JP6006026B2 - アクリル系熱可塑性樹脂、及びその成形体 - Google Patents
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Description
特にメタクリル系樹脂は、透明性、表面硬度等に優れ、成形加工性も良いことから看板、照明用力バ一、自動車部品、装飾用品などの産業分野に応用されてきた。また、光学特性である複屈折が小さいことから、メタクリル系樹脂は、例えば、光学ディスク、光学フィルム、プラスチック基板などの光学材料向け光学樹脂としても応用されてきた。
さらに最近では、前述の各種光学製品の精密化が進んだ結果、前述の特性に加えて、光学材料として要求される光学的性質の均一性がより高度化してきている。具体的には、液晶の偏光板に用いられる偏光板保護フィルムの場合、全光線透過率が同じであっても複屈折(=位相差)がより小さい光学材料が必要とされる。
例えば、フラットパネルディスプレイの大型化に伴い、ディスプレイ画面を正面からだけでなく、斜め方向から見る機会が増加している。このような場合、表示装置の原理上、見る方向によって表示色変化やコントラストが低下するという問題が生じる。この視野角特性を改良するために、光学フィルム材料が必要であり、光学フィルムの複屈折をほぼゼ口に制御する技術や有意の正もしくは有意の負に制御する技術が必要とされている。
光学樹脂の固有複屈折を制御する周辺技術として、例えば、特許文献1にメタクリル酸メチル単量体及び2種のN−置換マレイミド単量体からなる共重合体と、その光学材料の開示がある。特許文献1の実施例には、メタクリル酸メチル、N−シクロヘキシルマレイミド、及びN−フェニルマレイミドからなる3元共重合体(MMA/CyMI/PheMI=81/11/8wt%)が開示され、該共重合体が、透明性、耐熱性に優れ、且つ、その固有複屈折が極めて小さいことが示されている。
また、特許文献2に記載された熱可塑性樹脂組成物は、複屈折性については着目されておらず、複屈折を制御するために必要な構成成分や制御可能性についても記載されていない。
すなわち、従来技術では、透明性、耐熱性及び柔軟性に優れ、さらにその複屈折性が高度に制御されたアクリル系熱可塑性樹脂、及びそれからなる成形体を提供しうる技術は存在していなかった。
本発明は、透明性に優れ、且つ、耐熱性、柔軟性が良好であって、さらにその複屈折性が高度に制御されたアクリル系熱可塑性樹脂を提供することを目的とする。また、本発明は、それらアクリル系熱可塑性樹脂からなる成形体を提供することを目的とする。
[1]メタクリル系共重合体ブロック(A)とアクリル系共重合体ブロック(B)とをそれぞれ1つ以上含有するブロック共重合体であり、かつ、
メタクリル系共重合体ブロック(A)が、下記式(1)で表されるメタクリレート単量体由来の繰り返し単位(X)と、下記式(2)で表されるN−置換マレイミド単量体(a)由来の繰り返し単位(Y1)と、下記式(3)で表されるN−置換マレイミド単量体(b)由来の繰り返し単位(Y2)とを含有するランダム共重合体であり、
アクリル系共重合体ブロック(B)が、下記式(4)で表されるアクリレート単量体由来の繰り返し単位(Z)を含有するアクリル系熱可塑性樹脂。
[アクリル系熱可塑性樹脂]
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂は、特定の3種類の単量体由来の繰り返し単位を含有するメタクリル系共重合体ブロック(A)と、少なくとも1種類以上のアクリル酸エステル単量体由来の繰り返し単位を含有するアクリル系共重合体ブロック(B)とをそれぞれ1つ以上含有するブロック共重合体である。さらに、メタクリル系共重合体ブロック(A)が、式(1)で表されるメタクリレート単量体由来の繰り返し単位(X)と、式(2)で表されるN−置換マレイミド単量体(a)由来の繰り返し単位(Y1)と、式(3)で表されるN−置換マレイミド単量体(b)由来の繰り返し単位(Y2)を含有するランダム共重合体であり、アクリル系共重合体ブロック(B)が、式(4)で表されるアクリレート単量体由来の繰り返し単位(Z)を含有する。
得られるアクリル系熱可塑性樹脂の透明性が優れる点でメタクリル酸メチルが好ましい。難燃性が付与される点ではメタクリル酸2,4,6−トリブロモフェニルが好ましい。また耐油性が必要とされる用途には、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸3−メトキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルが好ましい。
なお、ここでいう位相差は、アクリル系熱可塑性樹脂を成形して得たフィルムについて測定した値を、100μmのフィルム厚みに換算して求められる値である。
繰り返し単位(Y1)の含有量(Y1wt)は、耐熱性、及び光学特性の観点から0.1〜20質量%である。Y1wtは、好ましくは0.1〜18質量%、より好ましくは0.1〜16質量%、さらに好ましくは1〜16質量%である。
N−置換マレイミド単量体(b)に由来する繰り返し単位(Y2)の含有割合(Y2wt)は、低吸水性、及び透明性などの光学特性の観点から0.1〜49.9質量%である。Y2wtは、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.1〜35質量%、さらに好ましくは1〜30質量%である。
本実施形態のアクリル系熱可塑性樹脂におけるメタクリル系共重合体ブロック(A)由来のTgが120℃以上あれば、近年のレンズ成形体、液晶ディスフレイ用フィルム成形体として必要十分な耐熱性をより容易に得ることができる。使用環境温度下での寸法安定性の観点から、好ましくは125℃以上、より好ましくは130℃以上である。一方、Tgの上限としては、180℃以下であることが好ましい。
これらのアクリル酸、及びアクリル酸エステルは、単独で用いる場合も2種以上を併用して用いる場合もある。
また耐油性が必要とされる用途には、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルが好ましい。
アクリル系共重合体ブロック(B)のアクリル酸エステル単量体由来の繰り返し単位(Z)の含有量(Zwt)は、加工性および柔軟性の点で、好ましくは3〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは30〜50質量%である。
アクリル系共重合体ブロック(B)において、柔軟性および変形時の白濁や透明性低下を抑制できる点で、アクリル系共重合体ブロック(B)のTgは25℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましく、−20℃以下が特に好ましい。
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂のPMMA換算の重量平均分子量(Mw)は、3000〜1000000であることが望ましい。この重量平均分子量が3000以上であれば高分子として必要な強度が発現できる。また1000000以下であればプレス成形による成形体とすることができる。アクリル系熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、成形性および加工性の点から、より好ましくは4000〜800000であり、さらに好ましくは5000〜500000であり、より一層好ましくは100000〜500000である。
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、成形加工に適した樹脂粘度に調整する観点から、1〜4であることが望ましい。
ブロック構造を生じる技法であればどのようなものでも本発明のブロック共重合体を調製するのに適している。これらの技法としてはリビングフリーラジカル重合法、リビングアニオン重合法、擬似リビング重合(例えばイニファーターを用いたもの)および基移動重合法があげられる。リビングフリーラジカル重合法としては特に例をあげると、原子移動重合法および可逆的断片付加鎖移動重合法がある。
上記イニファータを開始剤として用いる方法によれば、例えば式(5)で表される、複数個のジチオカーバメイト基を有する開始剤を用いて以下の2段階の反応により本発明のトリブロック共重合体を合成することができる。
次にブロック(A)の両末端ジチオカーバメイト基を開始点として、式(1)で表されるメタクリレート単量体と、式(2)で表されるN−置換マレイミド単量体(a)と、式(3)で表されるN−置換マレイミド単量体(b)を共重合させることにより所望のアクリル系熱可塑性樹脂を得る。
1段目、2段目の重合反応は、塊状、溶液状、エマルジョン状、懸濁状のいずれの状態で行っても問題はない。
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂を、アクリル系熱可塑性樹脂を構成する重合体以外の種々の添加剤等と混合して、アクリル系熱可塑性樹脂組成物を構成してもよい。添加剤の種類は、樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。
例えば、無機充填剤;酸化鉄等の顔料;ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸E鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤・離型剤;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤;有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウイスカ等の補強剤;着色剤;その他添加剤;あるいはこれらの混合物等が挙げられる。添加剤の含有割合は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜2質量%、さらに好ましくは0〜1質量%である。
フェノール樹脂;メラミン樹脂;シリコーン樹脂;エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などの少なくとも1種以上を含有することができる。
光弾性係数(C)の絶対値は、2.0×10−12Pa−1以下であることがより好ましく、1.0×10−12Pa−1以下であることがさらに好ましい。
光弾性係数に関しては種々の文献に記載があり(例えば化学総説,No.39,1998(学会出版センタ一発行)参照)、次式により定義されるものである。光弾性係数CRの値がゼ口に近いほど、外力による複屈折変化が小さいことが判る。
|Δn|=nx−ny
(式中、CR:光弾性係数、σR:伸張応力、|Δn|:複屈折の絶対値、nx:伸張方向の屈折率、ny:伸張方向と垂直な屈折率)
(i)面内方向の位相差(Re)の絶対値が30nm以下であることが好ましい。(但し、ここで位相差とは、フィルムとして測定した値を100μm厚に換算して求めた値である。)
面内方向の位相差(Re)の絶対値は、20nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることがさらに好ましく、11nm以下であることが特に好ましい。一般に、位相差の絶対値は、複屈折の大小を表す指標である。
本実施形態のアクリル系熱可塑性樹脂は、既存樹脂(例えば、PMMA、PC、トリアセチルセルロース樹脂、環状オレフィン樹脂など)の複屈折に対して十分に小さく、光学材料として低複屈折やゼ口複屈折を要求される用途に好適である。
(ii)厚み方向の位相差(Rth)の絶対値が30nm以下であることが好ましい。
(なお、ここで位相差とは、アクリル系熱可塑性樹脂のフィルムについて測定した値を100μm厚に換算して求めた値である。)
厚み方向の位相差(Rth)の絶対値は、20nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることがさらに好ましく、11nm以下であることが特に好ましい。
本実施形態のアクリル系熱可塑性樹脂は、既存樹脂(例えば、PMMA、PC、トリアセチルセルロース樹脂、環状オレフィン樹脂など)と比較して、光学フィルムとしたときの厚み方向の位相差の絶対値が非常に小さいという特徴を有する。
(なお、全光線透過率は、アクリル系熱可塑性樹脂の100μ厚のフィルムについて測定した厚み方向の値である。)
フィルムの全光線透過率は、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率が85%未満であると、透明性が低下し、高い透明性を要求される用途に使用できないことがある。
本実施形態のアクリル系熱可塑性樹脂を成形してなる光学フィルムは、主として複屈折を必要としない用途、例えば偏光板保護フィルム等に好適である。
アクリル系熱可塑性樹脂は、例えば、シート、フィルム、ストランドやパイプなどの押出成形体、円盤状、立方体状、板状などの射出成形体、及びフレス成形体を形成することができる。
本明細書において、「シート」又は「フィルム」の厚さは1〜10000μmであることが好ましく、1〜5000μmであることがより好ましく、1〜3000μmであることがさらに好ましい。
具体的には、押出成形では、Tダイや円形ダイ等が装着された押出機等を用いて溶融樹脂からシート又はフィルムに成形することができる。この際、各種添加剤や本発明のアクリル系熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂をアクリル系熱可塑性樹脂とともに溶融混錬させた成形体を得ることもできる。溶液キャスト成形では、例えばクロロホルムや二塩化メチレン等の溶媒に樹脂を溶解しポリマ−溶液とした後、キャスト、乾燥固化させてシート又はフィルムに成形することができる。
シート又はフィルムは、少なくとも1軸方向に延伸したものであり、かつ、その延伸倍率が0.1〜300%であることが好ましい。
射出成形体は、従来公知の方法を用い、射出成形温度200〜260℃、金型温度50〜100℃、射出圧力5〜20MPa、保持圧力1〜10MPaの範囲で成形体を得ることができる。
各測定値の測定方法は次のとおりである。
(a)アクリル系熱可塑性樹脂の解析
(1)繰り返し単位
1H−NMR、13C−NMR測定より、(i)メタクリレート単量体由来の繰り返し単位(X)、(ii)N−置換マレイミド単量体(a)由来の繰り返し単位(Y1)、(iii)N−置換マレイミド単量体(b)由来の繰り返し単位(Y2)、及び(iv)アクリレート単量体由来の繰り返し単位(Z)を同定し、その存在量を算出した。
測定機器:ブルーカー株式会社製DPX−400
測定溶媒:CDCl3、又はd6−DMSO
測定温度:40℃
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(パーキンエルマージャパン株式会社製DiamondDSC)を用いて、窒素ガス雰囲気下、α−アルミナをリファレンスとし、JIS K7121に準拠して、得られたDSC曲線から中点法で算出した。DSC曲線は、試料約10mgを40℃で5分間保持した後、20℃/minで200℃まで昇温し、引き続き40℃まで冷却後、40℃で1分間保持し、その後200℃まで昇温速度10℃/minで昇温する条件により得た。
重量平均分子量、及び数平均分子量は、ゲル浸透ク口マトグラフ(東ソー株式会社製HLC−8220)を用いて、溶媒はテトラヒド口フラン、設定温度40℃で、市販標準PMMA換算により求めた。
(4)残存揮発分量の測定
ガスクロマトグラフ(島津製作所製GC−14B)を用いて測定した。
(5)屈折率
屈折率は、PRISM COUPLER(Metricon社製MODEL2010)測定装置を使用し、測定波長633nmで測定した。
(1)光学フィルムサンプルの作製
(1−a)プレスフィルムの成型
真空圧縮成型機(株式会社神藤金属工業所製SFV−30型)を用いて、大気圧下、260℃で25分間予熱後、真空下(約10kPa)、260℃、約10MPaで5分間圧縮してプレスフィルムを成型した。
(1−b)延伸フィルムの成型
インストロン社製5t引張試験機を用いて、延伸温度(Tg+20℃)、延伸速度(500mm/分)で一軸フリー延伸して延伸フィルムを成形した。延伸倍率は、100%で延伸した。
大塚電子株式会社製RETS−100を用い、前述の(1−b)の方法で得られた延伸倍率100%の延伸フィルムをサンプルとして、回転検光子法により測定を行った。複屈折の値は、波長550nm光の値である。複屈折(Δn)は、以下の式により計算した。得られた値をフィルムの厚さ100μmに換算して測定値とした。
Δn=nx−ny
(Δn:複屈折、nx:伸張方向の屈折率、ny:面内で伸張方向と垂直な方向の屈折率)
複屈折(Δn)の絶対値(|Δn|)は、以下のように求めた。
|Δn|=|nx−ny|
<面内の位相差>
大塚電子株式会社製RETS−100を用い、前述の(1−b)の方法で得られた延伸倍率100%の延伸フィルムをサンプルとして、回転検光子法により波長400〜800nmの範囲について測定を行った。得られた値をフィルムの厚さ100μmに換算して測定値とした。複屈折の絶対値(|Δn|)と位相差(Re)は以下の関係にある。
Re=|Δn|×d
(|Δn|:複屈折の絶対値、Re:位相差、d:サンプルの厚み)
また、複屈折の絶対値(|Δn|)は以下に示す値である。
|Δn|=|nx−ny|
(nx:延伸方向の屈折率、ny:面内で延伸方向と垂直な方向の屈折率)
王子計測機器株式会社製位相差測定装置(KOBRA−21ADH)を用いて、前述の(1−b)の方法で得られた延伸倍率100%の延伸フィルムをサンプルとして、波長589nmにおける位相差を測定し、得られた値をフィルムの厚さ100μmに換算して測定値とした。複屈折の絶対値(|Δn|)と位相差(Rth)は以下の関係にある。
Rth=|Δn|×d
(|Δn|:複屈折の絶対値、Rth:位相差、d:サンプルの厚み)
また、複屈折の絶対値(|Δn|)は以下に示す値である。
|Δn|=|(nx+ny)/2−nz|
(nx:延伸方向の屈折率、ny:面内で延伸方向と垂直な方向の屈折率、nz:面外で延伸方向と垂直な厚み方向の屈折率)
(理想となる、3次元方向すべてについて完全光学的等方性であるフィルムでは、面内位相差(Re)、厚み方向位相差(Rth)ともに0となる。)
Polymer Engineering and Science 1999, 39, 2349−2357に詳細について記載のある複屈折測定装置を用いた。具体的には、レーザー光の経路にフィルムの引張り装置(井元製作所製)を配置し、230℃で伸張応力をかけながらその複屈折を、大塚電子株式会社製RETS−100を用いて回転検光子法により波長400〜800nmの範囲について測定した。サンプルは、前述の(1−b)の方法で得られた延伸倍率100%の延伸フィルムを用いた。
CR=|Δn|/σR
|Δn|=|nx−ny|
(CR:光弾性係数、σR:伸張応力、|Δn|:複屈折の絶対値、nx:伸張方向の屈折率、ny:伸張方向に垂直な方向の屈折率)
前述の(1−a)の方法で得られたプレスフィルムをサンプルとして、インストロン社製引張試験機を用いて引張試験を行い、プレスフィルムが破断した際の応力を測定した。プレスフィルムの試験機への固定は、その両端各々2cmをチャックに挟み込んで行い、プレスフィルムに弛みが生じないようにチャック間を調節した後、引張した。測定された試料破断時の荷重(N)は、延伸成形体の断面積で除し、破断時の引張強度(MPa)に換算した。測定は下記の条件で行い、試料数10にて、それぞれについてその測定をして、平均値をとった。
試料サイズ: 幅20mm×チャック間50mm
引張り速度: 50mm/分
測定環境: 温度23℃、湿度50%RH
シュレンク管に下記の構造式で表されるパラキシリレンビスN,Nジエチルジチオカーバメイト(東京化成工業株式会社製、以下XDCと略称する。)0.29g、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業株式会社製、以下AIBNと略称する。)0.06g、トルエン(和光純薬工業株式会社製)250g、アクリル酸エチル(和光純薬工業株式会社製、以下EtAと略称する。)50gを仕込み、窒素雰囲気下70℃で8時間撹拌を行った。
重合終了後、得られたポリマー溶液を貧溶媒であるメタノール(和光純薬工業株式会社製)に混合してポリマーを析出させ、遠心分離により20gのアクリル系共重合体ブロック(B)を回収した。
得られた精製ポリマーの物性を表1に示す。
得られた精製ポリマーは、Tgの結果から、MMA、CyMI、PhMIのメタクリル系共重合体ブロックAとアクリル系共重合体ブロックBからなるABA型ブロック共重合体であることがわかった。
実施例1において、XDC1.16g、AIBN0.24g、トルエン250g、EtA50gを用いた以外は実施例1と同様の操作によりアクリル系共重合体ブロック(B)を合成した。その後、アクリル系共重合体ブロック(B)20g、トルエン250g、AIBN0.08g、MMA94g、PhMI11.4g、CyMI15.4gを用いた以外は実施例1と同様の操作により精製ポリマーを得た。
得られた精製ポリマーの物性を表1に示す。
得られた精製ポリマーは、Tgの結果から、MMA、CyMI、PhMIのメタクリル系共重合体ブロックAとアクリル系共重合体ブロックBからなるABA型ブロック共重合体であることがわかった。
実施例1において、XDC5.22g、AIBN1.1g、トルエン500g、EtA50gを用いた以外は実施例1と同様の操作によりアクリル系共重合体ブロック(B)を合成した。その後、アクリル系共重合体ブロック(B)45g、トルエン250g、AIBN0.18g、MMA70g、PhMI11.4g、CyMI15.4gを用いた以外は実施例1と同様の操作により精製ポリマーを得た。
得られた精製ポリマーの物性を表1に示す。
得られた精製ポリマーは、Tgの結果から、MMA、CyMI、PhMIのメタクリル系共重合体ブロックAとアクリル系共重合体ブロックBからなるABA型ブロック共重合体であることがわかった。
実施例1において、XDC11.3g、AIBN2.3g、トルエン500g、EtA150gを用いた以外は実施例1と同様の操作によりアクリル系共重合体ブロック(B)を合成した。その後、アクリル系共重合体ブロック(B)65g、トルエン750g、AIBN0.26g、MMA48g、PhMI11.4g、CyMI15.4gを用いた以外は実施例1と同様の操作により精製ポリマーを得た。
得られた精製ポリマーの物性を表1に示す。
得られた精製ポリマーは、Tgの結果から、MMA、CyMI、PhMIのメタクリル系共重合体ブロックAとアクリル系共重合体ブロックBからなるABA型ブロック共重合体であることがわかった。
500mLセパラブルフラスコに、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド(製)90.0mg(600ppm)、メタキシレン150g、EtA6.0g、MMA114g、PhMI12.8g、CyMI17.3gを混合し窒素雰囲気下で十分撹拌しながら80℃で4時間加熱を行った。
重合終了後、反応溶液を多量のメタノールを用いて再沈精製し、真空乾燥することにより、MMA、PhMI、CyMI、EtAからなるランダム共重合体である精製ポリマーを得た。
得られた精製ポリマーの物性を表2に示す。
比較例1において、EtAを15g、MMAを105gとして、それ以外は同様の操作を行い、精製ポリマーを得た。
得られた精製ポリマーの物性を表2に示す。
比較例1において、EtAを45g、MMAを75gとして、それ以外は同様の操作を行い、精製ポリマーを得た。
得られた精製ポリマーの物性を表2に示す。
比較例1において、EtAを68g、MMAを52gとして、それ以外は同様の操作を行い、精製ポリマーを得た。
得られた精製ポリマーの物性を表2に示す。
特許文献1を参考に以下の方法で光弾性率および複屈折がゼロに近いポリマーを合成した。
500mLセパラブルフラスコに、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド(日本油脂製)90.0mg(600ppm)、メタキシレン150g、MMA120g、PhMI12.8g、CyMI17.3gを混合し窒素雰囲気下で十分撹拌しながら80℃で4時間加熱を行った。
重合終了後、反応溶液を多量のメタノールを用いて再沈精製し、真空乾燥することにより、39%の収率で精製ポリマーが得られた。
得られた精製ポリマーの物性を表2に示す。
実施例1〜4で得られたアクリル系熱可塑性樹脂および比較例1〜5で得られた共重合体に加え、参考例1としてPMMA(「デルペット(登録商標)80N」(旭化成ケミカルズ株式会社製))を用いて、前述(1−a)の方法に従いプレスフィルムを成形した。該プレスフィルムから前述(1−b)の方法に従い100%延伸フィルムを成形し、その光学特性を評価した。測定結果を表3、表4に示す。
また、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂成形体(実施例5〜8)はトリブロック共重合体とすることで、比較例6〜10のようなランダム共重合体に比べてより柔軟性に優れることが分かった。
以上、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂からなる光学フィルムは、高いTgと高い光学的等方性(極めて小さい複屈折値、極めて小さい光弾性係数)に加え、柔軟性に優れることが分かった。
その他にも、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、レンズ、レンズアレイ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバーなどにも用いることができる。
Claims (20)
- メタクリル系共重合体ブロック(A)とアクリル系共重合体ブロック(B)とをそれぞれ1つ以上含有するブロック共重合体であり、かつ、
メタクリル系共重合体ブロック(A)が、下記式(1)で表されるメタクリレート単量体由来の繰り返し単位(X)と、下記式(2)で表されるN−置換マレイミド単量体(a)由来の繰り返し単位(Y1)と、下記式(3)で表されるN−置換マレイミド単量体(b)由来の繰り返し単位(Y2)とを含有するランダム共重合体であり、
アクリル系共重合体ブロック(B)が、下記式(4)で表されるアクリレート単量体由来の繰り返し単位(Z)を含有するアクリル系熱可塑性樹脂。
- 前記ブロック共重合体が、A−B−A型トリブロック共重合体、B−A−B型トリブロック共重合体、および(A−B)n型マルチブロック共重合体からなる群から選択される構造を備える、請求項1に記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
- 式(1)で表されるメタクリレート単量体由来の繰り返し単位(X)および式(4)で表されるアクリレート単量体由来の繰り返し単位(Z)の合計が、50〜95質量%、
式(2)で表されるN−置換マレイミド単量体(a)由来の繰り返し単位(Y1)0.1〜20質量%、
式(3)で表されるN−置換マレイミド単量体(b)由来の繰り返し単位(Y2)0.1〜49.9質量%からなるアクリル系熱可塑性樹脂であって、
(Y2)に対する(Y1)のモル比(Y1/Y2)が、0より大きく15以下である、請求項1または2に記載のアクリル系熱可塑性樹脂。 - 式(1)で表されるメタクリレート単量体由来の繰り返し単位(X)がメタクリル酸メチル又はメタクリル酸ベンジル由来の繰り返し単位であり、
N−置換マレイミド単量体(a)由来の繰り返し単位(Y1)がN−フェニルマレイミド由来の繰り返し単位であり、
N−置換マレイミド単量体(b)由来の繰り返し単位(Y2)がN−シクロヘキシルマレイミド由来の繰り返し単位である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂。 - 質量平均分子量で3000〜1000000、分子量分布で1〜4の範囲にある、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
- 光弾性係数(C)の絶対値が、3.0×10-12Pa-1以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
- 面内方向の位相差(Re)の絶対値が30nm以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
- 厚み方向の位相差(Rth)の絶対値が30nm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
- 前記メタクリル系共重合体ブロック(A)に由来するTgが130℃以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
- 全光線透過率が85%以上である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
- 下記式(5)で表される、2個のジチオカーバメイト基を有する開始剤を用いて以下の2段階の工程により合成する請求項1に記載のアクリル系熱可塑性樹脂の製造方法。
[工程1] 式(5)で表されるジチオカーバメイト化合物を用いて式(4)で表されるアクリレート単量体を重合させ、両末端がジチオカーバメイト基となるアクリル系重合体ブロック(A)を得る工程
[工程2] アクリル系重合体ブロック(A)の両末端ジチオカーバメイト基を開始点として、式(1)で表されるメタクリレート単量体と、式(2)で表されるN−置換マレイミド単量体(a)と、式(3)で表されるN−置換マレイミド単量体(b)を共重合させる工程 - 請求項1〜10のいずれか一項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂からなる成形体。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂からなるシート又はフィルム。
- 押し出し成形で成形されたシート又はフィルムであって、少なくとも1軸方向に延伸したものであり、かつ、その延伸倍率が0.1〜300%である、請求項13に記載のシート又はフィルム。
- 溶液キャスト成形で成形されたシート又はフィルムであって、少なくとも1軸方向に延伸したものであり、かつ、その延伸倍率が0.1〜300%である、請求項13に記載のシート又はフィルム。
- 請求項13〜15のいずれか一項に記載のシート又はフィルムからなる偏光板保護フィルム。
- 請求項13〜15のいずれか一項に記載のシート又はフィルムからなる位相差フィルム。
- 請求項13〜15のいずれか一項に記載のシート又はフィルムからなる位相差板。
- 請求項13〜15のいずれか一項に記載のシート又はフィルムからなる透明プラスチック基板。
- 請求項12に記載の成形体からなるレンズ。
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