JP6689644B2 - 壁紙用の湿式不織布およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、湿式不織布およびその製造方法に関するものであり、より詳細には、壁紙として、あるいは、産業用フィルター、タオル用不織布、触媒用担持体等として利用される湿式不織布およびその製造方法に関するものである。
湿式不織布は、紙と同様に、水と混合した短繊維を均一に網に載せ、加圧、加熱等によって脱水し、均一にシート化して製造されるものであり、抄紙機を用いて製造することができる。そして、この湿式不織布は、紙に似た地合、風合いを有するところから種々の用途に利用され、壁紙としても利用されている。
従来、壁紙として、通気性が良好で、接着力、耐水接着力、更には耐熱接着性に優れ、エンボス加工適正に優れると共に、優れた通気性のために結露を防ぎ、カビによる汚れ、ダニの発生等のおそれが少ない壁紙が提案されている(特開2003−286669号公報)。
しかし、壁紙用の湿式不織布に関して、生産性の向上、層間剥離性の改良等を企図した先行文献はなく、特に、ポリエステル系繊維とバインダー樹脂から成る湿式不織布の製造に当たり、それらの溶解パラメータ(SP値)の関係に着目した先行文献は存在しない。
特開2003−286669号公報
一般に湿式不織布シートは、セルロース系繊維と合成繊維を組み合わせた混抄によって製造されるが、その場合、セルロース系繊維はその分子に水酸基を多く持つことから、水素結合を基礎とした接着が行われ、シートの物理的強度を発現することが知られている。その一方、合成繊維はその分子に水素結合可能な官能基を持たないことから、セルロース系繊維と合成繊維が接着しないだけでなく、セルロース系繊維間の接着に対し、合成繊維がセルロース系繊維間に介入してその接着を阻害してしまい、その結果としてシートの強度低下が引き起こされる。
そこで、バインダー(熱融着繊維)として、熱可塑性を持った合成樹脂繊維が用いられ、これをセルロース系繊維と混抄し、抄紙機上の高温ドライヤーにおいてセルロース系繊維と合成繊維とを熱溶融接着する方法が採られている。その熱可塑性樹脂繊維としては、一般に、ポリエチレンテレフタレート系繊維(以下、ポリエステル系繊維という)、あるいは、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン繊維、ポリオレフィン合成パルプ(例えば三井化学株式会社のSWP)、ビニロン繊維(PVA繊維)等があり、熱接着処理により繊維全体が溶融してしまうタイプのものと、繊維の表面のみが溶融するタイプのものとが、目的に応じて使い分けられている。
しかるに、これらの熱溶融繊維の場合は、材料自体が高価であるだけでなく、合成繊維を熱溶融させるために過剰な熱エネルギーが必要となる。そのため、抄紙機の乾燥工程において、溶融した繊維が抄紙ドライヤーに付着することで汚れが発生し、この汚れが合成繊維の毛羽立ちを誘発するという問題や、抄紙ドライヤーを清掃するために長時間の清掃作業が必要となり、その分生産機会が減少するといった問題が起こってくる。上記毛羽立ちは、湿式不織布を壁紙とした場合、その部分に印刷不良(白抜け)が起こる原因となり、また、壁紙の風合いを損ねる原因となる。
そこで、合成繊維の熱可塑性を利用せずに湿式不織布を製造する方法、つまり、合成繊維が熱溶融するほどの高温の抄紙ドライヤーを使用しないという方法、あるいは、合成繊維が熱溶融するほどの熱量を与えない高速での抄紙を行う方法が考えられる。
しかし、通常の湿式抄紙では、パルプの主体であるセルロースが持つ水酸基を利用した、水素結合によるセルロース系繊維同志の接着を主な接着要素としてその紙層が形成され、補助的なバインダーとして、同じく水酸基を持つ澱粉などの水溶性バインダーが利用されているのに対して、合成繊維は水酸基を有していないために、セルロース系繊維と、あるいは、澱粉等と水素結合することができない。そして更には、上述したように、合成繊維がパルプ繊維間に入り込んでパルプ繊維間の水素結合を阻害するため、パルプ単独のシートの場合より更に紙層の強度が得られない状況となる。
更に、壁紙の基紙にバインダー樹脂を塗工して壁紙として使用する場合、所定のバインダー樹脂を使用しないとバインダー効果が不足し、また、アフタードライヤーの汚れが生じ、生産性が低下する。
このように、従来のセルロース系繊維と合成繊維の組み合わせによる湿式不織布シートの場合は、バインダーとして熱溶融繊維が用いられていたため、抄紙ドライヤーの温度を過度に上げる必要があり、そのために製造コストが嵩むという問題があり、また、バインダー樹脂の選択が適切でなかったことにより、アフタードライヤーの汚れや、壁紙の風合いを損ねるといった問題があった。
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、合成繊維が熱溶融するほどの高温の抄紙ドライヤーを使わず、あるいは、熱溶融するほどの熱量を与えることなく抄紙を行うことを可能にし、また、バインダー樹脂によって引き起こされるアフタードライヤーの汚れを発生させず、省エネルギーと生産性向上の両立を図ることができる湿式不織布およびその製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明の他の課題は、湿式不織布を壁紙もしくは壁紙裏打ち紙として使用する場合に、風合いのよい壁紙となし得る湿式不織布およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するに当たり、ポリエステル系繊維と、バインダー樹脂との接着性について鋭意検討した結果、異なる物質の親和性を表わす指標である溶解パラメータ(SP値)に着目し、このSP値の差がアフタードライヤーの汚れおよび風合いに影響することを見出し、この知見の下に本発明を完成させたものである。
上記課題を解決するための請求項に記載の発明は、セルロース系繊維とポリエステル系繊維の含有割合が95/5〜50/50であるシートを湿式法により形成し、前記シートに、溶解パラメータが前記ポリエステル系繊維の溶解パラメータの±2.0の範囲であるバインダー樹脂を塗布あるいは含浸した後、アフタードライヤーで乾燥し、前記バインダー樹脂の含有量を湿式不織布の全質量に対して3.5〜8.0質量%とすることを特徴とする壁紙用の湿式不織布の製造方法である。
一実施形態においては、前記バインダー樹脂は、ポリビニルアルコール系、エチレン酢酸ビニル系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル系のうちの1種もしくは複数種を含む。
本発明は上記のとおり、ポリエステル系繊維およびバインダー樹脂を含み、前記バインダー樹脂の溶解パラメータが前記ポリエステル系繊維の溶解パラメータの±2.0の範囲であることを特徴とするものであって、両者の溶解パラメータ(SP値)が近いために親和性が良好となり、以て、ポリエステル系繊維同士の接着性が向上する効果があり、バインダー樹脂由来のアフタードライヤー汚れが発生するおそれがないという効果がある。
また、本発明に係る方法によると、ポリエステル系繊維と融点が110℃以上のポリエステル系バインダー繊維とを混抄し、所望のバインダー樹脂を含浸・塗工させることにより、ポリエステル系100%の湿式不織布を製造することができ、また、この湿式不織布を壁紙もしくは壁紙裏打ち紙として使用する場合は、セルロース系繊維を配合することにより比較的低コストにて製造供給でき、更に、アフタードライヤーにおいて汚れの発生がなく、風合いが優れた壁紙が得られる効果がある。
以下に、本発明を実施するための形態について詳述する。本発明に係る湿式不織布は、ポリエステル系繊維およびバインダー樹脂を含み、バインダー樹脂の溶解パラメータがポリエステル系繊維の溶解パラメータの±2.0の範囲であることを特徴とするものである。
ポリエステル系繊維は、様々な機能を付与するために共重合されるモノマーにより影響を受けるが、主たる繊維成分としてのSP値は10.6〜10.7である。本発明者らは、ポリエステル系繊維のSP値の±2.0の範囲であるバインダー樹脂をバインダーとして含有させると、ポリエステル系繊維同志の接着性が向上することを見出し、上記条件を満たすバインダー樹脂を採用することとした。
なお、ポリエステルの化学構造式の例を示せば、以下のとおりである(昭和63年8月20日発行の「最新紙加工便覧」による。)。
Figure 0006689644
本発明において使用し得るバインダー樹脂としては、水溶性樹脂およびエマルジョン型の樹脂を挙げることができ、具体的には、ポリビニルアルコール系、エチレン酢酸ビニル系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル系のうちの1種もしくは複数種の組み合わせである。これらのバインダー樹脂のSP値は、ポリビニルアルコール系が12.6、エチレン酢酸ビニル系が7.8〜10.6、アクリル系が9.0〜10.0、ポリ酢酸ビニル系が9.4〜9.6であるが、本発明においては、このうち、ポリエステル系繊維のSP値の±2.0の範囲である8.6〜12.7の範囲のバインダー樹脂が使用される。
本発明におけるセルロース系繊維、合成繊維、バインダー樹脂のSP値[単位(J/cm1/2]は、下記式(1)によって算出される。
δ=(ΔH/V)1/2 (1)
[(1)式中、δはSP値、ΔHはモル蒸発熱(cal)、Vはモル体積(cm3 )である。ここで、SP値は、「POLYMER ENGINEERINGAND SCIENCE,1974,Vol.14,No.2,Robert F.Fedors.(151〜153頁)」に記載の原子団のモル蒸発熱(Δei )の合計(ΔH)とモル体積(Δvi )の合計(V)から算出]
上記SP値は
1.「プラスチック素材辞典」
http://www.plastics-material.com/%E3%83%9B%E3%83%A2%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%BB%E6%A8%B9%E8%84%82%E3%81%AE%E6%BA%B6%E8%A7%A3%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%BFsp%E5%80%A4/
2.「ゴムのSP値の一覧」
http://www.toishi.info/sozai/rubbers/sp.html
に記載されている。
本発明に係る湿式不織布の製造方法は、上記湿式不織布を製造するためのもので、ポリエステル系繊維を主成分として湿式法によりシートを形成し、そのシートに、SP値がポリエステル系繊維のSP値の±2.0の範囲にあるバインダー樹脂を塗布あるいは含浸した後、アフタードライヤーで乾燥することを特徴とする。
ここで用いるバインダー樹脂は上述したとおりのものであり、また、バインダー樹脂の選択も上述した方法で行う。バインダー樹脂の含有量は、湿式不織布の全質量に対して3.0〜20.0質量%とし、好ましくは4.0〜15.0質量%とし、更に好ましくは5.0〜10.0質量%とする。
バインダー樹脂の含有量が3.0質量%未満であると、この湿式不織布を壁紙として使用した場合に、層間強度が弱く、層剥がれが生じやすいものとなる。また、バインダー樹脂の含有量が20.0質量%を超えると、不経済であるだけでなく、バインダー樹脂成分が多くなることから、バインダー樹脂由来のアフタードライヤー汚れが発生して生産性が低下し、また、紙の風合いが低下し、更に、壁紙が堅くなり過ぎて、壁紙貼付の際の作業性が低下するといった問題が起きる。
本湿式不織布のバインダー樹脂の塗布には、ロールコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、エアナイフコーター、ゲートロールコーター、カーテンコーター等の通常使用される塗工機やサイズプレスコーター、シムサイザー等を用いることができ、それらの塗工設備により、外添薬品を含む塗液を塗工あるいは含浸することができる。また、その塗工は、オンマシン(基紙の抄造・乾燥およびバインダー樹脂の塗工・乾燥を連続して行う)とオフマシン(基紙を抄造・乾燥して巻き取った後、その巻取に2次的に塗工・乾燥を行う)のいずれであってもよい。合成繊維の毛羽立ちを最小限にするために、抄紙ドライヤーの温度を合成繊維の融点より低い温度に設定することが重要となる。
上記外添薬品としては、本発明に記載のバインダー樹脂の他に、酸化デンプンおよび酵素変成デンプン等の各種変性デンプン、カルボキシルメチルセルロース、カゼイン等の水溶性バインダーや表面紙力剤、染料、顔料(クレー、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム等)、難燃剤等を適宜使用することができる。
本発明において用いるポリエステル系繊維は、単一同心構造を有する主体性繊維であってもよいし、芯部と鞘部の融点が異なる芯鞘型繊維であってもよい。また、繊維分散性の観点から、その繊度が0.5〜4.5dtexで、繊維長が3〜30mm(好ましくは5〜20mm、更に好ましくは5〜15mm)のものであることが望ましい。このポリエステル系繊維の繊度と繊維長の測定は、JIS L 1015:2010に基づく。
本湿式不織布を構成するポリエステル系繊維の融点は110〜300℃の範囲であり、好ましくは110〜280℃の範囲であり、後段における高温下でのエンボス加工等の高温処理および安定性を考慮すると、200〜260℃の範囲であることがより好ましい。融点が110℃未満と低い場合には、湿式不織布の基紙を抄造する際に、抄紙ドライヤーに合成繊維由来の汚れ(毛羽立ち)が発生しやすくなる。一方、融点が300℃を超えるものを配合することは、技術的に意味がないだけでなく、不経済なことでもある。芯鞘型のものを使用する場合は、鞘部の融点が上記範囲内のものを選択する。なお、融点の測定は、JIS K 7121:2012に基づく。
本湿式不織布の層間強度は50〜150N/mであり、好ましくは70〜130N/mである。層間強度が50N/m未満の場合は、本湿式不織布を壁紙として使用した後に、壁面から剥がす際に層間剥がれが生じ、その部分が凹凸となり、新たに壁紙を貼るときの作業性が低下する。層間強度が150N/mを超えると、壁紙が堅くなり過ぎて貼付の作業性が低下する。上記層間強度の測定はJIS K6854−3:1994に基づく。
本発明に係る方法によると、ポリエステル系繊維と融点が110℃以上のポリエステル系バインダー繊維とを混抄し、所望のバインダー樹脂を含浸・塗工させることにより、ポリエステル系100%の湿式不織布を製造することができる。そして、この湿式不織布を壁紙もしくは壁紙裏打ち紙として使用する場合は、更にセルロース系繊維を配合することにより、十分な層間強度を有する壁紙もしくは壁紙裏打ち紙を、比較的低コストにて製造供給することが可能となる。
その場合のセルロース系繊維としては、針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)、未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹の未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹の晒サルファイトパルプ( N B S P ) 又は未晒サルファイトパルプ( N U S P ) 、広葉樹の晒サルファイトパルプ( L B S P )、広葉樹の未晒サルファイトパルプ( L U S P ) 等の化学パルプ、あるいは、グランドパルプ( G P ) 、サーモメカニカルパルプ( T M P ) 、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP等)等の機械パルプ 、脱墨パルプ( D I P ) 、コットンやケナフ等の非木材繊維パルプ、レーヨン等の再生繊維を挙げることができ、これらの繊維を1種類配合し、もしくは、2種類以上組み合わせて配合する。
セルロース系繊維とポリエステル系繊維の含有割合は、95/5〜50/50の範囲とすることにより、ポリエステル系繊維に起因する未解離繊維が少なくなって繊維分散性が向上し、以て、バインダー樹脂の含浸ムラが少なくなり、適度な通気性を有するに至る。また、上記含有割合とすることで、壁紙とした場合に良好な風合いを持つ壁紙が得られる。
本湿式不織布は、少なくとも一方の面に印刷用の塗工層を設けることができる。インクジェット適性を付与するためにカチオン樹脂やシリカ等を含有する塗工層を設けたり、カオリン、タルク、炭酸カルシウム等を含有する顔料塗工層を設けたりしてもよい。その塗工には、ロールコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ゲートロールコーター、カーテンコーター等の、一般的に使用されている塗工機を用いることができる。
本湿式不織布は、密度が0.34〜0.71g/cmで、好ましくは、0.36〜0.65g/cmの範囲であり、また、フィルトローナ社製通気度測定器(PPM100型)を用いて測定した差圧100mmHOの時の通気度が200〜4,000ml/cm/secで、好ましくは、300〜1,700ml/cm/secの範囲のものである。密度が0.34g/cm未満であると、湿式不織布としての強度が不足することになり、0.71g/cmを超える場合には、バインダー樹脂を塗工するときの浸透性が低下することになる。
また、通気度が200ml/cm/sec未満の場合には、壁紙として使用する場合に通気性が低過ぎて、壁紙として壁に貼付けた後に結露が発生しやすくなり、バインダー樹脂の含浸ムラが生じやすくなる。一方、通気度が4,000ml/cm/secを超えると、通気性が高過ぎて、壁紙として壁に貼付けるときに水系糊の浸み出しが発生したり、バインダー樹脂が過度に浸透し、アフタードライヤーでの乾燥性が低下する。
本湿式不織布を壁紙として使用する場合は、JIS P8124:2011に基づいて測定した坪量の範囲が56.0〜300g/mで、好ましくは、80.0〜150g/mの範囲とされる。坪量が56.0/m未満の場合には、壁紙としての強度が不足し、300g/mを超える場合は、坪量が過多となり、壁紙を壁に貼付するときの作業性が悪化する。
本湿式不織布中に、不透明性、不燃性・難燃性を付与するために、填料を、湿式不織布の全質量に対して30質量%以下の範囲で含有してもよい。その場合の填料としては、不透明性、不燃性・難燃性の観点から、焼成クレーを使用することが好ましい。また、他の填料としては、カオリン、焼成カオリン、デラミネーティッドカオリン、クレー、デラミネーティッドクレー、イライト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機填料を挙げることができる。なお、壁紙の用途によっては、これらの填料を含めないこととする。
本湿式不織布には、通常の紙と同様にサイズ剤を使用することができる。その場合、サイズ剤は内添であってもよいし、外添であってもよい。使用するサイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、ロジン系バインダー樹脂サイズ剤、アルファカルボキシルメチル飽和脂肪酸等、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、カチオンポリマー系サイズ剤等を挙げることができる。
本湿式不織布は、公知の長網、ツインワイヤー、円網、傾斜短網、円短混合、ヤンキー抄紙機、乾式を含む全ての抄紙機で生産することが可能である。その抄造は、主に1層抄きとされるが、2層以上の多層抄きで抄造することもできる。3層抄き以上の場合は、少なくとも1つの層に合成繊維を含有させることが好ましく、その場合、中層のみに配合させることができる。
本発明に係る湿式不織布は、壁紙に用いるのに好適である。壁紙として使用する場合は、直接、印刷やエンボス加工等の処理を行う。また、塩化ビニル樹脂等の化粧層の支持体である壁紙裏打ち紙としての使用も可能である。
[実施例]
表1に、本発明の実施例および比較例を示すが、それらの例における測定方法および評価方法は以下の通りである。
・基紙にバインダー樹脂を塗布した時のアフタードライヤーの汚れの程度
目視により、樹脂塗布後のバインダー樹脂由来のアフタードライヤーの汚れを以下のように評価した。
◎(汚れ全くなし) ○(汚れほとんどなし)
△(汚れが散見される) ×(汚れが多く、操業不可)
・風合い
触感により、以下のように評価した。
◎(壁紙としてなめらかおよび腰が最良) ○(良)
△(やや不良) ×(不良)
<実施例1〜8、参考例、比較例1、2>
表1に記載の木材パルプとポリエステル系繊維(単一同心タイプと芯鞘タイプ)の配合で、長網抄紙機で壁紙の基紙を抄造し(抄速340m/分、抄紙ドライヤーの表面温度100℃)、この基紙に、表1に記載のバインダー樹脂をサイズプレスにて、オンマシン塗工および乾燥(多筒式アフタードライヤーの表面温度105℃)を行い、壁紙を得た(以下、実施例、参考例および比較例は、壁紙の坪量が80.0g/m2となるように調整して壁紙を得た)。
Figure 0006689644
<実施例1〜実施例
実施例1〜の壁紙は、いずれもポリエステル系繊維の溶解パラメータから±2.0以内のバインダー樹脂を含有させたものである。これらの場合はいずれも、表1に示されるように、バインダー樹脂塗工時のアフタードライヤーの汚れの点で◎又は○の良好な評価であり、また、風合いの点においても◎又は○という良好な評価であった。
<比較例1、2>
比較例1、2はいずれも、ポリエステル系繊維のSP値から±2.0の範囲外であるバインダー樹脂を含有するものであり、そのいずれの場合も、アフタードライヤーの汚れの点並びに風合いの点において△又は×の、実施例よりも劣った評価であった。

Claims (2)

  1. セルロース系繊維とポリエステル系繊維の含有割合が95/5〜50/50であるシートを湿式法により形成し、前記シートに、溶解パラメータが前記ポリエステル系繊維の溶解パラメータの±2.0の範囲であるバインダー樹脂を塗布あるいは含浸した後、アフタードライヤーで乾燥し、前記バインダー樹脂の含有量を湿式不織布の全質量に対して3.5〜8.0質量%とすることを特徴とする壁紙用の湿式不織布の製造方法。
  2. 前記バインダー樹脂は、ポリビニルアルコール系、エチレン酢酸ビニル系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル系のうちの1種もしくは複数種を含む、請求項に記載の壁紙用の湿式不織布の製造方法。
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