JP7093280B2 - 細胞又は組織の凍結保存用治具 - Google Patents

細胞又は組織の凍結保存用治具 Download PDF

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Description

本発明は、細胞又は組織を凍結保存する際に使用する、細胞又は組織の凍結保存用治具に関する。
細胞又は組織の優れた保存技術は、様々な産業分野で求められている。例えば、牛の胚移植技術においては、胚を凍結保存し、受胚牛の発情周期に合わせて胚を融解し、移植することが行われている。また、ヒトの不妊治療においては、母体から卵子又は卵巣を採取後、移植に適したタイミングに合わせるために凍結保存しておき、移植時に融解して用いることがなされている。
一般に、生体内から採取された細胞又は組織は、たとえ培養液の中であっても、次第に活性が失われていくことから、生体外での細胞又は組織の長期間の培養は好ましくない。そのため、生体活性を失わせずに長期間保存するための技術が重要である。優れた保存技術によって、採取された細胞又は組織をより正確に分析することが可能になる。また優れた保存技術によって、より高い生体活性を保ったまま細胞又は組織を移植に用いることが可能となり、移植後の生着率が向上することが望める。さらには、生体外で培養した培養皮膚、生体外で構築したいわゆる細胞シートのような移植のための人工の組織を、順次生産して保存しておき、必要なときに使用することも可能となり、医療の面だけではなく、産業面においても大きなメリットが期待できる。
細胞又は組織の保存方法として、例えば緩慢凍結法が知られている。この方法では、まず、例えばリン酸緩衝生理食塩水等の生理的溶液に耐凍剤を含有させることで得られた保存液に、細胞又は組織を浸漬する。該耐凍剤としては、グリセロール、エチレングリコール等の化合物が用いられる。該保存液に、細胞又は組織を浸漬後、比較的遅い冷却速度(例えば0.3~0.5℃/分の速度)で、-30~-35℃まで冷却することにより、細胞内外又は組織内外の溶液が十分に冷却され、粘性が高くなる。このような状態で、該保存液中の細胞又は組織をさらに液体窒素の温度(-196℃)まで冷却すると、細胞内又は組織内とその外の周囲の微少溶液がいずれも非結晶のまま固体となるガラス化が起こる。ガラス化により、細胞内外又は組織内外が固化すると、実質的に分子の動きがなくなるので、ガラス化された細胞又は組織を液体窒素中に保存することで、半永久的に保存できると考えられる。
しかしながら、前記緩慢凍結法では、比較的遅い冷却速度で冷却する必要があるために、凍結保存のための操作に時間を要する。また、冷却速度を制御するための装置又は治具を必要とする問題がある。加えて、前記緩慢凍結法では、細胞外又は組織外の保存液中に氷晶が形成されるので、細胞又は組織が該氷晶により物理的に損害を受けるおそれがある。
前記緩慢凍結法での問題点を解決するための方法として、ガラス化凍結法が提案されている。ガラス化凍結法とは、グリセロール、エチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)等の耐凍剤を多量に含む保存液の凝固点降下により、氷点下であっても氷晶ができにくくなる原理を用いたものである。この保存液を急速に液体窒素中で冷却させると、氷晶を生じさせないまま固体化させることができる。このように固体化することをガラス化凍結という。また、耐凍剤を多量に含む保存液は、ガラス化液と呼称される。
前記ガラス化凍結法の具体的な操作としては、耐凍剤を多量に含む保存液に細胞又は組織を浸漬させ、その後、液体窒素の温度(-196℃)で冷却する。ガラス化凍結法は、このような簡便かつ迅速な工程であるために、凍結保存のための操作に長い時間を必要としない他、温度制御をするための装置又は治具を必要としないという利点がある。
ガラス化凍結法を用いると、原理的には、細胞内外のいずれにも氷晶が生じないために凍結時及び融解時の細胞への物理的障害(凍害)を回避することができるが、適切なガラス化凍結を成し得るためには、ガラス化に用いる保存液に含有される耐凍剤の濃度を高いものとしなければならない。一方で、保存液に含まれる高濃度の耐凍剤は細胞にとっての化学的毒性が高い。
上記した背景から、細胞又は組織の凍結保存においては、保存液に含まれる高濃度の耐凍剤に由来する毒性を回避する観点から、細胞又は組織が保存液に暴露される時間(つまりは凍結されるまでの時間)が短時間であることが好ましい。また、凍結速度を速くする観点から、細胞又は組織の凍結保存時には細胞又は組織周囲に存在する保存液が少ない方が好ましい。細胞又は組織周囲に存在する保存液が少ないほど、凍結対象の熱容量が少なくなり、細胞又は組織の凍結速度が速くなり、ガラス化凍結にとっては好ましいといえる。さらに、細胞又は組織周囲に存在する保存液が少ないことは、凍結後の融解時においても、保存液が速やかに融解液中に希釈され、細胞又は組織中への再氷晶形成を抑制する観点で好ましい。さらには、融解時に融解液中に混入する耐凍剤の濃度を低くすることができるために、耐凍剤に由来する毒性の観点からも好ましい。
ガラス化凍結法を用いた細胞又は組織の凍結保存については、様々な方法で、様々な種類の細胞又は組織を用いた例が示されている。例えば、特許文献1では、動物又はヒトの生殖細胞又は体細胞へのガラス化凍結法の適用が、凍結保存及び融解後の生存率の点で、極めて有用であることが示されている。
ガラス化凍結法は、主にヒトの生殖細胞を用いて発展してきた技術であるが、最近では、iPS細胞やES細胞への応用も広く検討されている。また、非特許文献1では、ショウジョウバエの胚の保存にガラス化凍結法が有効であったことが示されている。さらに、特許文献2では、植物培養細胞や組織の保存において、ガラス化凍結法が有効であることが示されている。このように、ガラス化凍結法は広く様々な種の細胞及び組織の保存に有用であることが知られている。
特許文献3、特許文献4では、ヒトの不妊治療分野で使用されているいわゆるクライオトップ法という方法で、卵付着保持用ストリップとして短冊状の可撓性かつ無色透明なフィルムを使用した卵凍結保存用具を使用して、顕微鏡観察下で該フィルム上に極少量の保存液と共に卵子又は胚を載置し、凍結保存する方法が提案されている。
特許文献5では、卵子又は胚を、耐凍剤を多量に含む保存液と共に保存液除去材の上に載置し、下部から吸引することで卵子又は胚の周囲に付着した余分な保存液を除き、優れた生存率で凍結保存させる方法が提案されている。なお、保存液除去材としては、金網、紙等の天然物や合成樹脂からなるフィルム状物で貫通孔を有したものが記載されている。また余分な保存液を除き、また細胞を載置する際の作業性を向上することが可能な凍結保存用治具として、例えば、特定のヘーズ値を有する保存液吸収体が特許文献6に記載され、更に特許文献7、特許文献8等には、保存液吸収体として多孔質焼結形成体や特定の屈折率を有する素材で形成された多孔質構造体を有するガラス化凍結保存用治具が記載されている。
特許第3044323号公報 特開2008-5846号公報 特開2002-315573号公報 特開2006-271395号公報 国際公開第2011/070973号パンフレット 特開2014-183757号公報 特開2015-142523号公報 国際公開第2015/064380号パンフレット
Steponkus et al.,Nature 345:170-172(1990)
特許文献3、特許文献4では、卵子又は胚を載置するフィルムの幅を制限することにより、少ない量の保存液とともに卵子又は胚を凍結保存し、優れた生存率を得る方法が提案されている。この方法では、作業者の操作によって、少量の保存液と共に、卵子又は胚をフィルム上に載せるが、操作の難度が高いといった問題があった。この方法をもとにしたクライオトップ法では、より少ない量の保存液と共に卵子又は胚を凍結保存するために、一度、保存液と共に卵子又は胚をフィルム上に載せた後に、余分な保存液を吸引してフィルム上から除去するといった煩雑な操作がされることもある。また、例えば、細胞シートのようなシート形状で大面積を有する組織の凍結保存への適用には不向きである。
特許文献5では、卵子又は胚の周囲に付着した余分な保存液を除くことにより、優れた生存率でこれらの生殖細胞を凍結保存させる方法が提案されている。特許文献6~8では、前述した特許文献5などのように、卵子又は胚の周囲に付着した余分な保存液を作業者が除く必要はなく、良好な作業性が得られる。しかしながら、これら特許文献5~8の保存液を吸収する機能を有した凍結保存治具においては、少なくとも、保存対象の試料と保存液を滴下付着する際(滴下付着する前)には、保存液吸収体自身の光透過性が乏しいために、透過型顕微鏡下での作業が煩雑な場合があり、さらなる改善が望まれていた。
本発明は、細胞又は組織の凍結保存作業を容易かつ確実に行うことが可能な、細胞又は組織の凍結保存用治具を提供することを主な課題とする。より具体的には、細胞又は組織を保存液に浸漬した後、透過型顕微鏡観察下において細胞又は組織を保存液吸収体上の載置部に滴下付着する作業が良好な視認性にて行うことが可能であり、かつ細胞又は組織の外周の余分な保存液が吸収可能な優れた吸収性能を備える凍結保存用治具を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の構成を有する細胞又は組織の凍結保存用治具(本明細書中、「細胞又は組織の凍結保存用治具」を、単に「凍結保存用治具」ともいう)によって、上記課題を解決できることを見出した。
孔径が4nm以上15nm以下のガラス多孔質構造体を保存液吸収体として有し、該ガラス多孔質構造体の厚みは0.5mm以上であり、さらには滴下する保存液1μLにつき該ガラス多孔質構造体の体積が0.5mm 以上である、細胞又は組織の凍結保存用治具。
上記の発明によれば、透過型顕微鏡観察下において、細胞又は組織を保存液吸収体上の載置部に滴下付着する作業が良好な視認性にて行うことが可能であり、かつ保存液の吸収性に優れた凍結保存用治具を提供することができる。
本発明の凍結保存用治具の一例を示す全体図である。 図1中の保存液吸収体の拡大図である。 保存液吸収体が支持体を有する場合の一例を示す概略図である。 複数個の細胞又は組織を1つの凍結保存用治具で凍結保存させる場合に用いる保存液吸収体の一例を示す概略図である。 複数個の細胞又は組織を1つの凍結保存用治具で凍結保存させる場合に用いる保存液吸収体の別の一例を示す概略図である。
本発明の凍結保存用治具は、細胞又は組織を凍結保存する際に用いられるものである。本発明において、細胞とは、単一の細胞のみならず、複数の細胞からなる生物の細胞集団を含むものである。複数の細胞からなる細胞集団とは単一の種類の細胞から構成される細胞集団でも良いし、複数の種類の細胞から構成される細胞集団でも良い。また、組織とは、単一の種類の細胞から構成される組織でも良いし、複数の種類の細胞から構成される組織でも良く、細胞以外に細胞外マトリックスのような非細胞性の物質を含むものでも良い。
本発明に係る凍結保存作業は、細胞又は組織を極低温の冷媒を用いて凍結させる凍結作業、細胞又は組織を極低温の冷媒中で貯蔵する保管作業、細胞又は組織を融解液中で解凍する融解作業の一連の作業を含むものとする。
本発明の凍結保存用治具は、細胞又は組織の凍結保存作業に用いるものであり、好ましくはガラス化凍結保存作業に用いるものである。詳細には、本発明の凍結保存用治具は、保存液に浸漬された細胞又は組織を液体窒素等の冷却溶媒に浸漬し凍結させるためのものである。また、該載置部上に載置された細胞又は組織を融解する際には、細胞又は組織を凍結保存用治具と共に冷却媒体から取りだし、融解液中に浸漬させて融解する。本発明の凍結保存用治具を用いると、保存液吸収体が優れた光透過性を有することから、凍結作業の際に、透過型顕微鏡を用いた観察下での細胞又は組織の載置作業が容易となる。また、保存液吸収体が余分な保存液を素早く吸収するので、細胞又は組織と共に滴下付着する保存液の量が多くても安定した細胞又は組織の生存率が達成できる。さらに、前述のように凍結作業がなされた細胞又は組織は極少量の保存液に覆われており、極低温の冷媒環境下で急速な凍結速度を達成することができる。つまりは急速なガラス化凍結が可能となる。さらに、細胞又は組織を覆う保存液が極少量であるために、凍結保存した細胞又は組織を融解する際にただちに保存液を希釈することができる。本発明の凍結保存用治具は、細胞又は組織の保存用具、細胞又は組織の凍結保存器具、細胞又は組織の保存用器具と言い換えることができる。
本発明の凍結保存用治具は、保存液吸収体がガラス多孔質構造体であることを特徴とする。ガラス多孔質構造体とは、所謂ポーラスガラスと呼ばれるものであり、例えば、スペーサー成分と共にガラスを成型した後に、スペーサーを所謂酸処理と呼ばれる化学処理により除去することにより形成される。また、本発明におけるガラス多孔質構造体は表面に気孔(細孔)を有する構造体であり、好ましくは表面及び内部に連続的な気孔を有する構造体である。本発明の凍結保存用治具は、該ガラス多孔質構造体を保存液吸収体として有するものであり、支持体を有さずに、前記した多孔質構造体そのものを保存液吸収体として有していても良い。あるいは支持体上に前記したガラス多孔質構造体を有していても良い。支持体上にガラス多孔質構造体を積層する場合には、支持体とガラス多孔質構造体との間に、接着層を設けることができる。さらには、該ガラス多孔質構造体と該接着層以外にも、例えば支持体上に均一な接着層を得ることを目的に、該支持体は例えば下塗り層等を有していても良い。
本発明の凍結保存用治具が有するガラス多孔質構造体の孔径は15nm以下である。孔径が15nm以下であると、保存液の良好な吸収性に加えて、優れた光透過性が得られることから、透過型顕微鏡観察下における作業が良好な視認性にて行うことができる。より好ましい孔径は10nm以下である。孔径が15nmを超える場合には、ガラス粒子及び細孔・空隙に依存した散乱が顕著となり、ガラス多孔質構造体の光透過性は低下し、作業性も低下する。なお、本発明の多孔質体の孔径は、JIS K 3832に記載されるバブルポイント試験により測定される最も大きい細孔の直径である。
本発明の凍結保存用治具が有するガラス多孔質構造体は、孔径4nm以上である孔径が上記範囲にあると、保存液の吸収性が良好であり、凍結作業の際に優れた作業性が得られる。
上記したガラス多孔質構造体の表面は、光透過性を高める目的で、電解研磨を行うことができる。表面に電解研磨を行うことにより、表面の散乱を抑制し、より光透過性を高めることができる。
上記したガラス多孔質構造体の表面は、保存液の吸収性能を高めるために、親水化処理することができる。親水化処理の方法としては、グラフト改質法、親水性高分子化合物等を用いたコーティング法、コロナ放電、プラズマ処理、エキシマレーザー等を用いた一般的な表面改質方法を使用することができる。
本発明においてガラス多孔質構造体の面積は、細胞又は組織と共に滴下される保存液の滴下量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、滴下する保存液1μLにつき1mm以上とすることが好ましく、2~400mmとすることがより好ましい。また、吸収性を高める目的で、厚みとして、0.5mm以上であるさらには、滴下する保存液1μLにつき、体積として、0.5mm以上とする同一の凍結保存用治具において、非吸収性支持体上に本発明のガラス多孔質構造体を保存液吸収体として複数有する形態である場合には、連続している1つのガラス多孔質構造体が前記した面積であることが好ましい。
本発明の凍結保存用治具は、保存液吸収体を支持する目的として、支持体を有することができる。支持体としては、光透過性支持体が好ましく、全光線透過率が80%以上である光透過性支持体がより好ましい。また、光透過性支持体のヘーズ値は10%以下であることが好ましい。このような支持体としては例えば、各種樹脂フィルム、ガラス、ゴム等が挙げられる。本発明の効果を奏することになる限り、2種以上の支持体を組み合わせて用いてもよい。中でも樹脂フィルムは、取扱い性が優れている点で好適に用いられる。樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等からなる樹脂フィルムが挙げられ、その厚さは10~1000μmであることが好ましい。また、接着層との接着強度を高めるために、支持体の表面をコロナ放電処理により易接着処理することもできる。
以上、本発明における保存液吸収体を説明してきた。以下にこれらを用いた凍結保存用治具の構成について説明する。本発明の凍結保存用治具は上述したような保存液吸収体を有するものであればどのようなものであってもよいが、該保存液吸収体が把持部に接続されていてもよい。把持部を有すると、凍結/融解時の作業性が良好であるため、好ましい。
図1は本発明の凍結保存用治具の一例を示す全体図である。図1において凍結保存用治具5は、把持部1と保存液吸収体2から構成される。把持部1は液体窒素耐性素材であることが好ましい。このような素材としては、例えばアルミ、鉄、銅、ステンレス合金などの各種金属、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエレン樹脂、フッ素系樹脂や各種エンジニアプラスチック、更にはガラスなどを好適に用いることができる。また保存液吸収体2はハンドリング上、シート状または短冊状であることが好ましい。
図2は、図1の保存液吸収体の拡大図である。図2の保存液吸収体2aは支持体を有さずガラス多孔質構造体3そのものを保存液吸収体とする形態の一例である。また、図3は保存液吸収体が支持体を有する場合の一例を示す概略図であり、該保存液吸収体2bは支持体4上にガラス多孔質構造体3を有する。また、保存液吸収体2bは、保存液吸収体の全面にガラス多孔質構造体を有する形態の一例である。
図1の把持部1と保存液吸収体2の接合方法について説明する。把持部1が樹脂の場合、例えば、成形加工する時にインサート成形により保存液吸収体2を把持部1に接合することができる。さらに、把持部1に図示しない保存液吸収体挿入部を作製して接着剤にて保存液吸収体2を接合することができる。接着剤は様々なものが使用できるが、低温に強いシリコン系やフッ素系の接着剤が好適に用いることができる。
本発明の細胞又は組織の凍結保存用治具を用いて細胞又は組織を長期凍結保存する場合、図1に示す凍結保存用治具の保存液吸収体部分に安全のため、外界と遮断するためにキャップを被せることも可能である。更に、通常液体窒素は滅菌されておらず、直接液体窒素に接触させて凍結させる場合、凍結保存用治具が滅菌されていても無菌状態を保証できない場合がある。よって凍結前に細胞又は組織を付着させた保存液吸収体にキャップをして、直接液体窒素に接触させないで凍結させることがある。キャップは液体窒素耐性のある素材である各種金属、各種樹脂、ガラス、セラミックなどで作製することが好ましい。形状としては、鉛筆用のキャップや円柱状のストローキャップなど保存液吸収体と接触せず、外界と遮断できるような形状ならどのような形状でもよい。
図4、図5に、複数個の細胞又は組織を1つの凍結保存用治具で凍結保存させる場合に用いる保存液吸収体の例を示す。図1に示す細胞又は組織のガラス化凍結保存用治具において、保存液吸収体を図4、図5に示すものとすることもできる。図4及び図5ではガラス多孔質構造体3が支持体4上に、不連続であって複数が配置されている。
前述した図2や図3のようにガラス多孔質構造体3が連続した形状である場合、複数の細胞又は組織をガラス多孔質構造体3に付着させようとすると、保存液はガラス多孔質構造体の横方向と厚み方向に広がるため、例えば2個目以降の細胞又は組織をガラス多孔質構造体3に付着させる場合、保存液の吸収性は低下する場合がある。しかし、図4及び図5のようにガラス多孔質構造体3が支持体4上に、不連続で複数設けられているとそのような心配がなく、保存液と共に細胞又は組織を各ガラス多孔質構造体3に1個ずつ確実に付着させることができる。図4及び図5では、一例として、升目状のガラス多孔質構造体3を複数配置した。図4及び図5に示す保存液吸収体2c及び保存液吸収体2dは、支持体上の一部にガラス多孔質構造体を有する保存液吸収体の一例でもある。
本発明の凍結保存用治具を用いて細胞又は組織を凍結保存する方法は特に限定されず、例えば、まず保存液に浸漬した細胞又は組織を保存液と共に載置部上に滴下する。これにより、自動的に余分な保存液が除かれる。次いで、前記細胞又は組織を載置部に保持させたまま該凍結保存用治具を液体窒素等の中に浸漬することにより、細胞又は組織を凍結することができる。この際、前記した載置部上の細胞又は組織を外界と遮断することができるキャップを載置部に装着して、液体窒素等の中に浸漬することもできる。保存液は、通常卵子、胚等の細胞の凍結のために使用されるものを使用でき、例えば、上述したリン酸緩衝生理食塩水等の生理的溶液に耐凍剤(グリセロール、エチレングリコール等)を含有する保存液や、グリセロールやエチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)等の各種耐凍剤を多量に(少なくとも保存液の全質量に対して10質量%以上、より好ましくは20質量%以上)含有する保存液を使用できる。融解作業の際は、液体窒素等の冷却溶媒中から、該凍結保存用治具を取りだし、凍結された細胞又は組織を載せた載置部を融解液中に浸漬させ、その後、細胞又は組織を回収する。
本発明の凍結保存用治具を用いて凍結保存することができる細胞として、例えば、哺乳類(例えば、人(ヒト)、牛、豚、馬、ウサギ、ラット、マウス等)の卵子、胚、***等の生殖細胞;人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)等の多能性幹細胞が挙げられる。また、初代培養細胞、継代培養細胞、及び細胞株細胞等の培養細胞が挙げられる。また、細胞は、一又は複数の実施形態において、線維芽細胞、膵ガン・肝ガン細胞等のガン由来細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞、神経細胞、軟骨細胞、組織幹細胞、及び免疫細胞等の接着性細胞が挙げられる。さらに、凍結保存することができる組織として、同種又は異種の細胞からなる組織、例えば、卵巣、皮膚、角膜上皮、歯根膜、心筋等の組織が挙げられる。本発明は、特にシート状構造を有する組織(例えば、細胞シート、皮膚組織等)の凍結保存に好適である。本発明の凍結保存用治具は、直接生体から採取した組織だけでなく、例えば、生体外で培養し増殖させた培養皮膚、生体外で構築したいわゆる細胞シート、特開2012-205516号公報で提案されている三次元構造を有する組織モデルのような人工の組織の凍結保存についても、好適に用いることができる。本発明の凍結保存用治具は、上記のような細胞又は組織の凍結保存用治具として好適に用いられる。
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、孔径はいずれもJIS K 3832に記載されるバブルポイント試験により測定した値である。
(実施例1)
(株)赤川硬質硝子工業所製のガラス多孔質構造体である孔径4nmの多孔質ガラス(厚み1mm)を保存液吸収体とし、保存液吸収体400mm(20mm×20mm)をABS樹脂製の把持部と接合させ、図1に示す形態で実施例1の凍結保存用治具を作製した。
(実施例2)
(株)赤川硬質硝子工業所製のガラス多孔質構造体である孔径15nmの多孔質ガラス(厚み1mm)を保存液吸収体とした以外は、実施例1と同様にして実施例2の凍結保存用治具を作製した。
(比較例1)
ガラス多孔質構造体にかえて、セルロースアセテートからなるアドバンテック東洋(株)製セルロースアセテートメンブレン(孔径0.5μm、厚み125μm)を保存液吸収体とした。メンブレンが薄く、自立性が十分でないことから、メンブレンは厚み250μmのPETフィルム上にウレタン系接着物質を用いて貼り付け、実施例1と同様にして比較例1の凍結保存用治具を作製した。
(比較例2)
細孔をもたない無色透明なフィルムである透明PETフィルム(厚さ250μm)をそのまま用いて保存液吸収体とした以外は実施例1と同様にして、比較例2の凍結保存用治具を作製した。
(比較例3)
(株)赤川硬質硝子工業所製のガラス多孔質構造体である孔径70nmの多孔質ガラス(厚み1mm)を保存液吸収体とした以外は、実施例1と同様にして比較例3の凍結保存用治具を作製した。
<視認性の評価>
実施例1、実施例2及び比較例1~3の各凍結保存用治具の保存液吸収体上に、ピペットの先端を置き、透過型倒立光学顕微鏡(オリンパス(株)製、SZH-121)を用いて観察し、ピペットの先端の視認性を以下の基準で評価した。これらの結果を表1の「視認性の評価」の項目に示す。
◎:ピペットの先端が良好に観察できる。
○:ピペットの先端が観察できる。
×:ピペットの先端が観察しにくい、もしくは観察できない。
<保存液の吸収性の評価>
実施例1、実施例2及び比較例1~3の各凍結保存用治具の保存液吸収体上に、ガラスビーズ(直径100μm)を疑似細胞として複数個含む保存液0.4μLを滴下付着させた。なお、保存液は、シグマアルドリッチ社製 修正TCM199培地に、15容積%DMSO、15容積%エチレングリコール、17質量%スクロースが含まれる組成のものを用いた。滴下付着後、落射型正立光学顕微鏡(オムロン(株)製、VC4500-S1)にて、保存液吸収体上に載置された疑似細胞周辺の保存液が吸収される様子を観察し、以下の基準で評価した。これらの結果を、表1の「保存液の吸収性の評価」の項目に示す。
○:保存液滴下付着後、20秒以内に余分な保存液が吸収された。
×:保存液滴下付着後、保存液の吸収性が十分でなく、疑似細胞周辺に保存液の残存が確認された。
Figure 0007093280000001
上記の結果から、本発明の凍結保存用治具は、凍結作業時に、透過型顕微鏡観察下において細胞又は組織を保存液吸収体上の載置部に滴下付着する作業が良好な視認性にて行うことが可能であり、かつ細胞又は組織の外周の余分な保存液が吸収可能な優れた吸収性能を備えることが分かる。
本発明は、牛等の家畜や動物の胚移植や人工授精、人への人工授精等の他、iPS細胞、ES細胞、一般に用いられている培養細胞、胚又は卵子を含む生体から採取した検査用又は移植用の細胞又は組織、生体外で培養した細胞又は組織等の凍結保存に用いることができる。
1 把持部
2、2a、2b、2c、2d 保存液吸収体
3 ガラス多孔質構造体
4 支持体
5 凍結保存用治具

Claims (1)

  1. 孔径が4nm以上15nm以下のガラス多孔質構造体を保存液吸収体として有し、該ガラス多孔質構造体の厚みは0.5mm以上であり、さらには滴下する保存液1μLにつき該ガラス多孔質構造体の体積が0.5mm 以上である、細胞又は組織の凍結保存用治具。
JP2018185181A 2018-09-28 2018-09-28 細胞又は組織の凍結保存用治具 Active JP7093280B2 (ja)

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JP2002160930A (ja) 2000-11-24 2002-06-04 Toshiba Ceramics Co Ltd 多孔質石英ガラスとその製造方法
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JP2016010359A (ja) 2014-06-30 2016-01-21 三菱製紙株式会社 細胞又は組織のガラス化凍結保存用治具

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