特許文献1の電気かみそりによれば、ロックノブを上下スライドすることにより、せん断刃ユニットの前後傾動をロックし、あるいはアンロックできる。また、アンロック状態において、親指と人差し指でせん断刃ユニットの両側面を保持することにより、せん断刃ユニットの傾動力を、ユーザー自身で加減することができる。しかし、ユーザー自身で傾動力を加減する場合には、せん断刃ユニットの両側面を親指と人差し指で保持し続ける必要があるので煩わしく、ひげの切断部位によっては、せん断刃ユニットを保持するのが難しい。
その点、特許文献2の電気かみそりによれば、スイッチを切換えるだけで、刃ヘッド部のフロート特性をソフトフロート状態とハードフロート状態に切換え、さらに刃ヘッド部をフロートロック状態に切換えることができる。しかし、レバー軸に板ばね用の突出部とロック用の突出部を一対ずつ設け、さらに板ばねとは別に圧縮コイル型のフロートばねを設ける必要があるので、フロート特性を変更するための調整構造が複雑化しコストが嵩むのを避けられない。また、フロートロック状態においては、刃ヘッド部の下面をロック用の突出部で受止めているだけであるため、安定した状態でフロートロック状態を維持できない。例えば、前後方向あるいは左右方向の外力が刃ヘッド部に作用するとき、刃ヘッド部が傾動しやすい。
本発明の目的は、前後および/または左右傾動可能なせん断刃ユニットの傾動反力を調整する反力調整構造を備えていて、同構造を切換え操作することにより、ユーザーの好みで傾動反力を調整してせん断刃ユニットの剃り心地を変更できる、使い勝手に優れた電気かみそりを提供することにある。
本発明の目的は、せん断刃ユニットを傾動不能にロックするロック構造と反力調整構造を備えていて、せん断刃ユニットをロック構造でロック保持した状態においてロック状態を安定保持でき、しかも反力調整構造の構造を簡素化してコストを削減できる電気かみそりを提供することにある。
本発明に係る電気かみそりは、内刃6および外刃7を備えたせん断刃ユニット8が、本体ケース1の上部に設けたユニット支持体9で傾動可能に支持してある。本体ケース1とせん断刃ユニット8との間に、せん断刃ユニット8を傾動不能にロックするロック構造と、せん断刃ユニット8が傾動するときの傾動反力を調整する反力調整構造を設ける。図1に示すように、反力調整構造は、本体ケース1とせん断刃ユニット8のいずれか一方に設けられる切換え調整体41と、他方に設けられる反力調整体42と、切換え調整体41を切換え操作する操作具43を備えている。切換え調整体41を操作具43で切換え操作した状態において、両調整体41・42が互いに係合ないし摩擦接合して傾動反力を発生する。せん断刃ユニット8をロック構造でロック保持した状態において、切換え調整体41と反力調整体42が係合ないし摩擦接合して、せん断刃ユニット8をロック構造と協同して位置保持している。
図5および図13に示すように、反力調整体42の中心軸線P2は、切換え調整体41の中心軸線P1および切換え調整体41のスライド移動ラインL1に対して前後にずらしてある。
ロック構造は、図5に示すように、可動ロック体27と、切換え調整体41の中心軸線P1上に設けられる固定ロック体28と、可動ロック体27をロック状態とアンロック状態に切換える操作具29を備えている。切換え調整体41と反力調整体42が係合ないし摩擦接合して傾動反力を発揮している反力付与状態において、可動ロック体27が固定ロック体28と傾動反力に抗しながら係合して、せん断刃ユニット8を切換え調整体41の中心軸線P1の側へ傾動させて前後傾動不能にロックする。
ロック構造は、切換え調整体41を兼ねて本体ケース1に設けた可動ロック体27と、せん断刃ユニット8に設けた固定ロック体28と、可動ロック体27を上下に切換え操作する操作具29を備えている。反力調整構造が、本体ケース1に設けられて上下に切換え操作される切換え調整体41と、せん断刃ユニット8で前後スライド自在に案内支持した反力調整体42と、反力調整体42を中立位置へ向かって移動付勢する復帰ばね46・47を備えている。可動ロック体27および切換え調整体41は操作具29・43でスライド操作されて、切換え調整体41が反力調整体42と係合する反力付与状態と、可動ロック体27が固定ロック体28と係合するロック状態に切換え可能である。
ロック構造は、図1に示すように、棒状の可動ロック体27と、可動ロック体27の上端と係脱する凹部からなる固定ロック体28と、可動ロック体27をスライド操作する操作具29を備えている。反力調整構造の反力調整体42は、それぞれせん断刃ユニット8で前後スライド自在に案内支持した下側の前段スライダー44と上側の後段スライダー45で構成されて、両スライダー44・45のそれぞれが復帰ばね46・47で中立位置へ向かって移動付勢してある。前段スライダー44と後段スライダー45には、切換え調整体41と係合する連結穴53・54が上下貫通状に形成してある。切換え調整体41は、切換え調整体41が前段スライダー44の連結穴53と係合する低反力状態と、切換え調整体41が前段スライダー44および後段スライダー45の両連結穴53・54と係合する高反力状態とに切換え可能である。ロック状態において、可動ロック体27が固定ロック体28と係合している。
ロック構造は図8に示すように、本体ケース1で上下スライド自在に支持した可動ロック体27と、せん断刃ユニット8に設けた固定ロック体28と、可動ロック体27をスライド操作する操作具29を備えている。反力調整構造は、可動ロック体27に同行して上下スライドする切換え調整体41と、せん断刃ユニット8に設けた反力調整体42を備えている。切換え調整体41には、反力調整体42と摩擦接合して傾動反力を発生する弾性アーム73を設ける。可動ロック体27および切換え調整体41は操作具29・43でスライド操作されて、切換え調整体41が反力調整体42と摩擦接合する反力付与状態と、可動ロック体27が固定ロック体28と係合するロック状態に切換え可能である。反力付与状態においては、前後傾動するせん断刃ユニット8が切換え調整体41と反力調整体42の摩擦抵抗による傾動反力を受ける。
弾性アーム73は弾性変形可能なリング状に形成する。反力調整体42は、せん断刃ユニット8の傾動中心を円弧中心とする円弧面で形成する。
固定ロック体28は、ユニットフレーム12の複数個所に形成する。可動ロック体27の固定ロック体28に対する係合位置を異ならせて、せん断刃ユニット8を異なる傾動角度でロック保持する。
ロック構造は、図13に示すように、本体ケース1でスライド自在に支持した可動ロック体27と、せん断刃ユニット8に設けた固定ロック体28と、可動ロック体27をスライド操作する操作具29を備えている。反力調整構造は、可動ロック体27に同行して上下スライドする切換え調整体41と、せん断刃ユニット8に設けた反力調整体42を備えている。切換え調整体41は弾性変形可能な軸体で形成され、反力調整体42は調整溝で形成する。可動ロック体27および切換え調整体41は操作具29・43で操作されて、切換え調整体41が反力調整体42と係合する反力付与状態と、可動ロック体27が固定ロック体28と係合するロック状態に切換え可能である。反力付与状態においては、傾動するせん断刃ユニット8が切換え調整体41の弾性変形に伴う傾動反力を受ける。
ロック構造は、本体ケース1で上下スライド自在に支持した可動ロック体27と、せん断刃ユニット8に設けた固定ロック体28と、本体ケース1で左右スライド自在に支持した操作具29と、操作具29の左右スライド動作を上下動作に変換して可動ロック体27に伝えるカム構造を備えている。切換え調整体41は、せん断刃ユニット8の傾動に追随して弾性変形する弾性軸86と、弾性軸86の上端に設けられて反力調整体42の溝壁と係合する受動軸部87とを備えている。カム構造は、本体ケース1で上下スライド自在に案内支持した受動カム体80と、受動カム体80を押下げ付勢するリターンばね81と、受動カム体80に設けた複数のカム面83と、操作具29に設けられてリターンばね81の付勢力に抗しながらカム面83を介して受動カム体80を押上げ操作するカムローラー79を備えている。
ロック構造は、図19に示すように、切換え調整体41を兼ねてせん断刃ユニット8の側に設けられる可動ロック体27と、本体ケース1の側に設けられる固定ロック体28と、可動ロック体27をロック状態とアンロック状態に切換える操作具29を備えている。反力調整構造は、切換え調整体41と、本体ケース1でスライド自在に案内支持した反力調整体42と、反力調整体42を中立位置へ向かって移動付勢する復帰ばね46・47を備えている。可動ロック体27および切換え調整体41は操作具29でスライド操作されて、切換え調整体41が反力調整体42と係合する反力付与状態と、可動ロック体27が固定ロック体28と係合するロック状態に切換え可能である。反力付与状態において、傾動するせん断刃ユニット8が復帰ばね46・47を弾性変形させて、復帰ばね46・47から傾動反力を受ける。
反力調整構造の反力調整体42は、それぞれせん断刃ユニット8でスライド自在に案内支持した上側の前段スライダー44と下側の後段スライダー45で構成する。両スライダー44・45のそれぞれは復帰ばね46・47で中立位置へ向かって移動付勢する。前段スライダー44と後段スライダー45には、切換え調整体41と係合する連結穴53・54が上下貫通状に形成してある。切換え調整体41は、切換え調整体41が前段スライダー44の連結穴53と係合する低反力状態と、切換え調整体41が前段スライダー44および後段スライダー45の両連結穴53・54と係合する高反力状態とに切換え可能である。ロック状態において、可動ロック体27が固定ロック体28と係合する。
本発明の電気かみそりにおいては、本体ケース1とせん断刃ユニット8との間に、せん断刃ユニット8を傾動不能にロックするロック構造と、せん断刃ユニット8が傾動するときの傾動反力を調整する反力調整構造を設けた。また、反力調整構造は、本体ケース1とせん断刃ユニット8のいずれか一方に設けられる切換え調整体41と、他方に設けられる反力調整体42と、切換え調整体41を切換え操作する操作具43を備える構成とした。こうした反力調整構造によれば、切換え調整体41を操作具43で切換え操作した状態において、両調整体41・42が互いに係合ないし摩擦接合して傾動反力を発生することができる。従って、電気かみそりを使用する際には、操作具43で切換え調整体41を切換え操作することにより、せん断刃ユニット8の傾動反力をユーザーの好みに合わせて調整して剃り心地を変更することができ、従来の電気かみそりに比べて使い勝手を向上できる。また、せん断刃ユニット8をロック構造でロック保持した状態においては、切換え調整体41と反力調整体42が係合ないし摩擦接合して、せん断刃ユニット8をロック構造と協同して位置保持するので、せん断刃ユニット8のロック状態を安定して保持し続けることができる。これにより、ユーザーの意図に反してせん断刃ユニット8がロック解除されるのを解消できる。さらに、互いに係合ないし摩擦接合する切換え調整体41と反力調整体42、および操作具43などで反力調整構造を構成するので、従来の調整構造に比べて、反力調整構造の構造を簡素化して電気かみそりのコストを削減できる。
反力調整体42の中心軸線P2は、切換え調整体41の中心軸線P1および切換え調整体41のスライド移動ラインL1に対して前後にずらすようにした。こうした電気かみそりによれば、操作具43を操作して切換え調整体41を待機状態から反力付与状態に切換える際に、切換え調整体41が反力調整体42と係合するのと同時に、せん断刃ユニット8を先の前後ずれを解消する側へ傾動させることができる。従って、ユーザーは、せん断刃ユニット8が傾動するのを目視することにより、せん断刃ユニット8に傾動反力が作用している状態であることを明確に知ることができる。
可動ロック体27と、切換え調整体41の中心軸線P1上に設けられる固定ロック体28と、可動ロック体27を切換える操作具29などでロック構造を構成し、せん断刃ユニット8に傾動反力が作用している反力付与状態において、可動ロック体27を固定ロック体28に傾動反力に抗しながら係合させるようにした。こうしたロック構造によれば、可動ロック体27が固定ロック体28と係合するのと同時に、せん断刃ユニット8を傾動反力に抗しながら切換え調整体41の中心軸線P1の側へ傾動させることができる。従って、ユーザーは、せん断刃ユニット8が中心軸線P1側へ傾動するのを目視することにより、せん断刃ユニット8が前後傾動不能にロックされた状態であることを明確に知ることができる。また、図1に示すように、反力調整体42が復帰ばね46・47で移動付勢してある反力調整構造の場合には、可動ロック体27が固定ロック体28と係合した状態において、復帰ばね46・47のばね力で可動ロック体27を位置保持するので、せん断刃ユニット8のロック状態を安定して保持し続けることができる。
本体ケース1に切換え調整体41を兼ねる可動ロック体27を設け、せん断刃ユニット8に固定ロック体28を設ける電気かみそりによれば、可動ロック体27を操作具29でスライド操作することにより、切換え調整体41を反力調整体42と係合させて反力付与状態に切換えることができる。また、切換え調整体41が反力付与状態に切換わった後に、可動ロック体27を固定ロック体28と係合させてロック状態に切換えることができる。このように、可動ロック体27が切換え調整体41を兼ね、操作具29が切換え調整体41の操作具43を兼ねるようにすると、反力調整構造の構造を簡素化して電気かみそりの製造コストを削減できる。また、ロック状態においては、可動ロック体27が固定ロック体28と係合し、さらに、切換え調整体41と反力調整体42が係合して、せん断刃ユニット8をロック構造と協同して位置保持するので、せん断刃ユニット8のロック状態を安定して保持し続けることができる。
反力調整体42が、前後スライド自在な前段スライダー44および後段スライダー45で構成してある反力調整構造によれば、切換え調整体41を前段スライダー44と係合させ、あるいは両スライダー44・45と係合させることにより、低反力状態と高反力状態に切換えることができる。また、高反力状態を越えて可動ロック体27をスライド操作することにより、可動ロック体27を固定ロック体28と係合させて、せん断刃ユニット8を傾動不能にロック保持できる。こうした電気かみそりによれば、前段スライダー44および後段スライダー45の復帰ばね46・47のばね力を調整することで、低反力状態における反力と、高反力状態における反力を自由に設定することができる。従って、ユーザーの好みに応じてきめ細やかな傾動反力を発揮できる、使い勝手に優れた電気かみそりが得られる。
切換え調整体41の弾性アーム73と反力調整体42が摩擦接合して傾動反力を発揮する反力調整構造によれば、せん断刃ユニット8が傾動しているか否かにかかわらず、単に操作具43を操作するだけで弾性アーム73を反力調整体42に密着させて、せん断刃ユニット8に傾動反力を付与し、あるいは傾動反力を増減できる。従って、切断すべきひげの部位に応じてせん断刃ユニット8の傾動反力を大小に切換えながら、ひげ切断を円滑に行える。また、操作具43を操作することにより、反力調整構造を待機状態と、低反力状態と、高反力状態に切換えて、せん断刃ユニット8の剃り心地を調整できるので、電気かみそりの使い勝手を向上できる。さらに、切換え調整体41が高反力状態に切換えられたのちには、可動ロック体27を固定ロック体28に係合させて、せん断刃ユニット8を傾動不能にロック保持できる。
弾性アーム73を弾性変形可能なリング状に形成し、反力調整体42を円弧面で形成する反力調整構造によれば、せん断刃ユニット8が一方へ傾動するときの傾動反力と、他方へ傾動するときの傾動反力を均等化できる。従って、せん断刃ユニット8を肌面に沿って往復動しながらひげ切断を行うとき、往動時と復動時とでせん断刃ユニット8と肌面の間の摩擦力がばらつくのを解消して、ひげの切断を効果的に行うことができる。
固定ロック体28がユニットフレーム12の複数個所に形成してあると、可動ロック体27の固定ロック体28に対する係合位置を異ならせることにより、せん断刃ユニット8を異なる傾動角度でロック保持して、ひげ切断を行うことができる。例えば、ひげ切断を行う部位の違いに応じて、ユーザーの好みでせん断刃ユニット8の姿勢を変えて、楽にひげ切断を行うことができる。
切換え調整体41を弾性変形可能な軸体で形成し、反力調整体42を上下に長い調整溝で形成する反力調整構造によれば、せん断刃ユニット8が傾動するとき、切換え調整体41が弾性変形することでせん断刃ユニット8に傾動反力を作用させることができる。また、切換え調整体41を操作具43で切換え操作して、切換え調整体41と反力調整体42の係合深さを変更することにより、反力調整構造を低反力状態と高反力状態に切換えることができる。さらに、高反力状態を越えて操作具43をスライド操作することにより、可動ロック体27を固定ロック体28に係合させて、せん断刃ユニット8を傾動不能にロック保持できる。こうした電気かみそりによれば、反力調整構造およびロック構造の構造を簡素化して、電気かみそりの製造コストを削減できる。低反力状態および高反力状態においては、切換え調整体41と反力調整体42が互いに係合しているので、切換え調整体41の切換え操作を円滑に行って傾動反力を増減できる。
弾性軸86と受動軸部87で切換え調整体41を構成すると、せん断刃ユニット8が傾動するとき、弾性軸86の弾性変形が、反力調整体42の溝壁と係合する受動軸部87を介してせん断刃ユニット8に伝えられる。この状態では、受動軸部87のみが反力調整体42の溝壁と係合しているので、弾性軸86に無理な傾動力が作用するのを防止できる。上下スライド自在な受動カム体80と、リターンばね81と、受動カム体80に設けた複数のカム面83と、操作具29に設けたカムローラー79などでカム構造を構成すると、操作具29(43)のスライド操作により受動カム体80を上下させて、反力調整構造を低反力状態と高反力状態に切換えることができる。さらに、高反力状態を越えて操作具29(43)をスライド操作することにより、可動ロック体27を固定ロック体28に係合させて、せん断刃ユニット8を傾動不能にロック保持できる。こうした電気かみそりによれば、反力調整構造を待機状態と、低反力状態と、高反力状態に切換えて、せん断刃ユニット8の剃り心地を調整できるので、電気かみそりの使い勝手を向上できる。さらに、切換え調整体41が高反力状態に切換えられたのちには、可動ロック体27を固定ロック体28に係合させて、せん断刃ユニット8を傾動不能にロック保持できる。せん断刃ユニット8をロック保持した状態においては、切換え調整体41と反力調整体42が係合して、せん断刃ユニット8をロック構造と協同して位置保持するので、せん断刃ユニット8のロック状態を安定して保持し続けることができる。
せん断刃ユニット8の側に切換え調整体41を兼ねる可動ロック体27を設け、本体ケース1の側に固定ロック体28および反力調整体42を設けると、左右スライドする反力調整体42と復帰ばね46・47を本体ケース1に収容できるので、せん断刃ユニット8の構造が複雑になるのを防止できる。反力付与状態においては、傾動するせん断刃ユニット8が復帰ばね46・47を弾性変形させて、復帰ばね46・47から傾動反力を受けるので、ひげ切断時のせん断刃ユニット8の傾動動作や中立位置への復帰動作を、応答よく円滑に行える。可動ロック体27が切換え調整体41を兼ね、操作具29が切換え調整体41の操作具43を兼ねるので、反力調整構造の構造を簡素化して電気かみそりの製造コストを削減できる。また、ロック状態においては、可動ロック体27が固定ロック体28と係合し、さらに、切換え調整体41と反力調整体42が係合して、せん断刃ユニット8をロック構造と協同して位置保持するので、せん断刃ユニット8のロック状態を安定して保持し続けることができる。
反力調整体42が、前後スライド自在な前段スライダー44および後段スライダー45で構成してある反力調整構造によれば、切換え調整体41を前段スライダー44と係合させ、あるいは両スライダー44・45と係合させることにより、低反力状態と高反力状態に切換えることができる。また、高反力状態を越えて可動ロック体27をスライド操作することにより、可動ロック体27を固定ロック体28と係合させて、せん断刃ユニット8を傾動不能にロック保持できる。こうした電気かみそりによれば、前段スライダー44および後段スライダー45の復帰ばね46・47のばね力を調整することで、低反力状態における反力と、高反力状態における反力を自由に設定することができる。従って、ユーザーの好みに応じてきめ細やかな傾動反力を発揮できる、使い勝手に優れた電気かみそりが得られる。
(実施例1) 図1ないし図7は、本発明に係る電気かみそりの実施例1を示す。なお、本発明における前後、左右、および上下とは、図2に示す交差矢印、および方向を示す文字表示に従うものとする。図2および図3において電気かみそりは、グリップを兼ねる本体ケース1と、本体ケース1の上部に設けたかみそりヘッド2を備えていて、往復動型の電気かみそりとして構成してある。本体ケース1の内部にはモーター3および2次電池4などが配置してあり、ケース前面には、モーター3を起動しあるいは停止させるスイッチボタン5が設けてある。かみそりヘッド2には内刃6および外刃7を備えたせん断刃ユニット8が設けてあり、せん断刃ユニット8は、本体ケース1の上部に設けた左右一対のユニット支持体9で前後傾動可能に支持してある。
せん断刃ユニット8は、ユニットフレーム12と、内刃6を支持する内刃ホルダー13と、外刃7を支持する外刃ホルダー14と、ユニットフレーム12の内部に収容される振動子15などで構成してある。ユニットフレーム12は左右一対の側枠16と、中央枠17とで逆門型に構成してあり、側枠16の上部の外側面に設けた傾動軸18をユニット支持体9で軸支することにより、せん断刃ユニット8の全体が傾動軸18を中心にして前後傾動できる。ユニットフレーム12の下面と、ユニット支持体9の間の本体ケース1の上面は、それぞれ傾動軸18の中心(傾動中心)を円弧中心とする円弧面で形成されて、僅かな隙間を介して上下に対向している。
振動子15は中央枠17の内部に収容されており、その上面側には往復動力を内刃ホルダー13へ出力する駆動軸20が設けてあり、その下面側にはモーター3の出力軸に固定した偏心カム21で左右に往復駆動されるカム溝22が設けてある。振動子15を収容する中央枠17の上面はカバー23で覆われており、カバー23と駆動軸20との間の隙間はゴム製のパッキン24でシールしてある。
前後傾動するせん断刃ユニット8を前後傾動不能にロック保持するために、本体ケースト1とユニットフレーム12との間にロック構造を設けている。さらに、せん断刃ユニット8に適度の傾動反力を与えて、ユーザーの好みでせん断刃ユニット8の剃り心地を変更するために、本体ケース1とユニットフレーム12との間に、傾動反力を低反力と高反力に調整する反力調整構造を設けている。
図1および図4に示すように、ロック構造は、本体ケース1の上部一側に配置した直線棒状の可動ロック体27と、可動ロック体27に対応してユニットフレーム12の一側に配置した固定ロック体28と、可動ロック体27をロック状態とアンロック状態に切換え操作する操作具29、および節度構造などで構成する。固定ロック体28は、後述するスライド区画48の天井壁の内面に凹み形成してある。可動ロック体27および節度構造を上下スライドするために、本体ケース1の一側内部にガイド区画30を設け、その前後壁および左右壁で可動ロック体27および節度構造を案内支持している。ガイド区画30の天井壁には、可動ロック体27を案内支持する出入口31が開口され、ガイド区画30の外側壁には、操作具29をケース外に露出させるためのノブ溝32が開口してある。ユニット支持体9の下部には操作凹部33が凹み形成してあり、この凹部33内に操作具29を収容して、操作具29が本体ケース1の外郭線の外へ突出するのを防止している。
節度構造は図1に示すように、可動ロック体27の下端に連続する四角形状の節度ベース35と、節度ベース35の前後に設けた弾性変形可能な節度アーム36と、節度アーム36の上下中途部に突設した節度突起37と、ガイド区画30の左右壁の対向面に凹み形成した上下4対の節度凹部38で構成する。可動ロック体27と操作具29、および節度構造は、一体に成形されたプラスチック成型品からなり、節度ベース35の外側面の中央にノブ状の操作具29が突設してある。
反力調整構造は、切換え調整体41と、切換え調整体41に対応してユニットフレーム12の下部一側に配置した反力調整体42と、切換え調整体41を切換え操作する操作具43などで構成する。この実施例では、先に説明した可動ロック体27が切換え調整体41を兼ねており、さらに、ロック構造の操作具29が反力調整構造の操作具43を兼ねている。以下の説明においては、可動ロック体27と切換え調整体41を必要に応じて使い分けながら説明する。反力調整体42は、ユニットフレーム12内に配置した下側の前段スライダー44と上側の後段スライダー45と、これら両スライダー44・45の前後に配置した、一対ずつの圧縮コイル型の復帰ばね46・47を備えている。これらの復帰ばね46・47が、せん断刃ユニット8を中立位置へ向かって移動付勢する復帰ばねとして機能する。両スライダー44・45と復帰ばね46・47を収容するために、側枠16と中央枠17の接合面の間にスライド区画48を設け、その内部の上下に前段スライダー44用のガイド溝49と、後段スライダー45用のガイド溝50を、それぞれ円弧溝状に形成している。
前段スライダー44と後段スライダー45は、上下面が部分円弧状に形成されたプラスチックブロックからなり、そのブロック中央に切換え調整体41と係合する連結穴53・54が上下貫通状に形成してある。各連結穴53・54の下開口には、切換え調整体41の各連結穴53・54との進入係合を容易化するガイド面55・56が斜めに形成してある。先に説明した固定ロック体28の下開口にも同様のガイド面57が形成してある。
反力調整構造は操作具43(29)を上下スライド操作することにより、待機状態と、低反力状態と、高反力状態に切換えることができる。図5に示すのが待機状態であり、このときの切換え調整体41の上端は出入口31の内部に位置しているので、せん断刃ユニット8は傾動軸18を中心にして自由に前後傾動でき、前後傾動時にせん断刃ユニット8に傾動反力が作用することはない。低反力状態においては、図6に示すように、切換え調整体41の上部が前段スライダー44の連結穴53と係合している。そのため、せん断刃ユニット8が前後傾動する場合には、前後の復帰ばね46のいずれか一方が圧縮変形されるので、せん断刃ユニット8には復帰ばね46の弾性変形量に見合う傾動反力が作用する。高反力状態においては、図7に示すように、切換え調整体41が前段スライダー44と後段スライダー45の連結穴53・54と係合する。そのため、せん断刃ユニット8が前後傾動する場合には、上下一対の復帰ばね46・47が圧縮変形されるので、せん断刃ユニット8には復帰ばね46・47の弾性変形量に見合う、より大きな傾動反力が作用する。なお、低反力状態と高反力状態においては、せん断刃ユニット8の傾動角度が大きくなるのに比例して傾動反力が増加する。傾動角度が大きくなるほど、上下の復帰ばね46・47が大きく圧縮変形されるからである。
ロック構造は、図1に示すように、操作具29(43)を待機状態から高反力状態を越えて最上段位置まで上方スライド操作し、可動ロック体27の上部を固定ロック体28と係合させることによりロック状態に切換えることができる。ロック状態の可動ロック体27の上下は、固定ロック体28および出入口31で係合保持されており、さらに可動ロック体27の上下中途部が前段スライダー44と後段スライダー45によって係合保持されている。つまり、せん断刃ユニット8がロック保持された状態においては、切換え調整体41と反力調整体42が係合して、せん断刃ユニット8をロック構造と協同して位置保持している。従って、外力が作用したとしてもせん断刃ユニット8が前後方向あるいは左右方向へ傾動することはなく、ロック状態を安定して保持し続けることができる。待機状態と、低反力状態と、高反力状態と、ロック状態においては、それぞれ節度構造の節度突起37が節度凹部38に落込み係合して、可動ロック体27および切換え調整体41の上下移動を規制している。
先に説明したように、せん断刃ユニット8は復帰ばね46・47で中立位置へ向かって移動付勢されている。そのため、傾動外力が開放されるのと同時に、せん断刃ユニット8は中立位置へ復帰揺動して、前後の復帰ばね46・47の弾性力が釣り合う。この中立状態においては、図5に示すように前段スライダー44および後段スライダー45の中心軸線、すなわち反力調整体42の中心軸線P2は、せん断刃ユニット8の中心軸線上に位置している。
切換え調整体41が反力調整体42と係合したことをユーザーに明確に知らせ、さらに可動ロック体27が固定ロック体28と係合したことをユーザーに明確に知らせるために、切換え調整体41の中心軸線P1と反力調整体42の中心軸線P2を前後にずらしている。切換え調整体41の中心軸線P1は、切換え調整体41の移動ラインL1であって、切換え調整体41の中心は移動ラインL1に沿って上下スライドする。
具体的には図5に示すように、両スライダー44・45用のガイド溝49・50の前後中心位置を、切換え調整体41の中心軸線P1より前側へ位置ずれさせて、中立状態において両スライダー44・45の連結穴53・54の中心を通る中心軸線P2が、中心軸線P1より前側で傾斜するようにした。このように、切換え調整体41の中心軸線P1と反力調整体42の中心軸線P2が前後にずらしてあると、切換え調整体41が連結穴53・54と係合した状態において、各スライダー44・45が切換え調整体41の側へ引寄せられるので、後側の復帰ばね46・47を圧縮変形させて両連結穴53・54を切換え調整体41に密着させることができる。また、各スライダー44・45が切換え調整体41の側(後側)へ引寄せられるのに伴って、せん断刃ユニット8は前後ずれが解消される側へ傾動する。従って、ユーザーは、せん断刃ユニット8が後へ傾動するのを目視することにより、せん断刃ユニット8に傾動反力が作用している状態であることを明確に知ることができる。
可動ロック体27が反力付与状態から切換えられて固定ロック体28と係合する際にも、せん断刃ユニット8を傾動させることができる。反力調整構造が高反力状態にあるときは、図7に示すように、せん断刃ユニット8の前後中心(中心軸線P2)は、切換え調整体41の中心軸線P1より後側に位置している。この状態から可動ロック体27を上昇させると、その上端前隅が固定ロック体28のガイド面57に接当する。このとき、ユニットフレーム12は復帰ばね46・47のばね力に抗しながら前向きに傾動し、最終的に可動ロック体27の上部が固定ロック体28と係合する。従って、ユーザーは、せん断刃ユニット8が前へ傾動するのを目視することにより、せん断刃ユニット8がロック状態に切換ったことを明確に知ることができる。
以上のように構成した電気かみそりによれば、操作具29(43)をスライド操作することにより、反力調整構造を待機状態と、低反力状態と、高反力状態に切換えることができる。従って、ひげ剃時には、ユーザーの好みで傾動反力が作用しない状態と、せん断刃ユニット8の傾動反力がソフトなタッチになる低反力状態と、ハードなタッチになる高反力状態に切換えて、せん断刃ユニット8の剃り心地を調整できるので、電気かみそりの使い勝手を向上できる。
高反力状態を越えて操作具29(43)を最上段位置まで上方スライド操作して、可動ロック体27を固定ロック体28に係合させると、ロック構造をロック状態に切換えて、せん断刃ユニット8を前後傾動不能にロック保持できる。このロック状態における可動ロック体27の上下は、固定ロック体28および出入口31で係合保持されており、さらに可動ロック体27の上下中途部が前段スライダー44と後段スライダー45によって係合保持されている。従って、外力が作用したとしてもせん断刃ユニット8が前後方向あるいは左右方向へ傾動することはなく、ロック状態を安定して保持し続けることができる。さらに、上記の実施例では、可動ロック体27が切換え調整体41を兼ね、ロック構造の操作具29が反力調整構造の操作具43を兼ねるようにするので、反力調整構造の構造を簡素化してコストを削減できる利点もある。
(実施例2) 図8ないし図12は、本発明に係る電気かみそりの実施例2を示す。実施例2に係る電気かみそりは、ロータリ型の電気かみそりとして構成してある点が実施例1の電気かみそりと異なり、さらにせん断刃ユニット8のロック構造、および反力調整構造
が実施例1の電気かみそりと異なっている。
図9に示すように、せん断刃ユニット8には横軸回りに回転駆動される内刃6が配置してあり、ユニットフレーム12の内部には、横置き配置したモーター3と、モーター3の回転動力を内刃6に伝動するギヤトレイン60が配置してある。内刃6の回転軸はユニットフレーム12の側枠16で回転自在に軸支してあり、2次電池4は本体ケース1の内部に配置してある。せん断刃ユニット8は、実施例1と同様に、本体ケース1の上部に設けた左右一対のユニット支持体9で前後傾動可能に支持してある。前後傾動可能なせん断刃ユニット8を中立位置へ復帰付勢するために、図8に示すように、ユニットフレーム12の側にばね受片58を設け、このばね受片58とユニット支持体9の前後壁の間に復帰ばね46を配置している。符号59は、ユニット支持体9に開口したばね受片58用の逃げ開口である。
図8ないし図12の各図において、ロック構造は、本体ケース1の内部に設けた可動ロック体27と、ユニットフレーム12に設けた固定ロック体28と、本体ケース1で回動自在に支持した操作具29と、操作具29の回動動作を往復動作に変換して可動ロック体27に伝えるリンク体61と、操作具29用の節度構造などで構成してある。可動ロック体27は上端が丸められた縦長の棒状体からなり、後述する切換え調整体41と共に本体ケース1に設けた前後一対のガイド枠62で上下スライド自在に支持してある。図10に示すように、固定ロック体28は、ユニットフレーム12の下面に形成した7個の円弧凹部からなり、せん断刃ユニット8を前後傾動させて、可動ロック体27と固定ロック体28の係合位置を異ならせることにより、せん断刃ユニット8を異なる傾動角度でロック保持できるようにしてある。
操作具29は、本体ケース1の一側外面に露出する操作ダイヤル64と、操作ダイヤル64と一体のダイヤル軸65を備えていて、反力調整構造用の操作具43を兼ねている。ダイヤル軸65の内端には連結ピン66が設けてあり、このピン66をリンク体61の下部に連結し、さらにリンク体61の上部を連結ピンを介して可動ロック体27と連結することにより、操作ダイヤル64の回転動作をリンク体61で上下動作に変換して、可動ロック体27に伝えるようにしている。操作ダイヤル64を、図10に示す待機状態から一定角度(30度)ずつ時計回転方向へ回動操作するごとに、操作ダイヤル64を停止保持するために節度構造を設けている。さらに、操作ダイヤル64の外面に、回転度合を表示する指標67を設けている。
節度構造は、ダイヤル軸65の周面下部に配置した板ばね製の節度アーム69と、ダイヤル軸65の周面に凹み形成した節度凹部70を備えており、節度アーム69の先端に、節度凹部70に落込み係合する節度突起71が一体に設けてある。この実施例では、4個の節度凹部70をダイヤル軸65の周面に形成して、操作ダイヤル64が一定角度だけ回転するごとに節度突起71が節度凹部70と係合して、操作ダイヤル64を自由回転不能に位置保持できるようにした。
反力調整構造は、本体ケース1のガイド枠62で上下スライド自在に支持した切換え調整体41と、ユニットフレーム12の下面に設けた反力調整体42とを備えている。先に説明した可動ロック体27は、切換え調整体41と一体に形成してある。また、切換え調整体41の上面には、反力調整体42と摩擦接合して傾動反力を発生する弾性アーム73が一体に設けてある。弾性アーム73は、切換え調整体41と一体に形成した弾性変形可能なリングからなり、図10に示す待機状態において、弾性アーム73の上面が反力調整体42に弱い力で外接している。反力調整体42は、せん断刃ユニット8の傾動中心を円弧中心とする円弧面で形成してある。上記のように実施例2では、可動ロック体27と切換え調整体41を別部材として形成した。
反力調整構造は操作具29を回動操作することにより、待機状態と、低反力状態と、高反力状態に切換えることができる。図10に示すのが待機状態であり、このときの切換え調整体41の弾性アーム73は、下突湾曲状の反力調整体42に弱い力で外接して、せん断刃ユニット8を中立位置に位置保持している。しかし、せん断刃ユニット8に弾性アーム73の弾性変形力を越える外力が作用した場合には、せん断刃ユニット8は前後いずれかへ傾動できる。待機状態から、操作ダイヤル64を30度回動すると、切換え調整体41が可動ロック体27と共に押上げ操作されるので、弾性アーム73は扁平な楕円形状に弾性変形して低反力状態に切換わり、弾性アーム73の弾性変形量に見合う傾動反力がせん断刃ユニット8に作用する。
低反力状態から操作ダイヤル64をさらに30度回動すると、反力調整構造は高反力状態に切換る。高反力状態においては、切換え調整体41が可動ロック体27と共にさらに押上げ操作されて、弾性アーム73がさらに扁平な楕円形状に弾性変形するため、低反力状態より大きな傾動反力がせん断刃ユニット8に作用する。なお、低反力状態と高反力状態においては、操作ダイヤル64に対して弾性アーム73の弾性変形に伴う反時計回転方向の回転モーメントが作用するが、節度アーム68は先の回転モーメントに抗して節度凹部70と節度突起71の係合状態を保持し続けるので、操作ダイヤル64が回動することはない。また、低反力状態と高反力状態においては、せん断刃ユニット8の傾動角度が大きくなるのに比例して、復帰ばね46の圧縮変形が大きくなるので、せん断刃ユニット8に作用する傾動反力は傾動度合に比例して増加する。
ロック構造は、図11に示すように、操作ダイヤル64を待機状態から高反力状態を越えて回動限界位置まで回動操作し、可動ロック体27の上部を固定ロック体28と係合させることによりロック状態に切換えることができる。このときの弾性アーム73は、高反力状態の弾性アーム73よりさらに扁平に弾性変形するが、高反力状態とロック状態との間の切換え調整体41の上下移動量は小さいので、弾性アーム73の弾性変形度合はごく僅かでしかない。固定ロック体28を7個設けているので、せん断刃ユニット8を中立位置において傾動不能にロック保持できるのはもちろん、中立位置の前方3個所、および後方3個所のそれぞれの傾動位置においてせん断刃ユニット8を傾動不能にロック保持でき、この点でも電気かみそりの使い勝手を向上できる。なお、操作ダイヤル64は、待機状態とロック状態において、図示していないストッパーで回動規制してあるので、操作ダイヤル64が前記各状態を越えて回動操作されることはない。
以上のように実施例2においては、操作具29を回動操作することにより、反力調整構造を待機状態と、低反力状態と、高反力状態に切換えて、せん断刃ユニット8の剃り心地を調整できるので、実施例1と同様に電気かみそりの使い勝手を向上できる。また、切換え調整体41が反力調整体42と摩擦接合して反力付与状態を維持するので、せん断刃ユニット8が前後傾動している状態であっても、操作ダイヤル64を回動操作して傾動反力を増加でき、従って、切断すべきひげの部位に応じてせん断刃ユニット8の傾動反力を大小に切換えてひげ切断を行える。他の構造は実施例1と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同じとする。
(実施例3) 図13ないし図17は、本発明に係る電気かみそりの実施例3を示す。実施例3に係る電気かみそりは、実施例1と同様に往復動型の電気かみそりとして構成してあり、せん断刃ユニット8のロック構造、および反力調整構造が、実施例1、2の電気かみそりと異なっている。
この実施例におけるロック構造は、受動カム体80の上面前部に設けた可動ロック体27と、可動ロック体27に対応してユニットフレーム12の下面に凹み形成した固定ロック体28と、操作具29およびカム構造などで構成してある。可動ロック体27は、後述する受動カム体80を介して本体ケース1で間接的に上下スライド自在に支持されている。
図13において操作具29は、本体ケース1に設けたガイド溝76で前後スライド自在に案内支持されており、操作具29の左右スライド動作をカム構造で上下動作に変換したのち、ロック構造および反力調整構造に伝えている。操作具29は、ガイド溝76の外に露出するスライドノブ77と、その内面に設けた丸軸状のローラー軸78と、ローラー軸78で回転自在に支持したカムローラー79を備えており、図13に示すように、ローラー軸78がガイド溝76の前端に位置する待機状態と、ローラー軸78がガイド溝76の後端に位置するロック状態との間を前後スライドできる。カム構造は、先のカムローラー79と、本体ケース1のガイド枠75で上下スライド自在に案内支持した板状の受動カム体80と、受動カム体80を待機位置へ向かって押下げ付勢するリターンばね81などで構成する。受動カム体80の下面には、カムローラー79が落込み係合する4個の係合凹部82と、前側の係合凹部82から後ろ側の係合凹部82へ向かって下り傾斜する3個のカム面83が形成してある。カム構造は、カムローラー79が各係合凹部82と落込み係合することで、節度構造と同等の節度機能を発揮する。
反力調整構造は、受動カム体80の上面に突設した棒状の切換え調整体41と、固定ロック体28の後側に隣接する状態でユニットフレーム12に形成した、上下に長い調整溝からなる反力調整体42を備えている。切換え調整体41は、せん断刃ユニット8の前後傾動に追随して弾性変形する縦長の弾性軸86と、弾性軸86の上端に設けられて反力調整体42の溝壁と係合する球状の受動軸部87とを備えている。
切換え調整体41が反力調整体42と係合したこと、および可動ロック体27が固定ロック体28と係合したことをユーザーに明確に知らせるために、切換え調整体41の中心軸線P1と反力調整体42の中心軸線P2を平行な状態で前後にずらしている。具体的には図13に示す待機状態において、切換え調整体41の中心軸線P1を反力調整体42の中心軸線P2より後側に位置させている。この状態における可動ロック体27と固定ロック体28は、大きな間隔を間にして上下に正対している。このように実施例3では、可動ロック体27と切換え調整体41を別部材として形成した。切換え調整体41の中心軸線P1は、切換え調整体41の移動ラインL1であって、切換え調整体41の中心は移動ラインL1に沿って上下スライドする。
スライドノブ77をスライド操作することにより、反力調整構造を待機状態と、低反力状態と、高反力状態に切換えることができる。さらに、スライドノブ77を高反力状態からさらにスライド操作することにより、ロック構造をロック状態に切換えることができる。図13に示すのが待機状態であり、このときの切換え調整体41の受動軸部87は出入口31の内部に位置しているので、せん断刃ユニット8は傾動軸18を中心にして自由に前後傾動でき、前後傾動時にせん断刃ユニット8に傾動反力が作用することはない。
待機状態からスライドノブ77を後向きにスライド操作すると、カム面83がローラー軸78でリターンばね81の付勢力に抗して押し上げ操作され、ローラー軸78が上から2番目の係合凹部82と係合して、受動カム体80および切換え調整体41が低反力状態に切換わる。低反力状態においては、図15に示すように、切換え調整体41の受動軸部87が反力調整体42の溝下部と係合する。受動軸部87が反力調整体42と係合する過程では、せん断刃ユニット8が、傾動軸18を中心にして反時計回転方向へ僅かに傾動して、先の中心軸線P1・P2の前後ずれを吸収する。従って、ユーザーは、せん断刃ユニット8が後へ傾動するのを目視することにより、せん断刃ユニット8に傾動反力が作用している状態であることを明確に知ることができる。低反力状態において、せん断刃ユニット8が前後いずれかへ傾動すると、切換え調整体41の弾性軸86が弾性変形して傾動反力を生じ、傾動反力はせん断刃ユニット8の傾動量に比例して増加する。
低反力状態からスライドノブ77を後向きにスライド操作すると、受動カム体80がローラー軸78で押し上げられ、ローラー軸78が上から3番目の係合凹部82と係合することにより、受動カム体80および切換え調整体41が高反力状態に切換わる。高反力状態においては図16に示すように、切換え調整体41の受動軸部87が、反力調整体42の上下中途部の溝壁と係合する。そのため、高反力状態の中立位置におけるせん断刃ユニット8は、低反力状態の中立位置より反時計回転方向へさらに傾動する。この係合状態において、せん断刃ユニット8が中立位置から前後いずれかへ傾動すると、切換え調整体41の弾性軸86が弾性変形して傾動反力を生じ、傾動反力はせん断刃ユニット8の傾動量に比例して増加する。
高反力状態において、弾性軸86を弾性変形させるのに必要な傾動力は、低反力状態に比べて大きくなる。高反力状態においては、低反力状態に比べて弾性軸86が反力調整体42の溝内へ深く差し込まれており、受動軸部87と反力調整体42の溝壁の係合位置が、低反力状態の両者42・87の係合位置より上側の高い位置にある。この状態で、せん断刃ユニット8が前後傾動し始めたときの傾動反力は比較的小さい。しかし、せん断刃ユニット8の傾動角度が増加すると、弾性軸86が湾曲状に変形して反力調整体42の溝壁に接当する。そのため、弾性軸86の変形応力は最も大きくなり、最も大きな変形反力を発揮して高反力状態を維持する。
高反力状態からスライドノブ77を後向きにスライド操作すると、図17に示すように、受動カム体80がローラー軸78で押し上げられ、ローラー軸78が最下段の係合凹部82と係合する。これに伴い、切換え調整体41は高反力状態を越えて上方移動し、可動ロック体27が固定ロック体28と係合して、ロック構造がロック状態に切換わる。先に説明したように、係合する前の可動ロック体27と固定ロック体28は前後に位置ずれしている。そのため、可動ロック体27と固定ロック体28が係合し始めるのに伴って、せん断刃ユニット8は傾動軸18を中心にして時計回転方向へ引寄せられ、その分だけ弾性軸86が前向きに弾性変形して、後向きの傾動反力を発揮する。
上記のように、切換え調整体41と反力調整体42が係合した状態のままで、可動ロック体27を固定ロック体28に係合すると、ユニットフレーム12は弾性軸86のばね力に抗して前側へ傾動する。従って、ユーザーは、せん断刃ユニット8が前へ傾動するのを目視することにより、せん断刃ユニット8がロック状態に切換ったことを明確に知ることができる。また、せん断刃ユニット8をロック保持した状態では、弾性軸86の弾性変形がユニットフレーム12に作用している。その結果、互いに係合する可動ロック体27と固定ロック体28、および切換え調整体41と反力調整体42を傾動反力で密着させて、ロック状態を安定した状態で維持できる。
以上のように実施例3おいては、操作具29をスライド操作することにより、反力調整構造を待機状態と、低反力状態と、高反力状態に切換えて、せん断刃ユニット8の剃り心地を調整できるので、実施例1と同様に電気かみそりの使い勝手を向上できる。また、低反力状態および高反力状態においては、切換え調整体41と反力調整体42が互いに係合しているので、せん断刃ユニット8が中立位置にある状態で、スライドノブ77をスライド操作して傾動反力を増減できる。
図18は、実施例3の一部を変更した別実施例を示す。そこでは、切換え調整体41の弾性軸86の基部に可動ロック体27を一体に設け、ロック状態において、可動ロック体27を反力調整体42の溝下部の固定ロック体28に係合させるようにした。このように、可動ロック体27を切換え調整体41と一体に設けると、固定ロック体28を別途設ける必要がないので、ユニットフレーム12の構造を簡素化できる。また、切換え調整体41と反力調整体42、および可動ロック体27と固定ロック体28の係合中心位置が同じ位置になるので、高反力状態からロック状態への切換えを円滑に行える。
(実施例4) 図19ないし図21は、本発明に係る電気かみそりの実施例4を示す。実施例4に係る電気かみそりは、実施例2と同様にロータリ型の電気かみそりとして構成してある点と、せん断刃ユニット8が左右傾動可能に支持してある点が実施例1の電気かみそりと異なる。また、実施例4では、切換え調整体41を兼ねる可動ロック体27をユニットフレーム12の側に設け、固定ロック体28および反力調整体42を本体ケース1の側に設けるようにした。
せん断刃ユニット8を左右傾動可能に支持するために、本体ケース1の前後面のそれぞれにユニット支持体9を設け、同支持体9に連結した左右一対のリンク90でユニットフレーム12の前後面を支持している。実施例2の電気かみそりと同様に、せん断刃ユニット8には横軸回りに回転駆動される内刃6が配置してあり、ユニットフレーム12の内部には、横置き配置したモーター3と、モーター3の回転動力を内刃6に伝動するギヤトレイン60が配置してある。
ロック構造は、実施例1で説明したロック構造と実質的に同じであるが、可動ロック体27および操作具29をユニットフレーム12の側に設け、固定ロック体28を本体ケース1の側に設ける点が異なる。同様に、反力調整構造は実施例1で説明したロック構造と実質的に同じであるが、切換え調整体41をユニットフレーム12の側に設け、反力調整体42を本体ケース1の側に設ける点が異なる。本体ケース1の上面には、切換え調整体41用の出入口31が開口してある(図20参照)。
反力調整体42は平板状のプラスチック成型品からなり、その板面中央に切換え調整体41と係合する連結穴53・54が上下貫通状に形成してある。反力調整体42は、上側の前段スライダー44と、下側の後段スライダー45からなり、両スライダー44・45はそれぞれ復帰ばね46・47で中立位置へ向かって移動付勢してある。この実施例における前段スライダー44および後段スライダー45は、図1で説明したスライダーとは異なり、それぞれガイド溝49・50で左右スライドのみ可能に案内支持してある。図20に示すように節度構造は、操作具29の側に設けた節度突起37と、ノブ溝32の上下4個所に凹み形成した4個の節度凹部38で構成してある。
反力調整構造は、操作具43(29)を上下スライド操作することにより、待機状態と、低反力状態と、高反力状態に切換えることができる。図19に示すように、待機状態における切換え調整体41は反力調整体42から分離しているので、せん断刃ユニット8は自由に左右傾動できる。待機状態から操作具43(29)を押下げ操作すると、図20に実線で示すように、切換え調整体41の下部が前段スライダー44の連結穴53と係合して低反力状態に切換る。低反力状態においてせん断刃ユニット8が左右傾動すると、左右の復帰ばね46のいずれか一方が圧縮変形されるので、せん断刃ユニット8には復帰ばね46の弾性変形量に見合う傾動反力が作用する。
低反力状態から操作具43(29)をさらに押下げ操作すると、図20に想像線で示すように、切換え調整体41の下部が、前段スライダー44と後段スライダー45の連結穴53・54と係合して高反力状態に切換る。高反力状態において、せん断刃ユニット8が左右傾動すると、上下一対の復帰ばね46・47が両スライダー44・45で圧縮変形されるので、せん断刃ユニット8には復帰ばね46・47の弾性変形量に見合う、より大きな傾動反力が作用する。高反力状態から操作具43(29)をさらに押下げ操作すると、図21に示すように、切換え調整体41の下部が固定ロック体28と係合してロック状態に切換る。
ロック状態の可動ロック体27の下端は、固定ロック体28で係合保持されており、さらに可動ロック体27の上下中途部が前段スライダー44と後段スライダー45で係合保持されている。つまり、せん断刃ユニット8がロック保持された状態においては、切換え調整体41と反力調整体42が係合して、せん断刃ユニット8をロック構造と協同して位置保持している。従って、外力が作用したとしてもせん断刃ユニット8が左右傾動することはなく、ロック状態を安定して保持し続けることができる。この実施例から理解できるように、切換え調整体41を兼ねる可動ロック体27はユニットフレーム12の側に設けることができ、固定ロック体28および反力調整体42は本体ケース1の側に設けることができる。
上記の実施例以外に、本発明はせん断刃ユニット8が全方位方向へ傾動可能に浮動支持してある電気かみそりにも適用できる。また、内刃6の駆動源はリニアモータであってもよい。実施例1の電気かみそりにおいては、切換え調整体41を待機状態と、低反力状態と、高反力状態と、ロック状態に切換えるようにしたがその必要はない。例えば、切換え調整体41が前段スライダー44の連結穴53と係合している状態を待機状態(低反力状態)として、以後、高反力状態と、ロック状態に切換わるようにしてもよい。また、実施例1の電気かみそりにおいては、前段スライダー44および後段スライダー45を係合要素にして反力調整体42を構成したが、両スライダー44・45のいずれか一方は省略することができる。その場合には、操作具29(43)を切換え操作することにより、切換え調整体41を待機状態と、反力付与状態と、ロック状態に切換えることができる。さらに、前段スライダー44および後段スライダー45に加えて第3のスライダーを設けて、せん断刃ユニット8に作用する傾動反力を多様化することができる。