以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.クロック信号生成回路
図1に本実施形態のクロック信号生成回路の構成例を示す。クロック信号生成回路は、電圧生成回路160とCR発振回路170を含む。なおクロック信号生成回路は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
電圧生成回路160は電源電圧VDOSを生成して、CR発振回路170に供給する。例えば仕事関数差に基づく電源電圧VDOSを生成して供給する。
CR発振回路170は、キャパシターCと抵抗Rと増幅回路180(バッファー回路)を有する。CR発振回路170は、電源電圧VDOSが供給されて動作して、クロック信号CLK(発振信号)を生成する。具体的にはCR発振回路170は、キャパシターCと抵抗Rで構成されるRC回路を用いて信号を入力に帰還して発振信号を生成し、この発振信号を波形整形した信号をクロック信号CLKとして出力する。
増幅回路180(反転増幅回路)はNAND回路NAとインバーター回路IV1、IV2を有する。インバーター回路IV1の出力は、キャパシターCを介して、増幅回路180の入力に帰還される。インバーター回路IV2の出力は、抵抗Rを介して、増幅回路180の入力に帰還される。NAND回路NAの第1の入力が、増幅回路180の入力になり、NAND回路NAの第2の入力にはイネーブル信号ENが入力される。イネーブル信号ENがHレベルになるとCR発振回路170が動作イネーブル状態に設定され、イネーブル信号ENがLレベルになると動作ディスエーブル状態に設定される。
インバーター回路IV2から出力される発振信号はインバーター回路IV3により波形整形されて、矩形波のクロック信号CLKとして出力される。例えば発振信号は、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジが鈍った波形となっている。インバーター回路IV3は、このような波形の発振信号を、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジが急峻な矩形波に、波形整形する。なお、インバーター回路IV3の後段に分周回路を設け、クロック信CLKを分周することで得られた1又は複数のクロック信号を出力するようにしてもよい。
電圧生成回路160は、トランジスターの仕事関数差に基づいて、例えば負の温度特性(第1の温度特性)を有する電源電圧VDOSを生成して、CR発振回路170の増幅回路180の電源として供給する。例えば電圧生成回路160(レギュレーター回路)には高電位側の電源電圧VDDLと低電位側の電源電圧VSS(GND)が供給される。そして後述するように電圧生成回路160は、第1のトランジスターと、第1のトランジスターとはゲート電極の導電性が異なる第2のトランジスターを有する。例えば第1のトランジスターのゲート電極がN型である場合には、第2のトランジスターのゲート電極はP型となっている。そして電圧生成回路160は、第1、第2のトランジスターの仕事関数差に対応する電圧を、電源電圧VDOSとして供給する。即ち、異種ゲートの仕事関数差に基づく電源電圧VDOSを供給する。仕事関数差に基づく電源電圧VDOSは、例えば負の温度特性を有しており、温度が上昇すると電源電圧VDOSは低くなる。
一方、CR発振回路170の発振周波数は、電源電圧VDOSが固定電圧(一定)の場合には正の温度特性を有する。即ち、電源電圧VDOSが固定となる条件では、温度が上昇すると発振周波数は高くなる。
例えばNAND回路NAやインバーター回路IV1、IV2の各回路の信号遅延の影響を除外した場合のCR発振回路170の発振周波数をf0とする。すると発振周波数f0は、一般的には下式(1)のように表される。なおキャパシターCの容量値、抵抗Rの抵抗値を同じ符号C、Rで表している。
f0=1/(2.2×C×R) (1)
本実施形態では、抵抗Rとして負の温度特性の抵抗を使用している。例えば抵抗Rとしてポリシリコン抵抗等を使用する。ポリシリコン抵抗は負の温度特性を有するため、温度が上昇すると抵抗Rの抵抗値は低くなる。従って、温度が上昇すると、発振周波数f0=1/(2.2×C×R)は高くなる。即ち、NAND回路等の各回路の信号遅延の影響を除外した発振周波数f0は正の温度特性を有する。
またNAND回路NA、インバーター回路IV1、IV2の各回路を構成するMOSのトランジスターのしきい値電圧は負の温度特性を有しており、温度が上昇するとしきい値電圧は低下する。しきい値電圧が低下すると、NAND回路等の各回路での信号の遅延時間は短くなり、CR発振回路170の発振周波数は上昇する。例えば各回路の負荷容量をCLとし、ドレイン電流をIDとし、電源電圧をVDOSとし、所定係数をkとすると、各回路での遅延時間は下式(2)のように表すことができる。
td=k{(CL×VDOS)/ID} (2)
上式(2)より、温度が上昇して、しきい値電圧が低下すると、ドレイン電流IDが増加することで、遅延時間tdは短くなり、電源電圧VDOSが固定の場合の発振周波数は上昇する。
図2は電圧生成回路160の詳細な構成例である。電圧生成回路160は差動部162と出力部164を有する。そして電圧生成回路160は、高電位側の電源電圧VDDL(例えば1.8V)と低電位側の電源電圧VSS(例えば0V)が供給されて動作する。
差動部162は、カレントミラー回路を構成するトランジスターTA1、TA2と、差動対を構成するトランジスターTA3、TA4と、電流源を構成するトランジスターTA5及び抵抗素子RA1を有する。トランジスターTA1、TA2は例えばP型トランジスター(広義には第1導電型のトランジスター)であり、トランジスターTA3、TA4、TA5はN型トランジスター(広義には第2導電型のトランジスター)である。またトランジスターTA1、TA2、TA4はエンハンスメント型のトランジスターであり、トランジスターTA3、TA5はデプレッション型のトランジスターである。
トランジスターTA1、TA2は、電源電圧VDDL(第1の電源電圧)のノードとノードNA1、NA2との間に設けられる。トランジスターTA1、TA2のソースには電源電圧VDDLが供給され、トランジスターTA1、TA2のゲート電極はトランジスターTA2のドレインのノードNA2に接続される。
トランジスターTA3、TA4は、ノードNA1、NA2とノードNA3との間に設けられる。トランジスターTA3のゲート電極には、電源電圧VSSが入力される。トランジスターTA4のゲート電極は、電圧生成回路160の出力ノードNA4に接続される。
トランジスターTA5、抵抗素子RA1は、ノードNA3と電源電圧VSSのノードとの間に直列に設けられて、電流源を構成している。トランジスターTA5のゲート電極には電源電圧VSSが入力され、トランジスターTA5のソースには抵抗素子RA1の一端が接続される。抵抗素子RA1の他端は電源電圧VSSのノードに接続される。
出力部164は、駆動用のトランジスターTA6と、トランジスターTA7及び抵抗素子RA2を含む。トランジスターTA6はエンハンスメント型のP型トランジスターであり、トランジスターTA7はデプレッション型のN型トランジスターである。トランジスターTA6は、電源電圧VDDLのノードと出力ノードNA4との間に設けられ、そのゲート電極に差動部162の出力ノードNA1が接続される。トランジスターTA7、抵抗素子RA2は、出力ノードNA4と電源電圧VSSのノードの間に直列に設けられて電流源を構成する。トランジスターTA7のゲート電極には電源電圧VSSが入力される。
トランジスターTA3は、トランジスターTA4とはゲート電極の導電性が異なるトランジスターになっている。例えばトランジスターTA3のゲート電極はN型であり、トランジスターTA4のゲート電極はP型となっている。例えばトランジスターTA3とTA4は、基板の不純物濃度やチャネルの不純物濃度は同じであるが、ゲート電極の導電性が異なっており、ゲート電極の不純物濃度が異なっている。
具体的には、MOSトランジスターのしきい値電圧は、Vth=φMS−QSS/COX+2φF+QD/COXと表すことができる。ここでφMSは、ゲート電極と基板の仕事関数差であり、QSSは酸化膜内の固定電荷であり、COXはゲート酸化膜の単位面積当たりの容量であり、φFはフェルミ準位であり、QDは空乏層内の電荷である。トランジスターTA3のN型ゲート電極の不純物濃度と、トランジスターTA4のP型ゲート電極の不純物濃度の設定により、デプレッション型のトランジスターTA3のしきい値電圧VTNは例えば−0.52Vに設定されており、エンハンスメント型のトランジスターTA4のしきい値電圧VTPは例えば0.45Vに設定されている。従って、電圧生成回路160の出力ノードNA4には、VTP−VTN=0.97Vの電源電圧VDOSが出力されるようになる。即ち、電源電圧VDDLが変動した場合にも、一定電圧の電源電圧VDOSを供給することが可能になる。
また図2では、トランジスターTA5、TA7がデプレッション型のトランジスターであるため、バイアス電流の生成回路を別途設けなくても、差動部162、出力部164にバイアス電流を流す電流源を実現できる。
なお、電圧生成回路160は図2の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えば電圧生成回路160は、少なくとも、第1のトランジスター(TA3)と、第1のトランジスターとはゲート電極の導電性が異なる第2のトランジスター(TA4)を有し、第1のトランジスターと第2のトランジスターとの仕事関数差電圧に対応する負の温度特性の電圧を供給できる回路であればよい。
図3(A)は、電源電圧VDOSが固定の場合の発振周波数の温度特性のシミュレーション結果を示す図である。上述したように、温度が上昇すると、抵抗Rの抵抗値が低くなってf0=1/(2.2×C×R)が高くなると共に、NAND回路等の各回路の遅延時間tdが短くなる。従って、図3(A)に示すように、電源電圧VDOSが固定の場合のCR発振回路170の発振周波数は、温度が上昇すると高くなり、正の温度特性を有する。
図3(B)は、電源電圧VDOSの温度特性のシミュレーション結果を示す図である。上述したように本実施形態では、電圧生成回路160が、トランジスターの仕事関数差に基づいて負の温度特性の電源電圧VDOSを生成する。従って、図3(B)に示すように、電源電圧VDOSは温度が上昇すると減少し、負の温度特性を有する。
図4は、クロック信号生成回路の発振周波数の変動率のシミュレーション結果及び実機測定結果を示す図である。
本実施形態では、図3(A)のように電源電圧VDOSが固定の場合に発振周波数が正の温度特性を有するCR発振回路170に対して、図3(B)に示すように負の温度特性の電源電圧VDOSを供給する。このようにすれば、CR発振回路170の単体での発振周波数が持つ正の温度特性(図3(A))を、電源電圧VDOSの負の温度特性(図3(B))で打ち消すことが可能になる。これにより図4に示すように、温度変動に対する発振周波数の変動率を低く抑えることができ、例えば変動率を2%程度以下に抑えることが可能になる。このように本実施形態によれば、発振周波数の適正な温度補償が可能になり、温度変動に対する周波数の変動率が低いクロック信号CLKを供給できるようになる。
例えば前述した従来技術では、発振周波数の温度補償を実現するために、基準電圧生成回路や発振回路の増幅回路に加えて、演算増幅器等の他の回路要素を別途設ける必要がある。このため、消費電力や回路規模の増加を招くという問題があった。
これに対して本実施形態では、CR発振回路170に対して、図3(B)のような負の温度特性の電源電圧VDOSを供給する電圧生成回路160を設けるだけで、発振周波数の温度補償を実現できる。従って、従来技術に比べて、消費電流や回路規模の増加を抑えながら発振周波数の温度補償を実現できるようになる。
即ち、一般的な温度補償は、正負の異なる温度特性の回路素子を組合わせることで実現される。これに対して本実施形態では、電源電圧固定時のCR発振回路170の発振周波数が図3(A)のような正の温度特性を有することに着目し、この正の温度特性を打ち消す(相殺する)ような負の温度特性の電源電圧VDOSをCR発振回路170に供給している。このような負の温度特性の電源電圧VDOSはトランジスターの仕事関数差を利用して、小さな回路規模の簡素な回路構成で生成できるため、回路規模の増加を最小限に抑えることができる。また仕事関数差を利用することで、電源電圧変動に対する発振周波数の変動も低く抑えることができる。即ち、図2において電源電圧VDDLが変動した場合にも、仕事関数差に基づく電源電圧VDOSの変動を最小限にできる。従って、このような仕事関数差に基づく負の温度特性の電源電圧VDOSの供給により、CR発振回路170の正の温度特性を相殺すれば、温度変動に対する発振周波数の変動のみならず、電源電圧変動に対する発振周波数の変動も最小限に抑えることが可能になる。
またCR発振回路170は、例えば水晶等の振動子を用いた発振回路に比べて、起動時間が短く、安定した高速のクロック信号を早期に供給できるという利点がある。従って、CR発振回路170により生成されたクロック信号を、後述するようなジャイロセンサー等の検出装置の動作用のクロック信号として使用すれば、検出装置の起動や動作速度の高速化を実現できる。
ところが、通常のCR発振回路170は図3(A)のように温度変動に対して発振周波数が大きく変動してしまう。従って、CR発振回路170により生成されたクロック信号を、ジャイロセンサー等の検出装置の動作用のクロック信号としてそのまま使用してしまうと、クロック信号の周波数変動により、検出装置の性能が低下してしまうおそれがある。
この点、本実施形態のクロック信号生成回路によれば、CR発振回路170の正の温度特性が、負の温度特性の電源電圧VDOSの供給により打ち消されて、発振周波数の温度補償が行われるため、検出装置の性能を維持できる。従って、本実施形態によれば、検出装置の動作や起動の高速化と検出装置の性能の維持とを両立して実現できる。
2.CR発振回路
図5にCR発振回路170の他の構成例を示す。図5では、図1の構成に対して抵抗R等の接続構成が異なっている。即ち、図1では、インバーター回路IV2の出力が抵抗Rにより増幅回路180の入力に帰還される接続構成となっているが、図5では、NAND回路NAの出力が抵抗Rにより増幅回路180の入力に帰還される接続構成となっている。このように抵抗R、キャパシターCの接続構成としては種々の変形実施が可能である。またバッファー回路180の構成も種々の変形実施が可能であり、インバーター回路の段数を変更したり、NAND回路の代わりにインバーター回路やNOR回路などの他の回路を採用してもよい。
図6にCR発振回路170の更に別の構成例を示す。図6では、抵抗R(抵抗回路)は、直列接続される複数の抵抗素子R1〜R6と基準抵抗素子R7を有する。また直列接続される複数のスイッチSW1〜SW6を有する。抵抗素子R1〜R6と基準抵抗素子R7は、増幅回路180の出力ノードNQと入力ノードNIとの間に直列接続される。スイッチSW1〜SW6は出力ノードNQとノードN6の間に直列接続される。複数の抵抗素子R1〜R6の各抵抗素子に対して、スイッチSW1〜SW6の各スイッチが並列に設けられている。スイッチSW1〜SW6は、例えばMOSのトランジスター(トランスファーゲート等)により実現してもよいし、後述するようなヒューズ素子などにより実現してもよい。
図6の構成によれば、SW1〜SW6の各スイッチのオン・オフを設定することで、抵抗Rの抵抗値を可変に設定できる。例えばスイッチSW1〜SW6を全てオフにすれば、抵抗Rの抵抗値はR1+R2+R3+R4+R5+R6+R7となる。一方、スイッチSW1〜SW6を全てオンにすれば、抵抗Rの抵抗値はR7となる。なお、本実施形態では説明の簡素化のために、抵抗と抵抗値を同じ符号で表している。
抵抗R1〜R6の抵抗値は例えばバイナリーで重み付けされている。例えばR1〜R6の各抵抗は、1又は複数のユニット抵抗により構成されている。例えばR1は20=1個の抵抗ユニットで構成され、R2は直列接続された21=2個の抵抗ユニットにより構成され、R3は直列接続された22個の抵抗ユニットにより構成される。同様に、R4、R5、R6は、各々、直列接続された23個、24個、25個の抵抗ユニットにより構成される。従って、ユニット抵抗の抵抗値をRUとすると、R1の抵抗値は20×RU(=RU)、R2の抵抗値は21×RU(=2×RU)、R3の抵抗値は22×RU、R4の抵抗値は23×RU、R5の抵抗値は24×RU、R6の抵抗値は25×RUに設定される。
なお、R7は、基準となる発振周波数を設定するための基準抵抗素子であり、R7の抵抗値である基準抵抗値をRBとすると、RBは例えばR6と同程度の抵抗値に設定できる。このように設定することで、抵抗Rの抵抗値を所定範囲内(例えばRB〜RB+RU×(26−1)の範囲)で可変に設定できるようになる。なお抵抗値の設定手法は、このような設定には限定されず、種々の変形実施が可能である。
3.発振周波数の調整
次に本実施形態による発振周波数の調整手法の一例について説明する。図7(A)、図7(B)はヒューズカットにより発振周波数を調整する手法を説明する図である。
図7(A)、図7(B)では図6のスイッチ素子SW1〜SW6としてヒューズ素子FU1〜FU6が設けられている。即ち、抵抗Rは、直列接続される複数の抵抗素子R1〜R6及び基準抵抗素子R7と、複数の抵抗素子R1〜R6の各抵抗素子に対して各ヒューズ素子が並列に設けられる複数のヒューズ素子FU1〜FU6を有する。例えば増幅回路180の出力ノードNQとノードN1との間に抵抗素子R1とヒューズ素子FU1が並列接続され、ノードN1とノードN2の間に抵抗素子R2とヒューズ素子FU2が並列接続される。抵抗素子R3〜R6とヒューズ素子FU3〜FU6の接続構成も同様である。これらのR1〜R6の抵抗値は例えばバイナリーに重み付けされており、前述したように例えばR1の抵抗値は20×RU、R2の抵抗値は21×RU、R3の抵抗値は22×RU、・・・・、R6の抵抗値は25×RUに設定される。
また基準抵抗素子R7は、前述したように基準周波数を設定するためのものであり、その抵抗値が基準抵抗値RBとなる。基準抵抗素子R7は、抵抗素子R6の一端のノードN6と、増幅回路180の入力ノードNIとの間に設けられる。
ヒューズカット前においては、図7(A)に示すように全てのヒューズFU1〜FU6が非カット状態となっている。従って、抵抗Rの抵抗値は、R7の基準抵抗値RB(正確には、RB+ヒューズ素子等の寄生抵抗値)に設定される。例えばターゲットの発振周波数を4MHzとすると、図7(A)のヒューズカット前において、製造プロセスや温度等の条件がティピカル条件において発振周波数が6MHz程度になるように、基準抵抗値RBが設定される。そして、この状態でCR発振回路170の発振周波数が計測される。計測された発振周波数をfrとすると、例えば下式(3)に示すようにfrの一次式で表されるトリミング式によりヒューズ値が計算される。なおa、bは定数である。
ヒューズ値=a×fr+b (3)
計算されたヒューズ値に基づいて、ヒューズ素子FU1〜FU6のいずれをカット(トリミング)するかが決定される。例えば図7(B)では、トリミング式で計算されたヒューズ値に基づいて、ヒューズFU1、FU3、FU4、FU5がカットされている。この場合には、抵抗Rの抵抗値は、RB+R1+R3+R4+R5(+寄生抵抗値)になる。
具体的にはヒューズ値(整数に変換した後のヒューズ値)をバイナリー表現のデータに変換することで、カットするヒューズ素子を決定できる。例えばヒューズ値=1=20であれば、ヒューズ素子FU1をカットし、ヒューズ値=2=21であれば、ヒューズ素子FU2をカットする。また、ヒューズ値=3=20+21であれば、ヒューズ素子FU1及びFU2をカットし、ヒューズ値=4=22であれば、ヒューズ素子FU3をカットし、ヒューズ値=5=20+22であれば、ヒューズ素子FU1及びFU3をカットする。即ち、ヒューズFU1がバイナリー表現のヒューズ値のLSBに相当し、ヒューズFU2がLSBの次のビットに相当し、ヒューズFU3がその次のビットに相当する。同様にヒューズFU6はバイナリー表現のヒューズ値のMSBに相当する。そしてヒューズ値のLSBが1であれば、ヒューズFU1をカットし、0であればカットしない。LSBの次のビットが1であれば、ヒューズFU2をカットし、0であればカットしない。
図8は、ヒューズカット前に測定された発振周波数frと、ヒューズターゲット値及びトリミング式(式(3))で計算されたヒューズ値との関係を示す図である。
例えば図8は、プロセス条件を振ったシミュレーションを行って、発振周波数をターゲット周波数(例えば4MHz)に設定するヒューズターゲット値(ヒューズ値のターゲット値)を求めたものである。図8のFT1(黒丸)は、ヒューズカット前の発振周波数(図7(A))がfr=faである場合の、ヒューズターゲット値である。また、図8のTR1は、ヒューズターゲット値FT1に対して設定されたヒューズターゲット範囲である。ターゲット周波数が例えば4MHzである場合には、ヒューズターゲット範囲TR1は、発振周波数が例えば4MHz±5%になる範囲に対して設定される。即ち、特定のプロセス条件でヒューズカット前の発振周波数がfr=faである場合には、ヒューズ値がヒューズターゲット範囲TR1内に入っていれば、発振周波数は4MHz±5%の範囲に収まることになる。
図8のB1、B2、B3、B4に示すように、プロセス条件に応じてヒューズターゲット値は変化する。
例えば図8のB1は、増幅回路180のトランジスターのしきい値電圧が高く、抵抗Rの抵抗値やキャパシターCの容量値が大きいというプロセス条件に対応するヒューズターゲット値である。即ち、当該プロセス条件で行ったヒューズターゲット値のシミュレーション結果である。この場合には、ヒューズカット前の発振周波数frは低い周波数になっており、発振周波数をターゲット周波数に設定するヒューズ値は小さな値となる。従って、ヒューズ値が小さな値になる設定(カットされるヒューズの数が少ない)でヒューズをカットすることで、発振周波数をターゲット周波数に近づけることができる。
一方、図8のB4は、増幅回路180のトランジスターのしきい値電圧が低く、抵抗Rの抵抗値やキャパシターCの容量値が小さいというプロセス条件に対応するヒューズターゲット値である。この場合には、ヒューズカット前の発振周波数frは高い周波数になっており、発振周波数をターゲット周波数に設定するヒューズ値は大きな値となる。従って、ヒューズ値が大きな値になる設定(カットされるヒューズの数が多い)でヒューズをカットすることで、発振周波数をターゲット周波数に近づけることができる。
そして上式(3)のヒューズ値のトリミング式の係数a、bは、図8のヒューズターゲット値のシミュレーション結果に基づき設定できる。
しかしながら、図8のA1、A2に示すように、トリミング式から求められたヒューズ値が、ヒューズターゲット範囲(ターゲット周波数±5%)から外れてしまう場合がある。例えばヒューズカット前の発振周波数がfr=faである場合のヒューズ値(白丸)は、ヒューズターゲット値FT1(黒丸)のヒューズターゲット範囲TR1(4MHz±5%)から外れている。これは、上式(3)のトリミング式はfrの一次式であり、図8のB1、B2、B3、B4に示すようにプロセス条件を振った場合のヒューズターゲット値は、このような一次式のトリミング式で正確にフィッティングすることができないからである。即ち、トランジスターのしきい値電圧のバラツキ等が原因で、B1、B2、B3、B4の各プロセス条件に対応する一次式の切片の値が、各プロセス条件ごとに異なった値になるからである。
従って、上式(3)のトリミング式を用いて、ヒューズカット前の発振周波数frに基づきヒューズ値を求め、求められたヒューズ値に基づきカットするヒューズを決定する手法では、発振周波数を所望のヒューズターゲット範囲(4MHz±5%)に収めることが難しいという問題がある。
このような問題を解決するために本実施形態では図9(A)に示すようなトリミング用補助スイッチSWAXを設けている。例えば図9(A)において、抵抗Rは、直列接続される複数の抵抗素子R1〜R6及び基準抵抗素子R7と、複数の抵抗素子R1〜R6の各抵抗素子に対して各ヒューズ素子が並列に設けられる複数のヒューズ素子FU1〜FU6を有する。そしてトリミング用補助スイッチSWAXは、基準抵抗素子R7に対して並列に設けられる。
このトリミング用補助スイッチSWAXは、図9(A)に示すように、ヒューズカット前の発振周波数の第1の測定モードにおいてオフになる。これにより、出力ノードNQと入力ノードNIとの間に、基準抵抗素子R7及びヒューズ素子FU1〜FU6が直列に接続された状態を実現できる。
一方、トリミング用補助スイッチSWAXは、図9(B)に示すように、ヒューズカット前の発振周波数の第2の測定モードにおいてオンになる。これにより出力ノードNQと入力ノードNIとの間に、ヒューズ素子FU1〜FU6及びトリミング用補助スイッチSWAXが直列に接続された状態を実現できる。
例えばヒューズカット前の第1の測定モード(図9(A))での発振周波数をfr1とし、ヒューズカット前の第2の測定モード(図9(B))での発振周波数をfr2とする。この場合に、fr1及びfr2の一次式により表される下式(4)のトリミング式によりヒューズ値を計算する。なおc、d、eは定数である。
ヒューズ値=c×fr1+d×fr2+e (4)
上式(4)のトリミング式で計算されたヒューズ値に基づいて図10に示すようにヒューズをカットする。図10ではヒューズFU1、FU3、FU4、FU5がカットされている。
以上の本実施形態の手法によれば、図9(A)、図9(B)に示すように、基準抵抗素子R7が接続状態である場合と非接続状態である場合の2つの状態において、ヒューズカット前の発振周波数fr1、fr2を測定できる。従って、図9(B)のように、増幅回路180のトランジスターのしきい値電圧とキャパシターCの容量の特性で決まる発振周波数fr2を測定できる。これにより、トラジスターのしきい値電圧のバラツキに起因するヒューズ値のバラツキを適正に補正できる。この結果、トリミング式の計算値に基づきヒューズ素子をカットした場合の発振周波数を、ターゲット周波数範囲に収めることが容易になる。
例えば図11は、本実施形態の調整手法を用いた場合における、ヒューズカット前の発振周波数とヒューズ値との関係を示す図である。図11のヒューズ値は上式(4)のトリミング式で計算された値である。
例えば発振周波数faに対応するヒューズ値は、図8ではA1に示すようにヒューズターゲット範囲TR1から外れていたが、図11ではC1に示すようにヒューズターゲット範囲TR1内に収まっている。従って本実施形態の調整手法によれば、上式(4)のトリミング式でヒューズ値を計算し、計算されたヒューズ値に基づいてヒューズをカットすることで、発振周波数を、所望のヒューズターゲット範囲(4MHz±5%)に収めることが可能になる。
即ち本実施形態では、トランジスターのしきい値電圧のバラツキ等が原因で、図11のD1、D2、D3、D4の各プロセス条件に対応する一次式の切片の値が、各プロセス条件ごとに異なった値になる場合にも、ヒューズターゲット値により近いヒューズ値を計算して、ヒューズをカットできる。つまり、上式(4)のトリミング式を用いることで、ヒューズ値をヒューズターゲット値に対して、よりフィッティングさせることが可能になり、発振周波数を、所望のヒューズターゲット範囲(4MHz±5%)に収めることができるようになる。従って、より精度が高い発振周波数の調整手法を実現できる。
4.電子機器、ジャイロセンサー
図12に、本実施形態のクロック信号生成回路150を含む検出装置20、この検出装置20を含むジャイロセンサー510(広義にはセンサー)、このジャイロセンサー510を含む電子機器500の構成例を示す。
なお検出装置20、電子機器500、ジャイロセンサー510は図12の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。また本実施形態の電子機器500としては、デジタルカメラ、ビデオカメラ、スマートフォン、携帯電話機、カーナビゲーションシステム、ロボット、ゲーム機、時計、健康器具、或いは携帯型情報端末等の種々の機器を想定できる。また以下では、物理量トランスデューサーが圧電型の振動子(振動ジャイロ)であり、センサーがジャイロセンサーである場合を例にとり説明するが、本発明はこれに限定されない。例えばシリコン基板などから形成された静電容量検出方式の振動子(振動ジャイロ)や、角速度情報と等価な物理量や角速度情報以外の物理量を検出する物理量トランスデューサー、センサー等にも本発明は適用可能である。
電子機器500はジャイロセンサー510と処理部520を含む。またメモリー530、操作部540、表示部550を含むことができる。処理部520(CPU、MPU等)はジャイロセンサー510等の制御や電子機器500の全体制御を行う。また処理部520は、ジャイロセンサー510により検出された角速度情報(広義には物理量)に基づいて処理を行う。例えば角速度情報に基づいて、手ぶれ補正、姿勢制御、GPS自律航法などのための処理を行う。メモリー530(ROM、RAM等)は、制御プログラムや各種データを記憶したり、ワーク領域やデータ格納領域として機能する。操作部540はユーザーが電子機器500を操作するためのものであり、表示部550は種々の情報をユーザーに表示する。
ジャイロセンサー510(センサー)は振動子10、検出装置20を含む。図12の振動子10(広義には物理量トランスデューサー)は、水晶などの圧電材料の薄板から形成される音叉型の圧電振動子であり、駆動用振動子11、12と、検出用振動子16、17を有する。駆動用振動子11、12には駆動端子2、4が設けられ、検出用振動子16、17には検出端子6、8が設けられている。
検出装置20は、駆動回路30、検出回路60、制御部140、クロック信号生成回路150を含む。
駆動回路30は、駆動信号(駆動電圧)を出力して振動子10を駆動する。そして振動子10からフィードバック信号を受け、これにより振動子10を励振させる。検出回路60は、駆動信号により駆動される振動子10から検出信号(検出電流、電荷)を受け、検出信号から、振動子10に印加された物理量に応じた所望信号(コリオリ力信号)を検出(抽出)する。
具体的には、駆動回路30からの交流の駆動信号(駆動電圧)が駆動用振動子11の駆動端子2に印加される。すると逆電圧効果によって駆動用振動子11が振動を開始し、音叉振動により駆動用振動子12も振動を開始する。この時、駆動用振動子12の圧電効果によって発生する電流(電荷)が、駆動端子4からフィードバック信号として駆動回路30にフィードバックされる。これにより振動子10を含む発振ループが形成される。
駆動用振動子11、12が振動すると、検出用振動子16、17が図12に示す方向で振動速度vで振動する。すると、検出用振動子16、17の圧電効果によって発生する電流(電荷)が、検出信号(第1、第2の検出信号)として検出端子6、8から出力される。すると、検出回路60は、この振動子10からの検出信号を受け、コリオリ力に応じた信号である所望信号(所望波)を検出する。即ち、検出軸19を中心に振動子10(ジャイロセンサー)が回転すると、振動速度vの振動方向と直交する方向にコリオリ力Fcが発生する。例えば検出軸19を中心に回転したときの角速度をωとし、振動子の質量をmとし、振動子の振動速度をvとすると、コリオリ力はFc=2m・v・ωと表される。従って検出回路60が、コリオリ力に応じた信号である所望信号を検出することで、ジャイロセンサーの回転角速度ωを求めることができる。そして求められた角速度ωを用いることで、処理部520は、手振れ補正、姿勢制御、或いはGPS自律航法等のための種々の処理を行うことができる。
そして本実施形態では、クロック信号生成回路150は、CR発振回路170によりクロック信号を生成する。このCR発振回路170は、図1で説明したように負の温度特性を有する電源電圧が供給されて、CR発振によりクロック信号を生成する。なお、CR発振回路170として図1等とは異なる回路構成を採用してもよい。例えば電圧生成回路160は、トランジスターの仕事関数差を利用せずに負の温度特性の電源電圧を生成してもよい。
制御部140は、クロック信号生成回路150からのクロック信号を受けて、各種の制御処理を行う。例えばクロック信号に基づいて駆動回路30及び検出回路60を制御する。クロック信号は、CR発振回路170の発振信号を分周した信号であってもよい。
クロック信号生成回路150は、パワーオンリセット解除によって動作イネーブル状態に設定されて、制御部140に対してクロック信号を供給する。そしてクロック信号の供給によって動作を開始した制御部140が、駆動回路30、検出回路60を起動する。そして、これらの回路の動作を開始させる。
検出回路60はA/D変換回路100を有する。このA/D変換回路100は、クロック信号生成回路150からのクロック信号(例えば分周後のクロック信号)に基づきA/D変換を行う。例えばアナログの検出信号(所望信号)をデジタル信号(デジタルデータ)に変換する。
そして制御部140が有するDSP部(デジタル信号処理部)110は、A/D変換回路100からのデジタル信号を受け、デジタル信号に対してデジタル信号処理を行う。このDSP(Digital Signal Processing)部110は、クロック信号生成回路からのクロック信号に基づきデジタル信号処理を実行する。
なお図12では、振動子10が音叉型である場合の例を示しているが、本実施形態の振動子10はこのような構造に限定されない。例えばT字型やダブルT字型等であってもよい。また振動子10の圧電材料は水晶以外であってもよい。
5.検出装置
図13に本実施形態の検出装置20の詳細な構成例を示す。検出装置20は、振動子10(物理量トランスデューサー)からのフィードバック信号DIを受けて、振動子10を駆動する駆動回路30と、振動子10からの検出信号IQ1、IQ2を受けて、所望信号を検出する検出回路60を含む。また検出装置20(集積回路装置)は、制御部140、クロック信号生成回路150を含む。更に、電源電圧VDDが入力される電源端子TVDDと、レギュレーター回路22と、バッファー回路24を含むことができる。
電源端子TVDDには、例えば外部電源電圧VDDが入力される。この電源電圧VDDはレギュレーター回路22やバッファー回路24に供給される。電源端子TVDDは例えば集積回路装置(ICチップ)におけるパッドである。
レギュレーター回路22は、電源端子TVDDから供給される電源電圧VDDを降圧する電圧調整を行う。そして電圧調整により得られたレギュレート電源電圧VDDLを、動作電源電圧として駆動回路30及び検出回路60に供給する。またレギュレーター回路22は、レギュレート電源電圧VDDLを制御部140、クロック信号生成回路150に供給する。例えば外部からの電源電圧VDDとして2.7V〜3.3Vの電圧が供給された場合に、レギュレーター回路22は、この電源電圧VDDを降圧する電圧調整を行って、例えば1.8Vの一定電圧のレギュレート電源電圧VDDLを駆動回路30、検出回路60、制御部140、クロック信号生成回路150に供給する。
そして図1に示すようにクロック信号生成回路150の電圧生成回路160は、このレギュレート電源電圧VDDLに基づいて電源電圧VDOSを生成する。例えばレギュレート電源電圧VDDLを更に降圧した電源電圧VDOSを生成する。
バッファー回路24には、電源電圧VDDが供給される。この電源電圧VDDはバッファー回路24の高電位側電源電圧として用いられる。そしてバッファー回路24は、駆動回路30からの駆動信号DQを受けて、駆動信号DQの振幅を増加させた高振幅の駆動信号(増幅駆動信号)DQBを振動子10(物理量トランスデューサー)に出力する。例えば駆動信号DQの振幅を第1の振幅とした場合に、第1の振幅よりも大きい第2の振幅の駆動信号DQBを振動子10に出力する。この場合に駆動信号DQ、DQBは矩形波の信号であってもよいし、正弦波の信号であってもよい。
駆動回路30は、振動子10からのフィードバック信号DIが入力される増幅回路32と、自動ゲイン制御を行うゲイン制御回路40と、駆動信号DQを振動子10に出力する駆動信号出力回路50を含む。また同期信号SYCを検出回路60に出力する同期信号出力回路52を含む。なお、駆動回路30の構成は図13に限定されず、これらの構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
増幅回路32(I/V変換回路)は、振動子10からのフィードバック信号DIを増幅する。例えば振動子10からの電流の信号DIを電圧の信号DVに変換して出力する。この増幅回路32は、キャパシター、抵抗素子、演算増幅器などにより実現できる。
駆動信号出力回路50は、増幅回路32による増幅後の信号DVに基づいて、駆動信号DQを出力する。例えば駆動信号出力回路50が、矩形波(又は正弦波)の駆動信号を出力する場合には、駆動信号出力回路50はコンパレーター等により実現できる。
ゲイン制御回路40(AGC)は、駆動信号出力回路50に制御電圧DSを出力して、駆動信号DQの振幅を制御する。具体的には、ゲイン制御回路40は、信号DVを監視して、発振ループのゲインを制御する。例えば駆動回路30では、ジャイロセンサーの感度を一定に保つために、振動子10(駆動用振動子)に供給する駆動電圧の振幅を一定に保つ必要がある。このため、駆動振動系の発振ループ内に、ゲインを自動調整するためのゲイン制御回路40が設けられる。ゲイン制御回路40は、振動子10からのフィードバック信号DIの振幅(振動子の振動速度v)が一定になるように、ゲインを可変に自動調整する。
同期信号出力回路52は、増幅回路32による増幅後の信号DVを受け、同期信号SYC(参照信号)を検出回路60に出力する。この同期信号出力回路52は、正弦波(交流)の信号DVの2値化処理を行って矩形波の同期信号SYCを生成するコンパレーターや、同期信号SYCの位相調整を行う位相調整回路(移相器)などにより実現できる。
検出回路60は、増幅回路61、同期検波回路81、A/D変換回路100を含む。増幅回路61は、振動子10からの第1、第2の検出信号IQ1、IQ2を受けて、信号増幅や電荷−電圧変換を行う。同期検波回路81は、駆動回路30からの同期信号SYCに基づいて同期検波を行う。A/D変換回路100は、同期検波後の信号のA/D変換を行う。
制御部140は、検出装置20の制御処理を行う。この制御部140は、ロジック回路(ゲートアレイ等)やプロセッサー等により実現できる。検出装置20での各種のスイッチ制御やモード設定等はこの制御部140により行われる。
6.検出装置の動作
次に図14を用いて起動時の検出装置20の動作について説明する。
電源の投入後、電源電圧VDDが上昇すると、パワーオンリセット信号XPORがLレベルからHレベルに変化して、パワーオンリセット解除により電圧生成回路160、CR発振回路170が動作イネーブル状態になる。例えば図1のイネーブル信号ENがHレベルになって、CR発振回路170が発振動作が起動される。そしてCR発振回路170によるCR発振が発振状態になると、クロック信号生成回路150により生成されたクロック信号CLKが制御部140に供給され、制御部140の制御動作が開始する。
具体的には、まず、制御部140の制御により基準系回路が動作イネーブル状態に設定されて起動する。基準系回路は、例えば基準電流や基準電圧の生成回路等である。
基準系回路の起動後に、制御部140の制御により駆動回路30が動作イネーブル状態に設定されて起動する。すると、駆動回路30からの駆動信号DQにより振動子10が駆動され、振動子10の発振ループが形成されて、振動子10が発振状態になる。
次に、制御部140の制御により検出回路60が動作イネーブル状態に設定されて起動する。そして検出回路60により、所望信号の検出処理が行われて、角速度データが検出装置20から出力されるようになる。
図15は本実施形態の検出装置20の動作モードの説明図である。検出装置20の動作モードとしては、通常動作モード、スタンバイモード、スリープモードがある。
通常動作モードでは、レギュレーター回路22、電圧生成回路160、CR発振回路170、駆動回路30、検出回路60、DSP部110の全てが動作する。
スタンバイモードでは、レギュレーター回路22、電圧生成回路160、CR発振回路170、駆動回路30は動作するが、検出回路60、DSP部110は動作を停止する。このスタンバイモードは、発振の起動に時間を要する水晶の振動子10を駆動させたままにするモードであり、スタンバイモードから通常動作モードに戻すことで、角速度の検出処理が再開する。即ち、スタンバイモードでは、検出回路60の検出動作やDSP部110の信号処理は停止しているが、駆動回路30による振動子10の駆動は継続している。従って、角速度の検出処理はできないが、駆動回路30による振動子10の発振状態は維持されている。従って、スタンバイモードから通常動作モードに切り替えた場合に、振動子10の発振の起動を再度やり直す必要がなく、角速度の検出処理を直ぐに再開できる。またスタンバイモードにおいて検出回路60やDSP部110の動作を停止することで、低消費電力化を図れる。
スリープモードでは、レギュレーター回路22は動作するが、それ以外の回路は動作を停止する。そして制御部140は外部からのコマンドの待ち受け状態になる。例えば、制御部140のうち、コマンドを受け付けるインターフェース部だけが動作を継続して、外部からのコマンドについては受け付け可能な状態になる。このスリープモードでは、レギュレーター回路22以外の回路が動作を停止することで、スタンバイモードよりも更に低消費電力化を図れる。
例えば、従来のジャイロセンサーでは、振動子10の発振周波数(駆動周波数)と同じ周波数のクロック信号を用いて、制御部140を動作させていた。具体的には、同期検波のための同期信号SYCをクロック信号として用いて制御部140を動作させていた。
しかしながら、振動子10の発振周波数は例えば100KHzというように、あまり高速ではない。このため、制御部140の高速動作を実現できなかった。また振動子10の発振が安定するまでは、安定したクロック信号を得ることができないため、所望信号の検出開始までの起動時間が遅れてしまい、適正な角速度データが出力されるまでに長い時間を要してしまうという問題があった。
この点、本実施形態では、CR発振回路170によるCR発振により、制御部140のクロック信号を生成している。具合的には、CR発振回路170が、負の温度特性の電源電圧が供給されて動作し、CR発振により得られたクロック信号が制御部140に供給される。そしてCR発振は、振動子10の発振にくらべて、発振定常状態になるまでの時間が短い。従って、図14に示すように、制御部140による駆動回路30、検出回路60等の各回路の起動を高速化できる。またCR発振によれば、例えば4MHz等の高速なクロック信号を容易に生成できる。従って、制御部140、DSP部110、A/D変換回路100等の処理の高速化も図れる。
特にA/D変換回路100とDSP部110を検出装置20に内蔵させたデジタルジャイロでは、デジタルフィルタ処理などの負荷の重い処理を実行する必要がある。この点、本実施形態によれば、振動子10に比べて発振周波数を高くできるCR発振回路170により高速のクロック信号を生成できるため、デジタル信号処理等の負荷の重い処理も高速に実行できるという利点がある。
一方、温度変動に伴うクロック信号の周波数変動が大きいと、検出装置20の検出性能等が低下するおそれがある。例えばA/D変換回路100のサンプリング周波数や、デジタル信号処理のクロック周波数等が、温度変動に伴い変動すると、ジャイロセンサーの性能が低下するおそれがある。水晶の振動子10の発振を利用してクロック信号を生成する従来の手法によれば、温度変動に伴うクロック信号の周波数変動を低く抑えることができるが、CR発振の場合には周波数変動が大きくなってしまうという問題がある。
この点、本実施形態では、電源電圧が固定の場合に発振周波数が正の温度特性となるCR発振回路170に対して、負の温度特性を有する電源電圧を供給して、クロック信号を生成している。このようにすれば、CR発振回路170の発振周波数の正の温度特性が、電源電圧の負の温度特性により打ち消されることで、温度変動に伴うクロック信号の周波数変動を最小限に抑えることができる。従って、CR発振により各回路の処理や起動の高速化を図りながら、検出装置20の検出性能の低下等も最小限に抑えることが可能になる。
7.駆動回路の詳細
図16は、駆動回路30の詳細な構成例である。図16において、増幅回路32は、ローパスフィルター特性をもつ積分型の電流−電圧変換回路(I/V変換回路)であり、演算増幅器OPE、キャパシターCE、抵抗素子REを有する。演算増幅器OPEの非反転入力端子(第1の入力端子)は所定電位(例えばAGND)に設定され、反転入力端子(第2の入力端子)には振動子10からの信号DIが入力される。
ハイパスフィルター(HPF)34は、増幅回路32と駆動信号出力回路50との間に設けられ、ハイパスフィルター処理後の信号DVを駆動信号出力回路50に出力する。ハイパスフィルター34は、キャパシターCHと抵抗素子RHとを有する。
ゲイン制御回路40(AGC)は、発振定常状態において、ループゲインが1になるようにゲインを自動調整する回路であり、全波整流器42、積分器44を有する。
全波整流器42は、増幅回路32の出力信号DVを全波整流し、全波整流後の信号DRを積分器44に出力する。全波整流器42は、演算増幅器OPF、抵抗素子RF1、RF2、コンパレーターCP3、スイッチ素子SF1、SF2、インバーター回路INVを有する。
スイッチ素子SF1は、演算増幅器OPFの出力ノードと積分器44の入力ノードNG1との間に設けられ、スイッチ素子SF2は、信号DVのノードと積分器44の入力ノードNG1との間に設けられる。そしてスイッチ素子SF1、SF2は、信号DVの電圧と所定電位の電圧とを比較するコンパレーターCP3の出力信号に基づいて、排他的にオン・オフ制御される。これにより信号DRは、信号DVを全波整流した信号になる。
積分器44は、駆動信号DQの振幅の制御電圧DSを駆動信号出力回路50に出力する。具体的には積分器44は、全波整流器42により全波整流された信号DRの積分処理を行って、積分処理により得られた制御電圧DSを駆動信号出力回路50に出力する。
積分器44は、演算増幅器OPG、抵抗素子RG、キャパシターCGを有する。演算増幅器OPGの非反転入力端子は所定電圧VR3に設定される。
駆動信号出力回路50を構成するコンパレーターCP1は、非反転入力端子が所定電位(例えばAGND)に設定され、反転入力端子に増幅回路32での増幅後の信号DV(フィルター処理後の信号)が入力される。そしてコンパレーターCP1は、信号DVを2値化した矩形波の駆動信号DQを出力する。このコンパレーターCP1は、差動部と、差動部に接続された出力部を有する。そして、ゲイン制御回路40(積分器)からの制御電圧DSは、コンパレーターCP1の出力部の電源電圧(高電位側電源電圧)として供給される。これにより、コンパレーターCP1が出力する駆動信号DQの振幅は、ゲイン制御回路40の制御電圧DSに応じて変化するようになり、発振定常状態においてループゲインを1にするゲイン制御が実現される。
なお駆動回路30の構成は図16の構成に限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば図16では、駆動信号出力回路50が、矩形波の駆動信号DQを出力するコンパレーターCP1により構成されているが、駆動信号出力回路50を、正弦波の駆動信号DQを出力するゲインアンプ等により構成してもよい。この場合には、ゲイン制御回路40からの制御電圧DSに基づいて、ゲインアンプのゲインを制御することで、駆動信号DQの振幅を制御すればよい。
図16に示すように本実施形態では、増幅回路32と駆動信号出力回路50との間にハイパスフィルター34が設けられる。そして振動子10の発振の起動期間において、クロック信号生成回路150からのクロック信号(クロック信号そのもの或いは分周後のクロック信号)が、ハイパスフィルター34を構成する抵抗素子RHを介して駆動信号出力回路50に入力される。
具体的には図16では、種回路35が設けられている。この種回路35は、スイッチ素子SI1、SI2を有する。スイッチ素子SI1、SI2は、検出信号SWCによりオン・オフ制御される。この検出信号SWCは、発振状態を検出する発振検出器46により生成される。発振検出器46は、全波整流後の信号DRをローパスフィルターにより平滑化した電圧である発振検出用電圧をモニターすることで、発振状態を検出し、検出信号SWCを出力する。
例えばハイパスフィルター34は、増幅回路32のDCオフセット電圧等の悪影響を抑制するために設けられているが、このハイパスフィルター34を設けた場合には、発振の種を生成するための種回路35が必要になる。
そして電源投入後の初期状態では、発振検出器46からの検出信号SWCがHレベルになっているため、種回路35のスイッチ素子SI1がオンになり、スイッチ素子SI2がオフになる。従って、クロック信号生成回路150からのクロック信号がスイッチ素子SI1、抵抗素子RHを介して、コンパレーターCP1の非反転入力端子に入力される。これにより発振の種を形成して、発振を成長させることが可能になる。
一方、発振起動過程において振動子10の発振が成長すると、全波整流後の信号DRを平滑化した電圧である上述の発振検出用電圧が上昇する。そして発振検出器46は、発振検出用電圧が基準電圧VRLを越えた場合に、発振起動期間が完了したと判断して、検出信号SWCをHレベルからLレベルに変化させる。検出信号SWCがLレベルになると、種回路35のスイッチ素子SI1がオフになり、スイッチ素子SI2がオンになる。これにより、クロック信号生成回路150からのクロック信号はコンパレーター50の非反転入力端子に入力されないようになる。
即ち、図16では、増幅回路32のDCオフセット電圧が駆動信号出力回路50に伝達されて、駆動信号DQの生成に悪影響を与えるのを抑制するためにハイパスフィルター34を設けている。ハイパスフィルター34を設けることで、増幅回路32からの信号DVのDC成分をカットできる。
しかしながら、このようなハイパスフィルター34を設けると、このハイパスフィルター34によるフィルター作用が要因となって、発振起動過程において発振の種の生成や成長が妨げられ、振動子10の発振を起動できなかったり、発振の起動が遅れるなどの問題が生じるおそれがある。
そこで図16では、種回路35を設けている。そして、スイッチ素子SI1がオンになる振動子10の発振の起動期間において、クロック信号生成回路150からのクロック信号を、ハイパスフィルター34の抵抗素子RHを介して駆動信号出力回路50に入力している。
このようにすれば、クロック信号生成回路150からのクロック信号が発振の種になって、発振が成長するようになり、振動子10の適正な発振起動や発振起動期間の短縮化等を実現できる。
特にクロック信号生成回路150はCR発振回路170によりクロック信号を生成しているため、電源投入後、短時間でクロック信号を出力できる。従って、種の生成・成長も早期に行われることになり、発振起動期間を更に短縮化することが可能になる。
8.バッファー回路を用いた高振幅駆動
本実施形態では、図13に示すように、外部電源電圧VDDを降圧する電圧調整を、レギュレーター回路22により行い、電圧調整されたレギュレート電源電圧VDDLを駆動回路30や検出回路60やクロック信号生成回路150に供給している。そして駆動回路30や検出回路60は、このレギュレート電源電圧VDDLを動作電源電圧として動作する。またクロック信号生成回路150の電圧生成回路160は、このレギュレート電源電圧VDDLに基づいて、CR発振回路170の電源電圧VDOSを生成する。
このように、一定電圧になるように調整されたレギュレート電源電圧VDDLを生成し、このレギュレート電源電圧VDDLを用いて駆動回路30、検出回路60等を動作させれば、検出性能の向上等を実現できる。
また電圧生成回路160が、レギュレート電源電圧VDDLに基づいて電源電圧VDOSを生成すれば、電源電圧変動によるクロック信号の周波数変動を抑制できる。即ち、温度変動に対してのみならず電源電圧変動を要因とするクロック信号の周波数変動も抑制できるようになる。
例えば、従来のように外部からの電源電圧VDDにより駆動回路30、検出回路60等を動作させる構成では、電源電圧VDDに電圧変動があった場合に、この電圧変動が原因で、例えばジャイロの0点変動等が生じるおそれがある。
この点、本実施形態では、電源電圧VDDを動作電源電圧として、駆動回路30、検出回路60等を動作させるのではなく、レギュレーター回路22により生成されたレギュレート電源電圧VDDLを動作電源電圧として、駆動回路30、検出回路60等を動作させている。このようにすれば、電源電圧VDDに電圧変動があった場合にも、この電圧変動がレギュレーター回路22により吸収されるため、駆動回路30、検出回路60、クロック信号生成回路150にVDDの電圧変動が伝達されるのを抑制できる。
即ち、本実施形態のレギュレーター回路22を用いれば、例えば電源電圧VDDが2.7V〜3.3Vの範囲内において変動した場合にも、レギュレート電源電圧VDDLの電圧変動を例えば1mV以下(例えば0.3mV以下)に抑えることができる。また温度変化があった場合にも、レギュレート電源電圧VDDLの変動を例えば±数十mV以下(例えば±30mV以下)に抑えることができる。従って、電源電圧VDDの変動がある場合にも、レギュレート電源電圧VDDLの変動については最小限に抑えることができるため、電源電圧VDDの変動が原因で0点(ジャイロの静止状態時の出力)が変動して、検出性能が悪化してしまう事態を抑制できる。
例えば図17(A)は、本実施形態のようにレギュレーター回路22を用いた場合における、電源電圧VDDと0点変動量の関係(サンプル数4個)を示す図である。図17(A)に示すように本実施形態では、例えば電源電圧VDDが2.7V〜3.3Vの範囲内に変動した場合にも、0点変動量(dps:Degree per second)を最小限(例えば0.01dps以下)に抑えること可能になる。
また本実施形態によれば、検出装置の回路の大部分を占める駆動回路30、検出回路60等を、低いレギュレート電源電圧VDDLにより動作させることができる。従って、回路の大部分が低電源電圧で動作することになるため、消費電力についても効果的に削減できるという利点がある。
しかしながら、このように駆動回路30等を、低電圧のレギュレート電源電圧VDDLで動作させてしまうと、今度は、発振の起動時間が長くなってしまうという問題が生じる。例えば図17(B)は、電源電圧と起動時間の関係を示す図である。図17(B)に示すように電源電圧が低くなるほど、起動時間が長くなる。例えば図17(B)に示すように、振動子10の駆動電流が大きいほど、起動時間が長くなる。そして、駆動電流が大きい場合には、電源電圧が例えば2.7V程度以下の場合に、起動時間が指数関数的に長くなってしまい、許容範囲を超えてしまうおそれがある。即ち、駆動回路30等の電源電圧として、レギュレート電源電圧VDDL(例えば1.8V)を使用すると、起動時間が非常に長くなってしまい、使用に耐え得ないレベルになるおそれがある。
そこで本実施形態では図13に示すように、レギュレーター回路22により生成されたレギュレート電源電圧VDDLを駆動回路30、検出回路60等に供給して検出性能の向上や低消費電力化を図る一方で、駆動信号DQをバッファリングするバッファー回路24に対しては、レギュレート電源電圧VDDLではなく電源電圧VDDを供給する。即ち、これまでは電源電圧VDDを検出装置の全ての回路に供給していたのに対して、本実施形態では、検出装置の回路(集積回路装置)を、レギュレート電源電圧VDDLを供給する第1の回路部分と、電源電圧VDDを供給する第2の回路部分とに分ける。そして、検出性能の向上や低消費電力化が要求される駆動回路30、検出回路60、制御部140、クロック信号生成回路150は、レギュレート電源電圧VDDLが供給される第1の回路部分とする一方で、バッファー回路24については、電源電圧VDDが直接に供給される第2の回路部分とする。
そしてバッファー回路24は、供給された電源電圧VDDを用いて、駆動回路30からの駆動信号DQの振幅を増加させる変換を行って、高振幅の駆動信号(増幅駆動信号)DQBを振動子10に出力する。即ち、駆動信号DQのピーク・ツー・ピーク電圧よりも高いピーク・ツー・ピーク電圧を有する駆動信号DQBを生成し、この駆動信号DQBにより振動子10を駆動する。
このようにすれば図17(B)から明らかなように、レギュレート電源電圧VDDLを用いた駆動信号DQにより振動子10を駆動する場合に比べて、起動時間を短縮できる。即ち本実施形態では、検出性能の向上や低消費電力化と、起動時間の短縮化とを両立して実現することに成功している。
次にバッファー回路24の具体的な構成例について説明する。図18にバッファー回路24の第1の構成例を示す。
図18では、バッファー回路24は、演算増幅器OPM、第1、第2に抵抗素子RM1、RM2を有する。演算増幅器OPMは、非反転入力端子に駆動回路30からの駆動信号DQが入力される。演算増幅器OPMは電源端子TVDDからの電源電圧VDDを動作電源電圧として動作する。第1、第2の抵抗素子RM1、RM2は、高振幅の駆動信号DQBの出力ノードNM1と低電位側電源(GND)のノードとの間に直列に設けられる。そして第1、第2の抵抗素子RM1、RM2の接続ノードNM2は、演算増幅器OPMの反転入力端子に接続される。なおレギュレーター回路22も図18のバッファー回路24と同様の構成により実現できる。
図18において抵抗素子RM1、RM2の抵抗をR1、R2とし、駆動信号DQ、DQBの振幅をAP、APBとする。すると、APB={(R1+R2)/R2}×APという関係式が成り立つ。例えばR1=200KΩ、R2=400KΩである場合には、APB={(200KΩ+400KΩ)/400KΩ}×AP=1.5×APとなり、駆動信号DQBは駆動信号DQの振幅(ピーク・ツー・ピーク電圧)を1.5倍にした信号になる。従って、振動子10の高振幅駆動が可能になり、発振の起動時間の短縮化等を実現できる。
また本実施形態では、駆動回路30及び検出回路60等は、低耐圧トランジスター(第1の耐圧のトランジスター)により構成され、バッファー回路24は、高耐圧トランジスター(第1の耐圧よりも高耐圧の第2の耐圧のトランジスター)により構成される。例えば、低耐圧トランジスターは、1.8Vよりも耐圧が高く、高耐圧トランジスターよりも耐圧が低いトランジスターであり、高耐圧トランジスターは3.3Vよりも耐圧が高いトランジスターである。高耐圧トランジスターは、例えば低耐圧トランジスターよりもゲート酸化膜の膜厚を厚くしたり、ゲート長を長くすることなどで実現できる。検出装置の大部分を占める駆動回路30、検出回路60や制御部140を低耐圧トランジスターにより構成することで、検出装置の低消費電力化や回路レイアウトの小面積化等を図れるようになる。バッファー回路24を高耐圧トランジスターにより構成することで、高振幅駆動によりトランジスターの故障・破壊等の不具合が発生するのを効果的に防止できる。
図19(A)、図19(B)にバッファー回路24の第2の構成例を示す。この第2の構成例のバッファー回路24を有する検出装置は、図19(A)の第1のモードでは、バッファー回路24からの高振幅の駆動信号DQBを振動子10(物理量トランスデューサー)に出力する。一方、図19(B)の第2のモードでは、駆動回路30からの駆動信号DQを振動子10に出力する。
具体的には第2の構成例では、バッファー回路24の出力ノードNM1と入力ノードとの間にスイッチ素子SWMが設けられている。そして図19(A)に示すように第1のモードではスイッチ素子SWMがオフになる。これにより、バッファー回路24からの高振幅の駆動信号DQBが振動子10に出力されるようになる。なおこの場合に、例えばイネーブル信号ENBにより演算増幅器OPMが動作イネーブル状態に設定される。
一方、第2のモードではスイッチ素子SWMがオンになる。これにより、駆動回路30からの低振幅の駆動信号DQがスイッチ素子SWMを介して振動子10に出力されるようになる。なおこの場合に、例えばイネーブル信号ENBにより演算増幅器OPMが動作ディスエーブル状態に設定される。例えば演算増幅器OPMの出力がハイインピーダンス状態に設定される。
また第2の構成例では抵抗素子RM1、RM2に対応してスイッチ素子SWM1、SWM2が設けられている。そして図19(A)の第1のモードではスイッチ素子SWM1、SWM2がオンになる一方で、図19(B)の第2のモードではスイッチ素子SWM1、SWM2がオフになる。これにより、第2のモードにおいて、バッファー回路24の出力ノードNM1からVSS(GND)に対して不要な電流が流れたり、演算増幅器OPMの反転入力端子に不要な電圧が印加されるのを防止できる。
例えば図19(A)に示すように、振動子10の発振の起動期間では、検出装置が第1のモードに設定される。これにより、バッファー回路24からの高振幅の駆動信号DQBが振動子10に出力される。一方、図19(B)に示すように、起動期間の完了後に、検出装置が第2のモードに設定される。例えば発振定常状態では第2のモードに設定される。これにより、駆動回路30からの低振幅の駆動信号DQが振動子10に出力される。
例えば起動期間では、振動子10の発振の起動時間の短縮化のために、高振幅駆動を行うことが望ましい。従って起動期間では図19(A)に示すようにスイッチ素子SWMをオフにして、バッファー回路24からの高振幅の駆動信号DQBで振動子10を駆動し、起動時間の短縮化を図る。
一方、起動期間が完了し、振動子10が定常発振状態となった場合には、起動時間の短縮化という要請はなくなるため、図19(B)に示すようにスイッチ素子SWMをオン(SWM1、SWM2をオフ)にして、駆動回路30からの低振幅の駆動信号DQにより振動子10を駆動する。このように低振幅の駆動信号DQで駆動することで、低消費電力化やノイズ低減等を期待できるようになる。但し、アプリケーションによっては、起動期間が完了して振動子10が定常発振状態になった後も、例えば2.7V〜3.3Vの電源電圧VDDを用いた駆動信号DQBによる駆動が望ましい場合もある。従って、このような場合には起動期間が完了した後も、検出装置を第1のモードに設定する。
なお、第1、第2のモードの設定は例えば制御部140の制御処理により実現できる。例えば制御部140がスイッチ素子SWM、SWM1、SWM2のオン・オフを制御することで実現できる。また検出装置に設けられたレジスター部のレジスター設定によって、図19(A)、図19(B)の第1、第2のモードを設定することができる。例えば外部インターフェースを介してレジスター部にアクセスして、第1、第2のモードの設定を行うようにすることができる。
9.多軸ジャイロセンサー
図20に本実施形態の検出装置の変形例を示す。図20は、複数の軸回りでの回転角速度の検出を行う多軸ジャイロセンサーの検出装置の構成例である。この構成例の検出装置は、複数の振動子10-1、10-2、10-3の駆動及び検出を行う。ここで、例えば、振動子10-1は、第1の軸(例えばX軸)の回りでの回転角速度を検出するための振動子であり、振動子10-2は、第2の軸(例えばY軸)の回りでの回転角速度を検出するための振動子である。また振動子10-3は第3の軸(例えばZ軸)の回りでの回転角速度を検出するための振動子である。
多軸ジャイロセンサーでは、いわゆる軸間干渉が問題になる。例えば本実施形態の比較例の手法として、検出装置の全ての回路を電源電圧VDDを動作電源電圧として動作させる手法が考えられる。しかしながら、この比較例の手法では、例えば第1の軸用の駆動回路、検出回路が動作することで生じる電源電圧VDDの微少な変動等が、第2の軸用、第3の軸用の駆動回路、検出回路に悪影響を及ぼす軸間干渉が生じ、検出性能の低下等の問題を招くおそれがある。例えば後述するように本実施形態では、軸間干渉の影響を低減するために振動子10-1、10-2、10-3の駆動周波数を異ならせている。このように駆動周波数が異なると、例えば第1の軸用の駆動回路、検出回路が動作することで生じる電源電圧VDDの変動が、第2の軸用、第3の軸用の駆動回路、検出回路に及ぼす悪影響が大きくなる。このような問題を解決するために本実施形態では図20に示す構成を採用している。
具体的には図20では、振動子10-1用のレギュレーター回路22-1、バッファー回路24-1、駆動回路30-1、検出回路60-1と、振動子10-2用のレギュレーター回路22-2、バッファー回路24-2、駆動回路30-2、検出回路60-2とが設けられる。また振動子10-3用のレギュレーター回路22-3、バッファー回路24-3、駆動回路30-3、検出回路60-3が設けられる。なお、図20は、振動子が3つの場合の例であるが、振動子が2つの場合には、振動子10-3用のレギュレーター回路22-3、バッファー回路24-3、駆動回路30-3、検出回路60-3の構成は不要となる。
振動子10-1用のレギュレーター回路22-1、バッファー回路24-1、駆動回路30-1、検出回路60-1の構成及び動作は、図13のレギュレーター回路22、バッファー回路24、駆動回路30、検出回路60と同様であるため、詳細な説明を省略する。
振動子10-2用の駆動回路30-2(第2の駆動回路)は、振動子10-2(第2の物理量トランスデューサー)からのフィードバック信号DI2(第2のフィードバック信号)を受けて、振動子10-2を駆動する。検出回路60-2(第2の検出回路)は、振動子10-2からの検出信号IQ21、IQ22を受けて、所望信号を検出する。
レギュレーター回路22-2(第2のレギュレーター回路)は、電源端子TVDDからの電源電圧VDDを降圧する電圧調整を行い、電圧調整により得られたレギュレート電源電圧VDDL2(第2のレギュレート電源電圧)を駆動回路30-2及び検出回路60-2に出力する。
そしてバッファー回路24-2(第2のバッファー回路)は、電源電圧VDDが供給され、駆動回路30-2からの駆動信号DQ2(第2の駆動信号)を受けて、駆動信号DQ2の振幅を増加させた高振幅の駆動信号DQ2B(第2の増幅駆動信号)を振動子10-2に出力する。
振動子10-3用の駆動回路30-3(第3の駆動回路)は、振動子10-3(第3の物理量トランスデューサー)からのフィードバック信号DI3(第3のフィードバック信号)を受けて、振動子10-3を駆動する。検出回路60-3(第3の検出回路)は、振動子10-3からの検出信号IQ31、IQ32を受けて、所望信号を検出する。
レギュレーター回路22-3(第3のレギュレーター回路)は、電源端子TVDDからの電源電圧VDDを降圧する電圧調整を行い、電圧調整により得られたレギュレート電源電圧VDDL3(第3のレギュレート電源電圧)を駆動回路30-3及び検出回路60-3に出力する。
そしてバッファー回路24-3(第3のバッファー回路)は、電源電圧VDDが供給され、駆動回路30-3からの駆動信号DQ3(第3の駆動信号)を受けて、駆動信号DQ3の振幅を増加させた高振幅の駆動信号DQ3B(第3の増幅駆動信号)を振動子10-3に出力する。
以上の図20の構成によれば、電源電圧VDDをレギュレーター回路22-1、22-2、22-3において降圧する電圧調整が行われる。そして得られたレギュレート電源電圧VDDL1、VDDL2、VDDL3が、各々、駆動回路30-1及び検出回路60-1、駆動回路30-2及び検出回路60-2、駆動回路30-3及び検出回路60-3に、動作電源電圧として供給される。従って、軸間干渉を最小限に抑えることができる。例えば第1の軸用の駆動回路30-1、検出回路60-1が動作したことによる電源電圧変動が、他の第2の軸用、第3の軸用の駆動回路30-2、30-3、検出回路60-2、60-3に伝達されてしまうのを、レギュレーター回路22-1、22-2、22-3により、最小限に抑制できる。従って、多軸ジャイロセンサーの軸間干渉を低減して検出性能の向上を図れるようになる。
そして図20では、バッファー回路24-1、24-2、24-3については、レギュレート電源電圧ではなく端子TVDDにより外部から入力される電源電圧VDDで動作させて、高振幅の駆動信号DQ1B、DQ2B、DQB3を生成している。従って、高振幅の駆動による起動時間の短縮と、軸間干渉の低減による検出性能の向上とを両立して実現できる。
また図20では、図19(A)で説明した第1のモードにおいて、検出装置は、バッファー回路24-1からの高振幅の駆動信号DQ1Bを、振動子10-1に出力する。同様に検出装置は、第1のモードでは、バッファー回路24-2、24-3からの高振幅の駆動信号DQ2B、DQ3Bを、振動子10-2、10-3に出力する。
一方、図19(B)で説明した第2のモードでは、検出装置は、駆動回路30-1からの低振幅の駆動信号DQ1を振動子10-1に出力する。同様に検出装置は、第2のモードでは、駆動回路30-2、30-3からの低振幅の駆動信号DQ2、DQ3を振動子10-2、10-3に出力する。
例えば発振の起動期間においては、所望信号の検出は行われないため、前述の軸間干渉は大きな問題とならない。従って、起動期間においては検出装置を第1のモードに設定して、高振幅の駆動信号DQ1B〜DQ3Bで振動子10-1〜10-3を駆動するようにする。一方、発振の起動期間が完了した後は、軸間干渉等による検出性能の低下を抑制するために、低振幅の駆動信号DQ1〜DQ3で振動子10-1、10-2、10-3を駆動するようにする。こうすることで、多軸ジャイロセンサー等において発振の起動時間の短縮と検出性能の向上とを両立して実現できるようになる。
また図20では、A/D変換回路100-1(第1のA/D変換回路)、A/D変換回路100-2(第2のA/D変換回路)は、クロック信号生成回路150からのクロック信号(分周後のクロック信号)に基づきA/D変換を行う。A/D変換回路100-3(第3のA/D変換回路)も、クロック信号生成回路150からのクロック信号に基づきA/D変換を行う。A/D変換回路100-1、100-2、100-3は、クロック信号を例えばサンプリングクロック信号や動作クロック信号として、A/D変換を行う。
またDSP部110は、A/D変換回路100-1、100-2、100-3からのデジタル信号を受け、当該デジタル信号に対してデジタル信号処理を行う。そしてDSP部110は、クロック信号生成回路150からのクロック信号に基づいてデジタル信号処理を行う。こうすることで、デジタルフィルター処理などのデジタル信号処理を高速に実行できる。
例えば従来のジャイロセンサーでは、振動子の発振に基づき生成されたクロック信号を用いて、A/D変換回路やDSP部を動作させる手法を採用していた。
しかしながら、図20の多軸ジャイロセンサーでは、前述した軸間干渉を抑制するために、振動子10-1、10-2、10-3の駆動周波数(振動周波数、発振周波数)は異なっている。
即ち、軸間干渉は、振動子10-1、10-2、10-3の互いの駆動周波数が近いほど、その影響が現れる。例えば振動子10-1と振動子10-2の駆動周波数の差が、振動子10-1又は振動子10-2の検出離調周波数と近い場合に、軸間干渉の影響が大きく現れる。このような軸間干渉の悪影響を避けるために、本実施形態では、互いに離れた周波数の振動子10-1、10-2、10-3を用いる。具体的には、振動子10-1は例えば110KHz(広義には第1の周波数)で振動し、振動子10-2は、例えば120KHz(広義には第1の周波数とは異なる第2の周波数)で振動する。また振動子10-3は、例えば130KHz(広義には第1、第2の周波数とは異なる第3の周波数)で振動する。
従って、振動子の発振に基づくクロック信号でA/D変換回路等を動作させる手法を採用すると、A/D変換回路100-1、100-2、100-3を、互いに異なる周波数の動作クロック信号で動作させなければならなくなる。このため、A/D変換回路100-1、100-2、100-3とDSP部110との間でのデジタル信号の受け渡しのインターフェースが複雑になる。またDSP部110を、いずれの周波数のクロック信号で動作させるのかを決定するのも困難となる。この結果、システム設計が複雑化する。
この点、本実施形態では、振動子10-1、10-2、10-3の発振に基づくクロック信号ではなく、クロック信号生成回路150のCR発振回路170により生成されたクロック信号により、A/D変換回路100-1、100-2、100-3やDSP部110を動作させている。従って、A/D変換回路100-1、100-2、100-3とDSP部110との間でのデジタル信号の受け渡しのインターフェースを簡素化できる。この結果、軸間干渉を最小限に抑えながら、システム設計の簡素化等を図れるようになる。
10.検出回路
図21に検出回路60の詳細な構成例を示す。図21は全差動スイッチングミキサー方式の検出回路60の例である。
検出回路60は、第1、第2のQ/V変換回路62、64、第1、第2のゲイン調整アンプ72、74、スイッチングミキサー80、第1、第2のフィルター92、94、A/D変換回路100を含む。なお、検出回路60の構成は図21に限定されず、これらの構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
Q/V変換回路62、64(電荷−電圧変換回路)には振動子10からの差動の第1、第2の検出信号IQ1、IQ2が入力される。そしてQ/V変換回路62、64は振動子10で発生した電荷(電流)を電圧に変換する。これらのQ/V変換回路62、64は帰還抵抗を有する連続型の電荷−電圧変換回路である。
ゲイン調整アンプ72、74は、Q/V変換回路62、64の出力信号QA1、QA2をゲイン調整して増幅する。ゲイン調整アンプ72、74は、いわゆるプログラマブルゲインアンプであり、設定されたゲインで信号QA1、QA2を増幅する。例えばA/D変換回路100の電圧変換範囲に適合する振幅の信号に増幅する。
スイッチングミキサー80は、駆動回路30からの同期信号SYCに基づいて差動の同期検波を行うミキサーである。具体的にはスイッチングミキサー80では、ゲイン調整アンプ72の出力信号QB1が第1の入力ノードNI1に入力され、ゲイン調整アンプ74の出力信号QB2が第2の入力ノードNI2に入力される。そして駆動回路30からの同期信号SYCにより差動の同期検波を行って、差動の第1、第2の出力信号QC1、QC2を第1、第2の出力ノードNQ1、NQ2に出力する。このスイッチングミキサー80により、前段の回路(Q/V変換回路、ゲイン調整アンプ)が発生したノイズ(1/fノイズ)などの不要信号が高周波帯域に周波数変換される。また、コリオリ力に応じた信号である所望信号が直流信号に落とし込まれる。
フィルター92には、スイッチングミキサー80の第1の出力ノードNQ1からの第1の出力信号QC1が入力される。フィルター94には、スイッチングミキサー80の第2の出力ノードNQ2からの第2の出力信号QC2が入力される。これらのフィルター92、94は、例えば不要信号を除去(減衰)して所望信号を通過させる周波数特性を有するローパスフィルターである。例えばスイッチングミキサー80により高周波帯域に周波数変換された1/fノイズ等の不要信号は、フィルター92、94により除去される。またフィルター92、94は、例えばパッシブ素子で構成されるパッシブフィルターである。即ち、フィルター92、94としては、演算増幅器を用いずに、抵抗素子やキャパシターなどのパッシブ素子で構成されるパッシブフィルターを採用できる。
A/D変換回路100は、フィルター92からの出力信号QD1とフィルター94からの出力信号QD2を受けて、差動のA/D変換を行う。具体的には、A/D変換回路100は、フィルター92、94をアンチエイリアシング用のフィルター(前置きフィルター)として、出力信号QD1、QD2のサンプリングを行ってA/D変換を行う。そして本実施形態では、フィルター92からの出力信号QD1及びフィルター94からの出力信号QD2は、アクティブ素子を介さずにA/D変換回路100に入力される。
A/D変換回路100としては、例えばデルタシグマ型や逐次比較型などの種々の方式のA/D変換回路を採用できる。デルタシグマ型を採用する場合には、例えば1/fノイズ低減のためのCDS(Correlated double sampling)やチョッパーの機能などを有し、例えば2次のデルタシグマ変調器などにより構成されるA/D変換回路を用いることができる。また逐次比較型を採用する場合には、例えばDACの素子バラツキよるS/N比の劣化を抑制するDEM(Dynamic Element Matching)の機能などを有し、容量DAC及び逐次比較制御ロジックにより構成されるA/D変換回路を用いることができる。
DSP部110は、各種のデジタル信号処理を行う。例えばDSP部110は、所望信号のアプリケーションに応じた帯域制限のデジタルフィルター処理や、A/D変換回路100等により発生したノイズを除去するデジタルフィルター処理を行う。また、ゲイン補正(感度調整)、オフセット補正などのデジタル補正処理を行う。
図21の検出装置20では、全差動スイッチングミキサー方式を採用している。この全差動スイッチングミキサー方式によれば、Q/V変換回路62、64やゲイン調整アンプ72、74で発生した1/fノイズ等は、スイッチングミキサー80での周波数変換とフィルター92、94によるローパスフィルター特性により除去される。そしてゲイン調整アンプ72、74とAD変換回路100の間には、ゲインは稼げないが1/fノイズが発生しないスイッチングミキサー80や、低ノイズのパッシブ素子により構成されるフィルター92、94が設けられる構成となっている。従って、Q/V変換回路62、64やゲイン調整アンプ72、74で発生したノイズが除去されると共に、スイッチングミキサー80やフィルター92、94が発生するノイズも最小限に抑えられるため、低ノイズの状態の信号QD1、QD2をA/D変換回路100に入力して、A/D変換できるようになる。しかも、信号QD1、QD2を差動信号としてA/D変換できるため、シングルエンドの信号でA/D変換する場合に比べて、S/N比を更に向上できるようになる。
なお本実施形態の検出装置20は図21に示すような全差動スイッチングミキサー方式の構成には限定されない。例えば離散型Q/V変換回路と当該離散型Q/V変換回路にダイレクトに接続されるA/D変換回路からなるダイレクトサンプリング方式の構成など、種々の構成を採用できる。
図22に本実施形態の検出装置20を含む移動体の例を示す。本実施形態の検出装置20は、例えば、車、飛行機、バイク、自転車、或いは船舶等の種々の移動体に組み込むことができる。移動体は、例えばエンジンやモーター等の駆動機構、ハンドルや舵等の操舵機構、各種の電子機器を備えて、地上や空や海上を移動する機器・装置である。図22は移動体の具体例としての自動車206を概略的に示している。自動車206には、振動子10と検出装置20を有するジャイロセンサー510(センサー)が組み込まれている。ジャイロセンサー510は車体207の姿勢を検出することができる。ジャイロセンサー510の検出信号は車体姿勢制御装置208に供給されることができる。車体姿勢制御装置208は例えば車体207の姿勢に応じてサスペンションの硬軟を制御したり個々の車輪209のブレーキを制御したりすることができる。その他、こういった姿勢制御は二足歩行ロボットや航空機、ヘリコプター等の各種の移動体において利用されることができる。姿勢制御の実現にあたってジャイロセンサー510は組み込まれることができる。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(センサー、物理量トランスデューサー等)と共に記載された用語(ジャイロセンサー、振動子等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、クロック信号生成回路や検出装置やセンサーや電子機器や移動体の構成、振動子の構造等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。