JP6747924B2 - 摩擦伝動ベルト及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、VベルトやVリブドベルトなどの摩擦伝動面がV字状に傾斜して形成される摩擦伝動ベルト及びその製造方法に関し、詳しくはプーリから受ける耐側圧性を向上できる摩擦伝動ベルト及びその製造方法に関する。
動力を伝達する伝動ベルトとして、Vベルト、Vリブドベルト、平ベルトなどの摩擦伝動ベルトが知られている。Vベルトには、摩擦伝動面が露出したゴム層であるローエッジ(Raw-Edge)タイプ(ローエッジVベルト)と、摩擦伝動面(V字状側面)がカバー布で覆われたラップド(Wrapped)タイプ(ラップドVベルト)とがあり、摩擦伝動面の表面性状(ゴム層とカバー布との摩擦係数)の違いから用途に応じて使い分けられている。また、ローエッジタイプのベルトには、ベルトの下面(内周面)のみ、又はベルトの下面(内周面)及び上面(外周面)の両方にコグを設けて屈曲性を改善したローエッジコグドVベルトがある。
ローエッジVベルトやローエッジコグドVベルトは、主として、一般産業機械、農業機械の駆動、自動車エンジンでの補機駆動などに用いられる。また、他の用途として自動二輪車などのベルト式無段変速装置に用いられる変速ベルトと呼ばれるローエッジコグドVベルトがある。
これらの摩擦伝動ベルトのうち、摩擦伝動面(V字状側面)がV角度で形成されるVベルトやVリブドベルトは、駆動プーリと従動プーリとの間に張力をかけて巻き掛けられ、V字状側面がプーリのV溝と接触した状態で二軸間を回転走行する。その過程において、V字状側面とプーリV溝との間の推力により発生する摩擦に伴うエネルギーを利用して動力の伝達を行う。このときプーリから受ける耐側圧性がベルト耐久性を担う重要な因子の1つであるので、従来から、耐側圧性を向上させる処方として、圧縮ゴム層には短繊維などの配合により補強をしている。
例えば、特開平10−238596号公報(特許文献1)には、伸張及び圧縮ゴム層の少なくとも一方のゴム硬度を90〜96°、接着ゴム層のゴム硬度を83〜89°の範囲に設定し、伸張及び圧縮ゴム層にはアラミド短繊維をベルト幅方向に配向させた伝動用Vベルトが開示されている。この文献では、早期にクラックや各ゴム層及びコードのセパレーション(剥離)の発生を防止し、耐側圧性を向上させて高負荷伝動能力を向上させている。
しかし、この伝動用Vベルトは、伝動用Vベルトに要求される近年の高い要求を満足できない。すなわち、近年では、耐久性(耐側圧性)以外にも、省燃費性を向上することが要求され、そのために伝動ロスを低減して燃費性を改善することも必要であるが、伝動ベルトにおいて耐側圧性と省燃費性とは二律背反の関係にあるためである。例えば、Vベルトの圧縮ゴム層を短繊維、カーボンブラック、シリカなどの補強材を配合してゴム硬度を上げて耐側圧性を高めると、曲げ剛性が高くなることで、特に小プーリ径のレイアウトでは伝動ロスが生じることが知られている。
特に、自動二輪車などのベルト式無段変速装置に用いられる変速ベルトにおいては、耐側圧性と省燃費性とを両立させることが大きな課題となっており、例えば、特開2015−152101号公報(特許文献2)には、下コグ形成部及び上コグ形成部が、ゴム100重量部に対して40〜80重量部のフィラーを含み、かつ前記フィラーが30%以上のシリカを含むことにより、特定の動的粘弾性を有するゴム組成物で形成されたダブルコグドVベルトが開示されている。
しかし、このダブルコグドVベルトでも、耐側圧性と省燃費性とを高度に両立することはできなかった。
特開2010−196888号公報(特許文献3)には、小径のプーリでの使用にも耐え、繰り返し屈曲してもベルト表面の亀裂や切断などを抑制できる動力伝動用ベルトとして、少なくとも心線に近い上層とベルト内周面側の下層の2層からなり、下層に比べて上層の硬度を高く設定した圧縮ゴム層を有する動力伝動用ベルトが開示されている。この文献には、上層と下層とで、異なる種類のゴム素材を用いることが記載されている。
しかし、この文献には、耐側圧性と省燃費性との両立については記載されていない。さらに、この動力伝動用ベルトでも、上層と下層とが剥離し易く、耐側圧性と省燃費性とを高度に両立することはできなかった。
特開平9−177899号公報(特許文献4)には、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(ACSM)組成物を用いても、耐へたり性と耐クラック性とを両立できる伝動ベルトとして、ACSM組成物で形成された低tanδ層とACSM組成物で形成された高tanδ層とがベルト厚み方向に層状に重なった複合構造の圧縮ゴム層を備えた伝動ベルトが開示されている。この文献には、前記圧縮ゴム層が、硫黄含有量が0.5〜0.8重量%の低tanδ層と、低tanδ層よりも硫黄含有量が少ない高tanδ層との2層構造であり、低tanδ層が心線に近い側に配置された伝動ベルトも記載されている。さらに、2層構造の圧縮ゴム層について、低tanδ層と高tanδ層との厚み比は記載されておらず、図面では、上層の低tanδ層は、下層の高tanδ層に比べて、2倍以上の大きな厚みである。
しかし、この文献にも、耐側圧性と省燃費性との両立については記載されていない。なお、この文献では、添加剤の配合量を変えて、tanδの異なる複数の層を組み合わせているが、各層は、均質な層が形成されている。
特開平10−238596号公報(請求項1、段落[0008][0048]) 特開2015−152101号公報(特許請求の範囲、段落[0010]) 特開2010−196888号公報(請求項1、段落[0010][0028]) 特開平9−177899号公報(特許請求の範囲、段落[0043][0111]、実施例)
本発明の目的は、省燃費性を維持しながら、耐側圧性を向上できる摩擦伝動ベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、厚み方向において、ベルト外周側から内周側に向かって圧縮ゴム層の架橋密度を漸減させることにより、省燃費性を維持しながら、耐側圧性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の摩擦伝動ベルトは、少なくとも一部がプーリと接触可能な伝動面を有し、かつ厚み方向において、ベルト外周側から内周側に向かって架橋密度が漸減する圧縮ゴム層を含む。前記圧縮ゴム層の架橋密度分布は、ベルト外周側から内周側に向かって連続的又は段階的に減少する分布であってもよい。前記圧縮ゴム層は、多層構造、例えば、(a)ベルト外周側の外層とベルト内周側の内層との2層構造、又は、(b)ベルト外周側の外層と、ベルト内周側の内層と、前記外層及び前記内層の間に介在する中間層との3層構造であってもよい。前記圧縮ゴム層は、(a)前記外層と前記内層との厚み比が、外層/内層=1.5/1〜1/1.5程度の2層構造、又は(b)外層と内層又は中間層との厚み比が、いずれも外層/内層又は中間層=1.5/1〜1/1.5程度の3層構造などであってもよい。本発明の摩擦伝動ベルトは、圧縮ゴム層を厚み方向に6等分したとき、最も外周側に位置する第1領域と、最も内周側に位置する第6領域との架橋密度差は、10〜100モル/m程度である。また、圧縮ゴム層を厚み方向に3等分したとき、中央領域と他の領域との架橋密度差は、3〜50モル/m程度である。前記圧縮ゴム層は、ゴム成分、架橋剤及び補強材を含むゴム組成物の加硫物であってもよい。前記ゴム成分は、エチレン−α−オレフィンエラストマーを含んでいてもよい。前記架橋剤は加硫剤(特に硫黄系加硫剤)及び加硫促進剤(特に分子量500以下の加硫促進剤)を含んでいてもよい。前記補強材の割合は、ゴム成分100質量部に対して50質量部以上であってもよい。本発明の摩擦伝動ベルトは、ローエッジコグドVベルトであってもよい。
本発明には、複数の圧縮ゴム層用未加硫シート(単に、未加硫シート又は未加硫ゴムシートという場合がある。)を積層した積層シートを加硫温度よりも低い温度で予備加硫する予備加硫工程を含む前記摩擦伝動ベルトの製造方法であって、ベルト内周側から外周側に向かうにつれて、加硫シートの架橋密度が大きくなる順、すなわち、各未加硫シートを単独で加硫した加硫ゴムシート(単に、加硫シートという場合がある。)における架橋密度が大きくなる順で積層する製造方法を包含する。また、架橋剤の濃度が異なる複数の圧縮ゴム層用未加硫シートをベルト内周側から外周側に向かうにつれて、架橋剤の濃度が大きくなる順で積層する製造方法も含まれる。前記積層シートは、互いに隣接する未加硫シートの架橋剤の濃度が、ベルト内周側から外周側に向かうにつれて、少なくとも0.1質量%大きい積層体であってもよい。前記予備加硫工程は、加硫温度よりも30℃以上低い温度で予備加硫してもよい。
なお、本発明では、「架橋剤」は、架橋又は加硫に作用する全ての添加剤、すなわち加硫剤、共加硫剤(加硫助剤)、加硫促進剤、加硫遅延剤などを総称する意味で用いる。
本発明では、厚み方向において、ベルト外周側(接着ゴム層側)から内周側に向かって圧縮ゴム層の架橋密度が漸減しているため、省燃費性(伝達効率)を維持しながら、耐側圧性(耐久性)を向上できる。詳しくは、圧縮ゴム層を短繊維、カーボンブラック、シリカなどの補強材を配合して耐側圧性を高めても、ベルトの曲げ剛性を小さいまま維持して、伝達効率の低下(伝動ロス)を抑制できる。
図1は、本発明の摩擦伝動ベルトの一例を示す概略斜視図である。 図2は、図1の摩擦伝動ベルトをベルト長手方向に切断した概略断面図である。 図3は、伝達効率の測定方法を説明するための概略図である。 図4は、実施例での曲げ応力の測定方法を説明するための概略図である。 図5は、実施例での摩擦係数の測定方法を説明するための概略図である。 図6は、実施例での高負荷走行試験を説明するための概略図である。 図7は、実施例での高速走行試験を説明するための概略図である。 図8は、実施例での耐久走行試験を説明するための概略図である。 図9は、実施例での圧縮ゴム層の架橋密度を測定する領域を説明するための概略図である。 図10は、実施例1の圧縮ゴム層の架橋密度勾配を示すグラフである。
[摩擦伝動ベルトの構造]
本発明の摩擦伝動ベルトは、ベルト外周側から内周側に向かって架橋密度が漸減する圧縮ゴム層を含んでいればよいが、通常、ベルトの長手方向に芯体を埋設した接着ゴム層と、この接着ゴム層の一方の面に形成された圧縮ゴム層と、前記接着ゴム層の他方の面に形成された伸張ゴム層とを備えている。
本発明の摩擦伝動ベルトとしては、例えば、Vベルト[ラップドVベルト、ローエッジVベルト、ローエッジコグドVベルト(ローエッジベルトの内周側にコグが形成されたローエッジコグドVベルト、ローエッジベルトの内周側及び外周側の双方にコグが形成されたローエッジダブルコグドVベルト)]、Vリブドベルト、平ベルトなどが例示できる。これらの摩擦伝動ベルトのうち、プーリからの側圧を大きく受ける点から、摩擦伝動面がV字状に傾斜して(V角度で)形成されているVベルト又はVリブドベルトが好ましく、耐側圧性と省燃費性との高度な両立を要求されるベルト式無段変速装置に用いられる点から、ローエッジコグドVベルトが特に好ましい。
図1は、本発明の摩擦伝動ベルト(ローエッジコグドVベルト)の一例を示す概略斜視図であり、図2は、図1の摩擦伝動ベルトをベルト長手方向に切断した概略断面図である。
この例では、摩擦伝動ベルト1は、ベルト本体の内周面に、ベルトの長手方向に沿って所定の間隔をおいて形成された複数のコグ部1aを有しており、このコグ部1aの長手方向(図中のA方向)における断面形状は略半円状(湾曲状又は波形状)であり、長手方向に対して直交する方向(幅方向又は図中のB方向)における断面形状は台形状である。すなわち、各コグ部1aは、ベルト厚み方向において、コグ底部1bからA方向の断面において略半円状に突出している。摩擦伝動ベルト1は、積層構造を有しており、ベルト外周側から内周側(コグ部1aが形成された側)に向かって、補強布2、伸張ゴム層3、接着ゴム層4、圧縮ゴム層5、補強布6が順次積層されている。ベルト幅方向における断面形状は、ベルト外周側から内周側に向かってベルト幅が小さくなる台形状である。さらに、接着ゴム層4内には、芯体4aが埋設されており、前記コグ部1aは、コグ付き成形型により圧縮ゴム層5に形成されている。
[圧縮ゴム層]
本発明において、圧縮ゴム層がベルト外周側から内周側に向かって架橋密度が漸減すること(傾斜的に減少する勾配を有すること)により、耐側圧性と省燃費性とを両立できるメカニズムは、次のように推定できる。
すなわち、圧縮ゴム層の架橋密度は、ベルトの物理的特性(機械的強度)であるゴム硬度及びベルト幅方向の圧縮応力と密接な相関関係を有し、架橋密度が大きくなると、圧縮ゴム層の物理的特性(ゴム硬度やベルト幅方向の圧縮応力)も大きくなる。そのため、圧縮ゴム層の架橋密度に、ベルト外周側(接着ゴム層側)が高く、ベルト内周側に向かって減少する勾配を設けると、圧縮ゴム層の物理的特性(ゴム硬度やベルト幅方向の圧縮応力)もベルト外周側(接着ゴム層側)が高く、ベルト内周側に向かって減少する。また、摩擦伝動ベルトをプーリに巻き掛けて走行する際に、摩擦伝動ベルトの側面がプーリから受ける側圧は、芯体付近が最も大きく、ベルト内周側は相対的に小さい。そのため、耐側圧性には、芯体付近でのベルト幅方向の圧縮応力を大きくすることが有効である。その一方で、省燃費性の指標となる伝達効率(伝達ロス)に対しては、ベルトの曲げ剛性を大きくしすぎない(必要最小限に留める)ことが有効である。従って、本発明の摩擦伝動ベルトは、芯体付近での耐側圧性を確保できるうえに、ベルト内周側の圧縮応力が相対的に小さくベルトの曲げ剛性が大きくなりすぎず、伝達効率が低下しないため、省燃費性も確保できる。
圧縮ゴム層の架橋密度(網目密度又は網目鎖密度)は、ベルト外周側から内周側に向かって架橋密度が漸減すればよく、架橋密度分布が、ベルト外周側から内周側に向かって連続的又は段階的(特に連続的)に減少するのが好ましい。
このような架橋密度分布を有する圧縮ゴム層において、圧縮ゴム層を厚み方向に6等分したとき、最も外周側に位置する第1領域と、最も内周側に位置する第6領域との架橋密度差は、例えば10〜100モル/m、好ましくは20〜80モル/m、さらに好ましくは25〜60モル/m(特に30〜50モル/m)程度である。架橋密度差が小さすぎると、耐側圧性と省燃費性との両立が困難となる虞があり、大きすぎると、ベルトの機械的特性が低下する虞がある。
また、圧縮ゴム層を厚み方向に3等分したとき、中央領域の架橋密度は、例えば300〜400モル/m、好ましくは320〜390モル/m、さらに好ましくは340〜380モル/m(特に350〜370モル/m)程度である。この架橋密度が小さすぎると、耐久性が低下する虞があり、大きすぎると、耐屈曲性が低下する虞がある。
さらに、圧縮ゴム層を厚み方向に3等分したとき、中央領域と他の領域との架橋密度差は、例えば3〜50モル/m、好ましくは5〜30モル/m、さらに好ましくは10〜25モル/m(特に15〜20モル/m)程度である。架橋密度差が小さすぎると、耐側圧性と省燃費性との両立が困難となる虞があり、大きすぎると、ベルトの機械的特性が低下する虞がある。
なお、本発明では、圧縮ゴム層の架橋密度(網目鎖密度)は、膨潤法に基づいて、フローリー・レーナー(Flory-Rehner)の式に従って算出でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。さらに、本発明では、圧縮ゴム層の架橋密度は、摩擦伝動ベルトがコグ部を有するコグドVベルトである場合、コグ部(特に、コグ部の中央部を含む領域)の架橋密度として測定できる。
圧縮ゴム層は、このような架橋密度分布を有していれば、単層構造であってもよいが、生産性の点から、多層構造であってもよい。本発明では、多層構造であっても、後述する特定の製造方法により、架橋剤(加硫剤及び加硫促進剤)の拡散を利用して、圧縮ゴムを構成する各層の間を跨ぐように連続的な架橋密度(圧縮応力)勾配を設けられるため、圧縮ゴム層を構成する各層の界面への応力集中が少なくなり、層間にクラックが入り難くなる。なお、単層構造には、複数の未加硫ゴムシートを積層して得られた積層体が加硫により一体化し、層間の境界が不明瞭となった構造も含まれる。
多層構造は、例えば2〜10層程度の多層構造から選択できるが、生産性などの点から、通常、2〜5層程度であり、2〜3層構造が好ましく、2層構造が特に好ましい。架橋密度の勾配を形成し易い点からは、層構造は多いほど好ましいが、本発明では、2〜3層(特に2層)であっても、ベルトの製造方法を調整することにより、特定の架橋密度分布を形成できるため、原料(各未加硫ゴムシート)の調製が容易である。
生産性の点からは、圧縮ゴム層は2層構造であるのが好ましい。2層構造の圧縮ゴム層は、ベルト外周側の外層とベルト内周側の内層とで形成されており、両層の厚み比は、外層/内層=2/1〜1/2程度の範囲から選択できるが、前記架橋密度分布を調整し易い点から、両層は略同一の厚みが好ましく、例えば1.5/1〜1/1.5、好ましくは1.3/1〜1/1.3、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2(特に1.1/1〜1/1.1)程度である。
また、比較的高い生産性を保持しつつ、架橋密度の連続的な勾配をより形成し易い(又はベルトの伝達効率をより向上し易い)点からは、圧縮ゴム層は3層構造であるのが好ましい。3層構造の圧縮ゴム層は、ベルト外周側の外層と、ベルト内周側の内層と、前記外層及び内層の間に介在する中間層とで形成されている。各層の厚みは、2層構造と同様の理由から、略同一であるのが好ましい。そのため、外層と他の層(すなわち、内層又は中間層)との厚み比は、いずれも、外層/他の層(内層又は中間層)=2/1〜1/2程度の範囲から選択でき、例えば1.5/1〜1/1.5、好ましくは1.3/1〜1/1.3、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2(特に1.1/1〜1/1.1)程度である。また、中間層と内層との厚み比(中間層/内層)は、前記範囲と好ましい態様も含めて同様である。
なお、4層以上の多層構造を有する圧縮ゴム層でも、同様の理由から、各層の厚みは略同一が好ましい。
このような架橋密度を有する圧縮ゴム層は、ゴム成分、架橋剤及び補強材を含むゴム組成物の加硫物であってもよい。
(ゴム成分)
ゴム成分としては、公知のゴム成分及び/又はエラストマー、例えば、ジエン系ゴム[天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴム(水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマーを含む)など]、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが例示できる。これらのポリマー成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
これらのゴム成分のうち、加硫剤及び加硫促進剤が拡散し易い点から、エチレン−α−オレフィンエラストマー(エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDMなど)などのエチレン−α−オレフィン系ゴム)が好ましい。非極性であるエチレン−α−オレフィンエラストマーと、加硫剤及び加硫促進剤とは相溶性が低いため、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主成分とするゴム組成物中では、加硫剤及び加硫促進剤が動き易く、加硫剤濃度が大きいゴム組成物から加硫剤濃度が小さいゴム組成物へ拡散し易いと推定できる。
ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーを含む場合、ゴム成分中のエチレン−α−オレフィンエラストマーの割合は50質量%以上(特に80〜100質量%)程度であってもよく、100質量%(エチレン−α−オレフィンエラストマーのみ)が特に好ましい。
(架橋剤)
架橋剤には、前記ゴム成分を加硫するために使用される慣用の加硫剤、加硫助剤(又は共加硫剤co-agent)、加硫促進剤、加硫遅延剤などが含まれる。これらのうち、加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤が汎用される。
加硫剤としては、ゴム成分の種類に応じて慣用の成分が使用でき、例えば、硫黄系加硫剤[粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、塩化硫黄(一塩化硫黄、二塩化硫黄など)など]、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化亜鉛など)、有機過酸化物(ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイドなど)などが例示できる。これらの加硫剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーである場合、加硫剤は硫黄系加硫剤であってもよい。
加硫助剤としては、例えば、多官能(イソ)シアヌレート[例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)など]、ポリジエン(例えば、1,2−ポリブタジエンなど)、不飽和カルボン酸の金属塩[例えば、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウムなど]、オキシム類(例えば、キノンジオキシムなど)、グアニジン類(例えば、ジフェニルグアニジンなど)、多官能(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど]、ビスマレイミド類(脂肪族ビスマレイミド、例えば、N,N’−1,2−エチレンビスマレイミド、1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)シクロヘキサンなど;アレーンビスマレイミド又は芳香族ビスマレイミド、例えば、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼンなど)などが挙げられる。これらの加硫助剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの加硫助剤のうち、ビスマレイミド類(N,N’−m−フェニレンジマレイミドなどのアレーンビスマレイミド又は芳香族ビスマレイミド)などが汎用される。
加硫促進剤としては、例えば、チウラム系促進剤[例えば、テトラメチルチウラム・モノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラム・ジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラム・ジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラム・ジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラム・ジスルフィドなど]、チアゾ−ル系促進剤[例えば、2−メルカプトベンゾチアゾ−ル、2−メルカプトベンゾチアゾ−ルの亜鉛塩、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなど)など]、スルフェンアミド系促進剤[例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなど]、ビスマレイミド系促進剤(例えば、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−1,2−エチレンビスマレイミドなど)、グアニジン類(ジフェニルグアニジン、ジo−トリルグアニジンなど)、ウレア系又はチオウレア系促進剤(例えば、エチレンチオウレアなど)、ジチオカルバミン酸塩類、キサントゲン酸塩類などが挙げられる。これらの加硫促進剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの加硫促進剤のうち、TMTD、DPTT、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、CBSなどが汎用される。
加硫促進剤は、加硫前の圧縮ゴム層(圧縮ゴム層用未加硫シート)中での拡散性に優れる点から、低分子量の加硫促進剤が好ましく、分子量は、例えば500以下であってもよく、好ましくは100〜500、さらに好ましくは200〜400(特に250〜350)程度である。
これらのうち、加硫剤と加硫促進剤との組み合わせが好ましく、加硫剤の割合は、加硫促進剤100質量部に対して5質量部以上であってもよく、例えば5〜100質量部、好ましくは10〜50質量部、さらに好ましくは15〜40質量部(特に20〜30質量部)程度である。
架橋剤は、前述の架橋密度の分布に対応して圧縮ゴム層の厚み方向で不均一に分布しているが、架橋剤(特に加硫剤及び加硫促進剤)の割合は、圧縮ゴム層全体において、ゴム成分100質量部に対して、例えば1〜20質量部、好ましくは1.5〜10質量部、さらに好ましくは2〜5質量部(特に2.5〜4質量部)程度である。圧縮ゴム層中の架橋剤(特に加硫剤及び加硫促進剤)の割合(濃度)は、例えば0.5〜8質量%、好ましくは0.8〜5質量%、さらに好ましくは1〜3質量%(特に1.5〜2.5質量%)程度である。
(補強材)
補強材には、慣用の補強繊維及び充填剤などが含まれる。補強繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリアミド繊維(ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維、アラミド繊維など)、ポリエステル繊維[ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのC2−4アルキレンC6−14アリレート系繊維など]、ビニロン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などの合成繊維;綿、麻、羊毛などの天然繊維;炭素繊維などの無機繊維が例示できる。これらの繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの補強繊維のうち、アラミド繊維などのポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維などから選択された少なくとも一種が好ましく、アラミド繊維が特に好ましい。補強繊維はフィブリル化していてもよい。
補強繊維は、通常、短繊維の形態で圧縮ゴム層に含有させてもよく、短繊維の平均長さは、例えば0.1〜20mm、好ましくは0.5〜15mm、より好ましくは1〜10mmであり、1〜5mm(特に2〜4mm)程度であってもよい。補強繊維の平均繊度は、例えば0.3〜10dtex、好ましくは0.5〜8dtex、さらに好ましくは1〜5dtex(特に2〜4dtex)程度である。
充填剤としては、例えば、炭素質材料(カーボンブラック、グラファイトなど)、金属化合物又は合成セラミックス(ケイ酸カルシウムやケイ酸アルミニウムなどの金属ケイ酸塩、炭化ケイ素や炭化タングステンなどの金属炭化物、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの金属窒化物、炭酸マグネシウムや炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩、硫酸カルシウムや硫酸バリウムなどの金属硫酸塩など)、鉱物質材料(ゼオライト、ケイソウ土、焼成珪成土、活性白土、アルミナ、シリカ、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、クレーなど)などが挙げられる。これらの充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。充填剤の形状は、粒状、板状、不定形状などである。充填剤の個数平均一次粒径は、種類に応じて、10nm〜10μm程度の範囲から適宜選択できる。これらの充填剤のうち、カーボンブラックなどの炭素質材料、シリカなどの鉱物質材料などが汎用され、カーボンブラックが好ましい。
補強材の割合は、ゴム成分100質量部に対して40質量部以上(特に50質量部以上)であってもよく、例えば45〜100質量部、好ましくは50〜90質量部、さらに好ましくは55〜80質量部(特に60〜70質量部)程度である。本発明では、補強材の割合が多量でも、伝達ロスを低減できる。
補強繊維の割合は、ゴム成分100質量部に対して80質量部以下(例えば0〜80質量部)であってもよく、例えば60質量部以下(例えば1〜60質量部)、好ましくは50質量部以下(例えば5〜50質量部)、さらに好ましくは40質量部以下(例えば10〜40質量部)程度である。補強繊維の割合が多すぎると、伝達ロスを低減できない虞がある。
充填剤の割合は、ゴム成分100質量部に対して10質量部以上であってもよく、例えば20〜100質量部、好ましくは30〜90質量部、さらに好ましくは35〜80質量部(特に40〜70質量部)程度である。
(他の添加剤)
圧縮ゴム層を形成するゴム組成物は、さらに他の慣用の添加剤を含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、軟化剤(パラフィンオイル、ナフテン系オイルなどのオイル類など)、加工剤又は加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィンなど)、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤など)、着色剤、粘着付与剤、可塑剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。なお、金属酸化物は、ゴム成分の種類に応じて架橋剤や補強材として作用してもよいが、本発明では、他の添加剤に分類する。
他の添加剤の割合(合計割合)は、ゴム成分100質量部に対して100質量部以下であってもよく、例えば1〜100質量部、好ましくは5〜50質量部程度である。例えば、金属酸化物(酸化亜鉛など)の割合は、ゴム成分100質量部に対して、例えば1〜20質量部、好ましくは3〜10質量部、さらに好ましくは3〜8質量部程度である。軟化剤(ナフテン系オイルなどのオイル類)の割合は、ゴム成分100質量部に対して、例えば1〜30質量部、好ましくは3〜20質量部、さらに好ましくは5〜10質量部程度である。老化防止剤の割合は、ゴム成分100質量部に対して、例えば0.5〜15質量部、好ましくは1〜10質量部、さらに好ましくは2.5〜7.5質量部(特に3〜7質量部)程度である。
[伸張ゴム層]
伸張ゴム層は、圧縮ゴム層で例示されたゴム成分を含む加硫ゴム組成物で形成されていてもよく、圧縮ゴム層と同様に補強材が含まれていてもよい。さらに、伸張ゴム層は、圧縮ゴム層と同一の加硫ゴム組成物で形成された層であってもよい。
[接着ゴム層]
接着ゴム層を形成するための加硫ゴム組成物は、圧縮ゴム層の加硫ゴム組成物と同様に、ゴム成分(エチレン−α−オレフィンエラストマーなど)、架橋剤(硫黄などの硫黄系加硫剤、TMTD、DPTT、CBSなどの加硫促進剤など)、補強材(カーボンブラック、シリカなど)、軟化剤(ナフテン系オイルなどのオイル類)、老化防止剤などを含んでいてもよく、さらに接着性改善剤を含んでいてもよい。なお、このゴム組成物において、ゴム成分としては、前記圧縮ゴム層の加硫ゴム組成物のゴム成分と同系統又は同種のゴムを使用する場合が多い。また、架橋剤、補強材、軟化剤及び老化防止剤の割合は、それぞれ、前記圧縮ゴム層のゴム組成物と同様の範囲から選択できる。
[芯体]
芯体としては、特に限定されないが、通常、ベルト幅方向に所定間隔で配列した心線(撚りコード)を使用できる。心線は、ベルトの長手方向に延びて配設され、通常、ベルトの長手方向に平行に所定のピッチで並列的に延びて配設されている。心線は、少なくともその一部が接着ゴム層と接していればよく、接着ゴム層が心線を埋設する形態、接着ゴム層と伸張ゴム層との間に心線を埋設する形態、接着ゴム層と圧縮ゴム層との間に心線を埋設する形態のいずれの形態であってもよい。これらのうち、耐久性を向上できる点から、接着ゴム層が心線を埋設する形態が好ましい。
心線を構成する繊維としては、前記短繊維と同様の繊維が例示できる。前記繊維のうち、高モジュラスの点から、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレートなどのC2−4アルキレンアリレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)、アラミド繊維などの合成繊維、炭素繊維などの無機繊維などが汎用され、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート系繊維、ポリエチレンナフタレート系繊維)、ポリアミド繊維が好ましい。繊維はマルチフィラメント糸であってもよい。マルチフィラメント糸の繊度は、例えば、2000〜10000デニール(特に4000〜8000デニール)程度であってもよい。マルチフィラメント糸は、例えば、100〜5,000本であってもよく、好ましくは500〜4,000本、さらに好ましくは1,000〜3,000本程度のモノフィラメント糸を含んでいてもよい。
心線としては、通常、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚りなど)を使用できる。心線の平均線径(撚りコードの繊維径)は、例えば、0.5〜3mmであってもよく、好ましくは0.6〜2mm、さらに好ましくは0.7〜1.5mm程度であってもよい。
心線は、ゴム成分(例えば、接着ゴム層のゴム成分など)との接着性を改善するため、種々の処理液により接着処理(又は表面処理)されていてもよい。処理液としては、例えば、フェノール類とホルムアルデヒドとの初期縮合物(ノボラック又はレゾール型フェノール樹脂のプレポリマーなど)を含む処理液、ゴム成分(又はラテックス)を含む処理液、前記初期縮合物とゴム成分(ラテックス)とを含む処理液、シランカップリング剤、エポキシ化合物(エポキシ樹脂など)、イソシアネート化合物などの反応性化合物(接着性化合物)を含む処理液などが挙げられる。
心線は、前記処理液単独で接着処理されていてもよく、2種以上の処理液を組み合わせて接着処理されていてもよい。これらの処理液による接着処理のうち、心線は、前記初期縮合物とゴム成分(ラテックス)とを含む処理液で接着処理するのが好ましく、特に、少なくともレゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)液で接着処理するのが好ましい。RFL液による接着処理では、一般的に、心線をRFL液に浸漬後、加熱乾燥することにより表面に均一な接着層を形成できる。RFL液のラテックスとしては、例えば、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、ニトリルゴム(NBR)などのラテックスが挙げられる。
また、2種以上の処理液を組み合わせる方法として、具体的には、例えば、慣用の接着性成分[例えば、エポキシ化合物(エポキシ樹脂など)、イソシアネート化合物などの反応性化合物(接着性化合物)を含む処理液など]による前処理(プレディップ)の後、RFL液で処理する方法;RFL液による処理後に、前記ゴム成分(又はラテックス)を含む処理液などによるゴム糊処理(オーバーコーティング)し、さらにRFL液により処理する方法などが挙げられる。
[伝達効率]
前記圧縮ゴム層を備えた摩擦伝動ベルトを用いると、伝達効率を大きく向上できる。伝達効率とは、ベルトが駆動プーリからの回転トルクを従動プーリに伝える指標であり、この伝達効率が高いほどベルトの伝動ロスが小さく、省燃費性に優れることを意味する。図3に示す駆動プーリ(Dr.)12と従動プーリ(Dn.)13との二つのプーリにベルト11を掛架した二軸レイアウトにおいて、伝達効率は以下のようにして求めることができる。
駆動プーリの回転数をρ、プーリ半径をrとしたとき、駆動プーリの回転トルクTは、ρ×Te×rで表すことができる。Teは張り側張力(ベルトが駆動プーリに向かう側の張力)から緩み側張力(ベルトが従動プーリに向かう側の張力)を差し引いた有効張力である。同様に、従動プーリの回転数をρ、プーリ半径をrとしたとき、従動プーリの回転トルクTは、ρ×Te×rで示される。そして、伝達効率T/Tは、従動プーリの回転トルクTを駆動プーリの回転トルクTで除して算出され、次式で表すことができる。
/T=(ρ×Te×r)/(ρ×Te×r)=(ρ×r)/(ρ×r
なお、伝達効率の値は、伝動ロスがなければ1であり、伝動ロスがあればそのロス分だけ値が小さくなる。すなわち、1に近いほどベルトの伝動ロスが小さく、省燃費性に優れていることを表す。
[摩擦伝動ベルトの製造方法]
本発明の摩擦伝動ベルトは、圧縮ゴム層に特定の架橋密度分布を付与するための手段以外は、特に限定されず、各層の積層工程(ベルトスリーブの製造方法)に関しては、ベルトの種類に応じて、慣用の方法を利用できる。
例えば、コグドVべルトの場合、補強布(下布)と圧縮ゴム層用シート(未加硫ゴムシート)からなる積層体を、前記補強布を下にして歯部と溝部とを交互に配した平坦なコグ付き型に設置し、温度60〜100℃(特に70〜80℃)程度でプレス加圧することによってコグ部を型付けしたコグパッド(完全には加硫しておらず、半加硫状態にあるパッド)を作製した後、このコグパッドの両端をコグ山部の頂部から垂直に切断してもよい。さらに、円筒状の金型に歯部と溝部とを交互に配した内母型を被せ、この歯部と溝部に係合させてコグパッドを巻き付けてコグ山部の頂部でジョイントし、この巻き付けたコグパッドの上に第1の接着ゴム層用シート(下接着ゴム:未加硫ゴムシート)を積層した後、芯体を形成する心線(撚りコード)を螺旋状にスピニングし、この上に第2の接着ゴム層用シート(上接着ゴム:前記接着ゴム層用シートと同じ)、伸張ゴム層用シート(未加硫ゴムシート)、補強布(上布)を順次巻き付けて成形体を作製してもよい。その後、ジャケットを被せて金型を加硫缶に設置し、温度120〜200℃(特に150〜180℃)程度で加硫してベルトスリーブを調製した後、カッターなどを用いて、V状に切断加工してもよい。
圧縮ゴム層に特定の架橋密度分布を付与するための手段は、例えば、複数の圧縮ゴム層用未加硫シートを積層した積層シートを加硫温度よりも低い温度で予備加硫する予備加硫工程であってもよい。この予備加硫工程は、加硫工程の前工程として、未加硫状態の前記積層シートを予備的に加熱することにより、架橋密度分布を形成する方法である。詳しくは、ベルト内周側から外周側に向かうにつれて、加硫シートの架橋密度が大きくなる順で未加硫シートを積層する、すなわち、ベルト内周側から外周側に向かうにつれて、架橋密度の低い加硫ゴムシートを形成する前記未加硫シートに、架橋密度の高い加硫ゴムシートを形成する前記未加硫シートを順次に積層することにより、前記特定の架橋密度分布を容易に付与できる。具体的には、各未加硫シートを単独で加硫した加硫シートの架橋密度をそれぞれ測定して、ベルト内周側から外周側に向かうにつれて、前記架橋密度が高くなる順に積層すればよい。特に、架橋剤の濃度が異なる前記複数の圧縮ゴム層用未加硫シートをベルト外周側から内周側に向かうにつれて架橋剤の濃度が低下する順(又はベルト内周側から外周側に向かうにつれて架橋剤の濃度が上昇する順)で積層することにより、架橋剤(特に加硫剤及び加硫促進剤)の濃度が大きいゴム組成物(未加硫ゴムシート)から、架橋剤の濃度が小さいゴム組成物(未加硫ゴムシート)へ架橋剤が拡散し、ベルト外周側からベルト内周側へ架橋剤の濃度がより傾斜的に(又は連続的に)減少する濃度勾配が生じる。その結果、架橋密度及び物理的特性(ゴム硬度やベルト幅方向の圧縮応力)が、ベルト外周側からベルト内周側へ傾斜的に減少する勾配を有する圧縮ゴム層を形成できる。
前記複数の圧縮ゴム層用未加硫シートが積層した積層シートにおいて、各未加硫シートの加硫ゴムシートにおける架橋密度は、ベルト内周側の未加硫ゴムシートに比べて、ベルト外周側の未加硫ゴムシートの方が大きくなるように積層する必要がある。例えば、前記積層シートは、互いに隣接する未加硫シートの各加硫物における架橋密度が、ベルト内周側から外周側に向かうにつれて、例えば、少なくとも1モル/m(例えば、5〜200モル/m)程度大きい積層体であってもよく、例えば10〜150モル/m(例えば、15〜100モル/m)、好ましくは20〜90モル/m(例えば、25〜80モル/m程度)、さらに好ましくは30〜60モル/m(例えば、40〜50モル/m)程度大きい積層体であってもよい。
代表的な例としては、例えば、積層シートが圧縮ゴム層の外層を形成するための外層用未加硫シートと圧縮ゴム層の内層を形成するための内層用未加硫シートとの積層体である場合、前記外層用未加硫シートの加硫物における架橋密度は、前記内層用未加硫シートの加硫物における架橋密度よりも3モル/m以上(特に5〜100モル/m程度)大きければよく、例えば10〜80モル/m、好ましくは20〜60モル/m、さらに好ましくは30〜50モル/m(特に35〜45モル/m)程度大きくしてもよい。
また、積層シートが外層用未加硫シートと、圧縮ゴム層の中間層を形成するための中間層用未加硫シートと、内層用未加硫シートとの積層体である場合、隣接する2層間における内周側の層を形成する未加硫シートに対する外周側の層を形成する未加硫シートの加硫物における架橋密度[すなわち、前記中間層用未加硫シートに対する前記外層用未加硫シートの加硫物における架橋密度、及び前記内層用未加硫シートに対する前記中間層用未加硫シートの加硫物における架橋密度]は、1モル/m以上(特に5〜100モル/m程度)大きければよく、例えば10〜80モル/m、好ましくは20〜60モル/m、さらに好ましくは30〜50モル/m(特に35〜45モル/m)程度大きくしてもよい。なお、各未加硫ゴムシートの各加硫物における架橋密度は、後述する実施例に記載の方法(膨潤法)などにより測定できる。
各未加硫ゴムシート中の架橋剤の濃度は、ベルト外周側の未加硫ゴムシートの濃度を隣接するベルト内周側の未加硫ゴムシートの濃度よりも大きくするのが好ましい。例えば、前記積層シートは、互いに隣接する未加硫シートの架橋剤の濃度が、ベルト内周側から外周側に向かうにつれて、少なくとも0.05質量%(例えば、0.1質量%)程度大きい積層体であってもよく、例えば0.1〜3質量%、好ましくは0.3〜2質量%、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%(特に0.6〜1質量%)程度大きい積層体であってもよい。
代表的な例として、例えば、積層シートが圧縮ゴム層の外層を形成するための外層用未加硫シートと圧縮ゴム層の内層を形成するための内層用未加硫シートとの積層体である場合、前記外層用未加硫シートの架橋剤の濃度は、前記内層用未加硫シートの架橋剤の濃度よりも0.05質量%以上(特に0.1質量%以上)大きければよく、例えば0.1〜3質量%、好ましくは0.3〜2質量%、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%(特に0.6〜1質量%)程度大きくしてもよい。
また、積層シートが前記外層用未加硫シートと、圧縮ゴム層の中間層を形成するための中間層用未加硫シートと、前記内層用未加硫シートとの積層体である場合、隣接する2層間における内周側の層を形成する未加硫シートに対する外周側の層を形成する未加硫シートの架橋剤の濃度[すなわち、前記中間層用未加硫シートに対する前記外層用未加硫シートの架橋剤の濃度、及び前記内層用未加硫シートに対する前記中間層用未加硫シートの架橋剤の濃度]は、0.05質量%以上(特に0.1質量%以上)大きければよく、例えば0.1〜3質量%、好ましくは0.3〜2質量%、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%(特に0.6〜1質量%)程度大きくしてもよい。
予備加硫工程における加熱温度は、加硫温度よりも低い温度であればよく、例えば、加硫温度よりも30℃以上低い温度(例えば、加硫温度よりも30〜100℃程度低い温度)であってもよい。具体的な加熱温度は50℃以上であってもよく、例えば50〜160℃、好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは100〜140℃(特に110〜130℃)程度である。加熱時間は、温度に応じて選択できるが、例えば1〜60分、好ましくは3〜30分、さらに好ましくは5〜20分程度である。
摩擦伝動ベルトがコグドVベルトの場合、予備加硫工程は、コグ部を形成するためのプレス加圧工程とは独立した工程であってもよく、コグ部を形成するためのプレス加圧工程を兼ねてもよい。独立した工程の場合、予備加硫工程は、通常、ベルトの加硫工程の前工程として、加硫工程と連続して処理される。一方、プレス加圧工程を兼ねる場合は、プレス加圧工程において、通常のコグ部を形成するための加圧時間よりも長時間加圧して、コグ部の形成と同時に架橋剤の拡散を促進してもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下の例において、実施例に用いた原料、各物性における測定方法又は評価方法を以下に示す。なお、特にことわりのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
[原料]
EPDM:ダウ・ケミカル社製「NordelIP4640」
アラミド短繊維:帝人(株)製「トワロン」、モジュラス88cN、繊度2.2dtex、繊維長3mm
ナフテン系オイル:出光興産(株)製「NS−90」
カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラックAD−F」
加硫剤:硫黄
加硫促進剤1:チアゾール系促進剤(ジベンゾチアジル・ジスルフィド)、大内振興化学工業(株)製「ノクセラーDM」、分子量332.5
加硫促進剤2:チウラム系促進剤(テトラメチルチウラム・ジスルフィドTMTD)、大内振興化学工業(株)製「ノクセラーTT」、分子量240.44
加硫促進剤3:スルフェンアミド系促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドCBS)、大内振興化学工業(株)製「ノクセラーCZ−G」、分子量264.42
心線:1,000デニールのPET繊維を2×3の撚り構成で、上撚り係数3.0、下撚り係数3.0で諸撚りしたトータルデニール6,000のコードを接着処理した繊維。
[加硫ゴム物性の測定]
(1)硬度
圧縮ゴム層用シートを温度170℃、時間20分でプレス加硫し、加硫ゴムシート(長さ100mm、幅100mm、厚み2mm)を作製した。硬度はJIS K6253(2012)に準じ、加硫ゴムシートを3枚重ね合わせた積層物を試料とし、デュロメータA形硬さ試験機を用いて硬度を測定した。
(2)摩耗量
圧縮ゴム層用シートを温度170℃、時間20分でプレス加硫して作製した加硫ゴムシート(50mm×50mm×8mm厚)より、内径16.2±0.05mmの中空ドリルで切り抜いて、直径16.2±0.2mm、厚さ6〜8mmの円筒状の試料を作製した。JIS K6264(2005)に準じ、研磨布を巻きつけた回転円筒ドラム装置(DIN摩耗試験機)を用いて加硫ゴムの摩減量を測定した。
(3)圧縮応力
圧縮ゴム層用シートを温度170℃、時間20分でプレス加硫し、加硫ゴム成形体(長さ25mm、幅25mm、厚み12.5mm)を作製した。短繊維は圧縮面に対して垂直方向(厚み方向)に配向させた。この加硫ゴム成形体を2枚の金属製の圧縮板で上下に挟み込み(加硫成形体が圧縮板で押圧されていない挟み込み状態で、上側の圧縮板の位置を初期位置とする)、上側の圧縮板を10mm/分の速度で加硫ゴム成形体に押圧(押圧面25mm×25mm)して加硫ゴム成形体を20%歪ませ、この状態で1秒間保持した後、圧縮板を上方に初期位置まで戻した(予備圧縮)。この予備圧縮を3回繰り返した後、4回目の圧縮試験(条件は予備圧縮と同じ)で測定される応力−歪み曲線より、加硫ゴム成形体の厚み方向の歪が2%となったときの応力を圧縮応力として測定した。なお、測定データのバラツキを小さくするため予備圧縮を3回行なった。
(4)曲げ応力
圧縮ゴム層用シートを温度170℃、時間20分でプレス加硫し、加硫ゴム成形体(長さ60mm、幅25mm、厚み6.5mm)を作製した。短繊維は加硫ゴム成形体の幅と平行方向に配向させた。図4に示すように、この加硫ゴム成形体21を、20mmの間隔を空けて回転可能な一対のロール(6mmφ)22a,22b上に置いて支持し、加硫ゴム成形体の上面中央部において幅方向(短繊維の配向方向)に金属製の押さえ部材23を載せた。押さえ部材23の先端部は、10mmφの半円状の形状を有しており、その先端部で加硫ゴム成形体21をスムーズに押圧可能である。また、押圧時には加硫ゴム成形体21の圧縮変形に伴って、加硫ゴム成形体21の下面とロール22a,22bとの間に摩擦力が作用するが、ロール22a,22bを回転可能とすることにより、摩擦による影響を小さくしている。押さえ部材23の先端部が加硫ゴム成形体21の上面に接触し、かつ押圧していない状態を「0」とし、この状態から押さえ部材23を下方に100mm/分の速度で加硫ゴム成形体21の上面を押圧し、加硫ゴム成形体21の厚み方向の歪が10%となったときの応力を曲げ応力として測定した。
(5)架橋密度
圧縮ゴム層の架橋密度(網目鎖密度)は膨潤法により測定した。詳しくは、圧縮ゴム層用シートを温度170℃、時間20分でプレス加硫し、加硫ゴムシート(長さ100mm、幅100mm、厚み2mm)を作製した。得られた加硫ゴムシートをトルエン溶媒中、温度25℃で72時間膨潤させ、膨潤前後の試料体積を測定し、得られた値を下記のフローリー・レーナー(Flory-Rehner)の式に従い網目鎖密度を算出した。
ν=−{ln(1−Vr)+Vr+μVr2}×106/[Vs{Vr1/3−(2/f)Vr}]
(式中、ν:網目鎖密度(モル/m)、Vr:膨潤試料中のゴム体積分率、Vs:溶媒の分子容、μ:溶媒とゴムの相互作用係数、f:架橋の官能数であり、Vsとして106cm、μとして0.49、fとして3を採用した)。
[ベルト物性の測定]
(1)摩擦係数測定
ベルトの摩擦係数は、図5に示すように、切断したベルト31の一方の端部をロードセル32に固定し、他方の端部に3kgfの荷重33を載せ、プーリ34へのベルトの巻き付け角度を45°にしてベルト31をプーリ34に巻き付けた。そして、ロードセル32側のベルト31を30mm/秒の速度で15秒程度引張り、摩擦伝動面の平均摩擦係数を測定した。なお、測定に際して、プーリ34は回転しないように固定した。
(2)高負荷走行試験(伝達効率)
この走行試験では、ベルトが大きく曲げられた状態(小プーリに巻き付いた状態)で走行させたときのベルトの伝達効率を評価した。
高負荷走行試験は、図6に示すように、直径50mmの駆動(Dr.)プーリ42と、直径125mmの従動(Dn.)プーリ43とからなる2軸走行試験機を用いて行なった。各プーリ42,43にローエッジコグドVベルト41を掛架し、駆動プーリ42の回転数3000rpmで、従動プーリ43に3N・mの負荷を付与し、室温雰囲気下にてベルト41を走行させた。そして、走行させて直ちに従動プーリ43の回転数を検出器より読取り、前記計算式より伝達効率を求めた。表3では、比較例1の伝達効率を「1」とした場合に、各実施例及び比較例の伝達効率を換算した相対値で示しており、この値が1より大きければベルト41の伝達効率、すなわち省燃費性が高いと判断した。
(3)高速走行試験(伝達効率)
この走行試験では、ベルトがプーリ上をプーリ半径方向外側に摺動させた状態で走行させたときのベルトの伝達効率を評価した。特に、駆動プーリの回転数が大きくなると、ベルトに遠心力が強く作用する。また、駆動プーリの緩み側(図7参照)の位置ではベルト張力が低く作用しており、上記遠心力との複合作用により、この位置でベルトはプーリ半径方向外側に飛び出そうとする。この飛び出しがスムーズに行なわれない、すなわちベルトの摩擦伝動面とプーリとの間に摩擦力が強く作用すると、その摩擦力によりベルトの伝動ロスが生じ、伝達効率が低下することになる。
高速走行試験は、図7に示すように、直径95mmの駆動(Dr.)プーリ52と、直径85mmの従動(Dn.)プーリ53とからなる2軸走行試験機を用いて行なった。次に、各プーリ52,53にローエッジコグドVベルト51を掛架し、駆動プーリ52の回転数5000rpm、従動プーリ53に3N・mの負荷を付与し、室温雰囲気下にてベルト51を走行させた。そして、走行させて直ちに従動プーリ52の回転数を検出器より読取り、前記計算式より伝達効率を求めた。表3では、比較例1の伝達効率を「1」とした場合に、各実施例及び比較例の伝達効率を換算した相対値で示しており、この値が1より大きければ伝達効率(省燃費性)が高いと判断した。
(4)耐久走行試験(耐側圧性)
耐久走行試験は、図8に示すように、直径50mmの駆動(Dr.)プーリ62と、直径125mmの従動(Dn.)プーリ63とからなる2軸走行試験機を用いて行なった。各プーリ62,63にローエッジコグドVベルト61を掛架し、駆動プーリ62の回転数5000rpm、従動プーリ63に10N・mの負荷を付与し、雰囲気温度80℃にてベルト61を最大24時間走行させた。ベルト61が24時間走行すれば耐久性は問題ないと判断した。また、走行後の圧縮ゴム側面(プーリと接する面)を目視観察して亀裂の有無を調べた。
(5)圧縮ゴム層の架橋密度勾配
作製したベルトの圧縮ゴム層を、図9に示すように、コグ部の略中央部71で垂直方向にスライスし、さらにベルト厚み方向に6等分スライスして取り出して試験片を作製した。実施例のベルトの圧縮ゴム層の厚みは約6mmであるため、試験片の厚さは約1mmである。各試験片について、前述の架橋密度(膨潤法)を測定した。なお、圧縮ゴム層の架橋密度勾配は、実施例1のみ測定した。
実施例1〜6及び比較例1〜3
(ゴム層の形成)
表1のゴム組成物A〜D(圧縮ゴム層)、表1のゴム組成物A(伸張ゴム層)、表2のゴム組成物E(接着ゴム層)は、それぞれ、バンバリーミキサーなどの公知の方法を用いてゴム練りを行い、この練りゴムをカレンダーロールに通して圧延ゴムシート(圧縮ゴム層用シート、伸張ゴム層用シート、接着ゴム層用シート)を作製した。得られた圧縮ゴム層用シートについては、加硫ゴム物性を測定した結果も表1に示す。なお、表1において、加硫剤濃度は、ゴム組成物の総量に対する加硫剤及び加硫促進剤の合計量の割合である。
(ベルトの製造)
補強布と、加硫剤濃度の異なる2又は3種類のゴム組成物からなる圧縮ゴム層用シートの積層シート(ベルト外周側に配置するゴム組成物からなるシートを「圧縮ゴム層1」、ベルト内周側に配置するゴム組成物からなるシートを「圧縮ゴム層2」、前記圧縮ゴム層1及び2の間に配置するゴム組成物からなるシートを「圧縮ゴム層3」)との積層体を作製した。このとき、実施例1〜4及び比較例1〜2(前記積層シートが2層構造の例)では、圧縮ゴム層用シートの厚みは各3mmとし、実施例5〜6及び比較例3(前記積層シートが3層構造の例)では、圧縮ゴム層用シートの厚みは各2mmとし、いずれの実施例及び比較例においても前記積層シートの厚みが6mmとなるよう調製した。
得られた積層体を、補強布を下にして歯部と溝部とを交互に配した平坦なコグ付き型に設置し、75℃でプレス加圧することによってコグ部を型付けしたコグパッド(完全には加硫しておらず、半加硫状態にある)を作製した。次に、このコグパッドの両端をコグ山部の頂部から垂直に切断した。
円筒状の金型に歯部と溝部とを交互に配した内母型を被せ、この歯部と溝部に係合させてコグパッドを巻き付けてコグ山部の頂部でジョイントし、この巻き付けたコグパッドの上に接着ゴム層用シート(下接着ゴム:未加硫ゴム)を積層した後、心線を螺旋状にスピニングし、この上に接着ゴム層用シート(上接着ゴム:前記接着ゴム層用シートと同じ)、伸張ゴム層用シート(未加硫ゴム)、補強布(上布)を順次巻き付けて成形体を作製した。その後、ジャケットを被せて金型を加硫缶に設置し、温度120℃、時間10分で予備加硫した後、温度170℃、時間20分で加硫してベルトスリーブを得た。このスリーブをカッターでV状に切断し、図1に示す構造のベルト、すなわち、ベルト内周側にコグを有する変速ベルトであるローエッジコグドVベルト(サイズ:上幅22.0mm、厚み11.0mm、外周長800mm)を作製した。
実施例及び比較例で得られたベルトの評価結果を表3に示す。さらに、実施例1で得られたベルトについて、圧縮ゴム層の架橋密度勾配を測定した結果を表4及び図10に示す。
表3の結果から明らかなように、実施例1〜6の伝動ベルトは、比較例に比べると、いずれも耐久性試験で異常が見られず、伝達効率が高かった。この理由は、圧縮ゴム層のベルト外周側の架橋密度が高く(=圧縮応力が大きく)、ベルト内周側の架橋密度が低く(=圧縮応力が小さく)傾斜しているために、耐側圧性と伝達効率を両立できたと考えられる。特に、実施例5及び6では、圧縮ゴム層1及び2が同一のゴム組成物であり、かつ中間層である圧縮ゴム層3を含まない実施例2及び3と比較して、伝達効率が向上した。この理由は定かではないが、圧縮ゴム層が3層構造となることにより、2層構造の場合に比べて架橋密度の勾配を形成し易いことが影響していると推測される。
一方、比較例1は、圧縮ゴム層内部にクラックが発生した。圧縮ゴム層1及び2が同一のゴム組成物(配合B)で構成され、架橋密度勾配がないため、圧縮ゴム層1と圧縮ゴム層2との界面に応力が集中してクラックが発生したものと考えられる。
また、比較例2は、圧縮ゴム層のベルト外周側の架橋密度が低く(=圧縮応力が小さく)、ベルト内周側の架橋密度を高く(=圧縮応力を大きく)した例であるが、伝達効率が低く、圧縮ゴム層間でクラックが発生した。この理由は、側圧が大きい心線側の圧縮ゴム層の圧縮応力が小さいため、側圧による曲がり変形(ディッシング)が発生した影響で、伝達効率が低下したうえに、変形により物理的物性の異なる層の界面にクラックが発生したものと考えられる。
比較例3は、圧縮ゴム層が3層構造であるものの、圧縮ゴム層のベルト外周側の架橋密度が低く(=圧縮応力が小さく)、ベルト内周側の架橋密度が高い(=圧縮応力が大きい)例であるため、比較例2と同様に、伝達効率が低く、圧縮ゴム層間でクラックが発生した。
なお、表4及び図10から明らかなように、実施例1の圧縮ゴム層における架橋密度は、心線側(ベルト外周側)が最も大きく、コグ側(ベルト内周側)に向かって、連続的に小さくなる勾配を有することが確認できた。
本発明の摩擦伝動ベルトは、例えば、Vベルト(ラップドVベルト、ローエッジVベルト、ローエッジコグドVベルト)、Vリブドベルト、平ベルトなどに適用できる。特に、ベルト走行中に変速比が無段階で変わる変速機(無段変速装置)に使用されるVベルト(変速ベルト)、例えば、自動二輪車やATV(四輪バギー)、スノーモービルなどの無段変速装置に使用されるローエッジコグドVベルト、ローエッジダブルコグドVベルトに適用するのが好ましい。
1…摩擦伝動ベルト
2,6…補強布
3…伸張ゴム層
4…接着ゴム層
4a…芯体
5…圧縮ゴム層

Claims (16)

  1. 少なくとも一部がプーリと接触可能な伝動面を有し、かつ厚み方向において、ベルト外周側から内周側に向かって架橋密度が漸減する圧縮ゴム層を含む摩擦伝動ベルトであって、前記圧縮ゴム層が、架橋剤を含むゴム組成物の加硫物であり、前記架橋剤が、分子量500以下の加硫促進剤を含む摩擦伝動ベルト
  2. 圧縮ゴム層の架橋密度分布が、ベルト外周側から内周側に向かって連続的又は段階的に減少する請求項1記載の摩擦伝動ベルト。
  3. 圧縮ゴム層が多層構造である請求項1又は2記載の摩擦伝動ベルト。
  4. 圧縮ゴム層が、(a)ベルト外周側の外層とベルト内周側の内層との2層構造、又は、(b)ベルト外周側の外層と、ベルト内周側の内層と、前記外層及び前記内層の間に介在する中間層との3層構造である請求項1〜3のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  5. 圧縮ゴム層が、(a)外層と内層との厚み比が、外層/内層=1.5/1〜1/1.5の2層構造、又は(b)外層と内層又は中間層との厚み比が、いずれも、外層/内層又は中間層=1.5/1〜1/1.5の3層構造である請求項4記載の摩擦伝動ベルト。
  6. 圧縮ゴム層を厚み方向に6等分したとき、最も外周側に位置する第1領域と、最も内周側に位置する第6領域との架橋密度差が、10〜100モル/mである請求項1〜5のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  7. 圧縮ゴム層を厚み方向に3等分したとき、中央領域と他の領域との架橋密度差が、3〜50モル/mである請求項1〜6のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  8. 圧縮ゴム層が、ゴム成分、架橋剤及び補強材を含むゴム組成物の加硫物である請求項1〜7のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  9. ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーを含み、かつ架橋剤が加硫剤及び加硫促進剤を含む請求項8記載の摩擦伝動ベルト。
  10. 加硫剤が硫黄系加硫剤である請求項9記載の摩擦伝動ベルト。
  11. 補強材の割合が、ゴム成分100質量部に対して50質量部以上である請求項8〜10のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  12. ローエッジコグドVベルトである請求項1〜11のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  13. 複数の圧縮ゴム層用未加硫シートを積層した積層シートを加硫温度よりも低い温度で予備加硫する予備加硫工程を含む請求項1〜12のいずれかに記載の摩擦伝動ベルトの製造方法であって、ベルト内周側から外周側に向かうにつれて、加硫後の架橋密度が大きくなる順で未加硫シートを積層する製造方法。
  14. 架橋剤の濃度が異なる複数の圧縮ゴム層用未加硫シートをベルト内周側から外周側に向かうにつれて、架橋剤の濃度が大きくなる順で積層する請求項13記載の製造方法。
  15. 積層シートが、互いに隣接する未加硫シートの架橋剤の濃度が、ベルト内周側から外周側に向かうにつれて、少なくとも0.1質量%大きい積層体である請求項13又は14記載の製造方法。
  16. 加硫温度よりも30℃以上低い温度で予備加硫する請求項13〜15のいずれかに記載の製造方法。
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