発明の詳細な説明
定義
以下において特に定めのない限り、当技術分野において一般的に用いられるように用語が本明細書において用いられる。
本明細書で使用する「抗原結合分子」という用語は、その最も広い意味で、抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。抗原結合分子の例は、免疫グロブリンおよびその誘導体、例えば、その断片である。
「二重特異性」という用語は、抗原結合分子が少なくとも2種類の特異な抗原決定基に特異的に結合できることを意味する。典型的に、二重特異性抗原結合分子は2種類の抗原結合部位を含み、これらの抗原結合部位はそれぞれ異なる抗原決定基に特異的である。ある特定の態様において、二重特異性抗原結合分子は、2種類の抗原決定基、特に、2種類の別個の細胞上に発現している2種類の抗原決定基に同時に結合することができる。
本明細書で使用する「価」という用語は、特定の数の抗原結合部位が抗原結合分子に存在することを示す。従って、「抗原との一価結合」という用語は、抗原に特異的な1個(および1個以下の)抗原結合部位が抗原結合分子に存在することを示す。
「抗原結合部位」とは、抗原との相互作用をもたらす、抗原結合分子の部位、すなわち、1つまたは複数のアミノ酸残基を指す。例えば、抗体の抗原結合部位は、相補性決定領域(CDR)に由来するアミノ酸残基を含む。天然の免疫グロブリン分子は典型的に2個の抗原結合部位を有し、Fab分子は典型的に1個の抗原結合部位を有する。
本明細書で使用する「抗原結合部分」という用語は、抗原決定基に特異的に結合するポリペプチド分子を指す。1つの態様において、抗原結合部分は、それが結合している実体(例えば、第2の抗原結合部分)を標的部位、例えば、抗原決定基を有する特定のタイプの腫瘍細胞または腫瘍間質に方向付けることができる。別の態様において、抗原結合部分は、その標的抗原、例えば、T細胞受容体複合抗原を介してシグナル伝達を活性化することができる。抗原結合部分には、本明細書においてさらに定義される抗体およびその断片、ならびに結合タンパク質およびスキャフォールドが含まれる。特定の抗原結合部分は、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含む抗体の抗原結合ドメインを含む。他の抗原結合部分は、少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質およびシングルドメイン抗原結合(SDAB)分子を含む。
ある特定の態様において、抗原結合部分は、本明細書においてさらに定義され、当技術分野において公知の抗体定常領域を含んでもよい。有用な重鎖定常領域には、5つのアイソタイプ:α、δ、ε、γ、またはμのいずれかが含まれる。有用な軽鎖定常領域には、2つのアイソタイプ:κおよびλのいずれかが含まれる。
本明細書で使用する「抗原決定基」という用語は「抗原」および「エピトープ」と同義であり、抗原結合部分が結合して抗原結合部分-抗原複合体を形成する、ポリペプチド高分子上の部位(例えば、アミノ酸の連続した領域、または連続していないアミノ酸の異なる領域で構成されるコンホメーション配置)を指す。有用な抗原決定基は、例えば、腫瘍細胞の表面、ウイルス感染細胞の表面、他の疾患細胞の表面、免疫細胞の表面に、血清中に遊離して、および/または細胞外マトリックス(ECM)の中に見つけることができる。本明細書において抗原と呼ばれるタンパク質(例えば、MCSP、FAP、CEA、EGFR、CD33、CD3)は、特に定めのない限り、任意の天然形態でよく、霊長類(例えば、ヒト)ならびにげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物供給源に由来してもよい。特定の態様において、抗原はヒトタンパク質である。本明細書中の特定のタンパク質について言及された場合、この用語は、「完全長」、プロセシングされていないタンパク質、ならびに細胞内でのプロセシングに起因する任意の形態のタンパク質を包含する。この用語はまた、タンパク質の天然変種、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子変種を包含する。抗原として有用な例示的なヒトタンパク質には、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4としても知られる、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)(UniProt番号Q6UVK1(バージョン70)、NCBI RefSeq番号NP_001888.2);セプラーゼとしても知られる、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)(Uni Prot番号Q12884、Q86Z29、Q99998、NCBIアクセッション番号NP_004451);癌胎児抗原関連細胞接着分子5としても知られる、癌胎児(Carcinoembroynic)抗原(CEA)(UniProt番号P06731(バージョン119)、NCBI RefSeq番号NP_004354.2);gp67またはSiglec-3としても知られる、CD33(UniProt番号P20138、NCBIアクセッション番号NP_001076087、NP_001171079);ErbB-1またはHer1としても知られる、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)(UniProt番号P0053、NCBIアクセッション番号NP_958439、NP_958440);およびCD3、特に、CD3のεサブユニット(ヒト 配列の場合、UniProt番号P07766 (バージョン 130)、NCBI RefSeq番号NP_000724.1、SEQ ID NO:265;またはカニクイザル[Macaca fascicularis]配列の場合、UniProt番号Q95LI5(バージョン49)、NCBI GenBank番号BAB71849.1、SEQ ID NO:266を参照されたい)が含まれるが、これに限定されない。ある特定の態様において、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、異なる種に由来する活性化T細胞抗原または標的抗原の間で保存されている、活性化T細胞抗原または標的細胞抗原のエピトープに結合する。
「特異的結合」とは、結合が抗原に選択的であり、望ましくない相互作用または非特異的な相互作用と区別できることを意味する。抗原結合部分が特定の抗原決定基に結合する能力は、酵素結合免疫測定法(ELISA)、または当業者がよく知っている他の技法、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)法(BIAcore機器で分析される)(Liljeblad, et al., Glyco J 17, 323-329 (2000))および従来の結合アッセイ(Heeley, Endocr Res 28, 217-229 (2002))によって測定することができる。1つの態様において、抗原結合部分と無関係のタンパク質と結合の程度は、例えば、SPRによって測定された時、抗原結合部分と抗原との結合の約10%未満である。ある特定の態様において、抗原に結合する抗原結合部分、またはその抗原結合部分を含む抗原結合分子の解離定数(KD)は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M〜10-13M、例えば、10-9M〜10-13M)である。
「親和性」とは、分子(例えば、受容体)の1つの結合部位と、その結合パートナー(例えば、リガンド)との非共有結合相互作用の合計の強さを指す。特に定めのない限り、本明細書で使用する「結合親和性」とは、結合ペアのメンバー(例えば、抗原結合部分と抗原、または受容体とそのリガンド)との1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。パートナーYに対する分子Xの親和性は、一般的に、解離定数(KD)で表すことができる。解離定数(KD)は解離速度定数および会合速度定数(それぞれ、koffおよびkon)の比である。従って、速度定数の比が同一のままである限り、同じ親和性が異なる速度定数から成り立っていることがある。親和性は、本明細書に記載の方法を含む、当技術分野において公知の十分に確立した方法によって測定することができる。親和性を測定するための特定の方法が表面プラズモン共鳴(SPR)である。
「低い結合」、例えば、Fc受容体に対する低い結合とは、例えば、SPRによって測定された時の、それぞれの相互作用に対する親和性の減少を指す。はっきりさせるために、この用語は、親和性が0まで(または分析法の検出限界未満に)低下すること、すなわち、相互作用が完全になくなることも含む。反対に、「高い結合」とは、それぞれの相互作用に対する親和性の増加を指す。
本明細書で使用する「活性化T細胞抗原」とは、抗原結合分子と相互作用した時にT細胞活性化を誘導することができる、Tリンパ球、特に、細胞傷害性Tリンパ球の表面に発現している抗原決定基を指す。具体的には、抗原結合分子と活性化T細胞抗原が相互作用すると、T細胞受容体複合体のシグナル伝達カスケードが誘発されることによってT細胞活性化が誘導され得る。特定の態様において、活性化T細胞抗原はCD3である。
本明細書で使用する「T細胞活性化」とは、増殖、分化、サイトカイン分泌、細胞傷害性エフェクター分子放出、細胞傷害活性、および活性化マーカー発現より選択される、Tリンパ球、特に、細胞傷害性Tリンパ球の1つまたは複数の細胞応答を指す。本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子はT細胞活性化を誘導することができる。T細胞活性化を測定するのに適したアッセイは当技術分野において公知であり、本明細書において説明されている。
本明細書で使用する「標的細胞抗原」とは、標的細胞、例えば、腫瘍内の細胞、例えば、癌細胞または腫瘍間質細胞の表面に提示された抗原決定基を指す。
抗原結合部分などに関連して本明細書で使用する「第1の」および「第2の」という用語は、それぞれのタイプの部分が複数ある時に区別をよりしやすくするために用いられる。これらの用語の使用は、特に明確に述べられていない限り、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の特定の順番または方向を付与することを目的としない。
「Fab分子」は、免疫グロブリンの重鎖のVHおよびCH1ドメイン(「Fab重鎖」)ならびに軽鎖のVLおよびCLドメイン(「Fab軽鎖」)からなるタンパク質を指す。
「融合されている」とは、前記成分(例えば、Fab分子およびFcドメインサブユニット)がペプチド結合によって直接連結されているか、または1つもしくは複数のペプチドリンカーを介して連結されていることを意味する。
「クロスオーバー」Fab分子(「Crossfab」とも呼ばれる)とは、Fab重鎖および軽鎖の可変領域または定常領域のいずれかが交換されているFab分子を意味する。すなわち、クロスオーバーFab分子は、軽鎖可変領域および重鎖定常領域からなるペプチド鎖ならびに重鎖可変領域および軽鎖定常領域からなるペプチド鎖を含む。はっきりさせるために、Fab軽鎖およびFab重鎖の可変領域が交換されているクロスオーバーFab分子では、重鎖定常領域を含むペプチド鎖は本明細書においてクロスオーバーFab分子の「重鎖」と呼ばれる。反対に、Fab軽鎖およびFab重鎖の定常領域が交換されているクロスオーバーFab分子では、重鎖可変領域を含むペプチド鎖は本明細書においてクロスオーバーFab分子の「重鎖」と呼ばれる。
「免疫グロブリン分子」という用語は、天然抗体の構造を有するタンパク質を指す。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、ジスルフィド結合した2本の軽鎖および2本の重鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端にかけて、それぞれの重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)に続いて、重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を有する。同様に、N末端からC末端にかけて、それぞれの軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)に続いて、軽鎖定常領域とも呼ばれる定常軽鎖(CL)ドメインを有する。免疫グロブリンの重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)、またはμ(IgM)と呼ばれる5つのタイプの1つに割り当てられることがあり、これらのうちのいくつかはサブタイプ、例えば、γ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、α1(IgA1)、およびα2(IgA2)にさらに分けられることがある。免疫グロブリンの軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプの1つに割り当てられることがある。免疫グロブリンは、免疫グロブリンヒンジ領域を介して連結した、2つのFab分子およびFcドメインから本質的になる。
本明細書において「抗体」という用語は最も広い意味で用いられ、望ましい抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、および抗体断片を含むが、これに限定されない様々な抗体構造を包含する。
「抗体断片」とは、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、ダイアボディ、直鎖抗体、単鎖抗体分子(例えば、scFv)、およびシングルドメイン抗体が含まれるが、これに限定されない。ある特定の抗体断片の総説については、Hudson et al., Nat Med 9, 129-134 (2003)を参照されたい。scFv断片の総説については、例えば、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号および同第5,587,458号も参照されたい。サルベージ(salvage)受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期が長い、FabおよびF(ab') 2断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。ダイアボディは、二価または二重特異性でもよい2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404,097; WO1993/01161; Hudson et al., Nat Med 9, 129-134 (2003);およびHollinger et al., Proc Natl Acad Sci USA 90, 6444-6448 (1993)を参照されたい。トリアボディおよびテトラボディもHudson et al., Nat Med 9, 129-134 (2003)に記載されている。シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む抗体断片である。ある特定の態様において、シングルドメイン抗体はヒトシングルドメイン抗体(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照されたい)である。抗体断片は、本明細書に記載のようにインタクトな抗体のタンパク質分解消化ならびに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌またはファージ)による産生を含むが、これに限定されない様々な技法によって作ることができる。
「抗原結合ドメイン」という用語は、抗原の一部または全てに特異的に結合し、抗原の一部または全てに相補的な領域を含む抗体部分を指す。抗原結合ドメインは、例えば、1つまたは複数の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)によって提供されてもよい。特に、抗原結合ドメインは抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含む。
「少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質」という用語は、本明細書において参照として含まれるWO2002/020565およびWO2012069655に記載のような結合タンパク質を指す。これらの結合タンパク質は、「DARPin」(設計されたアンキリン反復タンパク質(designed ankyrin repeat protein)の頭字語)とも呼ばれ、典型的に、極めて特異的な、かつ高親和性の標的タンパク質結合を示す、遺伝子操作された抗体ミメティックタンパク質である。これらの結合タンパク質は天然のアンキリンタンパク質に由来し、少なくとも1個の反復モチーフからなる。HER2を標的とする、少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む例示的な結合タンパク質は、Zahnd, C. et al, J. Mol. Biol. (2007) 369, 1015-1028に記載されている。さらに、フィブロネクチンIII型ドメインベースのアデンクチン(Adenctin)、リポカリンベースのアンチカリン、ユビキチンベースのアフィリン(Affilin)、トランスフェリンベースのトランスボディ(Transbody)、プロテインAドメインベースのアフィボディ(Affibody)、テトラネクチン(tetranectin)ドメインベースのトリマーX (TrimerX)、Cysリッチドメインベースのマイクロプロテイン(MicroProtein)、Fyn SH3ドメインベースのフィノマー(Fynomer)、EGFR Aドメインベースのアビマー(Avimer)、センチリン(centyrin)ベースのセンチリン(Centyrin)、Kunizドメインベースのカリビター(kalibitor)、ならびに無作為化された結合領域および抗体様挙動を有する他の足場タンパク質などの他の結合タンパク質が本発明に含まれる。
「シングルドメイン抗原結合分子」という用語は、EP0656946(その全体が本明細書において参照として含まれる)に記載のような1個の単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片を指す。全抗体と同様に、シングルドメイン抗原結合分子は、ある特定の抗原に選択的に結合することができる。シングルドメイン抗体は分子量が12〜15kDaしかなく、2本のタンパク質重鎖および2本のタンパク質軽鎖で構成される普通の抗体(150〜160kDa)よりかなり小さく、Fab断片(約50kDa、1本の軽鎖および重鎖の半分)ならびに単鎖可変断片(約25kDa。1つは軽鎖、1つは重鎖に由来する2つの可変ドメイン)よりさらに小さい。特に、シングルドメイン抗原結合分子は、自律性(autonomous)可変重鎖(aVH)抗体とも呼ばれる、1つの可変ドメイン(VH)からなるシングルドメイン可変重鎖である。これらのペプチドは、全抗体に類似した、抗原に対する親和性を有するが、全抗体より耐熱性があり、界面活性剤および高濃度の尿素に対して安定性がある。分子量が比較的小さいので組織透過性が優れており、腎臓から排出されるため血漿中半減期が短い。
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体と抗原との結合に関与する抗体重鎖または抗体軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VHおよびVL)は、一般的に、類似した構造を有し、それぞれのドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(HVR)を含む。例えば、Kindt et al., Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照されたい。抗原結合特異性を付与するためにはVHシングルドメインまたはVLシングルドメインだけで十分な場合がある。
本明細書で使用する「超可変領域」または「HVR」という用語は、配列が高頻度で変わる、および/または構造が定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメイン領域のそれぞれを指す。一般的に、天然の4本の鎖からなる抗体は、6個のHVR;VHに3個(H1、H2、H3)およびVLに3個(L1、L2、L3)を含む。HVRは、一般的に、超可変ループおよび/または相補性決定領域(CDR)に由来するアミノ酸残基を含み、後者は最も高い配列可変性を持つ、および/または抗原認識に関与する。VHにあるCDR1を除いて、CDRは、一般的に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。超可変領域(HVR)は「相補性決定領域」(CDR)とも呼ばれ、これらの用語は、抗原結合領域を形成する可変領域部分に関して本明細書において交換可能に用いられる。この特定の領域は、互いに比較された時に定義がアミノ酸残基の重複またはサブセットを含む、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, Sequences of Proteins of Immunological Interest (1983)およびChothia et al., J Mol Biol 196:901-917 (1987)に記載されている。それにもかかわらず、抗体またはその変種のCDRを指すために、いずれかの定義を適用することは、本明細書において定義および使用されるように用語の範囲内であることが意図される。前記で引用された参考文献のそれぞれによって定義されるようにCDRを構成する適切なアミノ酸残基が比較として以下の表Aに示される。ある特定のCDRを構成する正確な残基の数は、CDRの配列およびサイズに応じて変化する。当業者であれば、抗体の可変領域アミノ酸配列を考慮すれば、どの残基が特定のCDRを構成するかを日常的に決定することができる。
(表A)CDR定義
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1表Aの中の全てのCDR定義のナンバリングは、Kabatらによって示されたナンバリング規則に従う(以下を参照されたい)。
2表Aに用いられた小文字「b」のある「AbM」は、Oxford Molecularの「AbM」抗体モデリングソフトウェアによって定義されたCDRを指す。
Kabatらは、全ての抗体に適用可能な可変領域配列のナンバリングシステムも定義した。当業者であれば、配列そのものの他に、いかなる実験データにも頼らず、この「Kabatナンバリング」システムを任意の可変領域配列に明確に割り当てることができる。本明細書で使用する「Kabatナンバリング」は、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, 「Sequence of Proteins of Immunological Interest」(1983)に示されたナンバリングシステムを指す。他で特定しない限り、抗体可変領域にある特定のアミノ酸残基位置のナンバリングへの言及はKabatナンバリングシステムに従う。
配列表のポリペプチド配列の番号はKabatナンバリングシステムに従って付けられていない。しかしながら、配列表の配列のナンバリングをKabatナンバリングに変換することは十分に当業者の能力の範囲内にある。
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。従って、HVRおよびFR配列は、一般的に、VH(またはVL)において以下の順序:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4で現れる。
抗体または免疫グロブリンの「クラス」は、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。抗体には5種類の主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けられることがある。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
本明細書において「Fcドメイン」または「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、天然配列のFc領域および変種Fc領域を含む。IgG重鎖のFc領域の境界はわずかに異なる場合があるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、重鎖のCys226またはPro230からカルボキシル末端にわたると定義される。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在してもよく、存在しなくてもよい。本明細書において他で特定しない限り、Fc領域または定常領域にあるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載のようにEUインデックスとも呼ばれるEUナンバリングシステムに従う。本明細書で使用するFcドメインの「サブユニット」は、二量体Fcドメインを形成する2つのポリペプチドのうちの1つ、すなわち、安定した自己会合を可能にする免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含むポリペプチドを指す。例えば、IgG FcドメインのサブユニットはIgG CH2定常ドメインおよびIgG CH3定常ドメインを含む。
「Fcドメインの第1のサブユニットおよび第2のサブユニットの会合を促進する改変」は、Fcドメインサブユニットを含むポリペプチドと同一のポリペプチドが会合してホモ二量体を形成するのを低減または阻止する、Fcドメインサブユニットのペプチドバックボーン操作または翻訳後改変である。本明細書で使用する、会合を促進する改変は、特に、会合することが望まれる、2つのFcドメインサブユニットのそれぞれ(すなわち、Fcドメインの第1のサブユニットおよび第2のサブユニット)に加えられる別々の改変を含む。ここで、改変は、2つのFcドメインサブユニットの会合を促進するように互いに補い合う。例えば、会合を促進する改変は、会合を立体的に好ましくするように一方または両方のFcドメインサブユニットの構造を変えてもよく、会合を静電気的に好ましくするように一方または両方のFcドメインサブユニットの電荷を変えてもよい。従って、第1のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドと、第2のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドとの間で(ヘテロ)二量体化が生じる。第1のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドと、第2のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドは、サブユニット(例えば、抗原結合部分)のそれぞれと融合されているさらなる成分が同一でないという意味で同一でなくてもよい。一部の態様において、会合を促進する改変は、Fcドメインにアミノ酸変異、具体的にはアミノ酸置換を含む。特定の態様において、会合を促進する改変は、Fcドメインの2つのサブユニットのそれぞれにおいて別々のアミノ酸変異、具体的にはアミノ酸置換を含む。1つの態様において、Fcドメインの第1のサブユニットおよび第2のサブユニットの会合を促進する改変は、静電ステアリング効果を媒介する改変、例えば、PCT公報WO2009/089004に記載の改変を含む。一般的に、この方法は、ホモ二量体形成が静電気的に好ましくないが、ヘテロ二量体化が静電気的に好ましくなるように、2つのFcドメインサブユニットの境界面にある1つまたは複数のアミノ酸残基を荷電アミノ酸残基と交換することを伴う。
「エフェクター機能」という用語は、抗体アイソタイプによって異なる抗体Fc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体を介した抗原取り込み、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション、およびB細胞活性化が含まれる。
本明細書で使用する「操作する(engineer)、操作された(engineered)、操作する(engineering)」という用語は、ペプチドバックボーンの任意の操作、または天然もしくは組換えのポリペプチドもしくはその断片の翻訳後修飾を含むとみなされる。操作するは、アミノ酸配列の改変、グリコシル化パターンの改変、または個々のアミノ酸の側鎖基の改変、ならびにこれらのアプローチの組み合わせを含む。
本明細書で使用する「アミノ酸変異」という用語は、アミノ酸の置換、欠失、挿入、および改変を包含することが意図される。最終構築物が望ましい特徴、例えば、Fc受容体との低減した結合または別のペプチドとの向上した会合を有するのであれば、最終構築物に達するために、置換、欠失、挿入、および改変の任意の組み合わせを加えることができる。アミノ酸配列の欠失および挿入には、アミノ末端および/またはカルボキシ末端でのアミノ酸欠失およびアミノ酸挿入が含まれる。特定のアミノ酸変異はアミノ酸置換である。例えば、Fc領域の結合特性を変える目的では、非保存的アミノ酸置換、すなわち、あるアミノ酸と、異なる構造特性および/または化学特性を有する別のアミノ酸との交換が特に好ましい。アミノ酸置換には、非天然アミノ酸または20種類の標準的なアミノ酸の天然アミノ酸誘導体(例えば、4-ヒドロキシプロリン、3-メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5-ヒドロキシリジン)による交換が含まれる。アミノ酸変異は当技術分野において周知の遺伝的方法または化学的方法を用いて作製することができる。遺伝的方法には、部位特異的変異誘発、PCR、遺伝子合成などが含まれ得る。化学修飾などの遺伝子工学以外の方法によるアミノ酸の側鎖基を変える方法も有用な場合があることが意図される。同じアミノ酸変異を示すために様々な名称が本明細書において用いられることがある。例えば、Fcドメインの位置329にあるプロリンからグリシンへの置換は、329G、G329、G329、P329G、またはPro329Glyと示すことができる。
本明細書で使用する「ポリペプチド」という用語は、アミド結合(ペプチド結合とも知られる)によって直線的に連結された単量体(アミノ酸)からなる分子を指す。「ポリペプチド」という用語は2個以上のアミノ酸からなる任意の鎖を指し、産物の特定の長さを指さない。従って、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または2個以上のアミノ酸からなる鎖を指すために用いられる他の任意の用語は「ポリペプチド」の定義に含まれ、これらの用語の代わりに、またはこれらの用語と交換可能に「ポリペプチド」という用語が用いられることがある。「ポリペプチド」という用語はまた、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質切断、または非天然アミノ酸による改変を含むが、それに限定されるわけではないポリペプチドの発現後改変の産物を指すことが意図される。ポリペプチドは天然の生物学的供給源から得られてもよく、組換え技術によって産生されてもよいが、必ずしも、指定された核酸配列から翻訳されるとは限らない。化学合成を含む任意のやり方でポリペプチドを作製することができる。本発明のポリペプチドは、約3個以上、5個以上、10個以上、20個以上、25個以上、50個以上、75個以上、100個以上、200個以上、500個以上、1,000個以上、または2,000個以上のアミノ酸のサイズのポリペプチドでもよい。ポリペプチドは、規定された三次元構造を有することがあるが、必ずしも、このような構造を有するとは限らない。規定された三次元構造を有するポリペプチドは、折り畳まれていると呼ばれ、規定された三次元構造を有さず、多数の異なるコンホメーションをとることができるポリペプチドは、折り畳まれていないと呼ばれる。
「単離された」ポリペプチドまたはその変種もしくは誘導体とは、天然環境にはないポリペプチドであることが意図される。特定の精製レベルは必要とされない。例えば、単離されたポリペプチドは、その自然環境または天然環境から取り出されてもよい。宿主細胞内で発現された組換え産生されたポリペプチドおよびタンパク質は本発明の目的で単離されたとみなされ、同様に、任意の適切な技法によって分離、分画、または部分的もしくは実質的に精製されている天然ポリペプチドまたは組換えポリペプチドも単離されたとみなされる。
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列をアライメントし、配列同一性の部分としていかなる保存的置換も考慮に入れずに最大パーセント配列同一性を得るために必要に応じてギャップを導入した後の、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一な候補配列中アミノ酸残基のパーセントと定義される。パーセントアミノ酸配列同一性の決定を目的としたアラインメントは、当技術分野における技術の範囲内である様々なやり方で、例えば、公的に利用可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを用いて実現することができる。当業者であれば、比較されている配列の完全長にわたる最大アラインメントを得るのに必要な任意のアルゴリズムを含めて、配列アラインメントに適したパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のために、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて、%アミノ酸配列同一性値が作成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはGenentech, Inc.によって書かれ、ソースコードはユーザー文書と共に米国著作権庁(U.S. Copyright Office), Washington D.C., 20559に提出されており、米国著作権番号TXU510087で登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech, Inc., South San Francisco, Californiaから公的に利用可能であるか、ソースコードからコンパイルされてもよい。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムで使用する場合はコンパイルしなければならない。全ての配列比較パラメータはALIGN-2プログラムによって設定され、変更はない。アミノ酸配列比較のためにALIGN-2が用いられる場合、ある特定のアミノ酸配列Bに対する、ある特定のアミノ酸配列Bとの、またはある特定のアミノ酸配列Bと比較した、ある特定のアミノ酸配列Aの%アミノ酸配列同一性(あるいは、ある特定のアミノ酸配列Bに対する、ある特定のアミノ酸配列Bとの、またはある特定のアミノ酸配列Bと比較した、ある特定の%アミノ酸配列同一性を有する、またはある特定の%アミノ酸配列同一性を含む、ある特定のアミノ酸配列Aと表すことができる)は、以下:
100 x 分数X/Y
のように計算される。式中、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、そのプログラムのAおよびBのアラインメントにおいて同一マッチとスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAの%アミノ酸配列同一性はAに対するBの%アミノ酸配列同一性と等しくないことが理解されるだろう。特に定めのない限り、本明細書において用いられる全ての%アミノ酸配列同一性の値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを用いて直前の段落に記載のように得られる。
「ポリヌクレオチド」という用語は、単離された核酸分子または構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、ウイルス由来RNA、またはプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、従来のホスホジエステル結合または従来にはない結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)において見られるアミド結合)を含んでもよい。「核酸分子」という用語は、ポリヌクレオチドに存在する任意の1つまたは複数の核酸セグメント、例えば、DNA断片またはRNA断片を指す。
「単離された」核酸分子またはポリヌクレオチドとは、天然環境から取り出されている核酸分子DNAまたはRNAが意図される。例えば、ベクターに含まれるポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは本発明の目的で単離されたとみなされる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種宿主細胞内で維持されている組換えポリヌクレオチド、または溶解状態にある、(部分的もしくは実質的に)精製されたポリヌクレオチドが含まれる。単離されたポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド分子を通常含有している細胞内に含まれるポリヌクレオチド分子を含むが、ポリヌクレオチド分子は染色体外に存在する、またはその天然の染色***置とは異なる染色***置に存在する。単離されたRNA分子には、本発明のインビボRNAまたはインビトロRNAならびに+鎖および-鎖および二本鎖型が含まれる。本発明による単離されたポリヌクレオチドまたは核酸は、合成により生成された、このような分子をさらに含む。さらに、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、または転写ターミネーターなどの調節エレメントでもよく、プロモーター、リボソーム結合部位、または転写ターミネーターなどの調節エレメントを含んでもよい。
本発明の参照ヌクレオチド配列と少なくとも、例えば、95%「同一の」ヌクレオチド配列を有する核酸またはポリヌクレオチドとは、前記ポリヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列100ヌクレオチドにつき5個までの点変異を含んでもよいことを除けば、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であると意図される。言い換えると、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るためには、参照配列中にあるヌクレオチドが5%まで欠失されてもよく、別のヌクレオチドで置換されてもよく、または、参照配列中にある全ヌクレオチドの5%までの数のヌクレオチドが参照配列に挿入されてもよい。参照配列のこれらの変化は参照ヌクレオチド配列の5'末端位置もしくは3'末端位置で生じてもよく、末端位置間の任意の場所で生じてもよく、参照配列中の残基間に1つ1つ分散されてもよく、参照配列内に1つまたは複数の連続したグループとなって分散されてもよい。実際問題として、任意の特定のポリヌクレオチド配列が本発明のヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるかどうかは、従来法によって、公知のコンピュータプログラム、例えば、ポリペプチドについて前述されたコンピュータプログラム(例えば、ALIGN-2)を用いて確かめることができる。
「発現カセット」という用語は、標的細胞において特定の核酸の転写を可能にする一連の指定された核酸エレメントを有する、組換えまたは合成により作製されたポリヌクレオチドを指す。組換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルス、または核酸断片に組み込むことができる。典型的に、発現ベクターの組換え発現カセット部分には、配列の中でも特に、転写しようとする核酸配列およびプロモーターが含まれる。ある特定の態様において、本発明の発現カセットは、本発明の二重特異性抗原結合分子またはその断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む。
「ベクター」または「発現ベクター」という用語は「発現構築物」と同義であり、標的細胞内で機能的に結合している特定の遺伝子を導入し、その遺伝子の発現を誘導するのに用いられるDNA分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造であるベクター、ならびに導入されている宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。本発明の発現ベクターは発現カセットを含む。発現ベクターは多量の安定なmRNAの転写を可能にする。発現ベクターが標的細胞内に入ると、遺伝子によってコードされるリボ核酸分子またはタンパク質が細胞の転写機構および/または翻訳機構によって産生される。1つの態様において、本発明の発現ベクターは、本発明の二重特異性抗原結合分子またはその断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む。
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養」という用語は同義に用いられ、外因性核酸が導入されている細胞を指し、このような細胞の子孫を含む。宿主細胞は、初代形質転換細胞および継代数に関係なく、初代形質転換細胞から得られた子孫を含む「形質転換体」および「形質転換細胞」を含む。子孫は、核酸内容物が親細胞と完全に同一でなくてもよく、変異を含有してもよい。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択された時と同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫も本明細書に含まれる。宿主細胞は、本発明の二重特異性抗原結合分子を作製するのに使用することができる任意のタイプの細胞系である。宿主細胞には、培養細胞、例えば、哺乳動物培養細胞、例えば、ほんの少し例を挙げると、CHO細胞、BHK細胞、NSO細胞、SP2/0細胞、YOミエローマ細胞、P3X63マウスミエローマ細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞、酵母細胞、昆虫細胞、および植物細胞が含まれるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物、または植物培養組織もしくは動物培養組織の中にある細胞も含まれる。
「活性化Fc受容体」は、抗体のFcドメインが結合した後に、受容体を有する細胞を刺激してエフェクター機能を果たすシグナル伝達事象を誘発するFc受容体である。ヒト活性化Fc受容体には、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)、およびFcαRI(CD89)が含まれる。
抗体依存性細胞傷害(ADCC)は、抗体でコーティングされた標的細胞を免疫エフェクター細胞が溶解する免疫機構である。標的細胞は、抗体またはFc領域を含むその誘導体が、一般的に、Fc領域のN末端側にあるタンパク質部分を介して特異的に結合する細胞である。本明細書で使用する「低減したADCC」という用語は、標的細胞を取り囲む培地に含まれる、ある特定の抗体濃度で、ある特定の時間で、前記で定義されたADCC機構によって溶解される標的細胞の数の低減、および/または、ある特定の時間で、ある特定の標的細胞数をADCC機構によって溶解するのに必要とされる、標的細胞を取り囲む培地に含まれる抗体濃度の増加と定義される。ADCCの低減は、(当業者に公知の)同じ標準的な産生方法、精製方法、処方方法、および保管方法を用いて同じタイプの宿主細胞によって産生されたが、操作されていない同じ抗体によって媒介されるADCCと比べられる。例えば、ADCCを低減させるアミノ酸置換をFcドメインに含む抗体によって媒介されるADCCの低減は、このアミノ酸置換がFcドメインにない同じ抗体によって媒介されるADCCと比べられる。ADCCを測定する適切なアッセイは当技術分野において周知である(例えば、PCT公報番号WO2006/082515またはPCT特許出願番号PCT/EP2012/055393を参照されたい)。
薬剤の「有効量」とは、投与された細胞または組織において生理学的変化をもたらすのに必要な量を指す。
薬剤、例えば、薬学的組成物の「治療的有効量」とは、望ましい治療効果または予防結果を実現するために、必要な投与および期間において有効な量を指す。治療的有効量の薬剤は、例えば、疾患の副作用を排除する、減少させる、遅延する、最小化する、または阻止する。
「個体」または「対象」は哺乳動物である。哺乳動物には、家畜化された動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびにげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれるが、これに限定されない。特に、個体または対象はヒトである。
「薬学的組成物」という用語は、薬学的組成物の中に含まれる活性成分の生物学的活性が有効になるような形をしており、かつ製剤が投与される対象に容認できないほど毒性のあるさらなる成分を含有しない調製物を指す。
「薬学的に許容される担体」とは、薬学的組成物の中にある、活性成分以外の、対象に無毒な成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、これに限定されない。
本明細書で使用する「治療(treatment)」(およびその文法上の語尾変化、例えば、「治療する(treat)」または「治療している(treating)」)とは、治療を受けている個体における疾患の自然経過を変えようという臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理の経過の間に行うことができる。望ましい治療効果には、疾患の発生または再発の阻止、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的結果の減少、転移の阻止、疾患進行速度の減少、疾患状態の寛解または軽減、および軽快または予後の改善が含まれるが、これに限定されない。一部の態様において、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、疾患の発症を遅延するために、または疾患進行を遅くするために用いられる。
「添付文書」という用語は、適応症、用法、投与量、投与、併用療法、禁忌症についての情報、および/またはこのような治療製品の使用に関する警告を収めている、市販の治療製品パッケージに慣例に従って入れられている説明書を指すために用いられる。
態様の詳細な説明
T細胞活性化二重特異性抗原結合分子形式
ほとんどの抗体は2本の重鎖および2本の軽鎖で構成される。両鎖は、通常、平らであるか、または凹んでいる抗原結合部位に寄与する。これらの従来の抗体に加えて、ラマ、他のラクダ科の動物、およびサメも、重鎖だけで構成される抗体を産生する。これらの珍しい重鎖抗体の抗原結合部位はシングルドメインだけで形成され、aVH(自律性可変重鎖)またはシングルドメイン可変重鎖と呼ばれる。シングルドメイン可変重鎖は組換えタンパク質として容易に産生される。シングルドメイン可変重鎖の他の有利な特徴には、サイズが小さいこと、溶解度が高いこと、熱安定性があること、リフォールディング能力があること、および組織浸透性が優れていることが含まれる。シングルドメイン抗体は、例えば、Wesolowski et al, Med Microbiol Immunol (2009) 198:157-174に記載されている。シングルドメイン可変重鎖抗体を産生する方法は、例えば、その全体が本明細書において参照として含まれる、WO2012152823およびWO2012056000に記載されている。これらのシングルドメイン可変重鎖抗体には軽鎖がなく、CH1ドメインもない場合がある。従って、シングルドメイン可変重鎖抗体の抗原結合部位はシングルドメインだけで形成される。
シングルドメイン抗原結合(SDAB)分子には、相補性決定領域(complementary determining region)がシングルドメインポリペプチドの一部である分子が含まれる。例には、重鎖可変ドメイン、天然で軽鎖を欠いている結合分子、Nanobody(商標)、従来の4鎖抗体に由来するシングルドメイン、操作されたドメイン、および抗体に由来するシングルドメインスキャフォールド以外のシングルドメインスキャフォールドが含まれるが、これに限定されない。SDAB分子は当技術分野の任意のSDAB分子でもよく、将来の任意のシングルドメイン分子でもよい。SDAB分子は、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、魚類、サメ、ヤギ、ウサギ、およびウシを含むが、これに限定されない任意の種に由来してもよい。この用語は、ラクダ科およびサメ以外の種に由来する天然のシングルドメイン抗体分子も含む。
1つの局面において、SDAB分子は、魚類で発見された免疫グロブリンの可変領域、例えば、サメ血清中に発見された新規抗原受容体(NAR)として知られる免疫グロブリンアイソタイプに由来する可変領域に由来してもよい。NAR(「IgNAR」)の可変領域に由来するシングルドメイン分子を産生する方法は、WO03/014161およびStreltsov (2005) Protein Sci. 14:2901-2909に記載されている。
別の局面によれば、SDAB分子は、軽鎖を欠いている重鎖として知られる天然のシングルドメイン抗原結合分子である。このようなシングルドメイン分子は、例えば、WO9404678およびHamers-Casterman, C. ei al.(1993) Nature 363:446-448に開示されている。はっきりさせるために、天然で軽鎖を欠いている重鎖分子に由来するこの可変ドメインは、4鎖免疫グロブリンの従来のVHと区別するために本明細書ではVHHまたはNanobody(商標)として知られる。このようなVHH分子は、ラクダ科の種、例えば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、およびグアナコから得ることができる。ラクダ科以外の他の種が、天然で軽鎖を欠いている重鎖分子を産生してもよい。このようなVHHは本発明の範囲内である。
SDAB分子は、例えば、その全体が参照として含まれるEP0656946に記載されている。
SDAB分子は組換えでもよく、CDRグラフトされてもよく、ヒト化されてもよく、ラクダ化されてもよく、脱免疫(de-immunize)されてもよく、および/またはインビトロで作製されてもよい(例えば、ファージディスプレイによって選択されてもよい)。シングルドメイン抗体は、ヒトコブラクダ、ラクダ、ラマ、アルパカ、またはサメを望ましい抗原で免疫化し、その後に、重鎖抗体をコードするmRNAを単離することによって得ることができる。逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応によって数百万個のクローンを含有するシングルドメイン抗体遺伝子ライブラリーが作製される。ファージディスプレイおよびリボソームディスプレイのようなスクリーニング法は抗原に結合するクローンを特定するのに役立つ。異なる方法では、以前に免疫されたことのない動物に由来する遺伝子ライブラリーが用いられる。このようなナイーブライブラリーは、通常、望ましい抗原に対して親和性の低い抗体しか含有せず、そのため、追加工程としてランダム変異誘発によって親和性成熟を適用することが必要である。最も強力なクローンが特定された時に、例えば、酵素に対する安定性を改善するように、最も強力なクローンのDNA配列が最適化される。別の目標は、抗体に対するヒト生物の免疫学的反応を阻止するためにヒト化することである。ヒト化は、ラクダ科の動物のVHHとヒトVH断片との間に相同性があるため難しくない。最終工程は、大腸菌(E.coli)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、または他の適切な生物における最適化されたシングルドメイン抗体の翻訳である。または、シングルドメイン抗体は、4本の鎖を有する一般的なマウスIgGまたはヒトIgGから作ることができる。このプロセスは似ており、免疫されたドナーまたはナイーブドナーからの遺伝子ライブラリーおよび最も特異的な抗原を特定するためのディスプレイ法を含む。
1つの態様において、活性化T細胞抗原に特異的に結合することができる第1の抗原結合部分および標的細胞抗原に特異的に結合することができる第2の抗原結合部分を含む、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子であって、前記一方の抗原結合部分が、Fab軽鎖およびFab重鎖の可変領域または定常領域のいずれかが交換されているクロスオーバーFab分子であり、他方の抗原結合部分がシングルドメイン抗原結合分子からなる、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子が提供される。
ある特定の態様において、シングルドメイン抗原結合分子は、ヒトシングルドメイン結合分子(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照されたい)である。
1つの態様において、活性化T細胞抗原に特異的に結合することができる第1の抗原結合部分および標的細胞抗原に特異的に結合することができる第2の抗原結合部分を含む、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子であって、前記一方の抗原結合部分が、Fab分子、またはFab軽鎖およびFab重鎖の可変領域もしくは定常領域のいずれかが交換されているクロスオーバーFab分子であり、他方の抗原結合部分がシングルドメイン可変重鎖からなる、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子が提供される。
別の態様において、活性化T細胞抗原に特異的に結合することができる第1の抗原結合部分が、Fab分子、またはFab軽鎖およびFab重鎖の可変領域もしくは定常領域のいずれかが交換されているクロスオーバーFab分子であり、標的細胞抗原に特異的に結合することができる第2の抗原結合部分がシングルドメイン可変重鎖からなる、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子が提供される。
本発明の二重特異性抗体は1つまたは複数のクロスオーバーFab断片を含んでもよい。クロスオーバーFab断片は、重鎖および軽鎖の可変領域または定常領域のいずれかが交換されているFab断片である。クロスオーバーFab断片を含む二重特異性抗体形式は、例えば、参照として本明細書に含まれる、WO2009080252、WO2009080253、WO2009080251、WO2009080254、WO2010/136172、WO2010/145792、およびEP特許出願第11178371.8号に記載されている。
1つの態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、シングルドメイン抗原結合分子を含む結合タンパク質を含み、活性化T細胞抗原に特異的に結合することができる1個以下の抗原結合部分を含む。
1つの態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、Fab分子、またはFab軽鎖およびFab重鎖の可変領域もしくは定常領域のいずれかが交換されているクロスオーバーFab分子を含む別の抗原結合部分と融合された、シングルドメイン抗原結合分子を含む1つの抗原結合部分を含む。任意で、前記抗原結合部分はペプチドリンカーを介して互いに融合されている。
1つの態様において、前記シングルドメイン抗原結合分子はクロスオーバーFab分子の重鎖のN末端と融合されている。
1つの態様において、前記シングルドメイン抗原結合分子はクロスオーバーFab分子の軽鎖のN末端と融合されている。
1つの態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、標的細胞抗原に特異的に結合することができる第3の抗原結合部分をさらに含む。
1つの態様において、前記標的細胞抗原に特異的に結合することができる第3の抗原結合部分はシングルドメイン抗原結合分子である。1つの態様において、前記標的細胞抗原に特異的に結合することができる第3の抗原結合部分は、前記で定義されたシングルドメイン可変重鎖である。
本発明の1つの態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、安定な会合が可能な第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメインをさらに含む。1つの態様において、前記Fcドメインは、IgG、具体的には、IgG1またはIgG4のFcドメインである。特定の態様において、Fcドメインは、下記で概説するように、Fcドメインの第1のサブユニットおよび第2のサブユニットの会合を促進する改変をさらに含んでもよい。他の具体的な態様において、Fcドメインは、下記で概説するように、Fc受容体に対する結合および/またはエフェクター機能を低減する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。
1つの態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、
a)安定な会合が可能な第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメイン;
b)Fab分子、またはFab軽鎖およびFab重鎖の可変領域もしくは定常領域のいずれかが交換されているクロスオーバーFab分子を含む第1の抗原結合部分であって、前記Fab分子またはクロスオーバーFab分子のFab重鎖のC末端がFcドメインのサブユニットのうちの1つのN末端と融合されている、第1の抗原結合部分;
c)シングルドメイン可変重鎖を含む第2の抗原結合部分であって、前記シングルドメイン可変重鎖がFcドメインのサブユニットのうちの1つのN末端と融合されている、第2の抗原結合部分;ならびに
d)シングルドメイン可変重鎖を含む第3の抗原結合部分であって、前記シングルドメイン可変重鎖が第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端と融合されている、第3の抗原結合部分
を含む。
1つの態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、
a)安定な会合が可能な第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメイン;
b)Fab分子、またはFab軽鎖およびFab重鎖の可変領域もしくは定常領域のいずれかが交換されているクロスオーバーFab分子を含む、活性化T細胞抗原に特異的に結合することができる第1の抗原結合部分であって、前記Fab分子またはクロスオーバーFab分子のFab重鎖のC末端がFcドメインのサブユニットのうちの1つのN末端と融合されている、第1の抗原結合部分;
c)シングルドメイン可変重鎖を含む、標的細胞抗原に特異的に結合することができる第2の抗原結合部分であって、前記シングルドメイン可変重鎖がFcドメインのサブユニットのうちの1つのN末端と融合されている、第2の抗原結合部分;ならびに
d)シングルドメイン可変重鎖を含む、標的細胞抗原に特異的に結合することができる第3の抗原結合部分であって、前記シングルドメイン可変重鎖が第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端と融合されている、第3の抗原結合部分
を含む。
1つの態様において、前記第2の抗原結合部分および第3の抗原結合部分は同じ標的細胞抗原に結合する。
1つの態様において、前記第1の抗原結合部分および/または第2の抗原結合部分はFcドメインにヒンジ領域を介して直接連結されている。別の態様において、前記第1の抗原結合部分および/または第2の抗原結合部分はペプチドリンカーを介してFcドメインに連結されている。
前記の任意の態様によれば、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の成分(例えば、抗原結合部分、Fcドメイン)は直接融合されてもよく、本明細書に記載の、または当技術分野において公知の様々なリンカー、特に、1つまたは複数のアミノ酸、典型的には約2〜20のアミノ酸を含むペプチドリンカーを介して融合されてもよい。適切な非免疫原性のペプチドリンカーには、例えば、(G4S)n、(SG4)n、(G4S)n、またはG4(SG4)nペプチドリンカーが含まれる。式中、nは、一般的には1〜10、典型的には2〜4の数字である。
1つの態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:369、370、および371と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の1つまたは複数のアミノ酸配列を含む。別の態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子はSEQ ID NO:369、370、および371を含む。
抗体に加えて、標的分子に特異的に結合するのに使用することができる他の結合タンパク質または結合ドメインがある(例えば、Binz, H.K., Amstutz, P. and Pluckthun, A., Nat. Biotechnol. 23, 1257-1268, 2005)。このような新規の結合タンパク質クラスまたは結合ドメインクラスの1つは、設計された反復タンパク質または設計された反復ドメインをベースとする(WO2002/020565; Binz, H.K., Amstutz, P., Kohl, A., Stumpp, M.T., Briand, C, Forrer, P., Grutter, M.G., and Pluckthun, A., Nat. Biotechnol. 22, 575-582, 2004; Stumpp, M.T., Binz, H.K and Amstutz, P., Drug Discov. Today 13, 695-701, 2008)。
アンキリン反復タンパク質は、サッカロマイセス・セレビシエ、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、および線虫(Caenorhabditis elegans)にある4種類のこのようなタンパク質を配列比較することによって1987年に特定された。BreedenおよびNasmythは、swi6p、cdcl0p、notch、およびlin-12の配列中に約33残基からなる反復単位のコピーが複数あることを報告した(Breeden and Nasmyth, 1987)。その後に、この反復単位がアンキリンタンパク質に24コピー発見されたことで、この反復単位はアンキリン反復と名付けられた(Lux et al., 1990)。後になって、この反復単位は様々な生物およびウイルスの数百種類ものタンパク質において特定されている(Bork, 1993; SMARTデータベース、Schultz et al., 2000)。これらのタンパク質は核、細胞質、または細胞外空間に位置する。このことは、これらのタンパク質のアンキリン反復ドメインがジスルフィド架橋と無関係であり、従って、前記環境の酸化状態と無関係である事実と一致している。タンパク質1つあたりの反復単位の数は2〜20超である(SMARTデータベース、Schultz et al., 2000)。安定した、折り畳まれたドメインを形成するためには最小限の数の反復単位が必要であるように思われる(Zhang and Peng, 2000)。他方で、1つの折り畳まれたドメインに6反復単位という上限が存在するという、いくつかの証拠もある(Michaely and Bennet, 1993)。
WO2002/020565では、どれくらいの大きさのアンキリン反復タンパク質ライブラリーを構築できるか、およびその一般的な用途について説明している。これらの設計された反復ドメインは反復タンパク質のモジュラー特性を利用し、ドメインの疎水性コアを遮蔽することによって、設計された反復ドメインが凝集しないようにN末端キャッピングモジュールおよびC末端キャッピングモジュールを有する(Forrer, P., Stumpp, M.T., Binz, H.K. and Pluckthun, A., FEBS letters 539, 2-6, 2003)。WO2012069655では、設計されたアンキリン反復ドメインのC末端もしくはN末端のキャッピングモジュールまたはC末端もしくはN末端のキャッピング反復を改善することによって最適化された反復タンパク質について説明している。
さらに、フィブロネクチンIII型ドメインベースのアデンクチン、リポカリンベースのアンチカリン、ユビキチンベースのアフィリン、トランスフェリンベースのトランスボディ、プロテインAドメインベースのアフィボディ、テトラネクチンドメインベースのトリマーX、Cysリッチドメインベースのマイクロプロテイン、Fyn SH3ドメインベースのフィノマー、EGFR Aドメインベースのアビマー、セントリンベースのセンチリン、Kunizドメインベースのカリビター、ならびに無作為化された結合領域および抗体様挙動を有する他の足場タンパク質が本発明に含まれる。
本発明の1つの態様において、活性化T細胞抗原に特異的に結合することができる第1の抗原結合部分および標的細胞抗原に特異的に結合することができる第2の抗原結合部分を含む、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子であって、前記一方の抗原結合部分が、Fab分子、またはFab軽鎖およびFab重鎖の可変領域もしくは定常領域のいずれかが交換されているクロスオーバーFab分子であり、他方の抗原結合部分が、少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質である、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子が提供される。
1つの好ましい態様において、前記他方の抗原結合部分は、2個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質である。別の態様において、前記他方の抗原結合部分は、3個、4個、または5個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質である。
本発明の1つの態様において、活性化T細胞抗原に特異的に結合することができる第1の抗原結合部分および標的細胞抗原に特異的に結合することができる第2の抗原結合部分を含む、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子であって、前記第1の抗原結合部分が、Fab分子、またはFab軽鎖およびFab重鎖の可変領域もしくは定常領域のいずれかが交換されているクロスオーバーFab分子であり、第2の抗原結合部分が、少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質である、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子が提供される。
1つの好ましい態様において、前記第2の抗原結合部分は、2個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質である。別の態様において、前記第2の抗原結合部分は、3個、4個、または5個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質である。
好ましくは、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、少なくとも1個のアンキリン反復ドメインを含む結合タンパク質を含む。前記反復ドメインは、アンキリン反復コンセンサス配列
を含み、式中、「x」は任意のアミノ酸を示し、「」は任意のアミノ酸または欠失を示し、「a」は、無極性側鎖を有するアミノ酸を示し、「p」は、極性側鎖を有する残基を示す。1つの態様において、前記反復ドメインは、アンキリン反復コンセンサス配列
を含み、ここで「x」は任意のアミノ酸を示す。1つの態様において、前記反復ドメインは、アンキリン反復配列モチーフ
を含み、式中、1は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、およびYからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し、2は、H、N、およびYからなる群より選択されるアミノ酸残基を表す。
本発明の二重特異性抗体は1つまたは複数のクロスオーバーFab断片を含む。クロスオーバーFab断片は、重鎖および軽鎖の可変領域または定常領域のいずれかが交換されているFab断片である。クロスオーバーFab断片を含む二重特異性抗体形式は、例えば、参照として本明細書に含まれる、WO2009080252、WO2009080253、WO2009080251、WO2009080254、WO2010/136172、WO2010/145792、およびEP特許出願第11178371.8号に記載されている。
1つの態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、少なくとも1個のアンキリン反復ドメインを含む結合タンパク質を含み、活性化T細胞抗原に特異的に結合することができる1個以下の抗原結合部分を含む。
1つの態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、少なくとも1個のアンキリン反復ドメインを含む結合タンパク質を含む1個の抗原結合部分を含み、少なくとも1個のアンキリン反復ドメインを含む結合タンパク質を含む1個の抗原結合部分は、Fab分子、またはFab軽鎖およびFab重鎖の可変領域もしくは定常領域のいずれかが交換されているクロスオーバーFab分子を含む別の抗原結合部分と融合されている。任意で、前記抗原結合部分はペプチドリンカーを介して互いに融合されている。
1つの態様において、前記少なくとも1個のアンキリン反復ドメインを含む結合タンパク質は、クロスオーバーFab分子の重鎖のN末端と融合されている。
1つの態様において、前記少なくとも1個のアンキリン反復ドメインを含む結合タンパク質は、クロスオーバーFab分子の軽鎖のN末端と融合されている。
1つの態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、標的細胞抗原に特異的に結合することができる第3の抗原結合部分をさらに含む。
1つの態様において、前記標的細胞抗原に特異的に結合することができる第3の抗原結合部分は、少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質である。1つの態様において、前記標的細胞抗原に特異的に結合することができる第3の抗原結合部分は、前記で定義された少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質である。1つの態様において、前記標的細胞抗原に特異的に結合することができる第3の抗原結合部分は、2個、3個、4個、または5個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質である。
本発明の1つの態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、安定な会合が可能な第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメインをさらに含む。1つの態様において、前記Fcドメインは、IgG、具体的には、IgG1またはIgG4のFcドメインである。具体的な態様において、Fcドメインは、下記で概説するように、Fcドメインの第1のサブユニットおよび第2のサブユニットの会合を促進する改変をさらに含んでもよい。他の具体的な態様において、Fcドメインは、下記で概説するように、Fc受容体に対する結合および/またはエフェクター機能を低減する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。
1つの態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、
a)安定な会合が可能な第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメイン;
b)Fab分子、またはFab軽鎖およびFab重鎖の可変領域もしくは定常領域のいずれかが交換されているクロスオーバーFab分子を含む第1の抗原結合部分であって、前記Fab分子またはクロスオーバーFab分子のFab重鎖のC末端がFcドメインのサブユニットのうちの1つのN末端と融合されている、第1の抗原結合部分;
c)少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質を含む第2の抗原結合部分であって、前記少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質がFcドメインのサブユニットのうちの1つのN末端と融合されている、第2の抗原結合部分;ならびに
d)少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質を含む第3の抗原結合部分であって、少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質が第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端と融合されている、第3の抗原結合部分
を含む。
1つの態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、
a)安定な会合が可能な第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメイン;
b)Fab分子、またはFab軽鎖およびFab重鎖の可変領域もしくは定常領域のいずれかが交換されているクロスオーバーFab分子を含む、活性化T細胞抗原に特異的に結合することができる第1の抗原結合部分であって、前記Fab分子またはクロスオーバーFab分子のFab重鎖のC末端がFcドメインのサブユニットのうちの1つのN末端と融合されている、第1の抗原結合部分;
c)少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質を含む、標的細胞抗原に特異的に結合することができる第2の抗原結合部分であって、前記少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質がFcドメインのサブユニットのうちの1つのN末端と融合されている、第2の抗原結合部分;ならびに
d)少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質を含む、標的細胞抗原に特異的に結合することができる第3の抗原結合部分であって、少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質が第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端と融合されている、第3の抗原結合部分
を含む。
1つの態様において、前記第2の抗原結合部分および第3の抗原結合部分は同じ標的細胞抗原に結合する。
1つの態様において、前記第1の抗原結合部分および/または第2の抗原結合部分はヒンジ領域を介して、Fcドメインに直接連結されている。別の態様において、前記第1の抗原結合部分および/または第2の抗原結合部分はペプチドリンカーを介してFcドメインに連結されている。
前記の任意の態様によれば、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の成分(例えば、抗原結合部分、Fcドメイン)は直接融合されてもよく、本明細書に記載の、または当技術分野において公知の様々なリンカー、特に、1つまたは複数のアミノ酸、典型的には約2〜20個のアミノ酸を含むペプチドリンカーを介して融合されてもよい。適切な非免疫原性のペプチドリンカーには、例えば、(G4S)n、(SG4)n、(G4S)n、またはG4(SG4)nペプチドリンカーが含まれる。式中、nは、一般的には1〜10、典型的には2〜4の数字である。
Fcドメイン
本発明の一部の態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子はFcドメインを含む。T細胞活性化二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、免疫グロブリン分子の重鎖ドメインを含む一対のポリペプチド鎖からなる。例えば、免疫グロブリンG(IgG)分子のFcドメインは二量体であり、二量体の各サブユニットはCH2およびCH3 IgG重鎖定常ドメインを含む。2個のFcドメインサブユニットは互いに安定な会合が可能である。1つの態様において、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は1個以下のFcドメインを含む。
本発明による1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子のFcドメインはIgG Fcドメインである。特定の態様において、FcドメインはIgG1 Fcドメインである。別の態様において、FcドメインはIgG4 Fcドメインである。さらに具体的な態様において、Fcドメインは、位置S228(Kabatナンバリング)にアミノ酸置換、特に、アミノ酸置換 S228Pを含むIgG4 Fcドメインである。このアミノ酸置換はIgG4抗体のインビボFabアーム交換を低減する(Stubenrauch et al., Drug Metabolism and Disposition 38, 84-91 (2010)を参照されたい)。さらに特定の態様において、Fcドメインはヒトである。ヒト IgG1 Fc 領域の例示的な配列をSEQ ID NO:149に示した。
ヘテロ二量体化を促進するFcドメイン改変
本発明によるT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、異なる抗原結合部分を含み、1つの態様においては、Fcドメインの2つのサブユニットの一方または他方と融合されている。従って、Fcドメインの2つのサブユニットは、典型的に、2本の非同一ポリペプチド鎖の中に含まれる。これらのポリペプチドの組換え同時発現およびその後の二量体化は、2つのポリペプチドのいくつかの可能性のある組み合わせをもたらす。従って、組換え産生におけるT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の収率および純度を改善するために、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子のFcドメインに、望ましいポリペプチドの会合を促進する改変を導入することが有利であろう。
従って、特定の態様において、本発明によるT細胞活性化二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、Fcドメインの第1および第2のサブユニットの会合を促進する改変を含む。ヒトIgG Fcドメインの2つのサブユニット間にある最も大規模なタンパク質間相互作用の部位はFcドメインのCH3ドメインにある。従って、1つの態様において、前記改変はFcドメインのCH3ドメインにある。
特定の態様において、前記改変は、Fcドメインの2つのサブユニットの一方に「ノブ」改変、Fcドメインの2つのサブユニットの他方に「ホール」改変を含む、いわゆる「ノブイントゥホール(knob-into-hole)」改変である。
ノブイントゥホール技術は、例えば、US 5,731,168; US 7,695,936; Ridgway et al., Prot Eng 9, 617-621 (1996)およびCarter, J Immunol Meth 248, 7-15 (2001)に記載されている。一般的に、この方法は、突出部(「ノブ」)を空洞(「ホール」)の中に配置させてヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨害できるように、第1のポリペプチドの境界面に突出部および第2のポリペプチドの境界面に対応する空洞を導入することを伴う。第1のポリペプチドの境界面に由来する小さなアミノ酸側鎖を大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)と交換することによって突出部が構築される。大きなアミノ酸側鎖を小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)と交換することによって、突出部と同一または類似するサイズの埋め合わせとなる空洞が第2のポリペプチドの境界面に作り出される。
従って、特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子のFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基が、これより大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基と交換され、それによって、第2のFcドメインサブユニットのCH3ドメイン内の空洞に配置可能な突出部が、第1のサブユニットのCH3ドメイン内に生じ、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基が、これより小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基と交換され、それによって、第1のサブユニットのCH3ドメイン内にある突出部が配置可能な空洞が、第2のサブユニットのCH3ドメイン内に生じる。
突出部および空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を変えることによって、例えば、部位特異的変異誘発によって、またはペプチド合成によって作ることができる。
特定の態様において、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにある位置366のスレオニン残基がトリプトファン残基と交換され(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにある位置407のチロシン残基がバリン残基と交換される(Y407V)。1つの態様において、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、さらに、位置366のスレオニン残基がセリン残基と交換され(T366S)、位置368のロイシン残基がアラニン残基と交換される(L368A)。
なおさらなる態様において、Fcドメインの第1のサブユニットでは、さらに、位置354にあるセリン残基がシステイン残基と交換され(S354C)、Fcドメインの第2のサブユニットでは、さらに、位置349にあるチロシン残基がシステイン残基と交換される(Y349C)。これらの2つのシステイン残基が導入されると、Fcドメインの2つのサブユニット間にジスルフィド架橋が形成され、二量体がさらに安定化する(Carter, J Immunol Methods 248, 7-15 (2001))。
特定の態様において、活性化T細胞抗原に結合することができる抗原結合部分は、(任意で、標的細胞抗原に結合することができる抗原結合部分を介して)第1のFcドメインサブユニット(「ノブ」改変を含む)と融合されている。理論に拘束されるつもりはないが、活性化T細胞抗原に結合することができる抗原結合部分と、Fcドメインのノブ含有サブユニットが融合すると、活性化T細胞抗原に結合することができる2つの抗原結合部分を含む抗原結合分子の生成が(さらに)最小化する(2つのノブ含有ポリペプチドの立体衝突)。
1つの態様において、Fcドメインの第1のサブユニットおよび第2のサブユニットの会合を促進する改変は、静電ステアリング効果を媒介する改変、例えば、PCT公報WO2009/089004に記載の改変を含む。一般的に、この方法は、ホモ二量体形成が静電気的に好ましくないが、ヘテロ二量体化が静電気的に好ましくなるように、2つのFcドメインサブユニットの境界面にある1つまたは複数のアミノ酸残基を荷電アミノ酸残基と交換することを伴う。
1つの局面において、本発明は、抗原結合部分の一方が、活性化T細胞抗原に特異的に結合することができるFab分子であり、他方が、標的細胞抗原に特異的に結合することができるFab分子である、第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分であって、第1の抗原結合部分が、
(a)Fab軽鎖およびFab重鎖がペプチドリンカーでつながっている単鎖Fab分子、または
(b)Fab軽鎖およびFab重鎖の可変領域もしくは定常領域のいずれかが交換されているクロスオーバーFab分子
である、第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分と、
安定な会合が可能な第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメインであって、前記第1のサブユニットおよび前記第2のサブユニットがヘテロ二量体形成に静電気的に有利な1つもしくは複数の荷電アミノ酸を含むように改変されている、Fcドメインと
を含む、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子を提供する。
1つの局面において、前記第1のサブユニットはアミノ酸変異E356K、E357K、およびD399Kを含み、前記第2のサブユニットはアミノ酸変異K370E、K409E、およびK439Eを含む。
別の態様において、前記第1のサブユニットはアミノ酸変異K392D、K409Dを含み、前記第2のサブユニットはアミノ酸変異E356K、D399K(DDKK)を含む。
T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の成分は様々な構成で互いに融合することができる。例示的な構成を図1に図示する。
一部の態様において、第2の抗原結合部分のFab重鎖のC末端はFcドメインの第1のサブユニットまたは第2のサブユニットのN末端と融合されている。
このような特定の態様において、第1の抗原結合部分のFab重鎖のC末端は第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端と融合されている。このような特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメイン、ならびに任意で、1つまたは複数のペプチドリンカーから本質的になり、第1の抗原結合部分のFab重鎖のC末端は第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端と融合されており、第2の抗原結合部分のFab重鎖のC末端はFcドメインの第1のサブユニットまたは第2のサブユニットのN末端と融合されている。さらにより具体的な態様において、第1の抗原結合部分は単鎖Fab分子である。または、特定の態様において、第1の抗原結合部分はクロスオーバーFab分子である。任意で、第1の抗原結合部分がクロスオーバーFab分子であれば、さらに、第1の抗原結合部分のFab軽鎖および第2の抗原結合部分のFab軽鎖は互いに融合されていてもよい。
別のこのような態様において、第1の抗原結合部分のFab重鎖のC末端はFcドメインの第1のサブユニットまたは第2のサブユニットのN末端と融合されている。このような特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメイン、ならびに任意で、1つまたは複数のペプチドリンカーから本質的になり、第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分それぞれのFab重鎖のC末端はFcドメインのサブユニットのうちの1つのN末端と融合されている。さらにより具体的な態様において、第1の抗原結合部分は単鎖Fab分子である。または、特定の態様において、第1の抗原結合部分はクロスオーバーFab分子である。
さらに別のこのような態様において、第2の抗原結合部分のFab軽鎖のC末端は第1の抗原結合部分のFab軽鎖のN末端と融合されている。このような特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメイン、および任意で、1つまたは複数のペプチドリンカーから本質的になる。第1の抗原結合部分のFab軽鎖のN末端は第2の抗原結合部分のFab軽鎖のC末端と融合されており、第2の抗原結合部分のFab重鎖のC末端はFcドメインの第1のサブユニットまたは第2のサブユニットのN末端と融合されている。さらにより具体的な態様において、第1の抗原結合部分はクロスオーバーFab分子である。
他の態様において、第1の抗原結合部分のFab重鎖のC末端はFcドメインの第1のサブユニットまたは第2のサブユニットのN末端と融合されている。
このような特定の態様において、第2の抗原結合部分のFab重鎖のC末端は第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端と融合されている。このような特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメイン、および任意で、1つまたは複数のペプチドリンカーから本質的になり、第2の抗原結合部分のFab重鎖のC末端は第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端と融合されており、第1の抗原結合部分のFab重鎖のC末端はFcドメインの第1のサブユニットまたは第2のサブユニットのN末端と融合されている。さらにより具体的な態様において、第1の抗原結合部分はクロスオーバーFab分子である。任意で、さらに、第1の抗原結合部分のFab軽鎖および第2の抗原結合部分のFab軽鎖は互いに融合されていてもよい。
特に、これらの態様のうち、第1の抗原結合部分は活性化T細胞抗原に特異的に結合することができる。他の態様において、第1の抗原結合部分は標的細胞抗原に特異的に結合することができる。
抗原結合部分は、Fcドメインと、または互いに直接融合されてもよく、1つもしくは複数のアミノ酸、典型的には約2〜20アミノ酸を含むペプチドリンカーを介して融合されてもよい。ペプチドリンカーは当技術分野において公知であり、本明細書において説明されている。適切な非免疫原性のペプチドリンカーには、例えば、(G4S)n、(SG4)n、(G4S)n、またはG4(SG4)nペプチドリンカーが含まれる。「n」は、一般的には1〜10、典型的には2〜4の数字である。第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分のFab軽鎖を互いに融合するのに特に適切したペプチドリンカーは(G4S)2である。第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分のFab重鎖をつなぐのに適した例示的なペプチドリンカーはEPKSC(D)-(G4S)2(SEQ ID NO 150および151)である。さらに、リンカーは免疫グロブリンヒンジ領域(の一部)を含んでもよい。特に、抗原結合部分がFcドメインサブユニットのN末端と連結される場合、さらなるペプチドリンカーを用いて、またはさらなるペプチドリンカーを用いずに免疫グロブリンヒンジ領域またはその一部を介して融合されてもよい。
標的細胞抗原に特異的に結合することができる1つの抗原結合部分を有するT細胞活性化二重特異性抗原結合分子(例えば、図1A、1B、1D、1E、1H、1I、1K、または1Mに示したような)は、特に、高親和性の抗原結合部分の結合後に標的細胞抗原の内部移行が予想される場合に有用である。このような場合、標的細胞抗原に特異的な複数の抗原結合部分が存在すると標的細胞抗原の内部移行が増強し、それによって抗原の利用可能性が低下する場合がある。
しかしながら、他の多くの場合では、例えば、標的部位への標的化を最適化するために、または標的細胞抗原の架橋を可能にするために、標的細胞抗原に特異的な2つ以上の抗原結合部分を含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を有することが有利であろう(図1C、1F、1G、1J、または1Lに示した例を参照されたい)。
従って、ある特定の態様において、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、標的細胞抗原に特異的に結合することができるFab分子である第3の抗原結合部分をさらに含む。1つの態様において、第3の抗原結合部分は、第1の抗原結合部分または第2の抗原結合部分と同じ標的細胞抗原に特異的に結合することができる。特定の態様において、第1の抗原結合部分は活性化T細胞抗原に特異的に結合することができ、第2の抗原結合部分および第3の抗原結合部分は標的細胞抗原に特異的に結合することができる。
1つの態様において、第3の抗原結合部分のFab重鎖のC末端はFcドメインの第1のサブユニットまたは第2のサブユニットのN末端と融合されている。特定の態様において、第2の抗原結合部分および第3の抗原結合部分それぞれのFab重鎖のC末端はFcドメインのサブユニットのうちの1つのN末端と融合されており、第1の抗原結合部分のFab重鎖のC末端は第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端と融合されている。1つのこのような態様において、第1の抗原結合部分は単鎖Fab分子である。このような特定の態様において、第1の抗原結合部分はクロスオーバーFab分子である。任意で、第1の抗原結合部分がクロスオーバーFab分子であれば、さらに、第1の抗原結合部分のFab軽鎖および第2の抗原結合部分のFab軽鎖は互いに融合されていてもよい。
第2の抗原結合部分および第3の抗原結合部分はFcドメインと直接融合されていてもよく、ペプチドリンカーを介して融合されていてもよい。特定の態様において、第2の抗原結合部分および第3の抗原結合部分はそれぞれ免疫グロブリンヒンジ領域を介してFcドメインと融合されている。特定の態様において、免疫グロブリンヒンジ領域はヒトIgG1ヒンジ領域である。1つの態様において、第2の抗原結合部分および第3の抗原結合部分ならびにFcドメインは免疫グロブリン分子の一部である。特定の態様において、免疫グロブリン分子はIgGクラス免疫グロブリンである。さらにより具体的な態様において、免疫グロブリンはIgG1サブクラス免疫グロブリンである。別の態様において、免疫グロブリンはIgG4サブクラス免疫グロブリンである。さらに特定の態様において、免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンである。他の態様において、免疫グロブリンはキメラ免疫グロブリンまたはヒト化免疫グロブリンである。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、標的細胞抗原に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子、および活性化T細胞抗原に特異的に結合することができる抗原結合部分から本質的になり、前記抗原結合部分は、単鎖Fab分子またはクロスオーバーFab分子、特に、任意で、ペプチドリンカーを介して免疫グロブリン重鎖の1つのN末端と融合されたクロスオーバーFab分子である。
別の態様において、第1の抗原結合部分および第3の抗原結合部分それぞれのFab重鎖のC末端はFcドメインのサブユニットのうちの1つのN末端と融合されており、第2の抗原結合部分のFab重鎖のC末端は第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端と融合されている。このような特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、および第3の抗原結合部分、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメイン、ならびに任意で、1つまたは複数のペプチドリンカーから本質的になり、第2の抗原結合部分のFab重鎖のC末端は第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端と融合されており、第1の抗原結合部分のFab重鎖のC末端は第1のFcドメインサブユニットのN末端に融合されており、第3の抗原結合部分のFab重鎖のC末端は第2のFcドメインサブユニットのN末端に融合されている。このような特定の態様において、第1の抗原結合部分はクロスオーバーFab分子である。任意で、さらに、第1の抗原結合部分のFab軽鎖および第2の抗原結合部分のFab軽鎖は互いに融合されていてもよい。
本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の一部において、第1の抗原結合部分のFab軽鎖および第2の抗原結合部分のFab軽鎖は互いに融合されており、任意で、リンカーペプチドを介して互いに融合されている。第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分の構成に応じて、第1の抗原結合部分のFab軽鎖のC末端は、第2の抗原結合部分のFab軽鎖のN末端に融合されていてもよい。または、第2の抗原結合部分のFab軽鎖のC末端は第1の抗原結合部分のFab軽鎖のN末端に融合されていてもよい。第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分のFab軽鎖が融合されると、対応しないFab重鎖および軽鎖の誤対合がさらに減り、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の一部の発現に必要なプラスミド数も減る。
ある特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、第1のFab軽鎖がペプチドリンカーとカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、ペプチドリンカーが第1のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、第1のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL-CL-リンカー-VH-CH1-CH2-CH2(-CH4))、および第2のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH-CH1-CH2-CH3(-CH4))を含む。一部の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は第2のFab軽鎖ポリペプチド(VL-CL)をさらに含む。ある特定の態様において、前記ポリペプチドは、共有結合により、例えば、ジスルフィド結合により連結されている。
一部の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、第1のFab軽鎖がペプチドリンカーとカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、ペプチドリンカーが第1のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、第1のFab重鎖が第2のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、第2のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL-CL-リンカー-VH-CH1-VH-CH1-CH2-CH3(-CH4))を含む。これらの態様の1つでは、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は第2のFab軽鎖ポリペプチド(VL-CL)をさらに含む。これらの態様に従うT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、(i)Fcドメインサブユニットポリペプチド(CH2-CH3(-CH4))、または(ii)第3のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH-CH1-CH2-CH3(-CH4))および第3のFab軽鎖ポリペプチド(VL-CL)をさらに含んでもよい。ある特定の態様において、前記ポリペプチドは、共有結合により、例えば、ジスルフィド結合により連結されている。
ある特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、第1のFab軽鎖可変領域が第1のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、重鎖可変領域が軽鎖可変領域と交換されているクロスオーバーFab重鎖)、そして、第1のFab重鎖定常領域がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL-CH1-CH2-CH2(-CH4))、ならびに第2のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH-CH1-CH2-CH3(-CH4))を含む。一部の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、Fab重鎖可変領域がFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH-CL)、およびFab軽鎖ポリペプチド(VL-CL)をさらに含む。ある特定の態様において、前記ポリペプチドは、共有結合により、例えば、ジスルフィド結合により連結されている。
別の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、第1のFab重鎖可変領域が第1のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、重鎖定常領域が軽鎖定常領域と交換されているクロスオーバーFab重鎖)、そして、第1のFab軽鎖定常領域がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH-CL-CH2-CH2(-CH4))、および第2のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH-CH1-CH2-CH3(-CH4))を含む。一部の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、Fab軽鎖可変領域がFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL-CH1)およびFab軽鎖ポリペプチド(VL-CL)をさらに含む。ある特定の態様において、前記ポリペプチドは、共有結合により、例えば、ジスルフィド結合により連結されている。
一部の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、第1のFab軽鎖可変領域が第1のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、重鎖可変領域が軽鎖可変領域と交換されているクロスオーバーFab重鎖)、そして、第1のFab重鎖定常領域が第2のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、第2のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL-CH1-VH-CH1-CH2-CH3(-CH4))を含む。他の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、第1のFab重鎖可変領域が第1のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、重鎖定常領域が軽鎖定常領域と交換されているクロスオーバーFab重鎖)、そして、第1のFab軽鎖定常領域が第2のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、第2のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH-CL-VH-CH1-CH2-CH3(-CH4))を含む。さらに他の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、第2のFab重鎖が第1のFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、第1のFab軽鎖可変領域が第1のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、重鎖可変領域が軽鎖可変領域と交換されているクロスオーバーFab重鎖)、そして、第1のFab重鎖定常領域がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH-CH1-VL-CH1-CH2-CH3(-CH4))を含む。他の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、第2のFab重鎖が第1のFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、第1のFab重鎖可変領域が第1のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、重鎖定常領域が軽鎖定常領域と交換されているクロスオーバーFab重鎖)、そして、第1のFab軽鎖定常領域がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH-CH1-VH-CL-CH2-CH3(-CH4))を含む。
これらの態様の一部の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、Fab重鎖可変領域がFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するクロスオーバーFab軽鎖ポリペプチド(VH-CL)、およびFab軽鎖ポリペプチド(VL-CL)をさらに含む。これらの態様の他の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、Fab軽鎖可変領域がFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するクロスオーバーFab軽鎖ポリペプチド(VL-CH1)、およびFab軽鎖ポリペプチド(VL-CL)をさらに含む。これらの態様のさらに他の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、Fab軽鎖可変領域がFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab重鎖定常領域がFab軽鎖ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL-CH1-VL-CL)、Fab重鎖可変領域がFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab軽鎖定常領域がFab軽鎖ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH-CL-VL-CL)、Fab軽鎖ポリペプチドがFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab軽鎖可変領域がFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL-CL-VL-CH1)、またはFab軽鎖ポリペプチドがFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab重鎖可変領域がFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL-CL-VH-CL)をさらに含む。
これらの態様に従うT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、(i)Fcドメインサブユニットポリペプチド(CH2-CH3(-CH4))、または(ii)第3のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH-CH1-CH2-CH3(-CH4))、および第3のFab軽鎖ポリペプチド(VL-CL)をさらに含んでもよい。ある特定の態様において、前記ポリペプチドは、共有結合により、例えば、ジスルフィド結合により連結されている。
1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、第2のFab軽鎖が第1のFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、第1のFab軽鎖可変領域が第1のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する(すなわち、軽鎖定常領域が重鎖定常領域と交換されているクロスオーバーFab軽鎖)ポリペプチド(VL-CL-VL-CH1)、第2のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH-CH1-CH2-CH3(-CH4))、および第1のFab重鎖可変領域が第1のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH-CL)を含む。別の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、第2のFab軽鎖が第1のFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、第1のFab重鎖可変領域が第1のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する(すなわち、軽鎖可変領域が重鎖可変領域と交換されているクロスオーバーFab軽鎖)ポリペプチド(VL-CL-VH-CL)、第2のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH-CH1-CH2-CH3(-CH4))、および第1のFab軽鎖可変領域が第1のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL-CH1)を含む。これらの態様に従うT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、(i)Fcドメインサブユニットポリペプチド(CH2-CH3(-CH4))、または(ii)第3のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH-CH1-CH2-CH3(-CH4))、および第3のFab軽鎖ポリペプチド(VL-CL)をさらに含んでもよい。ある特定の態様において、前記ポリペプチドは、共有結合により、例えば、ジスルフィド結合により連結されている。
前記の任意の態様によれば、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の成分(例えば、抗原結合部分、Fcドメイン)は直接融合されてもよく、本明細書に記載の、または当技術分野において公知の様々なリンカー、特に、1つまたは複数のアミノ酸、典型的には約2〜20のアミノ酸を含むペプチドリンカーを介して融合されてもよい。適切な非免疫原性ペプチドリンカーには、例えば、(G4S)n、(SG4)n、(G4S)n、またはG4(SG4)nペプチドリンカーが含まれる。式中、nは、一般的には1〜10、典型的には2〜4の数である。
1つの態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:372、373、374、および375と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の1つまたは複数のアミノ酸配列を含む。別の態様において、前記T細胞活性化二重特異性抗原結合分子はSEQ ID NO:372、373、374、および375を含む。
Fc受容体結合および/またはエフェクター機能を低減するFcドメイン改変
Fcドメインは、標的組織における優れた蓄積に寄与する長い血清半減期および好ましい組織-血液分布比を含む好ましい薬物動態学的特性をT細胞活性化二重特異性抗原結合分子に付与する。しかしながら、同時に、Fcドメインは、抗原を有する好ましい細胞ではなくFc受容体発現細胞へのT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の望ましくない標的化につながる場合がある。さらに、Fc受容体シグナル伝達経路が同時活性化されるとサイトカインが放出される場合がある。このサイトカイン放出は抗原結合分子のT細胞活性化特性および長い半減期と組み合わさって、サイトカイン受容体の過剰な活性化および全身投与時の重篤な副作用の原因となる。T細胞以外の(Fc受容体を有する)免疫細胞が活性化されると、T細胞が、例えば、NK細胞によって破壊される可能性があるために、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の効力がさらに低減する場合がある。
従って、特定の態様において、本発明によるT細胞活性化二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、天然のIgG1 Fcドメインと比較して、Fc受容体に対する低い結合親和性および/または低いエフェクター機能を示す。1つのこのような態様において、前記Fcドメイン(または前記Fcドメインを含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子)は、天然のIgG1 Fcドメイン(もしくは天然のIgG1 Fcドメインを含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子)と比較して50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満のFc受容体に対する結合親和性、および/または天然のIgG1 Fcドメインドメイン(もしくは天然のIgG1 Fcドメインを含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子)と比較して50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満のエフェクター機能を示す。1つの態様において、前記Fcドメインドメイン(または前記Fcドメインを含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子)はFc受容体に実質的に結合しない、および/またはエフェクター機能を実質的に誘導しない。特定の態様において、Fc受容体はFcγ受容体である。1つの態様において、Fc受容体はヒトFc受容体である。1つの態様において、Fc受容体は活性化Fc受容体である。特定の態様において、Fc受容体は活性化ヒトFcγ受容体、より具体的にはヒトFcγRIIIa、FcγRI、またはFcγRIIa、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。1つの態様において、エフェクター機能は、CDC、ADCC、ADCP、およびサイトカイン分泌からなる群より選択される1つまたは複数である。特定の態様において、エフェクター機能はADCCである。1つの態様において、Fcドメインドメインは、天然のIgG1 Fcドメインと比較して、胎児性Fc受容体(FcRn)に対する実質的に類似した結合親和性を示す。FcRnに対する実質的に類似した結合は、前記Fcドメイン(または前記Fcドメインを含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子)が、FcRnに対して、天然のIgG1 Fcドメイン(または天然のIgG1 Fcドメインを含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子)の結合親和性の約70%超、詳細には約80%超、より詳細には約90%超を示す時に達成される。
ある特定の態様において、Fcドメインは、操作されていないFcドメインと比較して、Fc受容体に対する低い結合親和性および/または低いエフェクター機能を有するように操作されている。特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性および/またはエフェクター機能を低減させる1つまたは複数のアミノ酸変異を含む。典型的に、Fcドメインの2つのサブユニットのそれぞれにおいて1つまたは複数の同じアミノ酸変異が存在する。1つの態様において、アミノ酸変異によって、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性が低減する。1つの態様において、アミノ酸変異によって、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性は少なくとも1/2、少なくとも1/5、または少なくとも1/10低減する。Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を低減させるアミノ酸変異が複数ある態様では、これらのアミノ酸変異の組み合わせによって、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性は少なくとも1/10、少なくとも1/20、またはさらに少なくとも1/50低減する場合がある。1つの態様において、操作されたFcドメインを含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、操作されていないFcドメインを含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子と比較して20%未満、詳細には10%未満、より詳細には5%未満のFc受容体に対する結合親和性を示す。特定の態様において、Fc受容体はFcγ受容体である。一部の態様において、Fc受容体はヒトFc受容体である。一部の態様において、Fc受容体は活性化Fc受容体である。特定の態様において、Fc受容体は活性化ヒトFcγ受容体、より具体的にはヒトFcγRIIIa、FcγRI、またはFcγRIIa、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。好ましくは、これらの各受容体との結合が低減する。一部の態様において、補体成分との結合親和性、具体的にはC1qとの結合親和性も低減する。1つの態様において、胎児性Fc受容体(FcRn)との結合親和性は低減しない。前記Fcドメイン(または前記Fcドメインを含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子)が、FcRnに対して、非操作型Fcドメイン(または前記非操作型Fcドメインを含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子)の結合親和性の約70%超を示す場合に、FcRnとの実質的に類似する結合、すなわち、前記受容体に対するFcドメインの結合親和性の保存が達成されている。Fcドメイン、または前記Fcドメインを含む本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、このような親和性の約80%超、さらには約90%超を示してもよい。ある特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、操作されていないFcドメインと比較して低減したエフェクター機能を有するように操作されている。低減したエフェクター機能には、以下:低減した補体依存性細胞傷害(CDC)、低減した抗体依存性細胞傷害(ADCC)、低減した抗体依存性細胞食作用(ADCP)、低減したサイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体を介した低減した抗原取り込み、NK細胞との低減した結合、マクロファージとの低減した結合、単球との低減した結合、多核白血球との低減した結合、アポトーシスを誘導する低減した直接シグナル伝達、低減した標的結合抗体架橋結合、低減した樹状細胞成熟、または低減したT細胞プライミングの1つまたは複数が含まれ得るが、これに限定されない。1つの態様において、低減したエフェクター機能は、低減したCDC、低減したADCC、低減したADCP、および低減したサイトカイン分泌からなる群より選択される1つまたは複数である。特定の態様において、低減したエフェクター機能は、低減したADCCである。1つの態様において、低減したADCCは、操作されていないFcドメイン(または操作されていないFcドメインを含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子)によって誘導されるADCCの20%未満である。
1つの態様において、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性および/またはエフェクター機能を低減させるアミノ酸変異はアミノ酸置換である。1つの態様において、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331、およびP329からなる群より選択される位置におけるアミノ酸置換を含む。さらに具体的な態様において、Fcドメインは、L234、L235、およびP329からなる群より選択される位置におけるアミノ酸置換を含む。一部の態様において、Fcドメインは、アミノ酸置換L234AおよびL235Aを含む。1つのこのような態様において、Fcドメインは、IgG1Fcドメイン、特にヒトIgG1Fcドメインである。1つの態様において、Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含む。さらに具体的な態様において、アミノ酸置換はP329AまたはP329G、特にP329Gである。1つの態様において、Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含み、E233、L234、L235、N297、およびP331より選択される位置にさらなるアミノ酸置換を含む。さらに具体的な態様において、さらなるアミノ酸置換は、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D、またはP331Sである。特定の態様において、Fcドメインは、位置P329、L234、およびL235にアミノ酸置換を含む。さらに詳細な態様において、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A、およびP329G(「P329G LALA」)を含む。1つのこのような態様において、Fcドメインは、IgG1Fcドメイン、特にヒトIgG1Fcドメインである。その全体が参照として本明細書に組み入れられるPCT特許出願番号PCT/EP2012/055393に記載のようにアミノ酸置換の「P329G LALA」組み合わせは、Fcγ受容体とヒトIgG1Fcドメインとの結合をほぼ完全になくす。PCT/EP2012/055393はまた、このような変異体Fcドメインを調製する方法、およびその特性、例えば、Fc受容体結合またはエフェクター機能を確かめるための方法について述べる。
IgG4抗体は、IgG1抗体と比較してFc受容体に対する低減した結合親和性および低減したエフェクター機能を示す。従って、一部の態様において、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、IgG4Fcドメイン、特にヒトIgG4Fcドメインである。1つの態様において、IgG4Fcドメインは、位置S228にアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換S228Pを含む。Fc受容体に対するその結合親和性および/またはそのエフェクター機能をさらに低減させるために、1つの態様では、IgG4Fcドメインは位置L235にアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換L235Eを含む。別の態様において、IgG4Fcドメインは位置P329にアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換P329Gを含む。特定の態様において、IgG4Fcドメインは、位置S228、L235、およびP329にアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換S228P、L235E、およびP329Gを含む。このようなIgG4Fcドメイン変異体およびこれらのFcγ受容体結合特性は、その全体が参照として本明細書に組み入れられるPCT特許出願番号PCT/EP2012/055393に記載されている。
特定の態様において、天然のIgG1Fcドメインと比較して、Fc受容体に対して低減した結合親和性および/または低減したエフェクター機能を示すFcドメインは、アミノ酸置換L234A、L235A、任意で、P329Gを含むヒトIgG1Fcドメイン、またはアミノ酸置換S228P、L235E、任意で、P329Gを含むヒトIgG4Fcドメインである。
ある特定の態様において、FcドメインのN-グリコシル化が排除されている。1つのこのような態様において、Fcドメインは、位置N297にアミノ酸変異、特に、アスパラギンをアラニン(N297A)またはアスパラギン酸(N297D)と交換したアミノ酸置換を含む。
前記およびPCT特許出願番号PCT/EP2012/055393に記載のFcドメインに加えて、Fc受容体結合および/またはエフェクター機能が低減したFcドメインは、Fcドメイン残基238、265、269、270、297、327、および329の1つまたは複数の置換を有するFcドメインも含む(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体は、残基265および297がアラニンに置換された、いわゆる「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号)を含む、アミノ酸位置265、269、270、297、および327の2つ以上に置換を有するFc変異体を含む。
変異体Fcドメインは、当技術分野において周知の遺伝的方法または化学的方法を用いたアミノ酸欠失、置換、挿入、または改変によって調製することができる。遺伝的方法には、コードDNA配列の部位特異的変異誘発、PCR、遺伝子合成などが含まれ得る。正しいヌクレオチド変化は、例えば、配列決定によって立証することができる。
Fc受容体との結合は、例えば、ELISA、または表面プラズモン共鳴(SPR)によって、標準的な計測装置、例えば、BIAcore計器(GE Healthcare)を用いて容易に確かめることができる。Fc受容体は組換え発現によって得られてもよい。このような適切な結合アッセイは本明細書に記載されている。または、Fc受容体に対する、Fcドメイン、またはFcドメインを含む細胞活性化二重特異性抗原結合分子の結合親和性は、特定のFc受容体を発現することが分かっている細胞株、例えば、FcγIIIa受容体を発現するヒトNK細胞を用いて評価されてもよい。
Fcドメイン、またはFcドメインを含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子のエフェクター機能は当技術分野において公知の方法によって測定することができる。ADCCを測定するのに適したアッセイは本明細書に記載されている。関心対象の分子のADCC活性を評価するインビトロアッセイの他の例は、米国特許第5,500,362号; Hellstrom et al. Proc Natl Acad Sci USA 83, 7059-7063 (1986)、およびHellstrom et al., Proc Natl Acad Sci USA 82, 1499-1502 (1985); 米国特許第5,821,337号; Bruggemann et al., J Exp Med 166, 1351-1361(1987)に記載されている。または、非放射性アッセイ法が用いられてもよい(例えば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性細胞傷害アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View, CA);およびCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害アッセイ(Promega, Madison, WI))を参照されたい)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には末梢血単核球(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。または、もしくはそれに加えて、関心対象の分子のADCC活性がインビボで、動物モデル、例えば、Clynes et al., Proc Natl Acad Sci USA 95, 652-656 (1998)に開示される動物モデルにおいて評価されてもよい。
一部の態様では、Fcドメインと補体成分、具体的にはC1qとの結合が低減する。従って、低いエフェクター機能を有するようにFcドメインが操作されている一部の態様において、前記低いエフェクター機能には、低減したCDCが含まれる。T細胞活性化二重特異性抗原結合分子がC1qに結合することができ、従って、CDC活性を有するかどうか確かめるためにC1q結合アッセイが実施されてもよい。例えば、WO2006/029879およびWO2005/100402のC1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイが行われてもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J Immunol Methods 202, 163 (1996); Cragg et al., Blood 101, 1045-1052 (2003);およびCragg and Glennie, Blood 103, 2738-2743(2004)を参照されたい)。
抗原結合部分
本発明の抗原結合分子は二重特異性である。すなわち、本発明の抗原結合分子は、2種類の特異な抗原決定基に特異的に結合することができる少なくとも2つの抗原結合部分を含む。本発明によれば、抗原結合部分は、Fab分子(すなわち、それぞれが可変領域および定常領域を含む重鎖および軽鎖で構成される抗原結合ドメイン)、シングルドメイン抗原結合(SDAB)分子、または少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質(例えば、Darpin)のようなタンパク質スキャフォールドである。1つの態様において、前記Fab分子またはシングルドメイン抗原結合(SDAB)分子はヒトである。別の態様において、前記Fab分子またはシングルドメイン抗原結合(SDAB)分子はヒト化されている。さらに別の態様において、前記Fab分子はヒト重鎖定常領域および軽鎖定常領域を含む。
抗原結合部分の少なくとも1つは単鎖Fab分子またはクロスオーバーFab分子である。このような改変は、異なるFab分子からの重鎖および軽鎖の誤対合を阻止し、それによって、組換え産生における本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の収率および純度が改善する。本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子に有用な特定の単鎖Fab分子では、Fab軽鎖のC末端はペプチドリンカーによってFab重鎖のN末端につながれている。ペプチドリンカーは、機能的な抗原結合部分を形成するようにFab重鎖および軽鎖を配置するのを可能にする。Fab重鎖および軽鎖をつなげるのに適したペプチドリンカーには、例えば、(G4S)6-GG(SEQ ID NO:152)または(SG3)2-(SEG3)4-(SG3)-SG(SEQ ID NO:153)が含まれる。本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子に有用な特定のクロスオーバーFab分子では、Fab軽鎖およびFab重鎖の定常領域が交換されている。本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子に有用な別のクロスオーバーFab分子では、Fab軽鎖およびFab重鎖の可変領域が交換されている。
本発明による特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は標的細胞抗原、特に、腫瘍細胞抗原と活性化T細胞抗原に同時に結合することができる。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、標的細胞抗原と活性化T細胞抗原に同時に結合することによってT細胞と標的細胞とを架橋することができる。さらにより具体的な態様において、このように同時に結合すると、標的細胞、特に、腫瘍細胞が溶解される。1つの態様において、このように同時に結合するとT細胞が活性化される。他の態様において、このように同時に結合すると、増殖、分化、サイトカイン分泌、細胞傷害性エフェクター分子の放出、細胞傷害活性、および活性化マーカーの発現からなる群より選択される、Tリンパ球、特に、細胞傷害性Tリンパ球の細胞応答が生じる。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子が標的細胞抗原に同時に結合せずに活性化T細胞抗原に結合しても、T細胞は活性化されない。
1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、T細胞の細胞傷害活性を標的細胞に方向付け直すことができる。特定の態様において、前記の方向付け直しは、標的細胞によるMHCを介したペプチド抗原提示および/またはT細胞特異性に依存しない。
特に、本発明の任意の態様によるT細胞は細胞傷害性T細胞である。一部の態様において、T細胞は、CD4+細胞またはCD8+T細胞、特に、CD8+T細胞である。
活性化T細胞抗原結合部分
本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、活性化T細胞抗原に結合することができる少なくとも1つの抗原結合部分(本明細書において「活性化T細胞抗原結合部分」とも呼ばれる)を含む。特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、活性化T細胞抗原に特異的に結合することができる1個以下の抗原結合部分を含む。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は活性化T細胞抗原との一価結合を提供する。活性化T細胞抗原結合部分は、従来のFab分子もしくは改変されたFab分子、すなわち、単鎖もしくはクロスオーバーFab分子、またはシングルドメイン抗原結合(SDAB)分子、または少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質でもよい。T細胞活性化二重特異性抗原結合分子に含まれる標的細胞抗原に特異的に結合することができる抗原結合部分が複数ある態様において、活性化T細胞抗原に特異的に結合することができる抗原結合部分は、好ましくは、改変されたFab分子である。
特定の態様において、活性化T細胞抗原は、CD3、特にヒトCD3(SEQ ID NO:265)またはカニクイザルCD3(SEQ ID NO:266)、最も詳細にはヒトCD3である。特定の態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、ヒトCD3およびカニクイザルCD3に対して交差反応性である(すなわち、ヒトCD3およびカニクイザルCD3に特異的に結合する)。一部の態様において、活性化T細胞抗原はCD3のεサブユニットである。
1つの態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、CD3エピトープとの結合においてモノクローナル抗体H2C(PCT公報番号WO2008/119567に記載)と競合することができる。別の態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、CD3エピトープとの結合においてモノクローナル抗体V9(Rodrigues et al., Int J Cancer Suppl 7, 45-50 (1992)および米国特許第6,054,297号に記載)と競合することができる。さらに別の態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、CD3エピトープとの結合においてモノクローナル抗体FN18(Nooij et al., Eur J Immunol 19, 981-984 (1986)に記載)と競合することができる。特定の態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、CD3エピトープとの結合においてモノクローナル抗体SP34(Pessano et al., EMBO J 4, 337-340 (1985)に記載)と競合することができる。1つの態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、モノクローナル抗体SP34と同じCD3エピトープに結合する。1つの態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、SEQ ID NO:163の重鎖CDR1、SEQ ID NO:165の重鎖CDR2、SEQ ID NO:167の重鎖CDR3、SEQ ID NO:171の軽鎖CDR1、SEQ ID NO:173の軽鎖CDR2、およびSEQ ID NO:175の軽鎖CDR3を含む。さらなる態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、SEQ ID NO:169と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の重鎖可変領域配列、およびSEQ ID NO:177と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の軽鎖可変領域配列、または機能を保持しているその変種を含む。
1つの態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、SEQ ID NO:249の重鎖CDR1、SEQ ID NO:251の重鎖CDR2、SEQ ID NO:253の重鎖CDR3、SEQ ID NO:257の軽鎖CDR1、SEQ ID NO:259の軽鎖CDR2、およびSEQ ID NO:261の軽鎖CDR3を含む。1つの態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、CD3エピトープとの結合において、SEQ ID NO:249の重鎖CDR1、SEQ ID NO:251の重鎖CDR2、SEQ ID NO:253の重鎖CDR3、SEQ ID NO:257の軽鎖CDR1、SEQ ID NO:259の軽鎖CDR2、およびSEQ ID NO:261の軽鎖CDR3を含む抗原結合部分と競合することができる。1つの態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、SEQ ID NO:249の重鎖CDR1、SEQ ID NO:251の重鎖CDR2、SEQ ID NO:253の重鎖CDR3、SEQ ID NO:257の軽鎖CDR1、SEQ ID NO:259の軽鎖CDR2、およびSEQ ID NO:261の軽鎖CDR3を含む抗原結合部分と同じCD3エピトープに結合する。さらなる態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、SEQ ID NO:255と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の重鎖可変領域配列、およびSEQ ID NO:263と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の軽鎖可変領域配列、または機能を保持しているその変種を含む。1つの態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、CD3エピトープとの結合において、SEQ ID NO:255の重鎖可変領域配列およびSEQ ID NO:263の軽鎖可変領域配列を含む抗原結合部分と競合することができる。1つの態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、SEQ ID NO:255の重鎖可変領域配列およびSEQ ID NO:263の軽鎖可変領域配列を含む抗原結合部分と同じCD3エピトープに結合する。別の態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、SEQ ID NO:255の重鎖可変領域配列のヒト化バージョンおよびSEQ ID NO:263の軽鎖可変領域配列のヒト化バージョンを含む。1つの態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、SEQ ID NO:249の重鎖CDR1、SEQ ID NO:251の重鎖CDR2、SEQ ID NO:253の重鎖CDR3、SEQ ID NO:257の軽鎖CDR1、SEQ ID NO:259の軽鎖CDR2、SEQ ID NO:261の軽鎖CDR3、ならびにヒト重鎖可変領域および軽鎖可変領域フレームワーク配列を含む。
1つの態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、SEQ ID NO:270、SEQ ID NO:271、およびSEQ ID NO:272からなる群より選択される少なくとも1つの重鎖相補性決定領域(CDR)、ならびにSEQ ID NO:274、SEQ ID NO:275、SEQ ID NO:276からなる群より選択される少なくとも1つの軽鎖CDRを含む。
1つの態様において、活性化T細胞抗原結合部分は、SEQ ID NO:269、SEQ ID NO:298、およびSEQ ID NO:299からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む可変重鎖、ならびにSEQ ID NO:273およびSEQ ID NO:297からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
1つの局面において、活性化T細胞抗原結合部分は、SEQ ID NO:269のアミノ酸配列を含む可変重鎖およびSEQ ID NO:273のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
標的細胞抗原結合部分
本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、標的細胞抗原に結合することができる少なくとも1つの抗原結合部分(本明細書において「標的細胞抗原結合部分」とも呼ばれる)を含む。ある特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、標的細胞抗原に結合することができる2つの抗原結合部分を含む。このような特定の態様において、これらの抗原結合部分はそれぞれ、同じ抗原決定基に特異的に結合する。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、標的細胞抗原に結合することができる2個以下の抗原結合部分を含む。
標的細胞抗原結合部分は、従来のFab分子もしくは改変されたFab分子、すなわち、単鎖もしくはクロスオーバーFab分子、またはシングルドメイン抗原結合(SDAB)分子、または少なくとも1個のアンキリン反復モチーフを含む結合タンパク質でもよい。標的細胞抗原結合部分は特定の抗原決定基に結合し、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子を標的部位、例えば、抗原決定基を有する特定のタイプの腫瘍細胞に方向付けることができる。
ある特定の態様において、標的細胞抗原結合部分は、病理学的状態に関連した抗原、例えば、腫瘍細胞上に提示された抗原またはウイルス感染細胞上に提示された抗原に方向付けられる。適切な抗原は、例えば、細胞表面受容体であるが、これに限定されない細胞表面抗原である。特定の態様において、抗原はヒト抗原である。特定の態様において、標的細胞抗原は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、癌胎児抗原(CEA)、CD19、CD20、およびCD33からなる群より選択される。
特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)に特異的な少なくとも1つの抗原結合部分を含む。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、MCSPエピトープとの結合において、モノクローナル抗体LC007と競合することができる少なくとも1つ、典型的に2つ以上の抗原結合部分(その全体が参照として本明細書に組み入れられる、SEQ ID NO 75および83、ならびに欧州特許出願第EP11178393.2号を参照されたい)を含む。1つの態様において、MCSPに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:69の重鎖CDR1、SEQ ID NO:71の重鎖CDR2、SEQ ID NO:73の重鎖CDR3、SEQ ID NO:77の軽鎖CDR1、SEQ ID NO:79の軽鎖CDR2、およびSEQ ID NO:81の軽鎖CDR3を含む。さらなる態様において、MCSPに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:75と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の重鎖可変領域配列、およびSEQ ID NO:83と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の軽鎖可変領域配列、または機能を保持しているその変種を含む。特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、MCSPエピトープとの結合において、モノクローナル抗体M4-3 ML2と競合することができる少なくとも1つの、典型的に2つ以上の抗原結合部分(その全体が参照として本明細書に組み入れられる、SEQ ID NO 239および247、ならびに欧州特許出願第EP11178393.2を参照されたい)を含む。1つの態様において、MCSPに特異的な抗原結合部分は、モノクローナル抗体M4-3 ML2と同じMCSPエピトープに結合する。1つの態様において、MCSPに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:233の重鎖CDR1、SEQ ID NO:235の重鎖CDR2、SEQ ID NO:237の重鎖CDR3、SEQ ID NO:241の軽鎖CDR1、SEQ ID NO:243の軽鎖CDR2、およびSEQ ID NO:245の軽鎖CDR3を含む。さらなる態様において、MCSPに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:239と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%、特に、約98%、99%、もしくは100%同一の重鎖可変領域配列、およびSEQ ID NO:247と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%、特に、約98%、99%、もしくは100%同一の軽鎖可変領域配列、または機能を保持しているその変種を含む。1つの態様において、MCSPに特異的な抗原結合部分は、モノクローナル抗体M4-3 ML2の親和性成熟バージョンの重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列を含む。1つの態様において、MCSPに特異的な抗原結合部分は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、または7個、特に、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO:239の重鎖可変領域配列;および1個、2個、3個、4個、5個、6個、または7個、特に、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO:247の軽鎖可変領域配列を含む。MCSP、特に、ヒトMCSPとの結合が保存されるのであれば、CDR領域内のアミノ酸残基を含む可変領域配列内の全てのアミノ酸残基を異なるアミノ酸で置換することができる。好ましい変種は、非置換可変領域配列を含む抗原結合部分の結合親和性に少なくとも等しい(または非置換可変領域配列を含む抗原結合部分の結合親和性より強い)MCSPに対する結合親和性を有する変種である。
1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:1のポリペプチド配列、SEQ ID NO:3のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:5のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。さらなる態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:7のポリペプチド配列、SEQ ID NO:9のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:11のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。さらに別の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:13のポリペプチド配列、SEQ ID NO:15のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:5のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。さらに別の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:17のポリペプチド配列、SEQ ID NO:19のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:5のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。別の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:21のポリペプチド配列、SEQ ID NO:23のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:5のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。さらに別の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:25のポリペプチド配列、SEQ ID NO:27のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:5のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。別の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:29のポリペプチド配列、SEQ ID NO:31のポリペプチド配列、SEQ ID NO:33のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:5のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。別の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:29のポリペプチド配列、SEQ ID NO:3のポリペプチド配列、SEQ ID NO:33のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:5のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。別の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:35のポリペプチド配列、SEQ ID NO:3のポリペプチド配列、SEQ ID NO:37のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:5のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。別の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:39のポリペプチド配列、SEQ ID NO:3のポリペプチド配列、SEQ ID NO:41のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:5のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。さらに別の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:29のポリペプチド配列、SEQ ID NO:3のポリペプチド配列、SEQ ID NO:5のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:179のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:5のポリペプチド配列、SEQ ID NO:29のポリペプチド配列、SEQ ID NO:33のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:181のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:5のポリペプチド配列、SEQ ID NO:23のポリペプチド配列、SEQ ID NO:183のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:185のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:5のポリペプチド配列、SEQ ID NO:23のポリペプチド配列、SEQ ID NO:183のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:187のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:33のポリペプチド配列、SEQ ID NO:189のポリペプチド配列、SEQ ID NO:191のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:193のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:183のポリペプチド配列、SEQ ID NO:189のポリペプチド配列、SEQ ID NO:193のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:195のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:189のポリペプチド配列、SEQ ID NO:193のポリペプチド配列、SEQ ID NO:199のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:201のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:5のポリペプチド配列、SEQ ID NO:23のポリペプチド配列、SEQ ID NO:215のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:217のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:5のポリペプチド配列、SEQ ID NO:23のポリペプチド配列、SEQ ID NO:215のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:219のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。
1つの態様において、MCSPに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:280、SEQ ID NO:281、SEQ ID NO:282、SEQ ID NO:301、SEQ ID NO:303、SEQ ID NO:304、およびSEQ ID NO:306からなる群より選択される少なくとも1つの重鎖相補性決定領域(CDR)、ならびにSEQ ID NO:284、SEQ ID NO:285、SEQ ID NO:286、SEQ ID NO:310、SEQ ID NO:311、SEQ ID NO:314、SEQ ID NO:315、およびSEQ ID NO:316からなる群より選択される少なくとも1つの軽鎖CDRを含む。
1つの態様において、MCSPに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:280、SEQ ID NO:281、およびSEQ ID NO:282からなる群より選択される少なくとも1つの重鎖相補性決定領域(CDR)、ならびにSEQ ID NO:284、SEQ ID NO:285、およびSEQ ID NO:286からなる群より選択される少なくとも1つの軽鎖CDRを含む。
1つの態様において、MCSPに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:280の重鎖CDR1、SEQ ID NO:281の重鎖CDR2、SEQ ID NO:282の重鎖CDR3、SEQ ID NO:284の軽鎖CDR1、SEQ ID NO:285の軽鎖CDR2、およびSEQ ID NO:286の軽鎖CDR3を含む。
さらなる態様において、MCSPに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:279、SEQ ID NO:300、SEQ ID NO:302、SEQ ID NO:305、およびSEQ ID NO:307からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む可変重鎖、ならびにSEQ ID NO:283、SEQ ID NO:309、SEQ ID NO:312、SEQ ID NO:313、およびSEQ ID NO:317からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
1つの態様において、MCSPに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:279のアミノ酸配列を含む可変重鎖およびSEQ ID NO:283のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
さらなる態様において、MCSPに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:279と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の重鎖可変領域配列、およびSEQ ID NO:283と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の軽鎖可変領域配列、または機能を保持しているその変種を含む。
1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:278と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリペプチド配列、SEQ ID NO:319と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリペプチド配列、SEQ ID NO:320と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:321と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリペプチド配列を含む。
1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:369と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリペプチド配列、SEQ ID NO:370と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:371と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリペプチド配列を含む。
1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:372と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリペプチド配列、SEQ ID NO:373と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリペプチド配列、SEQ ID NO:374と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:375と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリペプチド配列を含む。
特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:70、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:76、SEQ ID NO:78、SEQ ID NO:80、SEQ ID NO:82、SEQ ID NO:84、SEQ ID NO:234、SEQ ID NO:236、SEQ ID NO:238、SEQ ID NO:240、SEQ ID NO:242、SEQ ID NO:244、SEQ ID NO:246、SEQ ID NO:248、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:180、SEQ ID NO:182、SEQ ID NO:184、SEQ ID NO:186、SEQ ID NO:188、SEQ ID NO:190、SEQ ID NO:192、SEQ ID NO:194、SEQ ID NO:196、SEQ ID NO:200、SEQ ID NO:202、SEQ ID NO:216、SEQ ID NO:218、SEQ ID NO:220、およびSEQ ID NO:329〜388からなる群より選択される配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド配列を含む。
1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)に特異的な少なくとも1つの抗原結合部分を含む。別の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、EGFRエピトープとの結合においてモノクローナル抗体GA201と競合することができる少なくとも1つの、典型的に2つ以上の抗原結合部分を含む。その全体が参照として本明細書に組み入れられる、PCT公報WO2006/082515を参照されたい。1つの態様において、EGFRに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:85の重鎖CDR1、SEQ ID NO:87の重鎖CDR2、SEQ ID NO:89の重鎖CDR3、SEQ ID NO:93の軽鎖CDR1、SEQ ID NO:95の軽鎖CDR2、およびSEQ ID NO:97の軽鎖CDR3を含む。さらなる態様において、EGFRに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:91と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の重鎖可変領域配列、およびSEQ ID NO:99と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の軽鎖可変領域配列、または機能を保持しているその変種を含む。
さらに別の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:43のポリペプチド配列、SEQ ID NO:45のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:47のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。さらなる態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:49のポリペプチド配列、SEQ ID NO:51のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:11のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。さらに別の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:53のポリペプチド配列、SEQ ID NO:45のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:47のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。
特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:86、SEQ ID NO:88、SEQ ID NO:90、SEQ ID NO:92、SEQ ID NO:94、SEQ ID NO:96、SEQ ID NO:98、SEQ ID NO:100、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:54、およびSEQ ID NO:12からなる群より選択される配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド配列を含む。
1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的な少なくとも1つの抗原結合部分を含む。別の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、FAPエピトープとの結合においてモノクローナル抗体3F2と競合することができる少なくとも1つの、典型的に2つ以上の抗原結合部分を含む。その全体が参照として本明細書に組み入れられる、PCT公報WO2012/020006を参照されたい。1つの態様において、FAPに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:101の重鎖CDR1、SEQ ID NO:103の重鎖CDR2、SEQ ID NO:105の重鎖CDR3、SEQ ID NO:109の軽鎖CDR1、SEQ ID NO:111の軽鎖CDR2、およびSEQ ID NO:113の軽鎖CDR3を含む。さらなる態様において、FAPに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:107と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の重鎖可変領域配列、およびSEQ ID NO:115と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の軽鎖可変領域配列、または機能を保持しているその変種を含む。
さらに別の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:55のポリペプチド配列、SEQ ID NO:51のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:11のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。さらなる態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:57のポリペプチド配列、SEQ ID NO:59のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:61のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。
特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:102、SEQ ID NO:104、SEQ ID NO:106、SEQ ID NO:108、SEQ ID NO:110、SEQ ID NO:112、SEQ ID NO:114、SEQ ID NO:116、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:60、SEQ ID NO:62、SEQ ID NO:52、およびSEQ ID NO:12からなる群より選択される配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド配列を含む。
特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、癌胎児抗原(CEA)に特異的な少なくとも1つの抗原結合部分を含む。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、CEAエピトープとの結合においてモノクローナル抗体BW431/26(欧州特許第EP160897号、およびBosslet et al., Int J Cancer 36, 75-84(1985)に記載)と競合することができる少なくとも1つの、典型的に2つ以上の抗原結合部分を含む。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、CEAエピトープとの結合においてモノクローナル抗体CH1A1Aと競合することができる少なくとも1つの、典型的に2つ以上の抗原結合部分(SEQ ID NO 123および131を参照されたい)を含む。その全体が参照として本明細書に組み入れられる、PCT特許公報番号WO2011/023787を参照されたい。1つの態様において、CEAに特異的な抗原結合部分は、モノクローナル抗体CH1A1Aと同じCEAエピトープに結合する。1つの態様において、CEAに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:117の重鎖CDR1、SEQ ID NO:119の重鎖CDR2、SEQ ID NO:121の重鎖CDR3、SEQ ID NO:125の軽鎖CDR1、SEQ ID NO:127の軽鎖CDR2、およびSEQ ID NO:129の軽鎖CDR3を含む。さらなる態様において、CEAに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:123と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%、特に、約98%、99%、もしくは100%同一の重鎖可変領域配列、およびSEQ ID NO:131と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%、特に、約98%、99%、もしくは100%同一の軽鎖可変領域配列、または機能を保持しているその変種を含む。1つの態様において、CEAに特異的な抗原結合部分は、モノクローナル抗体CH1A1Aの親和性成熟バージョンの重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列を含む。1つの態様において、CEAに特異的な抗原結合部分は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、または7個、特に、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO:123の重鎖可変領域配列;および1個、2個、3個、4個、5個、6個、または7個、特に、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO:131の軽鎖可変領域配列を含む。CEA、特に、ヒトCEAとの結合が保存されるのであれば、CDR領域中のアミノ酸残基を含む可変領域配列中の任意のアミノ酸残基を異なるアミノ酸で置換することができる。好ましい変種は、非置換可変領域配列を含む抗原結合部分の結合親和性に少なくとも等しい(または非置換可変領域配列を含む抗原結合部分の結合親和性より強い)CEAに対する結合親和性を有する変種である。
1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:63のポリペプチド配列、SEQ ID NO:65のポリペプチド配列、SEQ ID NO:67のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:33のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:65のポリペプチド配列、SEQ ID NO:67のポリペプチド配列、SEQ ID NO:183のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:197のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:183のポリペプチド配列、SEQ ID NO:203のポリペプチド配列、SEQ ID NO:205のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:207のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:183のポリペプチド配列、SEQ ID NO:209のポリペプチド配列、SEQ ID NO:211のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:213のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。
特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:118、SEQ ID NO:120、SEQ ID NO:122、SEQ ID NO:124、SEQ ID NO:126、SEQ ID NO:128、SEQ ID NO:130、SEQ ID NO:132、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:184、SEQ ID NO:198、SEQ ID NO:204、SEQ ID NO:206、SEQ ID NO:208、SEQ ID NO:210、SEQ ID NO:212、およびSEQ ID NO:214からなる群より選択される配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド配列を含む。
1つの態様において、CEAに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:290、SEQ ID NO:291、およびSEQ ID NO:292からなる群より選択される少なくとも1つの重鎖相補性決定領域(CDR)、ならびにSEQ ID NO:294、SEQ ID NO:295、およびSEQ ID NO:296からなる群より選択される少なくとも1つの軽鎖CDRを含む。
1つの態様において、CEAに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:290の重鎖CDR1、SEQ ID NO:291の重鎖CDR2、SEQ ID NO:292の重鎖CDR3、SEQ ID NO:294の軽鎖CDR1、SEQ ID NO:295の軽鎖CDR2、およびSEQ ID NO:296の軽鎖CDR3を含む。
1つの態様において、CEAに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:289のアミノ酸配列を含む可変重鎖およびSEQ ID NO:293のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
さらなる態様において、CEAに特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:289と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の重鎖可変領域配列、およびSEQ ID NO:293と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の軽鎖可変領域配列、または機能を保持しているその変種を含む。
1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:288と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリペプチド配列、SEQ ID NO:322と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリペプチド配列、SEQ ID NO:323と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:324と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリペプチド配列を含む。
1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、CD33に特異的な少なくとも1つの抗原結合部分を含む。1つの態様において、CD33に特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:133の重鎖CDR1、SEQ ID NO:135の重鎖CDR2、SEQ ID NO:137の重鎖CDR3、SEQ ID NO:141の軽鎖CDR1、SEQ ID NO:143の軽鎖CDR2、およびSEQ ID NO:145の軽鎖CDR3を含む。さらなる態様において、CD33に特異的な抗原結合部分は、SEQ ID NO:139と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の重鎖可変領域配列、およびSEQ ID NO:147と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の軽鎖可変領域配列、または機能を保持しているその変種を含む。
1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:33のポリペプチド配列、SEQ ID NO:213のポリペプチド配列、SEQ ID NO:221のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:223のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。1つの態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:33のポリペプチド配列、SEQ ID NO:221のポリペプチド配列、SEQ ID NO:223のポリペプチド配列、およびSEQ ID NO:225のポリペプチド配列、または機能を保持しているその変種を含む。
特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、SEQ ID NO:134、SEQ ID NO:136、SEQ ID NO:138、SEQ ID NO:140、SEQ ID NO:142、SEQ ID NO:144、SEQ ID NO:146、SEQ ID NO:148、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:214、SEQ ID NO:222、SEQ ID NO:224、およびSEQ ID NO:226からなる群より選択される配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド配列を含む。
ポリヌクレオチド
さらに、本発明は、本明細書に記載のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子をコードする単離されたポリヌクレオチドまたはその断片を提供する。
本発明のポリヌクレオチドは、SEQ ID NO 2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、258、260、262、264、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、および388に示した配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のポリヌクレオチドを、その機能断片または変種を含めて含む。
本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドは、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の全体をコードする1種類のポリヌクレオチドとして発現されてもよく、同時発現される複数種の(例えば、2種類以上の)ポリヌクレオチドとして発現されてもよい。同時発現されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合または他の手段を介して会合して、機能的なT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を形成してもよい。例えば、抗原結合部分の軽鎖部分は、抗原結合部分の重鎖部分、Fcドメインサブユニット、および、任意で、別の抗原結合部分(の一部)を含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子部分とは別のポリヌクレオチドによってコードされてもよい。同時発現された時に、重鎖ポリペプチドは軽鎖ポリペプチドと会合して抗原結合部分を形成する。別の例では、2つのFcドメインサブユニットの一方を含み、任意で、1つまたは複数の抗原結合部分(の一部)を含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子部分は、2つのFcドメインサブユニットの他方を含み、任意で、抗原結合部分(の一部)を含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子部分とは別のポリヌクレオチドによってコードされてもよい。同時発現された時に、Fcドメインサブユニットは会合してFcドメインを形成する。
ある特定の態様において、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分、ならびに2個のサブユニットからなるFcドメインを含む、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の断片をコードし、第1の抗原結合部分は単鎖Fab分子である。1つの態様において、本発明の単離されたポリヌクレオチドは第1の抗原結合部分およびFcドメインサブユニットをコードする。さらに具体的な態様において、単離されたポリヌクレオチドは、単鎖Fab分子がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。別の態様において、本発明の単離されたポリヌクレオチドは第2の抗原結合部分の重鎖およびFcドメインサブユニットをコードする。さらに具体的な態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。さらに別の態様において、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分の重鎖、およびFcドメインサブユニットをコードする。さらに具体的な態様において、単離されたポリヌクレオチドは、単鎖Fab分子がFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。
ある特定の態様において、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分、ならびに2個のサブユニットからなるFcドメインを含むT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の断片をコードし、第1の抗原結合部分はクロスオーバーFab分子である。1つの態様において、本発明の単離されたポリヌクレオチドは第1の抗原結合部分の重鎖およびFcドメインサブユニットをコードする。さらに具体的な態様において、単離されたポリヌクレオチドはFab軽鎖可変領域がFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab重鎖定常領域がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。別の特定の態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fab重鎖可変領域がFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab軽鎖定常領域がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。別の態様において、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、第2の抗原結合部分の重鎖およびFcドメインサブユニットをコードする。さらに具体的な態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。さらに別の態様において、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、第1の抗原結合部分の重鎖、第2の抗原結合部分の重鎖、およびFcドメインサブユニットをコードする。さらに具体的な態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fab軽鎖可変領域がFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab重鎖定常領域がFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。別の特定の態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fab重鎖可変領域がFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab軽鎖定常領域がFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。さらに別の特定の態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fab重鎖がFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab軽鎖可変領域がFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab重鎖定常領域がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。さらに別の特定の態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fab重鎖がFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab重鎖可変領域がFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab軽鎖定常領域がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。
さらなる態様において、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、第3の抗原結合部分の重鎖およびFcドメインサブユニットをコードする。さらに具体的な態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。
さらなる態様において、本発明の単離されたポリヌクレオチドは抗原結合部分の軽鎖をコードする。一部の態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fab軽鎖可変領域がFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。他の態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fab重鎖可変領域がFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。さらに他の態様において、本発明の単離されたポリヌクレオチドは第1の抗原結合部分の軽鎖および第2の抗原結合部分の軽鎖をコードする。さらに具体的な態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fab重鎖可変領域がFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab軽鎖定常領域がFab軽鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。別の特定の態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fab軽鎖がFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab重鎖可変領域がFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。さらに別の特定の態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fab軽鎖可変領域がFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab重鎖定常領域がFab軽鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。さらに別の特定の態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fab軽鎖がFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、そして、Fab軽鎖可変領域がFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。
別の態様において、本発明は、SEQ ID NO 75、83、91、99、107、115、123、131、139、147、169、177、239、247、255、および263に示した可変領域配列をコードする配列を含む、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子またはその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。別の態様において、本発明は、SEQ ID NO 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、および328に示したポリペプチド配列をコードする配列を含む、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子またはその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。別の態様において、さらに、本発明は、SEQ ID NO 2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、258、260、262、264、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、または388に示したヌクレオチド配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の配列を含む、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子またはその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。別の態様において、本発明は、SEQ ID NO 2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、258、260、262、264、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、または388に示した核酸配列を含む、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子またはその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。別の態様において、本発明は、SEQ ID NO 75、83、91、99、107、115、123、131、139、147、169、177、239、247、255、または263に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の可変領域配列をコードする配列を含む、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子またはその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。別の態様において、本発明は、SEQ ID NO 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、または328に示したアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のポリペプチド配列をコードする配列を含む、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子またはその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。本発明は、保存的アミノ酸置換を有する、SEQ ID NO 75、83、91、99、107、115、123、131、139、147、169、177、239、247、255、または263の可変領域配列をコードする配列を含む、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子またはその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを包含する。本発明はまた、保存的アミノ酸置換を有する、SEQ ID NO 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、または328のポリペプチド配列をコードする配列を含む、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子またはその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドも包含する。
ある特定の態様において、ポリヌクレオチドまたは核酸はDNAである。他の態様において、本発明のポリヌクレオチドは、RNA、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の形をしたRNAである。本発明のRNAは一本鎖または二本鎖でもよい。
組換え方法
本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、例えば、固相ペプチド合成(例えば、Merrifield固相合成)または組換え産生によって入手することができる。組換え産生の場合、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子(断片)をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド、例えば、前記のポリヌクレオチドが単離され、宿主細胞におけるさらなるクローニングおよび/または発現のために1つまたは複数のベクターに挿入される。このようなポリヌクレオチドは従来の手順を用いて容易に単離および配列決定することができる。1つの態様において、本発明のポリヌクレオチドの1つまたは複数を含むベクター、好ましくは、発現ベクターが提供される。当業者に周知の方法を用いて、適切な転写/翻訳制御シグナルと共にT細胞活性化二重特異性抗原結合分子(断片)のコード配列を含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、インビトロ組換えDNA法、合成法、およびインビボ組換え/遺伝子組換えが含まれる。例えば、Maniatis et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. (1989);およびAusubel et al., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y (1989)に記載の技法を参照されたい。発現ベクターはプラスミド、ウイルスの一部でもよく、核酸断片でもよい。発現ベクターには、プロモーターおよび/または他の転写制御エレメントもしくは翻訳制御エレメントと機能的に会合して、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子(断片)をコードするポリヌクレオチド(すなわち、コード領域)がクローニングされている発現カセットが含まれる。本明細書で使用する「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸部分である。「停止コドン」(TAG、TGA、またはTAA)はアミノ酸に翻訳されないが、存在するのであればコード領域の一部とみなされることがある。だが、いかなる隣接配列も、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン、5'非翻訳領域および3'非翻訳領域などはコード領域の一部でない。2種類以上のコード領域が1つのポリヌクレオチド構築物、例えば、1つのベクターに存在してもよく、別々のポリヌクレオチド構築物に、例えば、別々の(異なる)ベクターに存在してもよい。さらに、任意のベクターが1つのコード領域を含有してもよく、2種類以上のコード領域を含有してもよい。例えば、本発明のベクターは1種類または複数種のポリペプチドをコードしてもよく、1種類または複数種のポリペプチドは翻訳後または翻訳と同時にタンパク質切断を介して最終タンパク質に分離される。さらに、本発明のベクター、ポリヌクレオチド、または核酸は、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子(断片)またはその変種もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドと融合された状態で、または融合されていない状態で異種コード領域をコードしてもよい。異種コード領域には、分泌シグナルペプチドまたは異種機能ドメインなどの特殊なエレメントまたはモチーフが含まれるが、それに限定されるわけではない。機能的な結合とは、遺伝子産物の発現を調節配列の影響下または制御下に置くように遺伝子産物、例えば、ポリペプチドのコード領域が1つまたは複数の調節配列と結合している時の結合である。プロモーター機能が誘導されることで、望ましい遺伝子産物をコードするmRNAが転写されるのであれば、および2つのDNA断片間の連結の内容が、発現調節配列が遺伝子産物の発現を誘導する能力を妨げない、またはDNA鋳型が転写される能力を妨げないのであれば、2つのDNA断片(例えば、ポリペプチドコード領域およびそれと結合しているプロモーター)は「機能的に結合している」。従って、プロモーターが、ポリペプチドをコードする核酸を転写することができれば、プロモーター領域は、ポリペプチドをコードする核酸と機能的に結合している。プロモーターは、予め決められた細胞でのみ大幅なDNA転写を誘導する細胞特異的プロモーターでもよい。細胞特異的転写を誘導するように、プロモーターに加えて他の転写制御エレメント、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー、および転写終結シグナルをポリヌクレオチドと機能的に結合することができる。適切なプロモーターおよび他の転写制御領域が本明細書において開示される。様々な転写制御領域が当業者に公知である。これらには、サイトメガロウイルスに由来するプロモーターおよびエンハンサーセグメント(例えば、最初期プロモーターとイントロン-A)、シミアンウイルス40(例えば、初期プロモーター)、ならびにレトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルス)などがあるが、それに限定されない、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域が含まれるが、それに限定されるわけではない。他の転写制御領域には、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン、およびウサギα-グロビンなどの脊椎動物遺伝子に由来する転写制御領域、ならびに真核細胞において遺伝子発現を制御することができる他の配列が含まれる。さらなる適切な転写制御領域には、組織特異的なプロモーターおよびエンハンサーならびに誘導性プロモーター(例えば、プロモーター誘導性テトラサイクリン)が含まれる。同様に、様々な翻訳制御エレメントが当業者に公知である。これらの翻訳制御エレメントには、リボソーム結合部位、翻訳開始コドンおよび翻訳終結コドン、ならびにウイルス系に由来するエレメント(特に、内部リボソーム挿入部位すなわち「IRES」。CITE配列とも呼ばれる)が含まれるが、これに限定されない。発現カセットはまた、他の特徴、例えば、複製起点、および/または染色体組み込みエレメント、例えば、レトロウイルス末端反復配列(LTR)、またはアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端配列(ITR)も含んでよい。
本発明のポリヌクレオチドおよび核酸コード領域は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を誘導する分泌ペプチドまたはシグナルペプチドをコードする、さらなるコード領域と結合してもよい。例えば、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の分泌が望ましい場合、シグナル配列をコードするDNAは本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子またはその断片をコードする核酸の上流に配置されることがある。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞によって分泌されるタンパク質にはシグナルペプチド配列または分泌リーダー配列があり、粗面小胞体を通る成長タンパク質鎖の輸送が開始したらシグナルペプチド配列または分泌リーダー配列は成熟タンパク質から切断される。当業者であれば、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドは、一般的に、ポリペプチドのN末端にシグナルペプチドが融合しており、シグナルペプチドは翻訳されたポリペプチドから切断されて、分泌型または「成熟」型のポリペプチドとなることを知っている。ある特定の態様において、天然シグナルペプチド、例えば、免疫グロブリン重鎖シグナルペプチドもしくは軽鎖シグナルペプチド、または機能的に結合しているポリペプチドの分泌を誘導する能力を保持している、その配列の機能誘導体が用いられる。または、異種哺乳動物シグナルペプチドまたはその機能誘導体が用いられてもよい。例えば、野生型リーダー配列は、ヒト組織プラスミノゲンアクチベーター(TPA)またはマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列と置換されてもよい。分泌シグナルペプチドの例示的なアミノ酸配列およびポリヌクレオチド配列をSEQ ID NO 154-162に示した。
後の精製を容易にするために使用することができる短いタンパク質配列(例えば、ヒスチジンタグ)またはT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の標識を助けるために使用することができる短いタンパク質配列をコードするDNAが、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子(断片)をコードするポリヌクレオチドの中に、またはT細胞活性化二重特異性抗原結合分子(断片)をコードするポリヌクレオチドの末端に含まれてもよい。
さらなる態様において、本発明の1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む宿主細胞が提供される。ある特定の態様において、本発明の1つまたは複数のベクターを含む宿主細胞が提供される。前記ポリヌクレオチドおよびベクターは、それぞれ、ポリヌクレオチドおよびベクターに関して本明細書において説明される任意の特徴を単独で、または組み合わせて組み込んでもよい。1つのこのような態様において、宿主細胞は、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子(の一部)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む(例えば、本発明の二重特異性抗原結合分子(の一部)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換またはトランスフェクトされている)。本明細書で使用する「宿主細胞」という用語は、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子またはその断片を生じるように操作することができる任意の種類の細胞系を指す。T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の複製および発現の支援に適した宿主細胞は当技術分野において周知である。このような細胞は、適宜、特定の発現ベクターでトランスフェクトまたは形質導入されてもよく、ラージスケールファーメンターに播種して、臨床用途に十分な量のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を得るために多量のベクター含有細胞を増殖させることができる。適切な宿主細胞には、原核生物微生物、例えば、大腸菌、または様々な真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、昆虫細胞などが含まれる。例えば、特に、グリコシル化が必要とされない場合、ポリペプチドが細菌内で産生されてもよい。発現後、ポリペプチドは、可溶性画分にある細菌細胞ペーストから単離されてもよく、さらに精製することができる。原核生物に加えて糸状菌または酵母などの真核微生物が、ポリペプチドをコードするベクターに適したクローニング宿主または発現宿主であり、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、その結果、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有するポリペプチドが産生される菌類および酵母株を含む。Gerngross, Nat Biotech 22, 1409-1414 (2004)およびLi et al., Nat Biotech 24, 210-215 (2006)を参照されたい。(グリコシル化) ポリペプチドの発現に適した宿主細胞はまた多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例には植物細胞および昆虫細胞が含まれる。昆虫細胞と一緒に使用することができる、特に、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞をトランスフェクトするために使用することができる非常に多くのバキュロウイルス株が特定されている。植物細胞培養物も宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、および同第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術について説明している)を参照されたい。脊椎動物細胞も宿主として使用することができる。例えば、懸濁液中で増殖するように適合された哺乳動物細胞株が有用な場合がある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胚腎臓株(例えば、Graham et al., J. Gen Virol. 36, 59(1977)に記載の293細胞または293T細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather, Biol. Reprod. 23, 243-251 (1980)に記載のTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット(buffalo rat)肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス***腫瘍細胞(MMT060562)、TRI細胞(例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383, 44-68 (1982)に記載)、MRC5細胞、およびFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、dhfr- CHO細胞(Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77, 4216 (1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;ならびにミエローマ細胞株、例えば、YO、NS0、P3X63、およびSp2/0が含まれる。タンパク質産生に適した、ある特定の哺乳動物宿主細胞株の総説については、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003)を参照されたい。宿主細胞は、培養細胞、例えば、ほんの少し例を挙げると哺乳動物培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、細菌細胞、および植物細胞を含むが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物、または植物培養組織もしくは動物培養組織の中に含まれる細胞も含む。1つの態様において、宿主細胞は、真核細胞、好ましくは、哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚腎臓(HEK)細胞、またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NSO、Sp20細胞)である。
これらの系において外来遺伝子を発現するための標準的な技術が当技術分野において公知である。抗体などの抗原結合ドメインの重鎖または軽鎖のいずれかを含むポリペプチドを発現する細胞は、発現産物が重鎖および軽鎖を両方とも有する抗体になるように抗体鎖の他方も発現するように操作されてもよい。
1つの態様において、本発明によるT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を生成する方法であって、本明細書において提供されるT細胞活性化二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の発現に適した条件下で培養する工程、および宿主細胞(または宿主細胞培地)からT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を回収する工程を含む方法が提供される。
T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の成分は遺伝子的に互いに融合されている。T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、その成分が互いに直接、またはリンカー配列を介して間接的に融合されるように設計することができる。リンカーの組成および長さは当技術分野において周知の方法に従って決定することができ、効力について試験することができる。T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の異なる成分間のリンカー配列の例は、本明細書において提供される配列において見出される。所望であれば、融合の個々の成分を分離するための切断部位、例えば、エンドペプチダーゼ認識配列を組み込むように、さらなる配列も含まれてよい。
ある特定の態様において、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の1つまたは複数の抗原結合部分は、少なくとも、抗原決定基に結合することができる抗体可変領域を含む。可変領域は、天然または非天然の抗体およびその断片の一部でもよく、天然または非天然の抗体およびその断片の一部に由来してもよい。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を生成するための方法は当技術分野において周知である(例えば、Harlow and Lane, 「Antibodies, a laboratory manual」, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照されたい)。非天然抗体は固相ペプチド合成を用いて構築されてもよく、組換えにより産生されてもよく(例えば、米国特許第4,186,567号に記載)、例えば、可変重鎖および可変軽鎖を含むコンビナトリアルライブラリーのスクリーニングによって入手されてもよい(例えば、McCaffertyへの米国特許第5,969,108号を参照されたい)。
任意の動物種の抗体、抗体断片、抗原結合ドメイン、または可変領域を本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子において使用することができる。本発明において有用な非限定的な抗体、抗体断片、抗原結合ドメイン、または可変領域は、マウス、霊長類、またはヒトに由来してもよい。T細胞活性化二重特異性抗原結合分子がヒトでの使用を目的とする場合、抗体の定常領域がヒトに由来するキメラ型の抗体が用いられることがある。ヒト化型または完全ヒト型の抗体も当技術分野において周知の方法(例えば、Winterへの米国特許第5,565,332号を参照されたい)に従って調製することができる。ヒト化は、(a)非ヒト(例えば、ドナー抗体)CDRを、極めて重要なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合親和性もしくは抗体機能の保持に重要なフレームワーク残基)を保持している、もしくは保持していないヒト(例えば、レシピエント抗体)フレームワークおよび定常領域に接ぎ合わせる工程、(b)非ヒト特異性決定領域(SDRもしくはa-CDR;抗体-抗原相互作用に極めて重要な残基)のみをヒトフレームワークおよび定常領域に接ぎ合わせる工程、または(c)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の交換によってヒト様部分で「覆い隠す(cloaking)」工程を含むが、これに限定されない様々な方法によって実現することができる。ヒト化抗体およびヒト化抗体を作る方法は、例えば、Almagro and Fransson, Front Biosci 13, 1619-1633 (2008)において概説され、例えば、Riechmann et al., Nature 332, 323-329 (1988); Queen et al., Proc Natl Acad Sci USA 86, 10029-10033 (1989); 米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、および同第7,087,409号; Jones et al., Nature 321, 522-525 (1986); Morrison et al., Proc Natl Acad Sci 81, 6851-6855 (1984); Morrison and Oi, Adv Immunol 44, 65-92 (1988); Verhoeyen et al, Science 239, 1534-1536 (1988); Padlan, Molec Immun 31(3), 169-217 (1994); Kashmiri et al., Methods 36, 25-34 (2005) (SDR (a-CDR)の接ぎ合わせについて説明している); Padlan, Mol Immunol 28, 489-498 (1991) (リサーフェシング(resurfacing)について説明している); Dall'Acqua et al, Methods 36, 43-60 (2005) (「FR シャッフリング」について説明している);ならびにOsbourn et al, Methods 36, 61-68 (2005)およびKlimka et al, Br J Cancer 83, 252-260 (2000)(FRシャッフリングする「ガイディッドセレクション(guided selection)」法について説明している)においてさらに説明される。ヒト抗体およびヒト可変領域は当技術分野において公知の様々な技法を用いて産生することができる。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel, Curr Opin Pharmacol 5, 368-74 (2001)およびLonberg, Curr Opin Immunol 20, 450-459 (2008)において大まかに説明されている。ヒト可変領域は、ハイブリドーマ方法によって作られたヒトモノクローナル抗体の一部を形成してもよく、ハイブリドーマ方法によって作られたヒトモノクローナル抗体に由来してもよい(例えば、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987)を参照されたい)。ヒト抗体およびヒト可変領域はまた、抗原曝露に応答してインタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されているトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製されてもよい(例えば、Lonberg, Nat Biotech 23, 1117-1125 (2005)を参照されたい)。ヒト抗体およびヒト可変領域はまた、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーより選択されるFvクローン可変領域配列を単離することによって作製されてもよい(例えば、Hoogenboom et al., Methods in Molecular Biology 178, 1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001);およびMcCafferty et al., Nature 348, 552-554; Clackson et al., Nature 352, 624-628 (1991)を参照されたい)。ファージは、典型的に、抗体断片を単鎖Fv(scFv)断片またはFab断片としてディスプレイする。
ある特定の態様において、本発明において有用な抗原結合部分は、例えば、その全内容が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2004/0132066号に開示される方法に従って高い結合親和性を有するように操作されている。本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子が特定の抗原決定基に結合する能力は、酵素結合免疫測定法(ELISA)、または当業者がよく知っている他の技法、例えば、表面プラズモン共鳴法(BIACORE T100システムで分析される)(Liljeblad, et al., Glyco J 17, 323-329 (2000))および従来の結合アッセイ(Heeley, Endocr Res 28, 217-229 (2002))を介して測定することができる。ある特定の抗原との結合において参照抗体と競合する抗体、抗体断片、抗原結合ドメイン、または可変ドメイン、例えば、CD3への結合においてV9抗体と競合する抗体を特定するために競合アッセイが用いられてもよい。ある特定の態様において、このような競合抗体は、参照抗体が結合する同じエピトープ(例えば、直鎖エピトープまたはコンホメーションエピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的方法は、Morris (1996)「Epitope Mapping Protocols」, Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供される。例示的な競合アッセイでは、固定化された抗原(例えば、CD3)は、抗原(例えば、V9抗原)に結合する第1の標識抗体、および抗原との結合において第1の抗体と競合する能力について試験されている第2の非標識抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体はハイブリドーマ上清中に存在してもよい。対照として、固定化された抗原は、第1の標識抗体を含むが、第2の非標識抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体と抗原との結合を許容する条件下でインキュベートした後、過剰な非結合抗体が除去され、固定化された抗原と結び付いた標識の量が測定される。固定化された抗原と結び付いた標識の量が対照試料と比べて試験試料においてかなり減少していれば、このことから、第2の抗体は抗原との結合において第1の抗体と競合していることが分かる。Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照されたい。
本明細書に記載のように調製されたT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、当技術分野において公知の技法、例えば、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどによって精製することができる。特定のタンパク質を精製するのに用いられる実際の条件は、部分的に、実効電荷、疎水性、親水性などの要因に左右され、当業者に明らかであろう。アフィニティクロマトグラフィー精製の場合、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子が結合する抗体、リガンド、受容体、または抗原を使用することができる。例えば、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子のアフィニティクロマトグラフィー精製の場合、プロテインAまたはプロテインGを含むマトリックスが用いられてもよい。本質的に実施例に記載のように、連続したプロテインAアフィニティクロマトグラフィーまたはプロテインGアフィニティクロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーを使用して、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子を分離することができる。T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の純度は、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィーなどを含む任意の様々な周知の分析方法によって求めることができる。例えば、実施例に記載のように発現された重鎖融合タンパク質は、還元SDS-PAGEによって証明されたようにインタクトであり、適切に組み立てられていることが示された(例えば、図2を参照されたい)。T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の軽鎖の予測分子量に対応する約Mr25,000、重鎖の予測分子量に対応するMr50,000、および重鎖/軽鎖融合タンパク質の予測分子量に対応するMr75,000の3つのバンドが分離された。
アッセイ
本明細書において提供されるT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の物理的/化学的特性および/または生物学的活性を、当技術分野において公知の様々なアッセイによって特定、スクリーニング、または特徴付けすることができる。
親和性アッセイ
Fc受容体または標的抗原に対するT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の親和性は、実施例に示された方法に従って、BIAcore装置(GE Healthcare)などの標準的な計器を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)によって求めることができる。受容体または標的タンパク質は組換え発現によって入手されてもよい。または、異なる受容体または標的抗原に対するT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の結合は、特定の受容体または標的抗原を発現する細胞株を用いて、例えば、フローサイトメトリー(FACS)によって評価されてもよい。結合親和性を測定するための実例となる、かつ例示的な具体的な態様が、以下において、および下記の実施例において説明される。
1つの態様によれば、表面プラズモン共鳴によって、25℃でBIACORE(登録商標)T100装置(GE Healthcare)を用いてKDが測定される。
Fc部分とFc受容体との相互作用を分析するために、CM5チップ上に固定化した抗Penta His抗体(Qiagen)によってHisタグ化組換えFc受容体を捕捉する。二重特異性構築物を分析物として使用する。簡単に述べると、供給業者の説明書に従って、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5, GE Healthcare)をN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗Penta-His抗体を10mM酢酸ナトリウム, pH5.0で40μg/mlで希釈した後に、約6500応答単位(response unit)(RU)の結合タンパク質となるように5μl/分の流速で注入する。リガンドを注入した後に、反応しなかった基をブロックするために、1Mエタノールアミンを注入する。その後に、Fc受容体を4nMまたは10nMで60秒間、捕捉する。反応速度測定のために、HBS-EP(GE Healthcare、10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%Surfactant P20、 pH7.4)に溶解した二重特異性構築物の4倍段階希釈液(500nM〜4000nMの範囲)を30μl/分の流速、25℃で120秒間、注入する。
標的抗原に対する親和性を求めるために、抗Penta-His抗体について述べたように活性化CM5-センサーチップ表面に固定化した抗ヒトFab特異的抗体(GE Healthcare)によって二重特異性構築物を捕捉する。結合タンパク質の最終量は約12000RUである。二重特異性構築物を300nMで90秒間、捕捉する。標的抗原をフローセルに250〜1000nMの濃度範囲、30μl/分の流速で180秒間、通す。解離を180秒間、モニタリングする。
参照フローセルで得られた応答を差し引くことによって体積屈折率(bulk refractive index)差を補正する。ラングミュア結合等温線の非線形曲線フィッティングによって解離定数KDを得るために定常状態での応答を使用した。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、単純1:1ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model)(BIACORE(登録商標)T100 Evaluation Softwareバージョン1.1.1)を用いて会合センサーグラムおよび解離センサーグラムを同時にフィッティングすることによって計算される。平衡解離定数(KD)は比koff/konとして計算される。例えば、 Chen et al., J Mol Biol 293, 865-881 (1999)を参照されたい。
活性アッセイ
本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の生物学的活性は、実施例に記載されるような様々なアッセイによって測定することができる。生物学的活性には、例えば、T細胞増殖の誘導、T細胞におけるシグナル伝達の誘導、T細胞における活性化マーカー発現の誘導、T細胞によるサイトカイン分泌の誘導、標的細胞、例えば、腫瘍細胞の溶解の誘導、ならびに腫瘍退縮の誘導および/または生存の改善が含まれ得る。
組成物、製剤、および投与経路
さらなる局面において、本発明は、例えば、以下の任意の治療方法において使用するための、本明細書において提供される任意のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を含む薬学的組成物を提供する。1つの態様において、薬学的組成物は、本明細書において提供される任意のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子および薬学的に許容される担体を含む。別の態様において、薬学的組成物は、本明細書において提供される任意のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子および少なくとも1種類のさらなる治療剤、例えば、下記の治療剤を含む。
さらに、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子をインビボ投与に適した形で生成する方法であって、(a)本発明によるT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を入手する工程、および(b)少なくとも1種類の薬学的に許容される担体と共にT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を処方する工程であって、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の調製物がインビボ投与のために処方される工程を含む方法が提供される。
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体に溶解または分散された治療的有効量の1種類または複数種のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を含む。「薬学的または薬理学的に許容される」という句は、適宜、動物、例えば、ヒトに投与された時に、使用された投与量および濃度でレシピエントに概して無毒の分子的実体および組成物、すなわち、有害な、アレルギー性の、または他の不都合な反応を生じない分子的実体および組成物を指す。少なくとも1種類のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を含有し、任意で、さらなる活性成分を含有する薬学的組成物の調製は、参照として本明細書に組み入れられるRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990により例示されるように、本開示を考慮すれば当業者に公知であろう。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与の場合、調製物は、FDA生物基準局(Office of Biological Standards)または他の国の対応機関の基準により求められるような無菌性、発熱性、一般的安全性、および純度の基準を満たさなければならない。好ましい組成物は凍結乾燥製剤または水溶液である。本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」は、任意のおよび全ての溶媒、緩衝液、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、酸化防止剤、タンパク質、薬物、薬物安定剤、ポリマー、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、着香剤、色素、当業者に公知のこのような同様の材料およびその組み合わせを含む(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990, pp. 1289-1329を参照されたい)。従来の担体が活性成分と適合しない場合を除いて、治療薬または薬学的組成物に用いられることが意図される。
組成物は、固体、液体、またはエアロゾルの形で投与されるかどうかに応じて、および注射などその投与経路のために無菌である必要があるかどうかに応じて、異なるタイプの担体を含んでもよい。本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子(および任意のさらなる治療剤)は、静脈内に、皮内に、動脈内に、腹腔内に、病巣内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、脾臓内に、腎臓内に、胸膜内に、気管内に、鼻腔内に、硝子体内に、腟内に、直腸内に、腫瘍内に、筋肉内に、腹腔内に、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、眼内に、経口的に、局部に、局所に、吸入(例えば、エアロゾル吸入)、注射、注入、連続注入、標的細胞を直接浸す局所灌流によって、カテーテルを介して、洗浄によって、クリームに入れて、脂質組成物(例えば、リポソーム)に入れて、または当業者に公知の他の方法もしくは前述の任意の組み合わせ(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990を参照されたい)によって投与することができる。本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子などのポリペプチド分子を投与するために非経口投与、特に、静脈内注射が最も一般的に用いられる。
非経口組成物には、注射、例えば、皮下注射、皮内注射、病巣内注射、静脈内注射、動脈内注射、筋肉内注射、くも膜下腔内注射、または腹腔内注射による投与のために設計された非経口組成物が含まれる。注射の場合、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、水溶液、好ましくは、生理学的に適合する緩衝液、例えば、ハンクス液、リンガー液、または生理食塩水緩衝液に溶解して処方されてもよい。溶液は、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの処方用の剤(formulatory agent)を含有してもよい。または、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、使用前に適切なビヒクル、例えば、発熱物質を含まない滅菌水を用いて構成するために粉末の形をとってもよい。滅菌注射液は、必要とされる量の本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を、必要に応じて以下に列挙された他の成分のいくつかを含む適切な溶媒の中に組み込むことによって調製される。滅菌は、例えば、滅菌濾過膜で濾過することによって容易に達成することができる。一般的に、分散液は、様々な滅菌活性成分を、基本分散媒および/または他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌した注射液、懸濁液、またはエマルジョンを調製するための滅菌散剤の場合、好ましい調製方法は、予め濾過滅菌したその液体媒体から活性成分+任意のさらなる望ましい成分の散剤を生じさせる真空乾燥法および凍結乾燥法である。液体媒体は必要に応じて安定して緩衝されていなければならない。最初に、液体希釈剤が十分な食塩水またはグルコースで注射前に等張にされる。組成物は製造および保管の条件下で安定していなければならず、細菌および菌類などの微生物の汚染作用から保護されていなければならない。エンドトキシン汚染は、安定なレベル、例えば、0.5ng/mgタンパク質未満に最小限に保たれなければならないことが理解されるだろう。適切な薬学的に許容される担体は、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸、および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/または非イオン界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を含むが、これに限定されない。注射用水性懸濁液は、懸濁液の粘度を高める化合物、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、デキストランなどを含有してもよい。任意で、懸濁液はまた、高濃度溶液の調製を可能にする、化合物の溶解度を高める適切な安定剤または薬剤も含有してよい。さらに、適切な注射用油性懸濁液として活性化合物の懸濁液が調製されてもよい。適切な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油、例えば、ゴマ油、あるいは合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチル(ethyl cleats)もしくはトリグリセリド、またはリポソームが含まれる。
活性成分は、調製されたマイクロカプセル、例えば、コアセルベーション法または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、それぞれ、例えば、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルもしくはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)に、またはマクロエマルジョンに封入されてもよい。このような技法は、Remington's Pharmaceutical Sciences (18th Ed. Mack Printing Company, 1990)に開示される。持効性調製物が調製されてもよい。持効性調製物の適切な例には、ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれる。このマトリックスは、成型品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形をとる。特定の態様では、吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、またはその組み合わせの組成物中に使用することによって注射用組成物の長期吸収を生じることができる。
前記の組成物に加えて、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子はまたデポー調製物として処方されてもよい。このような長時間作用型製剤は、移植によって(例えば、皮下もしくは筋肉内に)投与されてもよく、筋肉内注射によって投与されてもよい。従って、例えば、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、適切なポリマー材料もしくは疎水性材料(例えば、許容される油に溶解したエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂として処方されてもよく、やや溶けにくい誘導体、例えば、やや溶けにくい塩として処方されてもよい。
本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を含む薬学的組成物は、従来の混合、溶解、乳化、カプセル化、封入、または凍結プロセスによって製造されてもよい。薬学的組成物は、1種類または複数種の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、またはタンパク質を、薬学的に使用することができる調製物に調製するのを容易にする補助剤を用いて従来のやり方で処方されてもよい。適切な製剤は、選択された投与経路によって決まる。
T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、遊離酸または遊離塩基、中性または塩の形で組成物に処方されてもよい。薬学的に許容される塩は、遊離酸または遊離塩基の生物学的活性を実質的に保持している塩である。これらには、酸添加塩、例えば、タンパク質組成物の遊離アミノ基と形成された酸添加塩、あるいは無機酸、例えば、塩酸もしくはリン酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、もしくはマンデル酸のような有機酸と形成された酸添加塩が含まれる。遊離カルボキシル基と形成された塩はまた、無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、もしくは水酸化第二鉄;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、もしくはプロカインのような有機塩基からも得ることができる。薬学的塩は、水性溶媒および他のプロトン性溶媒中では、対応する遊離塩基型より溶解度が高くなる傾向がある。
治療方法および組成物
本明細書において提供される任意のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を治療方法において使用することができる。本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を、例えば、癌治療において使用することができる。
治療方法において使用する場合、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、好適な医療行為と一致するやり方で処方、投薬、および投与される。この文脈で考慮すべき要因には、治療されている特定の障害、治療されている特定の哺乳動物、患者1人1人の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与計画、および医師が知っている他の要因が含まれる。
1つの局面において、医薬として使用するための本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子が提供される。さらなる局面において、疾患の治療において使用するための本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子が提供される。ある特定の態様において、治療方法において使用するための本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子が提供される。1つの態様において、本発明は、それを必要とする個体において疾患の治療において使用するための本明細書に記載のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を提供する。ある特定の態様において、本発明は、治療的有効量のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を個体に投与する工程を含む、疾患を有する個体を治療する方法において使用するためのT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を提供する。ある特定の態様において、治療される疾患は増殖性障害である。特定の態様において、疾患は癌である。ある特定の態様において、前記方法は、治療される疾患が癌であれば、治療的有効量の少なくとも1種類のさらなる治療剤、例えば、抗癌剤を個体に投与する工程をさらに含む。さらなる態様において、本発明は、標的細胞、特に、腫瘍細胞の溶解の誘導において使用するための本明細書に記載のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を提供する。ある特定の態様において、本発明は、個体において標的細胞、特に、腫瘍細胞の溶解を誘導する方法であって、有効量のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を個体に投与して標的細胞の溶解を誘導する工程を含む方法において使用するためのT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を提供する。前記態様のいずれかによる「個体」は、哺乳動物、好ましくは、ヒトである。
さらなる局面において、本発明は、医薬の製造または調製における本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の使用を提供する。1つの態様において、医薬は、それを必要とする個体において疾患を治療するためのものである。さらなる態様において、医薬は、疾患を有する個体に治療的有効量の医薬を投与する工程を含む、疾患を治療する方法において使用するためのものである。ある特定の態様において、治療される疾患は増殖性障害である。特定の態様において、疾患は癌である。1つの態様において、前記方法は、治療的有効量の少なくとも1種類のさらなる治療剤、例えば、治療される疾患が癌であれば抗癌剤を個体に投与する工程をさらに含む。さらなる態様において、医薬は、標的細胞、特に、腫瘍細胞の溶解を誘導するためのものである。なおさらなる態様において、医薬は、個体において標的細胞、特に、腫瘍細胞の溶解を誘導する方法であって、有効量の医薬を個体に投与して標的細胞の溶解を誘導する工程を含む方法において使用するためのものである。前記態様のいずれかによる「個体」は哺乳動物、好ましくは、ヒトでもよい。
さらなる局面において、本発明は、疾患を治療するための方法を提供する。1つの態様において、前記方法は、このような疾患を有する個体に治療的有効量の本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を投与する工程を含む。1つの態様において、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を薬学的に許容される形で含む組成物が前記個体に投与される。ある特定の態様において、治療される疾患は増殖性障害である。特定の態様において、疾患は癌である。ある特定の態様において、前記方法は、治療的有効量の少なくとも1種類のさらなる治療剤、例えば、治療される疾患が癌であれば抗癌剤を個体に投与する工程をさらに含む。前記態様のいずれかによる「個体」は哺乳動物、好ましくは、ヒトでもよい。
さらなる局面において、本発明は、標的細胞、特に、腫瘍細胞の溶解を誘導するための方法を提供する。1つの態様において、前記方法は、T細胞、特に、細胞傷害性T細胞の存在下で、標的細胞を本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子と接触させる工程を含む。さらなる局面において、個体において標的細胞、特に、腫瘍細胞の溶解を誘導するための方法が提供される。このような1つの態様において、前記方法は、有効量のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を個体に投与して標的細胞の溶解を誘導する工程を含む。1つの態様において、「個体」はヒトである。
ある特定の態様において、治療される疾患は、増殖性障害、特に癌である。癌の非限定的な例には、膀胱癌、脳癌、頭頚部癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、食道癌、結腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、胃癌、前立腺癌、血液癌、皮膚癌、扁平上皮癌、骨癌、および腎臓癌が含まれる。本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を用いて治療することができる他の細胞増殖障害には、腹部、骨、***、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頚部、神経系(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟部組織、脾臓、胸部領域、ならびに泌尿生殖器系に位置している新生物が含まれるが、これに限定されない。前癌状態または病変部および癌転移も含まれる。ある特定の態様において、癌は、腎細胞癌、皮膚癌、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、脳癌、および頭頚部癌からなる群より選択される。当業者であれば、多くの場合、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は治癒をもたらさない場合があり、部分的利益しかもたらさない場合があることを容易に認める。一部の態様において、いくらかの利益のある生理学的変化が治療上有益であるとみなされる。従って、一部の態様において、生理学的変化をもたらすT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の量は「有効量」または「治療的有効量」とみなされる。治療を必要とする対象、患者、または個体は典型的に哺乳動物であり、より具体的にはヒトである。
一部の態様において、有効量の本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子が細胞に投与される。他の態様において、疾患を治療するために、治療的有効量の本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子が個体に投与される。
疾患を予防または治療する場合、(単独でまたは1種類もしくは複数種の他のさらなる治療剤と組み合わせて用いられる場合)本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の適切な投与量は、治療しようとする疾患のタイプ、投与経路、患者の体重、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子のタイプ、疾患の重篤度および経過、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子が予防目的または治療目的に投与されるかどうか、以前の治療介入または同時の治療介入、患者の病歴、ならびにT細胞活性化二重特異性抗原結合分子に対する応答、ならびに主治医の裁量に左右される。投与を担当する医師は、どのような場合でも、組成物に含まれる活性成分の濃度および対象1人1人に合った適切な用量を決定するだろう。1回の投与または様々な時点にわたる複数回の投与、ボーラス投与、およびパルス注入を含むが、これに限定されない様々な投与計画が本明細書において意図される。
T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、一度に、または一連の治療にわたって患者に適切に投与される。疾患のタイプおよび重篤度に応じて、例えば、1回もしくは複数回の別々の投与でも、または連続注入でも、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば、0.1mg/kg〜10mg/kg)のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子が、患者に投与するための初回候補投与量になり得る。前述の要因に応じて、代表的な一日量は約1μg/kg〜100mg/kg以上になるかもしれない。数日間またはそれより長い反復投与のために、状態に応じて、一般的に、疾患の症状の望ましい抑制が生じるまで治療は維持される。T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の例示的な投与量の1つは約0.005mg/kg〜約10mg/kgの範囲になるだろう。他の非限定的な例において、用量は、1回の投与につき約1マイクログラム/kg体重、約5マイクログラム/kg体重、約10マイクログラム/kg体重、約50マイクログラム/kg体重、約100マイクログラム/kg体重、約200マイクログラム/kg体重、約350マイクログラム/kg体重、約500マイクログラム/kg体重、約1ミリグラム/kg体重、約5ミリグラム/kg体重、約10ミリグラム/kg体重、約50ミリグラム/kg体重、約100ミリグラム/kg体重、約200ミリグラム/kg体重、約350ミリグラム/kg体重、約500ミリグラム/kg体重〜約1000mg/kg体重以上、およびこれらから導き出せる任意の範囲を含んでもよい。本明細書において列挙された数字から導き出せる範囲の非限定的な例では、前記の数字に基づいて、約5mg/kg体重〜約100mg/kg体重、約5マイクログラム/kg体重〜約500ミリグラム/kg体重などの範囲を投与することができる。従って、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kg、または10mg/kg(またはその任意の組み合わせ)の1つまたは複数の用量が患者に投与されてもよい。このような用量は、(例えば、約2〜約20用量、または、例えば、約6用量のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子が患者に与えられるように)断続的に、例えば、毎週または3週間ごとに投与されてもよい。高い初回負荷量の後に1つまたは複数の低い用量が投与されることがある。しかしながら、他の投与計画が有用な場合がある。この療法の進行は従来の技法およびアッセイによって容易にモニタリングされる。
本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、一般的に、意図された目的を達成するのに有効な量で用いられる。疾患状態を治療または予防するための使用の場合、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子またはその薬学的組成物は治療的有効量で投与または適用される。治療的有効量の決定は、特に、本明細書中で提供される詳細な開示を考慮すれば、十分に当業者の能力の範囲内にある。
全身投与の場合、最初に、治療に有効な用量をインビトロアッセイ、例えば、細胞培養アッセイから見積もることができる。次いで、動物モデルにおいて、細胞培養において求められたIC50を含む循環濃度範囲に達するように用量を処方することができる。このような情報を用いて、ヒトにおいて有用な用量をさらに正確に求めることができる。
当技術分野において周知の技法を用いてインビボデータ、例えば、動物モデルからも初回投与量を見積もることができる。当業者であれば、動物データに基づいてヒトへの投与を容易に最適化することができるだろう。
治療効果を維持するのに十分なT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の血漿中濃度をもたらすように、投与量および間隔を個々に調節することができる。注射による投与のための通常の患者投与量は、約0.1〜50mg/kg/日、典型的には、約0.5〜1mg/kg/日である。治療に有効な血漿中濃度は、毎日、複数の用量を投与することによって達成されてもよい。血漿中濃度は、例えば、HPLCによって測定されてもよい。
局所投与または選択的取り込みの場合、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の有効局所濃度は血漿中濃度と関連しない場合がある。当業者であれば、過度の実験なく、治療に有効な局所投与量を最適化することができるだろう。
本明細書に記載の治療に有効な用量のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、一般的に、実質的な毒性を引き起こすことなく治療利益を提供する。T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって求めることができる。細胞培養アッセイおよび動物試験を用いて、LD50 (集団の50%を死に致らしめる用量)およびED50 (集団の50%において治療に有効な用量)を求めることができる。毒性作用と治療効果との用量比が治療指数であり、比LD50/ED50で表すことができる。高い治療指数を示すT細胞活性化二重特異性抗原結合分子が好ましい。1つの態様において、本発明によるT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は高い治療指数を示す。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトでの使用に適した範囲の投与量の処方において使用することができる。投与量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くなく、ED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、様々な要因、例えば、使用される剤形、利用される投与経路、対象の状態などに応じて、この範囲内で変動してもよい。個々の医師が、患者の状態を考慮して、正確な製剤、投与経路、および投与量を選択することができる(例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、Fingl et al., 1975, The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ch.1, p.1を参照されたい)。
本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子による治療を受けている患者の主治医であれば、毒性、臓器機能不全などにより、投与を止める方法、中断する方法、もしくは調節する方法、または投与を止める時、中断する時、もしくは調節する時を知っているだろう。逆に、主治医であれば、臨床応答が十分でなければ治療を高い水準まで調節することも知っているだろう(毒性は除外する)。関心対象の障害の管理における投与される用量の大きさは、治療される状態の重篤度、投与経路などによって異なる。状態の重篤度は、例えば、部分的に、標準的な予後評価方法によって評価されることがある。さらに、用量、もしかすると投与頻度も、患者1人1人の年齢、体重、および応答によって異なる。
他の薬剤および治療
本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、療法において1種類または複数種の他の薬剤と組み合わせて投与されてもよい。例えば、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は少なくとも1種類のさらなる治療剤と同時投与されてもよい。「治療剤」という用語は、このような治療を必要とする個体において症状または疾患を治療するために投与される任意の薬剤を包含する。このようなさらなる治療剤は、治療されている特定の適応症に適した任意の活性成分、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有する活性成分を含んでもよい。ある特定の態様において、さらなる治療剤は、免疫調節剤、細胞***阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞傷害薬剤、細胞アポトーシスアクチベーター、またはアポトーシス誘導物質に対する細胞の感受性を高める薬剤である。特定の態様において、さらなる治療剤は、抗癌剤、例えば、微小管阻害剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、DNAインターカレーター、アルキル化剤、ホルモン療法、キナーゼ阻害剤、受容体アンタゴニスト、腫瘍細胞アポトーシスアクチベーター、または血管新生阻害剤である。
このような他の薬剤は、意図された目的に有効な量で組み合わされて適切に存在する。このような他の薬剤の有効量は、使用されるT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の量、障害または治療のタイプ、および前記で議論された他の要因によって決まる。T細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、一般的に、本明細書に記載のものと同じ投与量および投与経路で、または本明細書に記載の投与量の約1〜99%、または経験的に/臨床的に適切であると確かめられた任意の投与量および任意の経路で用いられる。
前記のこのような併用療法は、併用投与(2種類以上の治療剤が同じ組成物または別々の組成物に含まれる場合)および別々の投与を包含する。別々の投与の場合、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子の投与は、さらなる治療剤および/もしくはアジュバントの投与の前に、さらなる治療剤および/もしくはアジュバントの投与と同時に、ならびに/またはさらなる治療剤および/もしくはアジュバントの投与の後に行うことができる。本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は放射線療法と併用することもできる。
製造物品
本発明の別の局面において、前記の障害の治療、予防、および/または診断に有用な材料を含有する製造物品が提供される。製造物品は、容器および容器に貼られている、または容器に関連するラベルまたは添付文書を備える。適切な容器には、例えば、瓶、バイアル、注射器、IV溶液バック(IV solution bag)などが含まれる。容器はガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。容器は、状態の治療、予防、および/もしくは診断に有効な別の組成物と組み合わされた組成物、または単独の組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静脈内溶液バックまたは皮下注射針で穴を開けることができるストッパーを有するバイアルでもよい)。組成物中の少なくとも1種類の活性薬剤は本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子である。ラベルまたは添付文書は、組成物が、選択された状態を治療するのに用いられることを示す。さらに、製造物品は、(a)本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子を含む組成物が中に入れられている第1の容器;および(b)さらなる細胞傷害剤または他の治療剤を含む組成物が中に入れられている第2の容器を備えてもよい。本発明のこの態様における製造物品は、ある特定の状態を治療するために組成物を使用することができることを示す添付文書をさらに備えてもよい。または、もしくはさらに、製造物品は、薬学的に許容される緩衝液、例えば、無菌注射用水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー液、およびデキストロース液を含む第2の(または第3の)容器をさらに備えてもよい。これは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、および注射器を含む、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに備えてもよい。
以下は本発明の方法および組成物の例である。前記で概要が示されていれば、様々な他の態様が実施され得ることが理解される。
一般的方法
組換えDNA法
Sambrook et al., Molecular cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989に記載のように、DNAを操作するために標準的な方法を使用した。分子生物学用試薬を製造業者の説明書に従って使用した。ヒト免疫グロブリン軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列に関する一般情報は、Kabat, E.A. et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., NIH Publication No. 91-3242に示されている。
DNA配列決定
DNA配列を二本鎖配列決定によって決定した。
遺伝子合成
必要に応じて、望ましい遺伝子セグメントが、適切なテンプレートを用いてPCRによって作製されたか、またはGeneart AG(Regensburg, Germany)によって自動遺伝子合成による合成オリゴヌクレオチドおよびPCR産物から合成された。正確な遺伝子配列を入手できなかった場合、オリゴヌクレオチドプライマーを、最も近いホモログからの配列に基づいて設計した。遺伝子を、適切な組織に由来するRNAからRT-PCRによって単離した。独特の制限エンドヌクレアーゼ切断部位が隣接する遺伝子セグメントを標準的なクローニング/配列決定ベクターにクローニングした。形質転換された細菌からプラスミドDNAを精製し、濃度をUV分光法によって求めた。サブクローニングされた遺伝子断片のDNA配列をDNA配列決定によって確認した。遺伝子セグメントを、それぞれの発現ベクターへのサブクローニングを可能にする適切な制限部位が備わった設計にした。全ての構築物を、真核細胞においてタンパク質を分泌するように向けるリーダーペプチドをコードする5'末端DNA配列が備わった設計にした。SEQ ID NO 154〜162は例示的なリーダーペプチドおよびそれらをコードする各ポリヌクレオチド配列を示す。
PBMCからの初代ヒトpanT細胞の単離
地元の血液バンクから入手した濃縮リンパ球調製物(バフィーコート)または健常ヒトドナーに由来する新鮮な血液から末梢血単核球(PBMC)をHistopaque密度遠心分離によって調製した。簡単に述べると、血液を滅菌PBSで希釈し、注意深くHistopaque 勾配(Sigma, H8889)の上に層状に積み重ねた。450xgで室温で30分間、遠心分離した後に(ブレーキのスイッチをオフにした)、中間期(interphase)を含有するPBMCの上にある血漿の一部を捨てた。PBMCを新たな50ml Falconチューブに移し、チューブをPBSで総体積50mlまで満たした。混合物を400xg、室温で10分間、遠心分離した(ブレーキのスイッチをオンにした)。上清を捨て、PBMCペレットを滅菌PBSで2回洗浄した(350xg、4℃で10分間の遠心分離工程)。結果として生じたPBMC集団を自動計数し(ViCell)、10%FCSおよび1%L-アラニル-L-グルタミン(Biochrom, K0302)を含有するRPMI1640培地に溶解し、アッセイ開始までインキュベーターに入れて37℃、5%CO2で保管した。
PBMCからのT細胞濃縮は、Pan T Cell Isolation Kit II (Miltenyi Biotec #130-091-156)を用いて製造業者の説明書に従って行った。簡単に述べると、細胞ペレットを、1x107細胞あたり40μlの冷緩衝液 (0.5%BSA、2mM EDTAを含むPBS。濾過滅菌済み)で希釈し、1x107細胞あたり10μlのビオチン-抗体カクテルと4℃で10分間インキュベートした。1x107細胞あたり30μlの冷緩衝液および20μlの抗ビオチン磁気ビーズを添加し、混合物をさらに15分間、4℃でインキュベートした。現体積の10〜20xを添加することによって細胞を洗浄し、その後に、300xgで10分間、遠心分離工程を行った。1x108個までの細胞を500μlの緩衝液に再懸濁した。非標識ヒトpanT細胞の磁気分離を、LSカラム(Miltenyi Biotec #130-042-401)を用いて製造業者の説明書に従って行った。結果として生じたT細胞集団を自動計数し(ViCell)、AIM-V培地に溶解し、アッセイ開始までインキュベーターに入れて37℃、5%CO2で保管した(24時間未満)。
PBMCからの初代ヒトナイーブT細胞の単離
地元の血液バンクから入手した濃縮リンパ球調製物(バフィーコート)または健常ヒトドナーに由来する新鮮な血液から末梢血単核球(PBMC)をHistopaque密度遠心分離によって調製した。PBMCからのT細胞濃縮は、Miltenyi BiotecのNaive CD8+ T cell isolation Kit(#130-093-244)を用いて製造業者の説明書に従って行ったが、CD8+T細胞の最後の単離工程を省いた(初代ヒトpanT細胞の単離についての説明も参照されたい)。
脾細胞からのマウスpanT細胞の単離
脾臓をC57BL/6マウスから分離し、MACS緩衝液(PBS+0.5%BSA+2mM EDTA)を含有するGentleMACS C-チューブ(Miltenyi Biotech #130-093-237)に移し、製造業者の説明書に従ってGentleMACS Dissociatorで解離してシングル細胞懸濁液を得た。残存している解離しなかった組織粒子を除去するために、細胞懸濁液をプレセパレーション(pre-separation)フィルターに通した。400xg、4℃で4分間、遠心分離した後に、赤血球を溶解するためにACK溶解緩衝液を添加した(室温で5分間のインキュベーション)。残存している細胞をMACS緩衝液で2回洗浄し、計数し、マウスpanT細胞の単離に使用した。負の(磁気)選択を、Miltenyi BiotecのPanT Cell Isolation Kit(#130-090-861)を用いて製造業者の説明書に従って行った。結果として生じたT細胞集団を自動計数し(ViCell)、すぐに、さらなるアッセイに使用した。
ヘパリン添加血液からの初代カニクイザルPBMCの単離
以下の通りに、健常なカニクイザルドナーに由来する新鮮な血液から末梢血単核球(PBMC)を密度遠心分離によって調製した。ヘパリン添加血液を滅菌PBSで1:3に希釈し、Lymphoprep培地(Axon Lab #1114545)を滅菌PBSで90%まで希釈した。2体積の希釈血液を1体積の希釈密度勾配の上に層状に積み重ねた。ブレーキなしで、PBMC画分を520xg、室温で30分間、遠心分離によって分離した。PBMCバンドを新しい50ml Falconチューブに移し、遠心分離によって滅菌PBSで400xg、4℃で10分間、洗浄した。血小板を除去するために低速遠心分離(150xg、4℃で15分間)を1回、行い、結果として生じたPBMC集団を自動計数し(ViCell)、さらなるアッセイのために、すぐに使用した。
標的細胞
MCSPを標的とする二重特異性抗原結合分子を評価するために、以下の腫瘍細胞株:悪性黒色腫の転移部位に由来し、高レベルのヒトMCSPを発現するヒト黒色腫細胞株WM266-4(ATCC#CRL-1676);および中程度のレベルのヒトMCSPを発現するヒト黒色腫細胞株MV-3(The Radboud University Nijmegen Medical Centreからの寄贈品)を使用した。
CEAを標的とする二重特異性抗原結合分子を評価するために、以下の腫瘍細胞株:非常に高いレベルのヒトCEAを発現するヒト胃癌細胞株MKN45(DSMZ#ACC409);中程度から低いレベルのヒトCEAを発現する、ヒト白人女性結腸腺癌細胞株LS-174T(ECACC#87060401);(非常に)低いレベルのヒトCEAを発現するヒト類上皮膵臓癌(epithelioid pancreatic carcinoma)細胞株Panc-1(ATCC#CRL-1469);およびヒトCEAを安定発現するように社内で操作されたマウス結腸癌細胞株MC38-ヒトCEAを使用した。
さらに、ヒトT細胞白血病細胞株であるジャーカット(ATCC#TIB-152)を用いて、異なる二重特異性構築物と細胞上にあるヒトCD3との結合を評価した。
実施例1
二重特異性抗原結合分子の調製、精製、および特徴付け
重鎖可変領域および軽鎖可変領域の配列を、それぞれのレシピエント哺乳動物発現ベクターに予め挿入された定常重鎖または定常軽鎖とインフレームでサブクローニングした。MPSVプロモーターによって抗体を発現させた。合成ポリAシグナル配列はCDSの3'末端に位置する。さらに、それぞれのベクターはEBV OriP配列を含有した。
HEK293 EBNA細胞を哺乳動物発現ベクターでコトランスフェクトすることによって前記分子を産生した。指数関数的に増殖しているHEK293 EBNA細胞を、リン酸カルシウム法を用いてトランスフェクトした。または、懸濁液中で増殖しているHEK293 EBNA細胞を、ポリエチレンイミン(PEI)を用いてトランスフェクトした。「1+1 IgG scFab、1本のアーム/1本のアーム 逆」構築物を調製するために、細胞を、1:1:1比の対応する発現ベクター(「ベクター重鎖」:「ベクター軽鎖」:「ベクター重鎖-scFab」)でトランスフェクトした。「2+1 IgG scFab」構築物を調製するために、細胞を、1:2:1比の対応する発現ベクター(「ベクター重鎖」:「ベクター軽鎖」:「ベクター重鎖-scFab」)でトランスフェクトした。「1+1 IgG Crossfab」構築物の調製のために、細胞を、1:1:1:1比(「ベクター第2の重鎖」:「ベクター第1の軽鎖」:「ベクター軽鎖Crossfab」:「ベクター第1の重鎖-重鎖Crossfab」)の対応する発現ベクターでトランスフェクトした。「2+1 IgG Crossfab」構築物の調製のために、細胞を、1:2:1:1比(「ベクター第2の重鎖」:「ベクター軽鎖」:「ベクター第1の重鎖-重鎖Crossfab」:「ベクター軽鎖Crossfab」の対応する発現ベクターでトランスフェクトした。「2+1 IgG Crossfab、連結軽鎖」構築物の調製のために、細胞を、1:1:1:1比(「ベクター重鎖」:「ベクター軽鎖」:「ベクター重鎖(CrossFab-Fab-Fc)」:「ベクター連結軽鎖」)の対応する発現ベクターでトランスフェクトした。「1+1 CrossMab」構築物の調製のために、細胞を、1:1:1:1比(「ベクター第1の重鎖」:「ベクター第2の重鎖」:「ベクター第1の軽鎖」:「ベクター第2の軽鎖」)の対応する発現ベクターでトランスフェクトした。「1+1 IgG Crossfab軽鎖融合」構築物の調製のために、細胞を、1:1:1:1比(「ベクター第1の重鎖」:「ベクター第2の重鎖」:「ベクター軽鎖Crossfab」:「ベクター第2の軽鎖」)の対応する発現ベクターでトランスフェクトした。
リン酸カルシウムを用いたトランスフェクションの場合、細胞を、Tフラスコ中で、10%(v/v)FCSを添加したDMEM培地を用いて付着単層培養として増殖させ、50〜80%コンフルエントになった時にトランスフェクトした。T150フラスコのトランスフェクションのために、トランスフェクションの24時間前に、(10%v/v最終濃度の)FCSを添加したDMEM培地25mlに1.5x107個の細胞を播種し、細胞を5%CO2雰囲気のインキュベーターに37℃で一晩、入れた。それぞれのT150フラスコのトランスフェクションのために、対応する比で割られた94μgの総プラスミドベクターDNA、最終体積469μlまでの水、および469μlの1M CaCl2溶液を混合することによって、DNA、CaCl2、および水からなる溶液を調製した。この溶液に、938μlの50mM HEPES、280mM NaCl、1.5mM Na2HPO4溶液、pH7.05を添加し、すぐに10秒間、混合し、室温で20秒間、静置したままにした。懸濁液を、2%(v/v)FCSを添加したDMEM 10mlで希釈し、既存の培地の代わりにT150に添加した。その後に、さらなる13mlのトランスフェクション培地を添加した。細胞を37℃、5%CO2で約17〜20時間インキュベートし、次いで、培地を25ml DMEM、10%FCSと交換した。培地交換して約7日後に210xgで15分間、遠心分離することによって条件培地を回収し、濾過滅菌(0.22μmフィルター)し、最終濃度0.01%(w/v)までアジ化ナトリウムを添加し、4℃に保った。
ポリエチレンイミン(PEI)を用いたトランスフェクションの場合、HEK293 EBNA細胞を無血清CD CHO培地中で懸濁培養した。500ml振盪フラスコ中で産生するために、トランスフェクションの24時間前に、4x108個のHEK293 EBNA細胞を播種した。トランスフェクションのために、細胞を210xgで5分間、遠心分離し、上清を、20mlの予め温めたCD CHO培地と交換した。発現ベクターを200μg のDNAの最終量まで20mlのCD CHO培地中で混合した。540μlのPEIを添加した後に、混合物を15秒間ボルテックスし、その後に、室温で10分間インキュベートした。その後、細胞をDNA/PEI溶液と混合し、500ml振盪フラスコに移し、5%CO2雰囲気のインキュベーターに入れて37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション期間の後、160mlのF17培地を添加し、細胞を24時間、培養した。トランスフェクションの1日後に、1mMバルプロ酸および7%Feed1(Lonza)を添加した。7日間、培養した後、精製のために210xgで15分間、遠心分離することによって上清を収集した。溶液を濾過滅菌(0.22μmフィルター)し、最終濃度0.01%w/vまでアジ化ナトリウムを添加し、4℃に保った。プロテインAアフィニティクロマトグラフィーの後にサイズ排除クロマトグラフィー工程を行うことによって細胞培養上清から分泌タンパク質を精製した。
アフィニティクロマトグラフィーのために、上清を、25mlの20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、pH7.5、または40mlの20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5で平衡にしたHiTrap ProteinA HPカラム(CV=5ml、GE Healthcare)にロードした。少なくとも10カラム体積の20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウムpH7.5で洗浄し、その後に6カラム体積の10mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウムpH5.45を用いた、さらなる洗浄工程を行うことによって非結合タンパク質を除去した。その後に、カラムを20mlの10mM MES、100mM塩化ナトリウム、pH5.0で洗浄し、標的タンパク質を6カラム体積の20mMクエン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、100mMグリシン、pH3.0で溶出させた。または、標的タンパク質を、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5から20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH2.5への20カラム体積にわたる勾配を用いて溶出させた。1/10の0.5Mリン酸ナトリウム、pH8を添加することによってタンパク質溶液を中和した。標的タンパク質を濃縮および濾過した後に、pH6.7の25mMリン酸カリウム、125mM塩化ナトリウム、100mMグリシン溶液で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)にロードした。1+1 IgG Crossfabを精製するために、カラムをpH6.0の20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム溶液で平衡化した。
精製されたタンパク質試料のタンパク質濃度は、アミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光率を用いて280nmでの光学密度(OD)を特定することによって求めた。二重特異性構築物の純度および分子量は、NuPAGE(登録商標)Pre-Castゲルシステム(Invitrogen, USA)を用いて製造業者の説明書に従って(4〜12%Tris-酢酸ゲルまたは4〜12%Bis-Tris)、還元剤(5mM 1,4-ジチオスレイトール(dithiotreitol))の存在下および非存在下でのSDS-PAGE、ならびにクーマシー(SimpleBlue(商標) SafeStain, Invitrogen)による染色によって分析した。または、分子の純度および分子量は、Caliper LabChip GXIIシステム(Caliper Lifescience)を用いて製造業者の説明書に従って還元剤の存在下および非存在下でのCE-SDS分析によって分析した。タンパク質試料の凝集物含有率は、2mM MOPS、150mM NaCl、0.02%(w/v)NaN3、pH7.3のランニングバッファーに溶解してSuperdex 200 10/300GL分析用サイズ排除クロマトグラフィーカラム(GE Healthcare)を用いて25℃で分析した。または、抗体試料の凝集物含有率は、25mM K2HPO4、125mM NaCl、200mM L-アルギニン一塩酸塩(monohydrocloride)、0.02%(w/v)NaN3、pH6.7ランニングバッファーに溶解してTSKgel G3000 SW XL分析用サイズ排除カラム(Tosoh)を用いて25℃で分析した。
図2〜14は、SDS-PAGEおよび分析用サイズ排除クロマトグラフィーの結果を示し、表2Aは、異なる二重特異性構築物の調製物の収率、プロテインA後の凝集物含有率、および最終単量体含有率を示す。
図47は、抗CD3/抗MCSP二重特異性「2+1 IgG Crossfab、連結軽鎖」構築物(SEQ ID NO 3、5、29および179を参照されたい)のCE-SDS分析の結果を示す。分析には2μg試料を使用した。図48は、最終産物(20μgの試料を注入した)の分析用サイズ排除クロマトグラフィーの結果を示す。
図54は、様々な構築物のCE-SDS分析およびSDS PAGE分析の結果を示す。表2Aは、異なる二重特異性構築物の調製物の収率、プロテインA後の凝集物含有率、および最終単量体含有率を示す。
(表2A)収率、プロテインA後の凝集物含有率、および最終単量体含有率
対照として、二重特異性抗原結合分子を先行技術タンデムscFv形式(「(scFv)2」)で、タンデムscFvをFcドメインに融合することによって(「(scFv)2-Fc」)作製した。本発明の二重特異性抗原結合分子について前述されたのと同様に、前記分子をHEK293-EBNA細胞において産生し、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーに続いてサイズ排除クロマトグラフィー工程によって精製した。凝集物形成が多量にあったので、単量体含有率の高いタンパク質を得るために、HiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)から溶出および濃縮された試料を、20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム、pH6.7で平衡化されたSuperdex 10/300 GLカラム(GE Healthcare)に適用することによって、試料の一部をさらに精製しなければならなかった。その後に、タンパク質濃度、純度および分子量、ならびに凝集物含有率を前記のように求めた。
対照分子の収率、1回目の精製工程後の凝集物含有率、および最終単量体含有率を表2Bに示した。1回目の精製工程(プロテインA)後の凝集物含有率の比較から、IgG CrossfabおよびIgG scFab構築物の安定性は「(scFv)2-Fc」およびジスルフィド架橋安定化「(dsscFv) 2-Fc」分子と比較して優れていることが分かる。
(表2B)収率、プロテインA後の凝集物含有率、および最終単量体含有率
タンパク質の熱安定性を動的光散乱(DLS)によってモニタリングした。タンパク質濃度が1mg/mlの濾過済みタンパク質試料30□gをDynaproプレートリーダー(Wyatt Technology Corporation; USA)に2回繰り返して適用した。0.05℃/分で25〜75℃の温度勾配をつけて、半径散乱強度および全散乱強度を収集した。結果を図15および表2Cに示した。「(scFv)2-Fc」(抗MCSP/抗ヒトCD3)分子の場合、2つの凝集点が49℃および68℃で観察された。ジスルフィド架橋が導入された結果として、「(dsscFv)2-Fc」構築物の凝集温度は上昇した(57℃)(図15A、表2C)。「2+1 IgG scFab」および「2+1 IgG Crossfab」構築物はいずれも60℃より高い温度で凝集している。このことは、これらが「(scFv)2-Fc」および「(dsscFv)2-Fc」形式と比較して熱安定性が優れていることを証明している(図15B、表2C)。
実施例2
Fc受容体および標的抗原の結合の表面プラズモン共鳴分析
方法
全ての表面プラズモン共鳴(SPR)実験を、Biacore T100においてランニングバッファーとしてHBS-EP(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%Surfactant P20, Biacore, Freiburg/Germany)を用いて25℃で行った。
異なるFc変種のFcR結合の分析
アッセイ設定を図16Aに示した。異なるFc変種とヒトFcγRIIIa-V158およびマウスFcγRIVとの相互作用を分析するために、標準的なアミンカップリングキット(Biacore, Freiburg/Germany)を用いて約6,500共鳴単位(RU)の抗Penta His抗体(Qiagen)の直接カップリングをCM5チップ上でpH5.0で行った。ヒトFcγRIIIa-V158-K6H6およびマウスFcγRIV-aviHis-ビオチンをそれぞれ4nMおよび10nMで60秒間捕捉した。
異なるFc変異を有する構築物を1000nMの濃度で30μl/分の流速でフローセルに120秒間、通した。解離を220秒間モニタリングした。参照フローセルにおいて得られた応答を差し引くことによって体積屈折率差を補正した。この場合、固定化抗Penta His抗体を有するが、ヒトFcγRIIIa-V158-K6H6またはマウスFcγRIV-aviHis-ビオチンではなくHBS-EPが注入されている表面にFc変種を流した。500〜4000nMの濃度範囲を用いて、野生型Fcに対するヒトFcγRIIIa-V158およびマウスFcγRIVの親和性を確かめた。
定常状態応答を用いて、Langmuir結合等温線の非線形曲線フィッティングによって解離定数KDを導き出した。Biacore T100 Evaluation Software(vAA, Biacore AB, Uppsala/Sweden)を用いて、数値積分法によって1:1ラングミュア結合に反応速度式をフィッティングさせるように反応速度定数を導き出した。
結果
Fc変種とヒトFcγRIIIaおよびマウスFcγRIVとの相互作用を表面プラズモン共鳴によってモニタリングした。分析した全Fc変異体について、捕捉されたヒトFcγRIIIa-V158-K6H6およびマウスFcγRIV-aviHis-ビオチンとの結合は野生型(wt)Fcドメインを有する構築物と比較して有意に低下した。
ヒトFcγ受容体との結合が最も低いFc変異体はP329G L234A L235A(LALA)およびP329G LALA N297Dだった。ヒトFcγRIIIa-V158-K6H6との結合をなくすためにはLALA変異だけでは十分でなかった。LALA変異のみを有するFc変種のヒトFcγRIIIaとの残留結合親和性は2.100nMであったが、野生型Fcは600nMの親和性でヒトFcγRIIIa受容体に結合した(表3)。両KD値とも1種類の濃度を用いて1:1結合モデルから得られた。
ヒトFcγRIIIa-V158およびマウスFcγRIVに対する親和性は野生型Fcの場合しか分析することができなかった。KD値を表3に列挙した。分析した全Fc変異体について、マウスFcγRIVとの結合はほぼ完全になくなった。
(表3)ヒトFcγRIIIa-V158およびマウスFcγRIVに対するFc変種の親和性
*1種類の濃度(1000nM)を用いて求めた
腫瘍抗原およびCD3との同時結合の分析
標準的なカップリング手順を用いて1650共鳴単位(RU)のビオチン化MCSP D3ドメインをセンサーチップSAに直接カップリングすることによって、T細胞二重特異性構築物と腫瘍抗原およびヒトCD3εとの同時結合の分析を行った。ヒトEGFRを、標準的なアミノカップリング手順を用いて固定化した。8000RUをpH5.5でCM5センサーチップ上に固定化した。アッセイ設定を図16Bに示した。
異なるT細胞二重特異性構築物を200nMで60秒間、捕捉した。その後に、ヒトCD3γ(G4S)5CD3ε-AcTev-Fc(ノブ)-Avi/Fc(ホール)を2000nMの濃度および40μl/分の流速で60秒間、通した。MCSP D3ドメインまたはEGFRが固定化されているが、T細胞二重特異性構築物が捕捉されていない表面に組換えCD3εを流した参照フローセルにおいて得られた応答を差し引くことによって体積屈折率差を補正した。
結果
腫瘍抗原およびヒトCD3εとの同時結合を表面プラズモン共鳴によって分析した(図17、図18)。全構築物が腫瘍抗原およびCD3に同時に結合することができた。構築物の大部分について、ヒトCD3εを注射した後の結合レベル(RU)は、構築物のみを注射した後に達した結合レベルより高かった。このことは、腫瘍抗原およびヒトCD3εの両方が構築物に結合したことを反映している。
実施例3
二重特異性構築物と細胞上にあるそれぞれの標的抗原との結合
異なる二重特異性構築物と、ジャーカット細胞(ATCC #TIB-152)上にあるCD3および標的細胞上にあるそれぞれの腫瘍抗原との結合をFACSによって確かめた。簡単に述べると、細胞を回収し、計数し、生存率について調べた。1ウェルあたり15万〜20万個の細胞(0.1%BSAを含有するPBSに溶解した; 90μl)を丸底96ウェルプレートにプレートし、示された濃度の二重特異性構築物および対応するIgG対照(10μl)と4℃で30分間インキュベートした。より明確に比較するために、全構築物およびIgG対照を同じモル濃度に対して基準化した。インキュベートした後、細胞を遠心分離し(5分、350xg)、0.1%BSAを含有するPBS 150μlで洗浄し、再懸濁し、12μl/ウェルのFITC結合またはPE結合二次抗体と4℃でさらに30分間インキュベートした。結合した構築物を、FACS CantoII(Software FACS Diva)を用いて検出した。「(scFv)2」分子を、FITC結合抗His抗体(Lucerna, #RHIS-45F-Z)を用いて検出した。他の全ての分子について、FITCまたはPEが結合したAffiniPure F(ab')2断片ヤギ抗ヒトIgG Fcγ断片特異的(それぞれ、Jackson Immuno Research Lab #109-096-098/ワーキング溶液1:20、または#109-116-170/ワーキング溶液1:80)を使用した。120μl/ウェルの0.1%BSA含有PBSを添加し、350xgで5分間、遠心分離することによって、細胞を洗浄した。150μl/ウェルの0.1%BSA含有PBSを用いて、もう1回、洗浄工程を行った。特に定めのない限り、細胞を100μl/ウェルの固定緩衝液(BD#554655)で4℃で15分間、暗所で固定し、400xgで6分間、遠心分離し、試料をFACS CantoIIで測定するまで200μl/ウェルの0.1%BSA含有PBSの中に保持した。EC50値をGraphPad Prism ソフトウェアを用いて計算した。第1の実験では、ヒトMCSPおよびヒトCD3を標的とする異なる二重特異性構築物を、ヒトT細胞白血病細胞であるジャーカット上に発現しているヒトCD3またはColo-38ヒト黒色腫細胞上にあるヒトMCSPとの結合についてフローサイトメトリーによって分析した。
結果を図19〜21に示した。図19〜21は、二重特異性分子、対照IgG、二次抗体のみとインキュベートした細胞または未処理のままの細胞の平均蛍光強度を示す。
図19に示したように、「(scFv)2」分子の両抗原結合部分、すなわち、CD3(図191A)およびMCSP(図19B)について、対照試料と比較して、はっきりした結合シグナルが観察される。
「2+1 IgG scFab」分子(SEQ ID NO 5、17、19)は、Colo-38細胞上にあるヒトMCSPに対して良好な結合を示す(図20A)。CD3部分は、参照抗ヒトCD3 IgGよりわずかに良好にCD3に結合する(図20B)。
図21Aに図示したように、2つの「1+1」構築物は、細胞上にあるヒトCD3に対して同等の結合シグナルを示す。参照抗ヒトCD3 IgGからは、わずかに弱いシグナルが得られる。さらに、試験した両構築物(「1+1 IgG scFab、1本のアーム」(SEQ ID NO 1、3、5)および「1+1 IgG scFab、1本のアーム 逆」(SEQ ID NO 7、9、11))とも、細胞上にあるヒトMCSPに対して同等の結合を示す(図21B)。参照抗ヒトMCSP IgGを用いて得られた結合シグナルの方がわずかに弱い。
別の実験では、二重特異性構築物がその「アーム」の一方または両方を介してMCSPに結合するかどうか確かめるために、精製された「2+1 IgG scFab」二重特異性構築物(SEQ ID NO 5、17、19)および対応する抗ヒトMCSP IgGとColo-38ヒト黒色腫細胞上にあるヒトMCSPとの用量依存的結合をフローサイトメトリーによって分析した。図22に図示したように、「2+1 IgG scFab」構築物はMCSP IgGと同じ結合パターンを示す。
さらに別の実験では、Crossfab断片中にVL/VH(SEQ ID NO 33、63、65、67を参照されたい)またはCL/CH1交換(SEQ ID NO 66、67、183、197を参照されたい)があるCD3/CEA「2+1 IgG Crossfab、逆」二重特異性構築物と、ジャーカット細胞が発現したヒトCD3またはLS-174T細胞が発現したヒトCEAとの結合を評価した。対照として、等価な最大濃度の対応するIgGおよび標識二次抗体(ヤギ抗ヒトFITC結合AffiniPure F(ab')2断片、Fcγ断片特異的、Jackson Immuno Research Lab # 109-096-098)によるバックグラウンド染色も評価した。図55に示したように、両構築物とも、細胞上にあるヒトCEAならびにヒトCD3に対して良好な結合を示す。EC50計算値は、「2+1 IgG Crossfab、逆(VL/VH)」構築物については4.6nM(CD3)および9.3nM(CEA)、「2+1 IgG Crossfab、逆(CL/CH1)」構築物については3.9nM(CD3)および6.7nM(CEA)であった。
別の実験では、CD3/MCSP「2+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 3、5、29、33を参照されたい)および「2+1 IgG Crossfab、逆」(SEQ ID NO 5、23、183、187を参照されたい)構築物と、ジャーカット細胞が発現したヒトCD3またはWM266-4細胞が発現したヒトMCSPとの結合を評価した。図56から、両構築物と、細胞上にあるMCSPとの結合は比較的良好であったが、「逆」構築物とCD3との結合は他の構築物と比較して低かったことが分かる。EC50計算値は、「2+1 IgG Crossfab、逆」については6.1nM(CD3)および0.57nM(MCSP)、「2+1 IgG Crossfab」構築物については1.66nM(CD3)および0.95nM(MCSP)であった。
さらなる実験では、「1+1 IgG CrossFab軽鎖(LC)融合」構築物(SEQ ID NO 183、209、211、213)と、ジャーカット細胞が発現したヒト CD3およびLS-174T細胞が発現したヒト CEAとの結合を確かめた。対照として、等価な最大濃度の対応する抗CD3 IgGおよび抗CEA IgG、ならびに標識二次抗体(ヤギ抗ヒトFITC結合AffiniPure F(ab')2断片、Fcγ断片特異的、Jackson Immuno Research Lab # 109-096-098)によるバックグラウンド染色も評価した。図57に図示したように、「1+1 IgG Crossfab LC融合」とCEAとの結合は大幅に低下したように見えるが、CD3との結合は少なくとも参照IgGと同等であった。
最後の実験では、「2+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 5、23、215、217)および「2+1 IgG Crossfab、逆」(SEQ ID NO 5、23、215、219)構築物と、ジャーカット細胞が発現したヒトCD3およびWM266-4腫瘍細胞が発現したヒトMCSPとの結合を確かめた。図58に図示したように、「2+1 IgG Crossfab、逆」のヒトCD3との結合は他の構築物と比較して低かったが、ヒトMCSPとの結合は同程度に良好であった。EC50計算値は、「2+1 IgG Crossfab」については10.3nM(CD3)および3.1nM(MCSP)、「2+1 IgG Crossfab、逆」構築物については32.0nM(CD3)および3.4nM(MCSP)であった。
実施例4
二重特異性構築物会合時の初代ヒトT細胞上にある表面活性化マーカーのFACS分析
ヒトMCSP発現腫瘍細胞の存在下で、CD8+T細胞上にある初期表面活性化マーカーCD69または後期活性化マーカーCD25をアップレギュレートする能力について、ヒトMCSP-ヒトCD3を標的とする精製された二重特異性「2+1 IgG scFab」(SEQ ID NO 5、17、19)および「(scFv)2」分子をフローサイトメトリーによって試験した。
簡単に述べると、MCSP陽性Colo-38細胞を細胞解離緩衝液を用いて回収し、計数し、生存率について調べた。細胞をAIM-V培地に溶解して1mlあたり0.3x106個の(生)細胞まで調節し、この細胞懸濁液を1ウェルあたり100μl、ピペットで取って、(示したように)丸底96ウェルプレートに入れた。最終濃度1nMとなるように、50μlの(希釈)二重特異性構築物を細胞含有ウェルに添加した。ヒトPBMCエフェクター細胞を健常ドナーの新鮮な血液から単離し、AIM-V培地に溶解して1mlあたり6x106個の(生)細胞まで調節した。10:1の最終E:T比となるように、この細胞懸濁液を1ウェルあたり50μl、アッセイプレート(前記を参照されたい)に添加した。二重特異性構築物が、腫瘍抗原ヒトMCSPを発現する標的細胞の存在下にだけT細胞を活性化できるかどうか分析するために、1nMのそれぞれの二重特異性分子とPBMCを含有するが、標的細胞を含有しないウェルを含めた。37℃、5%CO2で15時間(CD69)または24時間(CD25)インキュベートした後、細胞を遠心分離し(5分、350xg)、150μl/ウェルの0.1%BSA含有PBSで2回洗浄した。CD8(マウスIgG1,κ; クローンHIT8a; BD #555635)、CD69(マウスIgG1; クローンL78; BD #340560)、およびCD25(マウスIgG1,κ; クローンM-A251; BD #555434)に対する表面染色を供給業者の提案に従って4℃で30分間、行った。細胞を150μl/ウェルの0.1%BSA含有PBSで2回洗浄し、100μl/ウェルの固定緩衝液(BD #554655)を用いて4℃で15分間、固定した。遠心分離後に、試料を200μl/ウェルの0.1%BSA含有PBSに再懸濁し、FACS CantoII装置(Software FACS, Diva)を用いて分析した。
図23は、15時間のインキュベーション後のCD8+T細胞上にある初期活性化マーカーCD69(A)または24時間のインキュベーション後のCD8+T細胞上にある後期活性化マーカーCD25(B)の発現レベルを図示する。両構築物とも、標的細胞の存在下にだけ両活性化マーカーのアップレギュレーションを誘導する。「(scFv)2」分子は、このアッセイでは、「2+1 IgG scFab」構築物よりわずかに活性が高いように見える。
ヒトMCSP-ヒトCD3を標的とする精製された二重特異性「2+1 IgG scFab」および「(scFv)2」分子がヒトMCSP発現腫瘍細胞の存在下でCD8+T細胞またはCD4+T細胞上にある後期活性化マーカーCD25をアップレギュレートする能力をフローサイトメトリーによってさらに試験した。実験手順は前記の通りであり、5:1のE:T比でヒトpanTエフェクター細胞および5日のインキュベーションを使用した。
図24は、両構築物とも、標的細胞の存在下にだけCD8+(A)T細胞ならびにCD4+ (B)T細胞上にあるCD25のアップレギュレーションを誘導することを示す。「2+1 IgG scFab」構築物は、このアッセイでは、「(scFv)2」分子と比較して少ないCD25アップレギュレーションを誘導するように見える。一般的に、CD8+T細胞におけるCD25アップレギュレーションはCD4+T細胞より顕著である。
別の実験では、カニクイザルCD3およびヒトMCSPを標的とする精製された「2+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 3、5、35、37)が、腫瘍標的細胞の存在下で、CD8+T細胞上にある表面活性化マーカーCD25をアップレギュレートする能力を分析した。簡単に述べると、ヒトMCSP発現MV-3腫瘍標的細胞を細胞解離緩衝液を用いて回収し、洗浄し、2%FCSおよび1%GlutaMaxを含有するDMEMに再懸濁した。1ウェルあたり30000個の細胞を丸底96ウェルプレートにプレートし、それぞれの抗体希釈液を、示された濃度で添加した(図25)。二重特異性構築物および異なるIgG対照を同じモル濃度まで調節した。3:1の最終E:T比となるように、2匹の健常な動物の血液から単離したカニクイザルPBMCエフェクター細胞を添加した。37℃、5%CO2で43時間インキュベートした後に、細胞を350xgで5分間、遠心分離し、0.1%BSA含有PBSで2回洗浄した。CD8(Miltenyi Biotech #130-080-601)およびCD25(BD #557138)に対する表面染色を供給業者の提案に従って行った。細胞を150μl/ウェルの0.1%BSA含有PBSで2回洗浄し、100μl/ウェルの固定緩衝液(BD #554655)を用いて4℃で15分間、固定した。遠心分離後に、試料を200μl/ウェルの0.1%BSA含有PBSに再懸濁し、FACS CantoII装置(Software FACS Diva)を用いて分析した。
図25に図示したように、前記二重特異性構築物は、標的細胞の存在下でしか、CD8+T細胞上にあるCD25の濃度依存的アップレギュレーションを誘導しない。抗カニクイザルCD3 IgG(クローンFN-18)も、架橋されることなく、CD8+T細胞上にあるCD25のアップレギュレーションを誘導することができる(カニクイザルNestorを用いて得られたデータを参照されたい)。(標的細胞の非存在下では)最大濃度の二重特異性構築物はカニクイザルT細胞を過剰活性化しない。
別の実験では、CD3-MCSP「2+1 IgG Crossfab、連結軽鎖」(SEQ ID NO 3、5、29、179を参照されたい)が、腫瘍標的細胞の存在下で、CD8+T細胞上にある初期活性化マーカーCD69または後期活性化マーカーCD25をアップレギュレートする能力を、CD3-MCSP「2+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 3、5、29、33を参照されたい)と比較した。MCSP陽性Colo38標的細胞の存在下または非存在下で、初代ヒトPBMC(前記のように単離した)を、示された濃度の二重特異性構築物と少なくとも22時間インキュベートした。簡単に述べると、MCSP陽性標的細胞(または培地)を含有する平底96ウェルプレート1ウェルにつき30万個の初代ヒトPBMCをプレートした。最終エフェクター:標的細胞(E:T)比は10:1であった。前記細胞を、示された濃度の二重特異性構築物および対照と、37℃、5%CO2で、示されたインキュベーション時間にわたってインキュベートした。エフェクター細胞をCD8、およびCD69またはCD25について染色し、FACS CantoIIによって分析した。
図53は、この実験の結果を示す。CD69(A)またはCD25のアップレギュレーション(B)について2種類の2+1 IgG Crossfab分子(連結軽鎖を有する、または連結軽鎖を有さない)の間で有意差は検出されなかった。
さらに別の実験では、腫瘍標的細胞の存在下で、CD4+T細胞またはCD8+T細胞上にあるCD69またはCD25をアップレギュレートする能力について、CD3/MCSP「2+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 3、5、29、33を参照されたい)および「1+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 5、29、33、181を参照されたい)構築物を「1+1 CrossMab」構築物(SEQ ID NO 5、23、183、185を参照されたい)と比較した。このアッセイは、ヒトMCSPを発現するMV-3腫瘍細胞の存在下または非存在下で24時間のインキュベーション時間を用いて前記のように行った。
図59に示したように、「1+1 IgG Crossfab」および「2+1 IgG Crossfab」構築物は「1+1 CrossMab」分子より顕著な活性化マーカーアップレギュレーションを誘導した。
最後の実験では、CD3/MCSP「2+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 5、23、215、217を参照されたい)および「2+1 IgG Crossfab、逆」(SEQ ID NO 5、23、215、219を参照されたい)構築物が、腫瘍標的細胞の存在下で、2匹の異なるカニクイザルに由来するCD4+T細胞またはCD8+T細胞上にあるCD25をアップレギュレートする能力を評価した。このアッセイは、ヒトMCSPを発現するMV-3腫瘍細胞の存在下または非存在下で、E:T比3:1および約41時間のインキュベーション時間を用いて前記のように行った。
図60に示したように、両構築物とも、CD4+T細胞またはCD8+T細胞上にあるCD25を濃度依存的にアップレギュレートすることができ、2種類の形式間で有意差はなかった。抗体を含まず、標的細胞を含まない対照試料から、抗体を含むが、標的を含まない試料と同等のシグナルが得られた(示さず)。
実施例5
CD3二重特異性構築物によってヒトpanT細胞が活性化した時のインターフェロン-γ分泌
ヒトMCSPおよびヒトCD3を標的とする精製された「2+1 IgG scFab」(SEQ ID NO 5、17、19)が、ヒトMCSP陽性U-87MG細胞の存在下でT細胞活性化を誘導する能力を分析した。これは、上清へのヒトインターフェロン(IFN)-γの放出によって測定した。対照として、同じモル濃度まで調節した抗ヒトMCSP IgGおよび抗ヒトCD3 IgGを使用した。簡単に述べると、ヒトMCSP発現U-87MGグリア芽細胞腫星状細胞腫標的細胞(ECACC 89081402)を細胞解離緩衝液を用いて回収し、洗浄し、AIM-V培地(Invitrogen #12055-091)に再懸濁した。1ウェルあたり20000個の細胞を丸底96ウェルプレートにプレートし、最終濃度1nMとなるように、それぞれの抗体希釈液を添加した。5:1の最終E:T比となるように、バフィーコートから単離したヒトpanTエフェクター細胞を添加した。37℃、5%CO2で18.5時間、一晩インキュベートした後に、アッセイプレートを350xgで5分間、遠心分離し、上清を新鮮な96ウェルプレートに移した。上清中のヒトIFN-γレベルを、ELISAによって製造業者の説明書に従って(Becton DickinsonのBD OptEIAヒトIFN-γ ELISA Kit II, #550612)測定した。
図26に図示したように、参照IgGはIFN-γ分泌誘導を示さないか、弱いIFN-γ分泌誘導を示すのに対して、「2+1 IgG scFab」構築物はヒトT細胞を活性化してIFN-γを分泌することができる。
実施例6
T細胞上にあるCD3および腫瘍細胞上にあるMCSPまたはEGFRを標的とする架橋二重特異性構築物によって媒介される方向付け直されたT細胞性細胞傷害性(LDH放出アッセイ)
第1の一連の実験では、抗原結合部分と細胞上にあるそれぞれの標的抗原が結合することで構築物が架橋された時に、CD3およびMCSPを標的とする二重特異性構築物が腫瘍標的細胞のT細胞性アポトーシスを誘導する能力を分析した(図27〜38)。
ある実験では、ヒトCD3およびヒトMCSPを標的とする精製された「2+1 IgG scFab」(SEQ ID NO 5、21、23)および「2+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 3、5、29、33)構築物ならびに対応する「(scFv)2」分子を比較した。簡単に述べると、ヒトMCSP発現MDA-MB-435ヒト黒色腫標的細胞を細胞解離緩衝液を用いて回収し、洗浄し、AIM-V培地(Invitrogen #12055-091)に再懸濁した。1ウェルあたり30000個の細胞を丸底96ウェルプレートにプレートし、構築物のそれぞれの希釈液を、示された濃度で添加した。全構築物および対応する対照IgGを同じモル濃度まで調節した。5:1の最終E:T比となるようにヒトpanTエフェクター細胞を添加した。ヒトpanT細胞活性化の正の対照として、1μg/ml PHA-M(Sigma #L8902; インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)から単離したイソレクチン混合物)を使用した。基準化のために、標的細胞の最大溶解(=100%)は、標的細胞を最終濃度の1%TritonX-100とインキュベートすることによって求めた。最小溶解(=0%)とは、エフェクター細胞とコインキュベートされたが、いかなる構築物とも抗体ともコインキュベートされていない標的細胞を指す。37℃、5%CO2で20時間、一晩インキュベーションした後に、アポトーシス/壊死標的細胞から上清へのLDH放出を、LDH検出キット(Roche Applied Science, #11 644 793 001)を用いて製造業者の説明書に従って測定した。
図27に図示したように、両「2+1」構築物とも「(scFv)2」分子と同等に標的細胞のアポトーシスを誘導する。
さらに、Fcドメインの点で異なる、精製された「2+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 3、5、29、33)および「2+1 IgG scFab」構築物ならびに「(scFv)2」分子を比較した。Fcドメイン中の異なる変異(示したように、L234A+L235A(LALA)、P329G、および/またはN297D)によって、野生型(wt)Fcドメインを含有する構築物によって誘導される(NK)エフェクター細胞機能が低下するか、またはなくなる。実験手順は前記の通りであった。
図28は、全構築物が「(scFv)2」分子と同等に標的細胞のアポトーシスを誘導することを示す。
図29は、精製された「2+1 IgG scFab」(SEQ ID NO 5、17、19)および「(scFv)2」分子が腫瘍標的細胞のT細胞性アポトーシスを誘導する能力を比較した結果を示す。実験手順は前記の通りであり、5:1のE:T比でヒトMCSP発現Colo-38ヒト黒色腫標的細胞および18.5時間の一晩インキュベーションを使用した。図に図示したように、「2+1 IgG scFab」構築物は「(scFv)2」分子と同等の細胞傷害活性を示す。
同様に、図30は、5:1のE:T比でヒトMCSP発現Colo-38ヒト黒色腫標的細胞および18時間のインキュベーション時間を用いて、精製された「2+1 IgG scFab」構築物(SEQ ID NO 5、17、19)および「(scFv)2」分子を比較した結果を示す。図に図示したように、「2+1 IgG scFab」構築物は「(scFv)2」分子と同等の細胞傷害活性を示す。
図31は、5:1のE:T比でヒトMCSP発現MDA-MB-435ヒト黒色腫標的細胞および23.5時間の一晩インキュベーションを用いて、精製された「2+1 IgG scFab」構築物(SEQ ID NO 5、17、19)および「(scFv)2」分子を比較した結果を示す。図に図示したように、前記構築物は、「(scFv)2」分子と同程度に標的細胞のアポトーシスを誘導する。「2+1 IgG scFab」構築物は最高濃度で低い効力を示す。
さらに、両標的ヒトCD3およびヒトMCSPについて一価の異なる二重特異性構築物ならびに対応する「(scFv)2」分子がT細胞性アポトーシスを誘導する能力を分析した。図32は、5:1のE:T比でヒトMCSP発現Colo-38ヒト黒色腫標的細胞および19時間のインキュベーション時間を用いた、「1+1 IgG scFab、1本のアーム」(SEQ ID NO 1、3、5)および「1+1 IgG scFab、1本のアーム 逆」(SEQ ID NO 7、9、11)構築物の結果を示す。図に図示したように、両「1+1」構築物とも「(scFv)2」分子より活性が低く、このアッセイでは、「1+1 IgG scFab、1本のアーム」分子の方が「1+1 IgG scFab、1本のアーム 逆」分子より優れている。
図33は、5:1のE:T比でヒトMCSP発現Colo-38ヒト黒色腫標的細胞および20時間のインキュベーション時間を用いた、「1+1 IgG scFab」構築物(SEQ ID NO 5、21、213)の結果を示す。図に図示したように、「1+1 IgG scFab」構築物は「(scFv)2」分子より細胞傷害性が低い。
さらなる実験では、細胞上にある両標的抗原CD3およびMCSPに結合することで構築物が架橋された時に、精製された「2+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 3、5、29、33)、「1+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 5、29、31、33)、および「(scFv)2」分子が腫瘍標的細胞のT細胞性アポトーシスを誘導する能力を分析した。ヒトMCSP発現MDA-MB-435ヒト黒色腫細胞を標的細胞として使用した。E:T比は5:1であり、インキュベーション時間は20時間であった。結果を図34に示した。「2+1 IgG Crossfab」構築物は「(scFv)2」分子と同程度に標的細胞のアポトーシスを誘導する。一価の「IgG Crossfab」形式と二価の「IgG Crossfab」形式を比較すると、二価の「IgG Crossfab」形式の方がかなり強力であるとはっきりと分かる。
さらに別の実験では、精製された「2+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 3、5、29、33)構築物が異なる(腫瘍)標的細胞のT細胞性アポトーシスを誘導する能力を分析した。簡単に述べると、示したように、MCSP陽性Colo-38腫瘍標的細胞、間葉系幹細胞(骨髄由来、Lonza #PT-2501もしくは脂肪組織由来、Invitrogen #R7788-115)、または周皮細胞(胎盤由来; PromoCell #C-12980)を細胞解離緩衝液を用いて回収し、洗浄し、AIM-V培地(Invitrogen #12055-091)に再懸濁した。1ウェルあたり30000個の細胞を丸底96ウェルプレートにプレートし、それぞれの抗体希釈液を、示された濃度で添加した。25:1の最終E:T比となるように、健常ドナーの新鮮な血液から単離したヒトPBMCエフェクター細胞を添加した。37℃、5%CO2で4時間インキュベートした後に、アポトーシス/壊死標的細胞から上清へのLDH放出を、LDH検出キット(Roche Applied Science, #11 644 793 001)を用いて製造業者の説明書に従って測定した。
図35に図示したように、Colo-38細胞を用いた時だけ、かなりのT細胞性細胞傷害性を観察することができた。この結果は、かなりのレベルのMCSPを発現するColo-38細胞と一致するのに対して、間葉系幹細胞および周皮細胞はMCSPをかなり弱くしか発現しない。
精製された「2+1 IgG scFab」(SEQ ID NO 5、17、19)構築物および「(scFv)2」分子を、Fcドメイン中のフコシル化N-グリカンの割合が少ない糖が操作された抗ヒトMCSP IgG抗体(MCSP GlycoMab)とも比較した。この実験のために、ヒトMCSP発現Colo-38ヒト黒色腫標的細胞およびヒトPBMCエフェクター細胞を、25:1の一定のE:T比(図36A)または20:1〜1:10の異なるE:T比(図36B)で使用した。異なる分子を、図36Aに示した濃度で、または1667pMの一定濃度(図36B)で使用した。21時間のインキュベーション後に読み取りを行った。図36AおよびBに図示したように、両二重特異性構築物ともMSCP GlycoMabより高い効力を示す。
別の実験では、カニクイザルCD3およびヒトMCSPを標的とする精製された「2+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 3、5、35、37)を分析した。簡単に述べると、ヒトMCSP発現MV-3腫瘍標的細胞を細胞解離緩衝液を用いて回収し、洗浄し、2%FCSおよび1%GlutaMaxを含有するDMEMに再懸濁した。1ウェルあたり30000個の細胞を丸底96ウェルプレートにプレートし、構築物または参照IgGのそれぞれの希釈液を、示された濃度で添加した。前記二重特異性構築物および異なるIgG対照を同じモル濃度まで調節した。3:1の最終E:T比となるように、健常なカニクイザルの血液から単離したカニクイザルPBMCエフェクター細胞を添加した。37℃、5%CO2で24時間または43時間インキュベートした後に、アポトーシス/壊死標的細胞から上清へのLDH放出を、LDH検出キット(Roche Applied Science, #11 644 793 001)を用いて製造業者の説明書に従って測定した。
図37に図示したように、前記二重特異性構築物は標的細胞からの濃度依存的なLDH放出を誘導する。この効果は24時間後より43時間後の方が強い。抗カニクイザルCD3 IgG(クローンFN-18)も、架橋されることなく、標的細胞のLDH放出を誘導することができる。
図38は、10:1のE:T比および26時間のインキュベーション時間で、標的細胞としてMCSP発現ヒト黒色腫細胞株(MV-3)、エフェクター細胞としてヒトPBMCを用いた、精製された「2+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 3、5、29、33)および「(scFv)2」構築物を比較した結果を示す。図に図示したように、「2+1 IgG Crossfab」構築物はEC50の点で「(scFv)2」分子より効果があった。
第2の一連の実験では、抗原結合部分と細胞上にあるそれぞれの標的抗原が結合することで構築物が架橋された時に、CD3およびEGFRを標的とする二重特異性構築物が腫瘍標的細胞のT細胞性アポトーシスを誘導する能力を分析した(図39〜41)。
ある実験では、CD3およびEGFRを標的とする、精製された「2+1 IgG scFab」(SEQ ID NO 45、47、53)および「1+1 IgG scFab」(SEQ ID NO 47、53、213)構築物ならびに対応する「(scFv)2」分子を比較した。簡単に述べると、ヒトEGFR発現LS-174T腫瘍標的細胞をトリプシンを用いて回収し、洗浄し、AIM-V培地(Invitrogen # 12055-091)に再懸濁した。1ウェルあたり30000個の細胞を丸底96ウェルプレートにプレートし、それぞれの抗体希釈液を、示された濃度で添加した。全構築物および対照を同じモル濃度まで調節した。5:1の最終E:T比となるようにヒトpanTエフェクター細胞を添加した。ヒトpanT細胞活性化の正の対照として、1μg/ml PHA-M(Sigma #L8902)を使用した。基準化のために、標的細胞の最大溶解(=100%)は、標的細胞を最終濃度の1%TritonX-100とインキュベートすることによって求めた。最小溶解(=0%)とは、エフェクター細胞とコインキュベートされたが、いかなる構築物とも抗体ともコインキュベートされていない標的細胞を指す。37℃、5%CO2で18時間、一晩インキュベーションした後に、アポトーシス/壊死標的細胞から上清へのLDH放出を、LDH検出キット(Roche Applied Science, #11 644 793 001)を用いて製造業者の説明書に従って測定した。
図39に図示したように、「2+1 IgG scFab」構築物は「(scFv)2」分子と同等の細胞傷害活性を示すのに対して、「1+1 IgG scFab」構築物は「(scFv)2」分子より活性が低かった。
別の実験では、精製された「1+1 IgG scFab、1本のアーム」(SEQ ID NO 43、45、47)、「1+1 IgG scFab、1本のアーム 逆」(SEQ ID NO 11、49、51)、「1+1 IgG scFab」(SEQ ID NO 47、53、213)、および「(scFv)2」分子を比較した。実験条件は、インキュベーション時間が21時間であった以外は前記の通りであった。
図40に図示したように、「1+1 IgG scFab」構築物は、このアッセイでは「(scFv)2」分子よりわずかに低い細胞傷害活性を示す。両「1+1 IgG scFab、1本のアーム(逆)」構築物とも「(scFv)2」分子より明らかに活性が低い。
なおさらなる実験において、精製された「1+1 IgG scFab、1本のアーム」(SEQ ID NO 43、45、47)および「1+1 IgG scFab、1本のアーム 逆」(SEQ ID NO 11、49、51)構築物ならびに「(scFv)2」分子を比較した。この実験におけるインキュベーション時間は16時間であった。結果を図41に図示した。ヒトpanT細胞とインキュベートされた時に、両「1+1 IgG scFab、1本のアーム(逆)」構築物とも「(scFv)2」分子より活性が低いが、標的細胞から濃度依存的なLDH放出を示す(図41A)。LS-174T腫瘍細胞と、PBMCから単離したナイーブT細胞が共存培養された時には、前記構築物には基礎活性しかなかった。すなわち、これらの中で最も活性が高いものは「(scFv)2」分子であった(図41B)。
さらなる実験では、両標的化部分と細胞上にあるそれぞれの標的抗原が結合することで構築物が架橋された時に、CD3および線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を標的とする精製された「1+1 IgG scFab、1本のアーム 逆」(SEQ ID NO 11、51、55)、「1+1 IgG scFab」(57、61、213)、および「2+1 IgG scFab」(57、59、61)、ならびに対応する「(scFv)2」分子が、ヒトFAP発現線維芽細胞GM05389細胞のT細胞性アポトーシスを誘導する能力を分析した。簡単に述べると、前日に、ヒトGM05389標的細胞をトリプシンを用いて回収し、洗浄し、AIM-V培地(Invitrogen #12055-091)に再懸濁した。1ウェルあたり30000個の細胞を丸底96ウェルプレートにプレートし、細胞を回復および付着させるために37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。翌日、細胞を遠心分離し、上清を捨て、新鮮な培地ならびに構築物または参照IgGのそれぞれの希釈液を、示された濃度で添加した。全構築物および対照を同じモル濃度まで調節した。5:1の最終E:T比となるようにヒトpanTエフェクター細胞を添加した。ヒトpanT細胞活性化の正の対照として、5μg/ml PHA-M(Sigma #L8902)を使用した。基準化のために、標的細胞の最大溶解(=100%)は、標的細胞を最終濃度の1%TritonX-100とインキュベートすることによって求めた。最小溶解(=0%)とは、エフェクター細胞とコインキュベートされたが、いかなる構築物とも抗体ともコインキュベートされていない標的細胞を指す。37℃、5%CO2で18時間、さらに一晩インキュベーションした後に、アポトーシス/壊死標的細胞から上清へのLDH放出を、LDH検出キット(Roche Applied Science, #11 644 793 001)を用いて製造業者の説明書に従って測定した。
図42に図示したように、「2+1 IgG scFab」構築物はEC50値の点で「(scFv)2」分子と同等の細胞傷害活性を示す。「1+1 IgG scFab、1本のアーム 逆」は、このアッセイで試験した他の構築物より活性が低い。
別の一連の実験では、CD3/MCSP「2+1 IgG Crossfab、連結軽鎖」(SEQ ID NO 3、5、29、および179を参照されたい)をCD3/MCSP「2+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 3、5、29、および33を参照されたい)と比較した。簡単に述べると、標的細胞(ヒトColo-38、ヒトMV-3、またはWM266-4黒色腫細胞)をアッセイ日にCell Dissociation Bufferを用いて(またはアッセイを開始する1日前にトリプシンを用いて)回収し、洗浄し、適切な細胞培地(2%FCSおよび1%Glutamaxを含むRPMI1640)に再懸濁した。20000〜30000個の細胞/ウェルを平底96ウェルプレートに入れてプレーティングし、それぞれの抗体希釈液を、示されたように(3回繰り返して)添加した。10:1の最終エフェクター:標的細胞(E:T)比となるようにエフェクター細胞としてPBMCを添加した。全ての構築物および対照を同じモル濃度まで調節した。インキュベーション期間は22時間であった。LDH放出の検出および規準化は前記のように行った。
図49〜52は、MV-3黒色腫細胞(図49)、Colo-38細胞(図50および51)、またはWM266-4細胞(図52)を用いて行われた4つのアッセイの結果を示す。図49に示したように、標的細胞としてMV-3細胞を用いたアッセイにおいて、連結軽鎖を有する構築物は、連結軽鎖を有さない構築物と比較して弱かった。図50および51に示したように、標的細胞として高MCSP発現Colo-38細胞を用いたアッセイにおいて、連結軽鎖を有する構築物は、連結軽鎖を有さない構築物と比較して強かった。最後に、図52に示したように、高MCSP発現WM266-4細胞を標的細胞として使用した時に2種類の構築物間に有意差はなかった。
別の実験では、CrossFab断片においてV領域(VL/VH、SEQ ID NO 33、63、65、67を参照されたい)またはC領域(CL/CH1、SEQ ID NO 65、67、183、197を参照されたい)が交換された、CEAを標的とする2種類の「2+1 IgG Crossfab、逆」構築物を比較した。このアッセイは、エフェクター細胞としてヒトPBMCおよびヒトCEA発現標的細胞を用いて前記のように行った。標的細胞(MKN-45またはLS-174T腫瘍細胞)をトリプシン-EDTA(LuBiosciences #25300-096)を用いて回収し、洗浄し、1%Glutamax(LuBiosciences #35050087)および2%FCSを含むRPMI1640(Invitrogen #42404042)に再懸濁した。30000個の細胞/ウェルを丸底96ウェルプレートに入れてプレーティングし、二重特異性構築物を示された濃度で添加した。全ての構築物および対照を同じモル濃度まで調節した。10:1の最終E:T比となるようにヒトPBMCエフェクター細胞を添加した。インキュベーション期間は28時間であった。EC50値をGraphPad Prism 5ソフトウェアを用いて計算した。
図61に示したように、両標的細胞株に対してCL/CH1交換を有する構築物は、VL/VH交換を有する構築物よりわずかに優れた活性を示す。EC50計算値は、CL/CH1交換構築物およびVL/VH交換構築物についてそれぞれMKN-45細胞では115pMおよび243pMならびにLS-174T細胞では673pMおよび955pMであった。
同様に、CrossFab断片においてV領域(VL/VH、SEQ ID NO 33、189、191、193を参照されたい)またはC領域(CL/CH1、SEQ ID NO 183、189、193、195を参照されたい)が交換された、MCSPを標的とする2種類の「2+1 IgG Crossfab」構築物を比較した。このアッセイは、エフェクター細胞としてヒトPBMCおよびヒトMCSP発現標的細胞を用いて前記のように行った。標的細胞(WM266-4)をCell Dissociation Buffer(LuBiosciences#13151014)を用いて回収し、洗浄し、1%Glutamax(LuBiosciences#35050087)および2%FCSを含むRPMI1640(Invitrogen#42404042)に再懸濁した。30000個の細胞/ウェルを丸底96ウェルプレートに入れてプレーティングし、構築物を示された濃度で添加した。全ての構築物および対照を同じモル濃度まで調節した。10:1の最終E:T比となるようにヒトPBMCエフェクター細胞を添加した。インキュベーション期間は26時間であった。EC50値をGraphPad Prism 5ソフトウェアを用いて計算した。
図62に図示したように、2種類の構築物は同等の活性を示す。CL/CH1交換を有する構築物のEC50値の方がわずかに低かった(VL/VH交換構築物の16.8pMと比較して、CL/CH1交換構築物の12.9pM)。
図63は、ヒトMCSP発現MV-3標的細胞を用いて行われた同様のアッセイの結果を示す。再度、両構築物は同等の活性を示す。CL/CH1交換を有する構築物のEC50値の方がわずかに低かった(VL/VH交換構築物の約82.2pMと比較して、CL/CH1交換構築物の約11.7pM)。高い化合物濃度で死滅曲線がプラトーに達しなかったので、正確なEC50値を計算することができなかった。
さらなる実験では、CD3/MCSP「2+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 3、5、29、33を参照されたい)および「1+1 IgG Crossfab」(SEQ ID NO 5、29、33、181を参照されたい)構築物をCD3/MCSP「1+1 CrossMab」(SEQ ID NO 5、23、183、185を参照されたい)と比較した。このアッセイは、エフェクター細胞としてヒトPBMCおよびWM266-4標的細胞またはMV-3標的細胞(E:T比=10:1)ならびに21時間のインキュベーション時間を用いて前記のように行った。
図64に示したように、「2+1 IgG Crossfab」構築物は、このアッセイにおいて最も強力な分子であり、「1+1 IgG Crossfab」および「1+1 CrossMab」がこれに続く。この順序は、多量のMCSPを発現するWM266-4細胞と比較して、中程度のレベルのMCSPを発現するMV-3細胞でより顕著であった。EC50計算値は、「2+1 IgG Crossfab」、「1+1 IgG Crossfab」および「1+1 CrossMab」についてそれぞれ、MV-3細胞では9.2pM、40.9pM、および88.4pM、WM266-4細胞では33.1pM、28.4pM、および53.9pMであった。
さらなる実験では、10:1のE:T比で、MKN-45またはLS-174T腫瘍標的細胞およびヒトPBMCエフェクター細胞ならびに28時間のインキュベーション時間を用いて、異なる濃度の「1+1 IgG Crossfab LC 融合」構築物(SEQ ID NO 183、209、211、213)を試験した。図65に示したように、「1+1 IgG Crossfab LC 融合」構築物は213pMのEC50計算値でMKN-45標的細胞のアポトーシスを誘導したのに対して、LS-174T細胞を用いた場合、EC50計算値は1.56nMである。このことは、ある特定の期間内での、二重特異性構築物の効力に及ぼす異なる腫瘍抗原発現レベルの影響を示している。
さらに別の実験では、「1+1 IgG Crossfab LC 融合」構築物(SEQ ID NO 183、209、211、213)を非標的化「2+1 IgG Crossfab」分子と比較した。MC38-ヒトCEA腫瘍細胞およびヒトPBMC(E:T比=10:1)ならびに24時間のインキュベーション時間を使用した。図66に示したように、「1+1 IgG Crossfab LC融合」構築物は約3.2nMのEC50計算値で標的細胞のアポトーシスを濃度依存的に誘導した。対照的に、非標的化「2+1 IgG Crossfab」は最高濃度の時だけ標的細胞の抗原非依存的T細胞性死滅を示した。
最後の実験では、「2+1 IgG Crossfab(V9)」(SEQ ID NO 3、5、29、33)、「2+1 IgG Crossfab、逆(V9)」(SEQ ID NO 5、23、183、187)、「2+1 IgG Crossfab(抗CD3)」(SEQ ID NO 5、23、215、217)、「2+1 IgG Crossfab、逆(抗CD3)」(SEQ ID NO 5、23、215、219)を、ヒトMCSP陽性MV-3またはWM266-4腫瘍細胞およびヒトPBMC(E:T比=10:1)ならびに約24時間のインキュベーション時間を用いて比較した。図67に図示したように、両CD3結合物質について、「2+1 IgG Crossfab、逆」構築物のT細胞性死滅は「2+1 IgG Crossfabt」構築物によって誘導されたT細胞性死滅よりわずかに強いか、または少なくとも等しいように見える。EC50計算値は以下の通りであった。
実施例7
CD107a/bアッセイ
ヒトMCSPおよびヒトCD3の両方を標的とする精製された「2+1 IgG scFab」構築物(SEQ ID NO 5、17、19)および「(scFv)2」分子がヒトMCSP発現腫瘍細胞の存在下または非存在下でCD107aおよび細胞内パーフォリンレベルをアップレギュレートする能力をフローサイトメトリーによって試験した。
簡単に述べると、1日目に、1ウェルあたり30000個のColo-38腫瘍標的細胞を丸底96ウェルプレートにプレートし、付着させるために37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。説明したように、1日目または2日目に初代ヒトpanT細胞をバフィーコートから単離した。
2日目に、5:1の最終E:T比となるように1ウェルあたり15万個のエフェクター細胞を添加した。FITC結合CD107a/b抗体ならびに異なる二重特異性構築物および対照を添加する。最終濃度9.43nMとなるように、異なる二重特異性分子および抗体を同じモル濃度まで調節した。37℃、5%CO2で1時間のインキュベーション工程後に、分泌を阻害するだけでなく、エンドソーム内およびリソソーム内のpHを中和するためにモネンシンを添加した。5時間のさらなるインキュベーション時間の後に、表面CD8発現があるかどうか細胞を4℃で30分間、染色した。細胞を染色緩衝液(PBS/0.1%BSA)で洗浄し、固定し、BD Cytofix/Cytoperm Plus KitとBD Golgi Stop(BD Biosciences #554715)を用いて20分間、透過処理した。細胞を1xBD Perm/洗浄液緩衝液で2回洗浄し、パーフォリン細胞内染色を4℃で30分間、行った。1xBD Perm/洗浄液緩衝液を用いた最終洗浄工程後に、細胞をPBS/0.1%BSAに再懸濁し、FACS CantoIIによって分析した(全抗体をBD BiosciencesまたはBioLegendから購入した)。
示したように、CD107a/b陽性細胞、パーフォリン陽性細胞、または二重陽性細胞の全てに対してゲートを設定した(図43)。「2+1 IgG scFab」構築物は標的細胞の存在下のみT細胞を活性化し、CD107a/bおよび細胞内パーフォリンレベルをアップレギュレートすることができたのに対して(図43A)、「(scFv)2」分子は標的細胞の非存在下でも(弱い)T細胞活性化誘導を示す(図43B)。二価参照抗CD3 IgGは「(scFv)2」分子または他の二重特異性構築物と比較して低い活性化レベルをもたらす。
実施例8
増殖アッセイ
ヒトCD3およびヒトMCSPを両方とも標的とする精製された「2+1 IgG scFab」(SEQ ID NO 5、17、19)および「(scFv)2」分子がヒトMCSP発現腫瘍細胞の存在下または非存在下でCD8+T細胞またはCD4+T細胞の増殖を誘導する能力をフローサイトメトリーによって試験した。
簡単に述べると、新鮮に単離されたヒトpanT細胞を、温かいPBSに溶解して1mlあたり100万個の細胞まで調節し、室温で10分間、1μM CFSEで染色した。10%FCSおよび1%GlutaMaxを含有するRPMI1640培地を添加することによって染色液体積を2倍にした。室温で、さらに20分間インキュベートした後、残存しているCFSEを除去するために、予め温めた培地で細胞を3回洗浄した。MCSP陽性Colo-38細胞を細胞解離緩衝液を用いて回収し、計数し、生存率について調べた。細胞を、AIM-V培地に溶解して1mlあたり0.2x106個の(生)細胞まで調節した。この細胞懸濁液を1ウェルあたり100μl、ピペットで取って、(示したように)丸底96ウェルプレートに入れた。最終濃度1nMとなるように、50μlの(希釈)二重特異性構築物を細胞含有ウェルに添加した。CFSE染色ヒトpanTエフェクター細胞をAIM-V培地に溶解して1mlあたり2x106個の(生)細胞まで調節した。5:1の最終E:T比となるように、この細胞懸濁液を1ウェルあたり50μl、アッセイプレートに添加した(前記を参照されたい)。二重特異性構築物が、腫瘍抗原ヒトMCSPを発現する標的細胞の存在下にだけT細胞を活性化できるかどうか分析するために、1nMのそれぞれの二重特異性分子とPBMCを含有するが、標的細胞を含有しないウェルを含めた。37℃、5%CO2で5日間インキュベートした後、細胞を遠心分離し(5分、350xg)、150μl/ウェルの0.1%BSA含有PBSで2回洗浄した。CD8(マウスIgG1,κ; クローンHIT8a; BD #555635)、CD4(マウスIgG1,κ; クローンRPA-T4; BD #560649)、またはCD25(マウスIgG1,κ; クローンM-A251; BD #555434)に対する表面染色を供給業者の提案に従って4℃で30分間、行った。細胞を150μl/ウェルの0.1%BSA含有PBSで2回洗浄し、200μl/ウェルの0.1%BSA含有PBSに再懸濁し、FACS CantoII装置(Software FACS, Diva)を用いて分析した。非増殖細胞の周囲にゲートを設定し、参照として、測定された全細胞数に対する、このゲートの細胞数を用いることによって相対増殖レベルを求めた。
図44は、全構築物が標的細胞の存在下でのみ「(scFv)2」分子と同程度にCD8+T細胞(A)またはCD4+T細胞(B)の増殖を誘導することを示す。一般的に、活性化CD8+T細胞は、このアッセイでは活性化CD4+T細胞より多く増殖する。
実施例9
サイトカイン放出アッセイ
ヒトMCSPおよびヒトCD3を両方とも標的とする、精製された「2+1 IgG scFab」構築物(SEQ ID NO 5、17、19)および「(scFv)2」分子が腫瘍標的細胞の存在下または非存在下でT細胞性の新規サイトカイン分泌を誘導する能力を分析した。
簡単に述べると、ヒトPBMCをバフィーコートから単離し、1ウェルあたり30万個の細胞を丸底96ウェルプレートにプレートした。10:1の最終E:T比となるように、ヒトMCSPを発現するColo-38腫瘍標的細胞を添加した。二重特異性構築物およびIgG対照を1nM最終濃度で添加し、細胞を37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。翌日、細胞を350xgで5分間、遠心分離し、後の分析のために上清を新しいディープウェル96ウェルプレートに移した。CBA分析は、FACS CantoII用の製造業者の説明書に従って、Human Th1/Th2 Cytokine Kit II(BD #551809)を用いて行った。
図45は、上清中に測定された異なるサイトカインのレベルを示す。標的細胞の存在下では、T細胞活性化時に分泌される主なサイトカインはIFN-γである。「(scFv)2」分子は「2+1 IgG scFab」構築物よりわずかに高いレベルのIFN-γを誘導する。ヒトTNFについても同じ傾向が見出されるかもしれないが、このサイトカインの全レベルはIFN-γと比較してかなり低かった。標的細胞の存在下(または非存在下)でT細胞が活性化された時に、Th2サイトカイン(IL-10およびIL-4)の有意な分泌はなかった。Colo-38標的細胞の非存在下では、非常に弱いTNF分泌誘導しか観察されなかった。TNF分泌誘導は、「(scFv)2」分子で処理された試料で最も高かった。
第2の実験では、ヒトMCSPおよびヒトCD3を標的とする以下の精製された二重特異性構築物:「2+1 IgG Crossfab」構築物(SEQ ID NO 3、5、29、33)、「(scFv)2」分子、ならびに野生型Fcドメインまたは変異(示されたように、LALA、P329G、および/またはN297D)Fcドメインを含む異なる「2+1 IgG scFab」分子を分析した。簡単に述べると、ディープウェル96ウェルプレートの1ウェルあたり健常ドナーからの全血280μlをプレートした。ヒトMCSPを発現する30000個のColo-38腫瘍標的細胞ならびに異なる二重特異性構築物およびIgG対照を1nM最終濃度で添加した。細胞を37℃、5%CO2で24時間インキュベートし、次いで、350xgで5分間、遠心分離した。後の分析のために上清を新しいディープウェル96ウェルプレートに移した。CBA分析は、FACS CantoII用の製造業者の説明書に従って、以下のCBA Flex Set: ヒトグランザイムB(BD #560304)、ヒトIFN-γ Flex Set(BD #558269)、ヒトTNF Flex Set(BD #558273)、ヒトIL-10 Flex Set(BD #558274)、ヒトIL-6 Flex Set(BD #558276)、ヒトIL-4 Flex Set(BD #558272)、ヒトIL-2 Flex Set(BD #558270)の組み合わせを用いて行った。
図46は、上清中に測定された異なるサイトカインのレベルを示す。Colo-38腫瘍細胞の存在下で分泌される主なサイトカインはIL-6であり、それにIFN-γが続く。さらに、標的細胞の存在下でのT細胞活性化時にグランザイムBのレベルも強力に増加した。一般的に、「(scFv)2」分子は標的細胞の存在下で高いサイトカイン分泌レベルを誘導した(図46、AおよびB)。標的細胞の存在下(または非存在下)でT細胞が活性化された時にTh2サイトカイン(IL-10およびIL-4)の有意な分泌はなかった。
このアッセイでは、標的細胞の非存在下でも異なる「2+1 IgG scFab」構築物によって弱いIFN-γ分泌が誘導された(図46、C、およびD)。これらの条件下では、野生型Fcドメインまたは変異Fcドメインを有する「2+1 IgG scFab」構築物の間で有意差は観察できなかった。
実施例10
抗MCSP抗体M4-3/ML2の親和性成熟
親和性成熟はオリゴヌクレオチド指定突然変異手順を介して行った。この手順のために、重鎖変種M4-3および軽鎖変種ML2を、Hoogenboom, (Hoogenboom et al., Nucleic Acids Res. 1991, 19, 4133-4137)に記載のものと同様のファージミドベクターにクローニングした。最初に、古典的なホモロジーモデリングを介して前記抗体の3Dモデルを作製し、次いで、重鎖および軽鎖の相補性決定領域 (CDR)の溶媒接近可能残基を特定することによって、無作為化される残基を特定した。表4に示したようにトリヌクレオチド合成に基づく無作為化を有するオリゴヌクレオチドをElla-biotech(Munich, Germany)から購入した。3つの独立したサブライブラリーを古典的PCRを介して作製した。これらはCDR-H1と一緒にCDR-H2、またはCDR-L1と一緒にCDR-L2を含んだ。CDR-L3を異なるアプローチで無作為化した。これらのライブラリーのDNA断片を制限消化および連結を介してファージミドにクローニングし、その後に電気穿孔処理してTG1細菌に導入した。
ライブラリー選択
このように作製された抗体変種を、繊維状ファージ粒子から、それぞれの粒子の中にパッケージングされたM13の遺伝子III産物との融合として一価でディスプレイした。次いで、ファージディスプレイされた変種を生物学的活性(ここでは結合親和性)についてスクリーニングした。さらなる開発のために、1つまたは複数の改善された活性を有する候補を使用した。ファージディスプレイライブラリーを作製する方法は、Lee et al., J. Mol. Biol. (2004) 340, 1073-1093)に記載されている。
全ての親和性成熟ライブラリーを用いた選択を以下の手順に従って溶解状態で行った。1.それぞれの親和性成熟ライブラリーの約1012個のファージミド粒子を100nMのビオチン化ヒトMCSP(D3ドメイン)-avi-his(SEQ ID NO.390)に総体積1mlで0.5時間、結合させる。2.5.4×107個のストレプトアビジンコーティング磁気ビーズを10分間、添加することによって、ビオチン化ヒトMCSP(D3ドメイン)-avi-hisおよび特異的に結合したファージ粒子を捕捉する。3.5〜10x1mlのPBS/Tween20および5〜10x1mlのPBSを用いてビーズを洗浄する。4.1mlの100mM TEA(トリエチルアミン)を添加することによってファージ粒子を10分間、溶出させ、500ulの1M Tris/HCl pH7.4を添加することによって中和する。5.指数関数的に増殖している大腸菌TG1細菌にヘルパーファージVCSM13を再感染させ、その後に、後の選択回において用いられるファージミド粒子をPEG/NaCl沈殿する。一定の抗原濃度または漸減する(10-7M〜2x10-9M)抗原濃度のいずれかを用いて選択を3〜5回以上、行った。2回目に、ストレプトアビジンビーズの代わりにニュートラアビジンプレートを用いて抗原:ファージ複合体を捕捉した。以下の通りに、ELISAによって特異的結合物質を特定した。1ウェルあたり100ulの10nMビオチン化ヒトMCSP(D3ドメイン)-avi-hisをニュートラアビジンプレート上にコーティングした。Fab含有細菌上清を添加し、抗Flag/HRP二次抗体を用いることによってFlagタグを介して結合Fabを検出した。ELISA陽性クローンを96ウェル形式で可溶性Fab断片として細菌により発現させ、ProteOn XPR36(BioRad)を用いたSPR分析によって上清を反応速度スクリーニング実験に供した。親和定数が最も高いFabを発現するクローンを特定し、対応するファージミドを配列決定した。
(表4)(常にCysおよびMetを除外した。オリゴヌクレオチドがリバースプライマーである場合には1番目にLysを除外した)
図84は、非成熟親クローン(M4-3 ML2)と比較した親和性成熟抗MCSPクローンのアラインメントを示す。重鎖無作為化はCDR1およびCDR2においてのみ行った。軽鎖無作為化はCDR1およびCDR2において行い、独立してCDR3において行った。
選択の間に、クローンG3のF71YまたはクローンE10のY87Hのようにフレームワークに数個の変異が発生した。
ヒトIgG1の産生および精製
親和性成熟変種の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のDNA配列を、それぞれのレシピエント哺乳動物発現ベクターに予め挿入した定常重鎖または定常軽鎖とインフレームでサブクローニングした。MPSVプロモーターによって抗体を発現させた。合成ポリAシグナル配列はCDSの3'末端に位置する。さらに、各ベクターはEBV OriP配列を含有した。
ポリエチレンイミンを用いて、HEK293-EBNA細胞を哺乳動物発現ベクターでコトランスフェクトすることによって前記分子を産生した。細胞を1:1比の対応する発現ベクターでトランスフェクトした。トランスフェクションのために、HEK293 EBNA細胞を無血清CD CHO培地中で懸濁培養した。500ml振盪フラスコ中で産生するために、トランスフェクションの24時間前に4x108個のHEK293 EBNA細胞を播種した。トランスフェクションのために、細胞を210xgで5分間、遠心分離し、上清を20mlの予め温めたCD CHO培地と交換した。発現ベクターを200μgのDNAの最終量まで20mlのCD CHO培地中で混合した。540μlのPEIを添加した後に、溶液を15秒間ボルテックスし、その後に室温で10分間インキュベートした。その後、細胞をDNA/PEI溶液と混合し、500ml振盪フラスコに移し、5%CO2雰囲気のインキュベーターに入れて37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション期間の後、160mlのF17培地を添加し、細胞を24時間、培養した。トランスフェクションの1日後に、1mMバルプロ酸および7%Feed1を添加した。7日間、培養した後、精製のために210xgで15分間、遠心分離することによって上清を収集した。溶液を濾過滅菌(0.22μmフィルター)し、最終濃度0.01%w/vのアジ化ナトリウムを添加し、4℃に保った。
プロテインAを用いたアフィニティクロマトグラフィーによって細胞培養上清から分泌タンパク質を精製した。上清を、40mlの20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5で平衡化したHiTrap ProteinA HPカラム(CV=5mL, GE Healthcare)にロードした。少なくとも10カラム体積の20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5で洗浄することによって非結合タンパク質を除去した。標的タンパク質を20カラム体積の20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5から20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH2.5にわたる勾配の間に溶出させた。1/10の0.5Mリン酸ナトリウム、pH8を添加することによってタンパク質溶液を中和した。標的タンパク質を濃縮および濾過した後に、pH6.0の20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム溶液で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)にロードした。
精製タンパク質試料のタンパク質濃度は、アミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光率を用いて280nmでの光学密度(OD)を測定することによって求めた。分子の純度および分子量は還元剤の存在下および非存在下でのCE-SDS分析によって分析した。Caliper LabChip GXIIシステム(Caliper lifescience)を製造業者の説明書に従って使用した。2ugの試料を分析に使用した。抗体試料の凝集物含有率は、25mM K2HPO4、125mM NaCl、200mM L-アルギニン一塩酸塩、0.02%(w/v)NaN3、pH6.7ランニングバッファーに溶解してTSKgel G3000 SW XL分析用サイズ排除カラム(Tosoh)を用いて25℃で分析した。
(表5)親和性成熟抗MCSP IgGの産生および精製
親和性の決定
ProteOn分析
アミンカップリングによって抗ヒトF(ab')2断片特異的捕捉用抗体(Jackson ImmunoResearch #109-005-006)をCM5チップ上で固定化し、その後に細菌上清または精製Fab調製物からのFabを捕捉する、ProteOn XPR36装置(BioRad)を25℃で用いる表面プラズモン共鳴によってKDを測定した。簡単に述べると、供給業者の説明書に従って、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5, GE Healthcare)をN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化した。抗ヒトF(ab')2断片特異的捕捉用抗体を10mM酢酸ナトリウム、pH5.0で50μg/mlに希釈した後に、約10.000応答単位(response unit)(RU)までのカップリング捕捉用抗体となるように10μl/分の流速で注入した。捕捉用抗体を注入した後に、反応しなかった基をブロックするために1Mエタノールアミンを注入した。反応速度測定のために、細菌上清からのFabまたは精製Fabを10μl/分の流速で300秒間、注入し、捕捉ベースライン安定化のために300秒間、解離させた。捕捉レベルは100〜500RUであった。後の工程において、ヒトMCSP(D3ドメイン)-avi-his分析物を、HBS-EP+(GE Healthcare、10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%Surfactant P20、pH7.4)で希釈した(100nM〜250pMの範囲のクローン親和性に応じて)単一濃度または濃度シリーズのいずれかとして50μl/分の流速で25℃で注入した。グリシンpH1.5を90ul/分で30秒間注入した後にNaOHを同じ流速で20秒間注入することによってセンサーチップ表面を再生した。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、単純1:1ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model)(ProteOn XPR36 Evaluation SoftwareまたはScrubber software(BioLogic))を用いて会合センサーグラムおよび解離センサーグラムを同時にフィッティングすることによって計算した。平衡解離定数(KD)は比koff/konとして計算した。このデータを用いて、親和性成熟変種と親抗体との比較結合親和性を求めた。表6aは、これらのアッセイから作成したデータを示す。
ヒトIgG1形式に変換するために、軽鎖用にG3、E10、C5および重鎖用にD6、A7、B7、B8、C1を選択した。CDR3と独立して軽鎖のCDR1およびCDR2を無作為化したので、得られたCDRをIgG変換の間に組み合わせた。
IgG形式において、ヒトMCSP抗原(SEQ ID NO. 390)に対する親和性を再測定し、さらに、カニクイザルホモログ(SEQ ID NO. 389)に対する親和性も再測定した。まさにFab断片について説明した方法のように、哺乳動物産生からの精製IgGを使用した。
(表6a)MCSP親和性成熟クローン:Proteonデータ
Biacore T200を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)による親和性決定
親和性成熟IgGの親和性およびアビディティを求める表面プラズモン共鳴(SPR)実験を、Biacore T200においてランニングバッファーとしてHBS-EP(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%Surfactant P20, Biacore, Freiburg/Germany)を用いて25℃で行った。
様々な抗MCSP IgGとヒトおよびカニクイザルMCSP D3との相互作用のアビディティを分析するために、標準的なアミンカップリングキット(Biacore, Freiburg/Germany)を用いて約9,500共鳴単位(RU)の抗Penta His抗体(Qiagen)の直接カップリングをCM5チップ上でpH5.0で行った。抗原をそれぞれ30nM、10μl/分で60秒間捕捉した。IgGを0.0064〜100nMの濃度で30μl/分の流速でフローセルに280秒間、通した。解離を180秒間モニタリングした。参照フローセルにおいて得られた応答を差し引くことによって体積屈折率差を補正した。参照フローセルには、固定化抗Penta His抗体を有するが、ヒトMCSP D3またはカニクイザルMCSP D3ではなくHBS-EPが注入されている表面上にIgGを流した。
親和性測定のために、IgGを、抗ヒトFcを固定化したCM5センサーチップ表面に捕捉した。標準的なアミンカップリングキット(Biacore, Freiburg/Germany)を用いて約9,500共鳴単位(RU)をpH5.0で直接固定化することによって捕捉用IgGをセンサーチップ表面にカップリングした。IgGを10nM、30μl/分で25秒間、捕捉した。ヒトおよびカニクイザルMCSP D3を2〜500nMの濃度で30μl/分の流速でフローセルに120秒間、通した。解離を60秒間モニタリングした。濃度166nMおよび500nMについての会合および解離をそれぞれ1200秒間および600秒間モニタリングした。参照フローセルにおいて得られた応答を差し引くことによって体積屈折率差を補正した。参照フローセルには、固定化抗ヒトFc抗体を有するが、抗MCSP IgGではなくHBS-EPが注入されている表面上に抗原を流した。
Biacore T200 Evaluation Software(vAA, Biacore AB, Uppsala/Sweden)を用いて、数値積分法によって1:1ラングミュア結合に反応速度式をフィッティングさせるように反応速度定数を導き出した。
ヒトおよびカニクイザルMCSP D3に対する高い親和性がBiacoreT200を用いた表面プラズモン共鳴測定によって確かめられた。さらに、アビディティ測定は3倍までの二価結合増加を示した(表6b)。
(表6b)ヒトMCSP-D3およびカニクイザルMCSP D3に対する抗MCSP IgGの親和性およびアビディティ
実施例11
抗MCSP抗体としてM4-3(C1)ML2(G3)および抗CD3抗体としてヒト化CH2527を含有するMCSP TCB(2+1 Crossfab-IgG P329G LALA 逆)の調製
結果として生じた重鎖可変領域および軽鎖可変領域のDNA配列を、それぞれのレシピエント哺乳動物発現ベクターに予め挿入した定常重鎖または定常軽鎖とインフレームでサブクローニングした。MPSVプロモーターによって抗体を発現させた。合成ポリAシグナル配列はCDSの3'末端に位置する。さらに、各ベクターはEBV OriP配列を含有する。
ポリエチレンイミンを用いて、HEK293-EBNA細胞を哺乳動物発現ベクターでコトランスフェクトすることによって前記分子を産生した。細胞を1:2:1:1比の対応する発現ベクター(「ベクター重鎖Fc(ホール)」:「ベクター軽鎖」:「ベクター軽鎖Crossfab」:「ベクター重鎖Fc(ノブ)-FabCrossfab」)でトランスフェクトした。
トランスフェクションのために、HEK293 EBNA細胞を無血清CD CHO培地中で懸濁培養した。500ml振盪フラスコ中で産生するために、トランスフェクションの24時間前に4x108個のHEK293 EBNA細胞を播種した。トランスフェクションのために、細胞を210xgで5分間、遠心分離し、上清を20mlの予め温めたCD CHO培地と交換した。発現ベクターを200μgのDNAの最終量まで20mlのCD CHO培地中で混合した。540μlのPEIを添加した後に、溶液を15秒間ボルテックスし、その後に室温で10分間インキュベートした。その後、細胞をDNA/PEI溶液と混合し、500ml振盪フラスコに移し、5%CO2雰囲気のインキュベーターに入れて37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション期間の後、160mlのF17培地を添加し、細胞を24時間、培養した。トランスフェクションの1日後に、1mMバルプロ酸および7%Feed1を添加した。7日間、培養した後、精製のために210xgで15分間、遠心分離することによって上清を収集した。溶液を濾過滅菌(0.22μmフィルター)し、最終濃度0.01%w/vのアジ化ナトリウムを添加し、4℃に保った。
プロテインAを用いたアフィニティクロマトグラフィーによって細胞培養上清から分泌タンパク質を精製した。上清を、40mlの20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5で平衡化したHiTrap ProteinA HPカラム(CV=5mL, GE Healthcare)にロードした。少なくとも10カラム体積の20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5で洗浄することによって非結合タンパク質を除去した。標的タンパク質を20カラム体積の20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5から20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH2.5にわたる勾配の間に溶出させた。1/10の0.5Mリン酸ナトリウム、pH8を添加することによってタンパク質溶液を中和した。標的タンパク質を濃縮および濾過した後に、pH6.0の20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム溶液で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)にロードした。
精製タンパク質試料のタンパク質濃度は、アミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光率を用いて280nmでの光学密度(OD)を測定することによって求めた。
分子の純度および分子量は還元剤の存在下および非存在下でのCE-SDS分析によって分析した。Caliper LabChip GXIIシステム(Caliper lifescience)を製造業者の説明書に従って使用した。2ugの試料を分析に使用した。
抗体試料の凝集物含有率は、25mM K2HPO4、125mM NaCl、200mM L-アルギニン一塩酸塩、0.02%(w/v)NaN3、pH6.7ランニングバッファーに溶解してTSKgel G3000 SW XL分析用サイズ排除カラム(Tosoh)を用いて25℃で分析した。
図68は、MCSP TCB(2+1 Crossfab-IgG P329G LALA 逆)分子の模式図を示す。
図69および表7bは、MCSP TCB(2+1 Crossfab-IgG P329G LALA 逆)分子(SEQ ID NO:278、319、320、および321)のCE-SDS分析を示す。
図70は、MCSP TCB(2+1 Crossfab-IgG P329G LALA 逆)分子(SEQ ID NO:78、319、320、および321)の分析用サイズ排除クロマトグラフィーを示す。
実施例12
抗CEA抗体としてCH1A1A 98/99 2F1、抗CD3抗体としてヒト化CH2527を含有するCEA TCB(2+1 Crossfab-IgG P329G LALA 逆)の調製
結果として生じた重鎖可変領域および軽鎖可変領域のDNA配列を、それぞれのレシピエント哺乳動物発現ベクターに予め挿入した定常重鎖または定常軽鎖とインフレームでサブクローニングした。MPSVプロモーターによって抗体を発現させた。合成ポリAシグナル配列はCDSの3'末端に位置する。さらに、各ベクターはEBV OriP配列を含有する。
ポリエチレンイミンを用いて、HEK293-EBNA細胞を哺乳動物発現ベクターでコトランスフェクトすることによって前記分子を産生した。細胞を1:2:1:1比の対応する発現ベクター(「ベクター重鎖Fc(ホール)」:「ベクター軽鎖」:「ベクター軽鎖Crossfab」:「ベクター重鎖Fc(ノブ)-FabCrossfab」)でトランスフェクトした。
トランスフェクションのために、HEK293 EBNA細胞を無血清CD CHO培地中で懸濁培養した。500ml振盪フラスコ中で産生するために、トランスフェクションの24時間前に4x108個のHEK293 EBNA細胞を播種した。トランスフェクションのために、細胞を210xgで5分間、遠心分離し、上清を20mlの予め温めたCD CHO培地と交換した。発現ベクターを200μgのDNAの最終量まで20mlのCD CHO培地中で混合した。540μlのPEIを添加した後に、溶液を15秒間ボルテックスし、その後に室温で10分間インキュベートした。その後、細胞をDNA/PEI溶液と混合し、500ml振盪フラスコに移し、5%CO2雰囲気のインキュベーターに入れて37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション期間の後、160mlのF17培地を添加し、細胞を24時間、培養した。トランスフェクションの1日後に、1mMバルプロ酸および7%Feed1を添加した。7日間、培養した後、精製のために210xgで15分間、遠心分離することによって上清を収集した。溶液を濾過滅菌(0.22μmフィルター)し、最終濃度0.01%w/vのアジ化ナトリウムを添加し、4℃に保った。
プロテインAを用いたアフィニティクロマトグラフィーによって細胞培養上清から分泌タンパク質を精製した。上清を、40mlの20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5で平衡化したHiTrap ProteinA HPカラム(CV=5mL, GE Healthcare)にロードした。少なくとも10カラム体積の20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5で洗浄することによって非結合タンパク質を除去した。標的タンパク質を20カラム体積の20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5から20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH2.5にわたる勾配の間に溶出させた。1/10の0.5Mリン酸ナトリウム、pH8を添加することによってタンパク質溶液を中和した。標的タンパク質を濃縮および濾過した後に、pH6.0の20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム溶液で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)にロードした。
精製タンパク質試料のタンパク質濃度は、アミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光率を用いて280nmでの光学密度(OD)を測定することによって求めた。
分子の純度および分子量は還元剤の存在下および非存在下でのCE-SDS分析によって分析した。Caliper LabChip GXIIシステム(Caliper lifescience)を製造業者の説明書に従って使用した。2ugの試料を分析に使用した。
抗体試料の凝集物含有率は、25mM K2HPO4、125mM NaCl、200mM L-アルギニン一塩酸塩、0.02%(w/v)NaN3、pH6.7ランニングバッファーに溶解してTSKgel G3000 SW XL分析用サイズ排除カラム(Tosoh)を用いて25℃で分析した。
図71は、CEA TCB(2+1 Crossfab-IgG P329G LALA 逆)分子の模式図を示す。
図72および表9は、CEA TCB(2+1 Crossfab-IgG P329G LALA 逆)分子(SEQ ID NO:288、322、323、および324)のCE-SDS分析を示す。
図73は、CEA TCB(2+1 Crossfab-IgG P329G LALA 逆)分子(SEQ ID NO:288、322、323、および324)の分析用サイズ排除クロマトグラフィーを示す。
実施例13
GA903 TCBとMCSP発現細胞およびCD3発現細胞との結合
GA903 TCBの結合を、MCSP発現ヒト悪性黒色腫細胞株(A375)およびCD3発現不死化Tリンパ球株(ジャーカット)において試験した。簡単に述べると、細胞を回収し、計数し、生存率について調べ、FACS緩衝液(100μl PBS 0.1%BSA)に溶解して2x106細胞/mlで再懸濁した。100μlの細胞懸濁液(0.2x106個の細胞を含有する)を丸底96ウェルプレート中で漸増濃度のMCSP TCB(2.6pM〜200nM)と4℃で30分間インキュベートし、冷PBS 0.1%BSAで2回洗浄し、PE結合AffiniPure F(ab')2断片ヤギ抗ヒトIgG Fcg断片特異的二次抗体(Jackson Immuno Research Lab PE #109-116-170)と4℃でさらに30分間、再インキュベートし、冷PBS 0.1%BSAで2回洗浄し、すぐに、FACS CantoII(Software FACS, Diva)を用いたFACSによって、DAPI陰性生細胞をゲーティングすることによって分析した。GraphPadPrism5を用いて結合曲線を入手した(図74A、A375細胞との結合、EC50=3381pM; 図74B、ジャーカット細胞との結合)。
実施例14
MCSP TCB抗体によって誘導されたT細胞性死滅
MCSP TCB抗体によって媒介されるT細胞性死滅を、異なるレベルのMCSPを発現する1パネルの腫瘍細胞株(A375=MCSP高、MV-3=MSCP中、HCT-116=MCSP低、LS180=MCSP陰性)を用いて評価した。簡単に述べると、標的細胞をトリプシン/EDTAを用いて回収し、洗浄し、平底96ウェルプレートを用いて25000細胞/ウェルの密度でプレートした。細胞を一晩、付着したままにした。健常ヒトドナーから入手した濃縮リンパ球調製物(バフィーコート)のHistopaque密度遠心分離によって末梢血単核球(PBMC)を調製した。新鮮な血液を滅菌PBSで希釈し、Histopaque勾配(Sigma, #H8889)の上に層状に積み重ねた。450xgで室温で30分間、遠心分離した後に、PBMCを含有する中間層(interphase)の上にある血漿を捨て、PBMCを新たなfalconチューブに移し、その後に、チューブを50mlのPBSで満たした。混合物を遠心分離(400xg、10分、室温)し、上清を捨て、PBMCペレットを滅菌PBSで2回洗浄した(遠心分離工程350xg、10分)。結果として生じたPBMC集団を自動計数し(ViCell)、10%FCSおよび1%L-アラニル-L-グルタミン(Biochrom, K0302)を含有するRPMI1640培地に溶解し、さらに使用するまで(24時間以下)細胞インキュベーターに入れて37℃、5%CO2で保管した。死滅アッセイのために、抗体を、示された濃度(1pM〜10nMの範囲、3回繰り返した)で添加した。PBMCを標的細胞に10:1の最終E:T比で添加した。37℃、5%CO2で24時間インキュベートした後に、アポトーシス/壊死細胞が細胞上清に放出したLDHを定量することによって標的細胞死滅を評価した(LDH検出キット、Roche Applied Science, #11 644 793 001)。標的細胞の最大溶解(=100%)は、標的細胞を1%TritonX-100とインキュベートすることによって達成した。最小溶解(=0%)とは、エフェクター細胞とコインキュベートされたが、二重特異性構築物とコインキュベートされていない標的細胞を指す。結果から、MCSP TCBはMCSP+標的細胞株の強力かつ標的特異的な死滅を誘導したが、MCSP-細胞株の死滅を誘導しなかったことが分かる。図75A〜D。GraphPadPrism5を用いて計算した死滅アッセイに関連するEC50値を表10に示した。
(表10)MCSP TCB抗体によって誘導されたMCSP発現腫瘍細胞のT細胞性死滅のEC50値(pM)
実施例15
MCSP TCB抗体によって誘導されたMCSP発現腫瘍細胞のT細胞性死滅後のCD8+エフェクター細胞およびCD4+エフェクター細胞上にあるCD25およびCD69のアップレギュレーション
MCSP TCB抗体によって媒介されるMCSP発現MV-3腫瘍細胞のT細胞性死滅後のCD8+T細胞およびCD4+T細胞の活性化を、T細胞活性化マーカーCD25(後期活性化マーカー)およびCD69(初期活性化マーカー)を認識する抗体を用いたFACS分析によって評価した。抗体および死滅アッセイ条件は本質的に前記(実施例14)の通りであり、同じ抗体濃度範囲(1pM〜10nM、3回繰り返した)、10:1のE:T比、および24時間のインキュベーション時間を使用した。
インキュベートした後、PBMCを丸底96ウェルプレートに移し、350xgで5分間、遠心分離し、0.1%BSAを含有するPBSで2回洗浄した。CD8(FITC抗ヒトCD8 BD #555634)、CD4(PECy7抗ヒトCD4、BD #557852)、CD69(PE抗ヒトCD69 Biolegend #310906)、およびCD25(APC抗ヒトCD25 BD #555434)に対する表面染色を供給業者の指示に従って行った。細胞を150μl/ウェルの0.1%BSA含有PBSで2回洗浄し、100μl/ウェルの固定緩衝液(BD #554655)を用いて4℃で15分間、固定した。遠心分離後に、FACS測定用に死細胞を排除するために、試料を200μl/ウェルのDAPI含有PBS 0.1%BSAに再懸濁した。試料を BD FACS Fortessaで分析した。結果から、MCSP TCBは、死滅後に、CD8+T細胞(図76A、B)およびCD4+T細胞(図76C、D)上にある活性化マーカー(CD25、CD69)の強力かつ標的特異的なアップレギュレーションを誘導したことが分かる。
実施例16
MCSP TCB抗体によって誘導されたMCSP発現腫瘍細胞のT細胞性死滅後のヒトエフェクター細胞によるサイトカイン分泌
MCSP TCB抗体によって誘導されたMCSP発現MV-3腫瘍細胞のT細胞性死滅後のヒトPBMCによるサイトカイン分泌を、死滅アッセイ後の細胞上清のFACS分析によって評価した。
同じ抗体を使用し、死滅アッセイを、本質的に前記(実施例14および15)のように、10:1のE:T比および24時間のインキュベーション時間を用いて行った。インキュベーション期間の終わりに、プレートを350xgで5分間、遠心分離し、上清を新しい96ウェルプレートに移し、後の分析まで-20℃で保管した。細胞上清中に分泌されたグランザイムB、TNFα、IFN-γ、IL-2、IL-4、およびIL-10を、BD CBAヒト可溶性タンパク質Flex Setを用いて製造業者の説明書に従ってFACS CantoIIで検出した。以下のキット: BD CBA ヒトグランザイムB BD CBA ヒトグランザイムB Flex Set #BD 560304; BD CBA ヒトTNF Flex Set #BD 558273; BD CBA ヒトIFN-γ Flex Set #BD 558269; BD CBA ヒトIL-2 Flex Set #BD 558270; BD CBA ヒトIL-4 Flex Set #BD 558272; BD CBA ヒトIL-10 Flex Set #BD 558274を使用した。
結果から、MCSP TCBは、死滅時に、IL-2、IFN-γ、TNFα、グランザイムB、およびIL-10の分泌を誘導した(が、IL-4の分泌を誘導しなかった)ことが分かる。図77A〜F。
これらの実施例から、MCSP CD3二重特異性抗体が以下であったことが分かる。
・MCSP+A375細胞と良好な結合を示した
・MCSP+標的細胞株の強力かつ標的特異的な死滅を誘導し、MCSP-細胞株の死滅を誘導しなかった
・死滅後に、CD8+T細胞およびCD4+T細胞上にある活性化マーカー(CD25、CD69)の強力かつ標的特異的なアップレギュレーションを誘導した
・死滅時にIL-2、IFN-g、TNF-a、GrB、およびIL-10の分泌を誘導した(IL-4の分泌を誘導しなかった)
実施例17
CEA TCBとCEA発現細胞およびCD3発現細胞との結合
CEA TCBの結合を、CEA発現結腸腺癌細胞(LS180)およびCD3発現不死化Tリンパ球株(ジャーカット)において試験した。簡単に述べると、細胞を回収し、計数し、生存率について調べ、FACS緩衝液(100μl PBS 0.1%BSA)に溶解して2x106細胞/mlで再懸濁した。100μlの細胞懸濁液(0.2x106個の細胞を含有する)を丸底96ウェルプレート中で漸増濃度のCEA TCB(3pM〜200nM)と4℃で30分間インキュベートし、冷PBS 0.1%BSAで2回洗浄し、PE結合AffiniPure F(ab')2断片ヤギ抗ヒトIgG Fcg断片特異的二次抗体(Jackson Immuno Research Lab PE #109-116-170)と4℃でさらに30分間、再インキュベートし、冷PBS 0.1%BSAで2回洗浄し、すぐに、FACS CantoII(Software FACS Diva)を用いたFACSによって、DAPI陰性生細胞をゲーティングすることによって分析した。GraphPadPrism5を用いて結合曲線を入手した(図78A、LS180細胞との結合;図78B、ジャーカット細胞との結合)。
実施例18
CEA TCB抗体によって誘導されたT細胞性死滅
CEA TCB抗体によって媒介されるT細胞性死滅を、MKN45(高CEA)、LS180(中CEA)、およびHT-29(低CEA)ヒト腫瘍細胞において評価した。ヒトPBMCをエフェクターとして使用し、二重特異性抗体と24時間インキュベートした時に死滅を検出した。簡単に述べると、標的細胞をトリプシン/EDTAを用いて回収し、洗浄し、平底96ウェルプレートを用いて25000細胞/ウェルの密度でプレートした。細胞を一晩、付着したままにした。健常ヒトドナーから入手した濃縮リンパ球調製物(バフィーコート)のHistopaque密度遠心分離によって末梢血単核球(PBMC)を調製した。新鮮な血液を滅菌PBSで希釈し、Histopaque勾配(Sigma, #H8889)の上に層状に積み重ねた。遠心分離(450xg、30分、室温)した後に、PBMCを含有する中間層の上にある血漿を捨て、PBMCを新たなfalconチューブに移し、その後に、チューブを50mlのPBSで満たした。混合物を遠心分離(400xg、10分、室温)し、上清を捨て、PBMCペレットを滅菌PBSで2回洗浄した(遠心分離工程350xg、10分)。結果として生じたPBMC集団を自動計数し(ViCell)、10%FCSおよび1%L-アラニル-L-グルタミン(Biochrom, K0302)を含有するRPMI1640培地に溶解し、さらに使用するまで(24時間以下)細胞インキュベーターに入れて37℃、5%CO2で保管した。死滅アッセイのために、抗体を、示された濃度(0.2pM〜20nMの範囲、3回繰り返した)で添加した。PBMCを標的細胞に10:1の最終E:T比で添加した。37℃、5%CO2で24時間および48時間インキュベートした後に、アポトーシス/壊死細胞が細胞上清に放出したLDHを定量することによって標的細胞死滅を評価した(LDH検出キット、Roche Applied Science, #11 644 793 001)。標的細胞の最大溶解(=100%)は、標的細胞を1%TritonX-100とインキュベートすることによって達成した。最小溶解(=0%)とは、エフェクター細胞とコインキュベートされたが、二重特異性構築物とコインキュベートされていない標的細胞を指す。結果から、CEA TCBは、CEA+標的細胞株の強力かつ標的特異的な死滅を誘導したことが分かる。図79A〜C。GraphPadPrism5を用いて計算した死滅アッセイに関連するEC50値を表11に示した。
(表11)CEA TCB抗体によって誘導されたCEA発現腫瘍細胞のT細胞性死滅のEC50値(pM)
実施例19
CEA TCB抗体によって誘導されたCEA発現腫瘍細胞のT細胞性死滅後のCD8+エフェクター細胞およびCD4+エフェクター細胞上にあるCD25およびCD69のアップレギュレーション
CEA TCB抗体によって媒介されるCEA発現LS180腫瘍細胞のT細胞性死滅後のCD8+T細胞およびCD4+T細胞の活性化を、T細胞活性化マーカーCD25(後期活性化マーカー)およびCD69(初期活性化マーカー)を認識する抗体を用いたFACS分析によって評価した。抗体および死滅アッセイ条件は本質的に前記(実施例18)の通りであり、同じ抗体濃度範囲(0.2pM〜20nM、3回繰り返した)、10:1のE:T比、および24時間のインキュベーション時間を使用した。
インキュベートした後、PBMCを丸底96ウェルプレートに移し、350xgで5分間、遠心分離し、0.1%BSAを含有するPBSで2回洗浄した。CD8(FITC抗ヒトCD8 BD # 555634)、CD4(PECy7抗ヒトCD4、BD # 557852)、CD69(PE抗ヒトCD69 Biolegend #310906)、およびCD25(APC抗ヒトCD25 BD #555434)に対する表面染色を供給業者の指示に従って行った。細胞を150μl/ウェルの0.1%BSA含有PBSで2回洗浄し、100μl/ウェルの固定緩衝液(BD #554655)を用いて4℃で15分間、固定した。遠心分離後に、FACS測定用に死細胞を排除するために、試料を200μl/ウェルのDAPI含有PBS 0.1%BSAに再懸濁した。試料を BD FACS Fortessaで分析した。結果から、CEA TCBは、死滅後に、CD8+T細胞(図80A、B)およびCD4+T細胞(図80C、D)上にある活性化マーカー(CD25、CD69)の強力かつ標的特異的なアップレギュレーションを誘導したことが分かる。
実施例20
CEA TCBによって誘導されたCEA発現腫瘍細胞のT細胞性死滅後のヒトエフェクター細胞によるサイトカイン分泌
CEA TCBによって誘導されたCEA発現LS180腫瘍細胞のT細胞性死滅後のヒトPBMCによるサイトカイン分泌を、死滅アッセイ後の細胞上清のFACS分析によって評価した。
同じ抗体を使用し、死滅アッセイを、本質的に前記(実施例18および19)のように、10:1のE:T比および24時間のインキュベーション時間を用いて行った。
インキュベーション期間の終わりに、プレートを350xgで5分間、遠心分離し、上清を新しい96ウェルプレートに移し、後の分析まで-20℃で保管した。細胞上清中に分泌されたグランザイムB、TNFα、IFN-γ、IL-4、およびIL-10を、BD CBAヒト可溶性タンパク質Flex Setを用いて製造業者の説明書に従ってFACS CantoIIで検出した。以下のキット: BD CBA ヒトグランザイムB BD CBA ヒトグランザイムB Flex Set #BD 560304; BD CBA ヒトTNF Flex Set #BD 558273; BD CBA ヒトIFN-γ Flex Set #BD 558269; BD CBA ヒトIL-4 Flex Set #BD 558272; BD CBA ヒトIL-10 Flex Set #BD 558274を使用した。
結果から、死滅時に、CEA TCBは、IFN-γ、TNFα、グランザイムB、IL-4、およびIL-10の分泌を誘導したことが分かる。図81A〜E。
これらの実施例から、CEA CD3二重特異性抗体が以下であったことが分かる。
・CEA+細胞と良好な結合を示した
・CEA+標的細胞株の強力かつ標的特異的な死滅を誘導した
・死滅後に、CD8+T細胞およびCD4+T細胞上にある活性化マーカー(CD25、CD69)の強力かつ標的特異的なアップレギュレーションを誘導した
・死滅時にIL-2、IFN-g、TNF-a、GrB、およびIL-10の分泌を誘導した(IL-4の分泌を誘導しなかった)
実施例21
非結合抗体としてDP47 GS、抗CD3抗体としてヒト化CH2527を含有するDP47 GS TCB(2+1 Crossfab-IgG P329G LALA 逆=「非標的化TCB」)の調製
前記の実験では「非標的化TCB」を対照として使用した。この二重特異性抗体はCD3eに結合するが、他のいかなる抗原とも結合せず、従って、T細胞を、いかなる標的細胞とも架橋することができない(その後に、死滅を誘導することができない)。従って、このアッセイでは、非特異的なT細胞活性化をモニタリングするために「非標的化TCB」を負の対照として使用した。
結果として生じた重鎖可変領域および軽鎖可変領域のDNA配列は、それぞれのレシピエント哺乳動物発現ベクターに予め挿入した定常重鎖または定常軽鎖とインフレームでサブクローニングされている。MPSVプロモーターによって抗体を発現させた。合成ポリAシグナル配列はCDSの3'末端に位置する。さらに、各ベクターはEBV OriP配列を含有する。
ポリエチレンイミンを用いて、HEK293-EBNA細胞を哺乳動物発現ベクターでコトランスフェクトすることによって前記分子を産生した。細胞を1:2:1:1比の対応する発現ベクター(「ベクター重鎖Fc(ホール)」:「ベクター軽鎖」:「ベクター軽鎖Crossfab」:「ベクター重鎖Fc(ノブ)-FabCrossfab」)でトランスフェクトした。
トランスフェクションのために、HEK293 EBNA細胞を無血清CD CHO培地中で懸濁培養した。500ml振盪フラスコ中で産生するために、トランスフェクションの24時間前に4x108個のHEK293 EBNA細胞を播種した。トランスフェクションのために、細胞を210xgで5分間、遠心分離し、上清を20mlの予め温めたCD CHO培地と交換した。発現ベクターを200gのDNAの最終量まで20mlのCD CHO培地中で混合した。540μlのPEIを添加した後に、溶液を15秒間ボルテックスし、その後に室温で10分間インキュベートした。その後、細胞をDNA/PEI溶液と混合し、500ml振盪フラスコに移し、5%CO2雰囲気のインキュベーターに入れて37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション期間の後、160mlのF17培地を添加し、細胞を24時間、培養した。トランスフェクションの1日後に、1mMバルプロ酸および7%Feed1を添加した。7日間、培養した後、精製のために210xgで15分間、遠心分離することによって上清を収集した。溶液を濾過滅菌(0.22μmフィルター)し、最終濃度0.01%w/vのアジ化ナトリウムを添加し、4℃に保った。
プロテインAを用いたアフィニティクロマトグラフィーによって細胞培養上清から分泌タンパク質を精製した。上清を、40mlの20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5で平衡化したHiTrap ProteinA HPカラム(CV=5mL, GE Healthcare)にロードした。少なくとも10カラム体積の20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5で洗浄することによって非結合タンパク質を除去した。標的タンパク質を20カラム体積の20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5から20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH2.5にわたる勾配の間に溶出させた。1/10の0.5Mリン酸ナトリウム、pH8を添加することによってタンパク質溶液を中和した。標的タンパク質を濃縮および濾過した後に、pH6.0の20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム溶液で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)にロードした。
精製タンパク質試料のタンパク質濃度は、アミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光率を用いて280nmでの光学密度(OD)を測定することによって求めた。
分子の純度および分子量は還元剤の存在下および非存在下でのCE-SDS分析によって分析した。Caliper LabChip GXIIシステム(Caliper lifescience)を製造業者の説明書に従って使用した。2ugの試料を分析に使用した。
抗体試料の凝集物含有率は、25mM K2HPO4、125mM NaCl、200mM L-アルギニン一塩酸塩、0.02%(w/v)NaN3、pH6.7ランニングバッファーに溶解してTSKgel G3000 SW XL分析用サイズ排除カラム(Tosoh)を用いて25℃で分析した。
(表12)DP47 GS TCBの産生および精製の概要
図82および表13は、非結合抗体としてDP47 GS、抗CD3抗体としてヒト化CH2527を含有するDP47 GS TCB(2+1 Crossfab-IgG P329G LALA 逆)のCE-SDS分析を示す。(SEQ ID NO:325、326、327、および328)。
(表13)DP47 GS TCBのCE-SDS分析
図83は、非結合抗体としてDP47 GS、抗CD3抗体としてヒト化CH2527を含有するDP47 GS TCB(2+1 Crossfab-IgG P329G LALA 逆)の分析用サイズ排除クロマトグラフィーを示す。(SEQ ID NO:325、326、327、および328)。
実施例22:AVH TCBの調製
結果として生じた重鎖可変領域および軽鎖可変領域のDNA配列は、それぞれのレシピエント哺乳動物発現ベクターに予め挿入した定常重鎖または定常軽鎖とインフレームでサブクローニングされている。MPSVプロモーターによって抗体を発現させた。合成ポリAシグナル配列はCDSの3'末端に位置する。さらに、各ベクターはEBV OriP配列を含有する。
ポリエチレンイミンを用いて、HEK293-EBNA細胞を哺乳動物発現ベクターでコトランスフェクトすることによって前記分子を産生した。細胞を1:1:1比の対応する発現ベクター(「ベクター重鎖AVH-Fc(ホール)」:「ベクター軽鎖抗CD3」:「ベクター重鎖AVH-Fab(抗CD3)-Fc(ノブ)」)でトランスフェクトした。
トランスフェクションのために、HEK293 EBNA細胞を無血清CD CHO培地中で懸濁培養した。500ml振盪フラスコ中で産生するために、トランスフェクションの24時間前に4x108個のHEK293 EBNA細胞を播種した。トランスフェクションのために、細胞を210xgで5分間、遠心分離し、上清を20mlの予め温めたCD CHO培地と交換した。発現ベクターを200μgのDNAの最終量まで20mlのCD CHO培地中で混合した。540□lのPEIを添加した後に、溶液を15秒間ボルテックスし、その後に室温で10分間インキュベートした。その後、細胞をDNA/PEI溶液と混合し、500ml振盪フラスコに移し、5%CO2雰囲気のインキュベーターに入れて37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション期間の後、160mlのF17培地を添加し、細胞を24時間、培養した。トランスフェクションの1日後に、1mMバルプロ酸および7%Feed1を添加した。7日間、培養した後、精製のために210xgで15分間、遠心分離することによって上清を収集した。溶液を濾過滅菌(0.22μmフィルター)し、最終濃度0.01%w/vのアジ化ナトリウムを添加し、4℃に保った。
プロテインAを用いたアフィニティクロマトグラフィーによって細胞培養上清から分泌タンパク質を精製した。上清を、40mlの20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5で平衡化したHiTrap ProteinA HPカラム(CV=5mL, GE Healthcare)にロードした。少なくとも10カラム体積の20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5で洗浄することによって非結合タンパク質を除去した。標的タンパク質を20カラム体積の20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5から20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH2.5にわたる勾配の間に溶出させた。1/10の0.5Mリン酸ナトリウム、pH8を添加することによってタンパク質溶液を中和した。標的タンパク質を濃縮および濾過した後に、pH6.0の20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム溶液で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)にロードした。
精製タンパク質試料のタンパク質濃度は、アミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光率を用いて280nmでの光学密度(OD)を測定することによって求めた。
分子の純度および分子量は還元剤の存在下および非存在下でのCE-SDS分析によって分析した。Caliper LabChip GXIIシステム(Caliper lifescience)を製造業者の説明書に従って使用した。2ugの試料を分析に使用した。
抗体試料の凝集物含有率は、25mM K2HPO4、125mM NaCl、200mM L-アルギニン一塩酸塩、0.02%(w/v)NaN3、pH6.7ランニングバッファーに溶解してTSKgel G3000 SW XL分析用サイズ排除カラム(Tosoh)を用いて25℃で分析した。
図85は、aVH TCB分子の模式図を示す。
図86および表15は、1個のCD3結合部分およびMCSPに結合する2個のaVH部分を有するCrossfab断片を含有するaVH TCB分子(2+1 Crossfab-IgG P329G LALA)(SEQ ID NO:369、370、および371)のCE-SDS分析を示す。
実施例23:aVH TCBとMCSP発現細胞およびCD3発現細胞との結合
aVH TCBの結合を、MCSP発現ヒト黒色腫細胞株(MV-3)およびCD3発現不死化Tリンパ球株(ジャーカット)において試験した。簡単に述べると、細胞を回収し、計数し、生存率について調べ、FACS緩衝液(100μl PBS 0.1%BSA)に溶解して2x106細胞/mlで再懸濁した。100μlの細胞懸濁液(0.2x106個の細胞を含有する)を丸底96ウェルプレート中で漸増濃度のaVH TCB(2pM〜170nM)と4℃で30分間インキュベートし、冷PBS 0.1%BSAで2回洗浄し、PE結合AffiniPure F(ab')2断片ヤギ抗ヒトIgG Fcg断片特異的二次抗体(Jackson Immuno Research Lab PE #109-116-170)と4℃でさらに30分間、再インキュベートし、冷PBS 0.1%BSAで2回洗浄し、すぐに、FACS CantoII(Software FACS, Diva)を用いてFACSによって分析した。GraphPadPrism5を用いて結合曲線を入手した(図87A、MV3細胞との結合; 図87B、ジャーカット細胞との結合)。
実施例24:aVH TCB抗体によって誘導されたT細胞性死滅
aVH TCB抗体によって媒介されるT細胞性死滅を、MCSP発現ヒト黒色腫腫瘍細胞(MV-3)およびヒトPBMCを用いて24時間および48時間のインキュベーションで評価した。簡単に述べると、標的細胞をトリプシン/EDTAを用いて回収し、洗浄し、平底96ウェルプレートを用いて25000細胞/ウェルの密度でプレートした。細胞を一晩、付着したままにした。健常ヒトドナーから入手した濃縮リンパ球調製物(バフィーコート)のHistopaque密度遠心分離によって末梢血単核球(PBMC)を調製した。新鮮な血液を滅菌PBSで希釈し、Histopaque勾配(Sigma, #H8889)の上に層状に積み重ねた。遠心分離(450xg、30分、室温)した後に、PBMCを含有する中間層の上にある血漿を捨て、PBMCを新たなfalconチューブに移し、その後に、チューブを50mlのPBSで満たした。混合物を遠心分離(400xg、10分、室温)し、上清を捨て、PBMCペレットを滅菌PBSで2回洗浄した(遠心分離工程350xg、10分)。結果として生じたPBMC集団を自動計数し(ViCell)、10%FCSおよび1%L-アラニル-L-グルタミン(Biochrom, K0302)を含有するRPMI1640培地に溶解し、さらに使用するまで(24時間以下)細胞インキュベーターに入れて37℃、5%CO2で保管した。死滅アッセイのために、抗体を、示された濃度(110pM〜80nMの範囲、3回繰り返した)で添加した。PBMCを標的細胞に10:1の最終E:T比で添加した。37℃、5%CO2で24時間および48時間インキュベートした後に、アポトーシス/壊死細胞が細胞上清に放出したLDHを定量することによって標的細胞死滅を評価した(LDH検出キット、Roche Applied Science, #11 644 793 001)。標的細胞の最大溶解(=100%)は、標的細胞を1%TritonX-100とインキュベートすることによって達成した。最小溶解(=0%)とは、エフェクター細胞とコインキュベートされたが、二重特異性構築物とコインキュベートされていない標的細胞を指す。結果から、aVH TCBは、MCSP+標的細胞株の強力かつ標的特異的な死滅を誘導したことが分かる。図88A、B。GraphPadPrism5を用いて計算した死滅アッセイに関連するEC50値を表16に示した。
(表16)aVH TCB抗体によって誘導されたMCSP発現腫瘍細胞(MV-3)のT細胞性死滅のEC50値(pM)
図面の簡単な説明
図87. aVH TCBとMV-3細胞(MCSP+)(A)およびジャーカット(CD3+細胞)(B)との結合。
図88. 24時間(A)および48時間(B)のインキュベーション後に検出された、aVH TCB抗体によって誘導されたMV-3黒色腫細胞のT細胞性死滅。(E:T=10:1、エフェクターヒトPBMC)
実施例25:アンキリン反復タンパク質(DARPIN)-TCBの調製
結果として生じた重鎖可変領域および軽鎖可変領域のDNA配列は、それぞれのレシピエント哺乳動物発現ベクターに予め挿入した定常重鎖または定常軽鎖とインフレームでサブクローニングされている。MPSVプロモーターによって抗体を発現させた。合成ポリAシグナル配列はCDSの3'末端に位置する。さらに、各ベクターはEBV OriP配列を含有する。
ポリエチレンイミンを用いて、HEK293-EBNA細胞を哺乳動物発現ベクターでコトランスフェクトすることによって前記分子を産生した。細胞を1:1:1比の対応する発現ベクターでトランスフェクトした(「ベクター重鎖DARPIN-Fc(ホール)」:「ベクター軽鎖抗CD3」:「ベクター重鎖DARPIN-Fab(抗CD3)-Fc(ノブ)」)。
トランスフェクションのために、HEK293 EBNA細胞を無血清CD CHO培地中で懸濁培養した。500ml振盪フラスコ中で産生するために、トランスフェクションの24時間前に4x108個のHEK293 EBNA細胞を播種した。トランスフェクションのために、細胞を210xgで5分間、遠心分離し、上清を20mlの予め温めたCD CHO培地と交換した。発現ベクターを200μgのDNAの最終量まで20mlのCD CHO培地中で混合した。540μlのPEIを添加した後に、溶液を15秒間ボルテックスし、その後に室温で10分間インキュベートした。その後、細胞をDNA/PEI溶液と混合し、500ml振盪フラスコに移し、5%CO2雰囲気のインキュベーターに入れて37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション期間の後、160mlのF17培地を添加し、細胞を24時間、培養した。トランスフェクションの1日後に、1mMバルプロ酸および7%Feed1を添加した。7日間、培養した後、精製のために210xgで15分間、遠心分離することによって上清を収集した。溶液を濾過滅菌(0.22μmフィルター)し、最終濃度0.01%w/vのアジ化ナトリウムを添加し、4℃に保った。
プロテインAを用いたアフィニティクロマトグラフィーによって細胞培養上清から分泌タンパク質を精製した。上清を、40mlの20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5で平衡化したHiTrap ProteinA HPカラム(CV=5mL, GE Healthcare)にロードした。少なくとも10カラム体積の20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5で洗浄することによって非結合タンパク質を除去した。標的タンパク質を20カラム体積の20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5から20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH2.5にわたる勾配の間に溶出させた。1/10の0.5Mリン酸ナトリウム、pH8を添加することによってタンパク質溶液を中和した。標的タンパク質を濃縮および濾過した後に、pH6.0の20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム溶液で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)にロードした。
精製タンパク質試料のタンパク質濃度は、アミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光率を用いて280nmでの光学密度(OD)を測定することによって求めた。
分子の純度および分子量は還元剤の存在下および非存在下でのCE-SDS分析によって分析した。Caliper LabChip GXIIシステム(Caliper lifescience)を製造業者の説明書に従って使用した。2ugの試料を分析に使用した。
抗体試料の凝集物含有率は、25mM K2HPO4、125mM NaCl、200mM L-アルギニン一塩酸塩、0.02%(w/v)NaN3、pH6.7ランニングバッファーに溶解してTSKgel G3000 SW XL分析用サイズ排除カラム(Tosoh)を用いて25℃で分析した。
図89は、Darpin-TCB分子の模式図を示す。
(表17)DARPIN-TCBの産生および精製の概要
図90および表18は、1個のCD3結合部分およびHER2に結合する2個のDarpin部分を有するCrossfab断片を含有するDARPIN-TCB分子(2+1 Crossfab-IgG P329G LALA)(SEQ ID NO:376、377および378)のCE-SDS分析を示す。
実施例26:Darpin TCBとHer2発現細胞およびCD3発現細胞との結合
Darpin TCBの結合を、Her2発現ヒト黒色腫細胞株(KPL-4)およびCD3発現不死化Tリンパ球株(ジャーカット)において試験した。簡単に述べると、細胞を回収し、計数し、生存率について調べ、FACS緩衝液(100μl PBS 0.1%BSA)に溶解して2x106細胞/mlで再懸濁した。100μlの細胞懸濁液(0.2x106個の細胞を含有する)を丸底96ウェルプレート中で漸増濃度のDarpin TCB(3pM〜200nM)と4℃で30分間インキュベートし、冷PBS 0.1%BSAで2回洗浄し、PE結合AffiniPure F(ab')2断片ヤギ抗ヒトIgG Fcg断片特異的二次抗体(Jackson Immuno Research Lab PE #109-116-170)と4℃でさらに30分間、再インキュベートし、冷PBS 0.1%BSAで2回洗浄し、すぐに、FACS CantoII(Software FACS, Diva)を用いてFACSによって分析した。GraphPadPrism5を用いて結合曲線を入手した(図91A、KPL-4細胞との結合; 図91B、ジャーカット細胞との結合)。
実施例27:Darpin TCB抗体によって誘導されたT細胞性死滅
Darpin TCB抗体によって媒介されるT細胞性死滅を、Her2発現ヒト黒色腫腫瘍細胞(KPL4)およびヒトPBMCを用いて24時間および48時間のインキュベーションで評価した。簡単に述べると、標的細胞をトリプシン/EDTAを用いて回収し、洗浄し、平底96ウェルプレートを用いて25000細胞/ウェルの密度でプレートした。細胞を一晩、付着したままにした。健常ヒトドナーから入手した濃縮リンパ球調製物(バフィーコート)のHistopaque密度遠心分離によって末梢血単核球(PBMC)を調製した。新鮮な血液を滅菌PBSで希釈し、Histopaque勾配(Sigma, #H8889)の上に層状に積み重ねた。遠心分離(450xg、30分、室温)した後に、PBMCを含有する中間層の上にある血漿を捨て、PBMCを新たなfalconチューブに移し、その後に、チューブを50mlのPBSで満たした。混合物を遠心分離(400xg、10分、室温)し、上清を捨て、PBMCペレットを滅菌PBSで2回洗浄した(遠心分離工程350xg、10分)。結果として生じたPBMC集団を自動計数し(ViCell)、10%FCSおよび1%L-アラニル-L-グルタミン(Biochrom, K0302)を含有するRPMI1640培地に溶解し、さらに使用するまで(24時間以下)細胞インキュベーターに入れて37℃、5%CO2で保管した。死滅アッセイのために、抗体を、示された濃度(2pM〜20nMの範囲、3回繰り返した)で添加した。PBMCを標的細胞に10:1の最終E:T比で添加した。37℃、5%CO2で24時間および48時間インキュベートした後に、アポトーシス/壊死細胞が細胞上清に放出したLDHを定量することによって標的細胞死滅を評価した(LDH検出キット、Roche Applied Science, #11 644 793 001)。標的細胞の最大溶解(=100%)は、標的細胞を1%TritonX-100とインキュベートすることによって達成した。最小溶解(=0%)とは、エフェクター細胞とコインキュベートされたが、二重特異性構築物とコインキュベートされていない標的細胞を指す。結果から、Darpin TCBは、Her2+標的細胞株の強力かつ標的特異的な死滅を誘導したことが分かる。図92A、B。GraphPadPrism5を用いて計算した死滅アッセイに関連するEC50値を表19に示した。
(表19)Darpin TCB抗体によって誘導されたHer2発現腫瘍細胞(KPL-4)のT細胞性死滅のEC50値(pM)
実施例28:hIgG1 DDKK TCBの調製
結果として生じた重鎖可変領域および軽鎖可変領域のDNA配列は、それぞれのレシピエント哺乳動物発現ベクターに予め挿入した定常重鎖または定常軽鎖とインフレームでサブクローニングされている。MPSVプロモーターによって抗体を発現させた。合成ポリAシグナル配列はCDSの3'末端に位置する。さらに、各ベクターはEBV OriP配列を含有する。
ポリエチレンイミンを用いて、HEK293-EBNA細胞を哺乳動物発現ベクターでコトランスフェクトすることによって前記分子を産生した。細胞を1:1:2:1比の対応する発現ベクター(「ベクター重鎖Fc(KK)」:「ベクター軽鎖Crossfab」:「ベクター軽鎖」:「ベクター重鎖Fc(KK)FabCrossfab」)でトランスフェクトした。
トランスフェクションのために、HEK293 EBNA細胞を無血清CD CHO培地中で懸濁培養した。500ml振盪フラスコ中で産生するために、トランスフェクションの24時間前に4x108個のHEK293 EBNA細胞を播種した。トランスフェクションのために、細胞を210xgで5分間、遠心分離し、上清を20mlの予め温めたCD CHO培地と交換した。発現ベクターを200μgのDNAの最終量まで20mlのCD CHO培地中で混合した。540μlのPEIを添加した後に、溶液を15秒間ボルテックスし、その後に室温で10分間インキュベートした。その後、細胞をDNA/PEI溶液と混合し、500ml振盪フラスコに移し、5%CO2雰囲気のインキュベーターに入れて37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション期間の後、160mlのF17培地を添加し、細胞を24時間、培養した。トランスフェクションの1日後に、1mMバルプロ酸および7%Feed1を添加した。7日間、培養した後、精製のために210xgで15分間、遠心分離することによって上清を収集した。溶液を濾過滅菌(0.22μmフィルター)し、最終濃度0.01%w/vのアジ化ナトリウムを添加し、4℃に保った。
プロテインAを用いたアフィニティクロマトグラフィーによって細胞培養上清から分泌タンパク質を精製した。上清を、40mlの20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5で平衡化したHiTrap ProteinA HPカラム(CV=5mL, GE Healthcare)にロードした。少なくとも10カラム体積の20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5で洗浄することによって非結合タンパク質を除去した。標的タンパク質を20カラム体積の20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.5から20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH2.5にわたる勾配の間に溶出させた。1/10の0.5Mリン酸ナトリウム、pH8を添加することによってタンパク質溶液を中和した。標的タンパク質を濃縮および濾過した後に、pH6.0の20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム溶液で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)にロードした。
精製タンパク質試料のタンパク質濃度は、アミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光率を用いて280nmでの光学密度(OD)を測定することによって求めた。
分子の純度および分子量は還元剤の存在下および非存在下でのCE-SDS分析によって分析した。Caliper LabChip GXIIシステム(Caliper lifescience)を製造業者の説明書に従って使用した。2ugの試料を分析に使用した。
抗体試料の凝集物含有率は、25mM K2HPO4、125mM NaCl、200mM L-アルギニン一塩酸塩、0.02%(w/v)NaN3、pH6.7ランニングバッファーに溶解してTSKgel G3000 SW XL分析用サイズ排除カラム(Tosoh)を用いて25℃で分析した。DDKK変異のあるFcを有するヒトIgG1を用いて、ヘテロ二量体T細胞二重特異性分子を作製することができる。1回目の精製工程後に、主な集団は、Fc(KK)を含有するホモ二量体分子であった。このLMW不純物を主にサイズ排除クロマトグラフィーによって除去することができ、正しいヘテロ二量体を濃縮することができる。
(表20)hIgG1 DDKK TCBの産生および精製の概要
図93は、hIgG1 DDKK-TCB分子の模式図を示す。
図94および表21は、1個のCD3結合部分および2個のMCSP結合部分を有するCrossfab断片を含有するhIgG1 DDKK-TCB分子(2+1 Crossfab-IgG P329G LALA)(SEQ ID NO:372、373、374、および375)のCE-SDS分析を示す。
(表21)hIgG1 DDKK TCBのCE-SDS分析
実施例29: hIgG1 DDKK TCBとMCSP発現細胞およびCD3発現細胞との結合
hIgG1 DDKK TCBの結合を、MCSP発現ヒト黒色腫細胞株(MV-3)およびCD3発現不死化Tリンパ球株(ジャーカット)において試験した。簡単に述べると、細胞を回収し、計数し、生存率について調べ、FACS緩衝液(100μl PBS 0.1%BSA)に溶解して2x106細胞/mlで再懸濁した。100μlの細胞懸濁液(0.2x106個の細胞を含有する)を丸底96ウェルプレート中で漸増濃度のhIgG1 DDKK TCB(2pM〜170nM)と4℃で30分間インキュベートし、冷PBS 0.1%BSAで2回洗浄し、PE結合AffiniPure F(ab')2断片ヤギ抗ヒトIgG Fcg断片特異的二次抗体(Jackson Immuno Research Lab PE #109-116-170)と4℃でさらに30分間、再インキュベートし、冷PBS 0.1%BSAで2回洗浄し、すぐに、FACS CantoII(Software FACS Diva)を用いてFACSによって分析した。GraphPadPrism5を用いて結合曲線を入手した(図95A、MV-3細胞との結合、EC50=12803pM; 図95B、ジャーカット細胞との結合)。
実施例30: hIgG1 DDKK TCB抗体によって誘導されたT細胞性死滅
hIgG1 DDKK TCB抗体によって媒介されるT細胞性死滅を、MCSP発現ヒト黒色腫腫瘍細胞(MV-3)およびヒトPBMCを用いて24時間および48時間のインキュベーションで評価した。簡単に述べると、標的細胞をトリプシン/EDTAを用いて回収し、洗浄し、平底96ウェルプレートを用いて25000細胞/ウェルの密度でプレートした。細胞を一晩、付着したままにした。健常ヒトドナーから入手した濃縮リンパ球調製物(バフィーコート)のHistopaque密度遠心分離によって末梢血単核球(PBMC)を調製した。新鮮な血液を滅菌PBSで希釈し、Histopaque勾配(Sigma, #H8889)の上に層状に積み重ねた。遠心分離(450xg、30分、室温)した後に、PBMCを含有する中間層の上にある血漿を捨て、PBMCを新たなfalconチューブに移し、その後に、チューブを50mlのPBSで満たした。混合物を遠心分離(400xg、10分、室温)し、上清を捨て、PBMCペレットを滅菌PBSで2回洗浄した(遠心分離工程350xg、10分)。結果として生じたPBMC集団を自動計数し(ViCell)、10%FCSおよび1%L-アラニル-L-グルタミン(Biochrom, K0302)を含有するRPMI1640培地に溶解し、さらに使用するまで(24時間以下)細胞インキュベーターに入れて37℃、5%CO2で保管した。死滅アッセイのために、抗体を、示された濃度(0.02pM〜20nMの範囲、3回繰り返した)で添加した。PBMCを標的細胞に10:1の最終E:T比で添加した。37℃、5%CO2で24時間および48時間インキュベートした後に、アポトーシス/壊死細胞が細胞上清に放出したLDHを定量することによって標的細胞死滅を評価した(LDH検出キット、Roche Applied Science, #11 644 793 001)。標的細胞の最大溶解(=100%)は、標的細胞を1%TritonX-100とインキュベートすることによって達成した。最小溶解(=0%)とは、エフェクター細胞とコインキュベートされたが、二重特異性構築物とコインキュベートされていない標的細胞を指す。結果から、hIgG1 DDKK TCBは、MCSP+標的細胞株の強力かつ標的特異的な死滅を誘導したことが分かる。図96A、B。GraphPadPrism5を用いて計算した死滅アッセイに関連するEC50値を表22に示した。
(表22)hIgG1 DDKK TCB抗体によって誘導されたMCSP発現腫瘍細胞(MV-3)のT細胞性死滅のEC50値(pM)
SEQ ID NO 1〜266を添付の配列表に示した。
前述の発明は、はっきりと理解できるようにするために例示および実施例によっていくらか詳細に説明されたが、説明および実施例が本発明を限定すると解釈してはならない。本明細書において引用された全ての特許および科学文献の開示は、その全体が参照により本明細書にはっきりと組み入れられる。