JP7189381B2 - 伝動用vベルト - Google Patents

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本発明は、エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むゴム組成物の硬化物を含む伝動用Vベルトに関する。
摩擦伝動により動力を伝達するVベルトには、摩擦伝動面(V字状側面)が露出したゴム層であるローエッジ(Raw-EDGE)タイプ(ローエッジVベルト)と、摩擦伝動面(V字状側面)がカバー布で覆われたラップド(Wrapped)タイプ(ラップドVベルト)とがあり、摩擦伝動面の表面性状(ゴム層とカバー布との摩擦係数)の違いから用途に応じて使い分けられている。また、ローエッジタイプのベルトには、コグを設けないローエッジVベルトの他、ベルトの下面(内周面)のみにコグを設けて屈曲性を改善したローエッジコグドVベルトや、ベルトの下面(内周面)および上面(外周面)の両方にコグを設けて屈曲性を改善したローエッジコグドVベルト(ローエッジダブルコグドVベルト)がある。
これらのVベルトは自動車および産業機械等の幅広い分野で使用されている。その中でも、自動二輪車、スノーモービル、大型農業機械などに搭載されるベルト式変速装置に用いられるVベルトは、変速ベルトと呼ばれている。
Vベルトは、伝動容量の増大や装置の大型化・高馬力化などにより、高負荷で使用される。そのため、Vベルトは、座屈変形(ディッシング)を防ぐため、ベルト幅方向の剛性(耐側圧性)を高めることが求められる。
特に、変速ベルトは、プーリとの摺動における過酷な動きに耐え得る高度な耐側圧性が求められる。例えば、最大規模の農業機械の動力伝達機構(特に、ベルト式変速装置)に用いられる大型Vベルトのサイズは、アメリカ農業生物工学エンジニア協会(ASABE)の規格品の中で、HL~HQ(ISO3410:1989に記載の呼称)相当のベルトであって、ベルト幅(上幅)が44.5~76.2mm、ベルト厚みが19.8~30.5mmの規格品があり、また、例えば、ベルト厚みが36mmの規格外品もある。このような大型農業機械では、莫大な負荷を伝達するために、Vベルトに非常に高い張力をかける必要があり、それに伴いVベルトがプーリから受ける側圧も非常に高いものとなる。
さらに、変速ベルトは、始動時は低温である一方で駆動時はエンジンの発熱に晒されて高温となるため、低温から高温までの幅広い温度領域に耐え得るゴム組成物が求められる。また、変速ベルトには、ゴム組成物と心線や補強布などの繊維部材との剥離を抑えるための接着性の高さや、プーリへの巻き掛けと解放の繰り返しによるコグ谷への応力集中に耐え得る耐屈曲疲労性が求められる。さらに、プーリとの接触による摩耗にも耐え得る高度な耐摩耗性も求められる。これらの要求に応じるには、従来の大型Vベルトでは難易度が高い。
以上のように、伝動用Vベルトに対する様々な要求に対応するため、ポリマー成分としてクロロプレンゴムやエチレン-α-オレフィンエラストマーを含む種々のゴム組成物を使用した伝動用Vベルトが提案されている。
例えば、特開2012-241831号公報(特許文献1)には、圧縮ゴム層が、脂肪酸アマイドと短繊維とを含む伝動用ベルトが開示されている。また、ゴム成分としてはクロロプレンゴム、エチレン-α-オレフィンエラストマーなどが例示され、加硫剤または架橋剤としては、金属酸化物、有機過酸化物、硫黄系加硫剤などが例示されている。また、実施例では、クロロプレンゴムと硫黄とを含むゴム組成物を用いてローエッジコグドVベルトを作製している。そして、ゴム組成物の硬度が94°かつ短繊維直角方向の破断伸度が70%である実施例(実施例7)や、ゴム組成物の硬度が86~88°かつ短繊維直角方向の破断伸度が180~245%である実施例(実施例1~6)などが記載されている。
また、特開2009-52740号公報(特許文献2)には、圧縮ゴム層は、エチレン含量が40~70質量%のエチレン・α-オレフィンゴム100質量部に対して、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)短繊維を5~40質量部含む短繊維が5~50質量部配合されたゴム組成物の有機過酸化物系架橋物で構成され、圧縮ゴム層のベルト長手方向破断伸度が70%以上であることを特徴とするVベルトが開示されている。ベルト長手方向破断伸度が70%以上、更には200%以上であることが好ましく、このような物性を有することでベルトの亀裂が発生しにくくなり、より寿命の長いベルトとすることができると記載されている。また、ゴム組成物を架橋したものの硬度(JIS-A)が85~93の範囲であってもよく、JIS-A硬度を85以上とすることによって、PBO短繊維を配合することと相まってベルトの耐摩耗性を大きく向上させることができること、硬度(JIS-A)が93を超えると、硬くなりすぎてベルトの繰り返し屈曲で亀裂を発生しやすくなるので好ましくないことが記載されている。この文献では、架橋剤は有機過酸化物であることを必須としており、硫黄で架橋した例は比較例として記載されている。
また、特開2018-141554号公報(特許文献3)には、エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むゴム成分と、α,β-不飽和カルボン酸金属塩と、酸化マグネシウムと、有機過酸化物と、無機充填剤とを含むゴム組成物の硬化物を含む伝動ベルトであって、前記酸化マグネシウムの割合が、前記ゴム成分100質量部に対して2~20質量部であり、かつ前記α,β-不飽和カルボン酸金属塩100質量部に対して5質量部以上である伝動ベルトが開示されている。このような構成とすることで、耐寒性、耐熱性、接着性、耐屈曲疲労性、耐摩耗性を損なうことなく、伝動ベルト用ゴム組成物の硬化物の硬度およびモジュラスを高めることができると記載されている。また、ゴム組成物の硬化物のゴム硬度(JIS-A)は90~100度であってもよいことが記載されている。該文献においても、架橋剤は有機過酸化物であることを必須としており、硫黄での架橋は考慮されていない。
特開2012-241831号公報 特開2009-52740号公報 特開2018-141554号公報
特許文献1~3から明らかなように、従来、クロロプレンゴムでは硫黄による架橋が汎用され、エチレン-α-オレフィンエラストマーでは有機過酸化物による架橋が汎用されてきた。その理由は、主鎖に二重結合を有するクロロプレンゴムは硫黄による架橋が容易である上に、硫黄架橋による硬化物が優れた物性を示すことにある。これに対して、主鎖に二重結合を持たないエチレン-α-オレフィンエラストマーは硫黄による架橋が効果的に行われず、硬化物の物性が十分に向上しないことが挙げられる。エチレン-α-オレフィンエラストマーの硬化物の物性を高めるためには有機過酸化物が有効であるものの、有機過酸化物で架橋したエチレン-α-オレフィンエラストマーは脆くなりやすい傾向があり、伝動用Vベルトに適用した場合、亀裂が発生しやすくなる問題があり改善が求められていた。特に、特許文献3に開示される構成のように、α,β-不飽和カルボン酸金属塩と酸化マグネシウムにより硬度およびモジュラスを高めると、亀裂の発生が促進されるという二律背反の関係にあり、伝動用Vベルトの寿命を十分に向上することは困難であった。
従って、本発明の課題は、ポリマー成分としてエチレン-α-オレフィンエラストマーを含むゴム組成物の硬化物を含む伝動用Vベルトにおいて、耐側圧性、耐摩耗性、短繊維などの繊維部材との接着性を確保しながら、耐屈曲疲労性をも高めて亀裂の発生を抑制し、ベルト寿命を向上することにある。
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むポリマー成分(A)と硫黄系架橋剤を含む架橋剤(B)と短繊維(C)とを組み合わせ、かつ前記短繊維(C)をベルト幅方向に配向させたゴム組成物の硬化物のゴム硬度および破断伸びを特定の範囲に調整することにより、耐側圧性、耐摩耗性、短繊維などの繊維部材との接着性を確保しながら、耐屈曲疲労性も高めて亀裂の発生を抑制し、ベルト寿命を向上できる伝動用Vベルトを提供できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の伝動用Vベルトは、第1のゴム組成物の硬化物を含む伝動用Vベルトであって、前記第1のゴム組成物が、エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むポリマー成分(A)、硫黄系架橋剤を含む架橋剤(B)および短繊維(C)を含み、前記短繊維(C)がベルト幅方向に配向しており、前記硬化物のゴム硬度(JIS-A)が91度以上であり、かつ前記硬化物のベルト長手方向における破断伸びが100%以上である。前記伝動用Vベルトにおいて、前記ゴム組成物から前記短繊維(C)を除いたゴム組成物の硬化物のマトリクスゴム硬度(JIS-A)は83度以上であってもよい。前記第1のゴム組成物は、架橋促進剤(D)をさらに含んでいてもよい。前記架橋促進剤(D)は、硫黄含有架橋促進剤を含んでいてもよい。前記硫黄含有架橋促進剤は、酸素および窒素含有複素環を有する硫黄含有架橋促進剤を含んでいてもよい。前記第1のゴム組成物は、共架橋剤(E)をさらに含んでいてもよい。前記共架橋剤(E)は、ビスマレイミド化合物を含んでいてもよい。前記第1のゴム組成物は、接着性改善剤(F)をさらに含んでいてもよい。前記硫黄系架橋剤の割合は、前記ポリマー成分(A)100質量部に対して1.2質量部以上であってもよい。前記第1のゴム組成物は、軟化剤(G)をさらに含んでいてもよい。前記軟化剤(G)の割合は、前記ポリマー成分(A)100質量部に対して0.1~10質量部であってもよい。前記伝動用Vベルトは、前記第1のゴム組成物の硬化物で形成された圧縮ゴム層および/または伸張ゴム層を備えていてもよい。前記伝動用Vベルトは、第2のゴム組成物の硬化物で形成された接着ゴム層をさらに備えていてもよく、前記第2のゴム組成物は、エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むポリマー成分(a)および硫黄系架橋剤を含む架橋剤(b)を含でいてもよい。前記伝動用Vベルトは、少なくとも内周面側にコグを有するローエッジコグドVベルトであってもよい。前記伝動用Vベルトは、変速ベルトであってもよい。前記伝動用Vベルトのベルト全体の平均厚みは19.8~36mmであってもよい。前記伝動用Vベルトは、逆曲げを含むレイアウトで使用されるローエッジタイプVベルトであってもよい。
本発明の伝動用Vベルトは、エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むポリマー成分(A)と硫黄系架橋剤を含む架橋剤(B)と短繊維(C)とを組み合わせ、かつ前記短繊維(C)をベルト幅方向に配向させたゴム組成物の硬化物の硬度および破断伸びが特定の範囲に調整されている。そのため、耐側圧性、耐摩耗性、短繊維などの繊維部材との接着性を確保しながら、耐屈曲疲労性も高めて亀裂の発生を抑制し、ベルト寿命を向上できる。特に、本発明の伝動用Vベルトは、耐屈曲疲労性に優れるため、伝動用Vベルトの背面側を内側にして屈曲させる、いわゆる「逆曲げ」を含むようなレイアウトで使用した場合であっても、亀裂の発生を効果的に防止できる。さらに、厚みが大きく、高い馬力が要求される大型農業機械の変速ベルトでは、高度な耐側圧性と耐屈曲疲労性とが必要であるが、本発明の伝動用Vベルトは、高い耐久性を発揮して、ベルト寿命を向上できる。そのため、本発明の伝動用Vベルトは、変速ベルトに利用するのが好適であり、大型農業機械の変速ベルトとして利用するのが最適である。
図1は、本発明の伝動用Vベルト(ローエッジコグドVベルト)の一例を示す概略部分断面斜視図である。 図2は、図1の伝動用Vベルトをベルト長手方向に切断した概略断面図である。 図3は、実施例で得られた架橋ゴム成形体の8%曲げ応力の測定方法を説明するための概略斜視図である。 図4は、実施例で作製されたダブルコグドVベルトの概略斜視図である。 図5は、実施例で得られた伝動用Vベルトの2軸耐久走行試験のレイアウトを示す概略図である。 図6は、実施例で得られた伝動用Vベルトの逆曲げ耐久走行試験のレイアウトを示す概略図である。 図7は、実施例で得られた伝動用Vベルトの逆曲げ亀裂試験の測定方法を説明するための概略図である。
[ゴム組成物]
本発明の伝動用Vベルトは、エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むポリマー成分(A)と硫黄系架橋剤を含む架橋剤(B)と短繊維(C)とを含むゴム組成物(第1のゴム組成物)の硬化物を含む。
(A)ポリマー成分
ポリマー成分(A)は、耐寒性、耐熱性、耐候性に優れる点から、エチレン-α-オレフィンエラストマー(第1のエチレン-α-オレフィンエラストマー)を含む。
エチレン-α-オレフィンエラストマーは、構成単位として、エチレン単位、α-オレフィン単位を含んでいればよく、ジエン単位をさらに含んでいてもよい。そのため、エチレン-α-オレフィンエラストマーには、エチレン-α-オレフィン共重合体ゴム、エチレン-α-オレフィン-ジエン三元共重合体ゴムなどが含まれる。
α-オレフィン単位を形成するためのα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、オクテンなどの鎖状α-C3-12オレフィンなどが挙げられる。これらのα-オレフィンのうち、プロピレンなどのα-C3-4オレフィン(特にプロピレン)が好ましい。
ジエン単位を形成するためのジエンモノマーとしては、通常、非共役ジエン系単量体が利用される。非共役ジエン系単量体としては、例えば、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどが例示できる。これらのジエンモノマーのうち、エチリデンノルボルネン、1,4-ヘキサジエン(特に、エチリデンノルボルネン)が好ましい。
代表的なエチレン-α-オレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレン-α-オレフィンゴム[エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-ブテンゴム(EBM)、エチレン-オクテンゴム(EOM)など]、エチレン-α-オレフィン-ジエンゴム[エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)]などが例示できる。
これらのエチレン-α-オレフィンエラストマーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、耐寒性、耐熱性、耐候性に優れる点から、エチレン-α-C3-4オレフィン-ジエン三元共重合体ゴムなどのエチレン-α-オレフィン-ジエン三元共重合体ゴムが好ましく、EPDMが特に好ましい。そのため、EPDMの割合は、エチレン-α-オレフィンエラストマー全体に対して50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましく90質量%以上(特に95質量%以上)であり、100質量%(EPDMのみ)であってもよい。
エチレン-α-オレフィンエラストマーにおいて、エチレンとα-オレフィンとの割合(質量比)は、前者/後者=40/60~90/10、好ましくは45/55~85/15(例えば50/50~80/20)、さらに好ましくは52/48~70/30である。特に、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体において、エチレンとプロピレンとの割合(質量比)は、前者/後者=35/65~90/10、好ましくは40/60~80/20、さらに好ましくは45/55~70/30、最も好ましくは50/50~60/40であってもよい。
エチレン-α-オレフィンエラストマー(特に、EPDMなどのエチレン-α-オレフィン-ジエン三元共重合体ゴム)のジエン含量は15質量%以下(例えば0.1~15質量%)であってもよく、好ましくは10質量%以下(例えば0.3~10質量%)、さらに好ましくは5質量%以下(例えば0.5~5質量%)、より好ましくは4質量%以下(例えば1~4質量%)、最も好ましくは3質量%以下(例えば1~3質量%)である。ジエン含量が多すぎると、高度な耐熱性が担保できない虞がある。
なお、本願において、ジエン含量は、エチレン-α-オレフィンエラストマーを構成する全単位中のジエンモノマー単位の質量割合を意味し、慣用の方法により測定できるが、モノマーに基づく割合であってもよい。
ジエン単位を含むエチレン-α-オレフィンエラストマーのヨウ素価は、例えば3~40、好ましくは5~30、さらに好ましくは10~20である。ヨウ素価が小さすぎると、ゴム組成物の架橋が不十分になって摩耗や粘着が発生し易く、逆にヨウ素価が大きすぎると、ゴム組成物のスコーチが短くなって扱い難くなると共に耐熱性が低下する傾向がある。
なお、本願において、エチレン-α-オレフィンエラストマーのヨウ素価は、慣用の方法で測定でき、例えば、赤外分光法で測定できる。
未架橋のエチレン-α-オレフィンエラストマーのムーニー粘度[ML(1+4)125℃]は80以下であってもよく、例えば10~80、好ましくは20~70、さらに好ましくは30~50、最も好ましくは35~45である。ムーニー粘度が高すぎると、ゴム組成物の流動性が低下して、混練りにおける加工性が低下する虞がある。
なお、本願において、ムーニー粘度は、JIS K 6300-1(2013)に準じた方法で測定でき、試験条件は、L形ロータを使用し、試験温度125℃、予熱1分、ロータ作動時間4分である。
ポリマー成分(A)中のエチレン-α-オレフィンエラストマーの割合は50質量%以上であればよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%(エチレン-α-オレフィンエラストマーのみ)である。ポリマー成分中のエチレン-α-オレフィンエラストマーの割合が少なすぎると、耐熱性および耐寒性が低下する虞がある。
ポリマー成分(A)は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、エチレン-α-オレフィンエラストマーに加えて、他のゴム成分、例えば、ジエン系ゴム[例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム);水素化ニトリルゴム(水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマーを含む)などの前記ジエン系ゴムの水添物など]、オレフィン系ゴム(例えば、ポリオクテニレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴムなど)、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどを含んでいてもよい。
他のゴム成分の割合は、ポリマー成分(A)中50質量%以下であってもよく、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
(B)架橋剤(加硫剤)
架橋剤(B)は、硫黄系架橋剤(第1の硫黄系架橋剤)を含む。従来の周知技術では、エチレン-α-オレフィンエラストマーの架橋剤としては有機過酸化物が用いられていたが、本発明では、硫黄系架橋剤を用いてエチレン-α-オレフィンエラストマーを架橋することによって硬化物の耐屈曲疲労性(耐亀裂性)を向上できる。
硫黄系架橋剤としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、塩化硫黄(一塩化硫黄、二塩化硫黄など)などが挙げられる。これらの硫黄系架橋剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄が好ましく、粉末硫黄が特に好ましい。
硫黄系架橋剤の割合は、ポリマー成分(A)100質量部に対して、例えば1~10質量部程度の範囲から選択でき、1.2質量部以上が好ましく、例えば1.2~5質量部、好ましくは1.3~3質量部、さらに好ましくは1.5~2.5質量部、より好ましくは1.6~2.3質量部、最も好ましくは1.8~2.2質量部である。硫黄系架橋剤の割合が少なすぎると、ゴム硬度、耐側圧性、耐摩耗性が低下する虞があり、多すぎると、耐屈曲疲労性が低下する虞がある上に、ブルーム(表面への析出)が発生する虞もある。
架橋剤(B)は、他の架橋剤(または加硫剤)として有機過酸化物をさらに含んでいてもよい。有機過酸化物としては、通常、ゴム、樹脂の架橋に使用されている有機過酸化物、例えば、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド(例えば、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、1,1-ジ-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシ-イソプロピル)ベンゼン、ジ-t-ブチルパーオキサイドなど)などが挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。さらに、有機過酸化物は、熱分解による1分間の半減期を得る分解温度が150~250℃(例えば175~225℃)程度の過酸化物が好ましい。
有機過酸化物の割合は、硫黄系架橋剤100質量部に対して100質量部以下であってもよく、好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。有機過酸化物の割合が多すぎると、硬化物の耐屈曲疲労性が低下する虞がある。架橋剤(B)は、有機過酸化物を実質的に含まないのが特に好ましく、有機過酸化物を含まないのが最も好ましい。
架橋剤(B)中の硫黄系架橋剤の割合は50質量%以上であってもよく、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%である。硫黄系架橋剤の割合が少なすぎると、硬化物の耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
架橋剤(B)の割合は、ポリマー成分(A)100質量部に対して、例えば1~10質量部程度の範囲から選択でき、例えば1.2~10質量部、好ましくは1.3~8質量部、さらに好ましくは1.5~5質量部、より好ましくは1.6~3質量部、最も好ましくは1.8~2.5質量部である。
(C)短繊維
短繊維(C)としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリアミド繊維(例えば、ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維などの脂肪族ポリアミド繊維;アラミド繊維など)、ポリアルキレンアリレート系繊維[例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのポリC2-4アルキレンC6-14アリレート系繊維など]、ビニロン繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などの合成繊維;綿、麻、羊毛などの天然繊維;炭素繊維などの無機繊維が汎用される。
これらの短繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの短繊維のうち、合成繊維(例えば、ポリアミド繊維、ポリアルキレンアリレート系繊維など)が汎用され、ポリアミド繊維が好ましく、剛直で高い強度、モジュラスを有し、表面で突出し易い点から、少なくともアラミド繊維を含む短繊維がさらに好ましく、諸特性のバランスに優れる点から、アラミド繊維と脂肪族ポリアミド繊維との組み合わせがより好ましい。アラミド繊維は、例えば、商品名「コーネックス」、「ノーメックス」、「ケブラー」、「テクノーラ」、「トワロン」などとして市販されている。
短繊維がアラミド繊維と脂肪族ポリアミド繊維との組み合わせである場合、脂肪族ポリアミド繊維の割合は、アラミド繊維100質量部に対して100質量部以下であってもよく、例えば1~100質量部、好ましくは5~80質量部、さらに好ましくは10~70質量部、より好ましくは30~60質量部である。脂肪族ポリアミド繊維の割合が多すぎると、硬化物の剛性が低下する虞がある。
短繊維(C)の平均繊度は、例えば0.1~50dtex、好ましくは1~10dtex、さらに好ましくは1.5~5dtex、より好ましくは2~3dtexである。平均繊度が大きすぎると、ゴム組成物の硬化物において、機械的特性が低下する虞があり、小さすぎると、均一に分散させるのが困難となる虞がある。
短繊維(C)の平均長さは、例えば1~20mm、好ましくは1.2~15mm(例えば1.5~10mm)、さらに好ましくは2~5mm、より好ましくは2.5~4mmである。短繊維の平均長さが短すぎると、短繊維の配向方向(列理方向)の力学特性(例えばモジュラスなど)を十分に高めることができない虞があり、逆に長すぎると、ゴム組成物中の短繊維の分散性が低下し、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
ゴム組成物中の短繊維の分散性や接着性の観点から、少なくとも短繊維は接着処理(または表面処理)することが好ましい。なお、全ての短繊維が接着処理されている必要はなく、接着処理した短繊維と、接着処理されていない短繊維(未処理短繊維)とが混在しまたは併用されていてもよい。
短繊維(C)の接着処理では、種々の接着処理、例えば、フェノール類とホルマリンとの初期縮合物(ノボラックまたはレゾール型フェノール樹脂のプレポリマーなど)を含む処理液、ゴム成分(またはラテックス)を含む処理液、前記初期縮合物とゴム成分(ラテックス)とを含む処理液、シランカップリング剤、エポキシ化合物(エポキシ樹脂など)、イソシアネート化合物などの反応性化合物(接着性化合物)を含む処理液などで処理することができる。好ましい接着処理では、短繊維は、前記初期縮合物とゴム成分(ラテックス)とを含む処理液、特に少なくともレゾルシン-ホルマリン-ラテックス(RFL)液で処理する。このような処理液は組み合わせて使用してもよく、例えば、短繊維を、慣用の接着性成分、例えば、エポキシ化合物(エポキシ樹脂など)、イソシアネート化合物などの反応性化合物(接着性化合物)で前処理した後、RFL液で処理してもよい。
短繊維(C)の割合は、ポリマー成分(A)100質量部に対して、例えば5~100質量部、好ましくは10~50質量部、さらに好ましくは20~40質量部、より好ましくは25~35質量部である。短繊維の割合が少なすぎると、ゴム組成物の硬化物の機械的特性が低下する虞があり、逆に多すぎると、均一に分散させるのが困難となり、耐屈曲疲労性などが低下する虞がある。
本発明では、短繊維(C)はベルト幅方向に配向しており、短繊維(C)の列理方向がベルト幅方向であることによって、前記ポリマー成分(A)の硬度および剛性を向上でき、ベルトの耐側圧性を向上できる。
なお、本願において、「列理方向」は、短繊維の長手方向のみならず、長手方向±5°の範囲の方向であってもよい。そのため、「列理方向」とは「短繊維の長手方向に略平行な方向」ということもでき、「列理方向がベルト幅方向である」も「列理方向がベルト幅方向に略平行である」ということもできる。
(D)架橋促進剤
ゴム組成物は、架橋促進剤(D)をさらに含んでいてもよい。また、硫黄系架橋剤との組み合わせにおいて架橋の促進効果が大きい点から、架橋促進剤(D)が硫黄含有架橋促進剤(第1の硫黄含有架橋促進剤)を含むことが好ましい。
硫黄含有架橋促進剤としては、例えば、チウラム系促進剤[例えば、テトラメチルチウラム・モノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラム・ジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラム・ジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラム・ジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)など]、スルフェンアミド系促進剤[例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)など]、チオモルホリン系促進剤[例えば、4,4’-ジチオジモルホリン(DTDM)、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなど]、チアゾ-ル系促進剤[例えば、2-メルカプトベンゾチアゾ-ル(MBT)、MBTの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)など]、チオウレア系促進剤[例えば、エチレンチオウレア、トリメチルチオ尿素(TMU)、ジエチルチオ尿素(EDE)など]、ジチオカルバミン酸系促進剤[例えば、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(EZ)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(BZ)など]、キサントゲン酸塩系促進剤(イソプロピルキサントゲン酸亜鉛など)など)などが挙げられる。
これらの硫黄含有架橋促進剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの硫黄系架橋促進剤のうち、スコーチの発生を抑制しつつ、硬化物の硬度を向上できる点から、オキサゾール、フラザン、モルホリンなどの酸素および窒素含有複素環を有する硫黄含有架橋促進剤(特に、チオモルホリン系促進剤)を含む硫黄含有架橋促進剤が好ましい。
酸素および窒素含有複素環を有する硫黄含有架橋促進剤を含む硫黄含有架橋促進剤は、酸素および窒素含有複素環を有する硫黄含有架橋促進剤(特に、チオモルホリン系促進剤)と、他の硫黄含有架橋促進剤(特に、チウラム系促進剤および/またはスルフェンアミド系促進剤)との組み合わせであってもよく、両者の質量比は、前者/後者=99/1~10/90、好ましくは95/5~20/80、さらに好ましくは90/10~30/70、より好ましくは80/20~50/50、最も好ましくは70/30~60/40である。
架橋促進剤(D)は、硫黄含有架橋促進剤に加えて、硫黄非含有架橋促進剤をさらに含んでいてもよい。
硫黄非含有架橋促進剤としては、例えば、グアニジン系促進剤[例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン(DOTG)など]、アルデヒド-アミン系またはアルデヒド-アンモニア系促進剤[例えばヘキサンメチレンテトラミンなど]などが挙げられる。
硫黄非含有架橋促進剤の割合は、硫黄含有架橋促進剤100質量部に対して100質量部以下であってもよく、好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。硫黄非含有架橋促進剤の割合が多すぎると、スコーチ抑制効果が低下する虞がある。
架橋促進剤(D)中の硫黄含有架橋促進剤の割合は50質量%以上であってもよく、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%である。硫黄含有架橋促進剤の割合が少なすぎると、スコーチ抑制効果が低下する虞がある。
架橋促進剤(D)の割合は、ポリマー成分(A)100質量部に対して、例えば0.1~10質量部程度の範囲から選択でき、例えば0.5~8質量部、好ましくは1~7質量部、さらに好ましくは1.5~5質量部、より好ましくは2~4質量部、最も好ましくは2.5~3.5質量部である。
酸素および窒素含有複素環を有する硫黄含有架橋促進剤の割合は、ポリマー成分(A)100質量部に対して、例えば0.1~5質量部、好ましくは0.3~4質量部、さらに好ましくは0.5~3質量部、より好ましくは1~2.5質量部、最も好ましくは1.5~2質量部である。
(E)共架橋剤(架橋助剤)
ゴム組成物は、共架橋剤(E)をさらに含んでいてもよい。また、耐側圧性および耐摩耗性を向上できる点から、共架橋剤(E)がビスマレイミド化合物を含むことが好ましい。
ビスマレイミド化合物としては、例えば、脂肪族ビスマレイミド(例えば、N,N’-1,2-エチレンジマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)シクロヘキサンなど)、芳香族ビスマレイミド{例えば、N,N’-m-フェニレンジマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレジマレイミド、4,4’-ジフェニルメタンジマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ジフェニルエーテルジマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンジマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼンなど)}などが挙げられる。
これらのビスマレイミド化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、耐熱性に優れる点から、N,N’-m-フェニレンジマレイミドなどの芳香族ビスマレイミド(アレーンビスマレイミド)が好ましい。
共架橋剤(E)は、ビスマレイミド化合物に加えて、他の共架橋剤をさらに含んでいてもよい。
他の共架橋剤としては、例えば、多官能(イソ)シアヌレート[例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)など]、ポリジエン(例えば、1,2-ポリブタジエンなど)、α,β-不飽和カルボン酸の金属塩[例えば、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウムなど]、オキシム類(例えば、キノンジオキシムなど)、グアニジン類(例えば、ジフェニルグアニジンなど)、多官能(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど]などが挙げられる。
他の共架橋剤の割合は、ビスマレイミド化合物100質量部に対して100質量部以下であってもよく、好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。他の共架橋剤の割合が多すぎると、耐側圧性および耐摩耗性の向上効果が低下する虞がある。共架橋剤(E)は、耐屈曲疲労性を向上できる点から、他の共架橋剤の中でも、(メタ)アクリル酸亜鉛などのα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を実質的に含まないのが特に好ましく、α,β-不飽和カルボン酸の金属塩を含まないのが最も好ましい。
共架橋剤(E)中のビスマレイミド化合物の割合は50質量%以上であってもよく、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%である。ビスマレイミド化合物の割合が少なすぎると、耐側圧性および耐摩耗性の向上効果が低下する虞がある。
共架橋剤(E)の割合は、ポリマー成分(A)100質量部に対して、例えば0.1~10質量部程度の範囲から選択でき、例えば0.3~8質量部、好ましくは0.5~5質量部、さらに好ましくは0.8~4質量部、より好ましくは1~3質量部、最も好ましくは1.5~2.5質量部である。共架橋剤(E)の割合が少なすぎると、耐摩耗性が低下する虞があり、多すぎると、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
(F)接着性改善剤
ゴム組成物は、前記ポリマー成分(A)と繊維部材(前記短繊維(C)、後述する芯体、補強布など)との接着性を向上できる点から、接着性改善剤(F)をさらに含んでもよい。
接着性改善剤(F)としては、例えば、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂(レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物)、アミノ樹脂[窒素含有環状化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサアルコキシメチルメラミン(ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミンなど)などのメラミン樹脂、メチロール尿素などの尿素樹脂、メチロールベンゾグアナミン樹脂などのベンゾグアナミン樹脂など]、これらの共縮合物(レゾルシン-メラミン-ホルムアルデヒド共縮合物など)などが挙げられる。レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、アミノ樹脂および前記共縮合物は、レゾルシンおよび/またはメラミンなどの窒素含有環状化合物とホルムアルデヒドとの初期縮合物(プレポリマー)であってもよい。
これらの接着性改善剤(F)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂が好ましく、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂が特に好ましい。
接着性改善剤(F)の割合は、ポリマー成分(A)100質量部に対して、例えば0.1~10質量部程度の範囲から選択でき、例えば0.3~8質量部、好ましくは0.5~5質量部、さらに好ましくは0.8~4質量部、より好ましくは1~3質量部、最も好ましくは1.5~2.5質量部である。
(G)軟化剤(オイル類)
ゴム組成物は、耐屈曲疲労性を向上できる点から、オイル類(油成分)としての軟化剤(G)をさらに含んでもよい。軟化剤(G)は、いわゆる可塑剤であってもよい。
軟化剤(G)としては、例えば、鉱物油系軟化剤{例えば、石油系軟化剤[パラフィン系オイル、脂環族系オイル(ナフテン系オイル)、芳香族系オイルなど]、コールタール系軟化剤[コールタール、クマロン-インデン樹脂など]など}、植物油系軟化剤{例えば、脂肪油系軟化剤[ステアリン酸、ステアリン酸金属塩などの脂肪酸またはその金属塩;ステアリン酸エステルなどの脂肪酸エステル;ステアリン酸アマイドなどの脂肪酸アマイド;脂肪油など];松樹由来の軟化剤[パインタール、ロジン、サブ(ファクチス)など]など}、合成軟化剤{例えば、合成樹脂軟化剤[炭化水素系合成油(低分子量パラフィン、低分子量ワックス、フェノール・アルデヒド樹脂、液状エチレン-α-オレフィン共重合体など)、液状ゴム(液状ポリブテン、液状ポリブタジエン、液状イソプレンゴムなど)など]、合成可塑剤(ジオクチルフタレートなどのフタル酸ジエステル、ポリエステル系可塑剤、ジオクチルセバケートなどのC6-18アルカンジカルボン酸エステルなど)など}などが挙げられる。
これらの軟化剤(G)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、パラフィン系オイルなどの石油系軟化剤、ステアリン酸などのC8-24脂肪酸類(その金属塩、エステル、アマイドを含む)が好ましく、石油系軟化剤とC8-24脂肪酸類との組み合わせが特に好ましい。
軟化剤(G)が石油系軟化剤とC8-24脂肪酸類との組み合わせである場合、C8-24脂肪酸類の割合は、石油系軟化剤100質量部に対して、例えば1~100質量部、好ましくは3~80質量部、さらに好ましくは5~50質量部、より好ましくは10~30質量部である。
軟化剤(G)の割合は、耐側圧性および耐摩耗性を向上できる点から、ポリマー成分(A)100質量部に対して10質量部以下(例えば0.1~10質量部、特に5質量部以下)であってもよく、例えば0~8質量部、好ましくは0.1~6質量部、さらに好ましくは0.3~5質量部、より好ましくは0.5~4質量部、最も好ましくは1~3質量部である。
(H)無機充填剤(フィラー)
ゴム組成物は、無機充填剤(H)をさらに含んでいてもよい。無機充填剤(H)としては、例えば、炭素質材料(カーボンブラック、グラファイトなど)、金属化合物または合成セラミックス(酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物;ケイ酸カルシウムやケイ酸アルミニウムなどの金属ケイ酸塩;炭化ケイ素や炭化タングステンなどの金属炭化物;窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの金属窒化物;炭酸マグネシウムや炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩;硫酸カルシウムや硫酸バリウムなどの金属硫酸塩など)、鉱物質材料(ゼオライト、ケイソウ土、焼成珪藻土、活性白土、アルミナ、シリカ、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、クレイなど)などが挙げられる。これらの無機充填剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらの無機充填剤のうち、カーボンブラック(第1のカーボンブラック)などの炭素質材料、酸化マグネシウムや酸化亜鉛などの金属酸化物(第1の金属酸化物)、シリカ(第1のシリカ)などの鉱物質材料が好ましく、ゴム組成物の硬化物において、硬度、モジュラス及び耐摩耗性を向上できる点から、カーボンブラックを少なくとも含むことが特に好ましい。
カーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、HMFなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、補強効果と分散性のバランスがよく、耐摩耗性を向上できる点から、HAFが好ましい。
カーボンブラックの平均粒径は、例えば5~200nm程度の範囲から選択でき、例えば10~150nm、好ましくは15~100nm、さらに好ましくは20~80nm(特に30~50nm)程度である。カーボンブラックの平均粒径が小さすぎると、均一な分散が困難となる虞があり、大きすぎると、硬度、モジュラス及び耐摩耗性が低下する虞がある。
シリカには、乾式シリカ、湿式シリカ、表面処理したシリカなどが含まれる。また、シリカは、製法での分類によって、例えば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ゲル法シリカ(シリカゲル)などにも分類できる。これらのシリカは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、表面シラノール基が多く、ゴムとの化学的結合力が強い点から、含水珪酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。
シリカの平均粒径は、例えば1~1000nm、好ましくは3~300nm、さらに好ましくは5~100nm、より好ましくは10~50nmである。シリカの粒径が大きすぎると、ゴムの機械的特性が低下する虞があり、小さすぎると、均一に分散するのが困難となる虞がある。
また、シリカは、非多孔質または多孔質のいずれであってもよいが、BET法による窒素吸着比表面積は、例えば50~400m/g、好ましくは70~350m/g、さらに好ましくは100~300m/g、より好ましくは150~250m/gである。比表面積が大きすぎると、均一に分散するのが困難となる虞があり、比表面積が小さすぎると、ゴムの機械的特性が低下する虞がある。
無機充填剤(H)の合計割合は、前記ポリマー成分(A)100質量部に対して10~150質量部程度の範囲から選択でき、例えば40~100質量部、好ましくは50~90質量部、さらに好ましくは70~80質量部である。無機充填剤(H)の割合が少なすぎると、ゴム組成物の硬化物において、硬度、モジュラスおよび耐摩耗性が低下する虞があり、逆に多すぎると、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
無機充填剤(H)がカーボンブラックと金属酸化物とを含む場合、金属酸化物の割合は、カーボンブラック100質量部に対して、例えば1~100質量部、好ましくは3~50質量部、さらに好ましくは5~30質量部、最も好ましくは10~20質量部である。
(I)他の成分
ゴム組成物は、他の成分(I)をさらに含んでいてもよい。他の成分(I)としては、ゴムに配合される慣用の添加剤、例えば、架橋遅延剤、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤など)、着色剤、粘着付与剤、滑剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、老化防止剤(第1の老化防止剤)などが汎用される。
他の成分(I)の合計割合は、前記ポリマー成分(A)100質量部に対して、例えば0.1~15質量部、好ましくは0.3~10質量部、さらに好ましくは0.5~7質量部である。老化防止剤の割合は、前記ポリマー成分(A)100質量部に対して、例えば0.1~5質量部、好ましくは0.2~3質量部、さらに好ましくは0.3~1質量部である。
(J)ゴム組成物の硬化物の特性
前記ゴム組成物の硬化物は、ゴム硬度およびモジュラスが大きいにも拘わらず、伝動用Vベルトに必要な破断伸びも有している。すなわち、前記硬化物は、トレードオフの関係にあるゴム硬度およびモジュラスの向上と、耐屈曲疲労性とを両立できる。例えば、特許文献1では、硬度が高い例は破断伸びが小さく、破断伸びが大きい例は硬度が低くなっており、これらの物性を両立できていない。これに対して、本発明では、これらの物性を両立することで、耐側圧性、耐摩耗性、耐屈曲疲労性を同時に高めることができ、伝動用Vベルトの耐久性を向上できる。
具体的には、前記ゴム組成物の硬化物[短繊維(C)を含む硬化物における短繊維入りゴム硬度]のゴム硬度(JIS-A)は91度以上であり、例えば91~98度、好ましくは91.5~97度、さらに好ましくは92~96度、より好ましくは92.5~95度、最も好ましくは93~94度である。短繊維入りゴム硬度が低すぎると、耐側圧性および耐摩耗性が低下する。
前記ゴム組成物の硬化物は、短繊維(C)を除いたゴム組成物[短繊維(C)を含まないゴム組成物]の硬化物のゴム硬度(マトリクスゴム硬度)も高い。マトリクスゴム硬度(JIS-A)は83度以上であってよく、例えば83~95度、好ましく83.5~93度、さらに好ましくは84~90度、より好ましくは85~89度、最も好ましくは86~88度である。マトリクスゴム硬度が低すぎると、耐側圧性および耐摩耗性が低下する虞がある。
短繊維入りゴム硬度と、マトリクスゴム硬度との差は10度以下であってもよく、好ましくは9.5度以下、さらに好ましくは9度以下、より好ましくは8度以下、最も好ましくは7度以下である。前記差が大きすぎると、ベルトの耐摩耗性が低下する虞がある。
なお、本願において、ゴム硬度(JIS-A)は、温度170℃、圧力2MPaで20分間プレス架橋した硬化物について、JIS K 6253(2012)に準拠して測定され、詳細には、後述の実施例に記載の方法で測定される。
前記ゴム組成物の硬化物[短繊維(C)を含む硬化物]のベルト長手方向における破断伸びは100%以上であり、例えば100~200%、好ましくは101~180%、さらに好ましくは102~160%、より好ましくは103~150%、最も好ましくは104~130%である。破断伸びが小さすぎると、耐屈曲疲労性が低下する。
なお、本願において、破断伸びは、JIS K 6251(2017)に準拠して測定され、詳細には、後述の実施例に記載の方法で測定される。
前記ゴム組成物の硬化物[短繊維(C)を含む硬化物]は、耐側圧性にも優れ、8%曲げ応力が高い。8%曲げ応力は、5MPa以上であってもよく、例えば5~30MPa、好ましくは5.5~20MPa、さらに好ましくは6~15MPa、より好ましくは6.5~10MPa、最も好ましくは7~9MPaである。
なお、本願において、8%曲げ応力は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
[伝動用Vベルト]
本発明の伝動用Vベルトは、ラップドVベルト、ローエッジタイプVベルトのいずれであってもよいが、耐側圧性を確保しつつ、耐屈曲疲労性を向上できる点から、ローエッジタイプVベルトが好ましい。
ローエッジタイプVベルトには、ローエッジVベルト、ローエッジコグドVベルトが含まれる。さらに、ローエッジコグドVベルトは、ローエッジVベルトの内周側のみにコグが形成されたローエッジコグドVベルトと、ローエッジVベルトの内周側および外周側の双方にコグが形成されたローエッジダブルコグドVベルトとに大別できる。これらのうち、耐側圧性と耐屈曲疲労性とを高度なレベルで両立することを要求される点から、ローエッジコグドVベルトおよびローエッジダブルコグドVベルトが好ましく、より過酷な状況で利用され、高度なレベルを要求される点から、ローエッジダブルコグドVベルトが特に好ましい。コグドVベルトは、圧縮ゴム層の側面がプーリと接するVベルトであり、ベルト走行中に変速比が無段階で変わる変速機に使用される変速ベルトが特に好ましい。また、逆曲げを含むレイアウトで使用されるローエッジタイプVベルトであることも好ましい。
図1は、本発明のローエッジコグドVベルトの一例を示す概略部分断面斜視図であり、図2は、図1のローエッジコグドVベルトをベルト長手方向に切断した概略断面図である。
この例では、ローエッジコグドVベルト1は、ベルト本体の内周面に、ベルトの長手方向(図中のA方向)に沿ってコグ山1aとコグ谷1bとが交互に並んで形成されたコグ部を有しており、このコグ山1aの長手方向における断面形状は略半円状(湾曲状または波形状)であり、長手方向に対して直交する方向(幅方向または図中のB方向)における断面形状は台形状である。すなわち、各コグ山1aは、ベルト厚み方向において、コグ谷1bからA方向の断面において略半円状に突出している。ローエッジコグドVベルト1は、積層構造を有しており、ベルト外周側から内周側(コグ部が形成された側)に向かって、第1の補強布2、伸張ゴム層3、接着ゴム層4、圧縮ゴム層5、第2の補強布6が順次積層されている。ベルト幅方向における断面形状は、ベルト外周側から内周側に向かってベルト幅が小さくなる台形状である。さらに、接着ゴム層4内には、芯体4aが埋設されており、前記コグ部は、コグ付き成形型により圧縮ゴム層5に形成されている。
コグ部の高さやピッチは、慣用のコグドVベルトと同様である。圧縮ゴム層では、コグ部の高さ(コグ谷を基準としたコグ山の高さ)は、圧縮ゴム層全体の厚みに対して50~95%(特に60~80%)程度であり、コグ部のピッチ(隣接するコグ部の中央部同士の距離)は、コグ部の高さに対して50~250%(特に80~200%)程度である。伸張ゴム層にコグ部を形成する場合も同様である。
本発明のローエッジタイプVベルトのベルト全体の厚み(平均厚み)は、8mm以上であってもよく、例えば8~50mm、好ましくは9~45mm(特に10~40mm)、さらに好ましくは10~36mm(特に11~32mm)である。これら厚み範囲は、用途に応じて選択してもよく、自動二輪車やスノーモービルなどに使用されるローエッジタイプVベルトでは、ベルト全体の厚みは、例えば8~18mm、好ましくは10~14mm、さらに好ましくは11~13mmである。また、大型農業機械に使用されるローエッジタイプVベルト(特に、変速ベルト)では、ベルト全体の厚みは18mm以上であってもよく、例えば18~40mm、好ましくは19~38mm、さらに好ましくは19.8~36mm、より好ましくは19.8~30.5mmである。本発明のローエッジタイプVベルトは、耐側圧性と耐屈曲疲労性とを両立できるため、18mm以上の大きい厚みを有するローエッジタイプVベルトに対して特に好適である。厚みが薄すぎると、耐側圧性が低下する虞があり、厚すぎると、屈曲性が低下して伝動効率が低下するとともに、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
なお、本願において、圧縮ゴム層および/または伸張ゴム層がコグ部を有する場合、ベルト全体の厚みは、コグ部の頂部における厚み(ベルトの最大厚み)を意味する。
本発明のローエッジタイプVベルトでは、圧縮ゴム層および/または伸張ゴム層が前記ゴム組成物の硬化物で形成されているのが好ましく、少なくとも圧縮ゴム層が前記ゴム組成物の硬化物で形成されているのがさらに好ましく、圧縮ゴム層および伸張ゴム層の双方が前記ゴム組成物の硬化物で形成されているのがより好ましい。
(接着ゴム層)
本発明のローエッジタイプVベルトは、接着ゴム層を含んでいなくてもよいが、芯体と圧縮ゴム層、芯体と伸張ゴム層(または伸張ゴム層本体)の接着力を高めて、芯体と前記層との剥離を抑制できる点から、接着ゴム層を含むのが好ましい。接着ゴム層は、エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むポリマー成分(a)および硫黄系架橋剤を含む架橋剤(b)を含むゴム組成物(第2のゴム組成物)で形成されていてもよい。
(a)ポリマー成分
エチレン-α-オレフィンエラストマー(第2のエチレン-α-オレフィンエラストマー)は、好ましい態様(ジエン含量以外の態様)も含めて、前記ポリマー成分(A)の項で例示されたエチレン-α-オレフィンエラストマーから選択できる。
第2のエチレン-α-オレフィンエラストマー(特に、EPDMなどのエチレン-α-オレフィン-ジエン三元共重合体ゴム)のジエン含量は15質量%以下(例えば0.5~15質量%)であってもよく、好ましくは10質量%以下(例えば1~10質量%)、さらに好ましくは8質量%以下(例えば3~8質量%)、より好ましくは7質量%以下(例えば3.5~7質量%)、最も好ましくは5質量%以下(例えば4~5質量%)である。ジエン含量が多すぎると、高度な耐熱性が担保できない虞がある。
ポリマー成分(a)も、第2のエチレン-α-オレフィンエラストマーに加えて、他のゴム成分を含んでいてもよい。他のゴム成分およびその割合[ポリマー成分(B)中の割合]は、前記ポリマー成分(A)の項で例示された他のゴム成分およびその割合から選択できる。
(b)架橋剤
硫黄系架橋剤(第2の硫黄系架橋剤)は、好ましい態様も含めて、前記架橋剤(B)の項で例示された硫黄系架橋剤から選択できる。
第2の硫黄系架橋剤の割合は、ポリマー成分(a)100質量部に対して、例えば0.1~5質量部、好ましくは0.3~3質量部、さらに好ましくは0.5~1.5質量部、より好ましくは0.6~1.3質量部、最も好ましくは0.8~1.2質量部である。硫黄系架橋剤の割合が少なすぎると、ゴム硬度、耐側圧性が低下する虞があり、多すぎると、硫黄系架橋剤が未架橋ゴムシートの表面にブルームしやすくなるために、汚染が懸念されるとともに、接着性が低下する虞がある。
架橋剤(b)も、第2の硫黄系架橋剤に加えて、有機過酸化物を含んでいてもよい。有機過酸化物およびその割合は、前記架橋剤(B)の項で例示された有機過酸化物およびその割合から選択できる。
架橋剤(b)中の第2の硫黄系架橋剤の割合は50質量%以上であってもよく、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%である。
架橋剤(b)の割合は、ポリマー成分(a)100質量部に対して、例えば0.1~5質量部、好ましくは0.3~3質量部、さらに好ましくは0.5~1.5質量部、より好ましくは0.6~1.3質量部、最も好ましくは0.8~1.2質量部である。
(c)短繊維
第2のゴム組成物は、短繊維(c)をさらに含んでいてもよい。短繊維(c)は、好ましい態様(割合以外の態様)も含めて、前記短繊維(C)の項で例示された短繊維から選択できる。
短繊維(c)の割合は、ポリマー成分(a)100質量部に対して、例えば100質量部以下、好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。第2のゴム組成物は、短繊維(c)を実質的に含まないのが好ましく、短繊維(c)を含まないのがより好ましい。
(d)架橋促進剤
第2のゴム組成物は、架橋促進剤(d)をさらに含んでいてもよい。架橋促進剤(d)は、好ましい態様(割合以外の態様)も含めて、前記架橋促進剤(D)の項で例示された架橋促進剤から選択できる。
架橋促進剤(d)が酸素および窒素含有複素環を有する硫黄含有架橋促進剤(特に、チオモルホリン系促進剤)と、他の硫黄含有架橋促進剤(特に、チウラム系促進剤および/またはスルフェンアミド系促進剤)との組み合わせである場合、両者の質量比は、前者/後者=1/99~90/10、好ましくは5/95~70/30、さらに好ましくは10/90~50/50、より好ましくは20/80~30/70である。
架橋促進剤(d)に含まれる硫黄含有促進剤(第2の硫黄含有促進剤)の割合[架橋促進剤(d)中の割合]は、好ましい態様も含めて第1の硫黄含有促進剤の割合から選択できる。
架橋促進剤(d)の割合は、ポリマー成分(a)100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.3~7質量部、さらに好ましくは0.5~5質量部、より好ましくは1~3質量部、最も好ましくは1.5~2.5質量部である。
(e)共架橋剤
第2のゴム組成物は、共架橋剤(e)をさらに含んでいてもよい。共架橋剤(e)は、好ましい態様(割合以外の態様)も含めて、前記共架橋剤(E)の項で例示された共架橋剤から選択できる。
共架橋剤(e)の割合は、ポリマー成分(a)100質量部に対して、例えば100質量部以下、好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。第2のゴム組成物は、共架橋剤(e)を実質的に含まないのが好ましく、共架橋剤(e)を含まないのがより好ましい。
(f)接着性改善剤
第2のゴム組成物は、接着性改善剤(f)をさらに含んでいてもよい。接着性改善剤(f)は、前記接着性改善剤(F)の項で例示された接着性改善剤から選択できる。
前記接着性改善剤のうち、接着性改善剤(f)としては、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂が好ましく、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂とメラミン樹脂との組み合わせが特に好ましい。
接着性改善剤(f)がレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂とメラミン樹脂との組み合わせである場合、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂の割合は、メラミン樹脂100質量部に対して10~1000質量部程度の範囲から選択でき、例えば20~300質量部、好ましくは30~100質量部、さらに好ましくは50~80質量部である。
接着性改善剤(f)の割合は、ポリマー成分(a)100質量部に対して、例えば0.1~30質量部程度の範囲から選択でき、例えば0.5~20質量部、好ましくは1~15質量部、さらに好ましくは2~10質量部、より好ましくは3~8質量部である。
(g)軟化剤
第2のゴム組成物は、軟化剤(g)をさらに含んでいてもよい。軟化剤(g)は、前記軟化剤(G)の項で例示された軟化剤から選択できる。前記軟化剤のうち、軟化剤(g)としては、パラフィン系オイルなどの石油系軟化剤が好ましい。
軟化剤(g)の割合は、接着性を向上できる点から、ポリマー成分(a)100質量部に対して1質量部以上であってもよく、例えば1~50質量部、好ましくは2~30質量部、さらに好ましくは3~20質量部、より好ましくは5~15質量部、最も好ましくは8~12質量部である。
(h)無機充填剤
第2のゴム組成物は、無機充填剤(h)をさらに含んでいてもよい。無機充填剤(h)は、前記無機充填剤(H)の項で例示された無機充填剤から選択できる。
前記無機充填剤のうち、無機充填剤(h)としては、カーボンブラックなどの炭素質材料、シリカなどの鉱物質材料、酸化亜鉛などの金属酸化物が好ましく、ゴム組成物の硬化物の機械的特性と接着性とを両立できる点から、カーボンブラック(第2のカーボンブラック)とシリカ(第2のシリカ)と金属酸化物(第2の金属酸化物)との組み合わせが特に好ましい。
第2のカーボンブラックとしては、無機充填剤(H)の項で例示された第1のカーボンブラックから選択できる。前記カーボンブラックのうち、第2のカーボンブラックとしては、接着性などの点から、FEFが好ましい。第2のカーボンブラックの平均粒径は、好ましい態様も含めて、第1のカーボンブラックの平均粒径から選択できる。
第2のシリカとしては、好ましい態様も含めて、無機充填剤(H)の項で例示された第1のシリカから選択できる。
第2のシリカの割合は、第2のカーボンブラック100質量部に対して、例えば5~200質量部、好ましくは10~100質量部、さらに好ましくは30~80質量部、より好ましくは40~60質量部である。シリカの割合が少なすぎると、接着性の向上効果が発現しない虞がある。
第2の金属酸化物の割合は、第2のカーボンブラック100質量部に対して、例えば1~100質量部、好ましくは3~50質量部、さらに好ましくは5~30質量部、最も好ましくは10~20質量部である。
無機充填剤(h)の合計割合は、前記ポリマー成分(a)100質量部に対して10~100質量部程度の範囲から選択でき、例えば20~80質量部、好ましくは30~70質量部、さらに好ましくは40~60質量部である。無機充填剤の割合が少なすぎると、弾性率が不足して耐側圧性が低下する虞があり、多すぎると、弾性率が高くなりすぎて、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
(i)他の成分
第2のゴム組成物は、他の成分(i)をさらに含んでいてもよい。他の成分(i)は、前記他の成分(I)の項で例示された他の成分から選択できる。
他の成分(i)の合計割合は、前記ポリマー成分(a)100質量部に対して、例えば0.1~15質量部、好ましくは0.3~10質量部、さらに好ましくは0.5~7質量部である。老化防止剤(第2の老化防止剤)の割合は、前記ポリマー成分(a)100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.5~5質量部、さらに好ましくは1~3質量部である。
[芯体]
芯体としては、特に限定されないが、通常、ベルト幅方向に所定間隔で配列した心線(撚りコード)を使用できる。心線は、ベルトの長手方向に延びて配設され、通常、ベルトの長手方向に平行に所定のピッチで並列的に延びて配設されている。心線は、少なくともその一部が接着ゴム層と接していればよく、接着ゴム層が心線を埋設する形態、接着ゴム層と伸張ゴム層との間に心線を埋設する形態、接着ゴム層と圧縮ゴム層との間に心線を埋設する形態のいずれの形態であってもよい。これらのうち、耐久性を向上できる点から、接着ゴム層が心線を埋設する形態が好ましい。なお、接着ゴム層を有しないVベルトの場合、伸張ゴム層と圧縮ゴム層との間に心線を埋設する形態であってもよい。
心線を構成する繊維の材質としては、短繊維(C)の項で例示された短繊維の材質などを利用できる。前記材質を有する繊維のうち、高モジュラスの点から、エチレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレートなどのC2-4アルキレン-アリレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)、アラミド繊維などの合成繊維、炭素繊維などの無機繊維などが汎用され、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート系繊維、ポリエチレンナフタレート系繊維など)、ポリアミド繊維が好ましい。
心線としては、通常、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚りなど)を使用できる。撚りコードの総繊度は、例えば2200~13500dtex(特に6600~11000dtex)であってもよい。撚りコードは、例えば1000~10000本のモノフィラメントを含んでいてもよく、好ましくは2000~8000本、さらに好ましくは4000~6000本のモノフィラメントを含んでいてもよい。心線の平均線径(撚りコードの直径)は、例えば0.5~3mmであってもよく、好ましくは0.6~2mm、さらに好ましくは0.7~1.5mm程度であってもよい。
心線は、ゴム成分との接着性を改善するため、短繊維と同様の方法で接着処理(または表面処理)されていてもよい。心線は、少なくともRFL液で接着処理するのが好ましい。
[補強布]
本発明のローエッジタイプVベルトが補強布を含む場合、例えば、圧縮ゴム層および伸張ゴム層(コグが圧縮ゴム層と一体に形成されている場合にはコグ)の双方(圧縮ゴム層の内周面および伸張ゴム層の外周面)に補強布が積層される形態、圧縮ゴム層および伸張ゴム層のうちいずれか一方のゴム層の表面に補強布を積層する形態、圧縮ゴム層および/または伸張ゴム層に補強層を埋設する形態(例えば、特開2010-230146号公報に記載の形態など)などが挙げられる。補強布を、圧縮ゴム層および伸張ゴム層のうち少なくとも一方のゴム層の表面(圧縮ゴム層の内周面および伸張ゴム層の外周面)に積層する形態、例えば、圧縮ゴム層の内周面(下面)および伸張ゴム層の外周面(上面)の双方に積層する形態である場合が多い。
補強布は、例えば、織布、広角度帆布、編布、不織布などの布材(特に、織布)などで形成でき、必要であれば、接着処理、例えば、RFL液で処理(浸漬処理など)したり、接着ゴムを前記布材にすり込むフリクション処理や、前記接着ゴムと前記布材とを積層(コーティング)した後、前記の形態で圧縮ゴム層および/または伸張ゴム層に積層または埋設してもよい。
[伝動用Vベルトの製造方法]
本発明の伝動用Vベルトの製造方法は、特に限定されず、慣用の方法を利用できる。ローエッジコグドVベルトの場合、例えば、補強布(下布)と圧縮ゴム層用シート(未架橋ゴムシート)からなる積層体を、前記補強布を下にして歯部と溝部とを交互に配した平坦なコグ付き型に設置し、温度60~100℃(特に70~80℃)程度でプレス加圧することによってコグ部を型付けしたコグパッド(完全には架橋しておらず、半架橋状態にあるパッド)を作製した後、このコグパッドの両端をコグ山部の頂部から垂直に切断してもよい。さらに、円筒状の金型に歯部と溝部とを交互に配した内母型(架橋ゴムで形成された型)を被せ、この歯部と溝部に係合させてコグパッドを巻き付けてコグ山部の頂部でジョイントし、この巻き付けたコグパッドの上に第1の接着ゴム層用シート(下接着ゴム:未架橋ゴムシート)を積層した後、芯体を形成する心線(撚りコード)を螺旋状にスピニングし、この上に第2の接着ゴム層用シート(上接着ゴム:前記接着ゴム層用シートと同じ)、伸張ゴム層用シート(未架橋ゴムシート)、補強布(上布)を順次巻き付けて成形体を作製してもよい。その後、ジャケット(架橋ゴムで形成されたジャケット)を被せて金型を加硫缶に設置し、温度120~200℃(特に150~180℃)で架橋してベルトスリーブを調製する架橋工程を経た後、カッターなどを用いて、V字状断面となるように切断加工して圧縮ゴム層を形成するカット工程を経てもよい。
補強布を含まないローエッジコグドVベルトでは、圧縮ゴム層用シートと第1の接着ゴム層用シートとを予めプレス加圧した積層体を調製してもよい。
なお、伸張ゴム層用シートおよび圧縮ゴム層用シートにおいて、短繊維の配向方向をベルト幅方向に配向させる方法としては、慣用の方法、例えば、所定の間隙を設けた一対のカレンダーロール間にゴムを通してシート状に圧延し、圧延方向に短繊維が配向した圧延シートの両側面を圧延方向と平行方向に切断するとともに、ベルト成形幅(ベルト幅方向の長さ)となるように圧延シートを圧延方向と直角方向に切断し、圧延方向と平行方向に切断した側面同士をジョイントする方法などが挙げられる。例えば、特開2003-14054号公報に記載の方法などを利用できる。このような方法で短繊維を配向させた未架橋シートは、前記方法において、短繊維の配向方向がベルトの幅方向となるように配置して架橋される。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で使用した原料の詳細を以下に示す。
[原料]
(ポリマー成分)
EPDM1:JSR(株)製「EP93」、エチレン含量55質量%、ジエン含量2.7質量%
EPDM2:JSR(株)製「EP24」、エチレン含量54質量%、ジエン含量4.5質量%。
(架橋剤、架橋促進剤および架橋助剤)
硫黄:美源化学社製「粉末硫黄」
有機過酸化物:日油(株)製「P-40MB(K)]
架橋促進剤A:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーTT」
架橋促進剤B:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーCZ」
架橋促進剤C:大内新興化学工業(株)製「バルノックR」
共架橋剤A(ビスマレイミド):大内新興化学工業(株)製「バルノックPM」
共架橋剤B(メタクリル酸亜鉛):三新化学工業(株)製「サンエステルSK-30」。
(繊維部材)
パラ系アラミド短繊維:帝人(株)製、トワロンカット糸、平均繊維長3mm
ナイロン短繊維:旭化成(株)製、レオナカット糸、平均繊維長3mm
心線:繊度1,680dtexのアラミド繊維のマルチフィラメントの束2本を引き揃えて下撚りして下撚り糸を作製し、作製した下撚り糸を3本合わせて下撚りとは反対方向に上撚りした総繊度10,080dtexの諸撚りコード
補強布:構成2/2綾織りのナイロン帆布(厚み0.50mm)。
(他の成分)
カーボンブラックA(HAF):キャボット・ジャパン(株)製「N330」
カーボンブラックB(FEF):キャボット・ジャパン(株)製「N550」
シリカ:エボニック・デグサ・ジャパン(株)製「ウルトラシルVN3」、BET比表面積175m/g
パラフィン系オイル:出光興産(株)製「ダイアナプロセスオイルPW90」
老化防止剤A:大内新興化学工業(株)製「ノクラックCD」
老化防止剤B:精工化学(株)製「ノンフレックスOD3」
酸化亜鉛:堺化学工業(株)製「酸化亜鉛2種」
ステアリン酸:日油(株)製「ステアリン酸つばき」
酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製「キョーワマグ150」
接着性改善剤A(レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂):Singh Plasticisers & Resins Pvt.Ltd.社製「POWERPLAST PP-1860」
接着性改善剤B(ヘキサメトキシメチルメラミン):Singh Plasticisers & Resins Pvt.Ltd.社製「POWERPLAST PP-1890S」。
実施例1~9および比較例1~4
[ゴム硬度]
表1に示す組成を有する未架橋のゴムシートを温度170℃、圧力2MPa、時間20分でプレス架橋し、架橋ゴムシート(100mm×100mm×2mm厚み)を作製した。ゴム硬度は、JIS K 6253(2012)に準拠し、架橋ゴムシートを3枚重ね合わせた積層物を試料とし、デュロメータA形硬さ試験機を用いて測定した。マトリクスゴム硬度は、前記の配合から短繊維を除くことにより、短繊維を含まない架橋ゴムシートを作製すること以外は同様にして測定した。結果を表3に示す。
[破断伸び]
表1に示す組成を有する未架橋のゴムシートを温度170℃、圧力2MPa、時間20分でプレス架橋し、架橋ゴムシート(100mm×100mm×2mm厚み)を作製した。この架橋ゴムシートを(株)ダンベル製のスーパーダンベルカッターで打抜いて、ダンベル状3号形の試験片を作製した。作製した試験片を用いて、JIS K 6251(2017)に準拠し、破断伸びを測定した。引張速度は500mm/min、試験温度は23℃とした。なお、測定は試験片の長手方向と列理(短繊維の長手方向)とが直角となる方向(列理直角方向)で行った。結果を表3に示す。
[8%曲げ応力]
表1に示す組成を有する未架橋のゴム組成物を温度170℃、圧力2MPa、時間20分でプレス架橋し、架橋ゴム成形体(60mm×25mm×6.5mm厚み)を作製した。短繊維は架橋ゴム成形体の長手方向と平行に配向させた。図3に示すように、この架橋ゴム成形体21を、20mmの間隔を空けて回転可能な一対のロール(直径6mm)22a,22b上に置いて支持し、架橋ゴム成形体21の上面中央部において幅方向(短繊維の配向方向と直交する方向)に金属製の押さえ部材23を載せた。押さえ部材23の先端部は、直径10mmの半円状の形状を有しており、その先端部で架橋ゴム成形体21をスムーズに押圧可能である。また、押圧時には架橋ゴム成形体21の圧縮変形に伴って、架橋ゴム成形体21の下面とロール22a,22bとの間に摩擦力が作用するが、ロール22a,22bを回転可能とすることにより、摩擦による影響を小さくしている。押さえ部材23の先端部が架橋ゴム成形体21の上面に接触し、かつ押圧していない状態を初期位置とし、この状態から押さえ部材23を下方に100mm/分の速度で架橋ゴム成形体21の上面を押圧し、曲げ歪が8%となったときの応力を曲げ応力として測定した。短繊維の配向方向に対して直交する方向の曲げ応力を測定することで、曲げ応力が高くなるとベルト走行中のディッシングと呼ばれる座屈変形に対する抵抗力が高いと判断でき、高負荷伝動及び高耐久性の指標とすることができる。なお、測定温度は走行中のベルト温度を想定し、120℃とした。
[シートのブルームの有無]
厚み2mmのシート状に圧延した未架橋ゴム組成物を25℃で14日間静置し、ゴム表面を目視観察してブルーム(架橋剤などの添加剤のシート表面への析出)の有無を確認した。一般的にはブルームが発生してもゴム物性に大きな変化はないが、タック性が低下することによりベルトを成形する際の作業性が低下する虞があるため、ブルームは発生しない方が好ましい。
[ベルトの製造]
モールドに装着したコグ形状のついた架橋ゴム製の内母型の表面に、予め表1に示す組成を有する所定厚みの圧縮ゴム層用シートと補強布を積層した積層体にコグ部を型付け成形したシート状のコグパッドを巻き付けてジョイントした後、表2に示す組成を有する下部接着ゴム用シート、心線、表2に示す組成を有する上部接着ゴム用シート、そして表1に示す組成を有する平坦な伸張ゴム層用シートを順次巻き付けて成形体を作製した。続いて、成形体の表面に、コグ形状のついた架橋ゴム製の外母型とジャケットを被せてモールドを加硫缶に設置し、温度170℃、時間40分、0.9MPaで架橋してベルトスリーブを得た。尚、架橋条件は未架橋の接着ゴム層用シート、圧縮ゴム層用シート及び伸張ゴム層用シートの架橋に類似する条件を選択した。このスリーブをカッターによってV状に切断して変速ベルトに仕上げた。すなわち、図4に示す構造のローエッジダブルコグドVベルトを作製した(補強布は図示せず)。詳しくは、心線12を埋設した接着ゴム層11の両面に、それぞれ圧縮ゴム層13及び伸張ゴム層14が形成されたローエッジダブルコグドVベルトにおいて、圧縮ゴム層13及び伸張ゴム層14のいずれにも、それぞれコグ部16,17が形成されているベルト(サイズ:上幅20mm、厚さ10mm、外周長817mm)を作製した。得られたローエッジダブルコグドVベルトについて、以下の評価試験を行った結果を表3に示す。
[2軸耐久走行試験]
2軸耐久走行試験は、図5に示すように、直径50mmの駆動(Dr.)プーリと、直径125mmの従動(Dn.)プーリとを含む2軸走行試験機を用いて行った。各プーリにローエッジコグドVベルトを掛架し、駆動プーリの回転数を5,600rpm、従動プーリの負荷を22.8N・mとし、雰囲気温度80℃にてベルトを72時間走行させた。走行後のローエッジダブルコグドVベルトの側面(プーリと接する面)を目視観察して、心線と接着ゴム層の間の剥離の有無を調べた。また、走行試験前後のローエッジダブルコグドVベルトの上幅の変化量(走行試験前の上幅-走行試験後の上幅)を求めた。上幅の変化量が小さい程、耐摩耗性が優れていると判断できる。
[逆曲げ耐久走行試験(動的逆曲げ試験)]
逆曲げ耐久走行試験は、図6に示すように、直径97.6mmの駆動(Dr.)プーリと、直径77.9mmの従動(Dn.)プーリと、直径79.4mmの背面アイドラ(Id.)プーリを含む3軸走行試験機を用いて行った。各プーリにローエッジダブルコグドVベルトを掛架し、駆動プーリに40kgfの錘を垂下することによりベルトに張りを与えた上で、背面アイドラプーリにおける接触角(ベルトとプーリが接触している円弧に対する中心角)が15°となるように調節した。駆動プーリの回転数は3,600rpm、従動プーリおよび背面アイドラプーリは無負荷、雰囲気温度120℃にてベルトを寿命まで走行させた。なお、ローエッジダブルコグドVベルトのコグ谷の亀裂の深さ(ベルト厚み方向の長さ)が2mm以上となった際に寿命と判断した。寿命となるまでの走行時間が長い程、耐屈曲疲労性に優れていると判断できる。
[逆曲げ亀裂試験(静的逆曲げ試験)]
逆曲げ亀裂試験は、図7に示すように、ベルトの内周面と外周面とを反転させた状態のローエッジコグドVベルト30を上下2枚の平行な平板で挟み、2枚の平板の間の距離を50mm/minの速度で徐々に狭めていき、ローエッジダブルコグドVベルトのコグ谷に亀裂が発生した際の板間距離を測定した。亀裂が発生した際の板間距離が短い程、耐屈曲疲労性(耐亀裂性)に優れていると判断できる。
Figure 0007189381000001
Figure 0007189381000002
Figure 0007189381000003
表3の結果から明らかなように、有機過酸化物で架橋した比較例1および2は、ゴム硬度は高いものの破断伸びは小さく、特に耐屈曲疲労性の点で劣っていた。比較例3は硫黄の配合量を低下させた例であるが、ゴム硬度が十分に向上せず、耐側圧性が低下して剥離が発生するとともに、耐摩耗性も低かった。比較例4はビスマレイミドの配合量を増加させた例であるが、破断伸びと耐屈曲疲労性が低かった。
実施例1~9はゴム硬度が高く、かつ、破断伸びが大きく、耐摩耗性と耐屈曲疲労性とを両立することができ、耐久性に優れていた。パラフィン系オイルの配合量が多い実施例1では、耐摩耗性が若干低下した。共架橋剤としてビスマレイミドを含む実施例4~9は、ゴム硬度が特に高く、耐摩耗性に優れていた。
実施例5~7の比較より、硫黄の配合量が少ない場合は耐摩耗性が低下し、硫黄の配合量が多い場合は耐屈曲疲労性が低下する傾向にあった。また、硫黄の配合量が多い実施例7では未架橋ゴムシートにブルームが発生した。実施例5、8、9の比較より、共架橋剤のビスマレイミドの配合量が少ない場合は8%曲げ応力および耐摩耗性が低下し、ビスマレイミドの配合量が多い場合は破断伸びおよび耐屈曲疲労性が低下する傾向にあった。なお、ビスマレイミドの配合量をさらに増加した比較例4では、破断伸びおよび耐屈曲疲労性は許容できないレベルにまで低下した。
本発明の伝動用Vベルトは、自動車および産業機械の各種分野で使用される伝動用Vベルト、例えば、ラップドVベルトやローエッジタイプVベルトなどのVベルトに適用でき、耐側圧性を確保しつつ、耐屈曲疲労性を向上できる点から、ローエッジタイプVベルトに適用するのが好ましい。前記ローエッジタイプVベルトとしては、ローエッジVベルト、コグ部を有するローエッジコグドVベルト(ローエッジコグドVベルト、ローエッジダブルコグドVベルトなど)などに適用できる。
さらに、本発明の伝動用Vベルトは、耐側圧性と耐屈曲疲労性とを両立できる点から、自動二輪車、ATV(四輪バギー)、スノーモービル、大型農業機械などにおいて、ベルト走行中に変速比が無段階で変わる変速機(ベルト式無段変速装置)に使用されるVベルト(変速ベルト)や、逆曲げを含むレイアウトで使用されるローエッジVベルトに適用するのが好ましく、耐側圧性、耐摩耗性、耐屈曲疲労性を高度に実現できる点から、75kW/本以上の高馬力が要求される大型農業機械(コンバイン、草刈り機など)で使用される変速ベルト(例えば、ASABE規格において、HL~HQに相当する大型ベルトなど)に適用するのが特に好ましい。
1…伝動用Vベルト
2,6…補強布
3…伸張ゴム層
4…接着ゴム層
4a…芯体
5…圧縮ゴム層

Claims (12)

  1. 第1のゴム組成物の硬化物を含み、かつ少なくとも内周面側にコグを有するローエッジコグドVベルトであって、
    前記第1のゴム組成物が、エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むポリマー成分(A)、硫黄系架橋剤を含む架橋剤(B)および短繊維(C)を含み、
    前記硫黄系架橋剤の割合が、前記ポリマー成分(A)100質量部に対して1.2質量部以上であり、
    前記短繊維(C)がベルト幅方向に配向しており、
    前記硬化物のゴム硬度(JIS-A)が91度以上であり、かつ
    前記硬化物のベルト長手方向における破断伸びが101~180%である、ローエッジコグドVベルト。
  2. 前記第1のゴム組成物から前記短繊維(C)を除いたゴム組成物の硬化物のマトリクスゴム硬度(JIS-A)が83度以上である、請求項1記載のローエッジコグドVベルト。
  3. 前記第1のゴム組成物が架橋促進剤(D)をさらに含み、かつ前記架橋促進剤(D)が硫黄含有架橋促進剤を含む、請求項1または2記載のローエッジコグドVベルト。
  4. 前記硫黄含有架橋促進剤が、酸素および窒素含有複素環を有する硫黄含有架橋促進剤を含む、請求項3記載のローエッジコグドVベルト。
  5. 前記第1のゴム組成物が共架橋剤(E)をさらに含み、かつ前記共架橋剤(E)がビスマレイミド化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のローエッジコグドVベルト。
  6. 前記第1のゴム組成物が接着性改善剤(F)をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のローエッジコグドVベルト。
  7. 前記第1のゴム組成物が軟化剤(G)をさらに含み、かつ前記軟化剤(G)の割合が、前記ポリマー成分(A)100質量部に対して0.1~10質量部である、請求項1~6のいずれか一項に記載のローエッジコグドVベルト。
  8. 前記第1のゴム組成物の硬化物で形成された圧縮ゴム層および/または伸張ゴム層を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のローエッジコグドVベルト。
  9. 第2のゴム組成物の硬化物で形成された接着ゴム層をさらに備え、
    前記第2のゴム組成物が、エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むポリマー成分(a)および硫黄系架橋剤を含む架橋剤(b)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のローエッジコグドVベルト。
  10. 変速ベルトである、請求項1~9のいずれか一項に記載のローエッジコグドVベルト。
  11. ベルト全体の平均厚みが19.8~36mmである、請求項1~10のいずれか一項に記載のローエッジコグドVベルト。
  12. 逆曲げを含むレイアウトで使用されるローエッジコグドVベルトである、請求項1~9のいずれか一項に記載のローエッジコグドVベルト。
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