JP6888369B2 - 転写シート - Google Patents

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Description

本発明は、転写シートに関する。
従来、建築物の壁材、間仕切り等に使用される建材として、各種の図柄が印刷された転写シートを、被転写体となる金属板、木質板等の基材に転写した化粧材が用いられている。例えば、天然の木材と同じ木目調の図柄が印刷された転写シートを、金属板に転写することにより、天然の木材と同じ意匠を有する金属製の化粧材を得ることができる。
上記のような転写シートにおいて、亀裂を有する着色インキの塗膜或いは印刷層により意匠外観を表現することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特公平2−5192号公報
上記建材用紙の製造方法は、転写層の構成層として加熱や紫外線等で硬化する硬化性樹脂層を有し、この硬化性樹脂層を半硬化させた状態で有機溶剤と接触させることにより亀裂を発生させる。その際、予め硬化性樹脂層表面にレジスト層を所望の模様状に形成しておき、レジスト層の非形成領域のみに亀裂を発生させることにより、亀裂領域と非亀裂領域とから成る模様を有する転写層を得るものである。この転写層を被転写基材上に転写することにより、平面視に於いて被転写基材表面に亀裂領域と非亀裂領域とから構成される意匠外観が形成される。
但し、亀裂発生のためには、有機溶剤と接触させて半硬化の硬化性樹脂層中から未硬化成分を溶出させる湿式工程が必要であり、製造工程中に有機溶剤の乾燥時間が必要となるため、製造時間が長くなる(生産性が低い)。また、有機溶剤との接触及び乾燥の際には、防爆の規格、性能を具備した乾燥装置が必要となり、有機溶剤取扱いの消防法上の規制も厳しくなる。その結果、製造設備の導入コストも上がり、その保守管理も煩雑となる。また、亀裂を発生させる塗膜或いは印刷層の材料も特定の硬化性樹脂に限定されるため、選択可能な材料の範囲も狭くなる。
本発明の目的は、有機溶剤との接触工程が不要で、亀裂を発生させる層の材料的な制約も少なく、意図した領域に、より自然な凹凸を再現可能な転写シートを提供することである。
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。
(1) 離型性支持体と、印刷層と、接合層と、がこの順に積層され、前記印刷層は、亀裂予定領域と、非亀裂領域と、を有し、前記亀裂予定領域の前記離型性支持体と反対側の面には、前記接合層として亀裂発生接合層が配置されており、前記非亀裂領域の前記離型性支持体と反対側の面には、前記接合層として亀裂抑制接合層が配置されているか、又は前記接合層との間に亀裂抑制層が配置されている転写シート。
本発明によれば、有機溶剤との接触工程が不要で、亀裂を発生させる層の材料的な制約も少なく、意図した領域に、より自然な凹凸を再現可能な転写シートを提供することができる。
第1実施形態の化粧材100を説明する図である。 第1実施形態の転写シート1の断面図である。 第1実施形態の化粧材100の製造方法を説明する断面図である。 第1実施形態の化粧材100の製造方法を説明する断面図である。 第2実施形態(第3実施形態)の転写シート1の断面図である。 第2実施形態(第3実施形態)の化粧材100の断面図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするため、適宜に誇張している。
本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜に選択して使用してよい。
〔第1実施形態〕
(化粧材100の構成)
図1は、第1実施形態の化粧材100を説明する図である。なお、図1に示す化粧材100の基本的な構成は、後述する第2及び第3実施形態の化粧材に共通する。
図1に示すように、化粧材100は、印刷層30、粘着層40及び基材60を備える。化粧材100は、後述するように、転写シート1を基材60に転写することにより製造される。基材60に転写する前の転写シート1は、基材フィルム10、剥離層20、印刷層30、粘着層40及び剥離フィルム50(いずれも後述)を備えるが、図1では、亀裂領域30C及び非亀裂領域30Nの配置を分かりやすくするため、転写シート1のうち、印刷層30、粘着層40のみを図示する。他の層、フィルムについては、図2以降で説明する。
<印刷層30>
印刷層30は、後述する転写シート1の図柄(意匠)が形成される印刷図柄層である。印刷層30を構成する樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(塩酢ビ)樹脂、アクリル−塩酢ビ樹脂等が挙げられる。また、印刷層30には、着色顔料、着色染料等が添加される。印刷層30の層厚(dry)は、約5μm程度である。
印刷層30は、亀裂領域30Cと、非亀裂領域30Nと、を有する。
亀裂領域30Cは、図柄に合わせて亀裂Cが形成された領域である。転写シート1を基材60に転写する前、印刷層30において、亀裂領域30Cの領域には、後述する亀裂予定領域30Pが形成されている。転写シート1の段階では、その亀裂予定領域30Pには、亀裂Cが形成されていない。転写シート1を基材60に転写した後、経時(加熱、冷却又はこれらの組み合わせ)により亀裂予定領域30Pに亀裂Cが形成されることにより、図1に示すような亀裂領域30Cとなる。
本実施形態において、亀裂領域30Cは、図柄に応じて適宜に設定可能であり、図1に示すようなライン状(ストライプ状)の矩形領域に限定されない。亀裂領域30Cは、少なくとも一つの亀裂Cに外接する包絡線が閉領域を形成するときに、その包絡線により区画される領域であれば、どのような形状であってもよい。ここで、閉領域は、一部に印刷層30の端部(端縁)を含んでいてもよい。
非亀裂領域30Nは、亀裂が形成されていない領域である。第1実施形態の非亀裂領域30Nにおいては、粘着層40との間に、後述するハードコート層80(図1には不図示)が形成されている。
本実施形態において、印刷層30に形成された図柄は、図1に示すように、複数のラインからなるストライプ状の模様である。このストライプ状の模様は、亀裂領域30C(亀裂予定領域30P)に対応するラインL1と、非亀裂領域30Nに対応するラインL2とが交互に配列されている(図1では、その一部を示す)。
本実施形態では、図柄の一部であるラインL1に亀裂領域30Cを形成する例を示すが、亀裂領域30Cは、必ずしも図柄に合わせて形成しなくてもよい。
図1に示すようなストライプ状の模様は、印刷層30に形成される図柄の一例を示したものであり、この例に限定されない。印刷層30に形成される図柄は、例えば、木目調、石目調等の天然の素材を模したものでもよい。
また、印刷層30において、亀裂領域30C、非亀裂領域30Nは、必ずしも規則的に配置されていなくてもよく、それぞれがランダムに配置されていてもよい。例えば、印刷層30のほぼ全面を亀裂領域30Cとした場合に、非亀裂領域30Nが部分的に配置されていてもよいし、印刷層30のほぼ全面を非亀裂領域30Nとした場合に、亀裂領域30Cが部分的に配置されていてもよい。
また、図示していないが、印刷層30の粘着層40側に、印刷コート層を積層してもよい。印刷コート層は、基材60(下地)を見えにくくするための隠蔽層として機能する。この印刷コート層は、印刷層30の全面を覆うように形成され、例えば、白色、グレー、茶色等に着色される。印刷コート層を積層した場合、亀裂領域30Cにおける亀裂は、主に印刷コート層に形成されるが、視者には、印刷層30の表面に亀裂が形成されているように観察される。亀裂領域30Cに亀裂が生じる理由及び非亀裂領域30Nに亀裂が形成されない理由等については、後述する。
第1実施形態においては、接合層として、粘着剤から成る粘着剤層(以下、粘着層とも称呼する)を用いる。粘着層(粘着剤層)40は、転写シート1を基材60に転写する際に、転写シート1と基材60とを接合する層(接合層)である。粘着層40の構成については、後述する。
基材60は、転写シート1が転写される被転写体である。図1には図示していないが、第1実施形態において、基材60は、基材本体61と、シーラー層62と、を備える(図3(B)参照)。シーラー層62は、必須の層ではないが、基材本体61の表面が粗面、多孔質等の場合には、接合層との接着性を確保するために設けることが好ましい。なお、シーラー層62を含む基材60の詳細については、後述する。
(転写シート1の構成)
次に、転写シート1の構成について説明する。
図2は、第1実施形態の転写シート1の断面図である。転写シート1は、図2に示す形態で保管したり、搬送したりすることができる。
図2に示すように、転写シート1は、基材フィルム10、剥離層20、印刷層30、ハードコート層80、粘着層40及び剥離フィルム50を備える。
本実施形態における転写シート1は、剥離層以下の転写層に対して離型性を有する離型性支持体として、可撓性で薄膜のフィルムの形態を採用する(以下、これを基材フィルムとも称呼する)。この基材フィルム10上に、剥離層20、印刷層30、ハードコート層80、及び粘着層40から成る転写層、更に粘着層に対して離型性を有する剥離フィルム50が、この順に積層されている。なお、本発明における「この順に積層」とは、直接積層のみならず、間接的な積層も含む意味であり、例えば、基材フィルム10と剥離層20との間に、他の層があっても許容する意味である。
<基材フィルム10>
基材フィルム(離型性支持体)10は、印刷層30を支持するフィルムである。基材フィルム10は、剥離層20等から成る転写層に対して離型性を有し、転写シート1が基材60(後述)に転写された後、剥離層20との界面から離型される。基材フィルム10としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンアフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂等から成るフィルムが挙げられる。このうち、強度及び柔軟性に優れる点で、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。なお、基材フィルム10における剥離層20側の表面には、従来公知の剥離層が形成されていてもよく、剥離処理が施されていてもよい。
基材フィルム10の膜厚は、好ましくは10μm以上200μmであり、より好ましくは20μm以上60μm以下である。
<剥離層20>
剥離層20は、転写シート1から基材フィルム10の剥離を容易にするために積層される層である。剥離層20は、転写シート1が基材60に転写され、基材フィルム10が離型された後、転写シート1の最も外側の層として残存する。その剥離層20の表面には、耐候性付与層70(後述)が形成される。剥離層20を構成する樹脂としては、例えば、アクリルポリオール、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル−塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、或いはこれら樹脂の2種類以上の混合物、例えば、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物等が挙げられる。なお、これらの組成物において、更に、イソシアネート等が剥離強度の調整用に微量添加されていてもよい。また、これらの組成物に、例えば、紫外線吸収剤(UVA)、光安定剤(HALS(ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤)等のラジカル補足剤)等の耐候剤を添加してもよい。
剥離層20の層厚(dry)は、1μm以上2μm以下程度である。
なお、本実施形態において、基材フィルム10と剥離層20との間の剥離強度(JIS Z0237準拠)は、後述する剥離フィルム50と粘着層40との間の剥離強度の少なくとも2倍以上となるように設定される。転写シート1から剥離フィルム50を離型したときに、基材フィルム10が剥離層20から離型しないようにするためである。但し、これに限らず、剥離強度を逆転させて、転写シート1から剥離フィルム50を離型したときに、剥離層20が基材フィルム10側に残るように構成してもよい。
<粘着層40>
本実施形態の粘着層(亀裂発生接合層)40は、粘着剤組成物の硬化物からなる。粘着剤組成物は、例えば、主剤としてのアクリル系粘着剤と、イソシアネート系硬化剤と、を含有する。
粘着層40の層厚は、10μm以上50μm以下であることが好ましく、15μm以上30μm以下であることがより好ましい。なお、第1実施形態の転写シート1において、非亀裂領域30N(印刷層30)の基材フィルム10と反対側の面には、粘着層40との間に亀裂抑制層としてのハードコート層80が積層されている。そのため、第1実施形態の転写シート1において、粘着層40の層厚は、部分的に異なる。
[アクリル系粘着剤]
好ましいアクリル系粘着剤としては、例えば、アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させたアクリル酸エステル共重合体が挙げられる。アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、アクリル酸グリシジル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
他の単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリル酸ヒドロキシルエチル、メタクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸−tert−ブチルアミノエチル、メタクリル酸−n−エチルヘキシル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、上記アクリル系粘着剤の市販品としては、例えば、ニッセツ(日本カーバイド社製)、SKダイン(綜研化学社製)等を好適に用いることができる。
[イソシアネート系硬化剤]
粘着剤組成物は、イソシアネート系硬化剤を含有する。イソシアネート系硬化剤は、転写シート1を基材60(後述)に転写する際の粘着性を得るために添加される。アクリル系粘着剤は、水酸基を有するため、イソシアネート系硬化剤を用いることにより、更に部分架橋を向上させることができ、粘着層40となったときに、内部破壊がなく適度な貯蔵弾性率を得られる。
イソシアネート系硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物の3量体、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られるイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、このウレタンプレポリマーの3量体等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,5−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4′−ジイソシアネート、リジンイソシアネート等が挙げられる。
粘着層40における上記イソシアネート系硬化剤の含有量は、アクリル系粘着剤の固形分100質量部に対して固形分換算で0.1質量部以上1.0質量部以下であることが好ましい。配合量が0.1質量部よりも少なくなると、応力の緩和性は発現されるが、内部破壊が生じる場合があり好ましくない。一方で、含有量が1.0質量部よりも多くなると、架橋による粘着層40の硬化が過剰となって、印刷層30に亀裂が生じやすくなる。
<ハードコート層80>
ハードコート層80は、粘着層40の流動性により生じる応力が、印刷層30の非亀裂領域30Nに作用するのを抑制する層(亀裂抑制層)であり、粘着層40の流動性により生じる応力の緩衝層とも言える。ハードコート層80は、印刷層30の非亀裂領域30Nにおいて、基材フィルム10と反対側の面に積層されている。
印刷層30において、粘着層(亀裂発生接合層)40側の面にハードコート層80が積層されることにより、非亀裂領域30Nでは、粘着層40の流動性による応力がほとんど作用しないため、亀裂Cが形成されることがない。
ハードコート層80を構成する樹脂としては、例えば、アクリル−塩酢ビ(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体)樹脂、塩酢ビ樹脂等が挙げられる。ハードコート層80として使用可能な樹脂は、ガラス転移点(Tg)が常温以上であることが好ましい。ハードコート層80のガラス転移点が常温よりも低いと、寒暖の変化によりハードコート層80自体が変形してしまい、その変形が印刷層30に応力として作用するためである。なお、ハードコート層80のガラス転移点は、印刷層30よりも低く、接合層より高い、ほぼ中間にあることが好ましい。各層の粘弾性が変化する際、この関係にあれば、変形による応力を吸収しやすいためである。
ハードコート層80は、印刷層30よりも軟らかく、粘着層40よりも硬いことが好ましい。ハードコート層80が印刷層30よりも硬いと、粘着層40の流動性により生じる応力により、自身に亀裂が生じるからである。また、ハードコート層80が粘着層40よりも軟らかいと、粘着層40の流動性による応力を印刷層30に伝えてしまい、印刷層30に亀裂が生じやすくなるからである。ハードコート層80、印刷層30及び粘着層40の硬さは、例えば、押込み硬度、引掻き硬度、反発硬度等の測定手法により特定することができる。
また、ハードコート層80は、着色顔料を添加しないことが好ましい。先に説明したように、印刷層30には着色顔料が添加されるが、その着色顔料が亀裂のきっかけとなることがある。そのため、ハードコート層80に着色顔料を添加しないようにすることで、印刷層30の非亀裂領域30Nにおける亀裂の発生をより効果的に抑制できる。
ハードコート層80の層厚(dry)は、1μm以上が好ましい。
<剥離フィルム50>
剥離フィルム50は、転写シート1をロール状に巻き取って保管する際に、粘着層40が離型性支持体である基材フィルム10と接着して離型不能となることを防止するためのフィルムである。剥離フィルム50は、転写シート1を基材60に転写する際に、転写シート1から離型される。剥離フィルム50としては、例えば、シリコン離型タイプのポリエチレンテレフタレート(PET)、未処理のポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等が挙げられる。
剥離フィルム50の厚さは、10μm以上100μm以下が好ましく、20μm以上60μm以下がより好ましい。
なお、基材フィルム10の転写層とは反対側の面が粘着層40との離型性を十分に有する場合、剥離フィルム50は省略される。例えば、基材フィルム10の転写層とは反対側の面にシリコン樹脂、フッ素樹脂等から成る離型剤の層が形成されている場合は、通常、剥離フィルム50無しで巻き取られる。
<第1実施形態の印刷層30における亀裂の発生等について>
上述した転写シート1を基材60に転写した後、経時により印刷層30の亀裂予定領域30Pに亀裂が生じる理由及び印刷層30の非亀裂領域30Nに亀裂が生じない理由について説明する。
転写シート1が基材60に転写される前、粘着層40の流動性により生じる応力は、印刷層30に作用するが、印刷層30よりも剛性のある剥離フィルム50及び基材フィルム10により印刷層30の伸縮が抑制される。そのため、印刷層30は、長期間保管、在庫しても亀裂が発生しにくく、その形状を維持することができる。
一方、剥離フィルム50が離型された転写シート1が基材60に転写され、粘着層40が硬い基材60に貼り付けられると、粘着層(亀裂発生接合層)40の流動性により生じる応力が印刷層30に作用するが、基材フィルム10により印刷層30の伸縮は、ある程抑制される。その後、転写シート1から基材フィルム10が離型されると、印刷層30の亀裂予定領域30Pは、粘着層40の流動性により生じる応力により形状を維持できなくなり、亀裂が生じる。亀裂予定領域30Pは、亀裂が生じることにより、亀裂領域30Cとなる(図1参照)。
なお、印刷層30は、基材フィルム10側に張力を掛けた状態で形成される場合がある。また、印刷層30を基材フィルム10に形成した後、溶剤の乾燥により収縮等が発生する場合もある。この場合、印刷層30には、転写シート1の面方向(亀裂の発生する方向)に沿って内部に応力が掛かることになる。そのため、印刷層30(亀裂予定領域30P)に、粘着層40の流動性により生じる応力が作用すると、その応力と内部に掛かっている応力とが相互に作用することになるため、より一層亀裂が生じやすくなる。
印刷層30に亀裂を生じさせる粘着層(亀裂発生接合層)40の具体例としては、上記のような粘着剤組成物の硬化物が例示でき、粘着剤組成物としては、主剤としてのアクリル系粘着剤と、イソシアネート系硬化剤と、を含有する組成物が例示できる。
また、亀裂発生接合層は、亀裂を発生させる物性面の観点から、例えば、粘弾性として、ガラス転移点がおよそ−20℃から20℃の間である層を例示できる。このようなガラス転移点の層は、常温付近での粘弾性変化が大きいため、少しの温度変化でも亀裂を発生させることができる。
一方、印刷層30の非亀裂領域30Nにおいて、粘着層(亀裂発生接合層)40の流動性により生じる応力は、粘着層40よりも硬いハードコート層(亀裂抑制層)80により抑制されるため、印刷層30の非亀裂領域30Nにほとんど作用しなくなる。このように、印刷層30の非亀裂領域30Nでは、粘着層40の流動性による応力がほとんど作用しなくなるため、形状を維持することができる。従って、印刷層30の非亀裂領域30Nでは、図4に示すように、亀裂の発生が抑制される。
また、図2に示すように、粘着層40において、ハードコート層80の積層された非亀裂領域30Nに対応する領域では、粘着層40の厚さが亀裂予定領域30Pに対応する領域よりも薄くなるため、粘着層40の流動性により生じる応力がより緩和される。そのため、非亀裂領域30Nにおける亀裂の発生をより効果的に抑制できる。
従って、本実施形態の化粧材100によれば、意図した領域である亀裂予定領域30Pに、より自然な凹凸を亀裂により再現可能であり、他の領域である非亀裂領域30Nには、亀裂が生じさせないようにすることができる。
また、本実施形態の転写シート1においては、亀裂予定領域30Pに亀裂を発生させるために、有機溶剤との接触工程が不要となるため、製造時間の短縮により生産性を向上させることができる。更に、亀裂を発生させる塗膜或いは印刷層30の材料も特定の硬化性樹脂に限定されないため、選択可能な材料の範囲をより広くできる。
<粘着層40の他の実施形態>
上記第1実施形態の転写シート1において、転写シート1と基材60との間において接合層となる層(接合層)は、接着剤層であってもよい。接着剤層としては、流動性の高いものが好ましく、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコン系接着剤、UV硬化型接着剤等が挙げられる。
接着剤層の層厚(dry)は、10μm以上500μm以下であることが好ましく、15μm以上300μm以下であることがより好ましい。
接合層として、接着剤層を使用した場合でも、転写シート1を基材60に転写した後、例えば、炉内等において寒暖の変化を繰り返し、接着剤層の伸縮を促すことによって、亀裂予定領域30Pに亀裂を生じさせることができる。
(化粧材100の製造方法)
次に、第1実施形態の化粧材100の製造方法について説明する。
図3及び図4は、それぞれ第1実施形態の化粧材100の製造方法を説明する断面図である。
まず、図3(A)に示すように、転写シート1から剥離フィルム50を離型する。転写シート1から剥離フィルム50を離型することにより、粘着層40の印刷層30とは反対側の面(粘着面)が露出する。なお、前述したように、本実施形態においては、基材フィルム10と剥離層20との間の剥離強度は、剥離フィルム50と粘着層40との間の剥離強度の少なくとも2倍以上となるように設定されるため、転写シート1から剥離フィルム50を離型したときに、基材フィルム10が剥離層20から離型することはない。
次に、図3(B)に示すように、剥離フィルム50を離型した転写シート1を、基材60に転写(貼付け)する。転写シート1の基材60への転写は、例えば、ロール・ツゥ・ロール、ロール・ツゥ・シート等の形態により連続して行うことができる。ここで、「ロール・ツゥ・ロール」とは、帯状の転写シート1をロール(巻取)から引き出して平板状の被転写体(基材本体61)に供給し、転写層を被転写体上に転写した後、転写層を離型後の帯状の離形性支持体(基材フィルム10)を再度ロールに巻き取る加工形態を言う。また、「ロール・ツゥ・シート」とは、帯状の転写シート1をロール(巻取)から引き出して平板状の被転写体に供給し、転写層を被転写体上に転写する前後において、転写シート1を概ね被転写体1枚分の寸法に切断して枚葉化し、転写層を離型後の枚葉の離形性支持体を1枚毎に除去(廃棄)する加工形態を言う。また、転写シート1を手作業により基材60に転写し、その後、ヘラ等により押圧して、基材60の表面に均一に密着させてもよい。
基材60は、基材本体61と、シーラー層62と、を備える。
基材本体61は、転写シート1が転写される被転写体である。基材本体61としては、例えば、無機材、木材、樹脂等の材料から成る板、壁等が挙げられる。このうち、無機材としては、例えば、石材、コンクリート、ガラス、金属等が挙げられる。また、基材本体61は、無機材から成る陶磁器等の焼き物であってもよい。
シーラー層62は、基材本体61の表面を滑らかにして、基材本体61と転写シート1との密着性を高めるための下塗り層である。シーラー層62は、基材本体61の表面(被転写面)の平滑性が十分な場合には省略される。
転写シート1を基材60に転写した後、印刷層30の亀裂予定領域30Pには、経時により亀裂が形成され、亀裂領域30Cとなる。亀裂予定領域30Pに亀裂が形成されたか否かは、目視により観察することができる。
次に、図4(C)に示すように、基材60に転写された転写シート1から基材フィルム10を離型する。転写シート1から基材フィルム10を離型することにより、剥離層20の印刷層30とは反対側の面が露出する。図4(C)において、転写シート1の粘着層40と基材60とは、強い粘着力で接合されているため、転写シート1から基材フィルム10を離型した際に、転写シート1が基材60から離型することはない。
なお、図4(C)及び図4(D)は、基材60上に接合された転写シート1から基材フィルム10を離型した後、経時により印刷層30に亀裂が発生する例を示している。通常、粘着層40の流動性により生じる応力で印刷層30に亀裂が発生するのは、転写シート1から基材フィルム10が離型され、印刷層30へ作用する応力の抑制が解除されてから、1日から30日程度の時間経過を要するため、このような形態となる。但し、基材フィルム10に弾性率が低く、薄い物を用い、転写層への十分な加熱と冷却を繰り返す等して、基材フィルム10が転写層上に存在している状態で印刷層30に十分な応力を及ぼすことができる場合には、亀裂予定領域30Pに亀裂が形成された後に転写シート1から基材フィルム10を離型してもよい。
次に、図4(D)に示すように、剥離層20の露出した面の上に、耐候性付与層70を形成する。耐候性付与層70は、いわゆるオーバープリント層(OP層)であり、剥離層20の保護層となる層である。
なお、剥離層20上に耐候性付与層70を形成する工程は、亀裂予定領域30Pに亀裂が形成された後に行う必要がある。亀裂予定領域30Pに亀裂が形成される前に耐候性付与層70を形成すると、亀裂予定領域30Pに亀裂が生じにくくなるためである。
耐候性付与層70の厚さについては、特に限定されないが、例えば、10μm以上50μm以下の範囲が好ましく、より好ましくは15μm以上40μm以下である。
耐候性付与層70としては、例えば、電離放射線硬化性の樹脂とワックスとを含有する層を用いることができる。電離放射線硬化性の樹脂とすることで、従来の水性OP層において必要であった、平滑化のためのプレス工程を不要とすることができる。
耐候性付与層70は、ダイコート、カーテンフローコート、コンマコート、スプレーコート等のコーティング法を用いて形成できる。材料としては、例えば、各種の電離放射線硬化性の樹脂とワックスとを含有する、樹脂組成物、フッ素系樹脂組成物、珪素形樹脂組成物等から成る樹脂層形成用インキ(塗料)を剥離層20上に塗布することにより積層形成することができる。樹脂層形成用インキは、溶剤として有機溶剤を含んでいてもよい。
電離放射線硬化性の樹脂は、紫外線、電子線等の電離放射線によって硬化する樹脂である。電離放射線性硬化性の樹脂としては、例えば、2官能以上の多官能アクリレート、2官能以上の多官能メタクリレート等の光重合性モノマーを、光重合開始剤等により重合硬化させる樹脂を挙げることができる。
ワックスは、耐候性付与層70の表面状態を調整するために含有される。ワックスとしては、合成ワックス、天然ワックス等を用いることができる。合成ワックスとしては、ポリエチレンワックス等が例示でき、天然ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス等の石油ワックス、蜜蝋、鯨蝋等の動物ワックス、木蝋、米糠蝋等の植物ワックス、モンタンワックス等の鉱物ワックスを用いることができる。
以上の工程を経ることにより、基材60に転写シート1が転写された化粧材100を得ることができる。
上記実施形態では、粘着層40及びハードコート層80を有する転写シート1を基材60に転写して化粧材100を製造する例について説明したが、これに限定されない。基材60側に粘着層40及びハードコート層80を積層しておき、基材フィルム10、剥離層20及び印刷層30を積層した転写シート1を、粘着層40及びハードコート層80が積層された基材60に転写することにより化粧材100を製造してもよい。このような形態による化粧材100の製造形態は、後述する第2及び第3実施形態に共通する。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態の化粧材100の基本的な構成は、第1実施形態(図1参照)と同じである。第2実施形態の化粧材100は、粘着層140の一部が亀裂抑制層を兼ねる点が第1実施形態と相違する。第2実施形態の化粧材100において、その他の構成は、第1実施形態の化粧材100と同じである。
第2実施形態の説明及び図面では、第1実施形態と同等の機能を果たす部分、部材等には、第1実施形態と同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を付して、重複する説明を適宜に省略する。例えば、転写シート、化粧材については、第1実施形態と同一の符号「1」、「100」を付し、粘着層については、符号「140」を付している。
(転写シート1の構成)
図5は、第2実施形態の転写シート1の断面図である。図6は、第2実施形態の化粧材100の断面図である。
図5に示すように、第2実施形態の転写シート1は、基材フィルム10、剥離層20、印刷層30、粘着層140及び剥離フィルム50を備える。第2実施形態の転写シート1は、ハードコート層80を備えていない点で第1実施形態の転写シート1と相違する。
第2実施形態の転写シート1において、基材フィルム10、剥離層20、印刷層30及び剥離フィルム50の構成(材料、厚み等)は、第1実施形態と実質的に同じであるため、説明を適宜に省略する。
第2実施形態の粘着層(接合層)140は、図5に示すように、亀裂予定領域30Pに対応する第1粘着層141(亀裂発生接合層)と、非亀裂領域30Nに対応する第2粘着層(亀裂抑制接合層)142と、を備える。これらの粘着層は、それぞれ組成が異なる粘着剤組成物を、上記対応する領域に合わせて塗工することにより形成される。
第1粘着層141及び第2粘着層142は、それぞれ粘着剤組成物の硬化物からなる。このうち、第1粘着層141を構成する粘着剤組成物は、主剤としてのアクリル系粘着剤と、イソシアネート系硬化剤と、を含有する。また、第2粘着層142を構成する粘着剤組成物は、主剤としてのアクリル系粘着剤と、イソシアネート系硬化剤と、を含有し、更に、可塑剤(後述)を含有する。
なお、第1粘着層141及び第2粘着層142に共通の材料となるアクリル系粘着剤、イソシアネート系硬化剤の構成は、第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
[可塑剤]
以下、第2粘着層142に添加される可塑剤について説明する。
第2粘着層142を構成する粘着剤に可塑剤を添加することにより、経時により印刷層30の非亀裂領域30Nに亀裂が生じることを抑制できる。粘着層140に含まれる可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
粘着剤組成物に含まれるフタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ヘプチルノニル(HNP)、フタル酸ジ−n−オクチル(DNOP)、フタル酸ジ−i−オクチル(DCapP)、フタル酸ジイソノニル(DINP),フタル酸ジ−i−デシル(DIDP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)、フタル酸ブチルベンジル(BDP)、エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)、ブチルフタリルブチルグリコレート(BPBG)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用してもよい。
また、粘着剤組成物に含まれるアジピン酸エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アジピン酸ジメチル(DMA)、アジピン酸ジエチル(DEA)、アジピン酸ジイソプロピル(DIPA)、アジピン酸ジプロピル(DPA)、アジピン酸ジイソブチル(DIBA)、アジピン酸ジブチル(DBA)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用してもよい。
なお、環境規制物質の観点から、フタル酸エステル系可塑剤よりも、アジピン酸エステル系可塑剤を使用した方が好ましい。また、アジピン酸エステル系可塑剤の中でも、汎用性や樹脂への相溶性の観点から、アジピン酸ジオクチル(DOA)を用いることが好ましい。
可塑剤の配合量は、アクリル系粘着剤の固形分100質量部に対して固形分換算で0.1〜10質量部であることが好ましく、1〜7質量部であることがより好ましい。配合量が0.1質量部よりも少なくなると、得られる粘着層140に十分な応力の緩和性が発現されにくく、耐久性が得られない場合がある。一方、含有量が10質量部よりも多くなると、後述するように、印刷層30に掛かる応力が第2粘着層142の内部で緩和されにくくなるため、印刷層30は、自身に掛かる応力により形状を維持できなくなり、亀裂が発生することが起こり得る。また、含有量が10質量部よりも多くなると、ブリードアウトした可塑剤により粘着力が大幅に低下するため、主に第2粘着層142に浮き、剥がれが発生しやすくなる。上記範囲であれば、後述する理由により印刷層30が形状を維持できるようになるため、亀裂の発生を抑制できる。また、転写シート1を基材60に転写した後、高温多湿の環境下において、主に第2粘着層142が基材60から浮いたり、剥がれたりすることを抑制できる。
<第2実施形態の印刷層30における亀裂の発生等について>
上述した転写シート1を基材60に転写した後、経時により印刷層30の亀裂予定領域30Pに亀裂が生じる理由及び印刷層30の非亀裂領域30Nに亀裂が生じない理由について説明する。
転写シート1が基材60に転写される前、粘着層140(第1粘着層141、第2粘着層142)の流動性により生じる応力は、印刷層30に作用するが、印刷層30よりも剛性のある剥離フィルム50及び基材フィルム19により印刷層30の伸縮が抑制される。そのため、印刷層30は、その形状を維持することができる。
一方、剥離フィルム50が離型された転写シート1が基材60に転写され、粘着層140が硬い基材60に貼り付けられると、粘着層140の流動性により生じる応力が印刷層30に作用するが、基材フィルム10により印刷層30の伸縮は、ある程度抑制される。その後、転写シート1から基材フィルム10が離型されると、印刷層30の亀裂予定領域30Pは、第1粘着層(亀裂発生接合層)141の流動性により生じる応力により形状を維持できなくなる。そのため、印刷層30の亀裂予定領域30Pは、亀裂が生じて、亀裂領域30Cとなる(図1参照)。
なお、印刷層30は、基材フィルム10側に張力を掛けた状態で形成される場合がある。また、印刷層30を基材フィルム10に形成した後、溶剤の乾燥により収縮等が発生する場合もある。この場合、印刷層30には、転写シート1の面方向(亀裂の発生する方向)に沿って内部に応力が掛かることになる。そのため、印刷層30(亀裂予定領域30P)に、第1粘着層141の流動性により生じる応力が作用すると、その応力と内部に掛かっている応力とが相互に作用することになるため、より一層亀裂が生じやすくなる。
これに対して、粘着層140の第2粘着層142は、アクリル系粘着剤の固形分100質量部に対して、固形分換算で0.1〜10質量部の可塑剤が配合されている。これによれば、第2粘着層(亀裂抑制接合層)142は、流動性がより高められることにより粘性が低下するため、流動性により生じる応力が緩和(低減)される。そのため、転写シート1が基材60に転写された後、第2粘着層142の流動性により生じる応力は、印刷層30の非亀裂領域30Nにほとんど作用しなくなるため、非亀裂領域30Nは、形状を維持することができる。従って、印刷層30の非亀裂領域30Nでは、図6に示すように、亀裂の発生が抑制される。
なお、第1粘着層141流動性を高めるには、層厚を厚くすることが望ましいが、生産性が低下することが考えられる。そのため、粘着層140の厚みを、前述した10μm以上50μm以下(より好ましくは15μm以上30μm以下)の範囲とすることにより、生産性を低下させることなく、第1粘着層141に対応する亀裂予定領域30Pにおいて、亀裂の発生を促進させることができる。
第2実施形態の化粧材100の製造方法は、第1実施形態と実質的に同じであるため、説明を省略する。
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態の化粧材100の基本的な構成は、第1実施形態(図1参照)と同じである。第3実施形態の化粧材100は、粘着層240の一部が亀裂抑制層を兼ねる点が第1実施形態と相違する。第3実施形態の化粧材100において、その他の構成は、第1実施形態の化粧材100と同じである。
第3実施形態の説明及び図面では、第1実施形態と同等の機能を果たす部分、部材等には、第1実施形態と同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を付して、重複する説明を適宜に省略する。例えば、転写シート、化粧材については、第1実施形態と同一の符号「1」、「100」を付し、粘着層については、符号「240」を付している。
(転写シート1の構成)
第3実施形態の転写シート1の構成は、第2実施形態と同じであるため、第2実施形態の図5及び図6を援用して説明する。
図5に示すように、第3実施形態の転写シート1は、基材フィルム10、剥離層20、印刷層30、粘着層240及び剥離フィルム50を備える。第3実施形態の転写シート1は、粘着層240の一部にブロックイソシアネートを含有する点で第2実施形態の転写シート1と相違する。
第3実施形態の転写シート1において、基材フィルム10、剥離層20、印刷層30及び剥離フィルム50の構成(材料、厚み等)は、第1実施形態と実質的に同じであるため、説明を適宜に省略する。
第3実施形態の粘着層(接合層)240は、図5に示すように、亀裂予定領域30Pに対応する第1粘着層(亀裂発生接合層)241と、非亀裂領域30Nに対応する第2粘着層(亀裂抑制接合層)242と、を備える。これらの粘着層は、それぞれ組成が異なる粘着剤を、上記対応する領域に合わせて塗工することにより形成される。
第1粘着層241及び第2粘着層242は、それぞれ粘着剤組成物の硬化物からなる。このうち、第1粘着層241を構成する粘着剤組成物は、主剤としてのアクリル系粘着剤と、イソシアネート系硬化剤と、を含有する。また、第2粘着層242を構成する粘着剤組成物は、主剤としてのアクリル系粘着剤と、イソシアネート系硬化剤と、を含有し、更に、ブロックイソシアネート(後述)を含有する。
なお、第1粘着層241及び第2粘着層242に共通の材料となるアクリル系粘着剤、イソシアネート系硬化剤の構成は、第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
本実施形態において、後述する加熱前の粘着層240は、アクリル系粘着剤と、イソシアネート系硬化剤と、を含有する組成物の第1の硬化物を含有する。そのときのゲル分率は、30%以上70%以下である。また、加熱後の粘着層240において、第1粘着層241は、上記第1の硬化物を含有する。そのときのゲル分率は、上記範囲である。また、加熱後の粘着層240において、第2粘着層242は、上記第1の硬化物とブロックイソシアネートとの第2の硬化物を含有する。そのときのゲル分率は、好ましくは80%以上である。
粘着層240の層厚は、10μm以上50μm以下であることが好ましく、15μm以上30μm以下であることがより好ましい。
[ブロックイソシアネート]
粘着剤組成物は、ブロックイソシアネートを含有する。ブロックイソシアネートは、転写シート1を基材60に転写した後、加熱により架橋反応させて、第2粘着層242の流動性を低下させるために添加される。第2粘着層242は、加熱による架橋反応により、ゲル分率が80%以上となり、流動性は低下するが、基材(被転写体)60に対する密着力が低下することはない。
ブロックイソシアネートは、イソシアネート化合物の活性イソシアネート基をブロック剤により保護したものである。ブロックイソシアネートは、架橋剤として働くため、上記のイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する。ブロックイソシアネートは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
イソシアネート化合物の具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の脂肪族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環族ジイソシアネート類;キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族ジイソシアネート類;ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、水素化されたTDI(HTDI)、水素化されたXDI(H6XDI)、水素化されたMDI(H12MDI)等の水添ジイソシアネート類;これらジイソシアネート化合物の2量体、3量体、更に高分子量のポリイソシアネート類;トリメチロールプロパン等多価アルコールもしくは水、又は低分子量ポリエステル樹脂との付加物等が挙げられる。
ブロック剤の具体例としては、例えば、メチルエチルケトオキシム、アセトキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類;m−クレゾール、キシレノール等のフェノール類;メタノール、エタノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類;ε−カプロラクタム等のラクタム類、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エステル等のジケトン類;チオフェノール等のメルカプタン類等が挙げられる。その他、チオ尿素等の尿素類;イミダゾール類;カルバミン酸類等が挙げられる。
ブロックイソシアネートは、上記イソシアネート化合物とブロック剤とを、フリーのイソシアネート基がなくなるまで常法により反応させて得ることができる。また、ブロックイソシアネートとしては、市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば、商品名デュラネート(旭化成社製)、商品名K−16用硬化剤(昭和インク工業社製)等が例示できる。
第2粘着層242における上記ブロックイソシアネートの含有量は、ゲル分率に合わせて設定される。
ブロックイソシアネートは、架橋温度が110℃以上となる種類の中から選択することが好ましく、120℃以上がより好ましい。これは、粘着層240が80〜100℃程度の温度で成膜されるので、架橋温度が100℃以下のブロックイソシアネートを選択した場合、成膜の段階で架橋反応が進行してしまうためである。第2粘着層242を成膜する段階で架橋反応が進行すると、転写シート1を基材60に転写する前に、第2粘着層242のゲル分率が80%以上となり、転写シート1を基材60に転写する際に適切な粘着力が得られなくなる。そのため、ブロックイソシアネートとして、架橋温度が110℃以上となる種類の中から選択し、第2粘着層242のゲル分率が30%以上70%以下となるように配合することにより、転写シート1を基材60に転写する際に、適切な粘着力を得ることができる。また、加熱後は、架橋反応によりゲル分率を80%以上にすることができるため、第2粘着層242の流動性を低下させることができる。
転写シート1を転写した基材60の加熱時間は、ブロックイソシアネートの架橋温度により異なるが、およそ5分以上30分以下である。例えば、ブロックイソシアネートの架橋温度が110℃の場合、加熱時間は、およそ15分以上30分以下である。なお、架橋温度が110℃のブロックイソシアネートを添加した場合でも、加熱温度を110℃以上、例えば120℃とすることにより、より早く架橋反応を進行させることができる。
<第3実施形態の印刷層30における亀裂の発生等について>
上述した転写シート1を基材60に転写した後、加熱により印刷層30の亀裂予定領域30Pに亀裂が生じる理由及び印刷層30の非亀裂領域30Nに亀裂が生じない理由について説明する。
転写シート1が基材60に転写される前、粘着層240(第1粘着層241、第2粘着層242)の流動性により生じる応力は、印刷層30に作用するが、印刷層30よりも剛性のある剥離フィルム50及び基材フィルム10により印刷層30の伸縮が抑制される。そのため、印刷層30は、その形状を維持することができる。
一方、剥離フィルム50が離型された転写シート1が基材60に転写され、粘着層240が硬い基材60に貼り付けられると、粘着層240の流動性により生じる応力が印刷層30に作用するが、基材フィルム10により印刷層30の伸縮は、ある程度抑制される。その後、転写シート1から基材フィルム10が離型されると、印刷層30の亀裂予定領域30Pは、第1粘着層(亀裂発生接合層)241の流動性により生じる応力により形状を維持できなくなる。そのため、印刷層30の亀裂予定領域30Pは、亀裂が生じて、亀裂領域30Cとなる(図1参照)。
なお、印刷層30は、基材フィルム10側に張力を掛けた状態で形成される場合がある。また、印刷層30を基材フィルム10に形成した後、溶剤の乾燥により収縮等が発生する場合もある。この場合、印刷層30には、転写シート1の面方向(亀裂の発生する方向)に沿って内部に応力が掛かることになる。そのため、印刷層30(亀裂予定領域30P)に、第1粘着層241の流動性により生じる応力が作用すると、その応力と内部に掛かっている応力とが相互に作用することになるため、より一層亀裂が生じやすくなる。
これに対して、粘着層240の第2粘着層242は、アクリル系粘着剤に対して、ブロックイソシアネートが配合されている。これによれば、転写シート1を基材60に転写した後、加熱により架橋反応させることにより、第2粘着層(亀裂抑制接合層)242は、ゲル分率が80%以上となり、流動性が低下するため、流動性により生じる応力が緩和(低減)される。このように、架橋反応により第2粘着層242の流動性が低下することにより、流動性により生じる応力が印刷層30非亀裂領域30Nにほとんど作用しなくなるため、非亀裂領域30Nは、形状を維持することができる。従って、印刷層30の非亀裂領域30Nでは、図6に示すように、亀裂の発生が抑制される。
また、架橋反応により第2粘着層242の流動性が低下することにより、第2粘着層242と基材60との密着性が向上するため、第2粘着層242が基材60から浮くことをより効果的に抑制できる。また、架橋反応により第2粘着層242の流動性が低下することにより、使用環境下の温度変化により生じる印刷層30と第2粘着層242との流動性の差に起因する非亀裂領域30Nの亀裂を長期的に抑制できる。
なお、第2粘着層242の流動性をより低下させるには、粘着層240を薄くすることが望ましいが、基材60との粘着性が低下することが考えられる。そのため、粘着層240の厚みを、前述した10μm以上50μm以下(より好ましくは15μm以上30μm以下)の範囲とすることにより、基材60との粘着性を低下させることなく、印刷層30の非亀裂領域30Nにおける亀裂の発生を抑制することができる。
第3実施形態の化粧材100の製造方法は、第1実施形態の化粧材100と実質的に同じである。第3実施形態の化粧材100は、基材60に転写された転写シート1から基材フィルム10を離型した後、化粧材100を加熱する点が第1実施形態と相違する。化粧材100を加熱することにより、粘着層240の第2粘着層242に含有されたブロックイソシアネートのブロック剤が解離し、活性イソシアネート基が再生されるため、第2粘着層242は、架橋反応により硬化する。
なお、加熱の工程は、化粧材100に熱風を吹き付けてもよいし、化粧材100を所定温度に設定された加熱炉内に設置してもよい。また、内部に熱源を備えたローラを、化粧材100の表面(剥離層20)に押し付けながら所定時間に亘って移動させてもよい。
また、化粧材100への加熱は、剥離層20の上に耐候性付与層70を形成した後に実施してもよい。その場合は、転写シート1から基材フィルム10を離型した後、剥離層20の上に、出来る限り早く耐候性付与層70を形成する必要がある。加熱前の粘着層240は、全体として流動性を有するため、転写シート1を基材60に転写した後は、その流動性により生じる応力により、印刷層30の非亀裂領域30Nに亀裂が生じやすくなるためである。
以下、上記各実施形態の実施例及び比較例を示して、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<第1実施形態>
[実施例1]
基材フィルム10として、26μm厚のPETフィルム(「ダイアホイル」 三菱樹脂株式会社製)を用意し、その一方の面にアクリル−ウレタン樹脂組成物(「KSI」 昭和インク工業株式会社製)を塗布して、膜厚(dry)1μmの剥離層20を形成した。この剥離層20上に、アクリル−塩酢ビ樹脂組成物と着色顔料からなるグラビアインキ(「EIS」 昭和インク工業株式会社製)を用いて複数回の印刷を行い、図1に示すような印刷層30を形成した。
次に、印刷層30において、非亀裂領域30Nとなる複数の領域の上に、塩酢ビ樹脂(「FHS」 DICグラフィックス社製)を塗布して、膜厚(dry)2μmの亀裂抑制層(図2に示すハードコート層80)を形成した。
また、剥離フィルム50として、25μm厚のPETセパレータ(「トークロ離型フィルム」 東洋クロス株式会社社製)を用意し、その上に、アクリル酸エステル樹脂(「ニッセツ」 日本カーバイド工業社製)からなる粘着剤層を、膜厚(dry)20μmとなるようにコーティングし、乾燥させることにより、図2に示すような粘着層40とハードコート層80とが混在する層を形成した。
そして、基材フィルム10側の印刷層30(亀裂予定領域30P)とハードコート層80とで形成される露出面と、剥離フィルム50(PETセパレータ)側の粘着層40とを貼り合わせた後、3日間、40℃で加温養生することにより、実施例1の転写シートを得た。
[比較例1]
ハードコート層80(亀裂抑制層)を、印刷層30の全面に形成したほかは、上記実施例1と同じ条件で比較例1の転写シートを得た。
[比較例2]
ハードコート層80を、印刷層30の非亀裂領域30Nに対応する領域に形成しなかったほかは、上記実施例1と同じ条件で比較例2の転写シートを得た。
上記3種の転写シートを、それぞれ1mm厚のアルミニウム板(基材)上に転写して化粧材を作製し、所定時間の経過後に、それぞれの化粧材の外観を目視により観察した。その結果、ハードコート層80を印刷層30の全面に形成した比較例1の化粧材は、印刷層30(亀裂予定領域30P及び非亀裂領域30N)のいずれにも亀裂は観察されなかった。また、ハードコート層80を印刷層30の非亀裂領域30Nに対応する領域に形成しなかった比較例2の化粧材は、印刷層30(亀裂予定領域30P及び非亀裂領域30N)に無数の亀裂が観察された。
一方、ハードコート層80を非亀裂領域30Nにのみ形成した実施例1の化粧材は、亀裂予定領域30Pに無数の亀裂が形成され、亀裂領域30Cとなったことが観察された。また、非亀裂領域30Nには亀裂は観察されなかった。
以上の結果から、実施例1の化粧材は、亀裂予定領域30Pに、より自然な凹凸を亀裂により再現することができ、非亀裂領域30Nには、亀裂が生じないようにできることが確認された。
<第2実施形態>
[実施例2]
基材フィルム10として、26μm厚のPETフィルム(「ダイアホイル」 三菱樹脂株式会社製)を用意し、その一方の面にアクリル−ウレタン樹脂組成物(「KSI」 昭和インク工業株式会社製)を塗布して、膜厚(dry)1μmの剥離層20を形成した。この剥離層20上にアクリル−塩酢ビ樹脂組成物と着色顔料からなるグラビアインキ(「EIS」 昭和インク工業株式会社)を用いて複数回の印刷を行い、図5に示すような印刷層30を形成した。この印刷層30には、図柄に合わせて亀裂予定領域30P及び非亀裂領域30Nが形成されている。
剥離フィルム50として、25μm厚のPETセパレータ(「トークロ離型フィルム」 東洋クロス社製)を用意し、印刷層30の亀裂予定領域30P(図5参照)と対応する領域の上に、アクリル酸エステル粘着組成物(「OC3949」 固形分39.5% サイデン化学社製)100部と、イソシアネート系硬化剤(「K−130」 固形分80% サイデン化学社製)0.05部と、を酢酸エチルで希釈した溶液を膜厚(dry)30μmとなるようにコーティングし、乾燥させることにより、第1粘着層141を形成した。
なお、剥離フィルム50において、印刷層30の亀裂予定領域30Pと対応する領域とは、剥離フィルム50と基材フィルム10とを貼り合わせた際に、粘着層140において、印刷層30の亀裂予定領域30Pと平面的に重なる領域である。
また、同じ剥離フィルム50(PETセパレータ)において、印刷層30の非亀裂領域30N(図5参照)と対応する領域の上に、アクリル酸エステル粘着組成物(「OC3949」 固形分39.5% サイデン化学社製)100部と、イソシアネート系硬化剤(「K−130」 固形分80% サイデン化学社製)0.05部と、アジピン酸エステル系可塑剤(「DOA」 固形分100 % ジェイプラス社製)0.5部と、を酢酸エチルで希釈した溶液を膜厚(dry)30μmとなるようにコーティングし、乾燥させることにより、第2粘着層142を形成した。
なお、剥離フィルム50において、印刷層30の非亀裂領域30Nと対応する領域とは、剥離フィルム50と基材フィルム10とを貼り合わせた際に、粘着層140において、印刷層30の非亀裂領域30Nと平面的に重なる領域である。
そして、基材フィルム10側の印刷層30と、剥離フィルム50(PETセパレータ)側の粘着層140とを貼り合わせた後、7日間、室温にて養生することにより、実施例2の転写シートを得た。
[比較例3]
粘着層140の全領域を、可塑剤(アジピン酸エステル系可塑剤)を添加しない粘着剤組成物の硬化物で形成したほかは、上記実施例2と同じ条件で比較例3の転写シートを得た。
[比較例4]
粘着層140の全領域を、可塑剤(アジピン酸エステル系可塑剤)を添加した粘着剤組成物の硬化物で形成したほかは、上記実施例2と同じ条件で比較例4の転写シートを得た。
上記3種の転写シートを、それぞれ1mm厚のアルミニウム板(基材)上に転写して化粧材を作製し、室温20℃〜25℃の雰囲気中に放置し、21日間の経過後に、それぞれの化粧材の外観を目視により観察した。その結果、粘着層140の全領域を、可塑剤を添加しない粘着剤組成物の硬化物で形成した比較例3の化粧材は、亀裂予定領域30Pだけでなく、非亀裂領域30Nにも亀裂が観察された。また、粘着層140の全領域を、可塑剤を添加した粘着剤組成物の硬化物で形成した比較例4の化粧材は、非亀裂領域30Nだけでなく、亀裂予定領域30Pにも亀裂は観察されなかった。
一方、実施例1の化粧材は、印刷層30の亀裂予定領域30Pに無数の亀裂が観察され、亀裂領域30Cとなったことが観察された。また、非亀裂領域30Nには亀裂は観察されなかった。
以上の結果から、実施例2の化粧材は、亀裂予定領域30Pに、より自然な凹凸を亀裂により再現することができ、非亀裂領域30Nには、亀裂が生じないようにできることが確認された。これは、実施例2の転写シートを転写した化粧材では、第2粘着層142に添加された可塑剤により、第2粘着層142の流動性がより高められることにより粘性が低下したため、流動性により生じる応力が緩和され、非亀裂領域30Nにほとんど作用しなくなったためと推測される。
<第3実施形態>
[実施例3]
基材フィルム10として、26μm厚のPETフィルム(「ダイアホイル」 三菱樹脂株式会社製)を用意し、その一方の面にアクリル−ウレタン樹脂組成物(「KSI」 昭和インク工業株式会社製)を塗布して、膜厚(dry)1μmの剥離層20を形成した。この剥離層20上にアクリル−塩酢ビ樹脂組成物と着色顔料からなるグラビアインキ(「EIS」 昭和インク工業株式会社)を用いて複数回の印刷を行い、図5に示すような印刷層30を形成した。この印刷層30には、図柄に合わせて亀裂予定領域30P及び非亀裂領域30Nが形成されている。
剥離フィルム50として、25μm厚のPETセパレータ(「トークロ離型フィルム」 東洋クロス社製)を用意し、印刷層30の亀裂予定領域30P(図5参照)と対応する領域の上に、アクリル酸エステル粘着組成物(「OC3949」 固形分39.5% サイデン化学社製)100部と、イソシアネート系硬化剤(「K−130」 固形分80% サイデン化学社製)0.05部と、を酢酸エチルで希釈した溶液を膜厚(dry)30μmとなるようにコーティングし、乾燥させることにより、第1粘着層241を形成した。
なお、剥離フィルム50において、印刷層30の亀裂予定領域30Pと対応する領域とは、剥離フィルム50と基材フィルム10とを貼り合わせた際に、粘着層240において、印刷層30の亀裂予定領域30Pと平面的に重なる領域である。
また、同じ剥離フィルム50(PETセパレータ)において、アクリル酸エステル粘着組成物(「ニッセツ」 日本カーバイド工業社製、アクリル酸エステル粘着剤100質量部に対して硬化剤としてTDIを2質量部含有)の固形分100質量部に対して、ブロックイソシアネート(「K16用硬化剤」 昭和インク株式会社製)を固形分2質量部となるように添加した粘着層を、膜厚(dry)20μmとなるように塗工し、乾燥させることにより、第2粘着層242を形成した。
なお、剥離フィルム50において、印刷層30の非亀裂領域30Nと対応する領域とは、剥離フィルム50と基材フィルム10とを貼り合わせた際に、粘着層240において、印刷層30の非亀裂領域30Nと平面的に重なる領域である。
そして、基材フィルム10側の印刷層30と、剥離フィルム50(PETセパレータ)側の粘着層240とを貼り合わせた後、3日間、40℃で加温養生することにより、実施例の転写シートを得た。
[比較例5]
粘着層240の全領域を、ブロックイソシアネートを添加しない第1粘着層241と同じ粘着剤組成物の硬化物で形成した以外は、実施例3と同じ条件で比較例5の転写シートを作製した。
[比較例6]
粘着層240の全領域を、ブロックイソシアネートを添加した第2粘着層242と同じ粘着剤組成物の硬化物で形成した以外は、実施例3と同じ条件で比較例6の転写シートを作製した。
上記3種の転写シートを、それぞれ1mm厚のアルミニウム板(基材)上に転写して化粧材を作製し、その化粧材を120℃で20分加熱した。その後、所定時間の経過後に、それぞれの化粧材の外観を目視により観察した。その結果、粘着層240の全領域を、ブロックイソシアネートを添加しない粘着剤組成物の硬化物で形成した比較例5化粧材は、亀裂予定領域30Pだけでなく、非亀裂領域30Nにも亀裂が観察された。また、粘着層240の全領域を、ブロックイソシアネートを添加した粘着剤組成物の硬化物で形成した比較例6の化粧材は、非亀裂領域30Nだけでなく、亀裂予定領域30Pにも亀裂は観察されなかった。
一方、実施例3の化粧材は、印刷層30の亀裂予定領域30Pに無数の亀裂が観察され、亀裂領域30Cとなったことが観察された。また、非亀裂領域30Nには亀裂は観察されなかった。
以上の結果から、実施例3の化粧材は、亀裂予定領域30Pに、より自然な凹凸を亀裂により再現することができ、非亀裂領域30Nには、亀裂が生じないようにできることが確認された。これは、実施例3の転写シートを転写した化粧材では、120℃で20分加熱することにより、第2粘着層242に添加されたブロックイソシアネートが架橋反応してゲル分率が80%以上となり、第2粘着層242の流動性が低下したため、その流動性により生じる応力が第2粘着層242に対応する非亀裂領域30Nにほとんど作用しなくなったためと推測される。
(ゲル分率の測定)
粘着層のゲル分率は、以下のような手法により測定した。
乾燥後の粘着層の厚みが20μmとなるようにセパレータ(剥離フィルム)の表面に塗工により形成した。その後、粘着層のもう一方の面に同じくセパレータを貼り合わせて試験片とし、40℃で3日間保管した(常温で7日間保管でも可)。ここでは、粘着層にブロックイソシアネートを含有しない試験片を「試料1」とし、粘着層にブロックイソシアネートを含有する試験片を「試料2」とする。
この試験片を50cmのサイズに切り出し、計量した(以下、切り出した試験片の粘着剤重量を、「試験片の粘着剤重量」ともいう)。この試験片をサンプル瓶に入れ、酢酸エチル50ccに浸漬させ、24時間経過後に、200メッシュ(1インチ当たり200網目)のSUS金網で濾過した。ステンレス(SUS)金網で捕捉された粘着剤の濾過残留物を、SUS金網ごと80℃で2時間乾燥させ、残留物を計量した(以下、乾燥した残留物の重量を、「粘着残留物重量」ともいう)。
これらの値を基にして、以下の式からゲル分率を測定した。
ゲル分率[%]=(粘着残留物重量)/(試験片の粘着剤重量)×100
なお、セパレータ、サンプル瓶、SUS金網の重量を個別に計量し、上記測定値から差し引いている。
(測定結果)
ブロックイソシアネートを含有しない試料1については、ゲル分率は、57.2%であった。
ブロックイソシアネートを含有する試料2についても、ゲル分率は、57.2%であった。そして、試料2を120℃で1時間加熱した後のゲル分率は、94.1%であった。また、試料2について、加熱時間を4時間にした場合、ゲル分率は、94.8%となり、加熱時間を1時間とした場合に比べて大きな差は確認されなかった。
以上により、実施例の試料2においては、加熱(架橋工程)の前後でゲル分率が変化していることが理解できる。
本発明に係る転写シートは、被転写体(基材)に対して優れた意匠性、耐候性を与えることができる。この化粧材は、建築物の壁材(外装材、内装材)、間仕切り、扉、窓枠、家具、室内装飾品等のほか、自動車、鉄道車両、船舶、航空機等の室内用カバー材、各種標識、屋外広告等のパネル材等にも適用することができる。
1 転写シート
10 基材フィルム
20 剥離層
30 印刷層
30C 亀裂領域
30P 亀裂予定領域
30N 非亀裂領域
40,140,240 粘着層
50 剥離フィルム
60 基材
70 耐候性付与層
80 ハードコート層
141,241 第1粘着層
241,242 第2粘着層

Claims (4)

  1. 離型性支持体と、印刷層と、接合層と、がこの順に積層された転写シートにおいて、
    前記印刷層は、亀裂予定領域と、非亀裂領域と、を有し、
    前記亀裂予定領域の前記離型性支持体と反対側の面には、前記接合層として亀裂発生接合層が配置されており、
    前記非亀裂領域の前記離型性支持体と反対側の面には、前記接合層として亀裂抑制接合層が配置されているか、又は前記接合層との間に亀裂抑制層が配置され、
    前記亀裂予定領域は、前記離型性支持体が当該転写シートから剥離された場合に、前記亀裂発生接合層の流動性により生じる応力により亀裂が形成される転写シート。
  2. 前記非亀裂領域の前記離型性支持体と反対側の面には、前記接合層として亀裂抑制接合層が配置されており、
    前記亀裂発生接合層は、アクリル系粘着剤とイソシアネート系硬化剤とを含有しており、
    前記亀裂抑制接合層は、アクリル系粘着剤とイソシアネート系硬化剤と可塑剤を含有しており、
    前記可塑剤は、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤のいずれかである請求項1に記載の転写シート。
  3. 前記可塑剤の配合量は、前記アクリル系粘着剤の固形分100質量部に対して固形分換算で0.1〜10質量部である請求項2に記載の転写シート。
  4. 前記非亀裂領域の前記離型性支持体と反対側の面には、前記接合層として亀裂抑制接合層が配置されており、
    前記亀裂発生接合層は、アクリル系粘着剤とイソシアネート系硬化剤とを含有しており、
    前記亀裂抑制接合層は、アクリル系粘着剤とイソシアネート系硬化剤とブロックイソシアネートを含有している請求項1に記載の転写シート。
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