本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態の内燃機関は、例えばディーゼルエンジンやHCCI(Homogeneous−Charge Compression Ignition)エンジン等のような圧縮着火式の4ストロークエンジンであり、複数の気筒1(図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の燃焼室の天井部には、当該気筒1の燃焼室内に直接に燃料を噴射するインジェクタ11を設置している。また、各気筒1の吸気ポート近傍に、グロープラグ(余熱プラグ)12及びスワールコントロールバルブ13を設けている。
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、排気ターボ過給機5のコンプレッサ51、排気ターボ過給機6のコンプレッサ61、水冷式インタクーラ35、電子スロットルバルブ32、サージタンク33及び吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42、排気ターボ過給機6の排気タービン62、排気ターボ過給機5の排気タービン52及び排気浄化装置41を配置している。排気浄化装置41は、排気に含まれる粒子状物質(Particulate Matter)を漉し取るフィルタ(Particulate Filter)や、有害物質の酸化または還元を促す触媒を包含する。
排気ターボ過給機5、6は、排気タービン52、62とコンプレッサ51、61のインペラとをシャフトを介して同軸で連結し、連動するように構成したものである。そして、タービン52、62及びコンプレッサ51、61のインペラを排気のエネルギを利用して回転駆動し、その回転力を以てコンプレッサにポンプ作用を営ませることにより、吸入空気を加圧圧縮(過給)して気筒1に送り込む。
本実施形態の内燃機関は、排気ターボ過給機5、6を二基備える、いわゆる2ステージターボ(シーケンシャルターボ)エンジンである。排気ターボ過給機5は、エンジン回転数が比較的高い運転領域で仕事をする高速用ターボ過給機である。他方、排気ターボ過給機6は、エンジン回転数が比較的低い運転領域で仕事をする低速用ターボ過給機である。低速用ターボ過給機6の容量は、高速用ターボ過給機5の容量と比較して小さい。
吸気通路3においては、低速用ターボ過給機6のコンプレッサ61を迂回する吸気バイパス通路36を設け、かつこの吸気バイパス通路36の出口を開閉するバルブ37を設置している。バルブ37は、吸気バイパス通路36を流通する吸気の流量を制御する。高速用ターボ過給機5のコンプレッサ51を迂回する吸気バイパス通路は、存在しない。
さらに、排気通路4においても、低速用ターボ過給機6のタービン62を迂回する排気バイパス通路43、及び高速用ターボ過給機5のタービン52を迂回する排気バイパス通路44を設けており、かつこれら排気バイパス通路43、44のそれぞれの入口を開閉する排気バイパスバルブ45、46を設置している。バルブ45は排気バイパス通路43を流通する排気の流量を制御し、バルブ46は排気バイパス通路44を流通する排気の流量を制御する。排気バイパスバルブ45、46は、WGV(Waste Gate Valve)と呼称されることもある。
バルブ37、46は、負圧アクチュエータ371、461を使用したVSV(Vaccum Switching Valve)である。負圧アクチュエータ371、461はダイヤフラム式アクチュエータであり、そのダイヤフラムの一方の面には負圧及び内蔵のスプリングによる弾性付勢力が、他方の面には大気圧が加わる。負圧は、バキュームポンプ91から供給される。バキュームポンプ91は、常時一定の大きさ(例えば、−65kPa)の負圧を発生させる。ダイヤフラム式アクチュエータ371、461とバキュームポンプ91とを接続する管路上にはそれぞれ、電磁ソレノイドバルブ372、462を設置している。ダイヤフラム式アクチュエータ371、461のダイヤフラムの一方の面に実際に作用する負圧の大きさは、電磁ソレノイドバルブ372、462の開度に応じて変化する。そして、バルブ37、46の開度は、ダイヤフラムの両面に作用する負圧及び大気圧の差圧と、ダイヤフラムを弾性付勢するスプリングの弾性付勢力との差に応じて変化する。つまり、電磁ソレノイドバルブ372、462の開度の操作を通じて、バルブ37、46の開度を操作することが可能である。
これに対し、バルブ45は、電磁バルブであるEVRV(Electric Vacuum Regulating Valve)である。
外部EGR装置2、7は、排気通路4を流れる排気の一部を吸気通路3に還流して吸気に混交せしめるものである。本実施形態の内燃機関は、EGR装置2、7を二基備える。EGR装置2は、いわゆる低圧ループEGRを実現するものであり、排気通路4における排気浄化装置41の下流側を吸気通路3における高速用ターボ過給機5のコンプレッサ51の上流側に連通させるEGR通路21と、当該EGR通路21を開閉するEGRバルブ22とを要素に含む。EGRバルブ22は、EGR通路21を流通する低圧ループEGRガスの流量を制御する。
EGR装置7は、いわゆる高圧ループEGRを実現するものであり、排気通路4における低速用ターボ過給機6のタービン62の上流側を吸気通路3におけるインタクーラ35の下流側に連通させるEGR通路71と、当該EGR通路71を開閉するEGRバルブ72とを要素に含む。EGRバルブ72は、EGR通路71を流通する高圧ループEGRガスの流量を制御する。
加えて、排気通路4における、低圧ループEGR通路21の接続箇所よりも下流の箇所に、排気絞りバルブ47を設置している。低圧ループEGR通路21が接続している吸気通路のコンプレッサ51の上流側の圧力は、当該コンプレッサ51による過給の度合いに応じて変動する。その結果として、低圧ループEGR通路21を流れるEGRガスの流量が変化する。排気絞りバルブ47は、EGRバルブ22とともに、低圧ループEGRガスの流量、ひいては気筒1に充填される吸気に占めるEGRガスの割合であるEGR率を目標値に収束させるために機能する。
本実施形態の内燃機関の制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。
ECU0の入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、クランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するエンジン回転センサから出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求されるエンジントルクまたは負荷)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、吸気通路3のサージタンク33内の(即ち、気筒1に流入する)吸気の温度及び圧力(過給圧)を検出する吸気温・吸気圧センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、大気圧を検出する大気圧センサから出力される大気圧信号e、吸気通路3の最上流即ちエアクリーナ31の下流かつ低圧ループEGR通路21の接続箇所の上流における新気の流量及び温度を検出するエアフローメータ・新気温センサから出力される新気流量・温度信号f、吸気通路3のコンプレッサ51の下流かつコンプレッサ61の上流における吸気の圧力(高速用ターボ過給機5による過給圧)を検出する吸気圧センサから出力される吸気圧信号g、ブレーキペダルが踏まれたことまたはブレーキペダルの踏込量を検出するセンサから出力されるブレーキ信号h等が入力される。
ECU0の出力インタフェースからは、インジェクタ11に対して燃料噴射信号i、スロットルバルブ32に対して開度操作信号j、EGRバルブ22に対して開度操作信号k、EGRバルブ72に対して開度操作信号l、VSV37の開閉駆動を司る電磁ソレノイドバルブ372に対して開度操作信号m、EVRV45に対して開度操作信号n、VSV46の開閉駆動を司る電磁ソレノイドバルブ462に対して開度操作信号o、排気絞りバルブ47に対して開度操作信号p等を出力する。
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに、気筒1に充填される吸気(新気)量に見合った燃料噴射量を推算する。また、それとともに、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、要求EGR率(または、EGR量)、排気ターボ過給機5、6による過給の目標過給圧等といった各種運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、l、m、n、o、pを出力インタフェースを介して印加する。
図2に、本実施形態の内燃機関の運転領域と、排気ターボ過給機5、6による過給及びEGR装置2、7によるEGRとの関係を示している。図2に関し、横軸はエンジン回転数、縦軸はエンジントルクである。アクセル開度が小さく、内燃機関が出力するエンジントルクが比較的小さい領域A1(当該無過給領域A1には、アクセル開度が0または0に近い閾値以下となっているアイドル運転状態が含まれる)では、排気通路4を流れる排気の流量が小さく、排気ターボ過給機5、6が殆どないし全く仕事をしない。よって、ECU0は、VSV37、46及びEVRV45をそれぞれ開弁し、バイパス通路36、43、44を開通させて内燃機関のポンピングロスをできる限り低減する。このとき、吸気圧信号gを参照して知得される、コンプレッサ51の下流かつコンプレッサ61の上流の吸気圧が目標吸気圧に収束するように、VSV46の開度をフィードバック制御しても構わない。その目標吸気圧は、大気圧信号eを参照して知得される大気圧またはその近傍の値に設定することが好ましい。さすれば、吸気通路3における、高速用ターボ過給機5のコンプレッサ51によるロスが小さくなり、燃費性能の向上に寄与し得る。
アクセル開度がある程度以上大きく、エンジントルクもある程度以上大きいが、エンジン回転数が比較的低い領域A2では、低速用ターボ過給機6による過給を行う。当該領域A2において、ECU0は、VSV37を全閉して吸気バイパス通路36を閉鎖し、吸気通路3を流れる吸気を全てコンプレッサ61に流入させる。それとともに、EVRV45を全閉するかその開度を絞り、排気通路4を流れる排気を十分にタービン62に流入させる。このとき、吸気温・吸気圧信号dを参照して知得される吸気圧を目標過給圧に追従させるよう、EVRV45の開度をフィードバック制御してもよい。加えて、ECU0は、吸気圧信号gを参照して知得される、コンプレッサ51の下流かつコンプレッサ61の上流の吸気圧が目標吸気圧に収束するように、VSV46の開度をフィードバック制御する。その目標吸気圧は、大気圧信号eを参照して知得される大気圧またはその近傍の値に設定することが好ましい。さすれば、低速用ターボ過給機6のコンプレッサ61の入口側が負圧とならず、気筒1に充填される吸気の過給が効率化する上、高速用ターボ過給機5のコンプレッサ51によるロスが小さくなり、燃費性能の向上に寄与し得る。
アクセル開度がある程度以上大きく、エンジントルクもある程度以上大きく、エンジン回転数が比較的高い領域A4では、高速用ターボ過給機5による過給を行う。当該領域A4において、ECU0は、VSV37及びEVRV45を開弁してバイパス通路36、43を開通させる。その上で、VSV46を全閉するかその開度を絞り、排気通路4を流れる排気を十分にタービン52に流入させる。このとき、吸気温・吸気圧信号dを参照して知得される吸気圧、及び/または、吸気圧信号gを参照して知得されるコンプレッサ51の下流かつコンプレッサ61の上流の吸気圧を目標過給圧に追従させるように、VSV46の開度をフィードバック制御する。
なお、当該領域A4では、低速用ターボ過給機6による過給を行わないが、コンプレッサ61及びタービン62の回転は、過回転とならない程度の回転数(例えば、100000rpm程度)に維持する必要がある。これは、低速用ターボ過給機6の軸受のシールが軸の回転を前提としており、コンプレッサ61及びタービン62の回転が衰えまたは止まってしまうと潤滑油漏れが起こる(吸気バイパス通路36が開通しており、コンプレッサ51の入口側が負圧の状態になると潤滑油が吸われてしまう)ことによる。そのために、ECU0は、VSV37の開度をできる限り大きく開いておく一方で、EVRV45の開度を、コンプレッサ61及びタービン62の回転数が所定回転数またはその近傍の範囲に維持されるように、やや絞る操作をする。
アクセル開度がある程度以上大きく、エンジントルクもある程度以上大きく、エンジン回転数が中程度の領域A3は、上述の低速ターボ領域A2と高速ターボ領域A4との間の過渡領域である。この過渡領域A3においては、低速用ターボ過給機6及び高速用ターボ過給機5の両方による過給を行う。低速ターボ領域A2から高速ターボ領域A4へと遷移する過程では、エンジン回転数が上昇するにつれて、VSV37及びEVRV45のそれぞれの開度が略全閉から略全開に向かうように徐々に拡大してゆく。このとき、ECU0は、吸気温・吸気圧信号dを参照して知得される吸気圧を目標過給圧に追従させるよう、EVRV45の開度をフィードバック制御する。翻って、VSV46の開度は、エンジン回転数が上昇するにつれて徐々に縮小してゆく。ECU0は、吸気圧信号gを参照して知得される、コンプレッサ51の下流かつコンプレッサ61の上流の吸気圧を目標過給圧に追従させるよう、VSV46の開度をフィードバック制御する。
加えて、アクセル開度(または、エンジントルク)が所定範囲内にある領域、具体的には図2中に網点(トーン)を付して表示している運転領域では、EGRバルブ22、72を開弁し、EGR装置2、7によるEGRを実施する。アクセル開度が低位の所定値よりも小さいか高位の所定値よりも大きい場合、即ち図2中に網点を付していない運転領域にあっては、EGRバルブ22、72を全閉してEGR装置2、7によるEGRを停止するか、またはEGRバルブ22、72を閉じ側に制御してEGRガス量を少量に調整する。
本実施形態のECU0は、高速用ターボ過給機5による過給を行わない無過給領域A1または低速ターボ領域A2のうち、EGRを実施しない領域において、高速用ターボ過給機5に付随するVSV46の開度と電磁ソレノイドバルブ462の開度との関係を確認する。そのために、ECU0は、高速用ターボ過給機5のコンプレッサ51の上流側の吸気圧と下流側の吸気圧との差圧が0または0に近い所定値以下に縮小した状態で電磁ソレノイドバルブ462に与えている開度操作信号oのDUTY比を、学習値としてメモリに記憶保持する。この学習値は、現在の大気圧の条件下で、高速用ターボ過給機5による過給の仕事が0となる「原点」の開度にVSV46を操作するために必要となる電磁ソレノイドバルブ462の開度を示すものである。既に述べた通り、コンプレッサ51の上流側の吸気圧は吸気圧信号gを参照して知得され、コンプレッサ51の下流側の吸気圧は大気圧信号eを参照して知得される。
吸気通路3におけるコンプレッサ51の前後差圧が0または0に近い状態となるようなVSV46の開度は、そのときに吸気通路3を流通している吸気の流量等による影響を受ける。よって、電磁ソレノイドバルブ462に与える開度操作信号oのDUTY比の「原点」の学習値は、[エンジン回転数,エアフローメータで計測される新気の流量]毎に学習して記憶する。なお、この学習の際にはEGRバルブ22を閉止しているので、EGR通路21経由で吸気通路に流入するEGRガスの量は0と見なせる。さらには、新気温(外気温)毎に、及び/または、排気圧や排気温毎に、開度操作信号oのDUTY比の「原点」を学習するということも考えられる。
ダイヤフラム式アクチュエータ461に作用する大気圧の大きさは、気象条件や高度、緯度によって変動する。従って、開度操作信号oのDUTY比の「原点」の学習は、できるだけ高頻度で実行することが望ましい。開度操作信号oのDUTY比の学習は、一トリップ(イグニッションスイッチがONに操作されて内燃機関を始動してから、イグニッションスイッチがOFFに操作されて内燃機関を停止するまでの期間を一トリップとする)中に複数回実施することがある。例えば、アクセル開度が0または0に近い閾値以下となり内燃機関がアイドル運転に移行する都度、学習を行ってもよい。
開度操作信号oのDUTY比の「原点」の学習を完了した後、内燃機関の運転領域が再び無過給領域A1または低速ターボ領域A2に遷移した暁には、そのときの[エンジン回転数,エアフローメータで計測される新気の流量(さらには、新気温等)]に関連づけてメモリに記憶保持している開度操作信号oのDUTY比の学習値を読み出し、そのDUTY比の開度操作信号oを電磁ソレノイドバルブ462に入力する。さすれば、高速用ターボ過給機5のコンプレッサ51の上流側の圧力を、同コンプレッサ51の下流側の圧力即ち大気圧の近傍に速やかに調整することができ、燃費性能のより一層の向上に資する。
また、開度操作信号oのDUTY比の「原点」の学習値は、過渡領域A3や高速ターボ領域A4における高速用ターボ過給機5の制御にも援用することが可能である。コンプレッサ51の上流側(かつ、コンプレッサ61の下流側)の吸気圧を目標過給圧に制御しようとする際に、そのときの[エンジン回転数,エアフローメータで計測される新気の流量(さらには、新気温等)]に関連づけてメモリに記憶保持している開度操作信号oのDUTY比の学習値を読み出し、当該学習値に目標過給圧に応じた増分を加えたDUTY比の開度操作信号oを電磁ソレノイドバルブ462に入力する。さすれば、コンプレッサ51の上流側の吸気圧を速やかに目標過給圧に近づけるフィードフォワード制御が可能となる。
しかして、本実施形態のECU0は、高速用ターボ過給機5による過給を行い、かつ低圧ループEGR装置2によるEGRを実施する運転領域において、高速用ターボ過給機5の仕事の大きさに応じて低圧ループEGRバルブ22の開度を補正する補正制御を実施することとしている。
図3に、低圧ループEGRバルブ22の開度の補正制御に際してECU0が実行する処理の手順例を示している。まず、ECU0は、現在の内燃機関の運転領域[エンジン回転数,エンジントルク(または、アクセル開度、サージタンク33内吸気圧、気筒1に充填される新気量若しくは燃料噴射量)]に基づき、EGRバルブ22の開度の基本量を決定する(ステップS1)。ECU0のメモリには予め、内燃機関の運転領域を表すパラメータと、EGRバルブ22の開度の基本量との関係を規定したマップデータが格納されている。ECU0は、現在の内燃機関の運転領域のパラメータをキーとして当該マップを検索し、EGRバルブ22の開度の基本量を知得する。
次に、ECU0は、現在の排気バイパスバルブ46の開度(特に、VSV461の開度の「原点」からの拡大量)、及び上記のEGRバルブ22の開度の基本量に基づき、EGRバルブ22の開度の基本量に加味するべき補正量を決定する。ECU0のメモリには予め、排気バイパスバルブ46の開度及びEGRバルブ22の開度の基本量と、EGRバルブ22の開度の補正量の学習値との関係を規定したマップデータが格納されている。この学習値は、後述するステップS6ないしS8を通じて学習したものである。ECU0は、現在の排気バイパスバルブ46の開度及び上記のEGRバルブ22の開度の基本量をキーとして当該マップを検索し、EGRバルブ22の開度の補正量の学習値を知得する。ここで、EGRバルブ22の開度の補正量は、その基本量に加算(負値である場合には、減算)する量であってもよく、基本量に乗ずる補正係数であってもよい。
ECU0は、EGRバルブ22の開度の基本量に補正量を加味(加算または乗算)した開度に、EGRバルブ22を操作する(ステップS3)。
さらに、ECU0は、現在の排気バイパスバルブ46の開度、及び上記のEGRバルブ22の開度の基本量に基づき、低圧EGR通路21を介して吸気通路3に流入するEGRガス量(または、低圧ループEGRにより達成されるEGR率)の想定量(予想量)を知得する(ステップS4)。排気バイパスバルブ46の開度は、高速用ターボ過給機5による過給の仕事の大きさに影響を及ぼす。換言すれば、排気バイパスバルブ46の開度は、吸気通路3におけるコンプレッサ51の上流側、即ち低圧ループEGR通路22の接続箇所の近傍の吸気圧力に影響を及ぼし、ひいては当該EGR通路22を流れるEGRガスの量に影響を及ぼす。ECU0のメモリには予め、排気バイパスバルブ46の開度及びEGRバルブ22の開度の基本量と、想定される低圧ループEGRガス量(または、EGR率)との関係を規定したマップデータが格納されている。ECU0は、現在の排気バイパスバルブ46の開度及び上記のEGRバルブ22の開度の基本量をキーとして当該マップを検索し、想定されるEGRガス量を知得する。
並びに、ECU0は、EGRバルブ22を上記の基本量に補正量を加味した開度に操作した結果としてもたらされる、実際の低圧ループEGRガス量を推算する(ステップS5)。低圧ループEGRガス量は、吸気通路3におけるコンプレッサ51の下流での(新気に低圧ループEGRガスが加わった)吸気の流量から、吸気通路3の最上流即ちエアクリーナ31の下流かつ低圧ループEGR通路21の接続箇所の上流での新気の流量を減算することで求められる。前者の吸気の流量は、現在のエンジン回転数、及び吸気通路3のコンプレッサ51の下流かつコンプレッサ61の上流における吸気の圧力から推算できる。これは、エンジン回転数及びサージタンク33内吸気圧から気筒1に向かって流入する吸気の流量を推算する手法と同様である。また、後者の新気の流量は、エアフローメータにより直接に計測できる。
そして、ECU0は、ステップS4にて知得した低圧ループEGRガスの想定量と、ステップS5にて推算した実際の低圧ループEGRガス量との差分を求め(ステップS6)、その差分を縮小するように、EGRバルブ22の開度の補正量を修正する(ステップS7)。即ち、実際の低圧ループEGRガス量が想定量を上回るのであればEGRバルブ22の開度の補正量を減少させ、逆に下回るのであればEGRバルブ22の開度の補正量を増加させる。修正後の開度の補正量は、現在の排気バイパスバルブ46の開度及びEGRバルブ22の開度の基本量に関連づけて、ECU0のメモリに学習値として記憶する(ステップS8)。この学習値は、以後の補正制御におけるステップS2にて参照されることになる。
ECU0は、上述したステップS1ないしS8を反復的に実行する。
なお、ステップS6ないしS8を通じて学習したEGRバルブ22の開度の補正量の絶対値が所定値を超えて大きくなったときには、EGRバルブ22の開度の基本量そのものを更新することが好ましい。その場合には、EGRバルブ22の基本量に当該補正量を加味した結果の値を、新たな基本量のマップ値として、現在の内燃機関の運転領域に関連づけてECU0のメモリに記憶する。この基本量の値は、以後の補正制御におけるステップS1にて参照されることになる。加えて、現在の排気バイパスバルブ46の開度及びEGRバルブ22の開度の基本量に関連づけて記憶している、EGRバルブ22の開度の補正量を0にリセットする。
本実施形態では、排気ガス再循環装置2、及び排気ターボ過給機5が付帯した内燃機関を制御する制御装置0であって、排気通路4と吸気通路3におけるコンプレッサ51の上流側とを接続するEGR通路21上に設けられ当該EGR通路21を開閉するEGRバルブ22、及び排気通路4における排気タービン52を迂回する排気バイパス通路44上に設けられ当該排気バイパス通路44を開閉する排気バイパスバルブ46を制御するものであり、現在の内燃機関の運転領域に対応したEGRバルブ22の開度の基本量、及び現在の排気バイパスバルブ46の開度に基づいて想定されるEGRガス量と、実際のEGRガス量との差分に応じて、EGRバルブ22の開度の補正量を決定する内燃機関の制御装置0を構成した。
本実施形態によれば、排気ターボ過給機5の仕事が変動したとしても、EGR装置2によるEGR率を適正な目標に制御できるようになり、燃費性能の向上及びエミッションの良化に寄与し得る。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。特に、本発明の適用対象となる内燃機関は、2ステージターボエンジンには限定されない。即ち、内燃機関が具備する排気ターボ過給機は、一基でもよい。その場合の内燃機関の構造は、図1に示した内燃機関から排気ターボ過給機6、バイパス通路36、43及びバルブ37、45を省いたようなものとなる。その上で、上記実施形態と同様、制御装置たるECU0が、EGR通路21を流れるEGRガスの想定量と実際のEGRガス量との差分に応じてEGRバルブ22の開度の補正量を決定し、その差分を縮小する方向にEGRバルブ22を操作することになる。
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。