以下、図面を用いて、本発明に係る半導体装置の駆動制御装置の保護装置の具体的な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施例である半導体装置10の駆動制御装置20の構成図を示す。本実施例の半導体装置10は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載されて、電気負荷である駆動源としての三相モータとバッテリなどの直流電源との間で電圧変換を行うインバータモジュールなどの電力変換装置である。
半導体装置10は、パワースイッチング素子12を備えている。パワースイッチング素子12は、例えば、上記の三相モータに対応した上下アームを構成する素子である。パワースイッチング素子12は、パワートランジスタである逆導通型IGBT素子やダイオード内蔵IGBT素子であって、IGBT部14と、ダイオード部16と、からなる。これらのIGBT部14とダイオード部16とは、同一の半導体基板に形成されており、互いに逆並列に接続されている。尚、パワースイッチング素子12のパワートランジスタは、IGBT部14以外のMOSFETなどのパワー素子であってもよい。
IGBT部14は、一端が負荷に接続された、上記の如き電圧変換を行うべくオン/オフにスイッチング駆動される素子である。また、ダイオード部16は、IGBT部14のコレクタ−エミッタ間に接続された、IGBT部14に流れる負荷電流を転流させる逆並列ダイオードである。ダイオード部16は、そのアノードがIGBT部14のエミッタに接続されかつそのカソードがIGBT部14のコレクタに接続された構成を有している。ダイオード部16は、IGBT部14での電流の流れとは逆向きの電流の流れ、すなわち、IBGT部14のエミッタ側からコレクタ側への電流の流れを許容する。以下、IGBT部14に流れる電流の大きさをIcとし、また、ダイオード部16に流れる電流の大きさをIdiとする。
駆動制御装置20は、パワースイッチング素子12(具体的には、IGBT部14)のオン/オフを制御する電子制御ユニットである。駆動制御装置20は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと称す)22を主体に構成されている。マイコン22は、予め定められた条件に従って駆動信号Sinを出力する処理を行い、具体的には、IGBT部14をオンすべきタイミングでオンの駆動信号Sinを生成して出力し、また、IGBT部14をオフすべきタイミングでオフの駆動信号Sinを生成して出力する。
駆動制御装置20は、また、ゲート駆動回路24と、ゲートモニタ回路26と、ミラー効果判定回路28と、クロック30と、オンオフ判定回路32と、を備えている。ゲート駆動回路24の出力側は、ゲート抵抗34を介してIGBT部14のゲートに接続されている。ゲート駆動回路24は、マイコン22からの駆動信号Sinに従ってIGBT部14のゲートに印加する印加電圧Vmを生成して出力する回路である。IGBT部14は、ゲート駆動回路24から供給される印加電圧Vmに従ってオン/オフされる。
ゲートモニタ回路26は、IGBT部14のゲートに生じているゲート電圧Vgeをモニタする回路である。ゲートモニタ回路26の出力側は、ミラー効果判定回路28に接続されている。ゲートモニタ回路26は、モニタしたゲート電圧Vgeをミラー効果判定回路28に向けて供給する。ミラー効果判定回路28は、後に詳述する如く、ゲートモニタ回路26から供給されるゲート電圧Vgeの時間波形に基づいて、パワースイッチング素子12にミラー効果が生ずるか否かを判別する回路である。
尚、上記のミラー効果とは、IGBT部14のコレクタ−ゲート間に寄生する容量に起因して、そのIGBT部14のオン/オフの切り替え時に一時的にゲート電圧VgeがLo値(ゼロ)とHi値との間の略一定値に維持される現象のことであって、ダイオード部16が通電していないときに生ずる。また、以下、ミラー効果が生じているときのゲート電圧Vgeをミラー電圧Vmrと称す。
オンオフ判定回路32は、マイコン22とゲート駆動回路24との間に介在されている。オンオフ判定回路32は、ゲート駆動回路24に印加電圧Vmを生成させるうえでそのゲート駆動回路24に対してIGBT部14のオン/オフ指令を行う回路である。オンオフ判定回路32には、マイコン22の出力側、ミラー効果判定回路28の出力側、及びクロック30の出力側が接続されている。クロック30は、周期的にクロック信号を出力する回路である。
オンオフ判定回路32は、マイコン22からの駆動信号Sin、ミラー効果判定回路28によるミラー効果有無の判別結果、及びクロック30からのクロック信号(クロックタイミング)に基づいて、ゲート駆動回路24に対して供給すべきIGBT部14のオン/オフを指令する指令信号を生成して出力する。ゲート駆動回路24は、マイコン22からの駆動信号Sin(正確には、オンオフ判定回路32からの指令信号)に従ってIGBT部14のゲートに印加する印加電圧Vmを生成して出力する。
駆動制御装置20は、半導体装置10であるインバータモジュールを構成する上アーム素子のIGBT部14と下アーム素子のIGBT部14とを交互にオン/オフさせつつ三相の上下アームの位相を120°ずつずらすことにより、直流電源側の直流電圧と三相モータ側の交流電圧との間で電力変換を行う。
次に、図2及び図3を参照して、本実施例の半導体装置10の駆動制御装置20の動作について説明する。図2は、本実施例の駆動制御装置20においてIGBT部14がターンオンによって通電された後の動作タイムチャートを示す。また、図3は、本実施例の駆動制御装置20においてダイオード部16の通電中にIGBT部14がターンオンされるときの動作タイムチャートを示す。
ところで、逆導通型IGBT素子或いはダイオード内蔵IGBT素子であるパワースイッチング素子12では、IGBT部14のゲートに入力されるゲート信号のオン時に、内蔵するダイオード部16の順方向電圧VFが増大するゲート干渉が発生する。このため、ダイオード部16が通電しているときにIGBT部14がターンオンされると、ダイオード部16での損失が増大してしまう。従って、IGBT部14のオン時にダイオード部16が通電しているか否かを判定して、IGBT部14のオン時にダイオード部16が通電中であるときはそのIGBT部14をオフさせることが効率的である。
一方、IGBT部14のオン時にダイオード部16が通電中であるか否かの判定を行ううえでは、ダイオードに流れる電流を検出するためのセンス素子及びセンス抵抗を設けることが考えられる。しかしながら、かかる構成では、ダイオードに流れる電流を検出するためのセンス素子及びセンス抵抗を別途設けることが必要であるので、コストアップが招来してしまう。
そこで、本実施例においては、IGBT部14のオン時にダイオード部16が通電中であるか否かの判定を、センス素子及びセンス抵抗を設けることなく簡素な構成で実現することとしている。以下、本実施例の特徴部について説明する。
本実施例において、オンオフ判定回路32は、マイコン22からの駆動信号Sinに従って、ゲート駆動回路24に対して供給すべきIGBT部14のオン/オフを指令する指令信号を生成する。具体的には、オンオフ判定回路32は、マイコン22からの駆動信号Sinがオフであるときは、IGBT部14のターンオフを指令するオフ指令信号を生成してゲート駆動回路24に対して供給する。ゲート駆動回路24は、オンオフ判定回路32からオフ指令信号を受信したときは、IGBT部14のゲートに印加すべき印加電圧Vmを所定のLo値に設定して出力する。ゲート駆動回路24がLo値の印加電圧VmをIGBT部14のゲートに向けて出力すると、IGBT部14のゲートに生ずるゲート電圧Vgeが略ゼロとなり、IGBT部14がオフする。
また、オンオフ判定回路32は、マイコン22からの駆動信号Sinがオフからオンへ切り替わったと判定したときは、IGBT部14のターンオンを指令するオン指令信号を生成してゲート駆動回路24に対して供給する。ゲート駆動回路24は、オンオフ判定回路32からオン指令信号を受信したときは、IGBT部14のゲートに印加すべき印加電圧Vmを所定のHi値に設定して出力する。ゲート駆動回路24がHi値の印加電圧VmをIGBT部14のゲートに向けて出力すると、IGBT部14のゲートに生ずるゲート電圧Vgeが徐々に上昇する。
IGBT部14がオフからオンへ切り替わる過程すなわちゲート電圧Vgeが上昇する過程において、ダイオード部16が通電されているときは、IGBT部14のコレクタ−エミッタ間電圧が略ゼロであり、IGBT部14のオン/オフの切り替え前後でコレクタ電圧Vceがほとんど変化しないので、IGBT部14のオン/オフの切り替え時に一時的にゲート電圧Vgeが略一定値に維持されるミラー効果は生じない。一方、上記のゲート電圧Vgeが上昇する過程において、ダイオード部16が通電されていないときは、IGBT部14のコレクタ−エミッタ間電圧がゼロに向けて低下するので、上記のミラー効果が生ずる。
そこで、本実施例において、IGBT部14をオフからオンへ切り替えるべく、マイコン22からの駆動信号Sinがオフからオンへ切り替わってゲート駆動回路24から出力される印加電圧Vmが所定のHi値に上げられると、以後、ゲートモニタ回路26は、IGBT部14のゲートに生じているゲート電圧Vgeをモニタし、そのモニタしたゲート電圧Vgeをミラー効果判定回路28に向けて供給する。
ミラー効果判定回路28は、ゲートモニタ回路26から供給されるゲート電圧Vgeの時間波形に基づいて、パワースイッチング素子12にミラー効果が生ずるか否かを判別する。具体的には、印加電圧Vmが所定のHi値に上げられた後の所定時間A内に、ゲート電圧Vgeが略一定値に維持される期間aがあるか否かを判別して、ミラー効果の有無を判別する。
尚、この「ゲート電圧Vgeが略一定値に維持される」とは、印加電圧Vmが所定のLo値(例えば、略ゼロ)から所定のHi値に上げられることでゲート電圧Vgeが時間経過に伴って上昇する通常の傾きよりも小さな傾きが生じていることを表したものであって、ゲート電圧Vgeがほとんど時間変化しない状態のことである。また、「所定時間A」とは、印加電圧Vmが所定のLo値から所定のHi値に上げられることでゲート電圧Vgeが時間経過に伴って略ゼロからミラー電圧Vmrまで上昇するのに要する通常の時間に設定されていればよい。また、「期間a」は、印加電圧Vmが所定のHi値に上げられているにもかかわらずゲート電圧Vgeがほとんど時間変化しないことを検出できる時間長さであればよい。
ミラー効果判定回路28は、上記の所定時間A内にゲート電圧Vgeが略一定値に維持される期間aがあると判別する場合は、パワースイッチング素子12にミラー効果が生じたと判別する。一方、上記の所定時間A内に上記の期間aがないと判別する場合は、パワースイッチング素子12にミラー効果が生じないと判別する。ミラー効果判定回路28は、そのミラー効果の有無判別の結果をオンオフ判定回路32に供給する。
オンオフ判定回路32は、マイコン22からの駆動信号Sinがオフからオンへ切り替わったと判定することによりオン指令信号をゲート駆動回路24に対して供給してゲート電圧Vgeを上昇させた結果として、ミラー効果判定回路28により所定時間A内に期間aがあることでミラー効果が生じたと判別された場合は、ダイオード部16が通電していないすなわちIGBT部14が通電しつつあると判定すると共に、以後もゲート駆動回路24に対するオン指令信号の供給を継続する。この場合には、ゲート駆動回路24がIGBT部14のゲートに印加すべき印加電圧Vmを所定のHi値に維持しつつ出力するので、IGBT部14のゲートに生ずるゲート電圧Vgeがミラー電圧Vmrに維持された後に所望の値まで徐々に上昇し、その結果として、IGBT部14がオンして通電する。
一方、オンオフ判定回路32は、マイコン22からの駆動信号Sinがオフからオンへ切り替わったと判定することによりオン指令信号をゲート駆動回路24に対して供給してゲート電圧Vgeを上昇させた結果として、ミラー効果判定回路28により所定時間A内に期間aが無くてミラー効果が生じないと判別された場合は、ダイオード部16が通電していると判定すると共に、その所定時間Aの経過後、IGBT部14をオフすべく、IGBT部14のターンオフを指令するオフ指令信号を生成してゲート駆動回路24に対して供給する。この場合には、ゲート駆動回路24がオンオフ判定回路32からのオフ指令信号に従ってIGBT部14のゲートに印加すべき印加電圧Vmを所定のLo値に設定して出力するので、上記のゲート電圧Vgeが徐々に降下して最終的にはゼロとなり、IGBT部14がオフする。
また、本実施例において、オンオフ判定回路32は、マイコン22からの駆動信号Sinがオフからオンへ切り替わったときにゲート駆動回路24に対してオン指令信号を供給してIGBT部14への印加電圧Vmを所定のHi値に上げゲート電圧Vgeを上昇させた結果としてミラー効果が生ずると判別され、かつ、その後にゲート駆動回路24に対するオン指令信号の供給の継続によりゲート電圧Vgeを更に所望の値まで上昇させた後、所定時間間隔T1で間欠的に、ゲート駆動回路24に対してオフ指令信号を供給してIGBT部14への印加電圧Vmを所定のLo値に下げ、IGBT部14の通電有無及びダイオード16の通電有無を確認する。
すなわち、オンオフ判定回路32は、マイコン22からの駆動信号Sinがオンでありかつオン指令信号をゲート駆動回路24に対して供給してゲート電圧Vgeを所望の値まで上昇させた後、クロック30から周期的に供給されるクロック信号に従って、所定時間間隔T1で間欠的に、IGBT部14のターンオフを指令するオフ指令信号を生成してゲート駆動回路24に対して供給する。ゲート駆動回路24は、オンオフ判定回路32からオフ指令信号を受信したときは、IGBT部14のゲートに印加すべき印加電圧Vmを所定のLo値に設定して出力する。ゲート駆動回路24がLo値の印加電圧VmをIGBT部14のゲートに向けて出力すると、IGBT部14のゲートに生ずるゲート電圧Vgeが徐々に降下する。
ゲート電圧Vgeが降下する過程において、ダイオード部16が通電していないときすなわちIGBT部14が通電しているときは、そのゲート電圧Vgeの降下に追従してコレクタ電圧Vceが上昇するので、上記のミラー効果が生ずる。一方、上記のゲート電圧Vgeが下降する過程において、ダイオード部16が通電しているときは、そのゲート電圧Vgeが下降してもコレクタ電圧Vceがほとんど変化しないので、上記のミラー効果は生じない。
そこで、本実施例において、駆動信号Sinがオンでありかつゲート電圧Vgeが所望の値まで上昇された後、ゲート駆動回路24から出力される印加電圧Vmが所定のLo値に下げられると、以後、ゲートモニタ回路26は、IGBT部14のゲートに生じているゲート電圧Vgeをモニタし、そのモニタしたゲート電圧Vgeをミラー効果判定回路28に向けて供給する。
ミラー効果判定回路28は、ゲートモニタ回路26から供給されるゲート電圧Vgeの時間波形に基づいて、パワースイッチング素子12にミラー効果が生ずるか否かを判別する。具体的には、印加電圧Vmが所定のLo値に下げられた後の所定時間B内に、ゲート電圧Vgeが略一定値に維持される期間bがあるか否かを判別して、ミラー効果の有無を判別する。
尚、この「ゲート電圧Vgeが略一定値に維持される」とは、印加電圧Vmが所定のHi値から所定のLo値に下げられることでゲート電圧Vgeが時間経過に伴って降下する通常の傾きよりも小さな傾きが生じていることを表したものであって、ゲート電圧Vgeがほとんど時間変化しない状態のことである。また、「所定時間B」とは、印加電圧Vmが所定のHi値から所定のLo値に下げられることでゲート電圧Vgeが時間経過に伴って所望の値からミラー電圧Vmrまで降下するのに要する通常の時間に設定されていればよい。また、「期間b」は、印加電圧Vmが所定のLo値に下げられているにもかかわらずゲート電圧Vgeがほとんど時間変化しないことを検出できる時間長さであればよい。
ミラー効果判定回路28は、上記の所定時間B内にゲート電圧Vgeが略一定値に維持される期間bがあると判別する場合は、パワースイッチング素子12にミラー効果が生じたと判別する。一方、上記の所定時間B内に上記の期間bがないと判別する場合は、パワースイッチング素子12にミラー効果が生じないと判別する。ミラー効果判定回路28は、そのミラー効果の有無判別の結果をオンオフ判定回路32に供給する。
オンオフ判定回路32は、マイコン22からの駆動信号Sinがオンでありかつオン指令信号をゲート駆動回路24に対して供給してゲート電圧Vgeを所望の値まで上昇させた後、クロック30からのクロック信号に従ってオフ指令信号をゲート駆動回路24に対して供給してゲート電圧Vgeを降下させた結果として、ミラー効果判定回路28により所定時間B内に期間bがあることでミラー効果が生じたと判別された場合は、ダイオード部16が通電していないすなわちIGBT部14が通電していると判定すると共に、その通電判定後、IGBT部14のターンオンを指令するオン指令信号を生成してゲート駆動回路24に対して供給する。この場合には、ゲート駆動回路24がオンオフ判定回路32からのオン指令信号に従ってIGBT部14のゲートに印加すべき印加電圧Vmを所定のHi値に設定して出力するので、上記のゲート電圧Vgeがミラー電圧Vmrから所望の値まで徐々に上昇する。
以後、オンオフ判定回路32は、IGBT部14が通電していると判定する限り、所定時間間隔T1で間欠的に、オフ指令信号をゲート駆動回路24に対して供給してIGBT部14に対する印加電圧Vmを所定のHi値から下げる処理を繰り返し、そのIGBT部14の通電有無を確認する。
一方、オンオフ判定回路32は、マイコン22からの駆動信号Sinがオンでありかつオン指令信号をゲート駆動回路24に対して供給してゲート電圧Vgeを所望の値まで上昇させた後、クロック30からのクロック信号に従ってオフ指令信号をゲート駆動回路24に対して供給した結果として、ミラー効果判定回路28により所定時間B内に期間bが無くてミラー効果が生じないと判別された場合は、ダイオード部16が通電していると判定すると共に、以後もゲート駆動回路24に対するオフ指令信号の供給を継続する。この場合には、ゲート駆動回路24がIGBT部14のゲートに印加すべき印加電圧Vmを所定のLo値に維持しつつ出力するので、上記のゲート電圧Vgeが徐々に降下して最終的にゼロとなり、IGBT部14がオフする。
また、本実施例において、オンオフ判定回路32は、マイコン22からの駆動信号Sinのオフからオンへの切り替え時及びその駆動信号Sinのオン中、ミラー効果が発生しないと判別されてダイオード部16が通電していると判定され、かつ、その後にゲート駆動回路24に対するオフ指令信号の供給の継続によりゲート電圧Vgeを略ゼロまで降下させた後、所定時間間隔T2で間欠的に、ゲート駆動回路24に対してオン指令信号を供給してIGBT部14への印加電圧Vmを所定のHi値に上げ、IGBT部14の通電有無及びダイオード16の通電有無を確認する。
すなわち、オンオフ判定回路32は、マイコン22からの駆動信号Sinがオンでありかつオフ指令信号をゲート駆動回路24に対して供給してゲート電圧Vgeを略ゼロまで降下させた後、クロック30から周期的に供給されるクロック信号に従って、所定時間間隔T2で間欠的に、IGBT部14のターンオンを指令するオン指令信号を生成してゲート駆動回路24に対して供給する。ゲート駆動回路24は、オンオフ判定回路32からオン指令信号を受信したときは、IGBT部14のゲートに印加すべき印加電圧Vmを所定のHi値に設定して出力する。ゲート駆動回路24がHi値の印加電圧VmをIGBT部14のゲートに向けて出力すると、IGBT部14のゲートに生ずるゲート電圧Vgeが徐々に上昇する。
駆動信号Sinがオンでありかつゲート電圧Vgeが略ゼロまで降下された後、ゲート駆動回路24から出力される印加電圧Vmが所定のHi値に上げられると、以後、ゲートモニタ回路26は、IGBT部14のゲートに生じているゲート電圧Vgeをモニタし、そのモニタしたゲート電圧Vgeをミラー効果判定回路28に向けて供給する。ミラー効果判定回路28は、ゲートモニタ回路26から供給されるゲート電圧Vgeの時間波形に基づいて、パワースイッチング素子12にミラー効果が生ずるか否かを判別する。具体的には、印加電圧Vmが所定のHi値に上げられた後の所定時間A内に、ゲート電圧Vgeが略一定値に維持される期間aがあるか否かを判別して、ミラー効果の有無を判別する。
そして、ミラー効果判定回路28は、上記の所定時間A内に上記の期間aがあると判別する場合は、パワースイッチング素子12にミラー効果が生じたと判別する。一方、上記の所定時間A内に上記の期間aがないと判別する場合は、パワースイッチング素子12にミラー効果が生じないと判別する。
オンオフ判定回路32は、マイコン22からの駆動信号Sinがオンでありかつオフ指令信号をゲート駆動回路24に対して供給してゲート電圧Vgeを略ゼロまで降下させた後、クロック30からのクロック信号に従ってオン指令信号をゲート駆動回路24に対して供給してゲート電圧Vgeを上昇させた結果として、ミラー効果判定回路28によりミラー効果が生じたと判別された場合は、ダイオード部16が通電していないすなわちIGBT部14が通電しつつあると判定すると共に、以後もゲート駆動回路24に対するオン指令信号の供給を継続する。この場合には、ゲート駆動回路24がIGBT部14のゲートに印加すべき印加電圧Vmを所定のHi値に維持しつつ出力するので、IGBT部14のゲートに生ずるゲート電圧Vgeがミラー電圧Vmrに維持された後に所望の値まで徐々に上昇し、その結果として、IGBT部14がオンして通電する。
一方、オンオフ判定回路32は、マイコン22からの駆動信号Sinがオンでありかつオフ指令信号をゲート駆動回路24に対して供給してゲート電圧Vgeを略ゼロまで降下させた後、クロック30からのクロック信号に従ってオン指令信号をゲート駆動回路24に対して供給した結果として、ミラー効果判定回路28によりミラー効果が生じないと判別された場合は、ダイオード部16が通電していると判定すると共に、その所定時間Aの経過後、IGBT部14をオフすべく、IGBT部14のターンオフを指令するオフ指令信号を生成してゲート駆動回路24に対して供給する。この場合には、ゲート駆動回路24がオンオフ判定回路32からのオフ指令信号に従ってIGBT部14のゲートに印加すべき印加電圧Vmを所定のLo値に設定して出力するので、上記のゲート電圧Vgeが徐々に降下して最終的にはゼロとなる。
以後、オンオフ判定回路32は、ダイオード部16が通電していると判定する限り、所定時間間隔T2で間欠的に、オン指令信号をゲート駆動回路24に対して供給してIGBT部14に対する印加電圧Vmを所定のLo値から上げる処理を繰り返し、そのダイオード部16の通電有無を確認する。
このように、本実施例においては、マイコン22からの駆動信号Sinがオンである状態で、IGBT部14に対する印加電圧Vmを変化させたときのゲート電圧Vgeの時間波形に基づいて、パワートランジスタ素子12にミラー効果が生ずるか否かを判別すると共に、そのミラー効果の有無判別の結果に基づいてIGBT部14の通電有無及びダイオード部16の通電有無を判定する。
具体的には、駆動信号SinがオンでありかつHi値の印加電圧Vmの印加によりIGBT部14がオンしている状況から印加電圧Vmが下げられたときにゲート電圧Vgeが略一定値に維持される期間がある場合は、パワートランジスタ素子12にミラー効果が生じたと判別して、IGBT部14が通電していると判定する。
また、駆動信号SinがオンでありかつHi値の印加電圧Vmの印加によりIGBT部14がオンしている状況から印加電圧Vmが下げられたときにゲート電圧Vgeが略一定値に維持される期間がない場合は、パワートランジスタ素子12にミラー効果が生じないと判別して、ダイオード部16が通電していると判定する。
また、駆動信号SinがオンでありかつLo値の印加電圧Vmの印加によりIGBT部14がオフしている状況から印加電圧Vmが上げられたときにゲート電圧Vgeが略一定値に維持される期間がある場合は、パワートランジスタ素子12にミラー効果が生じたと判別して、IGBT部14が通電していると判定する。
また、駆動信号SinがオンでありかつLo値の印加電圧Vmの印加によりIGBT部14がオフしている状況から印加電圧Vmが上げられたときにゲート電圧Vgeが略一定値に維持される期間がない場合は、パワートランジスタ素子12にミラー効果が生じないと判別して、ダイオード部16が通電していると判定する。
従って、本実施例によれば、マイコン22からの駆動信号Sinがオンである状態で、IGBT部14が通電しているか或いはダイオード部16が通電しているか否かを判定するうえで、すなわち、パワートランジスタ素子12の通電方向を判定するうえで、ダイオード部16やIGBT部14などにセンス素子やセンス抵抗を設けることは不要であって、IGBT部14に対する印加電圧Vmを変化させたときのゲート電圧Vgeの時間波形を用いることとすれば十分である。
ミラー効果が生じていればIGBT部14が通電していると判定し、また、ミラー効果が生じていなければダイオード部16が通電していると判定する。この点、本実施例によれば、通電判定のためのセンス素子やセンス抵抗を設けることなく簡素な構成で、IGBT部14が通電しているか或いはダイオード部16が通電しているかを判定することができるので、通電判定に起因してコストアップが招来するのを防止することができる。
また、本実施例においては、IGBT部14が通電していると判定されると、オン指令信号がゲート駆動回路24に供給されて、IGBT部14に対して印加される印加電圧Vmが所定のHi値に設定され、ゲート電圧Vgeがミラー電圧Vmrから所望の値まで上昇される。ゲート電圧Vgeが所望の値まで上げられれば、マイコン22からの駆動信号SinどおりにIGBT部14がオンされる。
一方、ダイオード部16が通電していると判定されると、オフ指令信号がゲート駆動回路24に供給されて、IGBT部14に対して印加される印加電圧Vmが所定のLo値に設定され、ゲート電圧Vgeがゼロまで降下される。ダイオード部16の通電時にゲート電圧Vgeがゼロまで降下されれば、IGBT部14がオフされる。従って、本実施例によれば、ダイオード部16の通電中にIGBT部14がオンされても、その後直ちにIGBT部14がオフされるので、ダイオード部16で生じる損失を低減することができると共に、また、パワースイッチング素子12として高耐圧の素子を用いるのを不要とすることができる。
尚、上記の実施例においては、IGBT部14が特許請求の範囲に記載した「トランジスタ」に、ダイオード部16が特許請求の範囲に記載した「ダイオード」に、ゲートモニタ回路26が特許請求の範囲に記載した「ゲート電圧モニタ手段」、「第1モニタ手段」、及び「第2モニタ手段」に、ミラー効果判定回路28が特許請求の範囲に記載した「ミラー効果有無判別手段」、「第1有無判別手段」、及び「第2有無判別手段」に、オンオフ判定回路32が特許請求の範囲に記載した「通電判定手段」、「第1通電判定手段」、「第2通電判定手段」、「第1印加電圧制御手段」、及び「第2印加電圧制御手段」に、所定時間Aが特許請求の範囲に記載した「第2所定時間」に、所定時間Bが特許請求の範囲に記載した「第1所定時間」に、期間aが特許請求の範囲に記載した「第2期間」に、期間bが特許請求の範囲に記載した「第1期間」に、所定時間間隔T1が特許請求の範囲に記載した「第1所定時間間隔」に、所定時間間隔T2が特許請求の範囲に記載した「第2所定時間間隔」に、それぞれ相当している。
ところで、上記の実施例において、半導体装置10が、IGBT部14と、ダイオード部16と、からなるパワースイッチング素子12を備えるものであるが、図4に示す如く、かかるパワースイッチング素子12を備える半導体装置100が、三相モータなどの電気負荷102とバッテリなどの直流電源Vとの間で電圧変換を行うインバータモジュールであってもよい。
すなわち、半導体装置100は、直流電源Vの正側VHと負側VLとの間に直列接続された、上アーム素子であるパワースイッチング素子12Hと、下アーム素子であるパワースイッチング素子12Lと、を備えている。パワースイッチング素子12Hとパワースイッチング素子12Lとの接続端子には、電気負荷102が接続されている。パワースイッチング素子12H,12Lはそれぞれ、上記した実施例のパワースイッチング素子12と同様の構成を有している。以下、パワースイッチング素子12Hに係る構成については添え字「H」を付し、また、パワースイッチング素子12Lに係る構成については添え字「L」を付す。
パワースイッチング素子12Hは、駆動制御装置20Hによりオン/オフ制御される。また、パワースイッチング素子12Lは、駆動制御装置20Lによりオン/オフ制御される。駆動制御装置20H,20Lのゲート駆動回路24H,24Lは、共通のマイコン22から供給される駆動信号SinH,SinLに従って、IGBT部14のゲートに印加する印加電圧VmH,VmLを生成して出力する。マイコン22は、駆動信号SinH,SinLを、デッドタイムを設けつつ逆位相で交互にオン/オフさせる。
この変形例においては、例えば、パワースイッチング素子12に対するマイコン22からの駆動信号Sinがオフからオンへ切り替わった後に、電気負荷102に流れる電流が反転する場合、すなわち、通電状態が一方のパワースイッチング素子12のダイオード部16が通電する状態から他方のパワースイッチング素子12のダイオード部16が通電する状態へ変化して一方のパワースイッチング素子12のIGBT部14が通電することとなる場合にも、その電流反転前後で適切にIGBT部14が通電しているか或いはダイオード部16が通電しているか否かを判定することができ、パワートランジスタ素子12の通電方向すなわち電気負荷102での電流反転を速やかに判定することができる。
例えば図5に示す如く、ダイオード部16Lの通電中にマイコン22からの駆動信号SinLがオフからオンへ切り替わった場合は、その切り替わり後、IGBT部14Lに対する印加電圧VmLがLo値から上げられた際にゲート電圧VgeLが略一定値に維持される期間がないので、ダイオード部16Lが通電していると判定される。この場合は、そのダイオード部16Lの通電判定後、IGBT部14Lに対する印加電圧VmLがLo値に下げられるので、ゲート電圧VgeLがゼロまで降下されてダイオード部16Lでの損失が低減される。
次に、駆動信号SinLのオン中に電気負荷102に流れる電流が反転して通電状態がダイオード部16Lの通電状態からダイオード部16Hの通電状態へ変化すると、IGBT部14Lのコレクタ電圧Vceが高くなるので、その通電状態変化後、クロック30からのクロック信号に従ってIGBT部14Lに対する印加電圧VmLがLo値から上げられた際にゲート電圧VgeLが略一定値に維持される期間が生じ、IGBT部14Lが通電していると判定される。この場合は、そのIGBT部14Lの通電判定後、IGBT部14Lに対する印加電圧VmLが更にHi値に向けて上げられるので、ゲート電圧VgeLが所望の値まで上げられてIGBT部14Lがオンされる。
尚、ダイオード部16Hの通電中にマイコン22からの駆動信号SinHがオフからオンへ切り替わる場合も、上記と同様の処理が行われれば、駆動信号SinHのオン中に電気負荷102に流れる電流が反転しても、その電流反転前後でダイオード部16Hが通電しているか或いはIGBT部14Hが通電しているかを適切に判定することができる。
また、上記の実施例においては、駆動信号Sinのオン中、IGBT部14が通電していると判定されている限り、所定時間間隔T1で間欠的に、IGBT部14に対する印加電圧Vmが所定のHi値から下げられてそのIGBT部14の通電有無の判定が行われる。
しかし、IGBT部14の通電中にその印加電圧Vmが下げられると、パワースイッチング素子12での損失が増大する。従って、IGBT部14の通電中にパワースイッチング素子12での損失増大を抑制するうえでは、上記の所定時間間隔T1を大きくしてIGBT部14に対する印加電圧Vmを下げる頻度を少なくすることが有効である。一方、上記の所定時間間隔T1が大きくなると、パワースイッチング素子12の通電方向の判定頻度が少なくなるので、電気負荷102での電流反転を速やかに判定することができなくなる問題が生ずる。
そこで、IGBT部14の通電中におけるパワースイッチング素子12での損失増大を抑制しつつかつ電気負荷102での電流反転を速やかに判定すべく、上記の所定時間間隔T1をミラー電圧Vmrに応じて変更することとしてもよい。
ミラー電圧Vmrは、コレクタ電流Icに依存し、コレクタ電流Icが少ないほど低い。コレクタ電流Icが多くミラー電圧Vmrが高ければ、電気負荷102の電流が反転するタイミングは遠い一方、コレクタ電流Icが少なくミラー電圧Vmrが低ければ、電気負荷102の電流が反転するタイミングが近くなる。従って、上記の所定時間間隔T1を、ミラー電圧Vmrが高いほど大きくしかつミラー電圧Vmrが低いほど小さくすることとするのが有効である。
この変形例においては、図6に示す如く、ゲートモニタ回路26が、モニタしたゲート電圧Vgeを、ミラー効果判定回路28に向けて供給すると共に、周期的にクロック信号を出力する周期変更機能付きのクロック200に向けて供給する。クロック200は、ゲートモニタ回路26からのゲート電圧Vgeに基づいて上記の所定時間間隔T1を設定して、その設定した所定時間間隔T1でクロック信号をオンオフ判定回路32へ向けて供給する。
かかる変形例によれば、ミラー電圧Vmrが高いほど上記の所定時間間隔T1が大きくなるので、IGBT部14の通電中におけるパワースイッチング素子12での損失増大を抑制することが可能になると共に、ミラー電圧Vmrが低いほど上記の所定時間間隔T1が小さくなるので、電気負荷102での電流反転を速やかに判定することが可能になる。
例えば図7に示す如く、マイコン22からの駆動信号SinLがオフからオンへ切り替わった後にコレクタ電流Icが徐々に下がっていくと、ミラー電圧Vmrが徐々に低下するので、上記の所定時間間隔T1がT10→T11→T12へ順に小さくなって通電判定の頻度が高くなる。
尚、この変形例においては、クロック200がゲートモニタ回路26からのゲート電圧Vgeの大きさに応じて上記の所定時間間隔T1を変更することが特許請求の範囲に記載した「第1所定時間変更手段」に相当する。