以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るステアリング装置の概略を示す模式図である。図2は、実施形態1に係るステアリング装置の概略を示す斜視図である。図1に示すように、ステアリング装置80は、操作者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、第1ステアリングシャフト82と、操舵力アシスト機構83と、ユニバーサルジョイント84と、第2ステアリングシャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、を備え第3ステアリングシャフト87に接合されている。また、ステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、トルクセンサ94とを備える。車速センサ95は、車体に備えられ、CAN(Controller Area Network)通信により車速信号VをECU90に出力する。
図1に示すように、第1ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bとを備える。入力軸82aの一方の端部がステアリングホイール81に連結され、入力軸82aの他方の端部が出力軸82bに連結される。また、出力軸82bの一方の端部が入力軸82aに連結され、出力軸82bの他方の端部がユニバーサルジョイント84に連結される。実施形態1では、入力軸82a及び出力軸82bは、機械構造用炭素鋼(SC材(Carbon Steel for Machine Structural Use))又は機械構造用炭素鋼鋼管(いわゆるSTKM材(Carbon Steel Tubes for Machine Structural Purposes))等の一般的な鋼材等から形成される。
図1に示すように、第2ステアリングシャフト85は、ユニバーサルジョイント84を介して出力軸82bに連結される。第2ステアリングシャフト85の一方の端部がユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。第3ステアリングシャフト87の一方の端部がユニバーサルジョイント86に連結され、第3ステアリングシャフト87の他方の端部がステアリングギヤ88に連結される。また、図2に示すように、第2ステアリングシャフト85は、ダッシュパネル10を貫通している。ダッシュパネル10は、車室とエンジンルームとを隔てる仕切り板である。
図1に示すように、ステアリングギヤ88は、ピニオン88aと、ラック88bとを備える。ピニオン88aは、第3ステアリングシャフト87に連結される。ラック88bは、ピニオン88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aに伝達された回転運動をラック88bで直進運動に変換する。ラック88bは、タイロッド89に連結される。すなわち、ステアリング装置80は、ラックアンドピニオン式である。
図1に示すように、操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、電動モータ93とを備える。電動モータ93は、例えばブラシレスモータであるが、ブラシ(摺動子)及びコンミテータ(整流子)を備えるモータであってもよい。減速装置92は、例えばウォーム減速装置である。電動モータ93で生じたトルクは、減速装置92の内部のウォームを介してウォームホイールに伝達され、ウォームホイールを回転させる。減速装置92は、ウォーム及びウォームホイールによって、電動モータ93で生じたトルクを増加させる。そして、減速装置92は、出力軸82bに補助操舵トルクを与える。すなわち、ステアリング装置80は、コラムアシスト方式である。
トルクセンサ94は、ステアリングホイール81を介して入力軸82aに伝達された操作者(運転者)の操舵力を操舵トルクとして検出する。車速センサ95は、ステアリング装置80が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。電動モータ93、トルクセンサ94及び車速センサ95は、ECU90と電気的に接続される。
ECU90は、電動モータ93の動作を制御する。また、ECU90は、トルクセンサ94及び車速センサ95のそれぞれから信号を取得する。すなわち、ECU90は、トルクセンサ94から操舵トルクTを取得し、且つ車速センサ95から車体の車速信号Vを取得する。ECU90は、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置99(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU90は、操舵トルクTと車速信号Vとに基づいてアシスト指令の補助操舵指令値を算出する。そして、ECU90は、その算出された補助操舵指令値に基づいて電動モータ93へ供給する電力値Xを調節する。ECU90は、電動モータ93から誘起電圧の情報又は電動モータ93に設けられたレゾルバ等から出力される情報を動作情報Yとして取得する。
ステアリングホイール81に入力された操作者の操舵力は、入力軸82aを介して操舵力アシスト機構83の減速装置92に伝わる。この時、ECU90は、入力軸82aに入力された操舵トルクTをトルクセンサ94から取得し、且つ車速信号Vを車速センサ95から取得する。そして、ECU90は、電動モータ93の動作を制御する。電動モータ93が作り出した補助操舵トルクは、減速装置92に伝えられる。
出力軸82bを介して出力された操舵トルク(補助操舵トルクを含む)は、ユニバーサルジョイント84を介して第2ステアリングシャフト85に伝達され、さらにユニバーサルジョイント86を介して第3ステアリングシャフト87に伝達される。第3ステアリングシャフト87に伝達された操舵力は、ステアリングギヤ88を介してタイロッド89に伝達され、車輪を変位させる。
図3は、実施形態1に係るダストカバーの周辺を示す断面図である。図4は、実施形態1に係るダストカバーの正面図である。図5は、図4におけるA−A断面図である。図6は、図5の第1シールリップの一部を拡大した断面図である。図7は、図5におけるB−B断面図である。以下の説明において、第2ステアリングシャフト85の回転中心軸Zに沿う方向は軸方向と記載され、軸方向に対する直交方向は径方向と記載され、回転中心軸Zを中心とした円の接線方向は周方向と記載される。また、図3において上側が車室側であり、下側がエンジンルーム側である。
図3に示すように、ダッシュパネル10は、筒状部材101を備える。筒状部材101の内周面は、第2ステアリングシャフト85の外周面と対向する。第2ステアリングシャフト85は、ステアリングホイール81の位置の調整又は走行中の振動等に伴って移動することがある。このため、筒状部材101の内周面と第2ステアリングシャフト85の外周面との間には環状の隙間が設けられている。この隙間を塞ぐために、ステアリング装置80は、ダストカバー1を備える。ダストカバー1は、筒状部材101の内周面に嵌められており、且つ筒状部材101の端部に設けられたフランジ102によって位置決めされている。筒状部材101の外周面に設けられたバンド103によって、ダストカバー1が筒状部材101に固定されている。
図5に示すように、ダストカバー1は、ベローズ2と、ブッシュ5と、第1シールリップ6と、固定部材14と、第2シールリップ12と、を備える。
ベローズ2は、ダッシュパネル10の筒状部材101に支持されている。ベローズ2は、図5に示すように本体部21と、補強部材22と、を備える。ベローズ2は、ブッシュ5と筒状部材101との間の隙間を塞ぐための部材である。ベローズ2は、第2ステアリングシャフト85の偏芯によって生じるブッシュ5の移動に伴って変形することができる。
本体部21は、筒状部材101からブッシュ5に亘って設けられる部材であって、例えば合成ゴムで形成されている。より具体的には、本体部21は軟質ゴムである。本体部21は、ブッシュ5の移動に応じて容易に変形可能である。本体部21は、支持部211と、第1可撓部212と、第1嵌合部213と、第2可撓部215と、第2嵌合部216を含む。支持部211、第1可撓部212、第1嵌合部213、第2可撓部215及び第2嵌合部216は、一体成形されている。支持部211は、筒状部材101のフランジ102に接する円環状の部材である。第1可撓部212は、支持部211と第1嵌合部213とを繋ぐ部材である。図5に示すように、回転中心軸Zを含む断面において、第1可撓部212は略U字状である。第1嵌合部213は、ブッシュ5の外周面に嵌められる。第2可撓部215は、支持部211と第2嵌合部216とを繋ぐ部材である。図5に示すように、回転中心軸Zを含む断面において、第2可撓部215は略U字状である。第2可撓部215は、第1可撓部212に対して隙間を空けて対向している。第2嵌合部216は、ブッシュ5の外周面に嵌められる。第2嵌合部216は、第1嵌合部213の外周面に重なっている。
補強部材22は、例えば金属であって、本体部21と一体成形されている。より具体的には、補強部材22は例えば鋼鉄である。補強部材22は、本体部21の全周に亘って配置された環状の部材である。図5に示すように、回転中心軸Zを含む断面において、補強部材22は略L字状である。
ブッシュ5は、第2ステアリングシャフト85を回転可能に支持する軸受である。ブッシュ5は、環状の部材であって、例えば合成樹脂で形成されている。図5に示すようにブッシュ5は、基部50と、フランジ51と、凹部57と、返し部58と、複数の溝59とを備える。基部50の内周面が第2ステアリングシャフト85に接しており、基部50の外周面が第1嵌合部213及び第2嵌合部216に接している。フランジ51は、基部50の軸方向の端部から径方向外側に突出している。フランジ51には第1嵌合部213が接している。フランジ51は、第1嵌合部213を軸方向に位置決めしている。凹部57には、固定部材14が嵌まる。返し部58が固定部材14を軸方向に位置決めしている。溝59は、例えば軸方向に沿う溝であって、ブッシュ5の軸方向の全長に亘って設けられている。例えば複数の溝59が周方向に等間隔に配置されている。溝59には、グリース54が充填されている。グリース54は、ブッシュ5と第2ステアリングシャフト85との間の摩擦を抑制するための潤滑剤である。
第1シールリップ6は、ブッシュ5の内側とエンジンルームとを隔てるための密封部材である。第1シールリップ6は、例えば合成ゴムであって、ブッシュ5と一体成形されている。より具体的には、第1シールリップ6は、本体部21と同じ軟質ゴムである。図5及び図7に示すように、第1シールリップ6は、主リップ61と、複数の補助リップ62と、を備える。
主リップ61は、ブッシュ5の端面からエンジンルーム側に突出する環状の部材である。主リップ61は、第2ステアリングシャフト85に接している。具体的には、内周面613のエンジンルーム側の端部に位置するシール部611が第2ステアリングシャフト85の外周面に接する。主リップ61の内径は、ブッシュ5に近い端部で最大となり、且つブッシュ5から遠い端部に向かって小さくなっている。すなわち、主リップ61は、両端面が開口した略円錐台状である。このため、図5に示すように、回転中心軸Zを含む断面において主リップ61の内周面613は、回転中心軸Zに対して角度をなす(回転中心軸Zに対して傾斜している)。第2ステアリングシャフト85と主リップ61の内周面613との間に空間(隙間)が生じている。主リップ61の内周面613にはグリース64が塗布されている。グリース64は、主リップ61と第2ステアリングシャフト85との間の摩擦を抑制するための潤滑剤である。
第2ステアリングシャフト85に接する前における主リップ61の最小内径は、第2ステアリングシャフト85の外径より小さい。このため、主リップ61が第2ステアリングシャフト85に接すると、主リップ61が変形する。主リップ61の弾性により、主リップ61と第2ステアリングシャフト85との間の隙間が生じにくくなっている。このため、第1シールリップ6は、エンジンルームからブッシュ5の内側への異物の侵入を防ぐことができると共に、ブッシュ5の内側からエンジンルームへのグリース54の漏洩を防ぐことができる。また、第1シールリップ6は、エンジンルームで生じる音の車室への漏洩を抑制することができる。
補助リップ62は、主リップ61の内周面613に設けられた部材である。補助リップ62は、例えば主リップ61と一体成形されており、内周面613から径方向に突出している。すなわち、補助リップ62の径方向の外側端部が内周面613に接しており、補助リップ62の径方向の内側端部であるエッジ部621が内周面613より径方向で内側に位置している。例えば、補助リップ62は軸方向に延びる板状部材である。より具体的には、補助リップ62は、一辺が主リップ61の内周面613に沿う三角形状に形成されている。図6に示すように、補助リップ62の肉厚T62は、主リップ61の肉厚T61より小さい。すなわち、補助リップ62は薄肉部材である。また、補助リップ62の少なくとも一部が第2ステアリングシャフト85に接している。具体的には、エッジ部621が第2ステアリングシャフト85の外周面に接している。
第2ステアリングシャフト85がダストカバー1に取り付けられる前において、回転中心軸Zからエッジ部621までの最短距離D62aは、回転中心軸Zからブッシュ5の内周面までの距離D5より小さい。また、回転中心軸Zからエッジ部621までの最長距離D62bは、回転中心軸Zからブッシュ5の内周面までの距離D5より小さい。第2ステアリングシャフト85がダストカバー1に取り付けられると、エッジ部621が全長に亘って第2ステアリングシャフト85に接する。
図7に示すように、複数の補助リップ62は、周方向で等間隔に配置されている。例えば、第1シールリップ6が有する補助リップ62の数は、8つである。複数の補助リップ62によって、グリース64が複数箇所に分けられている。このため、グリース64が全周に亘って一体である場合に比較して偏り難い。すなわち、グリース64が周方向に均等に保持される。また、グリース64は、主リップ61の内周面613に接すると共に、補助リップ62の表面にも接する。このため、補助リップ62がない場合に比較して、第1シールリップ6がグリース64を保持しやすくなる。
固定部材14は、ベローズ2をブッシュ5に固定するための部材である。固定部材14は、例えば金属で形成された環状の部材である。固定部材14は、ブッシュ5の返し部58側から凹部57に嵌められる。固定部材14が返し部58の外周面に押し付けられると返し部58が変形し、固定部材14が凹部57に達すると返し部58の変形が戻る。これにより、固定部材14がブッシュ5に固定される。固定部材14により、第2嵌合部216及び第1嵌合部213がブッシュ5に押し付けられる。また、固定部材14が第2嵌合部216の車室側端部に接する。このため、軸方向に重ねられた第1嵌合部213及び第2嵌合部216が、ブッシュ5のフランジ51と固定部材14とによって挟まれる。すなわち、フランジ51及び固定部材14によって第2嵌合部216及び第1嵌合部213が軸方向に位置決めされる。フランジ51及び固定部材14は、ベローズ2がブッシュ5から脱落することを防止している。
第2シールリップ12は、ブッシュ5の内側と車室とを隔てるための密封部材である。第2シールリップ12は、例えば合成ゴムであって、固定部材14と一体成形されている。より具体的には、第2シールリップ12は、本体部21と同じ軟質ゴムである。図5に示すように、第2シールリップ12は、固定部材14の端面から車室側に突出している。例えば、第2シールリップ12は、第2ステアリングシャフト85の外周面に接している。第2ステアリングシャフト85に接する前における第2シールリップ12の最小内径は、第2ステアリングシャフト85の外径より小さい。このため、第2シールリップ12が第2ステアリングシャフト85に接すると、第2シールリップ12が変形する。第2シールリップ12の弾性により、第2シールリップ12と第2ステアリングシャフト85との間の隙間が生じにくくなっている。このため、第2シールリップ12は、ブッシュ5の内側から車室へのグリース54の漏洩を防ぐことができる。また、第2シールリップ12は、エンジンルームで生じる音の車室への漏洩を抑制することができる。
図8は、比較例に係るダストカバーの断面図である。図8に示すように、比較例に係るダストカバー1Xにおいては、第1シールリップ6Xが補助リップを備えていない。このため、主リップ61の内周面613に塗布されたグリース64Xは、全周に亘って一体となっている。このため、グリース64Xが流動しにくいので、主リップ61のシール部611にグリース64Xが十分に供給されない可能性がある。
第2ステアリングシャフト85は、ステアリングホイール81の操作に応じて回転する。例えば、第2ステアリングシャフト85は、中立位置を基準として一方側に約2回転し、且つ他方側にも約2回転する。第2ステアリングシャフト85の回転方向は随時変化する。比較例において、主リップ61のシール部611にグリース64Xが十分に供給されない場合、シール部611と第2ステアリングシャフト85との間で摩擦が生じやすくなる。これにより、シール部611と第2ステアリングシャフト85との間で摩擦と滑りとが繰り返されることにより、振動が生じることがある。この振動現象は、スティックスリップ現象とも呼ばれる。スティックスリップ現象により、車室にいる操作者に異音が伝わる可能性がある。
これに対して、本実施形態においては、補助リップ62によってグリース64が複数箇所に分けられているので、グリース64が偏り難い。すなわち、グリース64が周方向に均等に保持される。さらに、補助リップ62のエッジ部621が第2ステアリングシャフト85に接しているので、第2ステアリングシャフト85の回転方向が変化する度に補助リップ62が変形する。補助リップ62が変形することで、補助リップ62に接しているグリース64が第2ステアリングシャフト85の回転方向に押し出される。これにより、グリース64が強制的に第2ステアリングシャフト85に供給される。また、第2ステアリングシャフト85の回転方向が逆転すると、グリース64が押し出される方向が逆転する。その結果、グリース64は、隣接する補助リップ62の間で強制的に循環させられる。したがって、本実施形態においては、グリース64がシール部611に供給されやすいので、スティックスリップ現象の発生が抑制される。
なお、ダストカバー1が取り付けられる対象は、必ずしも第2ステアリングシャフト85でなくてもよい。例えば、第1ステアリングシャフト82がダッシュパネル10を貫通している時は、第1ステアリングシャフト82にダストカバー1が適用されてもよい。第3ステアリングシャフト87がダッシュパネル10を貫通している時は、第3ステアリングシャフト87にダストカバー1が適用されてもよい。
なお、第1シールリップ6は、必ずしもブッシュ5と一体成形されていなくてもよい。例えば、ブッシュ5とは別部材である第1シールリップ6が、ブッシュ5の端部に取り付けられていてもよい。
なお、主リップ61の肉厚は一定でなくてもよい。主リップ61の肉厚が一定でない場合、補助リップ62の肉厚T62(図6参照)が主リップ61の平均の肉厚よりも小さいことが望ましい。
なお、補助リップ62は、必ずしも第2ステアリングシャフト85に接していなくてもよい。すなわち、補助リップ62は、エッジ部621が第2ステアリングシャフト85に対して隙間を空けて対向するように配置されていてもよい。その場合、グリース64として比較的粘度の高いグリースが用いられることが望ましい。例えば、グリース64の粘度がグリース54の粘度より高いことが望ましい。これにより、第2ステアリングシャフト85の回転がグリース64を介して補助リップ62に伝わるので、補助リップ62が第2ステアリングシャフト85に接する場合と同様の効果が得られる。また、補助リップ62は、必ずしも周方向に等間隔に配置されていなくてよい。補助リップ62の数は、必ずしも8つでなくてもよく、2つ以上であればよい。補助リップ62の数は、10個以下であることが好ましい。また、補助リップ62は、必ずしも三角形状でなくてもよい。補助リップ62は、後述する実施形態2に示すように四角形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。また、補助リップ62の肉厚は一定でなくてもよい。補助リップ62の肉厚が一定でない場合、補助リップ62の平均の肉厚が主リップ61の肉厚T61(図6参照)よりも小さいことが望ましい。
なお、第2シールリップ12は、第2ステアリングシャフト85に接していなくてもよい。すなわち、第2シールリップ12は、第2ステアリングシャフト85に対して微小隙間を空けて配置されていてもよい。また、第2シールリップ12はなくてもよい。
第1シールリップ6及び第2シールリップ12は、必ずしもベローズ2の本体部21と同じ軟質ゴムでなくてもよい。例えば、第1シールリップ6及び第2シールリップ12は、本体部21の軟質ゴムの硬度よりも高い硬度を有する硬質ゴムであってもよい。
以上で説明したように、実施形態1に係るダストカバー1は、ダッシュパネル10を貫通するステアリングシャフト(第2ステアリングシャフト85)の外周面に取り付けられるブッシュ5と、ブッシュ5の端部に配置されるシールリップ(第1シールリップ6)と、を備える。シールリップ(第1シールリップ6)は、ステアリングシャフト(第2ステアリングシャフト85)の外周面に接し且つ内周面613にグリース64が塗布された環状の主リップ61と、主リップ61の内周面613に設けられた複数の補助リップ62と、を備える。
これにより、複数の補助リップ62によって、グリース64が複数箇所に分けられる。グリース64は、全周に亘って一体である場合に比較して偏り難い。すなわち、グリース64が周方向に均等に保持される。また、ステアリングシャフト(第2ステアリングシャフト85)に接する主リップ61の変形に伴って補助リップ62が変形する。補助リップ62が変形することで、補助リップ62に接しているグリース64がステアリングシャフト(第2ステアリングシャフト85)の回転方向に押し出される。これにより、グリース64が強制的にステアリングシャフト(第2ステアリングシャフト85)に供給される。また、ステアリングシャフト(第2ステアリングシャフト85)の回転方向が逆転すると、グリース64が押し出される方向が逆転する。その結果、グリース64は、隣接する補助リップ62の間で強制的に循環させられる。このため、グリース64がシールリップ(第1シールリップ6)とステアリングシャフト(第2ステアリングシャフト85)との間に供給されやすくなる。すなわち、シールリップ(第1シールリップ6)とステアリングシャフト(第2ステアリングシャフト85)との間における摩擦の発生が抑制される。したがって、ダストカバー1は、シールリップ(第1シールリップ6)及びステアリングシャフト(第2ステアリングシャフト85)の間で生じる振動を抑制することができる。
また、ダストカバー1においては、補助リップ62は、ステアリングシャフト(第2ステアリングシャフト85)の外周面に接する。これにより、ステアリングシャフト(第2ステアリングシャフト85)の回転が補助リップ62に伝わりやすくなる。このため、補助リップ62が変形しやすくなるので、グリース64が押し出されやすくなる。
また、ダストカバー1においては、補助リップ62は、軸方向に延びる板状の部材である。これにより、補助リップ62は、ステアリングシャフト(第2ステアリングシャフト85)が回転する方向に向かって容易に変形する。このため、補助リップ62の変形が生じやすくなるので、グリース64が押し出されやすくなる。
また、ダストカバー1においては、補助リップ62の肉厚T62(図6参照)は、主リップ61の肉厚T61(図6参照)よりも小さい。このため、補助リップ62の変形が生じやすくなるので、グリース64が押し出されやすくなる。
また、ダストカバー1においては、複数の補助リップ62は、周方向で等間隔に配置されている。これにより、グリース64の偏在が防止される。このため、グリース64が押し出されやすくなる。
また、ダストカバー1においては、補助リップ62は、一辺が内周面613に沿う三角形状である。これにより、エッジ部621のうち内周面613から遠い部分(エッジ部621のうちブッシュ5に近い部分)は変形しやすい。このため、グリース64が押し出されやすくなる。
(実施形態2)
図9は、実施形態2に係るダストカバーにおける、図4のA−A断面図に相当する断面図である。図9に示すように、実施形態2に係る第1シールリップ6Aは、主リップ61Aと、複数の補助リップ62Aと、を備える。なお、上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図9に示すように、主リップ61Aの一部において内径が一定である。回転中心軸Zを含む断面において、補助リップ62Aは、二辺が主リップ61Aの内周面613Aに沿う四角形状に形成されている。
このように、四角形状である補助リップ62Aを有する第1シールリップ6Aであっても、上述した三角形状である補助リップ62と同様の効果を得ることができる。すなわち、エッジ部621Aのうち内周面613Aから遠い部分(エッジ部621Aのうちブッシュ5に近い部分)は変形しやすい。このため、グリース64が押し出されやすくなる。
(実施形態3)
図10は、実施形態3に係るダストカバーにおける、図4のA−A断面図に相当する断面図である。図11は、実施形態3に係るダストカバーにおける、図5のB−B断面図に相当する断面図である。図10及び図11に示すように、実施形態3に係る第1シールリップ6Bは、主リップ61Bと、複数の補助リップ62Bを備える。なお、上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図10に示すように、主リップ61Bは、ブッシュ5の端面からエンジンルーム側に突出しており、エンジンルーム側に向かって薄くなっている。すなわち、主リップ61Bの肉厚は一定でなく、先端に向かって小さくなっている。補助リップ62Bは、軸方向に延びる板状部材である。図11に示すように、補助リップ62Bは、径方向の内側に向かって薄くなっている。すなわち、補助リップ62Bの肉厚は一定でなく、先端に向かって小さくなっている。補助リップ62Bの平均の肉厚は、主リップ61Bの平均の肉厚より小さい。具体的には、補助リップ62Bの最小肉厚T62a及び最大肉厚T62bの平均値が、主リップ61Bの最小肉厚T61a及び最大肉厚T61bの平均値より小さい。これにより、補助リップ62Bの変形が生じやすくなるので、グリース64が押し出されやすくなる。