本発明の発光パターンを備えた面発光パネルの製造方法は、少なくとも一対の電極間に一つ又は複数の有機機能層を備えた有機エレクトロルミネッセンスパネルに光照射して発光パターンを形成する工程を少なくとも有する発光パターンを備えた面発光パネルの製造方法であって、
前記発光パターンを形成する工程において、前記光照射された有機エレクトロルミネッセンスパネルの発光輝度の低下を、当該光照射前の発光輝度と同じにするために必要な電圧変化量が1.0V以下となるように光照射条件を調整して、前記光照射の量を連続的に変化させることにより、階調を有する発光パターンを形成することを特徴とする。この特徴は、請求項1及び請求項2に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記有機エレクトロルミネッセンスパネルの発光輝度が、300cd/m2から3000cd/m2に変化するのに要する電圧変化量が、1.0V以上となる電圧−発光輝度カーブを有する有機エレクトロルミネッセンスパネルに光照射して発光パターンを形成することが好ましい。
有機エレクトロルミネッセンスパネルの発光輝度が、300cd/m2から3000cd/m2に変化するのに要する電圧変化量が、1.0V以上となる電圧−発光輝度カーブを有する有機エレクトロルミネッセンスパネルに光照射して発光パターンを形成することによって製造され、かつ前記光照射された有機エレクトロルミネッセンスパネルの発光輝度の低下が、当該光照射前の発光輝度と同じにするために必要な電圧変化量が1.0V以下である発光パターンを備えた面発光パネルであることが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《発光パターンを備えた面発光パネルの製造方法の概要》
本発明の発光パターンを備えた面発光パネルの製造方法は、少なくとも一対の電極間に一つ又は複数の有機機能層を備えた有機エレクトロルミネッセンスパネルに光照射して発光パターンを形成する工程を少なくとも有する発光パターンを備えた面発光パネルの製造方法であって、
前記発光パターンを形成する工程において、前記光照射された有機エレクトロルミネッセンスパネルの発光輝度の低下を、当該光照射前の発光輝度と同じにするために必要な電圧変化量が1.0V以下となるように光照射条件を調整して、前記光照射の量を連続的に変化させることにより、階調を有する発光パターンを形成することを特徴とする。
なお、ここでいう「パターン」とは、有機エレクトロルミネッセンスパネルにより表示される図案(図の柄や模様)、文字、画像等をいう。「パターン化」とは、これらのパターン表示機能を持たせることをいう。
「発光パターン」とは、有機エレクトロルミネッセンスパネルが発光する際、所定の図案(図の柄や模様)、文字、画像等に基づいて、発光面の位置により発光強度(輝度)を変えて光を発光させるためにあらかじめ当該有機エレクトロルミネッセンスパネルに形成(付与)される所定の図案(図の柄や模様)、文字、画像等を表示させる機能を有する発生源をいう。
本発明においては、風景や人物などの自然画だけでなく、中間階調を有するパターンに好ましく適用することができる。
《発光パターンの形成》
発光パターンの形成は、後述する光照射して発光パターンを形成する工程(以下、光照射工程ともいう。)により行われる。以下発光パターンの形成について説明する。
発光パターンを形成する工程において、光照射された有機エレクトロルミネッセンスパネルの発光輝度の低下を、光照射前の発光輝度と同じにするために必要な電圧変化量が1.0V以下となるように光照射条件を調整して発光パターンを形成することを特徴とする。
有機ELパネルに光照射すると、光照射された部位は、発光輝度が低下する。光照射量を連続的に変化させることにより、階調を有する発光パターンを備えた有機ELパネルからなる発光パターンを備えた面発光パネルを作製することができる。
しかし、照射される有機ELパネルの光変化特性により大きく異なり、単にパターンを有する画像を光照射しても、階調特性の優れた発光パターンを得ることはできない。特に、有機ELパネルのパターン化に対する感度が高い場合、光照射する際の、光強度のコントロールが困難となることがわかった。これを検討した結果、光照射された有機エレクトロルミネッセンスパネルの発光輝度の低下を、光照射前の発光輝度と同じにするために必要な電圧変化量が1.0V以下となるように光照射条件を調整して発光パターンを形成することにより階調特性の優れた自然なパターン化された画像が得られることを見出し本発明に至った。
光照射量と有機ELパネルの光変化特性との間に特定の条件を満足するように照射することにより光照射する際の、強度のコントロールが容易となり、かつ階調の連続性の再現が再現輝度の範囲内にパターン化することが容易となるため階調特性の優れた発光パターンが得られるものと推定している。
有機ELパネルに光照射することにより、光照射された部位は、駆動電圧が高電圧化し、これに伴い発光輝度が低下する。この特性は、有機ELパネルにより大きく異なる。例えば、有機ELパネルの光照射に対する光変化特性が、少ない光量でも大きく発光光量輝度が低下してしまう場合、光強度のコントロールが困難となる。また、階調の連続性の再現が再現輝度の範囲内にパターン化することが難しくなる。
光照射された有機ELパネルの発光輝度の低下を、光照射前の発光輝度と同じにするために必要な電圧変化量が1.0V以下となるように光照射条件を調整して発光パターンを形成することにより、階調特性の優れた発光パターンが得られる。
なお光照射条件を調整するには、上記の電圧変化量になるように、有機ELパネルの光変化特性をあらかじめ調べ、光照射量を加減することで可能である。
「光照射前の発光輝度と同じにするために必要な電圧変化量が1.0V以下となるように」とは、上記有機ELパネルの光照射した部位に駆動電圧を加えたとき、光照射前の発光輝度と同一の発光輝度を得るために必要な電圧増加分である。面内に光照射量が異なる光を照射した場合、最も光照射量が多い部位の変化量を指す。前述のとおり、最も光照射量が多い部位が最も電圧変化量が大きくなるため、最暗部となる。この値が1.0Vより大きい場合、パターン化された画像は、有機ELパネルの最大発光輝度と最暗部までの発光輝度域を有効に使うことができなくなり、階調性に乏しい画像となる。またこの値が小さすぎるとコントラストが低い画像となってしまう。下限は好ましくは0.3Vである。
また、光照射部位の電圧変化量は発光輝度にも依存する。すなわち、同じ光照射量であっても、例えば、面内の光非照射部位の発光輝度が300cd/m2で発光させる場合と3000cd/m2で発光させる場合で、電圧変化量は異なる。当然ながら、面発光パネルが用いられる発光輝度における電圧変化量を1.0V以下とすることが重要である。
したがって、最も光照射を多く受けた最暗部を生じる発光部位の発光輝度が、光照射前の発光輝度(非光照射部位:最明部)と同じにするために必要な電圧変化量を1.0V以下となるように光照射条件を調整するためには、用いられる発光部輝度により、光照射条件を変える必要がある。
例えば、屋外用途のサイン等のように、外部の環境が明るく、遠くから視認できる必要があるものにおいては、明るい発光輝度での最暗部からの電圧変化量を1.0V以下にしなければならない。一方室内で比較的至近距離から直視するような用途の場合は、例えば、300cd/m2程度の明るさにおいて最暗部からの電圧変化量が1.0V以下とすることが重要である。すなわち、本発明において、最暗部からの電圧変化量を1.0V以下とする発光輝度は、面発光パネルが使用される際、最も明るく発光する最明部の発光輝度をいう。光非照射部位の輝度が、この部分に相当する。この発光輝度において、上記電圧変化量となるよう光照射することで、階調特性の優れた面内発光パネルとすることができる。
好ましい最高発光輝度の範囲としては150〜5000cd/m2である。用途にもよるが好ましくは300〜3000cd/m2の範囲内である。
発光輝度は一般の輝度計を用いて測定することができる。例えば、コニカミノルタ社製2次元色彩輝度計CS−2000で測定することができる。
<有機エレクトロルミネッセンスパネルの構成>
本発明に係る有機ELパネルは、少なくとも一対の電極間に一つ又は複数の有機機能層を備えている。本発明における有機機能層とは、有機化合物を含有する層をいう。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層(青色発光層、緑色発光層、赤色発光層を含む)電子輸送層、電子注入層を挙げることができる。有機機能層は発光層を含むことが好ましい。
本発明に係る有機ELパネルは、種々の構成を採り得るが、一例を図1に示す。
図1に示すとおり、本発明に係る有機ELパネル10は、基板13上に設けられており、基板13側から順に、第一電極(透明電極)1、有機材料等を用いて構成された有機機能層3、及び第二電極(対向電極)5aをこの順に積層して構成されている。第一電極1(電極層1b)の端部には、取り出し電極16が設けられている。第一電極1と外部電源(図示略)とは、取り出し電極16を介して、電気的に接続される。有機ELパネル10は、発生させた光(発光光h)を、少なくとも基板13側から取り出すように構成されている。
また、有機ELパネル10の層構造が限定されることはなく、一般的な層構造であって良い。ここでは、第一電極1がアノード(すなわち陽極)として機能し、第二電極5aがカソード(すなわち陰極)として機能することとする。この場合、例えば、有機機能層3は、アノードである第一電極1側から順に正孔注入層3a/正孔輸送層3b/発光層3c/電子輸送層3d/電子注入層3eを積層した構成が例示されるが、このうち、少なくとも有機材料を用いて構成された発光層3cを有することが必須である。正孔注入層3a及び正孔輸送層3bは、正孔輸送注入層として設けられても良い。電子輸送層3d及び電子注入層3eは、電子輸送注入層として設けられても良い。また、これらの有機機能層3のうち、例えば、電子注入層3eは無機材料で構成されている場合もある。
また、有機機能層3は、これらの層の他にも正孔阻止層や電子阻止層等が必要に応じて必要箇所に積層されていても良い。さらに、発光層3cは、各波長領域の発光光を発生させる各色発光層を有し、これらの各色発光層を、非発光性の中間層を介して積層させた構造としても良い。中間層は、正孔阻止層、電子阻止層として機能しても良い。さらに、カソードである第二電極5aも、必要に応じた積層構造であっても良い。このような構成において、第一電極1と第二電極5aとで有機機能層3が挟持された部分のみが、有機ELパネル10における発光領域となる。
また、以上のような層構成においては、第一電極1の低抵抗化を図ることを目的とし、第一電極1の電極層1bに接して補助電極15が設けられていても良い。
以上のような構成の有機ELパネル10は、有機材料等を用いて構成された有機機能層3の劣化を防止することを目的として、基板13上において後述する封止材17で封止されている。この封止材17は、接着剤19を介して基板13側に固定されている。ただし、第一電極1(取り出し電極16)及び第二電極5aの端子部分は、基板13上において有機機能層3によって互いに絶縁性を保った状態で封止材17から露出させた状態で設けられている。
〈電圧−発光輝度カーブ〉
本発明に用いる有機ELパネルは、有機ELパネルを作製する工程において、前記有機ELパネルの発光輝度が、その電圧−発光輝度カーブにおいて、300cd/m2から3000cd/m2に変化するのに要する電圧変化量が、1.0V以上になるように作製することが好ましい。
電圧−発光輝度カーブ(以下V−Lカーブともいう。)とは、有機ELパネルにおける、印加電圧V(V)に対する発光輝度L(cd/m2)の関係を表すカーブである。V−Lカーブの傾きが大きいと、電圧を徐々に上げて行くと急峻に輝度が上がる。V−Lカーブの傾きが小さいと、電圧を徐々に上げて行くと徐々に輝度が上がる。前者は輝度の調整が難しく、後者は容易になるので階調表現には有利となる。
図2は、有機ELパネルのV−Lカーブの一例である。有機ELパネルに電圧を印加すると、始めは発光量が少ないが、電圧を増すにしたがって急激に立ち上がり、僅かに電圧が増加しても発光輝度の増加が大きいことが分かる。
有機ELはダイオードであるため、電圧V(V)に対する電流密度J(A/m2)の関係(V−J)がダイオード特性を示す。印加電圧が閾値電圧を越えると電流が流れ始め、更に印加電圧を上げると急峻に電流が流れる。また、電流密度J(A/m2)と輝度L(cd/m2)の関係(J−L)は実用域でほぼ一定である。つまりV−Lの関係もダイオード特性を示す。
本発明においては、後述する有機エレクトロルミネッセンスパネルを作製する工程において、その電圧−発光輝度カーブにおいて、300cd/m2から3000cd/m2に変化するのに要する電圧変化量が、1.0V以上になるように作製することが好ましい。
このように有機ELパネルを作製することにより、発光時の発光輝度を精密にコントロールできるだけでなく、急峻なカーブを持つ有機ELパネルは一般に光照射に対する光変化特性も急峻のため、V−Lカーブを緩やかにすることは、パターン化する際の画像を精密にコントロールできるため、階調性の優れた発光パターンを備えた面発光パネルの製造に非常に有効である。
この値は、1.0V以上であることが好ましいが、極端に大き過ぎるとコントラストが低下する場合がある。より好ましくは1.0〜3.0Vの範囲内である。さらに好ましくは1.0〜2.0Vの範囲内である。
一般に電気パネルは抵抗成分が大きくなると電圧に対する電流傾き(抵抗の場合はR(Ω))が小さくなり、印加電圧調整による電流密度の調整が容易になり、同時に印加電圧調整による輝度の調整が容易になる。したがって、V−Lカーブの傾きを小さくするには、有機ELパネルの抵抗成分を大きくするのが好ましい。
〈V−Lカーブの調整手段〉
一般的な特性の有機ELパネルは光強度による特性調整が難しく、ON/OFFの画像になりやすいため階調表現に乏しい。V−Lカーブの傾きが小さい特性とするためには、後述する有機ELパネルを作製する工程において、例えば、以下の方法を用いることができる。ただしこれに限ったものではない。
(1)有機ELパネルの層厚の増加:特定の層、あるいは複数の層の厚さを厚くすることにより、有機ELパネルの抵抗を大きくすることによって、V−Jカーブの傾きを小さくすることができる。一般的にJ−Lの関係は実用域において比例関係にあるので、V−Lカーブの傾きが小さくなる。この時、再結合バランスを崩さないように、正孔側だけ、あるいは電子側を厚くするのではなく、両側を厚くすることが望ましい。具体的には、発光層の両側に位置する有機層のいずれかをそれぞれ90nmから150nm程度に厚膜化することにより、抵抗値が増え、V−Lカーブの傾きを小さくすることができる。
(2)有機ELパネルのユニット積層化:両電極間に、正孔注入層〜発光層〜電子注入層、のユニットを積層する構造が提案されている。このような積層されたユニットを有する有機ELパネルとすることにより、電圧は上がるが量子効率が下がる。理論上の電力効率は変化しない。このようにユニットを2段、3段と重ねることにより、V−Jカーブ、すなわちV−Lカーブの傾きの傾きを小さくすることができる。
(3)有機ELパネルと直列に抵抗成分を入れる。抵抗による電圧降下が加わるため、V−Jカーブは有機ELパネルのダイオード特性と抵抗の線形特性の合算となる。適当な抵抗の成分をパネル外に加えることにより、V−Jカーブ、すなわちV−Lカーブの傾きを小さくすることが可能である。
本発明の発光パターンを備えた面発光パネルの製造方法は、有機エレクトロルミネッセンスパネルに光照射して発光パターンを形成する工程を少なくとも有する。以下に各工程を説明する。
〈有機エレクトロルミネッセンスパネルを作製する工程〉
ここでは、一例として、図1に示す有機ELパネル10の作製方法を説明する。
(1)積層工程
本発明に係る有機ELパネルの製造方法では、基板13上に、第一電極1、有機機能層3及び第二電極5aを積層して形成する工程(積層工程)を行う。
まず、基板13を準備し、基板13上に、例えば、窒素原子を含んだ含窒素化合物からなる下地層1aを、1μm以下、好ましくは10〜100nmの範囲内の層厚になるように蒸着法等の適宜の方法により形成する。
次に、銀(又は銀を主成分とする合金)からなる電極層1bを、12nm以下、好ましくは4〜9nmの層厚になるように、蒸着法等の適宜の方法により下地層1a上に形成し、アノードとなる第一電極1を作製する。同時に、第一電極1端部に、外部電源と接続される取り出し電極16を蒸着法等の適宜の方法に形成する。
次に、この上に、正孔注入層3a、正孔輸送層3b、発光層3c、電子輸送層3d、電子注入層3eの順に積層し、有機機能層3を形成する。
これらの各層の形成は、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等があるが、均質な層が得られやすく、かつ、ピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法又はスピンコート法が特に好ましい。更に、層ごとに異なる形成法を適用しても良い。これらの各層の形成に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度1×10−6〜1×10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、層厚0.1〜5μmの範囲内で、各条件を適宜選択することが望ましい。
以上のようにして有機機能層3を形成した後、この上部にカソードとなる第二電極5aを、蒸着法やスパッタ法などの適宜の形成法によって形成する。この際、第二電極5aは、有機機能層3によって第一電極1に対して絶縁状態を保ちつつ、有機機能層3の上方から樹脂基板13の周縁に端子部分を引き出した形状にパターン形成する。
このようにして作製した有機ELパネルのV−Lカーブが前記のように、300cd/m2から3000cd/m2に変化するのに要する電圧変化量が、1.0V以上とならなかった場合は前記のように、有機層の層厚を厚くする等の手段を講じて電圧変化量が、1.0V以上となるように作製することが好ましい。
(2)封止工程
積層工程の後には、有機機能層3を封止する工程(封止工程)を行う。
すなわち、第一電極1(取り出し電極16)及び第二電極5aの端子部分を露出させた状態で、樹脂基板13上に、少なくとも有機機能層3を覆う封止材17を設ける。
〈光照射して発光パターンを形成する工程〉
光照射して発光パターンを形成する工程(光照射工程ともいう。)は、有機エレクトロルミネッセンスパネルに光照射して発光パターンを形成する工程である。光照射することにより有機機能層3の発光機能を変調させて、発光パターンを有する有機ELパネル10を製造することができる。光照射工程において、その光照射方法は、有機機能層3の所定パターン領域に所定の光照射することで当該照射部分を輝度が変化した発光領域とすることができれば、いずれの方法であっても良く、特定の方法に限定されるものではない。
光照射工程において照射される光は、紫外線、可視光又は赤外線を更に含有していても良いが、紫外線を含むことが好ましい。
ここで、本発明において、紫外線とは、その波長がX線よりも長く、可視光の最短波長より短い電磁波をいい、具体的には波長が、1〜400nmのものである。
紫外線の発生手段及び照射手段は、従来公知の装置等により紫外線を発生させ、かつ、照射すれば良く、特に限定されない。具体的な光源としては、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水素(重水素)ランプ、希ガス(キセノン、アルゴン、ヘリウム、ネオンなど)放電ランプ、窒素レーザー、エキシマレーザー(XeCl,XeF,KrF,KrClなど)、水素レーザー、ハロゲンレーザー、各種可視(LD)−赤外レーザーの高調波(YAGレーザーのTHG(Third HarmonicGeneration)光など)等が挙げられる。
このような光照射工程は、封止工程の後に行われることが好ましい。
ここで、第二電極5aが透光性を有していない場合、光の照射は、基板13の光取り出し面13a側から行う。この場合、基板13を介して有機機能層3に光を照射することになるため、基板13が照射光をある程度吸収する点を考慮して、光照射時間を十分に確保する必要がある。また、封止工程後に光照射工程を行うため、封止後のパネルを大気中(開放系)に曝すことが可能であり、光照射工程をチャンバ内等の閉鎖系で行う必要がない。このため、低コストかつ簡易な製造工程で、発光パターンを有する有機ELパネルを作製することができる。
なお、光照射工程は、封止工程の前に行うものであっても良く、積層工程において有機機能層3を形成した後であって第二電極5aを形成する前に行われるものであっても良い。この場合には、基板13側から光を照射しても良いし、有機機能層3側から光を照射しても良い。
また、光照射工程において、光強度又は照射時間等を調整して、光照射量を変化させることにより、当該光照射量に応じて光照射部分の発光輝度を変化させることが可能である。光照射量が多いほど発光輝度は減衰し、光照射量が少ないほど発光輝度の減衰率は小さい。したがって、光照射量が0、すなわち、光未照射の場合には、発光輝度は最大である。
これにより、作製される有機ELパネルにおいて、発光輝度の強弱をつけることが可能であり、駆動電流の増減によっても強弱を変化させることが可能である。また、輝度の減衰に伴い駆動電圧が高電圧化するが、この発光輝度−電圧カーブは経時的に安定している。よって、発光時に発光領域に発光輝度の強弱が現れる有機ELパネルを作製することが可能である。
以上により、所望の発光パターンを有する有機ELパネルを作製することができる。このような有機ELパネル10の製造においては、1回の真空引きで一貫して有機機能層3から第二電極5aまで作製するのが好ましいが、途中で真空雰囲気から基板13を取り出して異なる形成法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
このようにして得られた有機ELパネル10に直流電圧を印加する場合には、アノードである第一電極1を+の極性とし、カソードである第二電極5aを−の極性として、電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また、交流電圧を印加しても良い。なお、印加する交流の波形は任意で良い。
≪有機ELパネルを構成する各層の詳細とその作製方法≫
以下、上述した有機ELパネル10を構成するための主要各層の詳細とその作製方法について説明する。
<基板>
基板13は基本的に、支持体としての基材と、屈折率が1.4以上1.7以下の1層以上のバリア層とで、構成されていることが好ましい。
(1)基材
本発明に係る基材は、従来公知の基材を特に制限なく使用できる。本発明で好ましく用いられる基材は、有機ELパネルに必要な耐湿性/耐気体透過性等のガスバリア性能を有することが好ましい。
本発明において、有機ELパネル10の基板13側が発光面となる場合には、基材には可視光に対して透光性を有する材料が用いられる。この場合、その波長550nmでの光透過率は、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。
また、基材は可撓性を有するのが好ましい。ここでいう「可撓性」とは、φ(直径)50mmロールに巻き付け、一定の張力で巻取る前後で割れ等が生じることのない基材をいい、より好ましくはφ30mmロールに巻き付け可能な基材をいう。
本発明において、基材は、従来公知の基材であり、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、樹脂基材としてはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、PMMA等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリオレフィン、エポキシ樹脂等の各樹脂フィルムが挙げられ、更に、シクロオレフィン系やセルロースエステル系のものも用いることができる。また、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記樹脂材料を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。
コストや入手容易性の観点から、無アルカリガラス、ソーダガラス、PET、PEN、PC、アクリル樹脂等が好ましく用いられる。
樹脂基材の場合は透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。
更に熱膨張時の収縮を最大限抑えるため、熱アニール等の処理を行った低熱収処理品が最も好ましい。
基材の厚さは10〜500μmが好ましく、より好ましくは20〜250μmであり、さらに好ましくは30〜150μmである。基材の厚さが10〜500μmの範囲にあることで、安定したガスバリア性を得られ、また、ロール・トゥ・ロール方式の搬送に適したものになる。
(2)バリア層
(2.1)特性及び形成方法
本発明において、基板13の基材には、屈折率が1.4以上1.7以内の1層以上のバリア層(低屈折率層)が設けられていても良い。このようなバリア層としては、公知の素材を特に制限なく使用でき、無機物又は有機物からなる被膜や、これらの被膜を組み合わせたハイブリッド被膜であっても良い。バリア層は、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%RH)が0.01g/(m2・24時間)以下のバリア性フィルム(バリア膜等ともいう)であることが好ましく、また、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m2・24時間・atm)以下、水蒸気透過度が1×10−5g/(m2・24時間)以下の高バリア性フィルムであることがより好ましい。
このようなバリア層を形成する材料としては、水分や酸素等パネルの劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であれば良く、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。更に、当該バリア層の脆弱性を改良するため、これら無機層に、応力緩和層として有機材料からなる層(有機層)を積層する構造としても良い。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリア層の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載の大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
(2.2)無機前駆体化合物
また、バリア層は、基材上に、少なくとも1層の無機前駆体化合物を含有する塗布液が塗布されることにより形成されるものであっても良い。
塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。
具体例としては、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
塗布厚さは、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、塗布厚さは、乾燥後の層厚が好ましくは0.001〜10μm程度、さらに好ましくは0.01〜10μm程度、最も好ましくは0.03〜1μm程度となるように設定され得る。
本発明に用いられる無機前駆体化合物とは、特定の雰囲気下で真空紫外線照射によって金属酸化物や金属窒化物や金属酸化窒化物を形成しうる化合物であれば特に限定されないが、本発明の製造方法に適する化合物としては、特開平8−112879号公報に記載されているように比較的低温で改質処理され得る化合物が好ましい。
具体的には、Si−O−Si結合を有するポリシロキサン(ポリシルセスキオキサンを含む)、Si−N−Si結合を有するポリシラザン、Si−O−Si結合とSi−N−Si結合の両方を含むポリシロキサザン等を上げることができる。これらは2種以上を混合して使用することができる。また、異なる化合物を逐次積層したり、同時積層したりしても使用可能である。
<第一電極(透明電極)>
第一電極は、通常有機ELパネルに使用可能な全ての電極を使用することができる。具体的には、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/同混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、ITO、ZnO、TiO2、SnO2等の酸化物半導体等が挙げられる。
本発明においては、第一電極が透明電極であることが好ましく、更には透明金属電極であることが好ましい。
例えば、図1に示すとおり、第一電極1は、基板13側から、下地層1aと、この上部に成膜された電極層1bとを順に積層した2層構造である。このうち、電極層1bは、例えば、銀又は銀を主成分とする合金を用いて構成された層であり、下地層1aは、例えば、窒素原子を含んだ化合物を用いて構成された層である。
なお、第一電極1の透明とは、波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいう。また、電極層1bにおいて主成分とは、電極層1b中の含有量が98質量%以上であることをいう。
(1)下地層
下地層1aは、電極層1bの基板13側に設けられる層である。下地層1aを構成する材料としては、特に限定されるものではなく、銀又は銀を主成分とする合金からなる電極層1bの成膜に際し、銀の凝集を抑制できるものであれば良く、例えば、窒素原子を含んだ含窒素化合物等が挙げられる。
下地層1aが、低屈折率材料(屈折率1.7未満)からなる場合、その層厚の上限としては、50nm未満である必要があり、30nm未満であることが好ましく、10nm未満であることがさらに好ましく、5nm未満であることが特に好ましい。層厚を50nm未満とすることにより、光学的ロスを最小限に抑えられる。一方、層厚の下限としては、0.05nm以上が必要であり、0.1nm以上であることが好ましく、0.3nm以上であることが特に好ましい。層厚を0.05nm以上とすることにより、下地層1aの成膜を均一とし、その効果(銀の凝集抑制)を均一とすることができる。
下地層1aが、高屈折率材料(屈折率1.7以上)からなる場合、その層厚の上限としては特に制限はなく、層厚の下限としては上記低屈折率材料からなる場合と同様である。
ただし、単なる下地層1aの機能としては、均一な成膜が得られる必要層厚で形成されれば十分である。
下地層1aの成膜方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法などのウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)、スパッタ法、CVD法等のドライプロセスを用いる方法等が挙げられる。中でも、蒸着法が好ましく適用される。
下地層1aを構成する窒素原子を含んだ化合物としては、分子内に窒素原子を含んでいる化合物であれば特に限定されないが、窒素原子をヘテロ原子とした複素環を有する化合物であることが好ましい。窒素原子をヘテロ原子とした複素環としては、アジリジン、アジリン、アゼチジン、アゼト、アゾリジン、アゾール、アジナン、ピリジン、アゼパン、アゼピン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾリン、ピラジン、モルホリン、チアジン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、カルバゾール、ベンゾ−C−シンノリン、ポルフィリン、クロリン、コリン等が挙げられる。
(2)電極層
電極層1bは、銀又は銀を主成分とした合金を用いて構成された層であって、下地層1a上に成膜された層である。
このような電極層1bの成膜方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法等のウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)、スパッタ法、CVD法等のドライプロセスを用いる方法等が挙げられる。中でも、蒸着法が好ましく適用される。
また、電極層1bは、下地層1a上に成膜されることにより、電極層1b成膜後の高温アニール処理等がなくても十分に導電性を有することを特徴とするが、必要に応じて、成膜後に高温アニール処理等を行ったものであっても良い。
電極層1bを構成する銀(Ag)を主成分とする合金としては、例えば、銀マグネシウム(AgMg)、銀銅(AgCu)、銀パラジウム(AgPd)、銀パラジウム銅(AgPdCu)、銀インジウム(AgIn)等が挙げられる。
以上のような電極層1bは、銀又は銀を主成分とした合金の層が、必要に応じて複数の層に分けて積層された構成であっても良い。
さらに、この電極層1bは、層厚が12nm以下であることが好ましく、4〜9nmの範囲内にあることがより好ましい。層厚が9nmより薄い場合には、層の吸収成分又は反射成分が少なく、第一電極1の透過率が大きくなる。また、層厚が4nmより厚い場合には、層の導電性を十分に確保することができる。
なお、以上のような下地層1aとこの上部に成膜された電極層1bとからなる積層構造の第一電極1は、電極層1bの上部が保護膜で覆われていたり、別の電極層が積層されていたりしても良い。この場合、第一電極1の光透過性を損なうことのないように、保護膜及び別の電極層が光透過性を有することが好ましい。
(3)第一電極(透明電極)の効果
以上のような構成の第一電極1は、例えば、窒素原子を含んだ化合物を用いて構成された下地層1a上に、銀又は銀を主成分とする合金からなる電極層1bを設けた構成である。これにより、下地層1aの上部に電極層1bを成膜する際には、電極層1bを構成する銀原子が下地層1aを構成する窒素原子を含んだ化合物と相互作用し、銀原子の下地層1a表面においての拡散距離が減少し、銀の凝集が抑えられる。
ここで、一般的に銀を主成分とした電極層1bの成膜においては、核成長型(Volumer−Weber:VW型)で薄膜成長するため、銀粒子が島状に孤立しやすく、層厚が薄いときは導電性を得ることが困難であり、シート抵抗値が高くなる。したがって、導電性を確保するには層厚を厚くする必要があるが、層厚を厚くすると光透過率が下がるため、第一電極としては不適であった。
しかしながら、第一電極1によれば、上述したように下地層1a上において銀の凝集が抑えられるため、銀又は銀を主成分とする合金からなる電極層1bの成膜においては、単層成長型(Frank−van der Merwe:FM型)で薄膜成長するようになる。
また、ここで、第一電極1の透明とは、波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいうが、下地層1aとして用いられる上述した各材料は、銀又は銀を主成分とする合金からなる電極層1bと比較して十分に光透過性の良好な膜である。一方、第一電極1の導電性は、主に、電極層1bによって確保される。したがって、上述のように、銀又は銀を主成分とする合金からなる電極層1bが、より薄い層厚で導電性が確保されたものとなることにより、第一電極1の導電性の向上と光透過性の向上との両立を図ることが可能になるのである。
<有機機能層>
(1)発光層
有機機能層3には少なくとも発光層3cが含まれる。
本発明に用いられる発光層3cには、発光材料としてリン光発光化合物が含有されていることが好ましい。なお、発光材料として、蛍光材料が使用されても良いし、リン光発光化合物と蛍光材料とを併用しても良い。
この発光層3cは、電極又は電子輸送層3dから注入された電子と、正孔輸送層3bから注入された正孔とが再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層3cの層内であっても発光層3cと隣接する層との界面であっても良い。
このような発光層3cとしては、含まれる発光材料が発光要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。また、同一の発光スペクトルや発光極大波長を有する層が複数層あっても良い。この場合、各発光層3c間には、非発光性の中間層(図示略)を有していることが好ましい。
発光層3cの層厚の総和は1〜100nmの範囲内にあることが好ましく、より低い駆動電圧を得ることができることから1〜30nmの範囲内であることがより好ましい。
なお、発光層3cの層厚の総和とは、発光層3c間に非発光性の中間層が存在する場合には、当該中間層も含む層厚である。
複数層を積層した構成の発光層3cの場合、個々の発光層の層厚としては、1〜50nmの範囲内に調整することが好ましく、更に、1〜20nmの範囲内に調整することがより好ましい。積層された複数の発光層が、青、緑、赤のそれぞれの発光色に対応する場合、青、緑、赤の各発光層の層厚の関係については、特に制限はない。
以上のような発光層3cは、公知の発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜形成方法により成膜して形成することができる。
また、発光層3cは、複数の発光材料を混合しても良い。
発光層3cの構成として、ホスト化合物(発光ホスト等ともいう)、発光材料(発光ドーパントともいう)を含有し、発光材料より発光させることが好ましい。
(2)注入層(正孔注入層、電子注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と発光層3cの間に設けられる層のことで、「有機ELパネルとその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層3aと電子注入層3eとがある。
注入層は、必要に応じて設けることができる。正孔注入層3aであれば、アノードと発光層3c又は正孔輸送層3bの間、電子注入層3eであればカソードと発光層3c又は電子輸送層3dとの間に存在させても良い。
正孔注入層3aは、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン層、酸化バナジウムに代表される酸化物層、アモルファスカーボン層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子層等が挙げられる。
電子注入層3eは、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属層、フッ化カリウムに代表されるアルカリ金属ハライド層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物層、酸化モリブデンに代表される酸化物層等が挙げられる。本発明に係る電子注入層3eはごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその層厚は1nm〜10μmの範囲が好ましい。
(3)正孔輸送層
正孔輸送層3bは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層3a、電子阻止層も正孔輸送層3bに含まれる。正孔輸送層3bは単層又は複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであっても良い。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5061569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが三つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.,Applied Physics Letters,80(2002),p.139に記載されているようないわゆる、p型正孔輸送材料を用いることもできる。本発明においては、より高効率の発光パネルが得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
正孔輸送層3bは、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層3bの層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層3bは、上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であっても良い。
また、正孔輸送層3bの材料に不純物をドープしてp性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
このように、正孔輸送層3bのp性を高くすると、より低消費電力のパネルを作製することができるため好ましい。
(4)電子輸送層
電子輸送層3dは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層3e、正孔阻止層(図示略)も電子輸送層3dに含まれる。電子輸送層3dは単層構造又は複数層の積層構造として設けることができる。
単層構造の電子輸送層3d、及び、積層構造の電子輸送層3dにおいて、発光層3cに隣接する層部分を構成する電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、カソードより注入された電子を発光層3cに伝達する機能を有していれば良い。このような材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体及びオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送層3dの材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送層3dの材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送層3dの材料として好ましく用いることができる。また、発光層3cの材料としても例示されるジスチリルピラジン誘導体も電子輸送層3dの材料として用いることができるし、正孔注入層3a、正孔輸送層3bと同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送層3dの材料として用いることができる。
電子輸送層3dは、上記材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層3dの層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層3dは上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であっても良い。
また、電子輸送層3dに不純物をドープし、n性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。さらに電子輸送層3dには、カリウムやカリウム化合物などを含有させることが好ましい。カリウム化合物としては、例えば、フッ化カリウム等を用いることができる。このように電子輸送層3dのn性を高くすると、より低消費電力のパネルを作製することができる。
また電子輸送層3dの材料(電子輸送性化合物)として、上述した下地層1aを構成する材料と同様のものを用いても良い。これは、電子注入層3eを兼ねた電子輸送層3dであっても同様であり、上述した下地層1aを構成する材料と同様のものを用いても良い。
(5)阻止層(正孔阻止層、電子阻止層)
阻止層は、有機機能層3として、上記各機能層の他に、更に設けられていても良い。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機ELパネルとその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
正孔阻止層とは、広い意味では、電子輸送層3dの機能を有する。正孔阻止層は、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する電子輸送層3dの構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。正孔阻止層は、発光層3cに隣接して設けられていることが好ましい。
一方、電子阻止層とは、広い意味では、正孔輸送層3bの機能を有する。電子阻止層は、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する正孔輸送層3bの構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。本発明に係る正孔阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmであり、さらに好ましくは5〜30nmである。
<第二電極(対向電極)>
第二電極5aは、有機機能層3に電子を供給するカソードとして機能する電極膜であり、金属、合金、有機又は無機の導電性化合物、及びこれらの混合物が用いられる。具体的には、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、ITO、ZnO、TiO2、SnO2等の酸化物半導体等が挙げられる。
第二電極5aは、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。また、第二電極5aとしてのシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましく、層厚は通常5nm〜5μmの範囲内、好ましくは5〜200nmの範囲内で選ばれる。
なお、この有機ELパネル10が、第二電極5a側からも発光光hを取り出すものである場合であれば、上述した導電性材料のうち光透過性の良好な導電性材料を選択して第二電極5aを構成すれば良い。
<取り出し電極>
取り出し電極16は、第一電極1と外部電源とを電気的に接続するものであって、その材料としては特に限定されるものではなく公知の素材を好適に使用できるが、例えば、3層構造からなるMAM電極(Mo/Al・Nd合金/Mo)等の金属膜を用いることができる。
<補助電極>
補助電極15は、第一電極1の抵抗を下げる目的で設けるものであって、第一電極1の電極層1bに接して設けられる。補助電極15を形成する材料は、金、白金、銀、銅、アルミニウム等の抵抗が低い金属が好ましい。これらの金属は光透過性が低いため、光取り出し面13aからの発光光hの取り出しの影響のない範囲でパターン形成される。
このような補助電極15の形成方法としては、蒸着法、スパッタリング法、印刷法、インクジェット法、エアロゾルジェット法等が挙げられる。補助電極15の線幅は、光を取り出す開口率の観点から50μm以下であることが好ましく、補助電極15の厚さは、導電性の観点から1μm以上であることが好ましい。
<封止材>
封止材17は、有機ELパネル10を覆うものであって、板状(フィルム状)の封止部材で接着剤19によって基板13側に固定されるものであっても良く、また、封止膜であっても良い。このような封止材17は、有機ELパネル10における第一電極1及び第二電極5aの端子部分を露出させ、少なくとも有機機能層3を覆う状態で設けられている。また、封止材17に電極を設け、有機ELパネル10の第一電極1及び第二電極5aの端子部分と、この電極とを導通させるように構成されていても良い。
板状(フィルム状)の封止材17としては、具体的には、ガラス基板、ポリマー基板、金属基板等が挙げられ、これらの基板材料をさらに薄型のフィルム状にして用いても良い。ガラス基板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー基板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属基板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブデン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる1種以上の金属又は合金からなるものが挙げられる。
中でも、パネルを薄膜化できるということから、封止材17としてポリマー基板や金属基板を薄型のフィルム状にしたものを好ましく使用することができる。
さらには、フィルム状としたポリマー基板は、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m2・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m2・24h)以下のものであることが好ましい。
また、以上のような基板材料は、凹板状に加工して封止材17として用いても良い。この場合、上述した基板部材に対して、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等の加工が施され、凹状が形成される。
また、このような板状の封止材17を基板13側に固定するための接着剤19は、封止材17と基板13との間に挟持された有機ELパネル10を封止するためのシール剤として用いられる。このような接着剤19は、具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。
また、このような接着剤19としては、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
なお、有機ELパネル10を構成する有機材料は、熱処理により劣化する場合がある。このため、接着剤19は、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、接着剤19中に乾燥剤を分散させておいても良い。
封止材17と基板13との接着部分への接着剤19の塗布は、市販のディスペンサーを使っても良いし、スクリーン印刷のように印刷しても良い。
また、板状の封止材17と基板13と接着剤19との間に隙間が形成される場合、この間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
一方、封止材17として封止膜を用いる場合、有機ELパネル10における有機機能層3を完全に覆い、かつ有機ELパネル10における第一電極1及び第二電極5aの端子部分を露出させる状態で、基板13上に封止膜が設けられる。
このような封止膜は、無機材料や有機材料を用いて構成される。特に、水分や酸素等、有機ELパネル10における有機機能層3の劣化をもたらす物質の浸入を抑制する機能を有する材料で構成されることとする。このような材料として、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等の無機材料が用いられる。更に、封止膜の脆弱性を改良するために、これら無機材料からなる膜とともに、有機材料からなる膜を用いて積層構造としても良い。
これらの膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
<保護膜、保護板>
なお、ここでの図示は省略したが、基板13との間に有機ELパネル10及び封止材17を挟んで保護膜又は保護板を設けても良い。この保護膜又は保護板は、有機ELパネル10を機械的に保護するためのものであり、特に封止材17が封止膜である場合には、有機ELパネル10に対する機械的な保護が十分ではないため、このような保護膜又は保護板を設けることが好ましい。
以上のような保護膜又は保護板は、ガラス板、ポリマー板、これよりも薄型のポリマーフィルム、金属板、これよりも薄型の金属フィルム、又はポリマー材料膜や金属材料膜が適用される。このうち、特に、軽量かつパネルの薄膜化という観点からポリマーフィルムを用いることが好ましい。
≪用途≫
本発明の面発光パネルの製造方法によって製造された発光パターンを備えた面発光パネルは、階調特性の優れた発光パターンを備え、中間階調を有する画像を表示する発光パネルに好適に使用できる。中間階調を有する記号、模様、標識等だけでなく、風景画象、人物画像等の画像の表示に好適に使用できる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
[実施例1]
《有機ELパネル1の作製》
厚さ75μmのPET(コスモシャインA4300 東洋紡製)の透明樹脂基板上に、真空蒸着装置内で、下記構造式で表される含窒素化合物N−1を25nmの厚さで成膜後、マスクを使用して陽極として銀を10nmの厚さで成膜した。
更に、蒸着用るつぼの各々に、正孔注入材料としてHATCN、正孔輸送材料としてα−NPD、青色発光層のホスト化合物としてDPVBi、青色発光層のドーパントとしてFIr(pic)、ホスト化合物としてCBP、緑色発光層のドーパントとしてIr(ppy)3、赤色発光層のドーパントとしてIr(piq)3、正孔阻止材料としてBAlq、電子輸送材料としてAlq3、電子注入材料としてLiFを各々パネル作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製又はタングステン製抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。また、中間層としてLiディスペンサー(サエスゲッター社製)を用い、同様に蒸着装置に準備した。
N−1、HATCN、α−NPD、DPVBi、FIr(pic)、CBP、Ir(ppy)3、Ir(piq)3、BAlq、Alq3の構造式をそれぞれ以下に示す。
<有機層ユニットの形成>
次いで、真空度4×10−4Paまで減圧した後、HATCNの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、HATCNを蒸着速度0.1nm/秒で樹脂基板のITO電極側に蒸着し、層厚15nmの正孔注入層を設けた。
次いで、α−NPDの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、α−NPDを蒸着速度0.1nm/秒で正孔注入層上に蒸着し、層厚25nmの正孔輸送層を設けた。
次いで、3質量%のFIr(pic)とDPVBiの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、FIr(pic)とDPVBiとを合計の蒸着速度0.1nm/秒で正孔輸送層上に共蒸着し、層厚15nmの青色発光層を設けた。
次いで、CBPの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、CBPを蒸着速度0.1nm/秒で青色発光層上に蒸着し、層厚5nmの第1中間層を設けた。
次いで、5質量%のIr(ppy)3とCBPの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、Ir(ppy)3とCBPとを合計の蒸着速度0.1nm/秒で第1中間層上に共蒸着し、層厚10nmの緑色発光層を設けた。
次いで、CBPの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、CBPを蒸着速度0.1nm/秒で緑色発光上に蒸着し、層厚5nmの第2中間層を設けた。
次いで、8質量%のIr(piq)3とCBPの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、Ir(piq)3とCBPとを合計の蒸着速度0.1nm/秒で第2中間層上に共蒸着し、層厚10nmの赤色発光層を設けた。
次いで、BAlqの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、BAlqを蒸着速度0.1nm/秒で赤色発光層上に蒸着し、層厚15nmの正孔阻止層を設けた。
次いで、Alq3の入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、Alq3を蒸着速度0.1nm/秒で正孔阻止層上に蒸着し、層厚30nmの電子輸送層を設けた。
<無機層、電極層の蒸着>
更に、LiFの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、LiFを蒸着速度0.1nm/秒で電子輸送層上に蒸着し、層厚1nmの電子注入層を設けた。このようにして有機機能層を形成した。
最後に、アルミニウムを電子注入層上に蒸着し、層厚110nmの陰極を設けた。
そして、前記蒸着面側を厚さ300μmのエポキシ樹脂で覆って封止材とし、更に、厚さ12μmのアルミニウム箔で覆って保護膜とした後、硬化させた。ここまでの操作は全て、パネルを大気に接触させることなく、窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)内で行った。このようにして有機ELパネル1を作製した。
《有機ELパネル2の作製》
有機ELパネル1の作製と同様に、<有機層ユニットの形成>まで実施し、第一有機ユニットを作製した。
次いで、Liの入った蒸発源に通電して加熱し、Liを蒸着速度0.01nm/秒で電子輸送層上に蒸着し、層厚1nmの中間層を第一有機ユニット上に設けた。
次いで<有機層の蒸着>をもう一度実施し、Li中間層上に第二有機ユニットを作製した。
次いで、有機ELパネル1の作製と同様に、<無機層、電極層の形成>を実施し、封止及び保護膜を有機ELパネル1の作製と同様にして、有機ELパネル2を作製した。
《有機ELパネル3の作製》
有機ELパネル1の作製と同様に、有機ELパネル3を作製した。ただし、正孔輸送層は層厚120nmとし、電子輸送層は層厚90nmとした。
〔有機ELパネルの電圧−発光輝度カーブの測定〕
上記作製した有機ELパネル1〜3に対して、電圧−発光輝度カーブ(V−Lカーブ)を求め発光特性を評価した。発光輝度の測定にはコニカミノルタ社製2次元色彩輝度計CS−2000を用いて測定した。発光輝度が300cd/m2及び3000cd/m2となるそれぞれの駆動電圧とその差を表1に示した。
表1から、有機ELパネル1は発光輝度が300cd/m2と3000cd/m2を与える駆動電圧の差が0.8Vと低く、V−Lカーブにおいて、傾きが急峻であることが分かる。
《発光パターンを備えた面発光パネル1の作製》
上記作製した有機ELパネル1の発光領域サイズ93×93mmの部分に、人物画像のフォトマスクを介して、UVテスター(岩崎電気株式会社製、SUV−W151:100mW/cm2)によって7時間光照射し、人物画像を焼き付け、発光パターンを備えた有機ELパネル1を作製した。
《発光パターンを備えた面発光パネル2〜4の作製》
発光パターンを備えた面発光パネル1の作製と同様にして、照射時間と有機ELパネルを、表2のように変えた以外は同様にしてフォトマスクを介して光照射し、人物画像を焼き付け、発光パターンを備えた面発光光量パネル2〜4を作製した。
〔最暗部の電圧変化量の測定〕
得られた発光パターンを最明部(背景)が1000cd/m2になるように電圧を印加し、最暗部(頭髪)中間部(服)の輝度を測定した。また、各画像の最暗部が1000cd/m2になるように電圧印加し、光照射前の1000cd/m2を与える電圧との差を測定した。表2で、これを電圧変化量として示した。
〔主観評価〕
得られた人物画像がパターン化された比較例、実施例1〜3の発光画像を最明部(背景)が1000cd/m2になるように電圧を印加して発光させ、被験者10人で観察し主観評価実験を行った。発光画像の階調特性として好ましくないものを1、好ましいもの5とし5段階評価を行った。10人の被験者の平均ランクを表2に示す。
表2から、光照射前の発光輝度と同じにするために必要な電圧変化量が2.0Vの面発光パネル1に比べ、1.0V以下の面発光パネル2〜4は主観評価の評点が高く、階調特性の優れた発光パターン面発光パネルが得られることが分かる。また、発光輝度が300cd/m2及び3000cd/m2となる駆動電圧の差が1.0V以上の面発光パネル3及び4は優れた階調性を示していることがわかる。