本発明において、好適には、前記四輪駆動車両は、例えば主駆動輪側の動力伝達経路から電子制御カップリングなどを介して副駆動輪へ駆動力源の動力が配分されるような四輪駆動システムを備える車両、或いは主駆動輪側の駆動力源や動力伝達経路及びその主駆動輪側とは独立した副駆動輪側の駆動力源や動力伝達経路にて前後輪の駆動力配分量が制御されるような四輪駆動システムを備える車両である。又、この四輪駆動車両は、前記駆動力源と前記主駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成する変速機を備えている。この変速機は、常時噛み合う複数対の変速ギヤを2軸間に備える公知の同期噛合型平行2軸式変速機などの手動変速機、種々の自動変速機(遊星歯車式自動変速機、同期噛合型平行2軸式自動変速機、DCT、CVT等)などである。この自動変速機は、自動変速機単体、流体式伝動装置を有する自動変速機、或いは副変速機を有する自動変速機などにより構成される。又、前記駆動力源は、例えば燃料の燃焼によって動力を発生する内燃機関等のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等が好適に用いられるが、電動機等の他の原動機を単独で或いはエンジンと組み合わせて採用することもできる。
図1は、本発明が適用される四輪駆動車両10(以下、車両10という)の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、エンジン12、左右の前輪14L,14R(以下、特に区別しない場合には前輪14という)、左右の後輪16L,16R(以下、特に区別しない場合には後輪16という)、エンジン12と前輪14との間の動力伝達経路であるエンジン12の動力を前輪14に伝達する第1の動力伝達経路、エンジン12と後輪16との間の動力伝達経路であるエンジン12の動力を後輪16に伝達する第2の動力伝達経路などを備えている。エンジン12は、例えばガソリンエンジン或いはディーゼルエンジン等の内燃機関であって、駆動力を発生する駆動力源である。前輪14は、二輪駆動走行状態(2WD走行状態)及び四輪駆動走行状態(4WD走行状態)のときに共に、前記第1の動力伝達経路を介してエンジン12から動力が伝達される駆動輪となる主駆動輪である。後輪16は、2WD走行状態のときに従動輪となり且つ4WD走行状態のときに前記第2の動力伝達経路を介してエンジン12から動力が伝達される駆動輪となる副駆動輪である。従って、車両10は、FFベースの前後輪駆動車両(四輪駆動車両)である。
前記第1の動力伝達経路は、変速機18、フロントデフ20、左右の前輪車軸22L,22R(以下、特に区別しない場合には前輪車軸22という)などを備えている。前記第2の動力伝達経路は、変速機18、エンジン12の動力を後輪16に分配する前後輪動力分配装置であるトランスファ24、トランスファ24にて分配されたエンジン12の動力を後輪16へ伝達する駆動力伝達軸であるプロペラシャフト26、プロペラシャフト26に直列に配設された摩擦係合装置としての電磁式の駆動力配分カップリング(以下、カップリング)28、リヤデフ30、左右の後輪車軸32L,32R(以下、特に区別しない場合には後輪車軸32という)などを備えている。車両10は、エンジン12により発生させられたトルクを車両10の走行状況に応じて前後輪に配分する電子制御トルクスプリット式四輪駆動車両の一例であり、カップリング28によって低燃費でトラクション性能に優れた駆動系(動力伝達装置)を提供できる。
変速機18は、エンジン12と前輪14との間の前記第1の動力伝達経路及びエンジン12と後輪16との間の前記第2の動力伝達経路のうちの共通する動力伝達経路の一部を構成し、エンジン12の動力を前輪14側や後輪16側へ伝達する。変速機18は、例えば変速比γ(=変速機入力回転速度Nin/変速機出力回転速度Nout)が異なる複数の変速段が選択的に成立させられる公知の遊星歯車式多段変速機、変速比γが無段階に連続的に変化させられる公知の無段変速機、或いは公知の同期噛合型平行2軸式変速機などである。
カップリング28は、プロペラシャフト26とリアデフ30との間に設けられ、プロペラシャフト26に連結された一方の回転要素28aと、リアデフ30のリングギヤと噛み合うドライブピニオン34に連結された他方の回転要素28bとの間でトルク伝達を行う。カップリング28は、例えば湿式多板クラッチで構成される電子制御カップリングであり、カップリング28の伝達トルクを制御することにより、前後輪のトルク配分を100:0〜50:50の間で連続的に変更することができる。具体的には、カップリング28の伝達トルクを制御する図示しない電磁ソレノイドに電流が供給されると、その電流値に比例した係合力でカップリング28が係合される。例えば、電磁ソレノイドの電流が供給されない場合には、カップリング28の係合力が零、すなわち伝達トルクが零となり、前後輪のトルク配分が100:0となる。又、電磁ソレノイドの電流が高くなり、カップリング28が完全係合されると、前後輪のトルク配分が50:50となる。このように、電磁ソレノイドに供給される電流値が高くなるに従って後輪側に伝達されるトルク配分が高くなり、この電流値を制御することで、前後輪のトルク配分を連続的に変化させることができる。尚、カップリング28は公知の技術であるので、具体的な構造や作動については省略する。
図2は、車両10に備えられたステアリング装置40の概略構成を説明する図である。図2において、ステアリング装置40は、ステアリングシャフト42、ステアリングギヤボックス44、左右のタイヤロッド46L,46R(以下、特に区別しない場合にはタイヤロッド46という)、左右のナックルアーム48L,48R(以下、特に区別しない場合にはナックルアーム48という)などを備えており、それらを介して、ステアリングホイール49の回転を機械的に前輪14へ伝達する。尚、ステアリングギヤボックス44において例えばラックアンドピニオン式のステアリングギヤ機構が用いられているなど、ステアリング装置40は公知の技術であるので、具体的な構造や作動については省略する。
図1に戻り、車両10には、例えば前輪14と後輪16との駆動力配分量を制御する前後輪駆動力配分制御装置72、運転者によるステアリングホイール49の操作が切り増し操作となる操舵方向であるか或いは切り戻し操作となる操舵方向であるかを判断する操舵方向判断制御装置74などの車両10の制御装置を含む電子制御装置70が備えられている。電子制御装置70は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置70は、エンジン12の出力制御、車両10の駆動状態の切替制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用やカップリング28の係合制御用等に分けて構成される。電子制御装置70には、各種センサ(例えば各種回転速度センサ50,52,54,56、アクセル開度センサ58、スロットル弁開度センサ60、Gセンサ62、ヨーレートセンサ64、ステアリングセンサ66など)による検出信号に基づく各種実際値(例えばエンジン回転速度Ne、変速機入力回転速度Nin、変速機出力回転速度Nout、各車輪(すなわち前輪14L,14R、及び後輪16L,16R)の回転速度(各車輪速)Nwに対応する各車輪速Nwfl,Nwfr,Nwrl,Nwrr、アクセル開度θacc、スロットル弁開度θth、車両10の前後加速度Gx、車両10の左右加速度Gy、車両10の鉛直軸まわりの回転角速度であるヨーレートRyaw、ステアリングホイール49の操舵角θsw(舵角θswとも表す)など)が、それぞれ供給される。電子制御装置70からは、例えばエンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号Se、カップリング28の係合トルクを制御する為のトルク指令信号Scすなわち後輪16側へ伝達する(配分する)トルクを制御する為の4WDトルク制御指令信号Scなどが、燃料噴射装置、点火装置、スロットルアクチュエータ等のエンジン制御装置、カップリング28を駆動する電磁ソレノイドなどへそれぞれ出力される。尚、電子制御装置70は、各車輪速Nwに基づいて、各種実際値の1つとして、車両10の速度V(以下、車速Vという)を算出する。電子制御装置70は、例えば各車輪速Nwの平均車輪速を車速Vとする。
前後輪駆動力配分制御装置72は、車両走行状態判定手段すなわち車両走行状態判定部76、4WD駆動力演算手段すなわち4WD駆動力演算部78、及びアクチュエータ出力指示手段すなわちアクチュエータ出力指示部80を備えている。
車両走行状態判定部76は、前記各種信号等の情報に基づいて車両10の最適な駆動状態(走行状態)を判断する。具体的には、車両走行状態判定部76は、アクセル開度θacc及び車速V等に基づいて、車両10の駆動力変化が予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された(すなわち予め定められた)駆動力変化閾値よりも小さい定常走行状態にあると判断した場合には、車両10の走行状態を、カップリング28を解放して走行する2WD走行とするよう判定する。一方で、車両走行状態判定部76は、駆動力変化が前記駆動力変化閾値を超えていると判断した場合には、車両10の走行状態を、カップリング28を係合乃至スリップ係合して走行する4WD走行とするよう判定する。又、車両走行状態判定部76は、各車輪速Nwに基づいて、各車輪間における回転速度差の何れかが所定回転差を超えたと判断した場合には、車両10の走行状態を、4WD走行とするよう判定する。又、車両走行状態判定部76は、操舵角θsw、左右加速度Gy、及びヨーレートRyawの各絶対値が各々の旋回判定閾値θswth、Gyth、Ryawth以上となっているか否かに基づいて車両10が旋回中であるか否かを判断し、車両10が旋回中であると判断した場合には、車両10の走行状態を、4WD走行とするよう判定する。前記旋回判定閾値θswth、Gyth、Ryawthは、例えば車両10が旋回中であることを判断する為の予め定められた判定値である。尚、車両10の旋回中には4WD走行とすることを基本とするが、必ずしも旋回中に4WD走行とする必要はない。
4WD駆動力演算部78は、前記各種信号等の情報に基づいて最適な前後輪の駆動力配分量を算出する。具体的には、4WD駆動力演算部78は、エンジン回転速度Ne及びスロットル弁開度θth等に基づいてエンジントルクTeの推定値(推定エンジントルク)Tepを算出し、最大限の加速性能が確保されるように前後輪の駆動力配分比を算出し、推定エンジントルクTepに基づく総トルク(総駆動トルク)に前後輪の駆動力配分比を各々乗算して、前後輪の駆動力配分量(例えばフロントトルクTf及びリヤトルクTr)を算出する。又、4WD駆動力演算部78は、スロットル弁開度θth、車速V、各車輪速Nwなどに基づいて、運転者の操作状況や車両10の駆動力変化が安定していると判定した場合には、後輪16への駆動力配分量(或いは駆動力配分比)を低下させて、前輪駆動に近い状況にして燃費を向上させる。又、4WD駆動力演算部78は、旋回中において、運転者によるステアリングホイール49の操舵方向や目標ヨーレートRyawtgtなどに基づいて、適切な旋回性能が得られるように前後輪の駆動力配分量(或いは駆動力配分比)を算出する。尚、4WD駆動力演算部78は、車両走行状態判定部76により2WD走行状態とするよう判定された場合には、後輪16への駆動力配分(リヤ配分比)を零とする。
アクチュエータ出力指示部80は、車両走行状態判定部76により判断された走行状態、及び4WD駆動力演算部78により算出された前後輪の駆動力配分となるように、カップリング28の伝達トルクを制御する不図示の電磁ソレノイドにトルク指令信号Scを出力する。具体的には、アクチュエータ出力指示部80は、車両走行状態判定部76により2WD走行状態とするよう判定された場合には、カップリング28の伝達トルクを零とする指令を上記電磁ソレノイドに出力する。アクチュエータ出力指示部80は、車両走行状態判定部76により4WD走行状態とするよう判定された場合には、4WD駆動力演算部78により算出された前後輪の駆動力配分での4WD走行となるように、カップリング28の伝達トルクを制御する指令を上記電磁ソレノイドに出力する。
前述したように、車両走行状態判定部76により、車両10が旋回中であると判断された場合には車両10の走行状態が4WD走行とするよう判定され、その旋回中において、4WD駆動力演算部78により、運転者によるステアリングホイール49の操舵方向などに基づいて前後輪の駆動力配分量(或いは駆動力配分比)が算出される。このような旋回中における前後輪の駆動力配分に関して、本実施例では、適切な操舵トルクとなるように制御する手法について提案する。
図3は、あるスリップ角における、駆動力とタイヤに発生するセルフアライニングトルク(SAT;図2参照)との関係を示す図である。図3において、駆動力が大きくなる程、SATは小さくなる傾向があることが分かる。このSATは、運転者によるステアリングホイール49上の操作力Fsw(図2参照)に影響する特性である。例えば、切り増し操作時の場合、SATが大きい程、大きな操舵力が必要となる(すなわち舵が重くなる)一方で、SATが小さい程、大きな操舵力が必要なくなる(すなわち舵が軽くなる)。これらのことから、切り増し操作時の場合、駆動力が増加すれば、SATは小さくなり、大きな操舵力が必要なくなることが分かる。このことは、図4(a)に示すように、狙いのヨーレートとするのに(すなわち同じヨーレート(操舵角θsw)に行き着くまでに)、小さな操舵力で済むということであり、車両のヨー応答性が良くなる。一方で、切り増し操作時の場合、駆動力が減少すれば、SATは大きくなり、操舵力が必要となることが分かる。このことは、図4(a)に示すように、狙いの操舵角θswとするのに大きな操舵力が必要となり、車両のヨー応答性が悪くなる。又、切り増し操作とは操舵方向が逆となる切り戻し操作では、SATが小さくなれば大きな操舵力が必要となり、SATが大きくなれば操舵力を減少させられる。その為、図4(b)に示すように、前輪トルクを大きくした走行時(FF走行時)の場合では切り戻し操作時に車両のヨー応答性が悪くなり、前輪トルクを小さくした走行時(4WD走行時)の場合では切り増し操作時に車両のヨー応答性が悪くなる。
図5は、上述した着眼点を、前後輪の駆動力に対応させて、図表にまとめたものである。図5において、フロントトルクTfを比較的大きくすれば(すなわちリヤトルクTrを比較的小さくすれば)、SATが減少して、切り増し操作時には操舵力が小さくて済み(すなわち舵が軽くなり)、操舵トルクに対する車両のヨー応答性が良くなる。しかしながら、切り戻し操作時には大きな操舵力が必要となり(すなわち舵が重くなり)、車両のヨー応答性が悪くなる。一方で、フロントトルクTfを比較的小さくすれば(すなわちリヤトルクTrを比較的大きくすれば)、SATが増大して、切り増し操作時には大きな操舵力が必要となり(すなわち舵が重くなり)、車両のヨー応答性が悪くなる。しかしながら、切り戻し操作時には操舵力が小さくて済み(すなわち舵が軽くなり)、操舵トルクに対する車両のヨー応答性が良くなる。
ところで、ステアリングホイール49の切り増し操作時(切り込み操作時)、切り戻し操作時共に、操舵トルクに対する車両のヨー応答性が良いことが望ましい。これに対して、SATの影響が逆に作用する、切り増し操作時と切り戻し操作時とで、前後輪のトルク配分を一律のものとすると、図5に示すように、車両のヨー応答性が向上させられない場合がある。そこで、前後輪駆動力配分制御装置72は、運転者によるステアリングホイール49の操作が切り増し操作となる操舵方向である場合は、切り戻し操作となる操舵方向である場合と比べて、前輪14への駆動力配分量を大きくする。例えば、4WD駆動力演算部78は、切り増し操作となる操舵方向である場合は、切り戻し操作となる操舵方向である場合と比べて、後輪16への駆動力配分比を小さくすることで、前輪14への駆動力配分量を大きくする。尚、車両10の旋回中には4WD走行とすることを基本とするが、必ずしも旋回中に4WD走行とする必要はない。その為、4WD駆動力演算部78は、切り増し操作となる操舵方向である場合は、後輪16への駆動力配分比を零とする一方で、切り戻し操作となる操舵方向である場合は、後輪16への駆動力配分比を零を超える所定配分比とすることで、切り増し操作となる操舵方向である場合は、切り戻し操作となる操舵方向である場合と比べて、前輪14への駆動力配分量を大きくしても良い。
上述したように、ステアリングホイール49の切り増し操作時と切り戻し操作時とでは、前後輪の駆動力配分量の制御態様が異なる。その為、走行中における操舵方向を適切に判断することが望ましい。実際の操舵角θsw(以下、実操舵角θsw)は、運転者のステアリング操作における操舵角θswのぶれ、前輪14を介してステアリングホイール49に伝わる路面抵抗変化による操舵角θswのぶれなどによって、運転者の操作意思ではない細かな変動が乗ってくる可能性がある。そうすると、操舵方向の判断手法によっては、判定にハンチングが発生して、操舵方向の判断に合わせて制御態様の切替えを実行するような制御がビジーとなる可能性がある。又、判定のハンチングの抑制乃至防止を主目的とする操舵方向の判断手法では、操舵方向の切替判断に判断遅れが生じる可能性がある。
本実施例では、更に、判断のハンチングを抑制したり、判断遅れを抑制したりすることができる、操舵方向の判断手法についても提案する。本実施例における操舵方向の判断手法の狙いとしては、例えば操舵角θswの変化方向が切り替わっただけでは操舵方向が変化したと判断せず、更に、操舵角θswの変化分が所定値を超えた場合に操舵方向が変化したと判断する。これによって、上述したような判断のハンチングが抑制される。加えて、操舵角θswの変化方向が切り替わっても、操舵角θswの変化分が所定値を超えていない為に操舵方向が変化していないと判断した場合には、操舵角θswの変化分を算出するときに実操舵角θswと比較する比較先の操舵角である保持値θswhldを、更新しない。これによって、操舵角θswの変化分を常に操舵角θswの前回値と実際値(今回値)との差で算出する場合と比べて、操舵角θswの変化方向が切り替わった以降に、操舵角θswの変化分が所定値を超え易くなり、上述したような判断遅れが抑制される。
具体的には、操舵方向判断制御装置74は、保持値設定手段すなわち保持値設定部82、操舵角差分値演算手段すなわち操舵角差分値演算部84、及び操舵方向判断手段すなわち操舵方向判断部86を備えている。
保持値設定部82は、操舵方向を判断するときに用いる操舵角θswの変化分を算出するときの実操舵角θswに対する比較先の操舵角である保持値θswhldを設定する。操舵角θswの変化分は、後述するように、実操舵角θswと保持値θswhldとの差である操舵角差分値Δθswである。又、操舵角差分値Δθswは、正値か負値かに基づいて、ステアリングホイール49の操作が切り増し操作となる操舵方向であるか或いは切り戻し操作となる操舵方向であるかを、大別する為の値である。その為、操舵角差分値Δθswの算出にあたっては、保持値θswhldも実操舵角θswも絶対値を用いる。尚、保持値設定部82は、操舵方向判断部86による判断結果に基づいて保持値θswhldを設定する為、この保持値θswhldの具体的な設定については、後述にて、操舵方向判断部86による判断結果と関連付けて詳細に説明する。
操舵角差分値演算部84は、操舵角θswの変化分として、保持値θswhldと実操舵角θswの絶対値との差である操舵角差分値Δθsw(=θswhld−|θsw|)を算出する。操舵角差分値Δθswは、保持値θswhldから実操舵角θswの絶対値を減算した値として算出されるので、実操舵角θswの絶対値が増大する切り増し操作時には負値となり、実操舵角θswの絶対値が減少する切り戻し操作時には正値となる。見方を換えれば、そうなるように、保持値設定部82により保持値θswhldが絶対値にて設定されている。
操舵方向判断部86は、操舵角差分値Δθswの今回の符号が前回から変化したか否かを判断する第1判断手段すなわち第1判断部88を機能的に備えている。具体的には、第1判断部88は、操舵方向判断部86により切り増し判定中であると判断されている場合には、操舵角差分値Δθswが切り増し操作時に対応する負値であるか否かを判定することで、操舵角差分値Δθswの今回の符号が前回から変化していないか否かを判断する。一方で、第1判断部88は、操舵方向判断部86により切り戻し判定中であると判断されている場合には、操舵角差分値Δθswが切り戻し操作時に対応する正値であるか否かを判定することで、操舵角差分値Δθswの今回の符号が前回から変化していないか否かを判断する。
操舵方向判断部86は、第1判断部88により操舵角差分値Δθswの今回の符号が前回から変化したと判断された場合に、操舵角差分値Δθswの今回の絶対値が所定値を超えているか否かを判断する第2判断手段すなわち第2判断部90を機能的に備えている。具体的には、第2判断部90は、操舵方向判断部86による切り増し判定中の判断時に、第1判断部88により操舵角差分値Δθswが切り戻し操作時に対応する正値であると判定された場合には、その操舵角差分値Δθswが所定値A(>0)よりも大きいか否かを判定する。一方で、第2判断部90は、操舵方向判断部86による切り戻し判定中の判断時に、第1判断部88により操舵角差分値Δθswが切り増し操作時に対応する負値であると判定された場合には、その操舵角差分値Δθswが所定値B(<0)よりも小さいか否かを判定する。上記所定値としての、所定値A(>0)や所定値B(<0)は、例えば運転者の操作意思ではない細かな変動を超えるような(換言すれば運転者の操作意思で操舵方向が変化させられたと判断できるような)操舵角差分値Δθswであることを判定する為の予め定められた操舵方向変化判定閾値である。所定値A(>0)は切り増し操作から切り戻し操作へ変化したことを判断する判定閾値であり、所定値B(<0)は切り戻し操作から切り増し操作へ変化したことを判断する判定閾値であり、その所定値B(<0)の絶対値は所定値A(>0)と同じ値であっても良いし異なる値であっても良い。
操舵方向判断部86は、第2判断部90により操舵角差分値Δθswの今回の絶対値が所定値を超えていると判断された場合には、操舵方向が変化したと判断する一方で、第2判断部90により操舵角差分値Δθswの今回の絶対値が所定値を超えていないと判断された場合には、操舵方向が変化していないと判断する第3判断手段すなわち第3判断部92を機能的に備えている。具体的には、第3判断部92は、操舵方向判断部86による切り増し判定中の判断時に、第2判断部90により操舵角差分値Δθswが所定値A(>0)よりも大きいと判定された場合には、操舵方向が切り戻し操作へ変化したと判断して切り増しフラグをオフとする。反対に、第3判断部92は、操舵方向判断部86による切り増し判定中の判断時に、第2判断部90により操舵角差分値Δθswが所定値A(>0)以下であると判定された場合には、操舵方向は切り増し操作のままであると判断して切り増しフラグをオンから変更しない。一方で、第3判断部92は、操舵方向判断部86による切り戻し判定中の判断時に、第2判断部90により操舵角差分値Δθswが所定値B(<0)よりも小さいと判定された場合には、操舵方向が切り増し操作へ変化したと判断して切り増しフラグをオンとする。反対に、第3判断部92は、操舵方向判断部86による切り戻し判定中の判断時に、第2判断部90により操舵角差分値Δθswが所定値B(<0)以上であると判定された場合には、操舵方向は切り戻し操作のままであると判断して切り増しフラグをオフから変更しない。
保持値設定部82は、第2判断部90により操舵角差分値Δθswの今回の絶対値が所定値を超えていないと判断された場合には、操舵角差分値演算部84が今回の操舵角差分値Δθswを算出するときに用いた保持値θswhldを、操舵角差分値演算部84が次回の操舵角差分値Δθswを算出するときに用いる保持値θswhldとして設定する。つまり、保持値設定部82は、第2判断部90により操舵角差分値Δθswの今回の絶対値が所定値を超えていないと判断された場合には、保持値θswhldを更新しない。従って、操舵角差分値Δθswの今回の符号が前回から変化した以降において、操舵角差分値Δθswの今回の絶対値が所定値を超えない間は、保持値θswhldはピーク値(最大値或いは最小値)が用いられる。
上述のように、判断のハンチングを抑制したり、判断遅れを抑制したりすることができる、操舵方向の判断手法を提案した。更に、運転者によるステアリングホイール49の切り増し操作と切り戻し操作とをより正しく且つ速やかに判断することができる、好適な態様を以下に説明する。
保持値設定部82は、第2判断部90により操舵角差分値Δθswの今回の絶対値が所定値を超えていると判断された場合には、操舵角差分値演算部84が今回の操舵角差分値Δθswを算出するときに用いた実操舵角θswの値(ここでは絶対値)を、操舵角差分値演算部84が次回の操舵角差分値Δθswを算出するときに用いる保持値θswhldとして設定する。この保持値θswhldとして設定する実操舵角θswは、次回の操舵角差分値Δθswの算出時には実操舵角θswの前回値となるものである。
第3判断部92は、第1判断部88により操舵角差分値Δθswの符号が変化していないと判断された場合には、操舵方向が変化していないと判断する。又、この場合には、保持値設定部82は、操舵角差分値演算部84が今回の操舵角差分値Δθswを算出するときに用いた実操舵角θswの値(ここでは絶対値)を、操舵角差分値演算部84が次回の操舵角差分値Δθswを算出するときに用いる保持値θswhldとして設定する。具体的には、第3判断部92は、操舵方向判断部86による切り増し判定中の判断時に、第1判断部88により操舵角差分値Δθswが切り増し操作時に対応する負値であると判定された場合には、操舵方向は切り増し操作のままであると判断して切り増しフラグをオンから変更しない。又、この場合には、保持値設定部82は、実操舵角θswの絶対値を保持値θswhldとして設定する。一方で、第3判断部92は、操舵方向判断部86による切り戻し判定中の判断時に、第1判断部88により操舵角差分値Δθswが切り戻し操作時に対応する正値であると判定された場合には、操舵方向は切り戻し操作のままであると判断して切り増しフラグをオフから変更しない。又、この場合には、保持値設定部82は、実操舵角θswの絶対値を保持値θswhldとして設定する。
操舵方向判断部86は、更に、実操舵角θswの絶対値が零を含む所定範囲内にあるか否かを判断する第4判断手段すなわち第4判断部94を機能的に備えている。そして、第4判断部94により実操舵角θswの絶対値が所定範囲内にあると判断された場合には、第1判断部88は、操舵角差分値Δθswの今回の符号が前回から変化したか否かの判断を行わず、第3判断部92は、操舵方向を切り増し操作となる操舵方向と判断して切り増しフラグをオンとする。又、この場合には、保持値設定部82は、実操舵角θswの絶対値を保持値θswhldとして設定する。ここで、車両10が直進状態となるように運転者によりステアリングホイール49が操作されているときには、その後、旋回の意図を持ってステアリングホイール49が操作されれば、操舵方向は必ず切り増し操作となる。これに対して、第1判断部88による判断(第1判断部88以降の判断)を行うことなく、操舵方向を切り増し操作となる操舵方向とすることで、予め、切り増し操作に備えておくのである。尚、車両10の直進状態を見るには実操舵角θswが零であるかを判断すれば良いが、前述したように実操舵角θswにはぶれがあること、又、ステアリングセンサ66による検出値には誤差(個体差)があることを勘案し、上記零にある程度の幅を持たせ、実操舵角θswの絶対値が零を含む所定範囲内にあるか否かを判断するのである。具体的には、第4判断部94は、実操舵角θswの絶対値が所定範囲の最大値である所定操舵角未満であるか否かを判定する。この所定操舵角は、例えば運転者が旋回の意図を持ってステアリングホイール49を操作したと判断できる為の予め定められた実操舵角θswの絶対値の下限値でもある。
操舵方向判断部86は、更に、実操舵角θswが前回値に対して零を跨いだか否かを判断する第5判断手段すなわち第5判断部96を機能的に備えている。そして、第5判断部96により実操舵角θswが前回値に対して零を跨いだと判断された場合には、第1判断部88は、操舵角差分値Δθswの今回の符号が前回から変化したか否かの判断を行わず、第3判断部92は、操舵方向を切り増し操作となる操舵方向と判断して切り増しフラグをオンとする。又、この場合には、保持値設定部82は、実操舵角θswの絶対値を保持値θswhldとして設定する。ここで、実操舵角θswが前回値に対して零を跨いだ場合には、運転者によるステアリングホイール49の操作方向が反対方向への切り増し操作となる。これに対して、第1判断部88による判断(第1判断部88以降の判断)を行うことなく、操舵方向を切り増し操作となる操舵方向とすることで、速やかに切り増し操作に対応するのである。具体的には、第5判断部96は、実操舵角θsw(今回値)と実操舵角θswの前回値との乗算値が負値であるか否かに基づいて、実操舵角θswが前回値に対して零を跨いだか否かを判断する。
本実施例では、上述したような操舵方向の判断手法により操舵方向を判断する。そして、4WD駆動力演算部78は、操舵方向判断部86(第3判断部92)による操舵方向の判断結果に基づいて、前後輪の駆動力配分量を制御(算出)する。これにより、操舵時の切り増し操作或いは切り戻し操作に合わせて駆動力配分量が適切に制御され、切り増し操作時、切り戻し操作時共に、車両10のヨー応答性が向上させられる。
図6は、電子制御装置70の制御作動の要部すなわち運転者によるステアリングホイール49の操作が切り増し操作時、切り戻し操作時共に、車両10のヨー応答性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。又、この図6は、2WD走行を基本として走行している状態を前提としている場合の一例である。
図6において、先ず、操舵方向判断部86に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、例えば切り増しフラグがオンであるか否かに基づいて切り増し操作中であるか或いは切り戻し操作中であるかが判定される。このS1の判断が肯定される場合は(すなわち切り増し操作と判定される場合は)4WD駆動力演算部78に対応するS2において、例えば後輪16への駆動力配分比(リヤ配分比)が零とされてリヤトルクTrが零とされる。一方で、上記S1の判断が否定される場合は(すなわち切り戻し操作と判定される場合は)4WD駆動力演算部78に対応するS3において、例えば推定エンジントルクTepに基づく総トルク(総駆動トルク)に所定のリヤ配分比(>0)が乗算されてリヤトルクTrが算出される。
図7は、電子制御装置70の制御作動の要部すなわち運転者によるステアリングホイール49の操舵方向を判断するに際して判断のハンチングを抑制したり判断遅れを抑制したりする為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。この図7は、例えば図6のフローチャートと並行して実行されても良いし、図6のS2にて実行されても良い。
図7において、先ず、第5判断部96に対応するS10において、例えば実操舵角θsw(今回値)と実操舵角θswの前回値との乗算値が零未満(負値)であるか否かが判定される。このS10の判断が肯定される場合は第3判断部92及び保持値設定部82に対応するS20において、切り増し操作と判定されて切り増しフラグがオンとされると共に、実操舵角θswの絶対値が次回の保持値θswhldとして設定される。上記S10の判断が否定される場合は第4判断部94に対応するS30において、実操舵角θswの絶対値が零近傍の所定操舵角未満であるか否かが判定される。このS30の判断が肯定される場合は第3判断部92及び保持値設定部82に対応するS40において、切り増し操作と判定されて切り増しフラグがオンとされると共に、実操舵角θswの絶対値が次回の保持値θswhldとして設定される。上記S30の判断が否定される場合は操舵方向判断部86に対応するS50において、切り増しフラグがオンである(すなわち切り増し判定中である)か否かが判定される。このS50の判断が肯定される場合は第1判断部88に対応するS60において、操舵角差分値Δθswが零未満である(すなわち切り増し操作時に対応する負値である)か否かが判定される。このS60の判断が肯定される場合は第3判断部92及び保持値設定部82に対応するS70において、切り増し操作のままであると判定されて切り増しフラグがオンから変更されないと共に、実操舵角θswの絶対値が次回の保持値θswhldとして設定される。上記S60の判断が否定される場合は第2判断部90に対応するS80において、操舵角差分値Δθswが所定値A(>0)よりも大きいか否かが判定される。このS80の判断が肯定される場合は第3判断部92及び保持値設定部82に対応するS90において、切り戻し操作へ変化したと判定されて切り増しフラグがオフとされると共に、実操舵角θswの絶対値が次回の保持値θswhldとして設定される。一方で、上記S80の判断が否定される場合は第3判断部92及び保持値設定部82に対応するS100において、切り増し操作のままであると判定されて切り増しフラグがオンから変更されないと共に、今回の操舵角差分値Δθswを算出するときに用いた保持値θswhldが次回の保持値θswhldとして設定される(すなわち保持値θswhldが更新されない)。又、上記S50の判断が否定される場合は第1判断部88に対応するS110において、操舵角差分値Δθswが零を超えている(すなわち切り戻し操作時に対応する正値である)か否かが判定される。このS110の判断が肯定される場合は第3判断部92及び保持値設定部82に対応するS120において、切り戻し操作のままであると判定されて切り増しフラグがオフから変更されないと共に、実操舵角θswの絶対値が次回の保持値θswhldとして設定される。上記S110の判断が否定される場合は第2判断部90に対応するS130において、操舵角差分値Δθswが所定値B(<0)よりも小さいか否かが判定される。このS130の判断が肯定される場合は第3判断部92及び保持値設定部82に対応するS140において、切り増し操作へ変化したと判定されて切り増しフラグがオンとされると共に、実操舵角θswの絶対値が次回の保持値θswhldとして設定される。一方で、上記S130の判断が否定される場合は第3判断部92及び保持値設定部82に対応するS150において、切り戻し操作のままであると判定されて切り増しフラグがオフから変更されないと共に、今回の操舵角差分値Δθswを算出するときに用いた保持値θswhldが次回の保持値θswhldとして設定される(すなわち保持値θswhldが更新されない)。
上述のように、本実施例によれば、ステアリングホイール49の操作が切り増し操作のときには、切り戻し操作のときよりも前輪14への駆動力配分量が大きくされるので、前輪14の駆動力が大きいほどセルフアライニングトルク(SAT)が小さくなるという特性と相俟って、切り増し操作時は、SATが減少して操舵力が減少し(すなわち操舵が軽くなり)、車両10のヨー応答性を向上することができる。又、切り戻し操作時は、SATが増加するが、操舵方向が逆となる為、操舵力が減少し(すなわち操舵が軽くなり)、車両10のヨー応答性を向上することができる。つまり、切り増し操作時、切り戻し操作時共に、小さな操舵力で狙いの旋回挙動(又はヨーレート)とする為の操舵角θswとすることができる。
また、本実施例によれば、切り増し操作時は、切り戻し操作時と比べて、リヤ配分比が小さくされるので、切り増し操作時には前輪14への駆動力配分量が比較的大きくされる一方で、切り戻し操作時には後輪16への駆動力配分量が比較的大きくされる。
また、本実施例によれば、切り増し操作時はリヤ配分比が零とされる一方で、切り戻し操作時はリヤ比が零を超える所定配分比とされるので、切り増し操作時には、後輪16へ駆動力が配分されず、前輪14への駆動力配分量が最大限大きくされる一方で、切り戻し操作時には、後輪16へ所定の駆動力が配分され、前輪14への駆動力配分量が小さくされる。
また、本実施例によれば、操舵角差分値Δθswの符号が変化し且つその操舵角差分値Δθswの絶対値が所定値を超えていることを操舵方向が変化したと判断する為の条件とすることに加えて、操舵角差分値Δθswの符号が変化したにも拘わらずその操舵角差分値Δθswの絶対値が所定値を超えていない為に操舵方向が変化していないと判断された場合には、操舵角差分値Δθswを算出するときに用いる保持値θswhldが更新されないので、操舵時における実操舵角θswの細かな変化に影響され難くなり、運転者によるステアリングホイール49の切り増し操作と切り戻し操作とをより正しく且つ速やかに判断することができる。このように、運転者によるステアリングホイール49の操舵方向を判断するに際して、判断のハンチング(誤判断)を抑制したり、又、判断遅れを抑制したりすることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、車両10は、エンジン12により発生させられたトルクをカップリング28によって走行状況に応じて前後輪に配分する電子制御トルクスプリット式四輪駆動車両であったが、これに限らない。例えば、図8に示す車両100のように、前輪14をエンジン12により駆動し、後輪16を電動機Mにより駆動する形式の四輪駆動車両であっても良い。又、カップリング28と同形式のカップリングが、プロペラシャフト26と直列ではなく、後輪車軸32L,32Rの各々と直列に配設されるような形式の四輪駆動車両であっても良い。又、車両10は、前輪14に常時動力が伝達され、後輪16が副駆動輪となる構造となっているが、これに限らない。例えば、車両10は、後輪16に常時動力が伝達され、前輪14が副駆動輪となる構造であっても構わない。例えば、車両10は、FRベースの四輪駆動車両であっても良い。
また、前述の実施例における図6のフローチャートは、切り増し操作時にはリヤトルクTrが零とされる実施例であったが、これに限らない。例えば、切り増し操作時には所定のリヤトルクTrとされ、切り戻し操作時にはその所定のリヤトルクTrが所定量分増大されたリヤトルクTrとされても良い。要は、切り増し操作時には、切り戻し操作時と比べて、リヤ配分比(或いは後輪16への駆動力配分量)が小さくされれば良い。このように、図6のフローチャートにおいて、各ステップは差し支えのない範囲で適宜変更することができる。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。