以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、半導体ウェーハ等のワークWを個々のチップに分断するダイシング工程の一例を示した説明図である。同図に示すダイシング工程は、同図(A)の符号(A−1)の図に示すように多数のチップTが形成され、それらチップTを区画する直線状のストリート(切り代)Sが格子状に形成されたワークWを加工対象とする。このようなワークWは、ダイシング工程においては、環状のフレームFに周縁部が固定されたダイシングテープUに付着されることによってフレームFにマウントされている。なお、符号(A−2)の図は、所定のストリートSに直交し、且つ、ワークWを厚さ方向に切断した断面図であり、符号(B−2)、(C−2)の図についても同様の断面図を示す。
また、同図に示すダイシング工程は、いわゆるベベルカットによりワークWを個々のチップTに分断する工程を示しており、同図(A)に示したようなワークWに対して、まず、第1のダイシング装置において、同図(B)のように溝形成の工程を実施する。同図(B)の符号(B−1)の図に示すブレード1000は、第1のダイシング装置が備えたスピンドル1002に装着されており、そのブレード1000として、符号(B−2)の断面図のように刃厚の厚いV溝形成用のブレードが用いられる。そのブレード1000により、ワークWのストリートSが切削されて、符号(B−2)の断面図のようにワークWの表面側にストリートSに沿って溝K(V溝)が形成される。
次に、ストリートSに沿って溝Kが形成されたワークWに対して、第2のダイシング装置において、同図(C)のように切断の工程を実施する。同図(C)の符号(C−1)の図に示すブレード20は、第2のダイシング装置が備えたスピンドル22に装着されており、そのブレード20として、符号(C−2)の断面図のようにブレード1000よりも刃厚の薄い切断用のブレードが用いられる。そのブレード20により、ワークWに形成された溝K(V溝)の略中心線の位置が切削されて、符号(C−2)の断面図のようにワークWの裏面まで(ダイシングテープUの厚さ方向の所定深さ位置まで)切断される。これによって、ワークWが個々のチップTに分断される。
このようなダイシング工程において、同図(B)に示した溝形成の工程は、任意のダイシング装置を用いて従来と同様に実施することができる。
一方、同図(C)に示した切断の工程には、以下で説明する本発明に係るダイシング装置が用いられ、ワークWに形成された溝K(V溝)の中心線の位置が精度良く切断される。
ここで、図1のダイシング工程は、ベベルカットを実施する場合を示したが、いわゆるステップカットを実施する場合においても、切断の工程において、本発明に係るダイシング装置を用いると好適である。ステップカットは、図1(B)の溝形成の工程において、V溝の代わりに平溝を形成し、図1(C)と同様の切断の工程において、その平溝(ベベルカットにおいて形成されるV溝と同様に溝Kという)の略中心線の位置を切断用のブレードで切断する切削方法である。
また、レーザーグルービング加工を用いたダイシング工程における切断の工程においても本発明に係るダイシング装置を用いると好適である。このレーザーグルービング加工を用いたダイシング工程とは、図2(A)の断面図に示すように、ワークWのストリートSの表面にLow−K膜(低誘電率絶縁膜)等の難削部1010が形成されている場合に、レーザー加工機において、レーザー光の熱によりその難削部1010をストリートSに沿って溶解、気化させて図2(B)のように難削部1010を除去したレーザーグルーブ(ベベルカットにおいて形成されるV溝と同様に溝Kという)を形成する。そして、その後、図2(C)のように、その溝Kの略中心線の位置を切断用のブレード20で切断することを示す。
以上のように、本発明に係るダイシング装置は、任意の方法により形成された溝Kを有するワークWをその溝Kの領域内の特定位置で切断する場合に好適に用いることができる。
また、図1(B)の溝形成の工程と、図1(C)の切断の工程とは、必ずしも別々のダイシング装置で実施する場合に限らず、たとえば、ツインスピンドルタイプのダイシング装置において、一方のスピンドルのブレードで溝形成の工程を実施し、他方のスピンドルのブレードで切断の工程を実施することも可能である。その場合には、ツインスピンドルタイプのダイシング装置において少なくとも切断の工程を実施する構成部に関して、以下で説明する本発明に係るダイシング装置と同様の構成を適用すればよい。
また、ワークWの種類としては特定のものに限定されない。例えば、半導体ウェーハ、CSP基板、QFN基板などの任意の種類の板状のワークを加工対象物のワークWとすることができるし、円形状や長方形などの任意の形状のものを加工対象物のワークWとすることができる。
図3は、本発明が適用されるダイシング装置10の主要構成部である加工部の構成を示した平面図であり、図4は、図3の加工部の構成を示した側面図である。また、図5は、図3、図4の加工部の制御に関連する構成を示したブロック図である。なお、図5についての詳細は後述する。
これらの図に示すダイシング装置10(加工部)は、ワークWを保持するワークテーブル12と、ワークテーブル12に保持されたワークW(加工対象物)を切削する切削ユニット14と、ワークWを撮像する撮像ユニット(撮像手段)16と、ダイシング装置10を構成する駆動系、及び制御系を統括制御する制御装置(制御手段)18とから構成される。
ワークテーブル12は、例えば図3の如く円盤状に構成され、XY平面に対して平行するテーブル面を有している。そのテーブル面においてワークWの裏面を真空吸着してワークWを保持する。
このワークテーブル12は、図3、図4では不図示の図5に示したX軸駆動機構60に含まれるモータを駆動することによって、そのX軸駆動機構60により図3に示すX軸方向に沿って往復移動するようになっている。
また、ワークテーブル12は、図3、図4では不図示の図5に示したθ軸駆動機構62に含まれるモータを駆動することによって、そのθ軸駆動機構62により中心軸(θ軸)周りに回転するようになっている。
切削ユニット14は、ワークWを切削する回転刃であるブレード20と、図5では回転駆動機構22として示したスピンドル22等を備えている。
ブレード20は、スピンドル22のY軸に対して平行する方向に延びるスピンドルシャフト22aに連結されて支持されている。ブレード20には、図1において説明したように刃厚の薄い切断用のブレードが用いられる。
スピンドル22は、スピンドルシャフト22aを回転させる不図示の駆動手段を内蔵しており、スピンドルシャフト22aを駆動手段によって回転駆動することで、ブレード20が回転軸21周りに高速回転するようになっている。回転軸21は、ブレード20(及びスピンドルシャフト22a)の中心軸であり、Y軸に対して平行している。
また、切削ユニット14は、スピンドル移動機構によって、図3及び図4に示すY軸方向及び図4に示すZ軸方向に移動するようになっている。
スピンドル移動機構は、図5に示したY軸駆動機構64として、図4に示すようにYキャリッジ24、ガイドレール26、26、不図示のモータ等を備えている。
Yキャリッジ24は、Y軸に対して平行する方向に沿って配設されたガイドレール26、26にスライド自在に支持されている。そして、不図示のモータを駆動することによって、図3及び図4に示すY軸方向に沿ってスライドされるようになっている。
なお、ガイドレール26、26は、例えば加工部においてY軸方向に跨がる門型の支持部材23に設置されている。
また、スピンドル移動機構は、図5に示したZ軸駆動機構66として、図4に示すように駆動部本体28と、Zキャリッジ30等を備えている。
駆動部本体28は、図3及び図4に示すようにYキャリッジ24に設置されており、不図示のリニアガイドとモータを備え、モータを駆動することによって、Zキャリッジ30が図4に示すZ軸方向に沿って移動するようになっている。
Zキャリッジ30の先端部には、ブラケット32が取り付けられ、ブラケット32にスピンドル22が取り付けられている。
以上のスピンドル移動機構によれば、Y軸駆動機構64により、切削ユニット14がY軸方向に沿って移動して、ブレード20がY軸方向に沿って移動する。
また、Z軸駆動機構66により切削ユニット14がZ軸方向に沿って移動(上下動)して、ブレード20がZ軸方向に沿って移動する。
したがって、Y軸駆動機構64のモータを駆動することによってブレード20のY軸方向へのインデックス送り(及び後述のY軸補正送り)等を行うことができ、Z軸駆動機構66のモータを駆動するとによってブレード20のZ軸方向への切込み送り等を行うことができるようになっている。
撮像ユニット16は、カメラ(ITVカメラ)34を備えている。カメラ34は、カメラホルダ36に保持され、カメラホルダ36は支持部材23に支持されている。
この撮像ユニット16のカメラ34は、ワークテーブル12に保持されたワークWの上面に対向する向きに設置されており、ワークWの上面を撮影し、その撮影画像の画像信号を画像処理装置(画像処理手段)38に出力する。
なお、カメラ34は、ワークWの上面全体を分割して撮影するために、カメラ34をY軸方向に沿って移動させる支持機構などに支持されていてもよく、カメラ34の支持機構についての詳細は省略している。カメラ34は1台ではなく複数台であってもよく、1又は複数のカメラによってワークWの表面の所望の部分の画像を撮影することができるように設置されている。
図3、図5に示す画像処理装置38は、カメラ34から得られた撮影画像の画像信号を画像処理して、上述のように溝形成の工程によりワークWに形成された溝Kに関する情報(溝Kの領域等)を検出し、検出した情報を制御装置18に与える。
また、画像処理装置38は、撮影画像の画像信号をモニタ40に出力することにより、モニタ40の画面にカメラ34で撮影した撮影画像を表示させる。
制御装置18は、後述のようにワークテーブル12のX軸方向への移動(位置)及びθ軸周りの回転(回転角度)を制御すると共に、ブレード20のY軸方向及びZ軸方向への移動(位置)を制御する。
また、制御装置18は、画像処理装置38からワークWに形成された溝Kに関する情報を取得し、その情報に基づいて切削予定ラインとする位置を割り出し、ワークWの位置決め(アライメント)、切削時のブレード20の制御等を行う。
なお、以上説明したダイシング装置10の加工部の構成は一例であって、ブレード20がワークW(ワークテーブル12)に対してX軸、Y軸、及びZ軸に沿った方向に相対的に移動可能であり、θ軸周りに回転可能な構成を有し、カメラ34によってワークWのストリート(溝K)を検出可能に撮影できる構成を有したものであればよい。また、ブレード20の各々のXY平面(ワークテーブル12のテーブル面)に対して平行する方向への移動方向は、テーブル面に平行する第1の方向と、テーブル面に平行する方向であって、第1の方向に直交しない第2の方向の各々に沿うものであってもよい。
次に、図5を用いて制御装置18の構成、作用について説明する。
図5に示すように、制御装置18は、主として、切削予定ライン割出部50、アライメント制御部52、切削制御部54を備えている。
切削予定ライン割出部50は、画像処理装置38から所要の情報を取得できるようになっており、画像処理装置38から得られるワークWに形成された溝Kに関する情報に基づいてワークテーブル12上に保持されたワークWの切削予定ラインの位置を割り出す。
ここで、本実施の形態のダイシング装置10は、図1で説明したようにベベルカット、ステップカット、又は、レーザーグルービング加工等を用いたダイシング工程における切断工程に用いられ、ワークテーブル12上には、そのダイシング工程における溝形成工程により溝Kが形成されたワークWが不図示の搬送装置により搬送されて保持される。ただし、ワークテーブル12へのワークWの搬送は、手動によるものであってもよい。
図6は、ワークWに形成された溝Kの形状(溝Kの中心線の形状)を例示した図であり、互いに直交する第1方向と第2方向のストリートのうち第1方向のストリートに形成された溝Kの形状のみを例示している。
同図に示すように、ワークWに形成されている溝Kは、通常、溝形成工程を実施したダイシング装置での切削精度(ブレードのX軸方向の直進度)に起因して、直線のストリートSに対しても湾曲が生じている。
そこで、画像処理装置38は、ワークWに対して、カメラ34により撮影されたワークWの上面の撮影画像を取り込み、その撮影画像を画像処理してワークWの表面に形成された溝Kの領域を検出する。図7は、1つの溝Kの一部を拡大して示した図であり、同図に示すように溝KはストリートSにおいて所定の溝幅の領域を有する。撮影画像上においては、溝Kの領域は、周辺部と異なる輝度値を示すため、輝度値に基づいて溝Kの領域を検出することができる。ただし、撮影画像から溝Kの領域を検出する方法はどのようなものであってもよい。
切削予定ライン割出部50は、画像処理装置38により検出された溝Kの領域に基づいて、図7に示すように溝Kの溝幅の中心位置を通過する中心線KCの位置を割り出して、その割り出した中心線KCの位置を切削予定ラインとして設定する。
ただし、溝Kの中心線KCの位置を切削予定ラインとするのではなく、溝Kの領域内の特定位置、例えば溝幅を所定比で分割する位置を通過するラインを切削予定ラインとすることも可能である。
なお、ワークWの切削予定ラインの割り出しは、ワークW上の全ての切削予定ラインの割り出しをまとめて行うことによって、新たな加工対象のワークWがワークテーブル12に搬送されて保持された後、ワークWの切削を開始する前において、最初に一度だけ行う態様であっても良いし、各切削予定ラインの切削開始前において、次に切削する切削予定ラインのみの割り出しを行う態様であっても良く、切削予定ラインの位置を切削前に把握できる態様であればどのようなものでもよい。
また、ワークW上の各溝Kの全領域を検出して各溝Kの中心線KC(切削予定ライン)を割り出すと長い時間を要するため、図6の丸点A1〜A6で示すように各溝Kの数カ所(複数箇所)において溝幅の中心位置を検出し、それらの中心位置を滑らかな曲線又は直線で結ぶことによって中心線KC(切削予定ライン)を割り出すようにしてもよい。さらに、最長の溝K(中央の溝K)の数カ所のみにおいて溝幅の中心位置を検出して最長の溝Kの中心線KC(切削予定ライン)を割り出し、他の溝Kの中心線KC(切削予定ライン)は、隣接するストリートSの間隔ごとに配置されるものとして、かつ、その最長の溝Kと同じ真直誤差を有するものとして、求めるようにしてもよい。
即ち、各溝Kの切削予定ラインのX軸方向の中心点を各溝Kの基準点としたときに、各溝Kの基準点は、ストリートSの間隔と同じ間隔で配置されるものとし、各溝Kの切削予定ラインのX軸方向の各位置における基準点に対するY軸方向のずれ量が最長の溝Kの中心線KC(切削予定ライン)の基準点に対するY軸方向のずれ量と等しくなるものとして、各溝Kの切削予定ラインを求めるようにしてもよい。別言すれば、最長の溝Kの切削予定ラインと同一形状の切削予定ラインをストリートSの間隔ごとに配置し、ワークWの範囲外となる部分を削除したものを各溝Kの切削予定ラインとすることに相当する。
また更に、ブレード20のX軸方向の切削送り(ワークテーブル12のX軸方向の移動)に関する真直誤差を考慮して切削予定ラインを設定すると、更に高精度に溝Kの中心線KCの位置を切削することができる。即ち、切削予定ラインのX軸方向の各位置において切削予定ラインのY軸方向の位置を切削するようにブレード20のY軸方向の位置を制御すると、実際には、真直誤差によって切削予定ラインの位置からY軸方向に所定ずれ量分だけずれた位置を切削することになる。そこで、切削予定ラインのX軸方向の各位置におけるY軸方向へのずれ量を事前に把握しておく。そして、本来の切削予定ラインの位置、即ち、溝Kの中心線KCの位置に対して、X軸方向の各位置においてそのずれ量分だけY軸方向の位置を反対側にずらした位置を切削予定ラインとして設定する。これによって、ブレード20のX軸方向の切削送りに関する真直誤差の影響も低減して、溝Kの中心線KCの位置を更に高精度に切削することができる。
図5に示すアライメント制御部52は、切削予定ライン割出部50により割り出された切削予定ラインの位置の情報を取得し、その情報に基づいてワークWの位置決め(アライメント)を実施する。
そのアライメントとして、θ軸駆動機構62のモータを制御してワークテーブル12のθ軸周りの回転角度を調整する。これによって、各切削予定ラインの切削を行う際の位置(方向)がX軸方向の切削送りに対して適切となるようにワークWの回転角度調整を行う。
ワークWの回転角度調整について説明すると、各ストリートSに形成されている溝Kには、上述のように湾曲が生じているため、溝Kの中心線KCとして割り出した切削予定ラインも同様に湾曲が生じている。
そこで、アライメント制御部52は、例えば、次に切削する切削予定ラインに対して、誤差が最小となる基準直線を最小自乗近似等により求める。そして、その基準直線がX軸方向に対して平行となるようにワークテーブル12を回転させてワークWの回転角度調整を行う。
もし、切削予定ラインが完全な直線であった場合には、基準直線は切削予定ラインそのものとなる。したがって、この場合のワークWの回転角度調整は、切削予定ラインがX軸に対して平行となるように調整することに相当する。
一方、切削予定ラインは実際には湾曲しているため、図8のように湾曲した切削予定ライン90に対して、誤差が最小となる一直線の基準直線92が求められる。そして、その基準直線92がX軸に対して平行となるようにワークWの回転角度調整が行われる。
アライメント制御部52は、このようなワークWの回転角度調整を、例えば、各切削予定ラインの切削開始前において、次に切削する切削予定ラインの基準直線とX軸とのなす角が所定角度(0度の場合も含む)よりも大きいという条件を満たす場合など、ワークWの回転角度調整が必要と判断する所定の条件を満たすときに実施する。
なお、ワークWの回転角度調整は、上記のような条件に関係なく全ての切削予定ラインの各々の切削開始前に実施してもよいし、特定の切削予定ラインの切削開始前にのみ実施してもよい。
たとえば、切削予定ラインは、ワークW上の格子状のストリート(溝K)に対応して、互いに直交する第1方向と第2方向に沿って設定されており、その切削順序として、第1方向の切削予定ラインを端から順に切削して第1方向の全ての切削予定ラインの切削が終了すると、第2方向の切削予定ラインを端から順に切削するものとする。
このとき、ワークWの回転角度調整は、第1方向の最初に切削する切削予定ラインの切削開始前と、第2方向の最初に切削する切削予定ラインの切削開始前にのみ実施してもよい。
このようにワークWの回転角度調整を特定の切削予定ラインの切削開始前にのみ実施する場合には、次のワークWの回転角度調整を実施するまでに切削する各切削予定ラインの基準直線を平均化した直線を基準直線としてワークWの回転角度調整を実施してもよいし、いずれかの切削予定ラインの基準直線に基づいてワークWの回転角度調整を実施してもよい。
また、本実施の形態では、ワークWの回転角度調整を切削予定ラインに基づいて行うものとしたが、必ずしも切削予定ラインに基づくものでなくてもよく、仮に各々の切削予定ラインに対して基準直線を求めたとして、各々の切削予定ラインを切削する際にその基準直線がX軸に対してほぼ平行となるようにワークWの回転角度を調整するものであればよい。
また、アライメント制御部52は、ワークWのアライメントとして、各切削予定ラインの切削開始前において、ワークWの回転角度調整を適宜実施した後に、X軸駆動機構60のモータを制御してワークテーブル12をX軸方向に移動させ、次に切削する切削予定ライン、例えば、図8の切削予定ライン90において、切削開始端90SのX軸方向の位置(X座標)を、ブレード20により切削が行われる加工点のX軸方向の位置(X座標)に一致させる。
即ち、ブレード20により切削が行われる加工点は、ブレード20の刃先(ブレード20の最下点(周縁端の最下点))とワークWとが接触する点であるものとすると、ブレード20の最下点の位置はX軸方向に対しては固定されており、そのブレード20の最下点のX軸方向の位置に次に切削する切削予定ライン90の切削開始端90SのX軸方向の位置を一致させる。
以上の切削予定ライン割出部50及びアライメント制御部52により行われる処理や制御は、従来と全く同様の内容とすることができ、上述の内容に限らない。
図5に示す切削制御部54は、切削予定ライン割出部50から各切削予定ラインの位置の情報を取得すると共に、アライメント制御部52からワークテーブル12(ワークW)の回転角度の情報を取得し、それらの情報に基づいて各切削予定ラインを切削する際のワークテーブル12のX軸方向への切削送りと、ブレード20の位置の制御とを実施する。
切削制御部54において、ワークWの切削予定ラインの各々を切削する際の切削制御は、全て同様に行われる。そこで、1つの切削予定ラインを着目切削予定ラインとし、その着目切削予定ラインを切削する際の加工手順に従って切削制御部54の切削制御の内容について説明する。図10には、その着目切削予定ラインの例として、図8の切削予定ライン90と同じ形態のものが同一符号により示されている。
図9は、着目切削予定ライン90を切削する際の切削制御部54により加工手順を示したフローチャートである。
なお、切削制御部54は、図5における回転駆動機構(スピンドル)22を制御することによって、少なくともブレード20がワークWに接触する際にはブレード20を高速回転させているものとする。
また、着目切削予定ライン90に対するアライメント制御部52によるワークWのアライメントは終了しているものとする。
まず、図10の着目切削予定ライン90の切削開始前において、切削制御部54は、ステップS10の処理として、スピンドル移動機構のY軸駆動機構64のモータを制御してブレード20をY軸方向に移動させ、ブレード20の最下点のY軸方向の位置(Y座標)を着目切削予定ライン90の切削開始端90SのY軸方向の位置(Y座標)に一致させる。
着目切削予定ライン90が、第1方向の最初に切削する切削予定ラインでなく、かつ、第1方向に直交する第2方向の最初に切削する切削予定ラインでもない場合には、本ステップS10の処理は、着目切削予定ライン90の前に切削した切削予定ラインの切削終了後におけるブレード20のインデックス送りに相当する。
次に切削制御部54は、ステップS12の処理として、スピンドル移動機構のZ軸駆動機構66のモータを制御してブレード20を下降(切込み送り)させ、ブレード20の最下点のZ軸方向の位置(Z座標)を、ワークWに対して所定の切込み深さとなる高さまで移動させる。即ち、ダイシングテープUの厚さ方向の所定深さ位置までブレード20の最下点の位置を下降させる。
このブレード20のZ軸方向への切込み送りによって、図10のP1位置を拡大した図11に示すように、ブレード20の最下点100が着目切削予定ライン90の切削開始端90Sに接触し、その切削開始端90Sを加工点102として着目切削予定ライン90の切削が開始される。
なお、ブレード20(スピンドルシャフト22a)の回転中心となる回転軸を符号21の直線で示しており、その回転軸21はY軸に対して平行している。
次に切削制御部54は、ステップS14の処理として、X軸駆動機構60のモータを制御してワークテーブル12をX軸方向に移動させてワークWをX軸方向に所定の速度で切削送りする。これによって、ワークWがブレード20に対してX軸方向に移動し、加工点102がワークWに対してX軸方向に移動する。
なお、この切削送りは、着目切削予定ライン90の切削が終了するまで継続して行われる。
また、図10において、X軸及びY軸はワークWに固定され、ワークWのX軸方向への移動によって、ブレード20がワークWに対してX軸方向に移動するものとすると、従来のようにブレード20のY軸方向の位置を切削が終了するまで固定した場合には、X軸に対して平行する直線96上をブレード20の最下点100及び加工点102が移動する。
次に切削制御部54は、ステップS16の処理として、現在のブレード20の最下点100(加工点102)の位置に対して、X軸方向の位置が一致する着目切削予定ライン90上の点(加工対応点という)のY軸方向の位置を算出する。
例えば、図10において、ブレード20がP2位置にあるとして、そのP2位置を拡大した図12に示すように、ブレード20の最下点100、即ち、加工点102を通り、かつ、Y軸に対して平行する直線106を描くと、その直線106と着目切削予定ライン90との交点が加工対応点104となる。
この加工対応点104のY軸方向の位置は、切削予定ライン割出部50から取得した着目切削予定ライン90の位置に関する情報と、アライメント制御部52から取得したワークテーブル12の現在の回転角度の情報とに基づいて算出することができる。
次に切削制御部54は、ステップS18の処理として、現在のブレード20の最下点100(加工点102)のY軸方向の位置と、ステップS16により求めた着目切削予定ライン90上の加工対応点104のY軸方向の位置との差、即ち、最下点100(加工点102)と加工対応点104との間の距離d(図12参照)が、所定の閾値ds以上か否かを判定する。
この所定の閾値dsは、切削予定ラインと、実際にブレードによって切削された加工ラインとのずれ量(誤差)として許容される最大許容誤差よりも小さい値であることが好ましい。
切削制御部54は、このステップS18においてNOと判定している間はステップS16の処理及びステップS18の判定を繰り返す。即ち、上述の距離dが閾値dsよりも小さい間は、ブレード20の最下点100(加工点102)はワークWに対してX軸方向に移動する。
一方、ステップS18においてYESと判定した場合には、切削制御部54は、ステップS20の処理として、図5におけるスピンドル移動機構のY軸駆動機構64のモータを制御してブレード20をY軸方向に移動させ、ブレード20の最下点100(加工点102)が着目切削予定ライン90(加工対応点104)に近づく方向に上述の距離dだけ移動させる。
このブレード20のY軸方向への移動を、本明細書では、“Y軸補正送り”というものとする。
また、このブレード20のY軸補正送りは、ブレード20に対してY軸方向(回転軸21方向)への過大な負荷が生じない程度の速度で行われる。
このステップS20のブレード20のY軸補正送りによって、図10のP3位置を拡大した図13に示すように、ブレード20の最下点100(加工点102)が、着目切削予定ライン90にほぼ一致する位置に移動する。
次に、切削制御部54は、ステップS22の処理として、着目切削予定ライン90の切削終了端90Eまでの切削が完了したか否かを判定する。即ち、ブレード20の最下点100(加工点102)のX軸方向の位置が、着目切削予定ライン90の切削終了端90EのX軸方向の位置に一致したか否かを判定する。
このステップS22においてNOと判定している間は、切削制御部54は、ステップS16からステップS22までの処理を繰り返す。
これによって、ブレード20の最下点100(加工点102)の位置は、その着目切削予定ライン90上の加工対応点104の位置に対して閾値ds未満の距離を保ちながらワークW上を移動し、図10の例えばP4位置、P5位置、P6位置のように着目切削予定ライン90に沿ってワークWを切削していく。
そして、ステップS22においてYESと判定した場合には、切削制御部54は、ステップS24の処理として、図5のX軸駆動機構60のモータを制御してワークテーブル12のX軸方向への移動(切削送り)を停止させてワークWの切削送りを停止する。
また、図5のスピンドル移動機構のZ軸駆動機構66のモータを制御してブレード20をZ軸方向に上昇させ、着目切削予定ライン90の切削開始前の高さまで移動させる。
以上のような切削制御によれば、切削予定ラインの切削中におけるブレード20のY軸補正送りによって、溝Kが湾曲しているために、その中心線KCである切削予定ラインが湾曲している場合でも、切削予定ラインに沿って溝Kの中心線の位置を精度良く切断することができるようになる。
なお、切削中におけるY軸補正送りによりブレード20にY軸方向(ブレード20の回転軸21方向)への負荷がかかり、ブレード20が損傷する可能性がある。そこで、図14のブレード20の断面図に示すようにブレード20の両側面にブレード20とは材質の異なる板状部材110、110を固着して、その板状部材110、110でブレード20を挟むようにしてもよい。または、ブレード20の両側面にコーティングの膜を形成してもよい。これによって、ブレード20に側面方向(回転軸方向)から加わる負荷に対してブレード20の剛性を高めることができる。
以上、上記実施の形態では、スピンドル22全体をスピンドル移動機構のY軸駆動機構64によりY軸方向に移動させることにより、ブレード20のY軸補正送りを行うものとしたが、これに限らない。
例えば、スピンドル22において、スピンドルシャフト22aを、スピンドル22の本体(スピンドルシャフトを回転可能に軸支する本体)に対して、軸方向(回転軸21方向)に進退移動可能に支持すると共にモータによってスピンドルシャフトをその軸方向に進退移動させる駆動機構を設けるものとする。そして、その駆動機構によりスピンドルシャフトを軸方向に移動させてブレード20のY軸補正送りを行うこともできる。
また、ワークテーブル12をモータによってY軸方向に移動させる駆動機構を設け、シングルスピンドルの場合には、ブレード20をY軸方向に移動させる代わりに、その駆動機構によりワークテーブル12をY軸方向に移動させることによって、ワークWに対してブレード20を相対的にY軸方向に移動させてY軸補正送りを行うこともできる。
また、上記実施の形態において、スピンドル22によるブレード20の回転に起因するブレード20の最下点100(加工点102)での回転方向、即ち、XY平面に平行し、かつ、ブレード20の回転軸21に直交する方向(以下、ブレード20の切削方向という)は、常にX軸に対して平行する。
したがって、切削予定ラインがX軸に対して平行でない場合には、加工点102における切削予定ラインの方向とブレード20の切削方向とが平行ではない。そこで、それらが平行となるように、ブレード20をZ軸に対して平行する軸(旋回軸)の周りに回転可能(旋回可能)にすると共にモータによりその旋回軸の周りにブレード20を旋回させる旋回駆動機構を設けてもよい。
例えば、旋回駆動機構を加工部に設けた場合の構成を図15の側面図に示す。なお、図15は、図4に示した加工部の構成を応用したものであり、図4に示した構成部と同一又は類似の構成部には同一符号を付し、その説明を省略する。図15において、旋回駆動機構120は、Zキャリッジ30の先端部に取り付けられている。
旋回駆動機構120は、Z軸に対して平行する不図示の軸部材を有し、それらが不図示のモータにより旋回軸121を中心にして回転するようになっている。
その軸部材にスピンドル22を取り付けるブラケット32が固定されている。
これによって、ブレード20は、旋回軸121の周りを旋回し、ブレード20の切削方向をXY平面内の所望の方向に変更することができるようになっている。
これに対して、切削制御部54は、図10と同様の図16に示す着目切削予定ライン90の切削中において、上記実施の形態と同様にY軸補正送りを行うとともに、旋回駆動機構120のモータを制御してブレード20を旋回させ、ブレード20の最下点100(加工点102)に対応する加工対応点104での着目切削予定ライン90の接線方向とブレード20の切削方向とを一致させる。即ち、ブレード20の回転軸21の方向を加工対応点104での着目切削予定ライン90の方向(接線方向)に直交させる。
これによって、加工対応点104での着目切削予定ライン90の接線方向と、ブレード20の切削方向とが一致した状態で切削が行われるようになる。
なお、ブレード20を旋回させる代わりに、ワークテーブル12をθ軸周りに回転させてもよい。
以上、上記説明したダイシング装置10はシングルスピンドルタイプのものであったが、複数個のスピンドルを備えたダイシング装置において、複数個のスピンドルに切断用のブレードを装着してワークWに形成された溝Kの位置を切断する場合においても本発明を適用できる。即ち、少なくとも切断用のブレードを装着するスピンドルに対しては上記実施の形態で説明した構成と制御を適用すればよい。