以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1および図2を参照して、本実施形態に係る自動二輪車1(鞍乗型車両)について説明する。ここで、図1は自動二輪車1を示す側面図である。図2は自動二輪車1の車体フレーム2等を示す斜視図である。なお、以下の説明では、自動二輪車1に搭乗したライダーを基準に各方向を設定し、各図に適宜方向を示すこととする。
図1に示すように、スクーター型の自動二輪車1は、車体フレーム2と、エンジン3と、車体カバー4と、を備えて概略構成されている。
車体フレーム2は、鋼材またはアルミニウム合金材等から成る中空円筒状の複数のチューブを溶接して構成されている。車体フレーム2は、ヘッドパイプ10と、ダウンチューブ11と、メインチューブ12と、左右一対のサイドチューブ13と、を有している。
ヘッドパイプ10は、左右一対のフロントフォーク14を左右操舵可能に支持している。フロントフォーク14の下部には、前輪15が回転可能に支持されている。フロントフォーク14の上部には、ハンドルバー16が設けられている。
図1および図2に示すように、ダウンチューブ11は、ヘッドパイプ10から略下方に延出し、下部を後側に向けて湾曲させている。メインチューブ12は、ダウンチューブ11の湾曲した下端部から後方に延設されている。メインチューブ12の後端部には、左右方向(車両の幅方向)に延びるクロスチューブ12aが接続されている。なお、メインチューブ12は、ダウンチューブ11と一体に形成されている。
左右一対のサイドチューブ13は、それぞれ、クロスチューブ12aの左右両端部から後上方に傾斜して延設されている。左右一対のサイドチューブ13の間には、第1ブリッジチューブ13aと、第2ブリッジチューブ13bと、第3ブリッジチューブ13cと、が架設されている。
第1ブリッジチューブ13aは、各サイドチューブ13の前側下部に設けられている。第1ブリッジチューブ13aは、平面視で前方に突出する略U字状に形成されている。第2ブリッジチューブ13bは、各サイドチューブ13の前後方向中間部に設けられ、第3ブリッジチューブ13cは、各サイドチューブ13の後端部に設けられている。第2ブリッジチューブ13bおよび第3ブリッジチューブ13cは、それぞれ、左右方向に延びる略直線状に形成されている。各サイドチューブ13と第2ブリッジチューブ13bとの接続部分近傍には、ブラケット18が下側に向けて延設されている。
第1ブリッジチューブ13aと第2ブリッジチューブ13bとの間には、ヘルメットや手荷物等を収納するヘルメットボックス20が架設されている。ヘルメットボックス20の後方には、燃料タンク21が設けられている。燃料タンク21は、後述するリアフェンダー36上に配置されている。左右一対のサイドチューブ13の上側には、ライダーが着座する着座シート22が配置されている。着座シート22は、前端部を支点に回動可能に構成され、ヘルメットボックス20および燃料タンク21の蓋の役割を担っている。
図1に示すように、エンジン3は、シリンダー(図示せず)と、クランクケース25と、変速機ケース26と、を有している。
エンジン3(クランクケース25)は、メインチューブ12の後端部にスイングピボット(図示せず)を介して上下方向に揺動可能に連結されている。変速機ケース26の内部には、ベルト式無段変速機等の動力伝達装置(図示せず)が設けられている。変速機ケース26の後端部には、駆動輪としての後輪27が回転可能に支持されている。変速機ケース26と左側のサイドチューブ13との間には、ショックアブソーバー28が架設されている。エンジン3は、変速機ケース26をスイングアームとして機能させる所謂ユニットスイング式エンジンとして構成されている。
エンジン3のシリンダーには、吸気ポートおよび排気ポート(いずれも図示せず)が形成されている。吸気ポートには、スロットルボディ(図示せず)を介してエアークリーナー(図示せず)が接続されている。スロットルボディは、燃料タンク21から供給される燃料を吸気通路に噴射するインジェクター(図示せず)を有している。排気ポートには、排気管(図示せず)を介して排気マフラー(図示せず)が接続されている。エンジン3の点火機構、燃焼系統(インジェクター等)および吸排気系統等は、電装部品としてのECU38(Electronic Control Unit)によって制御されている。
車体カバー4は、車体フレーム2に取り付けられて自動二輪車1の主要な外観を構成している。車体カバー4は、ハンドルカバー30と、フロントカウル31と、ステップボード32と、シートカウル33と、を有している。なお、車体カバー4の各部は、例えば、樹脂材料等によって射出成形されている。
ハンドルカバー30は、ハンドルバー16を覆うように設けられている。フロントカウル31は、ヘッドパイプ10およびダウンチューブ11を覆うように設けられている。フロントカウル31は、着座シート22に着座したライダーの脚部を保護するために設けられている。
ステップボード32は、メインチューブ12を覆うように設けられている。ステップボード32は、フロントカウル31の下端から後側に向けて略平坦に延設されている。着座シート22に着座したライダーは、ステップボード32上に両足を載置する。
シートカウル33は、ヘルメットボックス20の周囲を覆うように配置され、各サイドチューブ13に固定されている。シートカウル33の後方には、ブレーキランプ35が取り付けられている。ブレーキランプ35の下方には、後輪27の上方を覆うリアフェンダー36が設けられている。
以下、図3ないし図7を参照して、リアフェンダー36およびその周辺の構造(ECU38の取付構造)について説明する。図3はリアフェンダー36を示す上方斜視図である。図4はリアフェンダー36を示す下方斜視図である。図5はリアフェンダー36の装着部53およびECU38を示す斜視図である。図6はマッドガード37を示す正面図である。図7はマッドガード37を示す側面図である。図8はリアフェンダー36およびマッドガード37を示す上方斜視図である。
自動二輪車1の後部には、リアフェンダー36と、マッドガード37と、ECU38と、が設けられている(図8参照)。マッドガード37は、後輪27の前方においてリアフェンダー36から垂下するように取り付けられる。ECU38は、マッドガード37の前方に位置するリアフェンダー36の前側部分に形成される装着部53に着脱可能に設けられる。つまり、ECU38は、マッドガード37とリアフェンダー36の重なり部分の前側に着脱可能に設けられる。
図3に示すように、リアフェンダー36は、フェンダー支持部分40と、フェンダー後側部分41と、フェンダー前側部分42(前側部分)と、を有している。フェンダー支持部分40は、後輪27の直上に配設されている。フェンダー後側部分41は、フェンダー支持部分40の後端部から後下方に延出し、後輪27の後上方を覆っている。フェンダー前側部分42は、フェンダー支持部分40の前端部から前下方に延出し、後輪27の前上方を覆っている。つまり、リアフェンダー36は、側面視で略アーチ状に形成されている。なお、リアフェンダー36は、例えば、射出成形技術によって樹脂材料で一体形成されている。リアフェンダー36は、所謂ヒケ(成形収縮によって生じる窪み)を防止するために、略同一の厚みになるように形成されている。
フェンダー支持部分40は、下段支持面部43と、上段支持面部44と、を有している。下段支持面部43は、略板状に形成されている。上段支持面部44は、下段支持面部43の後端部から一段上がった位置に形成されている。
下段支持面部43の上面には、燃料タンク21を配置するためのタンク配置部45が凹設されている。下段支持面部43の左右方向中央部には、凸条部46が上側に向けて膨出している。凸条部46は、後輪27の上側の輪郭に沿って形成されている。すなわち、凸条部46は、タンク配置部45を含む下段支持面部43を前後方向に縦断するように形成されている。正確には、凸条部46は、フェンダー前側部分42まで延設されている(詳細は後述する)。下段支持面部43の前寄りで凸条部46の左側には、ショックアブソーバー28の上端部を挿通させるための連通穴43aが形成されている。
下段支持面部43の前側には、左右一対の支持片47が上側に向けて延設されている。左右一対の支持片47は、下段支持面部43の左右両端部に沿って配置されている。各支持片47には、貫通穴47aが左右方向に貫通して形成されている。また、下段支持面部43の前端部で左右両側には、嵌合穴H1および嵌合穴H2が上下方向に貫通形成されている。一方、下段支持面部43の後側には、左右一対の貫通穴43bが上下方向に貫通して形成されている。
上段支持面部44の左右方向中央部には、略箱状の係合部44aが上側に向けて膨出している。係合部44aの内部は空洞になっており、その後面は開放されている(図示せず)。上段支持面部44の前端部で左右両端部には、それぞれ、突出片44bが形成されている。各突出片44bには、ネジ穴44cが前後方向に形成されている。
フェンダー後側部分41は、フェンダー支持部分40の上段支持面部44の後端部から後下方に向けて延設されている。フェンダー後側部分41は、上部から下部に向けて左右方向の幅が漸次狭くなるように形成されている。フェンダー後側部分41の後面で上下方向中間部には、ライセンスプレート(図示せず)を取り付けるためのプレート取付部41aが形成されている。プレート取付部41aの上側には、ライセンスランプ取付部41bが後方に膨出するように形成されている。ライセンスランプ取付部41bには、ライセンスプレートを照らすライセンスランプ(図示せず)が配置される。
図3および図4に示すように、フェンダー前側部分42は、フェンダー支持部分40の下段支持面部43の左側を除いて、下段支持面部43の前端部から下方に延設されている。つまり、フェンダー前側部分42は、左側を切り欠かれたような形状を成している。フェンダー前側部分42は、上記した凸条部46の前部となる凸条前部50と、前壁部51と、側壁部52と、を有している。
凸条前部50は、前側に向けて膨出する略半円筒状に形成され、凸条部46の前端面を構成している。凸条前部50の下端左側には、フランジ部50aが前側に向けて延設されている。凸条前部50の下端右側には、延出片部50bが下側に向けて延設されている。フランジ部50aと延出片部50bとは、連結リブ50cによって接続されている。フランジ部50aの左角部には、嵌合穴H3が上下方向に貫通形成されている。延出片部50bの下部には、嵌合穴H4が前後方向に貫通形成されている。
前壁部51は、凸条前部50の右側において前側に向けて下り勾配に形成されている。前壁部51は、装着部53と、上側前面部56と、右側前面部57と、を有している。
装着部53は、後輪27の左右方向中央から右側にずれた位置に形成されている。装着部53は、当接面部54と、保持部55と、を有している。当接面部54は、ECU38の後面を支持する。保持部55は、当接面部54に支持されたECU38を保持する(図5参照)。
当接面部54は、正面視で略矩形に形成されている。当接面部54は、左側から右側に向けて順に、第1当接面部54aと、第2当接面部54bと、第3当接面部54cと、を有している。第1当接面部54aは、当接面部54の略左側半分を構成している。第2当接面部54bと第3当接面部54cとは、当接面部54の略右側半分を構成している。第2当接面部54bと第3当接面部54cとは、略同一の左右幅を有している。
第2当接面部54bは、段差を介して第1当接面部54aの右端部に連結され、第1当接面部54aよりも後方に位置している。第3当接面部54cは、段差を介して第2当接面部54bの右端部に連結され、第2当接面部54bよりも後方に位置している。つまり、当接面部54の前面および後面は、階段状に形成されている。
上側前面部56は、段差を介して当接面部54の上端部に連結され、第3当接面部54cよりも後方に位置している。また、右側前面部57は、当接面部54(第3当接面部54c)の右側に連設されている。右側前面部57の右端下部には、下側に向けて膨出する膨出部57aが形成されている(図4参照)。膨出部57aには、嵌合穴H5が上下方向に貫通形成されている(図4参照)。
図5に示すように、保持部55は、下側抜け止めリブ60と、左側ガイドリブ61と、保持突起62と、左右一対の保持片部63と、を有している。
下側抜け止めリブ60は、略平板状に形成され、当接面部54と右側前面部57との下端部から前上側に向けて延設されている。下側抜け止めリブ60は、第3当接面部54cの右側で、上方に突出するように略矩形状に折り曲げられた屈曲部60aを有している。左側ガイドリブ61は、略平板状に形成され、第1当接面部54aの左端部から前上側に向けて延設されている。左側ガイドリブ61の下端部は、下側抜け止めリブ60の左端部に接続されている。
保持突起62は、当接面部54の上端部で左右方向略中央に形成されている。保持突起62は、当接面部54の上端部から前上側に向けて突設されている。
左右一対の保持片部63は、当接面部54の前側に空隙を挟んで対向し、左右方向に並設されている。各保持片部63は、爪板部64と、保持リブ65と、を有している。
各爪板部64は、下側抜け止めリブ60の上端部から後上側に向けて片持ち状に延設されている。各爪板部64は、当接面部54の上下方向略中央まで延出している。各爪板部64は、当接面部54に対し略平行となる略板状に形成されている。各爪板部64は、下側抜け止めリブ60との接続部分を支点として、前後方向に弾性変形するように形成されている。各爪板部64は、その上端部を当接面部54側に略直角に折り曲げて構成される屈曲爪64aを有している。
各保持リブ65は、爪板部64の前面に立設され、爪板部64と共に前後方向に弾性変形するように形成されている。各保持リブ65は、下側抜け止めリブ60の上端部から後上側に向けて延設されている。各保持リブ65の上端部は、爪板部64の上端部(屈曲爪64a)よりも上方に延設されている。また、各保持リブ65の上端部は、下側から上側に向けて当接面部54から離れる方向に傾斜するガイド部65aを構成している。
ところで、リアフェンダー36を射出成形する際に、保持部55(保持突起62や各保持片部63等)は、アンダーカット形状となる。そこで、リアフェンダー36は、スライドコア等の既存の金型加工技術を用いて一体成形される。具体的には、保持部55を成形する金型の一部は、当接面部54を下側から上側に向けて貫通する。このため、金型を引き抜くと、当接面部54には、複数の貫通穴66a〜66cが開口することとなる。
図3および図4に示すように、当接面部54には、保持突起62と各保持片部63とに対応して3つの貫通穴66a〜66cが開口している。1つの貫通穴66aは、保持突起62の下端部から当接面部54の略中央までの間で、略矩形状に形成されている。この貫通穴66aは、第1当接面部54aと第2当接面部54bとに亘る範囲に形成されている。他の2つの貫通穴66b,66cは、左右一対の保持片部63の下部に対向する位置に形成されている。左下の貫通穴66bは、第1当接面部54aに形成され、右下の貫通穴66cは、第2当接面部54bと第3当接面部54cとに亘る範囲に形成されている。なお、左下の貫通穴66bは、右下の貫通穴66cよりも大きく形成されている。
フェンダー前側部分42の側壁部52は、右側前面部57の右端部から前側に向けて延設されている。側壁部52の上端部には、フランジ部52aが右側に向けて延設されている。フランジ部52aは、前後方向に延び、下段支持面部43の上面と同一平面を構成している。フランジ部52aの前部には、嵌合穴H6が上下方向に貫通形成されている。
図4に示すように、リアフェンダー36は、下面から垂れ下がる止水リブ67を有している。止水リブ67は、後輪27(図4では図示せず)と装着部53との間に設けられている。止水リブ67は、凸条部46の右側に沿って前後方向に延設されている。止水リブ67は、側面視で略半楕円形の板状に形成されている。止水リブ67の前端部は、上側前面部56の後面の左側に接続されている。
次に、図6および図7を参照して、マッドガード37について説明する。マッドガード37は、例えば、合成ゴム等の可撓性を有する材料によって一体形成されている。マッドガード37は、フェンダー前側部分42に接続できるように、第1板部37a〜第5板部37eを連設した複雑な形状を有している。
第1板部37aは、正面視で略正方形の板状に形成されている。第2板部37bは、側面視で第1板部37aと略同一高さとなる細長い略矩形板状に形成されている。第2板部37bは、第1板部37aの右端部に接続され、前後方向に延設されている。第3板部37cは、正面視で上下方向に長い略矩形板状に形成されている。第3板部37cの左上端部は、第2板部37bの下端部に接続されている。第3板部37cは、平面視で前側に向けて右方に傾斜するように形成されている。
第4板部37dは、多角形板状に形成され、第3板部37cの右端部から右側に向けて延設されている。第4板部37dの下端部には、左右方向中間部分から下方に延出する延出片70が形成されている。一方、第4板部37dの上端部には、左右方向中間部分から上方に延出する止水面部71が形成されている。
止水面部71は、左側から右側に向けて順に、第1止水面部71aと、第2止水面部71bと、第3止水面部71cと、を階段状に連結して形成されている。止水面部71は、上記した装着部53の当接面部54と略同様の段差形状を有している。第1止水面部71aの左端部には、左側面リブ71dが前側に向けて延設されている。
止水面部71の上側には、上側密接面部72が形成されている。上側密接面部72は、段差を介して止水面部71の上端部に連結され、第3止水面部71cよりも僅かに後方に位置している。上側密接面部72の右端部には、右側面リブ72aが前側に向けて延設されている。
第5板部37eは、側面視で略矩形板状に形成されている。第5板部37eは、第4板部37dの右端部から前側に向けて延設されている。
第1板部37aの上端部で左右方向略中央には、前側に向けて延出する突出片73が形成されている。突出片73の上面には、略円錐形の矢尻状に形成される係止突起A1が立設されている。第4板部37dの上側密接面部72の上端部には、後側に向けて延出するフランジ部74が形成されている。フランジ部74の左側上面には、係止突起A1と同じ形状の係止突起A2が立設されている。なお、上側密接面部72の背面には、上側密接面部72とフランジ部74とを接続する3つの補強リブ80が形成されている。
第3板部37cと第4板部37dとの上端部には、前側に向けて延出するフランジ部75が形成されている。フランジ部75は、第3板部37cと第4板部37dとに亘る範囲に形成されている。フランジ部75の左側上面には、係止突起A3が立設されている。第4板部37dの中央付近には、略直方体状に膨出する膨出部76が形成されている。膨出部76の前面には、係止突起A4が立設されている。また、第4板部37dの右端上部には、後側に向けて延出する突出片77が形成されている。突出片77の上面には、係止突起A5が立設されている。第5板部37eの上端部には、突出片78が右側に向けて延設されている。突出片78の上面には、係止突起A6が立設されている。なお、係止突起A3〜A6は、係止突起A1(A2)と同一形状に形成されている。
次に、図5を参照して、ECU38について簡単に説明する。ECU38は、略直方体状のケース38aに制御基板等(図示せず)を内蔵して構成されている。ケース38aは、制御基板を保護するために防水構造を備えている。ケース38aの一端面には、ハーネス(図示せず)を電気的に接続するためのカプラ部38bが一体形成されている。なお、図示は省略するが、ケース38aの背面は、カプラ部38bを右側に向けた姿勢で、当接面部54に対応するように階段状に形成されている。
次に、図8および図9を参照して、ECU38の取付構造の構築手順について説明する。図9はリアフェンダー36およびマッドガード37を示す下方斜視図である。
まず、作業者は、リアフェンダー36にマッドガード37を取り付ける。作業者は、リアフェンダー36のフェンダー前側部分42の後下側にマッドガード37を配置し、各嵌合穴H1,H2,H3,H5,H6に各係止突起A1,A2,A3,A5,A6を下側から進入させて係止させる。続いて、作業者は、嵌合穴H4に係止突起A4を後側から進入させて係止させる。なお、各係止突起A1〜A6は、弾性変形して各嵌合穴H1〜H6を通過し、各嵌合穴H1〜H6を貫通した後に復元して抜け止め状態で係止される。
この状態で、マッドガード37の第1板部37aは、リアフェンダー36のフェンダー前側部分42の左側を閉鎖するように配置される。第1板部37aの突出片73は、フェンダー支持部分40の下段支持面部43の前端下面に密着する。マッドガード37の第2板部37bは、フェンダー前側部分42の凸条前部50の左側に密着する。これにより、回転する後輪27によって跳ね上げられる水等は、第2板部37bに衝突し、第2板部37bに沿って流れて落下する。マッドガード37の第3板部37c等に形成されたフランジ部75は、フェンダー前側部分42のフランジ部50aの下面に密着する。これにより、回転する後輪27によって跳ね上げられる水等は、凸条前部50に沿って流れ落ちると共に、凸条前部50に連続する第3板部37cに沿って流れて落下する。マッドガード37の第4板部37d等に形成された膨出部76は、フェンダー前側部分42の延出片部50bの後面に密着する。
また、マッドガード37の止水面部71は、フェンダー前側部分42の装着部53に形成された当接面部54の後面に密着する。つまり、マッドガード37は、当接面部54に開口した各貫通穴66a〜66cを塞ぐようにリアフェンダー36に取り付けられる。止水面部71の左側面リブ71dは、装着部53の左側ガイドリブ61の左側面に密接する。後輪27に対して左側ガイドリブ61の反対側に左側面リブ71dが配置されるため、左側ガイドリブ61の止水効果に加えて、左側ガイドリブ61と左側面リブ71dとの間から侵入する水を抑制することができる。これにより、ECU38の防水性能を高く維持することができる。また、マッドガード37の上側密接面部72は、フェンダー前側部分42の上側前面部56の後面に密着する。上側密接面部72のフランジ部74は、フェンダー支持部分40の下段支持面部43の前端下面に密着する。装着部53の上方となるマッドガード37の上端縁は、後輪27の反対側となる止水リブ67の右側であって、止水リブ67の下端よりも高い位置まで延びている。このため、回転する後輪27によって跳ね上げられて流れ落ちる水等は、マッドガード37の上端縁に到達することがない。このように、下段支持面部43の前端下面に密着させることで、更に、水等の侵入を抑制することができる。また、上側密接面部72の右側面リブ72aは、フェンダー前側部分42の上側前面部56の右側面に密着する。これにより、左側ガイドリブ61と左側面リブ71dとの関係と同様に、上側前面部56の右側面と右側面リブ72aとの間から侵入する水を抑制することができ、ECU38の防水性能を高く維持することができる。以上のように、左側ガイドリブ61、上側密接面部72、フランジ部74および右側面リブ72aは、各貫通穴66a〜66cを閉鎖した止水面部71の周りを囲むように配置されている。そして、マッドガード37の上端縁が後止水リブ67の下端よりも高い位置であるため、効果的に水等の侵入を抑制することができる。
マッドガード37の第4板部37dに形成された突出片77は、フェンダー前側部分42の膨出部57aの下面に密着する。マッドガード37の第5板部37eに形成された突出片78は、フェンダー前側部分42の側壁部52に形成されたフランジ部52aの下面に密着する。
以上によって、マッドガード37は、リアフェンダー36の前部から垂れ下がるように取り付けられる。
次に、図3および図5を参照して、リアフェンダー36にECU38を取り付ける手順について説明する。
ECU38は、カプラ部38bを右側に向けた姿勢で、上方から装着部53に装着される。作業者は、装着部53の上側に配置したECU38のケース38aを前下側に向けて移動させる。ECU38(ケース38a)は、保持突起62を乗り上げ、ケース38aの後面は、保持突起62に摺接する。また、ケース38aの後側下部は、当接面部54に摺接し、ケース38aの左側面は、左側ガイドリブ61に摺接する。ECU38は、当接面部54および左側ガイドリブ61に案内されて下方に移動して行く。
ECU38の移動が進むと、ケース38aの前側下部は、各保持片部63のガイド部65aに当接する。ケース38aは、各ガイド部65aを下方に摺動することで、各保持片部63を前方に変位させる。更にECU38の移動が進むと、各爪板部64の屈曲爪64aが、ケース38aの前面に当接する。ケース38aは、各屈曲爪64aと当接面部54との間に挟まれた状態で更に下方に移動する。
ケース38aは、保持突起62を完全に乗り越えると共に左側ガイドリブ61と屈曲部60aとの間に入り込む。そして、ケース38aの下端面は、下側抜け止めリブ60に当接する。これにより、ECU38は、装着部53に装着される(図5参照)。この状態で、保持突起62は、ECU38の上端面に係合する。また、左右一対の保持片部63は、自身の弾性力によってECU38を当接面部54に向けて付勢する。
次に、ECU38を装着したリアフェンダー36およびマッドガード37(以下、「リアフェンダー36等」という。)は、後輪27の上方を覆うように左右一対のサイドチューブ13に取り付けられる。具体的には、図9に示すように、作業者は、外側からフェンダー支持部分40に形成された各支持片47の貫通穴47aにボルトB1を挿入する。各ボルトB1は、各サイドチューブ13のブラケット18に形成されたネジ穴18aに螺合する。また、図8に示すように、作業者は、下側からフェンダー支持部分40に形成された各貫通穴43bにボルトB2を挿入する。各ボルトB2は、各サイドチューブ13に形成されたブラケットのネジ穴(図示せず)に螺合する。
以上によって、リアフェンダー36等は、左右一対のサイドチューブ13に支持される。なお、作業者は、ECU38のカプラ部38bにエンジン3等から延びるハーネスを接続する。ECU38はエンジン3に近い位置に設けられるため、ハーネスの長さを短くすることができる。
なお、詳細な説明は省略するが、車体カバー4のシートカウル33とブレーキランプ35とは、互いに接合された部組状態で各サイドチューブ13等に固定される。このとき、ブレーキランプ35に形成された係合片(図示せず)が、フェンダー支持部分40(上段支持面部44)の係合部44aに進入する。これにより、部組されたシートカウル33等とリアフェンダー36等とは、互いに位置決めされる。また、ブレーキランプ35は、上段支持面部44の各突出片44bに形成されたネジ穴44cに対してネジ留め固定される。
以上説明した本実施形態に係る自動二輪車1のECU38の取付構造によれば、マッドガード37は、後輪27側から当接面部54に当接し、保持部55を成形する際に開口される各貫通穴66a〜66cを閉鎖するように構成されている。ECU38は、各貫通穴66a〜66cを塞がれた装着部53に保持される。したがって、ECU38は、装着部53に装着するだけで、マッドガード37によって防水された状態になる。これにより、簡単且つ迅速にECU38が防水された状態を構築することができる。また、マッドガード37は、リアフェンダー36に取付可能な既製品を使用することができるため、ECU38を覆うような防水対策専用のマッドガードを用意する必要がない。さらに、マッドガード37とECU38とは、互いに干渉しない位置に設けられるため、例えば、ECU38の設計変更があった場合でも、マッドガード37を設計変更する必要がない。これらにより、マッドガード37の製造コストを抑制することができる。
また、本実施形態に係る自動二輪車1のECU38の取付構造によれば、後輪27の回転によって跳ね上げられる水等(後輪27の径方向に飛翔する水等)は、止水リブ67に衝突し、止水リブ67に沿って流れて落下する。これにより、装着部53に保持されたECU38に向かう水等の飛散を抑制することができ、ECU38の防水性能を高く維持することができる。また、ECU38は、カプラ部38bを後輪27の反対側に向けた姿勢でリアフェンダー36に取り付けられているため、飛散した水等がECU38に接触することを抑制することができる。
また、本実施形態に係る自動二輪車1のECU38の取付構造によれば、各ガイド部65aが下部から上部に向けて拡開しているため、ECU38は、当接面部54と各保持片部63(爪板部64)との間に容易に進入することができる。これにより、装着部53に対するECU38の装着作業を円滑に行うことができる。また、ECU38は、保持突起62と各保持片部63とによって、装着部53に装着された状態に維持される。
なお、本実施形態に係るリアフェンダー36の装着部53は、1つの保持突起62と、2つの保持片部63と、を備えていたが、本発明はこれに限定されない。保持突起62および保持片部63は、それぞれ、1つ以上形成されていればよい。なお、保持突起62および保持片部63は、ECU38のカプラ部38bに設けないことが好ましい。高度な防水性を必要とするカプラ部38bの近傍に貫通穴を開口させないためである。
なお、本実施形態に係るリアフェンダー36の装着部53は、車両に右側に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。装着部53は、リアフェンダー36の前部に設けられていればよく、例えば、車両の中央や左側に設けられていてもよい。有効な防水効果を得たい場合、装着部53は、後輪27の中心よりも左右方向にずれた位置に設けられていることが好ましい。
なお、マッドガード37によって防水性能を確保できるのであれば、止水リブ67は省略してもよい。
なお、本実施形態の説明では、一例として、本発明を自動二輪車1に適用した場合を示したが、これに限らず、例えば、四輪車等の鞍乗型車両に対して本発明を適用してもよい。
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る鞍乗型車両の電装部品の取付構造における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施態様に限定されるものではない。上記実施形態における構成要素は、適宜、既存の構成要素等との置き換えや組み合わせが可能であって、上記実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。