JP7012597B2 - 自動車衝突模擬試験の試験条件設定方法及び自動車衝突模擬試験の試験条件設定システム - Google Patents

自動車衝突模擬試験の試験条件設定方法及び自動車衝突模擬試験の試験条件設定システム Download PDF

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Description

本発明は、自動車を破壊することなく衝突時に客室に発生する加速度を再現し、二次衝突による乗員の傷害度合いを再現する自動車衝突模擬試験の試験条件設定方法及び自動車衝突模擬試験の試験条件設定システムに関する。
一般に、自動車の衝突試験は、クラッシュ量や客室の残存空間量などの物理量と乗員傷害値とを評価するための実車衝突試験があるが、実車にダミーを乗せて所定速度でバリヤに衝突させる方法は破壊試験であり、非常にコストを要する。そのため、ダミーやエアバッグ等を搭載したホワイトボディ、模擬車体等を台車上に取付け、この台車に対して実車衝突時とほぼ同様の加速度を与えることで、供試体に作用する衝撃度を非破壊的に再現して乗員傷害値を評価し、エアバッグなどの安全装置を開発するための自動車衝突模擬試験が行われる。
このような自動車衝突模擬試験装置としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された自動車衝突シミュレータにおけるサーボアクチュエータ装置では、アキュムレータに蓄積・蓄圧された作動油により、油圧アクチュエータのピストンを供試体が搭載されるスレッドに向けて打ち出し可能に構成し、この油圧アクチュエータに作動油が直接流入するようにアキュムレータを接続し、油圧アクチュエータから流出する作動油を制御するようにサーボ弁を接続することでメータアウト回路を構成している。
ここで、実際の自動車の事故時には、衝突直前、すなわちプリクラッシュ時において、ブレーキ(プリクラッシュブレーキ)などにより、自動車の加速度が変化する場合がある。従って、自動車衝突模擬試験においては、このようなプリクラッシュ時における加速度の変化を加味することが求められる場合がある。例えば特許文献2には、減速区間を設けることでプリクラッシュ時の加速度変化を再現するプリクラッシュ試験方法が記載されている。
特開2002-162313号公報 特許第5484177号公報
しかし、特許文献2では、減速の持続時間などに基づき減速区間を設定しているため、減速区間での試験における走行距離(制動距離)が長くなってしまう。従って、このような減速区間を特許文献1のような自動車衝突模擬試験装置に適用した場合、ストロークが長くなり過ぎるおそれがある。自動車衝突模擬試験装置は、油圧シリンダを用いてピストンを打ち出しているが、このようにストロークが長い油圧シリンダを準備することは困難である。また、このような油圧シリンダを準備できたとしても、設備規模が大きくなり過ぎたり、試験時間が長くなったりするおそれがある。従って、自動車衝突模擬試験において、プリクラッシュブレーキの影響を、容易にかつ適切に反映することが求められている。
本発明は上述した課題を解決するものであり、プリクラッシュブレーキの影響を、容易にかつ適切に反映可能な自動車衝突模擬試験の試験条件設定方法及び自動車衝突模擬試験の試験条件設定システムを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、自動車衝突模擬試験の試験条件設定方法は、実車を模した供試体を搭載したスレッドに向けてピストンロッドを打ち出す自動車衝突模擬試験の試験条件設定方法であって、前記実車を駆動して障害物に衝突させる実車衝突試験での、前記実車の前記障害物への衝突時又は衝突時前の所定タイミングにおける、前記実車に搭載された人形の頭部の前記実車に対する相対位置の情報と、前記実車が前記障害物に衝突した際の前記実車の加速度変化の情報と、を取得する実車試験結果取得ステップと、前記実車試験結果取得ステップの取得結果に基づき、前記自動車衝突模擬試験における前記スレッドの加速度波形が、第1時刻から第2時刻までのプリクラッシュ波形と、前記第2時刻以降の衝突波形とを有するように、前記自動車衝突模擬試験の試験条件を設定する試験条件設定ステップとを有し、前記試験条件設定ステップにおいて、前記プリクラッシュ波形が、前記相対位置の情報に基づく波形となり、前記衝突波形が、前記加速度変化の情報に基づく波形となるように、前記試験条件を設定する。
この試験条件設定方法によると、プリクラッシュブレーキの影響を、容易にかつ適切に反映することができる。
前記実車試験結果取得ステップにおいて、前記人形の頭部の加速度変化の情報を取得し、前記試験条件設定ステップにおいて、前記プリクラッシュ波形が、前記相対位置の情報と前記加速度変化の情報に基づく波形となるように、前記試験条件を設定することが好ましい。この試験条件設定方法によると、プリクラッシュブレーキの影響を、より適切に反映することができる。
前記試験条件設定ステップにおいて、前記供試体に人形を搭載して前記自動車衝突模擬試験を実施した場合に、前記第2時刻における前記人形の頭部の前記供試体に対する相対位置が、前記実車衝突試験における前記頭部の相対位置となるように、前記プリクラッシュ波形を設定することが好ましい。この試験条件設定方法によると、プリクラッシュブレーキの影響を、より適切に反映することができる。
前記実車試験結果取得ステップにおいて、前記所定タイミングまでにおける、前記頭部の回転角度の変位の情報を更に取得し、前記試験条件設定ステップにおいて、前記第1時刻から前記第2時刻における前記人形の頭部の回転角度の変位が、前記実車衝突試験における前記回転角度の変位と一致するように、前記プリクラッシュ波形を設定することが好ましい。この試験条件設定方法によると、プリクラッシュブレーキの影響を、より適切に反映することができる。
前記実車試験結果取得ステップにおいて、前記実車試験結果取得ステップにおいて、前記所定タイミングにおける、前記人形の胸部に対する前記頭部の相対位置の情報を更に取得し、前記試験条件設定ステップにおいて、前記第2時刻における前記人形の頭部の前記胸部に対する相対位置が、前記実車衝突試験における前記胸部に対する前記頭部の相対位置となるように、前記プリクラッシュ波形を設定することが好ましい。この試験条件設定方法によると、プリクラッシュブレーキの影響を、より適切に反映することができる。
上記の目的を達成するために、自動車衝突模擬試験の試験条件設定システムは、実車を模した供試体を搭載したスレッドに向けてピストンロッドを打ち出す自動車衝突模擬試験の試験条件設定システムであって、前記実車を駆動して障害物に衝突させる実車衝突試験での、前記実車の前記障害物への衝突時又は衝突時前の所定タイミングにおける、前記実車に搭載された人形の頭部の前記実車に対する相対位置の情報と、前記実車が前記障害物に衝突した際の前記実車の加速度変化の情報と、を取得する実車試験結果取得部と、前記実車試験結果取得ステップの取得結果に基づき、前記自動車衝突模擬試験における前記スレッドの加速度波形を、第1時刻から第2時刻までのプリクラッシュ波形と、前記第2時刻以降の衝突波形と、を有するように設定することで、前記自動車衝突模擬試験の試験条件を設定する試験条件設定部とを有し、前記試験条件設定部は、前記プリクラッシュ波形を、前記相対位置の情報に基づき設定し、前記衝突波形を、前記加速度変化の情報に基づき設定する。この試験条件設定システムによると、プリクラッシュブレーキの影響を、容易にかつ適切に反映することができる。
本発明によれば、自動車衝突模擬試験において、プリクラッシュブレーキの影響を、容易にかつ適切に反映することができる。
図1は、本発明の本実施形態に係る自動車衝突模擬試験装置を表す概略構成図である。 図2は、自動車の衝突の際の加速度と速度の波形の例を示すグラフである。 図3は、実車衝突試験を説明する模式図である。 図4は、プリクラッシュ期間におけるダミーの挙動を示す模式図である。 図5は、実車衝突試験で取り付けるセンサを説明する図である。 図6は、実車衝突試験における各波形の例を示すグラフである。 図7は、試験条件の設定時に取り付けるセンサを説明する図である。 図8は、試験条件の設定を行う際の自動車衝突模擬試験を説明するためのタイムチャートである。 図9は、自動車衝突模擬試験を表す動作図である。 図10は、自動車衝突模擬試験を表す動作図である。 図11は、自動車衝突模擬試験を表す動作図である。 図12は、自動車衝突模擬試験を表す動作図である。 図13は、自動車衝突模擬試験を説明するためのタイムチャートである。 図14は、自動車衝突模擬試験を表す動作図である。 図15は、本実施形態における自動車衝突模擬試験の方法を説明するフローチャートである。
以下に添付図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
(自動車衝突模擬試験装置の構成)
図1は、本発明の本実施形態に係る自動車衝突模擬試験装置を表す概略構成図である。
本実施形態の自動車衝突模擬試験装置において、図1に示すように、スレッド11は、所定厚さを有する板材を有する骨組材であって、平面視が前後方向(図1にて、左右方向)に長い矩形状をなしている。床面12には、所定間隔を有して左右一対のレール13が前後方向に沿って付設されており、スレッド11が下面に固定されたスライダ14を介してこのレール13に沿って移動自在に支持されている。
このスレッド11は、上面に供試体15を搭載可能となっている。この供試体15は、本実施例では、骨格のみを有する自動車、所謂、ホワイトボディであって、シート15a、ステアリング15b、エアバッグ15c、シートベルト15dなどの装備品が装着される。また、供試体15には、人形であるダミー15eが搭載されている。ダミー15eは、シート15a上に搭載され、シートベルト15dで締め付けられている。この供試体15は、スレッド11における所定の位置に載置され、図示しない固定具により固定される。
また、本実施例にて、供試体15は、スレッド11上に搭載されることから、この供試体15である自動車の前方(図1にて、左方向)をスレッド11の前方とし、供試体15である自動車の後方(図1にて、右方向)をスレッド11の後方として説明する。また、供試体15である自動車の側方、つまり、左右方向(図1にて、上下方向)をスレッド11の側方、つまり、左右方向として説明する。
スレッド11の前方側の床面12には、スレッド11に対して後方加速度を付与する加速度装置としての発射装置21が設置されている。この発射装置21は、油圧制御(または、空圧制御、摩擦制御など)可能となっている。この発射装置21は、油圧シリンダ(流体シリンダ)22と、アキュムレータ23と、サーボ弁24と、油圧源25と、制御装置26とを有している。
なお、本実施形態にて、発射装置21(油圧シリンダ22)は、スレッド11上に対して後方加速度を付与することから、このスレッド11側を発射装置21の前方(図1にて、右方向)とし、スレッド11との反対側を発射装置21の後方(図1にて、左方向)として説明する。
即ち、スレッド11の前方側の床面12は、段差により低くなっており、この低い床面12に油圧シリンダ22が設置されている。油圧シリンダ22は、中空円筒形状をなすシリンダ本体31と、このシリンダ本体31に移動自在に支持されるピストン32とから構成されている。なお、ピストン32は、シリンダ本体31の内周部に移動自在に嵌合するランド32aと、シリンダ本体31の中心軸心方向に貫通すると共にランド32aに接続されるピストンロッド32bとから構成されている。この場合、ピストン32(ピストンロッド32b)は、後端部がシリンダ本体31から外部に突出しているが、シリンダ本体31に固定されたケース33により被覆されている。また、ピストン32(ピストンロッド32b)は、前端部がシリンダ本体31から外部に突出し、スレッド11側に延出している。そして、シリンダ本体31とピストン32(ピストンロッド32b)との間には、シール部材34,35が装着されている。
また、ピストン32(ランド32a)は、シリンダ本体31内を前後の部屋A0,B0に区画しているが、ランド32aの外周面とシリンダ本体31の内周面との間に微小隙間が設定されており、微速での作動油の流通が可能となっている。また、前部屋A0側のランド32aの外径が、後部屋B0のランド32aの外径より若干小さく設定されており、ランド32aは前部屋A0側の受圧面積が後部屋B0側の受圧面積より大きい。そのため、部屋A0,B0に同圧の油圧が供給されているとき、ピストン32(ランド32a)は、後方(図1にて左方)側に付勢されている。
アキュムレータ23は、図1の図示では1つであるが、油圧シリンダ22の周囲に複数配置されている。このアキュムレータ23は、中空円筒形状をなすハウジング36と、このハウジング36に移動自在に支持される隔壁37とから構成されており、前端部が油圧シリンダ22の後部に固定されている。隔壁37は、ハウジング36内を前後の部屋C0,Dに区画しており、前部屋C0が連通路38を通して油圧シリンダ22の後部屋B0に連通されている。また、後部屋D0は、密閉された部屋であり、不活性ガスとしての窒素ガスが封入されている。
油圧シリンダ22は、後部の連通路38に位置して、外部から作動油を供給可能な供給ポート39が形成されている。従って、供給ポート39から作動油を供給することで、油圧シリンダ22の後部屋B0、前部屋A0及びアキュムレータ23の前部屋C0に作動油を充填可能であり、このときに、隔壁37が後退して後部屋D0の窒素ガスが圧縮されることで、油圧シリンダ22及びアキュムレータ23の内部に高圧油を蓄圧可能となる。
また、油圧シリンダ22は、図1の図示では1つであるが、前部に複数のサーボ弁24が装着されている。このサーボ弁24は、弁開度を調整可能な電磁弁であって、中空のケーシング41と、このケーシング41内に移動自在に支持された弁体42と、この弁体42を移動可能な駆動部43とから構成されている。サーボ弁24は、油圧シリンダ22の前部屋A0に開口する排出口44と、外部から作動油を供給可能な排出ポート45とを連通・遮断可能となっている。従って、駆動部43により弁体42を閉止位置に移動すると、排出口44と排出ポート45とを遮断することができ、駆動部43により弁体42を開放位置に移動すると、排出口44と排出ポート45とを連通することができ、このとき、油圧シリンダ22の前部屋A0に充填されている作動油を排出ポート45から外部に排出することができる。
なお、油圧シリンダ22にて、ピストン32のおけるシリンダ本体31から突出した前端部には、フランジ部51が一体に形成されており、このフランジ部51がシリンダ本体31に当接することで、ピストン32の後退位置(後述する初期位置)が規定されている。また、油圧シリンダ22の前方にて、ピストン32の前端部に対応して、ピストン32をこの後退位置に拘束する拘束部材52が設けられている。この拘束部材52は、上下一対をなし、エアシリンダ53によりピストン32のおけるフランジ部51の前側を拘束可能となっている。なお、このエアシリンダ53には、エア給排装置54が連結されている。
油圧源25は、収容タンク61、供給ポンプ62、冷却装置63等から構成されている。収容タンク61は、排出配管64を介して排出ポート45に連結されており、油圧シリンダ22の前部屋A0内の作動油を排出ポート45から排出配管64を通して回収可能である。供給ポンプ62は、供給配管65を介して供給ポート39に連結されており、収容タンク61内の作動油を供給配管65から供給ポート39を通して油圧シリンダ22及びアキュムレータ23内に供給可能である。
制御装置26は、サーボ弁24を制御可能となっており、運転操作装置27からの操作信号を受けてサーボ弁24の開閉制御、開度調整制御を実行する。また、制御装置26は、エア給排装置54を介してエアシリンダ53を作動することで、拘束部材52を作動可能となっている。この場合、制御装置26は、拘束部材52に設けられた図示しないセンサから拘束/解除信号が入力される。
従って、サーボ弁24を閉止し、且つ、拘束部材52により油圧シリンダ22のピストン32を初期位置に拘束した状態で、供給ポンプ62により収容タンク61内の作動油を供給配管65から供給ポート39を通して油圧シリンダ22の各部屋A0,B0及びアキュムレータ23の前部屋C0に供給する。すると、この油圧シリンダ22の各部屋A0,B0及びアキュムレータ23の前部屋C0が加圧され、所定の高圧状態となると、供給ポンプ62の作動を停止する。そして、この高圧状態で、サーボ弁24を開放すると、油圧シリンダ22の前部屋A0の作動油が排出ポート45から排出配管64を通して収容タンク61に回収されることで、油圧シリンダ22のピストン32は、油圧シリンダ22の後部屋B0及びアキュムレータ23の前部屋C0の圧力により前方(スレッド11側)に打ち出すことができる。
そのため、発射装置21は、ピストン32の先端がスレッド11の前端に接触した状態で、ピストン32を打ち出すことで、このスレッド11に対して後方への衝撃力、つまり、加速度を与えることができる。即ち、発射装置21によりスレッド11に後方加速度を付与することは、スレッド11上の供試体15が前方衝突したときに前方加速度を受けることと同様の形態となり、模擬的に自動車衝突事故を発生させることができる。
自動車衝突模擬試験では、上述したように、油圧シリンダ22及びアキュムレータ23内を高圧状態とし、サーボ弁24を開放して油圧シリンダ22の前部屋A0の作動油をすることで、ピストン32を打ち出し、スレッド11に対して後方加速度を与え、模擬的に自動車衝突事故を発生させる。この場合、発射装置21によるピストン32の打ち出しストロークは、実車衝突試験で得られたデータに基づいて設定されるが、供試体15の質量などに応じて変動する。例えば、質量の大きい供試体15はピストン32の打ち出しストロークが長く、質量の小さい供試体15はピストン32の打ち出しストロークが短い。
一方で、自動車衝突模擬試験にて、実車衝突試験に近い高い再現性を確保するには、油圧シリンダ22の前部屋A0に充填される作動油の油柱剛性を高くする必要があり、この油柱剛性は、ランド32aの受圧面積、ランド32a(ピストン32)のストロークに起因しており、下記数式により求めることができる。ここで、Kは油柱剛性、Sは受圧面積、Lはストローク、βは作動油の物性地(体積弾性係数)である。
K=(S/L)β
この場合、ランド32aの受圧面積S、作動油の物性地(体積弾性係数)βが一定値であることから、油柱剛性を高くするには、ランド32a(ピストン32)のストロークLを小さくすればよい。即ち、油圧シリンダ22にて、ランド32a(ピストン32)の最大ストロークは、衝突模擬試験を実施可能な最も質量の大きい供試体15に対して設定されていることから、質量の小さい供試体15に対して衝突模擬試験を実施する場合には、ランド32a(ピストン32)の打ち出しストロークは短くなる。
そこで、本実施形態では、実車衝突試験で得られたデータに基づいてピストン32の打ち出しストロークを設定し、この打ち出しストロークに応じてピストンの打ち出し開始位置を設定する。具体的には、実車衝突試験で得られたデータに基づいて設定されたピストン32の打ち出しストロークに応じて、ピストン32を初期位置から前進側に移動して打ち出し開始位置に停止させ、この前進した打ち出し開始位置から衝突模擬試験を実施するようにしている。この場合、質量の小さい供試体15は、ピストン32の打ち出しストロークが短くなることから、上述したランド32a(ピストン32)のストロークが短縮され、油柱剛性Kを高くなって、自動車衝突模擬試験における高い再現性を確保することができる。
本実施形態においては、自動車衝突模擬試験装置は、試験条件設定装置29を有する。試験条件設定装置29は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備えたコンピュータである。試験条件設定装置29は、運転操作装置27とは別の装置であるが、運転操作装置27と一体の装置であってもよい。試験条件設定装置29は、例えば操作者の操作により、自動車衝突模擬試験の試験条件を設定する。試験条件設定装置29は、後述するプリクラッシュ期間における自動車の加速度の変化と、衝突期間における自動車の加速度の変化との両方を、一回の打ち出しストロークで反映可能なように、試験条件を設定する。試験条件設定装置29は、このような試験条件の設定に、実車衝突試験の結果を用いる。以降で、試験条件の設定方法について説明するが、まずは、プリクラッシュ期間について説明する。
(プリクラッシュ期間について)
実際の衝突事故の際には、運転者は、衝突すると判断したら、ブレーキなどをかけることが多い。また、近年、衝突を予知して自動でブレーキをかけて減速する装置、すなわち衝突被害軽減ブレーキシステムが用いられることもある。このように、実際の衝突事故の際には、自動車は、運転者のブレーキや衝突被害軽減ブレーキシステムにより、衝突が予知されてから衝突の瞬間までにおいて、減速方向の加速度が発生する。従って、自動車は、衝突が予知されてから衝突の瞬間までの間で減速して、減速した状態で衝突することとなる。減速方向の加速度が発生したタイミングから、衝突のタイミングまでの間の期間を、プリクラッシュ期間と呼ぶ。
図2は、自動車の衝突の際の加速度と速度の波形の例を示すグラフである。図2は、運転者のブレーキや衝突被害軽減ブレーキシステムにより、衝突までに減速方向の加速度が発生した場合の、加速度と速度の波形の一例を示している。図2の時刻F0は、減速方向の加速度が発生したタイミングである。時刻F0の直前で、運転者が衝突を予知したり、衝突被害軽減ブレーキシステムが備えるセンサが衝突を予知したりすることで、時刻F0において、ブレーキが開始される。従って、時刻F0から、減速側の加速度が生じる。ブレーキによる減速側の加速度は、所定時間が経過したら一定値となることがある。従って、図2の例では、自動車の減速側の加速度は、衝突のタイミングである時刻F1まで、一定値となるまた、自動車の速度は、時刻F0から発生した減速側の加速度により、一定の割合、すなわち直線状に、減少する。そして、自動車は、時刻F1において衝突する。そのため、図2の例では、時刻F0から時刻F1までが、プリクラッシュ期間となり、このプリクラッシュ期間における加速度の波形が、プリクラッシュブレーキ波形となる。なお、図2の時刻F0から時刻F1までの加速度の値は、任意であり、また、加速度が一定値でなくてもよい。
ここで、衝突被害軽減ブレーキシステムは、作動するタイミングが定められていることがあり、作動のタイミング(ブレーキをかけるタイミング)は、例えば、衝突のタイミングの1.4秒前以下(衝突タイミングと、衝突タイミングの1,4秒前との間の期間)となっている。従って、時刻F0から時刻F1までの時間は、1.4秒程度となる場合がある。また、時刻F0から時刻F1までにおける自動車の減速側の加速度は、10m/s(10メートル毎秒二乗)程度であることが多い。この場合、例えば時刻F0までにおいて、自動車が時速50kmで走行していたとすると、時刻F0から時刻F1までの自動者の走行距離、すなわち制動距離は、10m程度になる。ただし、時刻F0から時刻F1までの長さや、自動車の減速側の加速度や、時刻F0までの自動車の時速は、これに限られず任意である。
また、自動車は、時刻F1で衝突して、衝突による減速側の加速度により、時刻F2で停止する。すなわち、時刻F1は、自動車と障害物との接触が開始したタイミングであり、時刻F1以前では、自動車と障害物とが離れている。自動車の減速側の加速度は、衝突により、時刻F1から、時刻F1とF2との間のタイミングまでの間において、大きく上昇して極大値をとったあと、時刻F2までの間で減少する。自動車の速度は、この加速度により大きく減少し、時刻F2でゼロとなって停止する。ここでの衝突による最大加速度は、時刻F0から時刻F1の加速度より大きくなり、衝突による減速も、時刻F0から時刻F1の減速よりも、大きくなる。また、衝突から停止までの時間、すなわち時刻F1から時刻F2までの時間は、プリクラッシュ期間、すなわち時刻F0から時刻F1よりも、短くなる。時刻F1から時刻F2までの期間を、衝突期間と呼び、この衝突期間における加速度波形が、衝突波形となる。衝突期間は、接触(衝突)が開始したタイミングから、衝突により自動車の加速度又は速度がゼロとなるタイミングまでの期間であるといえる。
本実施形態に係る自動車衝突模擬試験は、衝突期間に加え、プリクラッシュ期間における減速側の加速度変化も含めるように、試験条件を設定する。ただし、上述のように、プリクラッシュ期間における制動距離は、10m程度となるため、プリクラッシュ期間における加速度変化の波形をそのまま再現すると、打出しストロークが10m以上必要になることとなる。しかし、自動車衝突模擬試験における最大ストローク(最大打ち出しストロークLa)は、0m以上1.7m以下程度であるため、このような10m以上の打出しストロークを再現することはできない。さらに、打出しストロークを10m以上とすることができるサイズの油圧シリンダを準備することは、困難であり、例え準備できたとしても、設備規模が大きくなり過ぎたり、試験時間が長くなったりするおそれがある。従って、本実施形態に係る自動車衝突模擬試験は、実際のプリクラッシュ期間における加速度変化の波形をそのまま再現しないことで打出しストロークを長くせず、かつ、プリクラッシュ期間における加速度変化を適切に反映した試験条件を設定する。その試験条件は、実車衝突試験における人形の挙動に基づき設定される。以下、その方法について説明する。
(実車衝突試験について)
最初に、実車衝突試験について説明する。図3は、実車衝突試験を説明する模式図である。図3に示すように、実車衝突試験は、実際の自動車である実車Aを走行させて、障害物Bに衝突させる試験である。このような実車衝突試験は、実車Aを実際に走行させるため、衝突までの実車Aの走行の挙動を、実際の衝突事故における挙動に近くすることができる。すなわち、実車衝突試験においては、プリクラッシュ期間における加速度変化の波形を、そのまま再現することができる。
図4は、プリクラッシュ期間におけるダミーの挙動を示す模式図である。図4は、実車Aの車内に搭載された人形であるダミーHの姿勢変化を示している。以下、自動車(ここでは実車A)の前進側に沿った方向を、X軸方向とし、鉛直方向を、Z軸方向とし、X軸方向とZ軸方向とに直交する方向を、Y軸方向とする。X軸方向は、ロール軸に沿った方向であり、スレッド11の前方であるといえる。また、Y軸方向は、ピッチ軸であり、Z軸方向は、ヨー軸であるといえる。
ダミーHは、頭部HAと胸部HBとを有している。実車Aは、車内にシートA1を備えている。そして、ダミーHは、シートA1上に搭載され、胸部HBがシートベルトA2で締め付けられている。すなわち、ダミーHは、胸部HBが、シートベルトA2とシートA1とで挟むように保持されている。一方、ダミーHは、頭部HAについては、実車Aに保持されていない。従って、実車衝突試験においては、頭部HAは、実車Aに対する相対位置や相対角度が、胸部HBの、実車Aに対する相対位置や相対角度よりも、大きくする。
実車衝突試験において、図2に示すような衝突を再現すると、ダミーHの姿勢は、図4のように変化する。実車Aは、時刻F0までにおいてほぼ一定速度で走行しているため、加速度はゼロに近い。従って、ダミーHの姿勢は、図4の左側の絵に示すように、前傾とならない姿勢となる。一方、時刻F0からブレーキが作動すると、実車Aには、X軸方向と反対側の加速度、すなわち減速側の加速度が発生する。この場合、ダミーHには、X軸方向への慣性力が作用する。従って、ダミーHは、時刻F0から、X軸方向に、徐々に姿勢が傾く。そのため、ダミーHは、衝突のタイミングである時刻F1においては、例えば図4の右側の絵のように、前傾姿勢となる。ここで、胸部HBは、シートベルトA2で保持されているが、頭部HAは、保持されていない。従って、ダミーHは、頭部HAの前傾度合い、すなわち移動量が、胸部HBの前傾度合い、すなわち移動量より、大きくなる。
本実施形態では、実車衝突試験において、実車Aに搭載されるダミーHにセンサを取付け、そのセンサで、図4に示すような、プリクラッシュ期間におけるダミーHの挙動、すなわち姿勢変化を検出する。そして、そのダミーHの姿勢変化に基づき、自動車衝突模擬試験のプリクラッシュ期間における試験条件を設定する。
図5は、実車衝突試験で取り付けるセンサを説明する図である。図5に示すように、本実施形態では、実車Aに搭載されるダミーHに、頭部センサS1と、胸部センサS2とを取り付ける。また、実車Aに、ベルトセンサS3と、車体センサS4とを取り付ける。
頭部センサS1は、ダミーHの頭部HAに取付けられるセンサである。本実施形態では、頭部センサS1は、3軸加速度センサと、ジャイロセンサとを備える6軸センサである。すなわち、頭部センサS1は、3軸加速度センサにより、X軸方向に沿った加速度と、Y軸方向に沿った加速度と、Z軸方向に沿った加速度とを検出する。また、頭部センサS1は、ジャイロセンサにより、X軸方向周りの角速度と、Y軸方向回りの角速度と、Z軸方向回りの角速度とを検出する。従って、頭部センサS1は、ダミーHの頭部HAに取付けられることにより、実車衝突試験時における頭部HAの、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に沿った加速度と、X軸方向周り、Y軸方向回り、Z軸方向回りの角速度とを、検出することができる。なお、頭部センサS1は、頭部HAと胸部HBとを接続する首部よりも、頭部HA側に取付けられる。すなわち、頭部センサS1は、ダミーHの顔となる箇所か、頭となる箇所に取付けられるといえる。また、本実施形態では、頭部センサS1は、6軸センサであるが、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に沿った加速度と、X軸方向周り、Y軸方向回り、Z軸方向回りの角速度とを、検出することができるセンサであれば、6軸センサに限られない。例えば、頭部センサS1は、複数のセンサによって構成されていてもよい。
胸部センサS2は、ダミーHの胸部HBに取付けられるセンサである。本実施形態では、胸部センサS2は、3軸加速度センサと、ジャイロセンサとを備える6軸センサである。すなわち、胸部センサS2は、3軸加速度センサにより、X軸方向に沿った加速度と、Y軸方向に沿った加速度と、Z軸方向に沿った加速度とを検出する。また、胸部センサS2は、ジャイロセンサにより、X軸方向周りの角速度と、Y軸方向回りの角速度と、Z軸方向回りの角速度とを検出する。従って、胸部センサS2は、ダミーHの胸部HAに取付けられることにより、実車衝突試験時における胸部HAの、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に沿った加速度と、X軸方向周り、Y軸方向回り、Z軸方向回りの角速度とを、検出することができる。なお、胸部センサS2は、頭部HAと胸部HBとを接続する首部よりも、胸部HB側に取付けられる。また、本実施形態では、胸部センサS2は、6軸センサであるが、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に沿った加速度と、X軸方向周り、Y軸方向回り、Z軸方向回りの角速度とを、検出することができるセンサであれば、6軸センサに限られない。例えば、胸部センサS2は、複数のセンサによって構成されていてもよい。
ベルトセンサS3は、実車AのシートベルトA2に取付けられるセンサである。ベルトセンサS3は、シートベルトA2に作用する荷重を検出するセンサである。ベルトセンサS3は、実車衝突試験時において、シートベルトA2に作用する荷重を検出することで、ダミーHがシートベルトA2に作用させる荷重を検出することができる。
車体センサS4は、実車Aに取付けられるセンサである。車体センサS4は、図5の例ではシートA1に取付けられているが、実車Aに取付けられるものであれば、シートA1以外の箇所に取付けられてもよい。本実施形態では、車体センサS4は、3軸加速度センサと、ジャイロセンサとを備える6軸センサである。すなわち、車体センサS4は、3軸加速度センサにより、X軸方向に沿った加速度と、Y軸方向に沿った加速度と、Z軸方向に沿った加速度とを検出する。また、車体センサS4は、ジャイロセンサにより、X軸方向周りの角速度と、Y軸方向回りの角速度と、Z軸方向回りの角速度とを検出する。従って、車体センサS4は、実車Aに取付けられることにより、実車衝突試験時における実車Aの、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に沿った加速度と、X軸方向周り、Y軸方向回り、Z軸方向回りの角速度とを、検出することができる。本実施形態では、車体センサS4は、6軸センサであるが、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に沿った加速度と、X軸方向周り、Y軸方向回り、Z軸方向回りの角速度とを、検出することができるセンサであれば、6軸センサに限られない。さらに言えば、車体センサS4は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に沿った加速度を検出できるものであり、X軸方向周り、Y軸方向回り、Z軸方向回りの角速度とは、必ずしも検出できるものでなくてよい。すなわち、車体センサS4は、少なくとも、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に沿った加速度を検出するものであればよい。
実車衝突試験では、ダミーHに頭部センサS1と胸部センサS2とを取り付け、実車AにベルトセンサS3と車体センサS4とを取り付けた状態で、試験を行う。実車衝突試験では、実車Aを所定速度で走行させ、時刻F0からから時刻F1までのプリクラッシュ期間において、実車AにX軸方向と反対側(減速側)の加速度を作用させて、時刻F1で実車Aを障害物Bに衝突させる。頭部センサS1と胸部センサS2とベルトセンサS3と車体センサS4とは、実車衝突試験中、所定のタイミング毎に、検出を行う。頭部センサS1と胸部センサS2とベルトセンサS3と車体センサS4との検出結果は、図5に示す演算装置Dに出力される。演算装置Dは、頭部センサS1と胸部センサS2とベルトセンサS3と車体センサS4との検出結果から、実車衝突試験における、頭部HAや実車Aの加速度波形などを生成する。お、本実施形態では、演算装置Dは、CPU(Central Processing Unit)を備え、このCPUによる演算で波形を生成するコンピュータである。本実施形態では、例えば、作業者が、演算装置Dのメモリに記憶されているソフトウェアを立ち上げて、そのソフトウェアにより、波形を生成させる。以下、演算装置Dが生成する波形について、具体的に説明する。
図6は、実車衝突試験における各波形の例を示すグラフである。演算装置Dは、X軸方向における実車Aの加速度を、検出結果として、車体センサS4から、逐次取得する。演算装置Dは、X軸方向における実車Aの加速度の検出結果を時間毎にプロットして、図6に示す実車加速度の波形を生成する。実車加速度の波形は、実車衝突試験中の、実車AのX軸に沿った加速度を、時間毎に示したものとなる。図6の例では、実車加速度は、図2と同様の波形となっている。ただし、実車加速度の波形は、図2の例に限られず、時刻F0までの速度、時刻F0のタイミング、時刻F0からの加速度の値などの試験条件によって決まる。ただし、ここでの実車加速度の波形は、プリクラッシュ期間で減速する場合を含んだ加速度波形である。従って、実車加速度の波形は、時刻F0から時刻F1までのプリクラッシュ期間において、X軸方向側(減速側)の加速度が生じていることを反映して、所定の加速度となる。そして、実車加速度の波形は、時刻F1から時刻F2までの衝突期間において、プリクラッシュ期間の加速度より高い加速度が生じた後、加速度が減少し、時刻F2でゼロとなる。また、実車加速度の波形は、時刻F0から時刻F1までの長さが、時刻F1から時刻F2までの長さより長くなる。
また、演算装置Dは、実車加速度の波形を積分することで、実車速度の波形を生成する。実車加速度の波形は、実車衝突試験中の、実車AのX軸に沿った速度を、時間毎に示したものとなり、図2と同様の波形となっている。ただし、実車加速度の波形は、実車加速度の波形に応じて定まるものである。なお、演算装置Dは、実車加速度の波形を積分して実車速度の波形を生成することに限られない。例えば、実車Aに速度計が搭載されている場合、演算装置Dは、速度計のデータに基づき、実車速度の波形を生成してよい。
また、演算装置Dは、頭部センサS1と車体センサS4との検出結果から、第1頭部相対位置の波形を生成する。第1頭部相対位置とは、実車Aに対する頭部HAの相対位置(実車Aと頭部HAとの相対位置)である。演算装置Dは、頭部センサS1から取得した頭部HAの加速度と、車体センサS4から取得した実車Aの加速度とに基づき、第1頭部相対位置を算出する。例えば、演算装置Dは、頭部HAの加速度と実車Aの加速度との差分値を時間毎にプロットして、そのプロットした波形を2回積分することで、時間毎の第1頭部相対位置、すなわち第1頭部相対位置の波形を生成する。なお、本実施形態では、第1頭部相対位置は、X軸方向における実車Aに対する頭部HAの相対位置である。ただし、演算装置Dは、第1頭部相対位置として、Y軸方向における実車Aに対する頭部HAの相対位置と、Z軸方向における実車Aに対する頭部HAの相対位置とについても、算出してよい。
ここで、図6においては、説明の便宜上、実車加速度の波形については、X軸方向と反対側(減速側)をプラスとしているが、第1頭部相対位置の波形については、X軸方向をプラスとしている。図6に示すように、時刻F0までにおいて、実車加速度がゼロであるため、頭部HAに慣性力は作用しない。従って、第1頭部相対位置は、時刻F0までは、一定の値となっている。一方、時刻F0から時刻F1までは、プリクラッシュ期間であるため、X軸方向と反対側(減速側)の実車加速度が発生している。従って、頭部HAに慣性力が作用して、胴部HAが実車Aに対してX方向に徐々に相対移動する。従って、第1頭部相対位置は、時刻F0から時刻F1までにおいて、徐々に大きくなる。そして、時刻F1から、実車加速度は、X軸方向と反対側にさらに大きくなるため、第1頭部相対位置も、時刻F1からさらに大きくなる。第1頭部相対位置の波形は、時刻F0から時刻F1までの傾きよりも、時刻F1からの傾きの方が、大きくなる。なお、第1頭部相対位置の波形は、実車加速度に応じて変化するため、図6に示す波形は一例である。
また、演算装置Dは、頭部センサS1と胸部センサS2との検出結果から、第2頭部相対位置の波形を生成する。第2頭部相対位置とは、胸部HBに対する頭部HAの相対位置(胸部HBと頭部HAとの相対位置)である。演算装置Dは、頭部センサS1から取得した頭部HAの加速度と、胸部センサS2から取得した胸部HBの加速度とに基づき、第2頭部相対位置を算出する。例えば、演算装置Dは、頭部HAの加速度と胸部HBの加速度との差分値を時間毎にプロットして、そのプロットした波形を2回積分することで、時間毎の第2頭部相対位置、すなわち第2頭部相対位置の波形を生成する。なお、本実施形態では、第2頭部相対位置は、X軸方向における胸部HBに対する頭部HAの相対位置である。ただし、演算装置Dは、第1頭部相対位置として、Y軸方向における胸部HBに対する頭部HAの相対位置と、Z軸方向における胸部HBに対する頭部HAの相対位置とについても、算出してよい。
ここで、図6において、第2頭部相対位置の波形についても、X軸方向をプラスとしている。図6に示すように、時刻F0までにおいて、実車加速度がゼロであるため、頭部HAと胸部HBとに、慣性力は作用しない。従って、第2頭部相対位置は、時刻F0までは、一定の値となっている。一方、時刻F0から時刻F1までは、プリクラッシュ期間であるため、X軸方向と反対側(減速側)の実車加速度が発生して、頭部HAと胸部HBとに慣性力が作用する。ここで、胸部HBはシートベルトA2で保持されている一方、頭部HAは保持されず開放されている。従って、頭部HAは、胸部HBよりも、X軸方向側への移動量が多くなる。そのため、図6に示すように、第2頭部相対位置は、時刻F0から時刻F1までにおいて、徐々に大きくなっている。そして、時刻F2から、実車加速度は、X軸方向と反対側にさらに大きくなるため、第2頭部相対位置も、時刻F1からさらに大きくなる。第2頭部相対位置の波形は、時刻F0から時刻F1までの傾きよりも、時刻F1からの傾きの方が、大きくなる。なお、第2頭部相対位置の波形は、実車加速度に応じて変化するため、図6に示す波形は一例である。
また、演算装置Dは、頭部センサS1と胸部センサS2との検出結果から、頭部回転角度の波形を生成する。頭部回転角度とは、胸部HBに対する頭部HAの回転角度である。頭部回転角度は、言い換えれば、胸部HBに対して固定された所定の軸線に対する、頭部HAに対して固定された所定の軸線の角度変化を指す。演算装置Dは、頭部センサS1から取得した頭部HAの角速度と、胸部センサS2から取得した胸部HBの角速度とに基づき、頭部回転角度を算出する。例えば、演算装置Dは、頭部HAの角速度と胸部HBの角速度との差分値を時間毎にプロットして、そのプロットした波形を1回積分することで、時間毎の頭部回転角度、すなわち頭部回転角度の波形を生成する。なお、本実施形態では、頭部回転角度は、Y軸方向回りの頭部HAの回転角度である。ただし、演算装置Dは、頭部回転角度として、X軸方向回りの頭部HAの回転角度置と、Z軸方向回りの頭部HAの回転角度とについても、算出してよい。
ここで、図6において、頭部回転角度の波形は、Y軸方向を回転軸として、頭部HAがX軸方向に前傾する方向をプラスとしている。図6に示すように、時刻F0までにおいて、実車加速度がゼロであるため、頭部HAと胸部HBとに、慣性力は作用しない。従って、第2頭部相対位置は、時刻F0までは、一定の値となっている。一方、時刻F1から時刻F2までは、プリクラッシュ期間であるため、X軸方向と反対側(減速側)の実車加速度が発生して、頭部HAと胸部HBとに慣性力が作用する。従って、頭部HAは、胸部HBに対し、徐々に前傾する。そのため、図6に示すように、頭部回転角度は、時刻F0から時刻F1までにおいて、徐々に大きくなっている。そして、時刻F1から、実車加速度は、X軸方向と反対側にさらに大きくなるため、頭部回転角度も、時刻F1からさらに大きくなる。頭部回転角度の波形は、時刻F0から時刻F1までの傾きよりも、時刻F1からの傾きの方が、大きくなる。なお、頭部回転角度の波形は、実車加速度に応じて変化するため、図6に示す波形は一例である。
また、演算装置Dは、頭部センサS1の検出結果から、頭部加速度の波形を生成する。頭部加速度とは、頭部HAの加速度である。演算装置Dは、頭部センサS1から取得した頭部HAの加速度を時間毎にプロットすることで、頭部加速度の波形を生成する。なお、本実施形態では、頭部加速度は、X軸方向の頭部HAの加速度である。ただし、演算装置Dは、頭部加速度として、Y軸方向の頭部HAの加速度と、Z軸方向の頭部HAの加速度とについても、算出してよい。
ここで、図6において、頭部加速度の波形は、X軸方向をプラスとしている。図6に示すように、時刻F0までにおいて、実車加速度がゼロであるため、頭部HAに慣性力は作用しない。従って、頭部加速度は、時刻F0までは、一定の値となっている。一方、時刻F1から時刻F2までは、プリクラッシュ期間であるため、X軸方向と反対側(減速側)の実車加速度が発生して、頭部HAに慣性力が作用する。従って、頭部HAには、X軸方向の加速度が作用する。図6の例では、頭部加速度は、時刻F0から上昇して一定値となった後、時刻F1までその一定値を保っている。そして、時刻F2から、実車加速度は、X軸方向と反対側にさらに大きくなるため、頭部加速度も、時刻F2からさらに大きくなる。頭部回転角度の波形は、時刻F1から時刻F2までの傾きよりも、時刻F2からの傾きの方が、大きくなる。なお、頭部加速度の波形は、実車加速度に応じて変化するため、図6に示す波形は一例である。
演算装置Dは、このようにして、第1頭部相対位置の時間波形と、第2頭部相対位置の時間波形と、頭部回転角度の時間波形と、頭部加速度の時間波形とを生成する。そして、演算装置Dは、第1頭部相対位置の時間波形に基づき、時刻F1における第1頭部相対位置の値である第1頭部相対位置K1を算出し、第2頭部相対位置の時間波形に基づき、時刻F1における第2頭部相対位置の値である第2頭部相対位置K2を算出する。また、演算装置Dは、頭部回転角度の時間波形に基づき、時刻F1における頭部回転角度の値である頭部回転角度K3を算出し、頭部加速度の時間波形に基づき、時刻F1における頭部加速度の値である頭部加速度K4を算出する。ただし、演算装置Dは、第1頭部相対位置K1と第2頭部相対位置K2と頭部回転角度K3と頭部加速度K4との算出に、必ずしもそれらの時間波形を用いなくてもよい。例えば、演算装置Dは、時刻F1における検出結果により、第1頭部相対位置K1と第2頭部相対位置K2と頭部回転角度K3と頭部加速度K4とを算出してもよい。
(試験条件の設定方法)
図1に示す試験条件設定装置29は、この実車衝突試験の試験結果、具体的には、第1頭部相対位置K1と、第2頭部相対位置K2と、頭部回転角度K3と、頭部加速度K4とから、試験条件を設定する。すなわち、試験条件設定装置29は、演算装置Dが取得及び算出した実車衝突試験の試験結果、すなわち、第1頭部相対位置K1と第2頭部相対位置K2と頭部回転角度K3と頭部加速度K4とを、取得する。そして、試験条件設定装置29は、これらの実車衝突試験の試験結果と、図1に示す供試体15に取付けたセンサの検出結果とに基づき、試験条件を設定する。なお、試験条件設定装置29は、実車試験結果取得部と、試験条件設定部とを有する。実車試験結果取得部は、例えば試験条件設定装置29の記憶部に記憶されたソフトウェア(プログラム)を読み出すことで、この実車衝突試験の試験結果を取得する。また、試験条件設定部は、例えば試験条件設定装置29の記憶部に記憶されたソフトウェア(プログラム)を読み出すことで、試験条件を設定する。
図7は、試験条件の設定時に取り付けるセンサを説明する図である。図7に示すように、試験条件の設定の際には、ダミー15eに、頭部センサS11と胸部センサS12とを取り付け、供試体15に、ベルトセンサS3と、車体センサS4とを取り付ける。
図7に示すように、頭部センサS11は、ダミー15eの頭部15e1に取付けられるセンサである。頭部センサS11は、実車衝突試験で用いた頭部センサS1と同じ機能を有したセンサである。すなわち、頭部センサS11は、ダミー15eの頭部15e1に取付けられることにより、試験条件を設定する際に、頭部15e1の、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に沿った加速度と、X軸方向周り、Y軸方向回り、Z軸方向回りの角速度とを、検出する。なお、頭部センサS11は、ダミー15eの頭部15e1と胸部15e2とを接続する首部よりも、頭部15e1側に取付けられる。すなわち、頭部センサS1は、ダミー15eの顔となる箇所か、頭となる箇所に取付けられるといえる。
胸部センサS12は、ダミー15eの胸部15e2に取付けられるセンサである。胸部センサS12は、実車衝突試験で用いた胸部センサS21と同じ機能を有したセンサである。すなわち、胸部センサS12は、ダミー15eの胸部15e2に取付けられることにより、試験条件を設定する際に、胸部15e2の、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に沿った加速度と、X軸方向周り、Y軸方向回り、Z軸方向回りの角速度とを、検出する。なお、胸部センサS2は、頭部15e1と胸部15e2とを接続する首部よりも、胸部15e2側に取付けられる。
ベルトセンサS13は、供試体15のシートベルト15dに取付けられるセンサである。ベルトセンサS13は、シートベルト15dに作用する荷重を検出するセンサである。ベルトセンサS13は、試験条件を設定する際に、シートベルト15dに作用する荷重を検出することで、ダミー15eがシートベルト15dに作用させる荷重を検出することができる。
車体センサS14は、供試体15に取付けられるセンサである。車体センサS14は、図7の例ではシート15aに取付けられているが、供試体15に取付けられるものであれば、シート15a以外の箇所に取付けられてもよい。本実施形態では、車体センサS14は、実車衝突試験で用いた車体センサS4と同じ機能を有したセンサである。すなわち、車体センサS14は、供試体15に取付けられることにより、試験条件を設定する際に、供試体15の、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に沿った加速度と、X軸方向周り、Y軸方向回り、Z軸方向回りの角速度とを、検出する。
試験条件を設定する際には、ダミー15eに頭部センサS11と胸部センサS12とを取り付け、供試体15にベルトセンサS13と車体センサS14とを取り付けた状態で、試験条件を調整しながら、自動車衝突模擬試験を行う。そして、これらのセンサの検出値が、実車衝突試験におけるセンサの検出値に合致した際の試験条件を、実際に自動車衝突模擬試験を行う際の試験条件として設定する。以下、具体的に説明する。
試験条件設定装置29は、実車衝突試験で得られたデータ、本実施形態では、実車加速度に基づいて、ピストン32の打ち出し開始位置を設定する。試験条件設定装置29は、図6に示す実車加速度の時間波形を2回積分することで、距離のデータを算出する。ここで、実車加速度は、時刻F2においてゼロとなるため、この時刻F2に対応する距離が、油圧シリンダ22におけるピストン32の打ち出し距離(ストローク)となる。この場合、図1に示すように、油圧シリンダ22は、ピストン32の初期位置から停止位置までの最大打ち出しストロークLaが設定されていることから、ピストン32の衝突再現領域における打ち出し開始位置から停止位置までの打ち出しストロークLが設定されると、ピストン32の初期位置からピストン32の衝突再現領域における打ち出し開始位置までのプリクラッシュ再現領域ストロークLが設定される。
なお、この最大打ち出しストロークLaは、時刻F2における距離を反映したものであるため、プリクラッシュ期間での距離と、衝突期間での距離との両方を反映することになる。すなわち、最大打ち出しストロークLaは、図2に示す時刻F0から時刻F2までのプリクラッシュブレーキ衝突における全体のストロークであるといえる。また、最大打ち出しストロークLaは、図2に示すプリクラッシュ期間(プリクラッシュ再現領域)に対応するプリクラッシュストロークLと、図2に示す衝突期間(衝突再現領域)に対応する衝突ストロークLとが含まれることとなる。衝突ストロークLは、衝突期間、すなわち図6の時刻F1から時刻F2までの間に対応する。試験条件設定装置29は、時刻F1から時刻F2までの実車加速度の波形に基づき(例えば2回積分して)、衝突ストロークLを算出する。また、試験条件設定装置29は、プリクラッシュブレーキ再現領域として使用できるプリクラッシュストロークLの中で、衝突直前(時刻F1)の供試体15の姿勢を再現可能なプリクラッシュブレーキ波形を作成する。
ただし、試験条件の設定を行う際には、プリクラッシュ期間までを反映し、衝突期間については反映しない。従って、試験条件の設定を行う際には、プリクラッシュストロークL分だけ打出し、衝突ストロークL分は打出さない。
図8は、試験条件の設定を行う際の自動車衝突模擬試験を説明するためのタイムチャート、図9から図12は、自動車衝突模擬試験を表す動作図である。試験条件の設定を行う際の自動車衝突模擬試験では、図1、図8、図9に示すように、発射装置21における油圧シリンダ22のピストン32をフランジ部51がシリンダ本体31に当接する初期位置に停止させ、拘束部材52によりこの初期位置に規定すると共に、サーボ弁24を閉止状態とする。この状態で、オペレータは、時刻t1にて、運転操作装置27により制御装置26に運転信号を出力し、供給ポンプ62を作動し、収容タンク61内の作動油を、供給配管65を通して供給ポート39から油圧シリンダ22及びアキュムレータ23内に供給する。
すると、図10に示すように、供給された作動油により、油圧シリンダ22の後部屋B0とアキュムレータ23の前部屋C0が加圧され、また、油圧シリンダ22の後部屋B0の作動油が前部屋A0に移送し、この後部屋B0も加圧される。そして、アキュムレータ23の後部屋D0内の窒素ガスは、各部屋A0,B0,C0に供給された作動油により圧縮され、この各部屋A0,B0,C0の作動油を所定の高圧状態のまま保つ。
次に、この状態から、図1、図8、図10に示すように、オペレータは、時刻t2にて、運転操作装置27により制御装置26に運転信号を出力し、エア給排装置54によりエアシリンダ53を作動し、拘束部材52によるピストン32の拘束を解除する。そして、オペレータは、運転操作装置27に解除信号が入力されると、時刻t3にて、運転操作装置27により制御装置26に運転信号を出力し、サーボ弁24を所定開度だけ開放、つまり、微開し、油圧シリンダ22の前部屋A0内の作動油を排出ポート45から排出配管64を通して収容タンク61に排出回収する。
すると、図8及び図11に示すように、油圧シリンダ22の前部屋A0の圧力が若干低下することで、ピストン32が微速で前進して距離が増加し、スレッド11を微速で後退させる。ここで、スレッド11の速度であるスレッド速度が若干上昇すると共に、スレッド11の加速度であるスレッド加速度が上昇する。
制御装置26は、ピストン32の受圧力、サーボ弁24の弁開度、設定されたピストン32のプリクラッシュ再現領域ストロークLに基づいて、ピストン32の初期位置から打ち出し開始位置に到達する時間を推定している。そして、制御装置26は、ピストン32が所定の打ち出し開始位置に到達したと推定したら、図8及び図12に示すように、時刻t3(第1時刻)から時刻t4(第2時刻)まで、所定の開度で、サーボ弁24を開く。そして、油圧シリンダ22の前部屋A0内の作動油を、排出ポート45から排出配管64を通して収容タンク61に排出回収する。すると、油圧シリンダ22の前部屋A0の圧力がさらに低下することで、ピストン32が前進して距離が増加し、スレッド11を後退させる。試験条件の設定を行う際の自動車衝突模擬試験は、この時刻t4で一旦終了し、ここで得られたデータに基づき、試験条件の設定が行われる。なお、本実施形態では、後述のように、時刻t3から時刻t4までのサーボ弁24の開度(上記の所定の開度)と時刻t3から時刻t4までの長さが、設定される試験条件となる。
頭部センサS11と胸部センサS12と車体センサS4とは、この試験中、検出を行っている。試験条件設定装置29は、この試験が終了したら、頭部センサS11と胸部センサS12と車体センサS4との検出結果を取得する。試験条件設定装置29は、頭部センサS11と胸部センサS12と車体センサS4との検出結果に基づき、演算装置Dと同様の方法で、時刻t1から時刻t4における第1頭部相対位置の時間波形と、第2頭部相対位置の時間波形と、頭部回転角度の時間波形と、頭部加速度の時間波形とを生成する。なお、ここでの第1頭部相対位置は、供試体15に対する頭部15e1の相対位置であり、第2頭部相対位置は、胸部15e2に対する頭部15e1の相対位置であり、頭部回転角度とは、胸部15e2に対する頭部15e1の回転角度であり、頭部加速度は、頭部15e1の加速度である。
試験条件設定装置29は、第1頭部相対位置の時間波形に基づき、時刻t4における第1頭部相対位置の値である第1頭部相対位置K11を算出し、第2頭部相対位置の時間波形に基づき、時刻t4における第2頭部相対位置の値である第2頭部相対位置K12を算出する。また、演算装置Dは、頭部回転角度の時間波形に基づき、時刻t4における頭部回転角度の値である頭部回転角度K13を算出し、頭部加速度の時間波形に基づき、時刻t4における頭部加速度の値である頭部加速度K14を算出する。ただし、試験条件設定装置29は、第1頭部相対位置K11と第2頭部相対位置K12と頭部回転角度K13と頭部加速度K14との算出に、必ずしもそれらの時間波形を用いなくてもよい。例えば、試験条件設定装置29は、時刻t4における検出結果により、第1頭部相対位置K11と第2頭部相対位置K12と頭部回転角度K13と頭部加速度K14とを算出してもよい。
試験条件設定装置29は、実車衝突試験の時刻F1における第1頭部相対位置K1と、試験条件を設定する際の時刻t4における第1頭部相対位置K11とに基づき、時刻t3から時刻t4までの長さと、時刻t3から時刻t4までにおけるサーボ弁24の開度とを設定する。以下、時刻t3から時刻t4までの長さを、プリクラッシュ時間とし、時刻t3から時刻t4までにおけるサーボ弁24の開度を、プリクラッシュサーボ弁開度とする。プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定すると、図8に示す時刻t3から時刻t4におけるスレッド加速度波形、すなわちプリクラッシュ加速度波形が決まる。すなわち、試験条件設定装置29は、このようにプリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定することで、時刻t3から時刻t4におけるプリクラッシュ加速度波形を設定しているといえる。
より詳しくは、試験条件設定装置29は、第1頭部相対位置K11と第1頭部相対位置K1との差が、所定値以下となるように、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定する。この所定値は、例えば第1頭部相対位置K1の数%程度の値であるが、任意に設定することができる。なお、試験条件設定装置29は、第1頭部相対位置K11が、第1頭部相対位置K1と一致するように、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定することがより好ましい。
さらに、試験条件設定装置29は、第2頭部相対位置K2と、第2頭部相対位置K12とに基づき、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定することで、プリクラッシュ加速度波形を設定する。具体的には、試験条件設定装置29は、第2頭部相対位置K12と第2頭部相対位置K2との差が、所定値以下となるように、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定する。この所定値は、例えば第2頭部相対位置K2の数%程度の値であるが、任意に設定することができる。なお、試験条件設定装置29は、第2頭部相対位置K12が、第2頭部相対位置K2と一致するように、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定することがより好ましい。
さらに、試験条件設定装置29は、頭部回転角度K3と、頭部回転角度K13とに基づき、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定することで、プリクラッシュ加速度波形を設定する。より詳しくは、試験条件設定装置29は、頭部回転角度K3と頭部回転角度K13との差が、所定値以下となるように、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定する。この所定値は、例えば頭部回転角度K3の数%程度の値であるが、任意に設定することができる。なお、試験条件設定装置29は、頭部回転角度K13が、頭部回転角度K3と一致するように、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定することがより好ましい。
さらに、試験条件設定装置29は、頭部加速度K4と、頭部加速度K14とに基づき、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定することで、プリクラッシュ加速度波形を設定する。より詳しくは、試験条件設定装置29は、頭部加速度K14と頭部加速度K4との差が、所定値以下となるように、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定する。この所定値は、例えば頭部加速度K4の数%程度の値であるが、任意に設定することができる。なお、試験条件設定装置29は、頭部加速度K14が、頭部加速度K4と一致するように、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定することがより好ましい。
このように、試験条件設定装置29は、第1頭部相対位置K11と第1頭部相対位置K1との差分が所定値以内となり、かつ、第2頭部相対位置K12が第2頭部相対位置K2との差分が所定値以内となり、かつ、頭部回転角度K13と頭部回転角度K3との差分が所定値以内となり、頭部加速度K14と頭部加速度K4との差分が所定値以内となるように、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定する。
時刻t3から時刻t4までにおいて、このようなサーボ弁24の開度で自動車衝突模擬試験を行うと、時刻t4における頭部15e1の相対位置が、実車衝突試験における時刻F1における頭部HAの相対位置と近くなり、時刻t4における頭部15e1の回転角度が、実車衝突試験における時刻F1における頭部HAの回転角度と近くなり、時刻t4における頭部15e1の加速度が、実車衝突試験における時刻F1における頭部HAの加速度と近くなる。ダミーの頭部は、自動車の加速度変化を反映しやすい。従って、相対位置や回転角度や加速度などの頭部の変位を、実車衝突試験と合わせこむことで、プリクラッシュストロークLを時刻F0から時刻F1までの制動距離より短くしても、プリクラッシュ期間における自動車の加速度変化を適切に反映することができる。
なお、本実施形態では、第1頭部相対位置と第2頭部相対位置と頭部回転角度と頭部加速度との全てに基づき、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを(すなわちプリクラッシュ加速度波形を)設定する。ただし、試験条件設定装置29は、第1頭部相対位置と第2頭部相対位置と頭部回転角度と頭部加速度との少なくともいずれかに基づき、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定してよい。さらに言えば、試験条件設定装置29は、少なくとも、第1頭部相対位置に基づき、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定することが好ましい。すなわち、試験条件設定装置29は、第1頭部相対位置と第2頭部相対位置と頭部回転角度と頭部加速度とのどれを用いるかの組み合わせは、任意である。例えば、試験条件設定装置29は、第1頭部相対位置と頭部加速度とを組み合わせることで、車体に対する頭部の加速度と変位とを合わせこむことができるので、自動車の加速度変化を適切に反映することができる。また、試験条件設定装置29は、第1頭部相対位置と第2頭部相対位置とを組み合わせることで、車体に対する頭部の変位と胸部に対する頭部の変位とを合わせこむことができるので、自動車の加速度変化を適切に反映することができる。また、試験条件設定装置29は、第1頭部相対位置と頭部回転角度とを組み合わせることで、車体に対する頭部の変位と頭部の回転角度とを合わせこむことができるので、自動車の加速度変化を適切に反映することができる。
また、本実施形態では、実車衝突試験の時刻F1における検出結果(上述のK1、K2、K3、K4)と、時刻t4における検出結果(上述のK11、K12、K13、K14)とに基づき、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定していた。すなわち、本実施形態では、衝突が始まったタイミングの検出結果に基づき、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定していた。ただし、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定する際は、時刻F1における検出結果と、時刻t4における検出結果とを用いなくてもよい。試験条件設定装置29は、実車衝突試験の時刻F0と時刻F1との間の所定時刻における検出結果と、自動車衝突模擬試験の時刻t3と時刻t4との間の所定時刻における検出結果(第1頭部相対位置K11など)とに基づき、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定すればよい。さらに言えば、試験条件設定装置29は、実車衝突試験の衝突時(時刻F1)又は衝突時前(時刻F1の前)の所定タイミングにおける検出結果と、自動車衝突模擬試験の時刻t4、又は時刻4の前の所定タイミングにおける検出結果(第1頭部相対位置K11など)とに基づき、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定すればよい。
試験条件設定装置29は、このようにしてプリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定することで、時刻t3から時刻t4におけるスレッド加速度、すなわちプリクラッシュ加速度波形を設定する。また、試験条件設定装置29は、上述のように、時刻F1から時刻F2までの実車加速度の波形に基づき、衝突ストロークLを算出しており、実際の試験において、時刻t4以降は、衝突波形を再現できるようなサーボ弁24の開度とする。すなわち、試験条件設定装置29は、衝突ストロークLと、時刻t4からのサーボ弁24の開度とを設定しているといえる。時刻t4以降のスレッド加速度の波形、すなわち衝突波形は、衝突ストロークLと、時刻t4からのサーボ弁24の開度とが設定されることで、決定されているといえる。すなわち、この衝突波形は、時刻F1から時刻F2までの実車加速度(実車Aが障害物Bに衝突した際の実車Aの加速度変化の情報)に基づき設定されているといえる。
また、試験条件設定装置29は、試験条件が上記の条件を満たすまで、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを調整しつつ、試験条件の設定のための自動車衝突模擬試験を繰り返してもよい。なお、上記の条件を満たすとは、第1頭部相対位置K11と第1頭部相対位置K1との差分が所定値以内となり、かつ、第2頭部相対位置K12が第2頭部相対位置K2との差分が所定値以内となり、かつ、頭部回転角度K13と頭部回転角度K3との差分が所定値以内となり、頭部加速度K14と頭部加速度K4との差分が所定値以内となることの、少なくともいずれかが満たされることである。このように試験条件が設定されたら、実際の自動車衝突試験を行う。
(自動車衝突試験)
次に、設定した試験条件での実際の自動車衝突試験について説明する。図13は、自動車衝突模擬試験を説明するためのタイムチャート、図14は、自動車衝突模擬試験を表す動作図である。図13に示すように、自動車衝突模擬試験の際には、設定した試験条件で試験が行われるため、時刻t1から時刻t4までの制御内容は、図8に示したものと同じとなる。ただし、時刻t3から時刻t4までにおけるプリクラッシュ加速度波形が、設定した試験条件に基づくものとなる。
制御装置26は、ピストン32の受圧力、サーボ弁24の弁開度、設定されたピストン32のプリクラッシュストロークLに基づいて、ピストン32の初期位置から打ち出し開始位置(プリクラッシュストロークLの終了位置)に到達する時間を推定している。そして、制御装置26は、ピストン32が所定の打ち出し開始位置に到達したと推定したら、図13及び図14に示すように、時刻t4にて、サーボ弁24を所定の開度(衝突波形を再現可能な開度)とし、油圧シリンダ22の前部屋A0内の作動油を排出ポート45から排出配管64を通して収容タンク61に排出回収する。
すると、油圧シリンダ22は、ピストン32を前方に打ち出し、スレッド11に対して目標前後加速度(スレッド11、供試体15における後方加速度)を与え、衝突時を模擬する加速度を供試体15に与える。すると、スレッド11は、与えられた目標前後加速度に伴って所定距離だけ後方に移動する。このとき、ピストン32が高速で前進することで所定距離(打ち出しストロークL)が増加し、スレッド11を高速で後退させる。ここで、スレッド速度が高速で上昇すると共に、スレッド加速度が、衝突波形となるように、高速で上昇することとなる。
以上説明した自動車衝突模擬試験の方法を、フローチャートに基づき説明する。図15は、本実施形態における自動車衝突模擬試験の方法を説明するフローチャートである。最初に、試験条件設定装置29は、実車試験結果取得部により、実車衝突試験結果、すなわち、第1頭部相対位置K1と第2頭部相対位置K2と頭部回転角度K3と頭部加速度K4とを、取得する(ステップS20)。そして、試験条件設定装置29は、試験条件設定部により、その実車衝突試験結果に基づき、自動車衝突模擬試験の試験条件を設定する(ステップS22)。試験条件設定装置29は、第1頭部相対位置K11と第1頭部相対位置K1との差分が所定値以内となり、かつ、第2頭部相対位置K12が第2頭部相対位置K2との差分が所定値以内となり、かつ、頭部回転角度K13と頭部回転角度K3との差分が所定値以内となり、頭部加速度K14と頭部加速度K4との差分が所定値以内となるように、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とを設定することで、試験条件を設定する。すなわち、試験条件には、プリクラッシュ時間とプリクラッシュサーボ弁開度とが含まれる。自動車衝突模擬試験の試験条件が設定されたら、制御装置26は、その試験条件を用いて、自動車衝突模擬試験を実行する(ステップS24)。
以上説明したように、本実施形態に係る自動車衝突模擬試験の試験条件設定方法は、実車Aを模した供試体15を搭載したスレッド11に向けてピストンロッド32bを打ち出す自動車衝突模擬試験の、試験条件設定方法であり、実車試験結果取得ステップと、試験条件設定ステップとを有する。実車試験結果取得ステップにおいては、実車Aを駆動して障害物Bに衝突させる実車衝突試験での、実車Aの障害物Bへの衝突時又は衝突時前の所定タイミング(本実施形態の例では時刻F1)における、実車Aに搭載されたダミーHの頭部HAの実車Aに対する相対位置の情報(本実施形態の例では第1頭部相対位置K1)と、実車Aが障害物Bに衝突した際の実車Aの加速度変化の情報(本実施形態の例では実車加速度)とを取得する。そして、試験条件設定ステップにおいては、実車試験結果取得ステップの取得結果に基づき、自動車衝突模擬試験におけるスレッド11の加速度波形が、第1時刻(時刻t3)から第2時刻(時刻t4)までのプリクラッシュ波形と、第2時刻以降の衝突波形とを有するように、自動車衝突模擬試験の試験条件を設定する。そして、試験条件設定ステップにおいては、プリクラッシュ波形が、相対位置の情報(本実施形態の例では第1頭部相対位置K1)に基づく波形となり、衝突波形が、加速度変化の情報(本実施形態の例では実車加速度)に基づく波形となるように、試験条件を設定する。
本実施形態に係る試験条件設定方法は、プリクラッシュ波形が、実車衝突試験におけるダミーHの頭部HAの相対変位を反映した波形となるように、試験条件を設定する。ダミーの頭部は、自動車の加速度変化を反映しやすい。従って、頭部の相対位置変位を、実車衝突試験と合わせこむことで、プリクラッシュストロークLを時刻F0から時刻F1までの制動距離より短くしても、プリクラッシュ期間における自動車の加速度変化を適切に反映することができる。このように、本実施形態に係る試験条件設定方法によると、プリクラッシュブレーキの影響を、容易にかつ適切に反映することができる。
また、本実施形態に係る試験条件設定方法は、実車試験結果取得ステップにおいて、頭部HAの加速度変化の情報(本実施形態では頭部加速度K4)を取得し、試験条件設定ステップにおいて、プリクラッシュ波形が、相対位置の情報と加速度変化の情報に基づく波形となるように、試験条件を設定する。この試験条件設定方法は、頭部の相対位置に加え、加速度変化についても、実車衝突試験と合わせこむことで、プリクラッシュブレーキの影響を、より高精度に反映することができる。
また、本実施形態に係る試験条件設定方法は、試験条件設定ステップにおいて、供試体15にダミー15eを搭載して自動車衝突模擬試験を実施した場合に、第2時刻(時刻t4)におけるダミー15eの頭部15e1の供試体15に対する相対位置が、実車衝突試験における頭部HAの相対位置となるように、プリクラッシュ波形を設定する。この試験条件設定方法によると、頭部の相対位置を、実車衝突試験に一致させるため、プリクラッシュブレーキの影響を、更に高精度に反映することができる。
また、本実施形態に係る試験条件設定方法は、実車試験結果取得ステップにおいて、所定タイミング(本実施形態では時刻F1)までにおける、頭部HAの回転角度の変位の情報(本実施形態では頭部回転角度K3)を更に取得する。そして、試験条件設定ステップにおいて、第1時刻(時刻t3)から第2時刻(時刻t4)における頭部15e1の回転角度の変位が、実車衝突試験における回転角度の変位と一致するように、プリクラッシュ波形を設定する。この試験条件設定方法によると、頭部の角度変位を、実車衝突試験に一致させるため、プリクラッシュブレーキの影響を、更に高精度に反映することができる。
また、本実施形態に係る試験条件設定方法は、実車試験結果取得ステップにおいて、所定タイミング(本実施形態では時刻F1)までにおける、胸部HBに対する頭部HAの相対位置の情報(本実施形態では第2頭部相対位置K2)を更に取得する。そして、試験条件設定ステップにおいて、第2時刻(時刻t4)におけるダミー15eの頭部15e1の胸部15e2に対する相対位置が、実車衝突試験における頭部HAの胸部HBに対する相対位置となるように、プリクラッシュ波形を設定する。この試験条件設定方法によると、頭部の胸部に対する変位を、実車衝突試験に一致させるため、プリクラッシュブレーキの影響を、更に高精度に反映することができる。
また、本実施形態に係る自動車衝突模擬試験の試験条件設定装置29(試験条件設定システム)は、実車Aを模した供試体15を搭載したスレッド11に向けてピストンロッド32bを打ち出す自動車衝突模擬試験の、試験条件設定を行うシステムであって、実車試験結果取得部と、試験条件設定部とを有する。実車試験結果取得部は、実車Aを駆動して障害物Bに衝突させる実車衝突試験での、実車Aの障害物Bへの衝突時又は衝突時前の所定タイミング(本実施形態の例では時刻F1)における、実車Aに搭載されたダミーHの頭部HAの実車Aに対する相対位置の情報(本実施形態の例では第1頭部相対位置K1)と、実車Aが障害物Bに衝突した際の実車Aの加速度変化の情報(本実施形態の例では実車加速度)とを取得する。そして、試験条件設定部は、実車試験結果取得部の取得結果に基づき、自動車衝突模擬試験におけるスレッド11の加速度波形が、第1時刻(時刻t3)から第2時刻(時刻t4)までのプリクラッシュ波形と、第2時刻以降の衝突波形とを有するように、自動車衝突模擬試験の試験条件を設定する。そして、試験条件設定部は、プリクラッシュ波形が、相対位置の情報(本実施形態の例では第1頭部相対位置K1)に基づく波形となり、衝突波形が、加速度変化の情報(本実施形態の例では実車加速度)に基づく波形となるように、試験条件を設定する。試験条件設定装置29によると、プリクラッシュブレーキの影響を、容易にかつ適切に反映することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
11 スレッド
15 供試体
15e、H ダミー
15e1、HA 頭部
15e2、HB 胸部
21 発射装置(スレッド加速度装置)
22 油圧シリンダ
23 アキュムレータ
24 サーボ弁
25 油圧源
26 制御装置
27 運転操作装置
29 試験条件設定装置
32 ピストン
D 演算装置

Claims (6)

  1. 実車を模した供試体を搭載したスレッドに向けてピストンロッドを打ち出す自動車衝突模擬試験の試験条件設定方法であって、
    前記実車を駆動して障害物に衝突させる実車衝突試験での、前記実車の前記障害物への衝突時又は衝突時前の所定タイミングにおける、前記実車に搭載された人形の頭部の前記実車に対する相対位置の情報と、前記実車が前記障害物に衝突した際の前記実車の加速度変化の情報と、を取得する実車試験結果取得ステップと、
    前記実車試験結果取得ステップの取得結果に基づき、前記自動車衝突模擬試験における前記スレッドの加速度波形が、第1時刻から第2時刻までのプリクラッシュ波形と、前記第2時刻以降の衝突波形とを有するように、前記自動車衝突模擬試験の試験条件を設定する試験条件設定ステップとを有し、
    前記試験条件設定ステップにおいて、前記プリクラッシュ波形が、前記相対位置の情報に基づく波形となり、前記衝突波形が、前記加速度変化の情報に基づく波形となるように、前記試験条件を設定する、
    自動車衝突模擬試験の試験条件設定方法。
  2. 前記実車試験結果取得ステップにおいて、前記人形の頭部の加速度変化の情報を取得し、
    前記試験条件設定ステップにおいて、前記プリクラッシュ波形が、前記相対位置の情報と前記加速度変化の情報に基づく波形となるように、前記試験条件を設定する、請求項1に記載の自動車衝突模擬試験の試験条件設定方法。
  3. 前記試験条件設定ステップにおいて、前記供試体に人形を搭載して前記自動車衝突模擬試験を実施した場合に、前記第2時刻における前記人形の頭部の前記供試体に対する相対位置が、前記実車衝突試験における前記頭部の相対位置となるように、前記プリクラッシュ波形を設定する、請求項1又は請求項2に記載の自動車衝突模擬試験の試験条件設定方法。
  4. 前記実車試験結果取得ステップにおいて、前記所定タイミングまでにおける、前記頭部の回転角度の変位の情報を更に取得し、
    前記試験条件設定ステップにおいて、前記第1時刻から前記第2時刻における前記人形の頭部の回転角度の変位が、前記実車衝突試験における前記回転角度の変位と一致するように、前記プリクラッシュ波形を設定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動車衝突模擬試験の試験条件設定方法。
  5. 前記実車試験結果取得ステップにおいて、前記所定タイミングにおける、前記人形の胸部に対する前記頭部の相対位置の情報を更に取得し、
    前記試験条件設定ステップにおいて、前記第2時刻における前記人形の頭部の前記胸部に対する相対位置が、前記実車衝突試験における前記胸部に対する前記頭部の相対位置となるように、前記プリクラッシュ波形を設定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の自動車衝突模擬試験の試験条件設定方法。
  6. 実車を模した供試体を搭載したスレッドに向けてピストンロッドを打ち出す自動車衝突模擬試験の試験条件設定システムであって、
    前記実車を駆動して障害物に衝突させる実車衝突試験での、前記実車の前記障害物への衝突時又は衝突時前の所定タイミングにおける、前記実車に搭載された人形の頭部の前記実車に対する相対位置の情報と、前記実車が前記障害物に衝突した際の前記実車の加速度変化の情報と、を取得する実車試験結果取得部と、
    前記実車試験結果取得部の取得結果に基づき、前記自動車衝突模擬試験における前記スレッドの加速度波形を、第1時刻から第2時刻までのプリクラッシュ波形と、前記第2時刻以降の衝突波形と、を有するように設定することで、前記自動車衝突模擬試験の試験条件を設定する試験条件設定部とを有し、
    前記試験条件設定部は、前記プリクラッシュ波形を、前記相対位置の情報に基づき設定し、前記衝突波形を、前記加速度変化の情報に基づき設定する、
    自動車衝突模擬試験の試験条件設定システム。
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