以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
[インクジェット記録装置の構成例]
図1はインクジェット記録装置の構成例を示す外観斜視図である。インクジェット記録装置10は、シリアル式インクジェットプリンタの一例であり、紫外線硬化型インクを用いて記録媒体12にカラー画像を記録するワイドフォーマットプリンタである。ただし、発明の適用に際して、インクジェット記録装置の形態は本例に限定されない。
インクジェット記録装置10は、装置本体20と、装置本体20を支持する支持脚22とを備えている。装置本体20には、記録ヘッド24と、プラテン26と、ガイド機構28と、キャリッジ30とが設けられている。
記録ヘッド24は、記録媒体12に向けてインクを吐出するドロップオンデマンド型のインクジェットヘッドである。「記録ヘッド」という用語は、印刷ヘッド、印字ヘッド、プリントヘッド、描画ヘッド、インク吐出ヘッド、液体吐出ヘッド、液滴吐出ヘッド、又は、液滴噴射ヘッドなどの用語と同義である。また、「インクジェット記録装置」という用語は、インクジェット印刷装置、インクジェット印刷機、インクジェットプリンタ、又は、インクジェット式画像形成装置などの用語と同義である。「記録」は、印刷、印字、プリント、描画、又は、画像形成の意味を包括する用語として用いる。
記録媒体12には、紙、不織布、塩化ビニル、合成化学繊維、ポリエチレン、ポリエステル、又はターポリンなど材質を問わず、様々な媒体を用いることができる。記録媒体12は、浸透性媒体であってもよいし、非浸透性媒体であってもよい。「記録媒体」という用語は、インクが付着される媒体の総称であり、印字媒体、被記録媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体、プリントメディア、記録用紙、又は、印刷用紙など様々な用語で呼ばれるものが含まれる。なお、本明細書で「用紙」という用語は、「記録媒体」と同義の意味で用いる。
プラテン26は、記録媒体12を支持する部材である。ガイド機構28及びキャリッジ30は、記録ヘッド24を移動可能に支持するヘッド移動手段として機能する。ガイド機構28は、プラテン26の上方において、記録媒体12の搬送方向と交差する方向であって、かつプラテン26の媒体支持面と平行な方向であるヘッド走査方向に沿って延在して配置されている。プラテン26の上方とは、重力方向を「下方」として、プラテン26よりも上側の高い位置であることを意味する。記録媒体12の搬送方向を「用紙送り方向」と呼ぶ場合がある。また、用紙送り方向と直交する方向であって、かつ記録媒体12の記録面に平行な方向を「用紙幅方向」と呼ぶ場合がある。
キャリッジ30は、ガイド機構28に沿って用紙幅方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ30の往復移動方向と平行な方向が「主走査方向」に相当する。また、記録媒体12の搬送方向と平行な方向が「副走査方向」に相当する。つまり、用紙幅方向が主走査方向、用紙送り方向が副走査方向である。図1において、副走査方向をX方向と表記し、主走査方向をY方向と表記している。
キャリッジ30には、記録ヘッド24と、仮硬化光源32A,32Bと、本硬化光源34A,34Bとが搭載されている。記録ヘッド24と、仮硬化光源32A,32Bと、本硬化光源34A,34Bとは、ガイド機構28に沿ってキャリッジ30と共に一体的に移動する。キャリッジ30をガイド機構28に沿って主走査方向に往復移動させることにより、記録ヘッド24を記録媒体12に対して主走査方向に相対移動可能である。
仮硬化光源32A,32Bは、記録媒体12上に着弾したインクを仮硬化させるための紫外線を照射する。仮硬化とは、打滴直後のインク滴の移動や変形を阻止する程度に、インクを部分的に硬化させることをいう。仮硬化の工程は、「部分硬化」、「半硬化」、「ピニング(pinning)」或いは「セット(set)」などと呼ばれる場合がある。本明細書では「仮硬化」という用語を用いる。
一方、仮硬化後に、さらなる紫外線照射を行い、インクを十分に硬化させる工程は「本硬化」或いは「キュアリング(curing)」と呼ばれる。本明細書では、「本硬化」という用語を用いる。本硬化光源34A,34Bは、仮硬化後に追加露光を行い、最終的にインクを完全に硬化(すなわち、本硬化)させるための紫外線を照射する光源である。
装置本体20には、インクカートリッジ36を取り付けるための取り付け部38が設けられている。インクカートリッジ36は、紫外線硬化型インクを貯留する交換自在なインクタンクである。インクカートリッジ36は、インクジェット記録装置10で使用される各色のインクに対応して設けられている。本例のインクジェット記録装置10は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及び黒(K)の4色のインクを用いる構成である。色別の各インクカートリッジ36は、それぞれ独立に形成された不図示のインク供給経路によって記録ヘッド24に接続される。各色のインク残量が少なくなった場合にインクカートリッジ36の交換が行われる。
なお、図示を省略するが、装置本体20の正面に向かって右側には、記録ヘッド24のメンテナンス部が設けられている。メンテナンス部は、非印字時における記録ヘッド24の保湿やノズル吸引のためのキャップと、記録ヘッド24のインク吐出面であるノズル面を清掃するための払拭部材が設けられている。払拭部材には、ブレード及び/又はウエブを用いることができる。
[記録媒体搬送路の構成]
図2はインクジェット記録装置10の記録媒体搬送路を模式的に示す模式図である。図2に示すように、プラテン26は、その上面が記録媒体12の支持面となる。プラテン26の位置に対して、用紙送り方向の上流側にニップローラ40が配設されている。
本例の記録媒体12は、ロール状に巻かれた連続用紙(巻取紙ともいう。)の形態で供給される。供給側のロール42から送り出された記録媒体12は、ニップローラ40によって搬送される。記録ヘッド24の直下に到達した記録媒体12に対して、記録ヘッド24により画像が記録される。記録ヘッド24の位置よりも用紙送り方向の下流側には、画像記録後の記録媒体12を巻き取る巻取ロール44が設けられている。また、プラテン26と巻取ロール44との間の記録媒体12の搬送路にはガイド46が設けられている。
本実施形態のインクジェット記録装置10では、供給側のロール42から送り出された記録媒体12がプラテン26を経由して巻取ロール44に巻き取られるロール・ツー・ロール方式の用紙搬送手段が採用されている。ただし、発明の実施に際して、用紙搬送手段の構成はこの例に限らない。例えば、巻取ロール44を省略した形態や、記録媒体12を所望のサイズに切断するカッターを備える形態なども可能である。また、記録媒体12は、連続用紙に限らず、1枚ずつ分離されたカット紙(つまり、枚葉紙)の形態であってもよい。
プラテン26の裏面側、すなわち、プラテン26における記録媒体12を支持する媒体支持面と反対側には、画像記録中の記録媒体12の温度を調整する温調部50が設けられている。この温調部50による温度調整により、記録媒体12に着弾したインクの粘度や、表面張力等の物性値が所望の値になり、所望のドット径を得ることが可能となる。また、温調部50の用紙送り方向の上流側にプレ温調部52が設けられ、温調部50の用紙送り方向の下流側にアフター温調部54が設けられている。なお、プレ温調部52及び/又はアフター温調部54を省略する構成も可能である。
[記録ヘッドの構成例]
図3はキャリッジ30上に配置される記録ヘッド24と仮硬化光源32A,32Bと本硬化光源34A,34Bとの配置形態の例を示す平面透視図である。図4は図3中の記録ヘッド24の拡大図である。
図3及び図4に示すように、記録ヘッド24には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の各色のインクごとに、それぞれ色のインクを吐出するためのノズル62(図4参照)が副走査方向に配列されてなるノズル列61C,61M,61Y,61Kが設けられている。
図3ではノズル列を点線により示し、ノズルの個別の図示は省略している。図3及び図4に示した記録ヘッド24では、図の左からイエローのノズル列61Y、マゼンタのノズル列61M、シアンのノズル列61C、黒のノズル列61Kの順で各ノズル列が配置されている例を示しているが、インク色の種類(色数)や色の組み合わせについては本実施形態に限定されない。
例えば、CMYKの4色に加えて、ライトシアンやライトマゼンタなどの淡インクを用いる構成、或いは、淡インクに代えて又はこれと組み合わせて、さらに他の特別色のインクを用いる構成も可能である。使用されるインク色の種類に対応して、該当するインクを吐出するノズル列を追加する形態とすることが可能である。また、色別のノズル列の配置順序については、特に限定はない。ただし、複数のインク種のうち、紫外線に対する硬化感度が相対的に低いインクのノズル列を仮硬化光源32A又は32Bに近い側に配置する構成が好ましい。
本実施形態では、色別のノズル列61C,61M,61Y,61Kごとにヘッドモジュールを構成し、これらを並べることによって記録ヘッド24を構成している。具体的には、イエローインクを吐出するノズル列61Yを有するヘッドモジュール24Yと、マゼンタインクを吐出するノズル列61Mを有するヘッドモジュール24Mと、シアンインクを吐出するノズル列61Cを有するヘッドモジュール24Cと、黒インクを吐出するノズル列61Kを有するヘッドモジュール24Kと、をキャリッジ30の往復移動方向(つまり主走査方向)に沿って並ぶように等間隔に配置している。
色別のヘッドモジュール24Y,24M,24C,24Kのモジュール群の全体を「記録ヘッド」と解釈してもよいし、各ヘッドモジュールをそれぞれ「記録ヘッド」と解釈することも可能である。また、色別のヘッドモジュール24Y,24M,24C,24Kを組み合わせる構成に代えて、一つの記録ヘッドの内部で色別にインク流路を分けて形成し、1ヘッドで複数色のインクを吐出するノズル列を備える構成も可能である。
図4に示したように、ノズル列61C,61M,61Y,61Kのそれぞれは、複数個のノズル62が副走査方向に一定の間隔で並んで配列されたものとなっている。図4では、色別のノズル列61C,61M,61Y,61Kにそれぞれ30個のノズル62が配列されている例が示されている。各ノズル62にはノズル番号0〜29が付与されている。
本例のノズル番号は、ノズル列における副走査方向の一端側から他端側に向かって順番に連続番号により各ノズル62に付与されている。本例では、ノズル番号を0番から開始しているが、ノズル番号の先頭番号は1番でもよい。先頭番号は0以上の任意の整数とすることができる。ノズル番号は、各ノズル62の位置を表す識別番号として用いることができる。
また、本例では30個のノズル62が副走査方向に沿って一列に並んだノズル列を示したが、ノズル列を構成するノズル数並びにノズルの配置形態はこの例に限らない。例えば、複数列のノズル列を組み合わせた二次元ノズル配列により、副走査方向に等間隔でノズルが並ぶノズル列を形成することが可能である。
記録ヘッド24のインク吐出方式としては、圧電素子の変形によってインクを飛ばすピエゾジェット方式が採用されている。吐出エネルギー発生素子として、圧電素子に代えて、静電アクチュエータを用いる構成も可能である。また、ヒータなどの発熱体(加熱素子)を用いてインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式を採用することも可能である。ただし、紫外線硬化型インクは、一般に溶剤インクと比べて高粘度であるため、紫外線硬化型インクを使用する場合には、吐出力が比較的大きなピエゾジェット方式を採用することが好ましい。
記録ヘッド24は、主走査方向に移動しながら記録媒体12に対してインクを吐出して、記録媒体12の副走査方向に一定長さを有する領域に画像記録を行う。そして、この画像記録後に記録媒体12が副走査方向に一定量移動されると、記録ヘッド24は、次の領域に同様の画像記録を行い、以下、記録媒体12が副走査方向に一定量移動される毎に同様の画像記録を繰り返し行って記録媒体12の記録領域の全面にわたって画像記録を行うことができる。
このように、記録ヘッド24はシリアル方式の記録ヘッドである。本実施形態のインクジェット記録装置10(図1参照)は、複数回の主走査方向への記録ヘッド24の走査により、所定の記録解像度を実現するマルチパス方式を採用している。
[インクジェット記録装置の制御系の構成]
図5はインクジェット記録装置10の構成を示すブロック図である。図5に示すように、インクジェット記録装置10は制御装置102を備える。制御装置102として、例えば、中央演算処理装置(CPU;central processing unit)を備えたコンピュータを用いることができる。制御装置102は、情報記憶部124から読み出した各種プログラムを実行することにより、インクジェット記録装置10の全体を統括制御する。
制御装置102には、記録媒体搬送制御部104と、キャリッジ駆動制御部106と、光源制御部108と、画像処理部110と、吐出制御部112と、が含まれる。これらの各部は、ハードウエア又はソフトウエア、若しくはこれらの組み合わせによって実現することができる。「ソフトウエア」は、「プログラム」、又は「アプリケーション」と同義である。
記録媒体搬送制御部104は、記録媒体12の搬送を行う搬送駆動部114を制御する。搬送駆動部114は、ニップローラ40(図2参照)を駆動する駆動用モータ、及びその駆動回路が含まれる。プラテン26上に搬送された記録媒体12は、記録ヘッド24による主走査方向の走査(印刷パスの動き)に合わせて、スワス幅単位で副走査方向へ間欠送りされる。なお、スワス幅とは、キャリッジ30の往復移動によるスキャンの繰り返し周期によって決められる副走査方向の長さであり、ノズル列の副走査方向における長さであるノズル列長を、スキャンの繰り返し回数であるパス数で除算して求められる。スキャンの繰り返し回数であるパス数は、設定された記録解像度の描画を完成させるために必要な走査回数であり、作画モードによって定まる。作画モードの詳細は後述する。
キャリッジ駆動制御部106は、キャリッジ30を主走査方向に移動させる主走査駆動部116を制御する。主走査駆動部116は、キャリッジ30の移動機構に連結される駆動用モータ、及びその制御回路が含まれる。
前述の主走査駆動部116の駆動用モータ及び搬送駆動部114の駆動用モータには、エンコーダ130が取り付けられている。エンコーダ130は、各駆動モータの回転量及び回転速度に応じたパルス信号を制御装置102に入力する。これにより、制御装置102は、エンコーダ130から入力されるパルス信号に基づいて、キャリッジ30の位置及び記録媒体12の位置を把握することができる。
光源制御部108は、光源駆動回路118を介して仮硬化光源32A,32Bの発光を制御し、かつ光源駆動回路119を介して本硬化光源34A,34Bの発光を制御する。
画像処理部110は、画像入力インターフェース126を介して入力された画像データに画像処理を施して、印刷用のドットデータに変換する。図5では表記の簡略化のために、インターフェースという記載に代わる代替表記として、「IF」という簡易表記を用いている。IFは、「interface」の略語表記である。
画像処理部110は、ディザ法によるハーフトーン処理を実施するハーフトーン処理部として機能する。すなわち、画像処理部110は、入力された画像データである連続調画像に対して、ディザマスクを用いて画素値の量子化処理を行い、印刷用のドットデータに対応するハーフトーン画像を生成する。画像処理部110のハーフトーン処理に用いられるディザマスクは、本発明を適用して生成されるものである。ディザマスクの生成方法については後述する。
吐出制御部112は、画像処理部110において生成されたドットデータに基づいて、記録ヘッド24を駆動するヘッド駆動回路128を制御することにより、記録ヘッド24の各ノズル62からのインクの吐出を制御する。
情報記憶部124は、例えば不揮発性メモリが用いられており、制御装置102の制御に必要な各種プログラムや各種データを格納している。例えば、情報記憶部124は、プログラムとして、制御装置102の各部が実行する制御プログラム、及び走査パターンプログラムなどを格納している。走査パターンプログラムは、マルチパス方式の画像記録用のプログラムであり、副走査方向に間欠搬送される記録媒体12に対する記録ヘッド24の主走査方向の往復走査(印刷パスの動き)やパス数(スキャンの繰り返し回数)を規定する。主走査方向への記録ヘッド24の移動を伴う印刷パスの動きには、ドット形成時の記録ヘッド24の移動方向、インクを吐出させるノズルの選択、及び、吐出タイミングの少なくとも一つが含まれる。印刷パスの動きとパス数の組み合わせによって定まる走査のパターンを「走査パターン」と呼ぶ。
制御装置102には、入力装置122及び表示装置120が接続されている。入力装置122には、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、又は操作ボタンなど、各種の手段を採用することができ、これらの適宜の組み合わせであってもよい。入力装置122は、ユーザであるオペレータの手動による外部操作信号を制御装置102へ入力する。
表示装置120には、液晶ディスプレイなどが用いられる。オペレータは、入力装置122を使って各種情報の入力を行うことができる。また、オペレータは、入力内容その他の各種情報やシステムの状態等を表示装置120における表示を通じて確認することができる。
センサ132は、キャリッジ30に取り付けられている。制御装置102は、センサ132から入力されるセンサ信号に基づいて記録媒体12の幅を把握することができる。
[マルチパス方式の画像記録方法の説明]
図6はマルチパス方式の画像記録方法の一例を説明するための説明図である。ここでは、説明を簡単にするために、記録ヘッド24の構成を単純化し、記録ヘッド24のノズル列は一列のみとし、一列のノズル列61で記録する場合を例に説明する。ノズル列61は、図4で説明したノズル列61C,61M,61Y,61Kのいずれか一列を代表して表したものと理解することができる。
また、記録媒体を副走査方向へ間欠送りする構成について、図示の便宜上、図6では記録媒体を停止させ、記録ヘッド24を副走査方向に間欠移動させるように図示している。なお、図6では記録媒体の図示を省略し、記録ヘッド24の動きのみを示した。
図6に示すように、記録ヘッド24が主走査方向(図6における左右方向)に移動している時にノズル62からインクの吐出が行われる。主走査方向に沿った記録ヘッド24の往復移動と、副走査方向(図6の縦方向)への記録媒体の間欠送りとの組み合わせによって、記録媒体上に二次元の画像記録が行われる。「画像記録」という用語は、描画、作画、印刷、又は画像形成という用語に置き換えてもよい。
記録ヘッド24が主走査方向に移動しつつ、ノズル62からインクの吐出を行ってドットの記録を行う動作を「スキャン」又は「走査」という。スキャンには、主走査方向の往路パスで行うスキャンと、復路パスで行うスキャンとがありうる。往路及び復路の両方向のスキャンによって画像を記録してもよいし、往路又は復路のいずれか一方向のみのスキャンによって画像を記録してもよい。なお、往路及び復路の両方向のスキャンを行う場合、1往復のスキャンは、往路スキャンと復路スキャンの2回のスキャンが実施されると数える。
Nを自然数として、N回のスキャンで所望の記録解像度の画像を完成させる場合、(N+1)走査目の記録媒体と記録ヘッド24との相対的な位置関係(ここでは、副走査方向の位置関係)は、図6に示すような関係になる。つまり、N回書きで所望の記録解像度の画像記録を行うために、1回目、2回目、3回目、・・・と副走査方向に記録媒体を間欠送りし、ちょうど(N+1)回目にノズル列の長さ分に対応した位置に繋がるような位置関係とされる。N回書きの動作がシームレスに繋がるためには、1走査目の副走査方向位置から「ノズル列長+1ノズルピッチ」分だけ副走査方向に移動して(N+1)走査目が行われる。「ノズル列長さ」とは、ノズル62が副走査方向に並んで配列されたノズル列61の副走査方向の長さであり、ノズル列の両端に位置するノズルのノズル間距離に相当する。「ノズルピッチ」とはノズル列における副走査方向のノズル間隔である。
一例として、ノズル配列密度100npiでノズル62が並んだノズル列61を有する記録ヘッド24を用いて、主走査方向2パス、副走査方向4パス(主2×副4)の8パス(8回書き)で主走査600dpi×副走査400dpiの記録解像度を実現する場合を考える。npi(nozzle per inch)は、1インチ当りのノズル数を表す単位である。dpi(dot per inch)は、1インチ当りのドット数を表す単位である。1インチは約25.4ミリメートルである。
ここで、記録解像度から定まる打滴点の間隔を「打滴点間隔」と呼び、記録可能な打滴点の位置を表す格子を「打滴点格子」と呼ぶ。「打滴点」は、ドットの記録又は非記録を制御できる「画素」と同義である。「打滴点間隔」は「画素間隔」と同義であり、記録解像度における最小のドット間隔に相当する。「打滴点格子」は「画素格子」と同義である。「格子」は、行と列で表されるマトリクスのセルと同義である。
主走査600dpi×副走査400dpiの記録解像度の場合、主走査方向の打滴点間隔は、25.4(ミリメートル)/600≒42.3マイクロメートル、副走査方向の打滴点間隔は、25.4(ミリメートル)/400=63.5マイクロメートルである。これは、打滴点格子の1セル(1画素相当)の大きさ「42.3マイクロメートル×63.5マイクロメートル」を表している。記録媒体12の送り制御や記録ヘッド24からの打滴位置(すなわち、打滴タイミング)の制御については、この記録解像度から定まる打滴点間隔を単位として送り量や位置が制御される。なお、記録解像度から定まる打滴点間隔を「解像度ピッチ」或いは「画素ピッチ」と呼ぶ場合がある。また、ノズルピッチは長さの単位で表すことができるが、これに代えて、副走査方向の打滴点間隔(画素ピッチ)を単位として表すことができる。例えば、副走査400dpiの記録解像度に対して、ノズル配列密度が100npiである場合、ノズルピッチは、副走査方向の画素ピッチの4倍であることから、副走査方向の画素ピッチを単位として、ノズルピッチを「4」と表現することができる。
主走査方向2パスと副走査方向4パスによるN=8の場合、主走査方向の打滴点ラインを2回の走査で埋め、副走査方向の打滴点ラインを4回の走査で埋めるように、8回の走査(つまり8パス)で2×4個の打滴点格子の記録が行われる。「打滴点ライン」とは、走査線を意味し、ラスタのラインと同義である。
図7はこのような8回書きの描画動作による各走査の番号(1から8)と、その走査によって記録される打滴位置の関係を模式的に示した模式図である。図7において、1から8の数字が付された各セルは、ノズル62によって記録される打滴位置(画素位置)を表し、1〜8の数字は、その画素位置が第何回目の走査時に記録されるかという走査の番号を表している。例えば、「1」の数字が付されたセル(画素)は、1走査目で記録する打滴位置を表している。
図7から明らかなように、各打滴位置を記録する走査順番を表す1から8の数字の配置分布は、主2×副4の「2×4」の格子が繰り返しの基本単位となっている。この2×4の格子を「基本単位格子」あるいは「2×4格子」と呼ぶ。2×4格子の埋め方(打滴順序)は、図7に示した例に限らず、種々想定することができる。
作画モードに応じて、記録解像度と走査パターンが定まり、基本単位格子のセル数、セルの配列形態、並びに、各セルの走査の番号(走査順番)が決定される。
[作画モードの例]
既に説明したように、インクジェット記録装置10は、マルチパス方式の描画制御が適用され、印刷パス数の変更によって記録解像度を変更することが可能である。例えば、高生産モード、標準モード、及び高画質モードの3種類のモードが用意され、各モードでそれぞれ記録解像度が異なる。記録解像度は「印字解像度」と同義である。印刷目的や用途に応じて作画モードを選択することができる。「作画モード」という用語は、「印刷モード」に置き換えてもよい。
簡単な数値例で具体的に説明する。記録ヘッド24におけるノズル列61の副走査方向のノズル配列密度が100npiであるとする。
高生産モードの場合、主走査600dpi×副走査400dpiの記録解像度で記録が行われ、主走査方向は2パス(2回の走査)によって600dpiの記録解像度による記録が実現される。すなわち、一回目の走査(キャリッジ30の往路)では300dpiの解像度でドットが形成される。2回目の走査(復路)では一回目の走査(往路)で形成されたドットの中間を300dpiで補完するようにドットが形成され、主走査方向について600dpiの解像度が得られる。
一方、副走査方向については、ノズルピッチが100npiであり、一回の主走査(1パス)により副走査方向に100dpiの解像度でドットが形成される。したがって、4パス印字(4回の走査)により補完印字を行うことで400dpiの記録解像度が実現される。
標準モードでは、600dpi×800dpiの記録解像度で記録が実行され、主走査方向は2パス印字、副走査は8パス印字により600dpi×800dpiの解像度が得られる。
高画質モードでは、1200×1200dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は4パス、副走査方向が12パスにより1200dpi×1200dpiの記録解像度が得られる。
[ノズル吐出率について]
ここで、ノズル吐出率について説明する。ノズル吐出率とは、記録ヘッド24における複数のノズル62のそれぞれが記録を担当する画素としてノズルごとに割り当てられる記録担当画素のうち、それぞれのノズル62がインクを吐出してドットを記録する記録画素の割合を示す値である。
ノズル吐出率はノズルごとに定められる。ノズル吐出率は、ノズルごとに割り当てられた記録担当画素の数を分母とし、各ノズルがインクを吐出してドットを記録する記録画素の数を分子とする割り算の商で表され、0以上1以下の数値で表すことができる。また、ノズル吐出率は百分率で表すことも可能である。ノズル吐出率はデューティが増すと共に増加し、デューティ100%で最大値の「1.0」又は「100%」となる。
要するに、ノズル吐出率は、ノズル62ごとのインクを吐出する割合を示している。ノズル62ごとのインクを吐出する割合は、ノズル62ごとの記録画素の割合と同等である。ノズル吐出率は、ノズルを使用する割合と理解でき、ノズル使用率、或いはノズル稼働率と見做すことができる。
具体的には、最大濃度の均一階調画像であるベタパターンの記録を行う際のノズル62ごとの使用率を基準値である「1.0」又は「100%」とした場合の、ノズル62ごとの使用率を表したものである。ノズル62ごとの使用率は、ノズル62ごとのインク吐出量と置き換えてもよいし、ノズル62ごとの記録画素の画素数と置き換えてもよい。
これに対し、各ノズルの相対的な使用比率をノズル相対吐出率と呼ぶ。ノズル相対吐出率は、ノズル吐出率の制御目標であり、かつ各ノズルのノズル吐出率の相対的な比率を表す。
ノズル相対吐出率は、各ノズルのノズル吐出率のノズル間における相対的な比率に意味があり、ノズル相対吐出率の数値自体の絶対値や最大値は、特に物理量としての意味はない。各ノズルのノズル相対吐出率の絶対値は、全ノズルのノズル相対吐出率の総和を1に規格化してもよいし、最大値を1に規格化してもよいし、或いは、ノズルごとの記録担当画素数に対する記録画素の比率としてもよい。本実施形態では、便宜上、最大吐出(最大の使用率)のノズル吐出率を「1.0」として、この最大値に対する比率によってノズル相対吐出率を表すことにする。
実施形態に係るディザマスクの生成方法について詳細は後述するが、制御目標としてのノズル相対吐出率は、「優先画素設定率」に相当するものとなる。つまり、ノズル相対吐出率を「優先画素設定率」として用いる。
ディザマスクの生成に際しては、制御目標としてのノズル相対吐出率(「優先画素設定率」に相当)を定め、デューティの増加と共に、ノズル相対吐出率(各ノズルのノズル吐出率の相対的な比率)を概ね保ったまま、ノズル吐出率を増していくように、各画素の閾値が設定される。
図8はノズルごとに定められるノズル相対吐出率のデータの一例を示す図である。図8において、横軸はノズル番号、縦軸は各ノズル番号に対応付けられたノズル相対吐出率を示している。図8は吐出最大のノズルのノズル相対吐出率を「1.0」として、それに対する各ノズルのノズル相対吐出率を示している。
また、図8に示す例では、特許文献1と同様にバンディングの抑制を図るため、ノズル列の端部に配置されているノズルのノズル相対吐出率が、ノズル列の中央部に配置されているノズルのノズル相対吐出率よりも小さく設定される。例えば、図8中の実線で示すように、ノズル列の両端に位置するノズル番号0と、ノズル番号29の各両端のノズルから、それぞれノズル列の中央部に位置するノズル番号14とノズル番号15のノズルに向かって、ノズル相対吐出率を次第に大きく設定する。
或いは、図8中の一点鎖線で示すように、ノズル列の両端部に位置するノズル群(例えば、ノズル番号0から5のノズル群とノズル番号24から29のノズル群)のノズル相対吐出率を相対的に小さく設定し、両端部の間に位置するノズルのノズル相対吐出率を「1.0」に設定してもよく、ノズル相対吐出率の設定に関しては、図8に示した例に限らず、種々の設定形態を想定することができる。
ノズルごとのノズル相対吐出率は、予めプログラムされている構成の他、ユーザが任意に設定することができる。例えば、ユーザが、適宜のユーザーインターフェースを利用して、ノズルごとのノズル相対吐出率を入力したり、或いは予め用意されている複数種類のノズル相対吐出率データの候補パターンの中から所望のパターンを選択したりすることができる。
[ディザマスク生成方法の説明]
図9は実施形態に係るディザマスク生成方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態のディザマスク生成方法は、ディザマスクの初期ドット配置を設定する工程(ステップS1)と、初期ドット配置から降順で閾値を設定する工程(ステップS2)と、初期ドット配置から昇順で閾値を設定する工程(ステップS3)と、を含む。
ここでは、ディザマスク生成方法を簡易にするため、初期ドット配置は、極めて低デューティのドット配置とし、かつ、ノズル相対吐出率を反映させないものとする。初期ドット配置に対応する「極めて低デューティ」の初期デューティは、例えば、0%よりも大きく、かつ1%以下の値とすることができ、より好ましくは、0.1%以上0.5%以下の値とする。この程度の低デューティであれば、ノズル相対吐出率の設定の影響が殆んど無視できる。初期ドット配置のデューティ(初期デューティ)については、上記に例示の数値に限らず、ノズル相対吐出率の設定の影響が無視できる程度に小さい値であればよい。
ステップS1の初期ドット配置設定工程は、ディザマスクのマスクサイズと同等の画素配列の領域であるマスク領域に、予め定められた初期デューティに対応するドット数のドットを配置する。
ステップS2に示した降順の閾値設定工程は、公知の閾値設定方法を用い、ノズル相対吐出率を反映させずに、各階調の閾値を設定する処理を行う工程である。「降順」とは、閾値が大きい値のものから閾値を設定し、順次、小さい値の閾値を設定していく手順である。ステップS2における「降順」は、初期ドット配置に対応する階調の閾値から、順次、小さい値の閾値を設定していく処理を意味する。
つまり、ステップS2では、初期ドット配置から、次第にドットを取り除きながら、降順で、順次に小さな閾値を閾値未設定画素に設定していく処理を行う。降順における「閾値未設定画素とは、ドット有りの画素である。「ドット有り」とは「ドットオン」と同義である。
ステップS3に示した昇順の閾値設定工程は、ノズル相対吐出率(「優先画素設定率」に相当)を反映させて、昇順で閾値未設定画素に閾値を設定する処理を行う工程である。「昇順」とは、閾値が小さい値のものから閾値を設定し、順次、大きい値の閾値を設定していく手順である。ステップS3における「昇順」は、初期ドット配置に対応する階調の閾値から、順次、大きい値の閾値を設定していく処理を意味する。
なお、降順による閾値設定工程(ステップS2)と昇順による閾値設定工程(ステップS3)の順番は前後入れ替え可能である。
[第1実施形態]
図10は昇順の閾値設定工程(図9のステップS3)に適用される昇順の閾値設定処理の例を示すフローチャートである。
図10に示す第1実施形態による昇順の閾値設定処理では、まず、ノズル相対吐出率の設定の段階Qを初期値である「段階Q=1」に設定する(ステップS12)。本実施形態では、デューティの領域に応じて、ノズルごとのノズル相対吐出率を段階的に切り替えて設定するため、ノズル相対吐出率に段階を設けている。段階Qはノズル相対吐出率の段階を示す変数である。
本実施形態では、ノズル相対吐出率を「優先画素設定率」として利用することができ、「ノズル相対吐出率」という用語は「優先画素設定率」と置き換えて理解することができる。
図11は段階数が3段階である場合の各段階のノズル相対吐出率の例を示している。図11の横軸はノズル番号、縦軸はノズル相対吐出率を示している。図11においてQ=1のグラフは段階1、Q=2のグラフは段階2、Q=3のグラフは段階3の各段階のノズル相対吐出率を示している。ここでは、ノズル数が9個である記録ヘッドを例に説明する。
段階を示す「Q」は、ノズル相対吐出率の小さい順に、Q=1から、段階の最大値までの整数の値を取り得る。つまり、kを1以上の整数とする場合に、段階k+1のノズル相対吐出率は、段階kのノズル相対吐出率よりも大きい。段階1のノズル相対吐出率が最も低く、最後の段階のノズル相対吐出率(図11では段階3のノズル相対吐出率)は、各ノズルについて全て「1.0」とする。
段階1のノズル相対吐出率の設定の下では、各ノズルは段階1のグラフで示されたノズル相対吐出率の範囲でしかドットを記録することができない。つまり、各ノズルのノズル相対吐出率を段階1のグラフのように設定すると、その設定の下で記録できるデューティの上限は決まってくる。図11における段階1の場合、記録できるデューティの上限は概ね56%である。したがって、最大デューティ100%まで、ディザマスクの閾値を設定するためには、段階1からさらにノズル相対吐出率を増加させ、最後の段階で全ノズルのノズル相対吐出率は全て「1.0」にしなければならない。すなわち、ディザマスクの閾値未設定の画素に設定する閾値の値の増加に応じて、ノズル相対吐出率の設定を少なくとも2段階の複数段階に変更することが必要である。
図11では、3段階のノズル相対吐出率(Q=1,2,3)の設定形態が例示されているが、最小の段階数は2段階である。2段階以上の任意の段階数とすることができる。
図12はノズル数が9個の記録ヘッドの模式図である。図12に示すように、記録ヘッド24Aは9個のノズル62が副走査方向に等間隔で一列に並んだノズル列61Aを有する。ノズル列61Aの一方の端である図12の上端のノズル62から、他方の端である図12の下端に向かって、各ノズル62に対して順番に、それぞれ固有のノズル番号0、1、2…8が付与されている。ノズル列61Aのノズル配列密度は、様々な設計が可能であるが、例えば、副走査方向に300npiであるとする。
図12に示した記録ヘッド24Aのノズル列61Aにおける各ノズル62のノズル相対吐出率を、例えば、図11に示すように、段階1〜3の各段階のノズル相対吐出率に切り替えて設定することができる。
図10のステップS12において、段階Q=1に設定した後、ステップS14に進む。ステップS14では、記録ヘッド24Aにおける各ノズル62のノズル相対吐出率を設定する。ここで設定するノズル相対吐出率は「優先画素設定率」の一形態に相当し、ステップS14のノズル相対吐出率設定工程は、「優先画素設定率設定工程」の一形態に相当する。段階Q=1に設定されている場合においては、図12に示した記録ヘッド24Aのノズル列61Aにおける各ノズル62のノズル相対率出率を、図11の段階Q=1に示したグラフのように設定する。
次いで、図10のステップS16において、走査パターンにしたがって各画素に対応するノズル番号(すなわち、ノズルパターン)を設定する。ステップS16の工程は、ディザマスクのマスクサイズと同等の画素数の画素配列を持つ画像領域(つまりマスク領域)について、インクジェット記録装置10による画像記録を行う際の走査パターンにしたがって、ディザマスクの各画素に対応するノズル番号を設定する処理を行う工程である。
各画素に対応するノズル番号とは、各画素の記録を担当するノズルのノズル番号を意味する。ステップS16の工程は、ディザマスクの各画素について、それぞれ対応するノズル番号を決定することに相当する。
mとnがそれぞれ自然数であるとし、生成目標であるディザマスクがm行×n列のマトリクスである場合には、m行×n列の二次元の画素配列からなる画像領域の各画素に対して、それぞれ対応するノズル番号を決定する。ディザマスクの各画素について、対応するノズル番号を定めたノズル番号のパターンを「ノズルパターン」と呼ぶ。
ステップS16の工程は、ディザマスクの各画素とそれぞれの画素位置の記録を担うノズル番号との対応関係を表すノズルパターンを設定する工程に相当し、「ノズルパターン設定工程」の一形態に相当する。
図13はノズルパターンの一例を示す図である。図13に示したノズルパターンは、記録解像度600dpi×600dpiとし、ノズル配列密度が300npi、ノズル数が9個、紙送り量が9/600dpi、及び主走査方向のパス数が1である場合の18×18画素のディザマスクに対応するノズルパターンの例である。つまり、図13に示したノズルパターンは、副走査方向のノズルピッチが2画素であり、かつ、ノズル数が9であるノズル列61A(図12参照)を、副走査方向に9画素ずつ相対移動させる間欠送りを行い、かつ、主走査方向の一ラインの走査線を単一の(同じ一つの)ノズルで走査する場合の走査パターンにおける、18×18画素のディザマスクの各画素に対応するノズル番号を示している。例えば、図13においてノズル番号0が記入された画素は、ノズル番号0のノズルが記録を担当する画素であり、ノズル番号0のノズルの記録担当画素を示している。すなわち、ノズルパターンは、ノズル番号ごとの記録担当画素を示している。
ノズルピッチが2画素とは、印刷時の記録解像度から定まる1画素のサイズを単位として、ノズルピッチが副走査方向の2画素分の距離に相当することを意味する。例えば、図12で説明した記録ヘッド24Aのノズル配列密度300npiは、ドットの記録密度(解像度)でいうと300dpiに相当する。つまり、本例において、印刷時に想定している記録解像度が主走査方向600dpi、かつ副走査方向600dpiであり、300npiのノズル列61Aのノズルピッチは、600dpiの画素のサイズを単位として、2画素分に相当している。
ここで、ノズル列61Aを構成している各ノズル62の位置とディザマスクの各画素の位置の関係を分かり易く図示するために、ノズル列の記載に関して、図14に示すような、記載方法を導入する。図14では、ノズル列61Aが画素単位のセルに区分けされており、セル内にノズル番号を示す数字0〜8が記載してある。ノズル番号が付されたセルの位置がノズルの位置を表している。つまり、図14に示すノズル列61Aの記載は、図12に示した記録ヘッド24Aの記載に代わるものである。
図15は、主走査方向の印刷パスを1回実施するごとに、副走査方向に9画素ずつ相対移動させる間欠送りの様子を示している。図15では、図示の便宜上、図6と同様に、停止した記録媒体に対して、記録ヘッド24Aを副走査方向に移動させたものとして描いている。
図15に示す作画方法では、主走査方向の打滴点ラインである主走査ラインは1パスで600dpiの記録が完成し、副走査方向の打滴点ラインである副走査ラインは2パスで600dpiの記録が完成する。副走査方向の用紙送り量は9画素となっている。このような走査が繰り返される作画方法のノズルパターンが図13に示されている。なお、図13において18×18画素のノズルパターンの左側には、ノズル番号0から8の9ノズルのノズル列61Aによる作画方法(走査パターン)を模式的に示した。
図10のステップS16にてノズルパターンを設定した後、次いで、図10のステップS18に進む。ステップS18では、ステップS14で設定した段階Qのノズル相対吐出率と、ステップS16で設定されたノズルパターンに基づき、ドット優先画素を設定する。ステップS18は「ドット優先画素設定工程」の一形態に相当する。ドット優先画素は、ディザマスクの画素のうち閾値を設定する画素の候補となる画素群である。
図16はドット優先画素の配置の例を示した図である。図16は図11で説明した段階Q=1のノズル相対吐出率と、図13で説明したノズルパターンを基に設定されるドット優先画素の配置例を示している。図16において、ドット優先画素には、数字の「1」のグラフを付し、画素を示すセルをグレートーンで塗りつぶした。また、非ドット優先画素には数字の「0」を付した。つまり、18×18画素のマトリクス領域における「1」を付した画素はドット優先画素オン、「0」を付した画素はドット優先画素オフであることを示している。
また、図16ではドット優先画素の配置例と共に、各ラスタを記録するノズルのノズル番号と、ノズル相対吐出率と、各ラスタのドット優先画素数と、を併記した。ここでの「ラスタ」とは、図16の横方向(行方向)である主走査方向に画素が並ぶ主走査方向ラスタである。
各ラスタのドット優先画素数は、該当するラスタを記録するノズルのノズル相対吐出率に、「ディザマスクの主走査画素数/主走査方向パス数」を乗算して求められる。ディザマスクの主走査画素数とは、ディザマスクの主走査方向の画素数をいう。図16の例の場合、ディザマスクの主走査画素数は18画素、主走査方向パス数は「1」であるから、「ディザマスクの主走査画素数/主走査方向パス数」は18画素である。図16に示した1行目のラスタは、ノズル番号0のノズルによって主走査方向パス数「1」で記録され、ノズル番号0のノズル相対吐出率は0.2である。したがって、1行目のラスタのドット優先画素数は、0.2×18/1=3.6と計算される。
ディザマスクのマスクサイズにおける全体のドット優先画素数は、各ラスタを記録する各ノズルのノズル相対吐出率に、ディザマスクの「主走査画素数/主走査方向パス数」を掛けて求まる各ラスタの各ノズルのドット優先画素数の総和である。各ラスタの各ノズルのドット優先画素は、ドット優先画素の発生確率がノズル相対吐出率に比例するように設定される。
<ドット優先画素の設定方法の第1例>
各ラスタにおけるドット優先画素は、例えば、以下の条件式にしたがって設定される。
[条件式1] rand()≦ノズル相対吐出率
を満たす場合に限り、ドット優先画素オンとする。
ただし、条件式1における「rand()」は、範囲が0以上1未満の乱数である。
各画素位置において、rand()関数によって0以上1未満の範囲の乱数を等確率で発生させ、発生した乱数値であるrand()とノズル相対吐出率とを比較して、rand()がノズル相対吐出率以下である場合に、その画素をドット優先画素とする。
条件式1にしたがって、ドット優先画素を定めることにより、各ノズルで記録する各ラスタにおいて、「ノズル相対吐出率×主走査画素数/主走査方向パス数」の数を目標個数にして乱数的に(ランダムに)ドット優先画素が設定される。
なお、「ノズル相対吐出率×主走査画素数/主走査方向パス数」によって算出されるドット優先画素数と、条件式1にしたがって実際に設定されるドット優先画素の個数は必ずしも一致しない。
つまり、図16に示した各ラスタのドット優先画素数は、各ラスタにおけるドット優先画素の目標個数であり、上述のように計算によって予め求めることができる。ただし、実際に設定されるドット優先画素の個数は、乱数の値次第で変わりうる。
<ドット優先画素の設定方法の第2例>
条件式1を用いる以外にも、ドット優先画素を乱数的に設定する方法には種々の方法がある。例えば、まず各ノズルで記録する各ラスタにおいて設定する優先画素数を整数値で求め、次に「rand()RAND_MAX % 記録画素数」で求まる整数に対応する番号の画素に1番目のドット優先画素を設定する。ここで「記録画素数」とは、各ラスタにおいて各ノズルが記録を担当する画素の数であり「主走査画素数/主走査方向パス数」に等しい。rand()RAND_MAXは、範囲0以上RAND_MAX未満の整数の乱数である。「RAND_MAX」は、少なくとも記録画素数よりも大きい整数である。例えば、RAND_MAX=65536とすることができる。「%」は剰余演算子である。a%bは、aをbで割った余りを表す。つまり、rand()RAND_MAX % 記録画素数は、範囲0以上RAND_MAX未満の整数の乱数を「記録画素数」で割った余りの数である。この演算により、0以上「記録画素数−1」以下の範囲の整数を等確率で得ることができる。図16の例では「記録画素数=18」である。
0から17の整数を18画素の画素番号に対応付けて、「rand()RAND_MAX % 記録画素数」で求まる整数に対応する画素番号を1番目のドット優先画素とする。
次に、1番目のドット優先画素を除いて、rand()RAND_MAX %(記録画素数−1)で求まる整数に対応する番号の画素に2番目のドット優先画素を設定する。図16の例では「記録画素数=18」であり、0から16の整数を、1番目のドット優先画素を除いた17画素の画素番号に対応付けて、rand()RAND_MAX %(記録画素数−1)で求まる整数に対応する画素番号を2番目のドット優先画素とする。以下同様にして、1番目と2番目のドット優先画素を除いて、rand()RAND_MAX %(記録画素数−2)で求まる整数に対応する番号の画素に3番目のドット優先画素を設定する。4番目以降も順次、同様の手順でドット優先画素数の個数だけドット優先画素を設定していくことができる。
ドット優先画素の設定に際して、前の段階までに設定された閾値の画素を考慮してもよいし、考慮しなくてもよい。ドット優先画素の設定において、前の段階までに設定された閾値の画素を考慮する場合、既述した第2例による設定方法では、当該段階におけるドット優先画素の候補となる画素から前の段階までに設定された閾値の画素を除くと共にドット優先画素数から閾値の個数を除いておく。
ドット優先画素の設定方法に関して、第1例及び第2例では、rand()関数を用いる例を示したが、ドット優先画素を乱数的に設定する方法にも種々の方法があり、rand()関数を用いる形態に限定されない。
<ドット優先画素の設定方法の第3例>
また、ドット優先画素の設定方法は、乱数的に設定する方法に限らず、規則的な間隔で設定する方法もあり得る。以下に規則的な間隔でドット優先画素を設定する方法の例を説明する。
例えば、各ラスタにおける各ノズルの吐出画素間隔を1として、「1/ノズル相対吐出率」を規則的な間隔と定め、「1/ノズル相対吐出率」の整数倍の値を整数値に丸めた番号の画素にドット優先画素を設定してもよい。吐出画素間隔とは、各ラスタにおける各ノズルの吐出の間隔であり、主走査方向パス数が1ならば1画素、主走査方向パス数が2ならば2画素に相当する。
例えば、図16の2行目のラスタについてはノズル相対吐出率が0.8であるため、1/ノズル相対吐出率=1/0.8 = 1.25の整数倍の値を整数値に丸めた番号の画素にドット優先画素を設定することとなる。ここで図16は主走査方向パス数が1なので吐出画素間隔の「1」は1画素に相当する。したがって、例えば、整数値の丸め方を切り捨てや切り上げでなく、四捨五入とした場合、左端画素を1番目として1、3、4、5、6、8、9、10、11、13、14、15、16、18番目の画素(それぞれ1.25、2.5、3.75、5、6.25、7.5、8.75、10、11.25、12.5、13.75、15、16.25、17.5を四捨五入して整数値に丸めた番号の画素)にドット優先画素を設定することとなる。
なお、この場合、さらに18.75を四捨五入して整数値に丸めた19番目の画素にドット優先画素を設定してもよい。ただし、19番目の画素はディザマスクの主走査画素数である「18」を超えるため、再度、左端に戻り1番目の画素に設定することとするが、ここで1番目の画素には既にドット優先画素が設定されているため、その横、例えば右横の2番目の画素にドット優先画素を設定することとする。
上述の第1例から第3例で説明した方法などを用いて、図10のステップS18にてドット優先画素を設定した後、ステップS20に進む。
ステップS20では、ディザマスクの全画素のうち、閾値未設定かつドット優先画素の画素に閾値を仮設定し、粒状性を評価する。粒状性評価の指標は、例えば、RMS(Root Mean Square)粒状度など、公知の指標を用いることができる。RMS粒状度は、VTF(Visual Transfer Function)など人間の視覚特性を考慮したぼかしフィルタをドット配置に掛けた上で算出した標準偏差である。
ステップS20における粒状性の評価結果はメモリ等に記憶しておき、ステップS22に進む。ステップS22では、閾値を設定する画素の候補である全候補画素についてステップS20の粒状性の評価を完了したか否かの判定を行う。全候補画素とは、ステップS20で閾値を仮設定し得る閾値未設定かつドット優先画素の集合である。
ステップS22にて、粒状性未評価の候補画素が存在する場合は、ステップS22の判定がNo判定となり、ステップS20に戻る。すなわち、閾値未設定かつドット優先画素である候補画素の範囲で閾値を仮設定する画素を変えて、ステップS20の処理を繰り返す。
全候補画素についてステップS20の粒状性評価の処理が完了すると、ステップS22の判定がYes判定となり、ステップS24に進む。
ステップS24では、全候補画素についてそれぞれ粒状性を評価した結果を基に、粒状性が最良の画素に閾値を設定する。ステップS24の工程が「閾値設定工程」の一形態に相当する。
次いで、ステップS26では所定個数の閾値の設定を完了したか否かの判定を行う。ここでいう「所定個数」は、同じ段階のノズル相対吐出率の設定の下で設定する閾値の個数として予め定められた規定値である。図10に示したフローチャートにおける「所定個数」は、ステップS18で設定された全ドット優先画素数よりも少ない数、例えば、全ドット優先画素数×0.8とする。仮に、所定個数を全ドット優先画素数に等しく設定すると所定個数付近で粒状性が悪化する懸念がある。所定個数を全ドット優先画素数より少ない数に設定することで、粒状悪化を低減することができる。ただし、所定個数を過剰に少なく設定し過ぎると、ノズル列における端部ノズルの吐出率を抑える性能は低下することとなる。したがって、所定個数の設定に際しては、粒状悪化の低減と、端部ノズルの吐出率を抑える性能との両立の観点から適切な値に設定することが好ましい。例えば、所定個数は全ドット優先画素数の0.6倍以上0.9倍以下の範囲とし、より好ましくは、0.7倍以上0.8倍以下の範囲とする。
ステップS26にて、所定個数の閾値の設定が未完了である場合には、ステップS20に戻る。一方、ステップS26にて、所定個数の閾値の設定が完了すると、ステップS28に進む。
ステップS28では、全段階の処理が完了したか否かの判定を行う。ノズル相対吐出率の段階Qについて、全段階の処理が完了していなければ、段階Qの値に1を加え、段階Qの値を「Q+1」に変更して(ステップS30)、ステップS14に戻る。
ステップS30にて変更された次の段階のノズル相対吐出率に設定を変更して、上述の処理ループ(ステップS14からステップS28)を繰り返す。なお、ステップS16で説明したノズルパターンについては、前回と同じ設定を利用できるため、ステップS16の処理は省略することができる。
ステップS30を経て、前回と異なる段階のノズル相対吐出率の設定の下で、新たにステップS18でドット優先画素が設定される工程が「ドット優先画素を変更する工程」の一形態に相当する。
ステップS30を経てステップS14からステップS28のループが繰り返されることにより、ステップS14のノズル相対吐出率設定工程により設定されるノズルごとのノズル相対吐出率は、ステップS26の所定個数の閾値に対応する閾値の個数に相当する閾値領域に応じて(つまり、ステップS24にて設定する閾値の値によって)、少なくとも2段階の複数段階に設定が変更される。
また、ステップS18で一旦設定されたドット優先画素の全てに閾値が設定される前に、つまり、ドット優先画素数よりも少ない所定個数の閾値の設定が完了した際に、ステップS30を経て新たにステップS18にて別のドット優先画素の設定に変更されている。
こうして、全ての段階について、同様の処理が行われ、各閾値が設定される。ステップS28にて全段階で処理が完了すると、図10のフローチャートを終了する。
なお、ステップS28に関して、最後の段階は全ノズルのノズル相対吐出率が「1.0」に設定され、全画素にドット優先画素を設定し、かつステップS26における「所定個数」に全画素数を設定する。
図10に示したフローチャートに代えて、最後の段階のみ閾値設定を別ループにしドット優先画素の設定及び判断を省いてもよい。つまり、最後の段階において全ノズルのノズル相対吐出率を全て「1.0」に設定する場合、敢えて各ノズルのノズル相対吐出率を「1.0」に設定し、全画素をドット優先画素に設定するという処理を実施せずに、単に、ノズル相対吐出率の設定やドット優先画素の設定を除き、ドット優先画素の判断もしない別の処理ループを実施する構成を採用してもよい。
このような別の処理ループを採用する場合も、実質的に、全ノズルのノズル相対吐出率を「1.0」に設定し、全画素をドット優先画素に設定して処理を行うことと同等であり、別の処理ループへの移行は、「複数段階」における「最後の段階」の設定の一形態に相当する。
図10で説明したフローチャートは、ディザマスクに設定する全閾値のうちの一部の閾値の設定に関して適用される。つまり、一旦設定したドット優先画素を変更する処理は、全閾値のうち少なくとも一部の閾値の設定に関して適用される。
図10のフローチャートによれば、設定される閾値の増加と共に、ノズル相対吐出率(つまり優先画素設定率)にしたがって、各ノズルの吐出の相対的な比率を概ね保ちながら、各ノズルのノズル吐出率を増加させることができる。なお、ここでいう「各ノズルの吐出の相対的な比率」は、ノズル相対吐出率に従うものの、完全に等しくできるわけではない。
[ディザマスク生成装置の構成]
図17は第1実施形態に係るディザマスク生成装置のブロック図である。ディザマスク生成装置150は、ノズル相対吐出率設定部152と、ノズルパターン設定部154と、ドット優先画素設定部156と、閾値設定部158と、を備える。また、ディザマスク生成装置150は、走査パターン情報取得部160と、段階切替部162と、閾値個数判定部164とを有する。これらの各部は集積回路などのハードウエア回路、又は、コンピュータのハードウエア及びソフトウエア、若しくはこれらの適宜の組み合わせによって実現することができる。また、ディザマスク生成装置150の機能は、図5で説明した制御装置102に搭載してもよい。
図17に示したノズル相対吐出率設定部152は、記録ヘッド24(図4参照)におけるノズルごとのノズル相対吐出率を設定する処理を行う。ノズル相対吐出率設定部152は、図11で例示したように、予め用意されているノズル相対吐出率の段階にしたがって、ノズルごとのノズル相対吐出率を設定する。ノズル相対吐出率設定部152は、図10のステップS14で説明した処理を行う。ノズル相対吐出率設定部152は「優先画素設定率設定部」の一形態に相当する。
図17に示した段階切替部162は、ノズル相対吐出率設定部152で設定するノズル相対吐出率の段階の指定を行う。段階切替部162は、図10のステップS30で説明した処理を行う。ノズル相対吐出率設定部152は、段階切替部162により指定された段階のノズル相対吐出率を設定する。
ノズルパターン設定部154は、走査パターン情報取得部160から得られる走査パターンの情報に基づき、ディザマスク166の各画素に対応するノズルを特定する処理を行う。すなわち、ノズルパターン設定部154は、ディザマスク166の各画素について、それぞれの画素位置の記録を担当する少なくとも一つのノズルを対応付ける処理を行う。
走査パターン情報取得部160は、走査パターンプログラムなどから作画モードに応じた走査パターンの情報を取得する。前述の通り、走査パターンプログラムは、副走査方向に間欠搬送される記録媒体12に対する記録ヘッド24の主走査方向の往復走査やパス数を規定しているため、走査パターンプログラムから記録ヘッド24の走査パターンを判別することが可能である。
ノズルパターン設定部154は、記録媒体12に対して記録ヘッド24を主走査方向及び副走査方向に相対移動させる際の走査パターンを判別する。ノズルパターン設定部154は、走査パターンに基づき、ディザマスク166の各画素を、記録ヘッド24のどのノズル62で記録するのかを決定する処理を行う。ノズルパターン設定部154は、ディザマスク166の各画素と、それぞれの画素の記録を担うノズルとの対応関係を示すノズルパターンのデータであるノズルパターンデータ168を生成する。ノズルパターンデータ168は、例えば、図13で説明したノズルパターンのデータである。ノズルパターン設定部154は、図10のステップS16で説明した処理を行う。
ノズルパターンデータ168を生成する方法は、走査パターンプログラムに基づき決定する方法に限られず、各種方法を用いることができる。ノズルパターンデータ168は、作画モードとディザマスク166のサイズや並べ方によって決定できるため、予め複数種類の作画モードのそれぞれに対応したノズルパターンデータをメモリ等の情報記憶部に保持しておくことができる。
ドット優先画素設定部156は、ノズル相対吐出率データ170とノズルパターンデータ168を基に、ドット優先画素を設定する処理を行う。また、ドット優先画素設定部156は、一旦設定したドット優先画素の全てに閾値が設定される前に、ドット優先画素を変更する処理を行う。一旦設定したドット優先画素の全てに閾値が設定される前に、ドット優先画素を変更するとは、すなわち、一旦設定したドット優先画素のうち少なくとも一部の画素が閾値未設定の画素である状態で、ドット優先画素を変更することを意味する。ドット優先画素設定部156は、図10のステップS18で説明した処理を行う。
閾値設定部158は、閾値未設定の画素を含むディザマスク166を準備し、かつ、ディザマスク166の閾値未設定の画素に、閾値を設定する処理を行う。閾値設定部158は、図10のステップS20からステップS24で説明した処理を行う。閾値設定部158によって、ディザマスク166の全画素の閾値が設定されることにより、生成目標であるディザマスク166が完成する。
閾値個数判定部164は、閾値設定部158により設定される閾値の個数を管理し、予め定められている所定個数の閾値設定が完了したか否かの判定を行う。閾値個数判定部164は、図10のステップS26で説明した処理を行う。
閾値個数判定部164の判定結果は、ドット優先画素設定部156に通知される。ドット優先画素設定部156は、閾値個数判定部164から得られる情報を基に、ドット優先画素を変更する処理を行う。
また、閾値個数判定部164の判定結果は、段階切替部162に通知される。段階切替部162は、閾値個数判定部164から得られる情報を基に、ノズル相対吐出率の段階を変更する処理を行う。
ノズル相対吐出率設定部152の機能が「優先画素設定率設定機能」の一形態に相当する。ノズルパターン設定部154の機能が「ノズルパターン設定機能」の一形態に相当する。ドット優先画素設定部156の機能が「ドット優先画素設定機能」と「ドット優先画素を変更する機能」の一形態に相当する。閾値設定部158の機能が「閾値設定機能」の一形態に相当する。
本実施形態により生成されたディザマスクを用いて、印刷用の画像データのハーフトーン処理が行われる。こうして生成されたハーフトーン画像に基づき、記録ヘッド24の各ノズルの吐出制御が行われる。これにより、バンディング、スジ若しくはやムラなどの画像欠陥の発生が抑制され、高品質な印刷画像が得られる。
[第2実施形態]
上述した第1実施形態の変形例である第2実施形態を説明する。
図18は第2実施形態による昇順の閾値設定処理の例を示すフローチャートである。図10で説明したフローチャートに代えて、図18に示すフローチャートを適用することができる。図18中、図10で説明したフローチャートと同一又は類似する工程には同一のステップ番号を付し、その説明は省略する。
図18に示す例では、ドット優先画素を設定した後の閾値の設定方法として、ボイドアンドクラスタ法の手法が用いられる。ボイドアンドクラスタ法については、例えば、Robert A. Ulichney “Void-and-cluster method for dither array generation”, Proc. SPIE 1913, Human Vision, Visual Processing, and Digital Display IV, 332 (September 8, 1993) に記載されている。
図18のフローチャートでは、ドット優先画素の設定とボイドアンドクラスタ法の手法を組み合わせて、閾値未設定画素の中から閾値を設定する画素を決定し、閾値を設定する処理を行う。
すなわち、図18に示すように、まず、初期ドット配置の各ドットに対応する画素を中心にガウシアンフィルタなどのぼかしフィルタを付加したエネルギーマスクを生成する(ステップS10)。
ステップS12からステップS18の処理の後、ステップS21において、ドット優先画素のうちエネルギー最小の画素に閾値を設定する。
ステップS21の後、ステップS26にて所定個数の閾値の設定を完了したか否かの判定を行う。ステップS26でNo判定となった場合は、ステップS27に進み、エネルギーマスクを更新する。
すなわち、ステップS27では、閾値の設定に伴い、閾値に対応する画素を中心にぼかしフィルタを付加してエネルギーマスクを更新する。ステップS27の処理の後、ステップS21に戻る。
所定個数の閾値の設定が完了するまでステップS21からステップS27の処理がループする。所定個数の閾値の設定が完了すると、ステップS26にてYes判定となり、ステップS28に進む。
図18のフローチャートの場合、粒状性評価の指標は、前回の閾値に対応するエネルギーマスクの各画素値そのものである。したがって、図10のステップS20で説明した閾値の仮設定や、閾値の仮設定の度に粒状性評価の指標を計算する必要はない。昇順の場合、エネルギー最小の画素が粒状性最良の画素と判断される。
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、同じ段階のノズル相対吐出率(つまり優先画素設定率)に対して、設定されるドット優先画素は1種類となっている。そして、同段階の設定に係る1種類のドット優先画素の全てに対して閾値を設定し終える前に、ノズル相対吐出率の段階が切り替えられ、ノズル相対吐出率の設定の変更に伴い、ドット優先画素も変更される。
ただし、発明の実施に際しては、同じ段階のノズル相対吐出率(つまり優先画素設定率)に対して、複数の異なる種類のドット優先画素を設定する形態も可能である。同じ段階のノズル相対吐出率に対しても、ドット優先画素を複数種類に切り替えて設定してゆくことにより、ステップS26の「所定個数」の設定に関わらず、粒状性を良好に保つことができる。
[第3実施形態]
第3実施形態では、同じ段階のノズル相対吐出率に対して複数種類のドット優先画素を切り替えて設定する形態を説明する。
図19は第3実施形態による昇順の閾値設定処理の例を示すフローチャートである。図10で説明したフローチャートに代えて、図19に示すフローチャートを適用することができる。図19中、図10で説明したフローチャートと同一又は類似する工程には同一のステップ番号を付し、その説明は省略する。
図19のフローチャートでは、ステップS26で「No判定」となった場合には、ステップS18に戻り、ドット優先画素を設定し直す構成となっている。また、ステップS22とステップS24の間に、粒状性評価ができたか否かを判定する工程(ステップS23)が追加されており、粒状性評価ができなかった場合の処理(ステップS25)を含んでいる。
つまり、図19の例では、ステップS24にて閾値を設定する度に、ステップS26のNo判定からステップS18に戻り、ドット優先画素の設定を変更する。これにより、既に設定された閾値の数に依らず閾値未設定の画素がドット優先画素に含まれることとなり、またそのドット優先画素の配置は、前回の閾値の設定時と変わることによって粒状性が良好に保たれる。
当然、ドット優先画素が全て既に設定された閾値の画素に含まれる場合もあり得るため、ステップS20において粒状性の評価が不可能であった場合の処理も必要となる。つまり、ステップS23では、ステップS22の後に、粒状性の評価ができたか否かを判定し、粒状性を評価できる画素が1画素もなかった場合、つまり、「閾値未設定かつドット優先画素」の画素が1画素も無かった場合(ステップS23でNo判定の場合)には、閾値設定せずに(ステップS25)、ステップS26の判定を経て、ステップS18に戻り、ステップS18にて再度、ドット優先画素の設定を繰り返すこととなる。
図19に示した第3実施形態は、同じ段階のノズル相対吐出率の設定の下で、閾値の設定の都度、順次にドット優先画素を更新していく形態となっている。かかる第3実施形態においても、既に一旦設定されたドット優先画素の全てに閾値が設定される前に、ドット優先画素を変更している。閾値が設定される度にドット優先画素が新たなものに変わる。既に設定されたドット優先画素の全てに閾値設定される前に、ドット優先画素を新たなものに変えることが「ドット優先画素を変更する」の概念に入る。
図19に示すフローチャートの場合は、ステップS26の「所定個数」をドット優先画素数よりも大きな値に設定しても粒状性が良好なまま、所定個数まで閾値を設定することができる。
ただし、ステップS18のドット優先画素の設定方法として、後述の第4例で述べるように、既に設定された閾値の画素を当該閾値のドット優先画素から除き、かつ、ドット優先画素数から既に設定された閾値の画素数を除く場合には、ステップS26の「所定個数」をドット優先画素数より大きな値に設定することはできない。仮に、「所定個数」をドット優先画素数より大きな値に設定すると、ステップS26の判定によるループが完了せずにエラーとなる。また、ステップS18でドット優先画素を切り替えることにより、従来技術よりも粒状性改善されるものの、閾値の数がドット優先画素数に近づくにつれ粒状性が悪化する。ただし、ノズルの吐出率の制御性能は、既に設定された閾値の画素や画素数を考慮してドット優先画素を設定することにより、考慮しない場合よりも向上する。
<ドット優先画素の設定方法の第4例>
ここでドット優先画素の設定方法の第4例を説明する。第4例は、既に設定した閾値をドット優先画素の設定に反映させる方法の例である。
まず各ノズルで記録する各ラスタにおいて設定するドット優先画素数を整数値で求め、この整数値から既に設定された閾値(以下、既設定閾値と記す)の個数を引く。
次に、各ノズルで記録する各ラスタにおいて既設定閾値の画素を除いて、rand() RAND_MAX % (記録画素数−既設定閾値数)で求まる整数に対応する番号の画素に1番目のドット優先画素を設定する。ここで「記録画素数」とは、各ラスタにおいて各ノズルが記録を担当する画素の数であり「主走査画素数/主走査方向パス数」に等しい。
次に、既設定閾値の画素と1番目のドット優先画素を除いて、rand()RAND_MAX %(記録画素数−既設定閾値数−1)で求まる整数に対応する番号の画素に2番目のドット優先画素を設定する。
次に、既設定閾値の画素と1番目と2番目のドット優先画素を除いて、rand()RAND_MAX %(記録画素数−既設定閾値数−2)で求まる整数に対応する番号の画素に3番目のドット優先画素を設定する。4番目以降も順次同様の手順で、ドット優先画素数だけドット優先画素を設定する。
この第4例によれば、既に設定閾値の画素以外の画素がドット優先画素に設定される。
[第4実施形態]
上述した第3実施形態の変形例である第4実施形態を説明する。図19におけるステップS18においてドット優先画素を設定せずに、ステップS20において、随時、対象の画素がドット優先画素か否かを判断してもよい。
図20は第4実施形態による昇順の閾値設定処理の例を示すフローチャートである。図19で説明したフローチャートに代えて、図20に示すフローチャートを適用することができる。図20中、図19で説明したフローチャートと同一又は類似する工程には同一のステップ番号を付し、その説明は省略する。
図20に示すフローチャートでは、図19のステップS18に代えて、ステップS18Aの工程を有する。ステップS18Aは、閾値未設定の画素について、ドット優先画素であるか否かの判断を行う工程である。注目する閾値未設定の画素がドット優先画素であると判断する方法として、例えば、既述した「条件式1」を利用することができる。つまり、条件式1を満たす場合に限り、ドット優先画素であると判断することができる。
図20に示すフローチャートは、ある閾値Aについて、図19のステップS18が省略され、ステップS18Aにおいて、閾値未設定の画素について、ドット優先画素か否かの判断を行う。閾値Aの「A」は、1からディザマスクサイズまでの任意の値である。
ステップS18Aにおいて、ドット優先画素と判断された画素については、ステップS20に進み、閾値の仮設定を行い、粒状性を評価する。そしてステップS22に進む。
ステップS18Aにおいて、ドット優先画素と判断されなかった場合は、ステップS20をスキップしてステップS22に進む。ステップS22では、閾値を設定する画素の候補である全候補画素について評価を完了したか否かの判定を行う。ここでの全候補画素とは、閾値未設定画素の集合である。
ステップS18Aにてドット優先画素と判断することが「ドット優先画素を設定する」ことに相当する。また、ステップS18Aにてドット優先画素と判断された画素が「ドット優先画素に設定された画素」に相当する。ステップS18Aは「ドット優先画素設定工程」の一形態に相当する。
そして、ステップS24において、ステップS20で設定された全てのドット優先画素のうち、粒状性が最良の画素に閾値Aを設定する。
その後、ステップS26で、未だ閾値個数が所定個数に達していない場合には、ステップS18Aに戻り、次の閾値A+1について、ステップS18AからステップS26の工程を繰り返す。
ここで、閾値AのステップS18Aで一旦設定されたドット優先画素は、次の閾値A+1でもドット優先画素として保持されるべきものと考えられるが、次の閾値A+1では、ステップS18Aにて、再度、ドット優先画素の判断をやり直している。つまり、閾値AのステップS18Aで一旦設定されたドット優先画素の全てに閾値が設定される前に、ドット優先画素を新たなものに変えているため、「ドット優先画素を変更する」の概念に入る。
[他の変形例]
図19のフローチャートでは、ステップS24にて閾値を一つ設定する度に、ステップS18に戻ってドット優先画素を変更するが、このような形態に限らず、閾値を複数個設定する度に、ドット優先画素を変更してもよい。
[第5実施形態]
第1実施形態から第4実施形態では、主走査方向のパス数が「1」である場合の例を説明したが、パス数が2以上の場合でも全く同様の方法を適用することができる。第5実施形態としてパス数が2である場合の例に言及する。第5実施形態では、説明を簡単にするために、ノズルの個数が10個の記録ヘッドを用いる例を説明する。
図21は第5実施形態における各ノズルのノズル相対吐出率の例である。図21の横軸はノズル番号、縦軸はノズル相対吐出率を示している。図21に示すノズル相対吐出率は、例えば、段階1のものである。
図22はノズルパターンの例である。図22は、記録解像度600×600dpiとして、ノズル配列密度が300npi、ノズル数が10個、紙送り量が5/600dpi,主走査方向のパス数が2の場合における、20×20画素のディザマスクに対応するノズルパターンを示している。表記のルールは図13の例と同様である。図22の左側には、走査パターンを模式的に示した。
図22に示すように、主走査方向のパス数が2である場合、20×20画素のディザマスクに対応するノズルパターンは、奇数列と偶数列とで使用されるノズルが異なる。以下、説明の便宜上、奇数列(図22の左から1列目、3列目、5列目・・・19列目)の記録に用いるノズルを「左ノズル」、偶数列(図22の左から2列目、4列目、6列目・・・20列目)の記録に用いるノズルを「右ノズル」とよぶ。
図23は、図21に示したノズル相対吐出率と、図22に示したノズルパターンを基に設定されるドット優先画素の配置の例を示している。
図23において「左ノズル相対吐出率」とは、図22に示した20×20画素のディザマスクに対応するノズルパターンにおける奇数列に属する画素を記録する各ノズルのノズル相対吐出率を意味する。また、図23において「右ノズル相対吐出率」とは、同ノズルパターンにおける偶数列に属する画素を記録する各ノズルのノズル相対吐出率を意味する。
「左ノズル優先画素数」とは、図22に示した20×20画素のディザマスクに対応するノズルパターンにおける奇数列に属する画素からなる主走査方向ラスタ内のドット優先画素数を意味する。「右ノズル優先画素数」とは、図22に示した20×20画素のディザマスクに対応するノズルパターンにおける偶数列に属する画素からなる主走査方向ラスタ内のドット優先画素数を意味する。
例えば、1行目の左ノズル優先画素数は、左ノズル相対吐出率×主走査画素数/主走査方向パス数=1×20/2=10と計算される。また、1行目の右ノズル優先画素数は、右ノズル相対吐出率×主走査画素数/主走査方向パス数=0.2×20/2=2と計算される。
主走査方向パス数が2以上の場合も、第1実施形態から第4実施形態で説明した方法と同様の方法を適用することができる。
<ドット優先画素を規則的に設定する場合の具体例>
ここでは、「ドット優先画素の設定方法の第3例」で説明した方法に関して、図22の例に当てはめて説明する。図22において、例えば2行目のラスタの左ノズルについてはノズル相対吐出率が0.4であるため、1/0.4= 2.5の整数倍の値を整数値に丸めた番号の画素にドット優先画素を設定することになる。ここで図22では、主走査方向パス数が2であるため、吐出画素間隔の「1」とは2画素に相当する。したがって、整数値の丸め方を四捨五入とした場合、左端画素を1番目として5、9、15、19番目の画素(それぞれ2.5、5、7.5、10を整数値に丸めた3、5、8、10に相当する番号の画素)にドット優先画素を設定することとなる。また、2行目のラスタの右ノズルについてはノズル相対吐出率が0.8であるため、1/0.8=1.25の整数倍の値を整数値に丸めた番号の画素にドット優先画素を設定することになる。つまり、整数値の丸め方を四捨五入とした場合、2、6、8、10、12、16、18、20番目の画素(それぞれ1.25、2.5、3.75、5、6.25、7.5、8.75、10を整数値に丸めた1、3、4、5、6、8、9、10に相当する番号の画素)にドット優先画素を設定することになる。
[従来方法と本発明の方法との比較]
図24は本発明を適用して生成されたディザマスクの粒状性と、従来方法によって生成されたディザマスクの粒状性とを比較して示したグラフである。図24の横軸はデューティ(Duty)を表し、縦軸は粒状性の評価値を示している。図24において点線で示したグラフ[1]は、ドット優先画素を設定せずに生成したディザマスクの粒状性を示すグラフである。図24において破線で示したグラフ[2]は、ドット優先画素を設定し、かつその設定したドット優先画素を変更せずにディザマスクを生成した場合の粒状性を示すグラフである。図24において実線で示したグラフ[3]は、本発明を適用して生成したディザマスクの粒状性を示している。
従来方法によるグラフ[2]は、デューティ50%の乱数的なドット優先画素を設定しており、デューティ50%に近づくにつれて急速に粒状性が悪化している。また、グラフ[2]のデューティ50%以上の領域は、段階的にドット優先画素を増やしつつも、各段階のドット優先画素によって閾値の配置の自由度が低下するため、粒状性の悪い状態が続いている。
ドット優先画素を設定したグラフ[2]は、ドット優先画素を設定せずに自由にドットの配置を定めた場合のグラフ[1]と比べて、粒状性が大幅に悪化する。
これに対し、本発明を適用して生成したディザマスク(グラフ[3])は、グラフ[1]と同等に、全デューティ領域で良好な粒状性を保っている。
図25は図24のグラフ[3]で示したディザマスクを生成する際に用いたノズル相対吐出率の例である。図25に示す各ノズルのノズル相対吐出率は、デューティ50%以下の領域について適用されるものである。
図24のグラフ[2]から明らかなように、デューティ50%の手前のデューティ40%あたりから粒状性が急激に悪化し始める。
これに対し、本発明の実施形態によれば、粒状性が急激に悪化する手前のデューティ領域にてドット優先画素が変更され、ドットの配置の自由度を高めていることから、良好な粒状性が保たれている。
本発明の実施形態によれば、従来方法と比較して粒状性が良好なディザマスクを得ることができる。
[他の変形例1]
第1実施形態から第5実施形態では、インクジェット記録装置として、紫外線硬化型インクを用いるワイドフォーマットプリンタを例に挙げて説明を行ったが、紫外線硬化型インクを用いるものに限らず、様々な種類のインクを用いて記録媒体に画像を記録する各種のインクジェット記録装置に本発明を適用することができる。
第1実施形態から第5実施形態では、マルチパス方式(シリアル方式)の記録ヘッドによる画像記録時に発生するバンディングを抑制するため、ノズル列の両端部のノズルのノズル相対吐出率を、ノズル列の中央部のノズルのノズル相対吐出率よりも小さく設定しているが、記録ヘッドの種類や記録方式などに応じてノズルごとのノズル相対吐出率は適宜変更してもよい。
[他の変形例2]
図16や図23で例示したように、上述の各実施形態では、各ノズルのノズル相対吐出率を設定し、ノズル相対吐出率から各ラスタのドット優先画素を設定したが、発明の実施に際しては、ノズル相対吐出率を設定する構成に代えて、ディザマスクにおける各画素の記録を担当する各ノズルについて、それぞれのノズルが記録を担当する画素のうち閾値を設定する画素の候補となるドット優先画素の比率又は個数を設定してもよい。
例えば、図16で示したドット優先画素数や、図23で示した左ノズル優先画素数及び右ノズル優先画素数は、各ノズルの記録担当画素におけるドット優先画素の個数であり、「優先画素設定率」の一形態に相当する。
[他の変形例3]
また、第1実施形態から第5実施形態では、シリアル方式の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置を例に挙げて説明を行ったが、発明の適用に際して、対象となるインクジェット記録装置はシリアル方式に限らない。シングルパス方式の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置にも本発明を適用することができる。
すなわち、発明が解決しようとする課題は、シリアル式インクジェットプリンタに限らず、ラインヘッドを用いるシングルパス方式のインクジェットプリンタにも関連する。ラインヘッドは、複数のヘッドモジュールを主走査方向に繋ぎ合わせて構成されるものが多い。かかる構造を有するラインヘッドを用いる場合、各ヘッドモジュールの繋ぎ目の部分に相当するヘッドモジュールの端部に、他のヘッドモジュールのノズル列の記録領域と重なるノズル群の重畳領域が設けられている。
ラインヘッドを構成する各ヘッドモジュールの特性の違いにより、繋ぎ目部分の重畳領域でスジやムラが発生したり、ヘッドモジュールの主走査方向長さの周期で濃度ムラが発生したりする場合がある。このような課題は、スジ又は帯状の濃度ムラが発生するという点で、シリアル式インクジェットプリンタで説明した「バンディング」と類似するものである。本明細書における「バンディング」という用語は、シリアル式インクジェットプリンタによる濃度ムラに限らず、シングルパス方式のインクジェットプリンタによる濃度ムラも含む包括的な意味で用いる。
[第6実施形態]
図26(A)は、シングルパス方式の記録ヘッド300の概略図である。図26(B)は、記録ヘッド300の各ノズル62のノズル相対吐出率を示したグラフである。
シングルパス方式の記録ヘッド300は、主走査方向に複数のヘッドモジュールHA,HB,HCを繋ぎ合せた構造を有するラインヘッドである。図26(A),(B)では、各ヘッドモジュールHA,HB,HCについて、主走査方向のノズル列を構成するノズル62の数を「20」としたが、ノズル数やノズル62の配列形態についてはこの例に限定されない。
記録ヘッド300には、複数のヘッドモジュールHA,HB,HCの繋ぎ目を滑らかにし、かつ各ヘッドモジュールHA,HB,HCの端部で生ずるドット形成位置や吐出量の誤差を目立たなくするためにノズル列の重畳領域が設けられている。
すなわち、図26(A)に示すように、記録ヘッド300には、ヘッドモジュールHAとヘッドモジュールHBとの重畳領域、ヘッドモジュールHBとヘッドモジュールHCとの重畳領域が設けられている。各重畳領域では副走査方向にヘッドモジュールHAとヘッドモジュールHB、ヘッドモジュールHBとヘッドモジュールHCのノズル62を交互に使用してドットが形成される。
しかしながら、ヘッドモジュールHAとヘッドモジュールHB、ヘッドモジュールHBとヘッドモジュールHCのノズル位置や吐出量の差異によって、重畳領域におけるスジやムラ、或いは、各ヘッドモジュール周期の濃度ムラなどの画像欠陥が発生してしまう。
この課題に対して、図26(B)に示すように、重畳領域において、ヘッドモジュール端部のノズル62に近いほどノズル相対吐出率を小さく設定する。そして、ディザマスクの生成に際して、図26(B)に示すノズル相対吐出率を反映させて、閾値を決定する。
具体的なディザマスクの生成方法については、第1実施形態から第5実施形態で説明した方法と同様の方法を用いることができる。
こうして得られたディザマスクを用いて、印刷用の画像データのハーフトーン処理が行われ、生成されたハーフトーン画像に基づき、記録ヘッド300の各ノズルの吐出制御が行われる。これにより、スジやムラなどの画像欠陥の発生を抑えることができる。
<コンピュータをディザマスク生成装置として機能させるプログラムについて>
上述の各実施形態で説明したディザマスク生成方法によりディザマスクを生成する装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムをCD−ROM(Compact Disc read-only memory)や磁気ディスクその他のコンピュータ可読媒体(有体物たる非一時的な情報記憶媒体)に記録し、情報記憶媒体を通じてプログラムを提供することが可能である。このような情報記憶媒体にプログラムを記憶させて提供する態様に代えて、インターネットなどの通信ネットワークを利用してプログラム信号をダウンロードサービスとして提供することも可能である。
また、ディザマスク生成装置の機能をアプリケーションサーバとして提供し、通信ネットワークを通じて処理機能を提供するサービスを行うことも可能である。
さらに、このプログラムをコンピュータに組み込むことにより、コンピュータにディザマスク生成装置の各機能を実現させることができ、上述の実施形態で説明したディザマスク生成機能を実現することができる。
また、本実施形態で説明したディザマスク生成機能を含む印刷制御を実現するためのプログラムの一部又は全部をホストコンピュータなどの上位制御装置に組み込む態様や、インクジェット記録装置側の中央演算処理装置(CPU)の動作プログラムとして適用することも可能である。
<実施形態の利点>
本発明の実施形態によれば、従来の方法よりも、粒状性が良好なディザマスクを生成することが可能である。
本実施形態によって生成されるディザマスクを用いてハーフトーン処理を実施し、得られたハーフトーン画像に基づいてインクの吐出制御を行うことにより、バンディングが抑制された良好な画像を形成することが可能である。
[その他]
上記の実施形態では、濃度変化によるバンディング、スジ若しくはムラを抑制することを目的としたが、インクジェット記録装置においては光沢変化によるバンディング、スジ若しくはムラも同様に生じ、本課題に対しても本発明は有効である。また、同様にドットパターンの変化によるバンディング、スジ若しくはムラに対しても本発明は有効である。
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものでは無く、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。