g])、これに100mlの水と0.1mol/l水酸化ナトリウム15ml、塩化ナトリウム0.4gを加えて攪拌する。次いで金網を用いて試料を漉しとり、水洗する。得られたろ液(水洗液も含む)にフェノールフタレイン液を2~3滴を加え、0.1mol/l塩酸で常法に従って滴定を行い消費された塩酸量(V1[ml])を求め、次式により全カルボキシル基量を算出する。
全カルボキシル基量[mmol/g]=(0.1×15-0.1×V1)/W3
試料を熱風乾燥機で105℃、16時間乾燥して重量を測定する(W4[g])。次に該試料を20℃×65%RHの条件に調節した恒温恒湿器に24時間入れておく。このようにして吸湿させた試料の重量を測定する。(W5[g])。以上の測定結果から、次式によって算出する。
飽和吸湿率[%]=(W5-W4)/W4×100
撥水処理前の繊維試料を純水中に浸漬した後、卓上遠心脱水機で1200rpm(160G)にて5分間脱水する。脱水後の試料の重量を測定(W6[g])後、かかる試料を115℃で3時間乾燥して重量を測定(W7[g])し、次式により水膨潤度を算出する。
水膨潤度[倍]=W6/W7-1
熱風乾燥機にて105℃で5時間乾燥した試料を約0.2g精秤し(W8[g])、これに100mlの水と0.1mol/l水酸化ナトリウム15ml、塩化ナトリウム0.4gを加えて攪拌する。次いで金網を用いて試料を漉しとり、水洗する。得られたろ液(水洗液も含む)にフェノールフタレイン液を2~3滴を加え、0.1mol/l塩酸で常法に従って滴定を行い消費された塩酸量(V2[ml])を求める。次式によって、試料に含まれるH型カルボキシル基量を算出し、その結果と上述の全カルボキシル基量から中和度を求める。
H型カルボキシル基量[mmol/g]=(0.1×15-0.1×V2)/W8
中和度[%]=[(全カルボキシル基量-H型カルボキシル基量)/全カルボキシル基量]×100
次式に示すように、撥水処理前後における撥水剤分散液の固形分の減少量をもとに繊維に付着した撥水剤量を算出する。なお、撥水剤分散液の固形分割合は次項の方法により、また、撥水処理前の繊維重量は<飽和吸湿率の測定>の項の「W4」と同様の方法により測定する。
繊維中の撥水剤の含有量[%]={(処理前固形分割合[%]×処理前分散液量[g])-(処理後固形分割合[%]×処理後分散液量[g])}/撥水処理前の繊維重量[g]×100
熱風乾燥器による120℃×1時間の乾燥前後の重量を測定し、次式にて算出する。
撥水剤分散液の固形分割合[%]=乾燥後重量[g]/乾燥前重量[g]×100
開繊した試料を20℃×65%RHの条件に調節した恒温恒湿器に24時間入れておく。該試料から1gをサンプリングし、純水上に静置し、静置開始から水中に沈むまでの時間を1分単位で20分まで計測する。
繊維試料を、繊維に含まれるカルボキシル基量の2倍に相当する硝酸マグネシウムを溶解させた水溶液に50℃×1時間浸漬することによりイオン交換処理を実施し、水洗、乾燥することにより、カルボキシル基の対イオンをマグネシウムとする。マグネシウム塩型とした繊維試料を、エネルギー分散型X線分光器(EDS)により繊維断面の外縁から中心にかけて概ね等間隔で10点の測定点を選び、各測定点におけるマグネシウム元素の含有割合を測定する。得られた各測定点の数値から次式により変動係数CV[%]を算出する。
変動係数CV[%]=(標準偏差/平均値)×100
試料繊維を、繊維重量に対して2.5%のカチオン染料(Nichilon Black G 200)および2%の酢酸を含有する染色浴に、浴比1:80となるように浸漬し、30分間煮沸処理した後に、水洗、脱水、乾燥する。得られた染色済みの繊維を、繊維軸に垂直に薄くスライスし、繊維断面を光学顕微鏡で観察する。このとき、アクリロニトリル系重合体からなる中心部は黒く染色され、カルボキシル基が多く有する表層部は染料が十分に固定されず緑色になる。繊維断面における、繊維の直径(D1)、および、緑色から黒色へ変色し始める部分を境界として黒く染色されている中心部の直径(D2)を測定し、以下の式により表層部面積割合を算出する。なお、10サンプルの表層部面積割合の平均値をもって、試料繊維の表層部面積割合とする。
表層部面積割合(%)=[{((D1)/2)2π-((D2)/2)2π}/((D1)/2)2π]×100
延伸後の未乾燥繊維を純水中に浸漬した後、遠心脱水機(国産遠心機(株)社製TYPE H-770A)で遠心加速度1100G(Gは重力加速度を示す)にて2分間脱水する。脱水後重量を測定(W9[g]とする)後、該未乾燥繊維を120℃で15分間乾燥して重量を測定(W10[g]とする)し、次式により計算する。
延伸後の未乾燥繊維の水分率(%)=(W9-W10)/W9×100
アクリロニトリル90%及びアクリル酸メチル10%からなるアクリロニトリル系重合体10部を48%のチオシアン酸ナトリウム水溶液90部に溶解した紡糸原液を、-2.5℃の凝固浴に紡出し、凝固、水洗、12倍延伸して水分率が35%のゲル状アクリロニトリル系繊維を得た。該繊維を2.5%の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、絞った後に、湿熱雰囲気中で、123℃×25分間加水分解処理を行い、水洗した。次いで、撥水剤分散液(NKガードS-09:日華化学製)中に浸漬し、余分な液を絞った後、乾燥することにより、表1に示した撥水剤含有量を有する実施例1の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維を得た。
実施例1において、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を、実施例2では7.5%、実施例3では10%、実施例4では20%に変更すること以外は同様にして、実施例2~4の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維を得た。
実施例3および4のそれぞれにおいて、加水分解、水洗後の繊維を硝酸水溶液に浸漬し、浴pH5.0に調整し、60℃で30分間加熱した後に、水洗工程を追加したこと以外は同様に処理を行い、実施例5および6の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維を得た。
実施例1および4のそれぞれにおいて、撥水剤含有量を減少させたこと以外は同様にして、実施例7および8の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維を得た。
実施例3において、撥水剤含有量を増加させたこと以外は同様にして、実施例9および10の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維を得た。なお、実施例10の繊維については、撥水剤含有量が多いため、他の実施例の繊維に比べて硬い風合いとなった。
実施例8において、撥水剤の種類を実施例11ではアサヒガードAG-E082(旭硝子製)、実施例12ではKF-8012(信越化学製)、実施例13ではX-22-9002(信越シリコーン製)に変更したこと以外は同様にして、実施例11~13の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維を得た。
実施例2において、ゲル状アクリロニトリル系繊維の代わりに、該繊維に対して、110℃×2.5分間の乾熱処理と60℃×2.5分間の湿熱処理を交互に2回行って得た緻密化繊維を使用したこと以外は同様にして、実施例14の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維を得た。
実施例2において、ゲル状アクリロニトリル系繊維の代わりに、該繊維に対して、110℃×2.5分間の乾熱処理と60℃×2.5分間の湿熱処理を交互に2回行って緻密化させ、次に120℃×10分間のオートクレーブ処理行うことで弛緩させた弛緩繊維を使用すること以外は同様にして、実施例15の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維を得た。
実施例1において、撥水剤処理を省略したこと以外は同様にして、比較例1の繊維を得た。
実施例1において、撥水剤含有量を減少させたこと以外は同様にして、比較例2の繊維を得た。
アクリロニトリル88%及びメタクリル酸12%からなるアクリロニトリル系重合体10部を48%のチオシアン酸ナトリウム水溶液90部に溶解した紡糸原液を、常法に従って紡出し、凝固、水洗、延伸した後、乾燥してカルボキシル基を有するアクリル繊維を得た。その後ソーダ灰1g/l水溶液にて90℃で30分中和処理を行ったが膨潤度が高くなり、その後の撥水剤処理を行うことはできなかった。
Claims (8)
- 共有結合による架橋構造を実質的に有さない重合体で構成されている吸湿性アクリロニトリル系繊維であって、繊維中に0.2~4.5mmol/gのカルボキシル基を含有し、20℃×65%RHでの飽和吸湿率が3重量%以上であり、かつ撥水処理前の繊維重量に対して0.2~5.0重量%の撥水剤を含有し、水上に静置してから水没するまでの時間が10分以上であることを特徴とする撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維。
- カルボキシル基が繊維全体にわたって均一に存在していることを特徴とする請求項1に記載の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維。
- カルボキシル基が繊維表層部に局在化していることを特徴とする請求項1に記載の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維。
- カルボキシル基の中和度が25%以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維。
- アクリロニトリル系重合体を含有する紡糸原液をノズルから紡出後、凝固、水洗、延伸の各工程を経て得られた未乾燥繊維を加水分解し、その後に撥水剤処理を行うことを含むことを特徴とする請求項2に記載の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維の製造方法。
- アクリロニトリル系重合体を含有する紡糸原液をノズルから紡出後、凝固、水洗、延伸の各工程を経て得られた未乾燥繊維を熱処理することで緻密化させた繊維または緻密化後さらに弛緩処理した繊維を加水分解し、その後に撥水剤処理を行うことを含むことを特徴とする請求項3に記載の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維の製造方法。
- 未乾燥繊維の水分率が20~250%であることを特徴とする請求項5または6に記載の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維の製造方法。
- 請求項1~4のいずれかに記載の撥水性吸湿アクリロニトリル系繊維を含有する繊維構造体。
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