JP5919611B2 - 低い光弾性係数を有する位相差板 - Google Patents

低い光弾性係数を有する位相差板 Download PDF

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Description

本発明は、低い光弾性係数を有する位相差板に関する。
透明な光学材料として、メタクリル酸メチルの単独重合体(PMMA)に代表されるメタクリル系樹脂、ポリスチレン(PS)、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体(MS)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイや、赤外線センサー、光導波路等の進歩に伴い、用いられる光学材料には、透明性に優れるだけでなく、高い耐熱性を有し、且つ、必要とされる複屈折性を発現すること及び光学材料内で複屈折分布が生じないことが求められている。
例えば、液晶の偏光板に用いられる偏光板保護フィルムの場合は、全光線透過率が同じであっても複屈折(=位相差)がより小さい光学材料が必要であり、一方、偏光板により偏光された直線偏光を円偏光にかえる機能を持つ1/4波長板の場合には、意識的に必要な大きさの複屈折(=位相差)を発現できる光学材料が必要である。
また、フラットパネルディスプレイの大型化に伴い、必要とされる光学材料からなる成形体も大型化していることから、外力の偏りによって複屈折分布が生じてコントラストが低下する傾向にある。複屈折分布を小さくするには、外力による複屈折の変化が小さい、すなわち、光弾性係数の絶対値が小さい光学材料が必要である(非特許文献1、2)。
光学材料の複屈折を制御する周辺技術が、例えば、特許文献1〜3に開示されている。
特許文献1には、メタクリル酸メチル単量体単位70〜85重量%と1種もしくは2種以上のN−置換マレイミド単量体単位15〜30重量%とからなり、室温における固有複屈折が−0.002〜+0.002である共重合体よりなる光学素子が開示されている。しかし、該共重合体は十分な位相差を発現することができ難い傾向にある。
一方、非特許文献3に、光学的均一性としての成形体の複屈折性は、単に用いている樹脂の固有複屈折の大小のみではなく、射出成形や押出成形等の成形加工の結果、発現している複屈折性が含まれることが記載されている。具体的には、レンズや光学ディスク等を射出成形で得た場合、固有複屈折が反映される(配向)複屈折は、1)固有複屈折を極小化する、2)加工条件を選択することによって小さくすることはできるが、ゲート近傍部分には応力歪みによる(光弾性)複屈折が残存しているので総じて成形体内には複屈折分布(=光学的不均一性)がある、との記載がある。すなわち、光学的均一性を高めるには、光弾性係数を極小化する方法を別途開発する必要がある。
特許文献2には、メタクリル酸メチル単位89〜40重量%、芳香族ビニル化合物単位10〜30重量%、マレイミド及び/又はN−置換マレイミド単位1〜50重量%からなる共重合体樹脂からなることを特徴とする位相差板が開示されている。しかしながら、該位相差板は、光弾性係数が依然大きい傾向にある。
特許文献3には、(メタ)アクリル酸エステル単位45〜85質量%、芳香族ビニル化合物単位10〜40質量%、芳香族マレイミド単位5〜20質量%からなり、芳香族ビニル化合物単位含量>芳香族マレイミド単位含量である共重合体を延伸してなる光学用延伸フィルムが開示されている。該延伸フィルムは、大きな負の位相差を発現し、耐熱分解特性に優れるものの、光弾性係数が大きく、耐光性も十分ではない。
一方、光学材料の光弾性係数を制御する周辺技術として、特許文献4に、光弾性係数の符号が正のモノマーと負のモノマーを組み合わせることによって光弾性係数をゼロに調節する光学用素子材料が開示されている。しかし、該光学用素子材料は、十分な位相差を発現することができ難く、耐熱性が十分ではない。
また、特許文献5に、メタクリル酸エステル単位98〜50重量%、アリールマレイミド単位1〜20重量%、アルキルマレイミド単位1〜30重量%及びその他の単量体単位0〜15重量%からなる共重合体とゴム変性熱可塑性樹脂とからなる組成物が開示されている。しかし、該組成物から形成される成形体は、光弾性係数が大きい傾向にある。
低い光弾性係数を有する位相差フィルムとして、例えば、特許文献6には、メタクリル酸メチル、スチレン、無水マレイン酸、及びメタクリル酸ベンジルからなる4元共重合体(MMA/St/MAH/BzMA=50/20/29/1wt%)を用いてなる位相差フィルムが開示されている。しかし、該4元共重合体は、耐光性と、位相差の絶対値の長期安定性が十分ではない傾向にある。
特開平06−242301号公報 特許第2886893号公報 特開2011−38053号公報 特開平04−76013号公報 特許第4424636号公報 国際公開第2010/013557号
化学総説、1988年、No.39(学会出版センター) 月刊ディスプレイ、2005年、4月号 成形加工、2009年、第21巻、第7号、426頁
以上のように、従来の光学材料を用いて、低光弾性係数と必要な位相差を両立し、かつ、耐熱性及び耐光性を有する位相差板を提供することは困難である。
そこで本発明は、低い光弾性係数を有し、更に優れた耐熱性及び耐光性を有する位相差板、並びにこれを備える偏光板及び画像表示装置を提供することを目的とする。
本発明は、特定の熱可塑性樹脂からなるフィルム及びシートが、低い光弾性係数と位相差を有し、かつ、優れた耐熱性及び耐光性を有していることから位相差板として好適であることを見出しなされたものである。
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1]下記式(1)で表される第一の構造単位、下記式(2)で表される第二の構造単位及び下記式(3)で表される第三の構造単位を有する熱可塑性樹脂から形成され、熱可塑性樹脂が、その総量基準で、50〜90質量%の第一の構造単位と、0.1〜15質量%の第二の構造単位と、0.1〜49.9質量%の第三の構造単位とを有し、熱可塑性樹脂の光弾性係数の絶対値が2.5×10−12Pa−1以下である、位相差板。
Figure 0005919611

[式中、Rは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜14のアリールアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は、下記A群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数6〜14のアリール基、を示す。
A群:ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基及び炭素数1〜12のアルキル基。]
Figure 0005919611

[式中、Rは、炭素数7〜14のアリールアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は、下記B群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数6〜14のアリール基、を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を示す。
B群:ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数7〜14のアリールアルキル基。]
Figure 0005919611

[式中、Rは、水素原子、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、又は、下記C群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数1〜12のアルキル基、を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を示す。
C群:ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基及び炭素数1〜12のアルコキシ基。]
[2]熱可塑性樹脂は、フィルム成形した場合の面内方向の位相差(Re)の絶対値が、100μm厚み換算で30nmを超え、300nm以下である[1]に記載の位相差板。
[3]熱可塑性樹脂のガラス転移温度が120℃以上である、[1]又は[2]に記載の位相差板。
[4]熱可塑性樹脂は、フィルム成形した場合の全光線透過率が85%以上である、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の位相差板。
[5]熱可塑性樹脂を押出成形したシート又はフィルムを、少なくとも1軸方向に延伸し、その延伸倍率が0.1〜300%である、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の位相差板。
[6]熱可塑性樹脂を溶液キャスト成形したシート又はフィルムを、少なくとも1軸方向に延伸し、その延伸倍率が0.1〜300%である、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の位相差板。
[7]Rが、メチル基又はベンジル基であり、Rが、フェニル基又はB群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有するフェニル基であり、Rが、シクロヘキシル基である、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の位相差板。
[8][1]〜[7]のいずれか1つに記載の位相差板を備える、偏光板。
[9][1]〜[7]のいずれか1つに記載の位相差板を備える、画像表示装置。
本発明によれば、低い光弾性係数を有し、更に優れた耐熱性及び耐光性を有する位相差板を提供することができる。本発明の位相差板を備える偏光板は、例えば、画像表示装置に好適に用いることができる。また、本発明の位相差板を備える画像表示装置は、斜めから見たときの色調変化が抑えられる等の画像表示特性に優れる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[熱可塑性樹脂]
本実施形態の位相差板は、第一の構造単位、第二の構造単位及び第三の構造単位を有する熱可塑性樹脂から形成される。以下、熱可塑性樹脂を構成する各構造単位について説明する。
(第一の構造単位)
第一の構造単位は、下記式(1)で表される構造単位である。
Figure 0005919611

式中、Rは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜14のアリールアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は、下記A群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数6〜14のアリール基、を示す。ここで、A群は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群である。
なお、本明細書中、アルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、アリールアルキル基中のアルキル基及びアルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
における炭素数1〜12のアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。また、Rにおける炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デカニル基、ラウリル基等が挙げられ、これらのうち、熱可塑性樹脂の透明性及び耐候性が一層向上する点において、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基が好適であり、メチル基がより好適である。
また、Rにおける炭素数5〜12のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、トリシクロデシル基、ビシクロオクチル基、トリシクロドデシル基、イソボルニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられ、これらのうち、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、トリシクロデシル基、ビシクロオクチル基、トリシクロドデシル基、イソボルニル基が好適である。
また、Rにおける炭素数7〜14のアリールアルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、6−フェニルヘキシル基、8−フェニルオクチル基が挙げられ、これらのうち、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基が好適である。
また、Rにおける炭素数6〜14のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、これらのうち、フェニル基が好適である。
また、Rは置換基を有する炭素数6〜14のアリール基であってもよく、ここで置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群(A群)より選ばれる基である。
において、置換基を有する炭素数6〜14のアリール基としては、置換基を有するフェニル基が好ましい。また、置換基を有する炭素数6〜14のアリール基としては、2,4,6−トリブロモフェニル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−ニトロフェニル基、4−ニトロフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基等が挙げられ、これらのうち難燃性が付与される点において、2,4,6−トリブロモフェニル基が好適である。
第一の構造単位の含有量は、メタクリル樹脂の優れた透明性、耐光性を保持するために他の構造単位より優位量含まれることが必要であることから熱可塑性樹脂の総量基準で50〜90質量%、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは70〜90質量%である。第一の構造単位の含有量がこの範囲内にあるとき、得られる熱可塑性樹脂は、透明性、耐光性に優れ、また、好ましい耐熱性改良効果が得られやすい。
後述する光学特性(面内の位相差(Re))に関していえば、本実施形態に係る熱可塑性樹脂が負の位相差を有するためには、第一の構造単位の含有割合(Xwt)が熱可塑性樹脂の総量基準で80〜90質量%であることが好ましい。一方、本実施形態に係る熱可塑性樹脂が正の位相差を有するためには、第一の構造単位の含有割合(Xwt)が熱可塑性樹脂の総量基準で50〜80質量%であることが好ましい。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂の面内の位相差(Re)の絶対値が、30nm超を発現するには、第一の構造単位の含有割合(Xwt)が熱可塑性樹脂の総量基準で65質量%未満であることが好ましく、より好ましくは60質量%未満である。但し、ここでいう位相差は、熱可塑性樹脂を成形して得たフィルムについて測定した値を、100μmのフィルム厚みに換算して求められる値である。
芳香族基を有するメタクリル酸エステル単量体、例えば、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル等をメタクリル酸メチル単量体と併用する場合には、その含有量は、耐熱性、及び複屈折等の光学的特性の観点から熱可塑性樹脂の総量基準で0.1〜10質量%が好ましい。より好ましくは0.1〜8質量%、更に好ましくは0.1〜6質量%である。この範囲内にあるとき、得られる熱可塑性樹脂は、大きな耐熱性低下を伴わずに、複屈折等の光学特性の改良効果が得られる。
樹脂は、第一の構造単位を一種のみ含有していてもよく、第一の構造単位を二種以上含有していてもよい。
例えば、熱可塑性樹脂は、Rがアルキル基である構造単位と、Rがアリールアルキル基又はアリール基である構造単位と、を有するものとすることができる。このとき後者の構造単位の含有量は、熱可塑性樹脂の総量基準で0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.1〜6質量%であることが更に好ましい。この範囲にある熱可塑性樹脂によれば、大きな耐熱性低下を伴わずに、複屈折等の光学特性の改良効果が得られる。
第一の構造単位は、例えば、メタクリル酸単量体及びメタクリル酸エステル類から選ばれる第一の単量体から形成される。第一の単量体は、下記式(1−a)で表すことができる。
Figure 0005919611

式中、Rは式(1)におけるRと同義である。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル;メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロオクチル、メタクリル酸トリシクロデシル、メタクリル酸微シクロオクチル、メタクリル酸トリシクロドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸1−フェニルエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸3−フェニルプロピル、メタクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル等が挙げられる。これらの第一の単量体は、単独で用いる場合も2種以上を併用する場合もある。メタクリル酸エステルのうち、得られる熱可塑性樹脂の透明性や耐候性が優れる点でメタクリル酸メチルが好ましい。難燃性が付与される点でメタクリル酸2,4,6−トリブロモフェニルが好ましい。
(第二の構造単位)
第二の構造単位は、下記式(2)で表される構造単位である。
Figure 0005919611

式中、Rは、炭素数7〜14のアリールアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は、下記B群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数6〜14のアリール基、を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を示す。B群は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数7〜14のアリールアルキル基からなる群である。
における炭素数7〜14のアリールアルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、6−フェニルヘキシル基、8−フェニルオクチル基が挙げられ、これらのうち、耐熱性及び低複屈折性等の光学的特性が一層向上する点において、ベンジル基が好適である。
また、Rにおける炭素数6〜14のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、これらのうち、耐熱性及び低複屈折性等の光学的特性が一層向上する点において、フェニル基が好適である。
また、Rは置換基を有する炭素数6〜14のアリール基であってもよく、ここで置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数7〜14のアリールアルキル基からなる群(B群)より選ばれる基である。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
置換基としての炭素数1〜12のアルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜8のアルコキシ基がより好ましい。また、置換基としての炭素数1〜12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、1−デシルオキシ基、1−ドデシルオキシ基等が挙げられる。
置換基としての炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数7〜14のアリールアルキル基としては、Rにおける炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数7〜14のアリールアルキル基として例示された基が同様に例示される。
において、置換基を有する炭素数6〜14のアリール基としては、置換基を有するフェニル基、置換基を有するナフチル基が好ましい。また、置換基を有する炭素数6〜14のアリール基としては、2,4,6−トリブロモフェニル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−ニトロフェニル基、4−ニトロフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基等が挙げられ、これらのうち、難燃性が付与される点において、2,4,6−トリブロモフェニル基が好適である。
及びRにおける炭素数1〜12のアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。また、R及びRにおける炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デカニル基、ラウリル基等が挙げられ、これらのうち、熱可塑性樹脂の透明性及び耐候性が一層向上する点において、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基が好適であり、メチル基がより好適である。
及びRにおける炭素数6〜14のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、これらのうち、耐熱性及び低複屈折性等の光学的特性が一層向上する点において、フェニル基が好適である。
及びRは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
第二の構造単位の含有量としては、耐熱性、及び光学特性の観点から、熱可塑性樹脂の総量基準で0.1〜15質量%であり、好ましくは0.1〜13質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは1〜10質量%である。
熱可塑性樹脂は、第二の構造単位を一種のみ含有していてもよく、第二の構造単位を二種以上含有していてもよい。
第二の構造単位は、例えば、下記式(2−a)で表されるN−置換マレイミド化合物から選ばれる第二の単量体から形成される。
Figure 0005919611
式中、R、R及びRは、それぞれ式(2)におけるR、R及びRと同義である。
第二の単量体としては、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−ブロモフェニル)マレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(2−ニトロフェニル)マレイミド、N−(2、4、6−トリメチルフェニル)マレイミド、N−(4−ベンジルフェニル)マレイミド、N−(2、4、6−トリブロモフェニル)マレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−アントラセニルマレイミド、3−メチル−1−フェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、3,4−ジメチル−1−フェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1,3−ジフェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1,3,4−トリフェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン等が挙げられる。これらの第二の単量体は、単独で用いる場合も2種以上を併用する場合もある。これらの第二の単量体のうち、熱可塑性樹脂の耐熱性、及び複屈折等の光学的特性が優れることからが優れる点で、N−フェニルマレイミド及びN−ベンジルマレイミドが好ましい。さらに、難燃性が付与できることから、N−(2,4,6−トリブロモフェニル)マレイミドが好ましい。
(第三の構造単位)
第三の構造単位は、下記式(3)で表される構造単位である。
Figure 0005919611

式中、Rは、水素原子、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、又は、下記C群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数1〜12のアルキル基、を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を示す。C群は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基及び炭素数1〜12のアルコキシ基からなる群である。
における炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、トリシクロデシル基、ビシクロオクチル基、トリシクロドデシル基、イソボルニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられ、これらのうち、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基が好適であり、熱可塑性樹脂の耐候性及び透明性等の光学特性が一層向上するとともに、熱可塑性樹脂に低吸水性を付与できる点からは、シクロヘキシル基がより好適である。
また、Rにおける炭素数1〜12のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましい。また、Rにおける炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基、2−エチルヘキシル基、1−デシル基、1−ドデシル基等が挙げられ、これらのうち、熱可塑性樹脂の耐候性及び透明性等の光学特性が一層向上することから、メチル基、エチル基、イソプロピル基が好適である。
また、Rは置換基を有する炭素数1〜12のアルキル基であってもよく、ここで置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基及び炭素数1〜12のアルコキシ基からなる群(C群)より選ばれる基である。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
置換基としての炭素数1〜12のアルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜8のアルコキシ基がより好ましい。また、置換基としての炭素数1〜12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、1−デシルオキシ基、1−ドデシルオキシ基等が挙げられる。
において、置換基を有する炭素数1〜12のアルキル基としては、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロエチル基、ヒドロキシエチル基等が挙げられ、これらのうち、トリフルオロエチル基が好適である。
及びRにおける炭素数1〜12のアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。また、R及びRにおける炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デカニル基、ラウリル基等が挙げられ、これらのうち、熱可塑性樹脂の透明性及び耐候性が一層向上する点において、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基が好適であり、メチル基がより好適である。
及びRにおける炭素数6〜14のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、これらのうち、耐熱性及び低複屈折性等の光学的特性が一層向上する点において、フェニル基が好適である。
及びRは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
第三の構造単位の含有量としては、耐光性、及び透明性等の光学特性の観点から、熱可塑性樹脂の総量基準で0.1〜49.9質量%であり、好ましくは0.1〜47質量%、更に好ましくは2.5〜47質量%である。
熱可塑性樹脂は、第三の構造単位を一種のみ含有していてもよく、第三の構造単位を二種以上含有していてもよい。
第三の構造単位は、例えば、下記式(3−a)で表されるN−置換マレイミド化合物から選ばれる第三の単量体から形成される。
Figure 0005919611
式中、R、R及びRは、それぞれ式(3)におけるR、R及びRと同義である。
第三の単量体としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−s−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−ヘプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド、1−シクロヘキシル−3−メチル−1−フェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−シクロヘキシル−3,4−ジメチル−1−フェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−シクロヘキシル−3−フェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−シクロヘキシル−3,4−ジフェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン等が挙げられる。これらの第三の単量体は、単独で用いる場合も2種以上を併用して用いる場合もある。得られる熱可塑性樹脂が耐光性に優れ、かつ低複屈折性等の光学特性に優れることから、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドが好ましい。低吸水性も付与できることからN−シクロヘキシルマレイミドが特に好ましい。
熱可塑性樹脂において、第二の構造単位及び第三の構造単位の総含有量は、熱可塑性樹脂の総量基準で10〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは10〜45質量%、更に好ましくは10〜40質量%である。この範囲内にあるとき、得られる熱可塑性樹脂は、十分な耐熱性と耐光性が得られ、更に光学特性の制御について好ましい改良効果が得られる。なお、第二の構造単位の含有量及び第三の構造単位の含有量が50質量%を超えると、重合反応時に単量体成分の反応性が低下して、未反応で残存する単量体量が多くなり、熱可塑性樹脂の物性が低下してしまう場合がある。
熱可塑性樹脂において、第一の構造単位、第二の構造単位及び第三の構造単位の合計の含有量は、熱可塑性樹脂の総量基準で、80質量%以上であってもよい。これにより、熱可塑性樹脂は一層良好な光学特性を発現する。
本発明に係る熱可塑性樹脂は、上述のように、必須成分として第二の構造単位と第三の構造単位とを含有する。その効果として、耐熱性、耐光性が良好な透明性に優れる熱可塑性樹脂が得られることがあるが、その本質的な効果は後述する光学特性(複屈折、及び光弾性係数)を有意の値(正/負/ゼロ)に高度に制御することが可能となることである。即ち、第二の構造単位及び第三の構造単位のいずれか一方のみしか含まない熱可塑性樹脂では耐熱性、耐光性が不十分なものしか得られないばかりか、光学特性の制御も不十分となり本発明に係る範囲から外れる。
(第四の構造単位)
熱可塑性樹脂は、上記以外の構造単位を更に含有していてもよい。例えば、熱可塑性樹脂は、発明の目的を損なわない範囲で、上記第一、第二及び第三の単量体と共重合可能なその他の単量体に由来する構造単位を、更に有していてもよい。以下、熱可塑性樹脂中の第一、第二及び第三の構造単位以外の構造単位を、第四の構造単位と称する。
共重合可能なその他の単量体としては、芳香族ビニル;不飽和ニトリル;シクロヘキシル基、ベンジル基又は炭素数1〜18のアルキル基を有するアクリル酸エステル;オレフィン;ジエン;ビニルエーテル;ビニルエステル;フッ化ビニル;プロピオン酸アリル等の飽和脂肪酸モノカルボン酸のアリルエステル又はメタリルエステル;多価(メタ)アクリレート;多価アリレート;グリシジル化合物;不飽和カルボン酸類等を挙げることができる。その他の単量体は、これらの群より選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり得る。
上記芳香族ビニルとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。上記不飽和ニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル等が挙げられる。また、上記アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
また、上記オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ジイソブチレン等が挙げられる。また、上記ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、上記ビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等が挙げられる。また、上記ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。また、上記フッ化ビニルとしては、フッ化ビニリデン等が挙げられる。
上記多価(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ハロゲン化ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のジ、又はトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多価アリレート単量体としては、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。グリシジル化合物単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、及びアリルグリシジルエーテル等が挙げられる。不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの半エステル化物又は無水物が挙げられる。
熱可塑性樹脂が式(4)で表される構造単位を含有する場合のその含有割合は、熱可塑性樹脂の総量基準で、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。耐光性の観点からは、式(4)で表される構造単位の含有割合は、10質量%未満であることが好ましく、7質量%未満であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂中の第四の構造単位の含有量は、熱可塑性樹脂の総量基準で、0〜15質量%であることが好ましく、0〜13質量%であることがより好ましく、0〜10質量%であることが更に好ましい。含有量が15質量%より多い量では得られる熱可塑性樹脂の耐熱性が低下したり、耐光性が不十分になったり、光弾性係数が大きくなる等本発明の好ましい範囲を外れる。
熱可塑性樹脂は、第四の構造単位を一種のみ有していてもよく、二種以上を有していてもよい。
第四の構造単位の一例として、下記式(4)で表される構造単位が挙げられる。
Figure 0005919611
式中、R及びRは、同一でも、異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルコキシ基、及び直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基からなる群から選ばれるいずれかである。aは1〜3の整数を示す。
における炭素数1〜12のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましい。また、Rにおける炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、1−デシル基、1−ドデシル基等が挙げられ、これらのうちメチル基が好適である。
におけるハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
また、Rにおける炭素数1〜12のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましい。また、Rにおける炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、1−デシル基、1−ドデシル基等が挙げられ、これらのうち、熱可塑性樹脂の透明性及び耐候性が一層向上する点において、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基が好適であり、メチル基がより好適である。
また、Rにおける炭素数1〜12のアルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜8のアルコキシ基がより好ましい。また、置換基としての炭素数1〜12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、1−デシルオキシ基、1−ドデシルオキシ基等が挙げられ、これらのうち、メトキシ基が好適である。
式(4)で表される構造単位は、例えば、下記式(4−a)で表される単量体から形成することができる。
Figure 0005919611

式中、R、R及びaはそれぞれ式(4)におけるR、R及びaと同義である。
第四の単量体としては、例えば、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2−メチル−4−クロロスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α―メチルスチレン、cis−β−メチルスチレン、trans−β−メチルスチレン、4−メチル−α−メチルスチレン、4−フルオロ−α−メチルスチレン、4−クロロ−α−メチルスチレン、4−ブロモ−α−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2−フルオロスチレン、3−フルオロスチレン、4−フルオロスチレン、2,4−ジフルオロスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2−ブロモスチレン、3−ブロモスチレン、4−ブロモスチレン、2,4−ジブロモスチレン、α−ブロモスチレン、β−ブロモスチレン、2−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン等が挙げられ、これらの単量体は、単独で用いる場合も2種以上を併用してもよい。これらの単量体のうち、第一の単量体、第二の単量体及び第三の単量体との共重合が容易なことから、スチレン、及びα−メチルスチレンが好ましい。第四の構造単位を含有するときは、熱可塑性樹脂の吸湿性が更に改善される。
熱可塑性樹脂が、第四の構造単位としてスチレンを含有する場合、第一の構造単位の含有割合は68〜90質量%であることが好ましい。より好ましくは70〜90質量%、更に好ましくは75〜90質量%である。この範囲にあるとき、光弾性係数の絶対値が小さくなる好ましい改良効果が得られやすい。
熱可塑性樹脂において、第二の構造単位の含有量Cと式(4)で表わされる第四の構造単位の含有量Cの合計量(C+C)と第三の構造単位の含有量Cのモル比(C+C)/Cは、2.8以上15以下であることが好ましく、2.8以上10以下であることがより好ましい。モル比(C+C)/Cがこの範囲にあるとき、熱可塑性樹脂は一層良好な光学特性を発現する。
熱可塑性樹脂中に残存する(共重合体の構造単位を構成する)単量体の合計は、共重合体100質量%に対して好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下である。残存単量体の合計が、0.5質量%を超えると、成形加工時に熱時着色したり、成形品の耐熱性及び耐光性が低下する等実用に適さない成形体が得られるという問題がある。
熱可塑性樹脂中のハロゲン原子の含有量は、熱可塑性樹脂の総量基準で0.47質量%未満であることが好ましく、0.45質量%以下であることがより好ましい。熱可塑性樹脂がハロゲン原子を0.47質量%未満とすることで、溶融成形等に際して高温で熱可塑性樹脂を取り扱った場合でも、ハロゲン系ガスが発生し難く、ハロゲン系ガスに起因する装置の腐食や作業環境の悪化が防止される。また、熱可塑性樹脂(又はその成形体等)を廃棄する際にも、環境負荷が比較的大きいハロゲン系ガスが発生し難いという利点がある。
熱可塑性樹脂のGPC測定法によるポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量(Mw)は、3000〜1000000であることが好ましい。熱可塑性樹脂のMwが3000以上であれば高分子として必要な強度が発現でき、1000000以下であればプレス成形により成形体とすることができる。熱可塑性樹脂のMwは、より好ましくは50000〜800000であり、更に好ましくは50000〜500000、特に好ましくは100000〜500000である。
また、熱可塑性樹脂のGPC測定法による分子量分布(Mw/Mn)は、1〜10であることが好ましい。熱可塑性樹脂組成は、リビングラジカル重合法で重合することも可能であり、必要に応じて分子量分布を調整可能である。成形加工に適した樹脂粘度に調整する観点から、熱可塑性樹脂の分子量分布は、より好ましくは1.1〜7.0、更に好ましくは1.2〜5.0、特に好ましくは1.5〜4.0である。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、120℃以上であることが好ましい。Tgが120℃以上であれば、近年の液晶ディスプレイ用フィルム成形体として必要十分な耐熱性を有している。熱可塑性樹脂のTgは、好ましくは130℃以上であり、より好ましくは135℃以上である。一方、Tgの上限としては、180℃であることが好ましい。
(熱可塑性樹脂の光学特性)
(i)光弾性係数Cの絶対値
熱可塑性樹脂の光弾性係数Cの絶対値は、2.5×10−12Pa−1以下であり、2.0×10−12Pa−1以下であることが好ましく、より好ましくは、1.5×10−12Pa−1以下であり、さらに好ましくは1.0×10−12Pa−1以下である。
ここで、光弾性係数に関しては種々の文献に記載があり(例えば、化学総説,No.39,1998(学会出版センター発行)参照)、下記式(i−a)及び(i−b)により定義されるものである。光弾性係数Cの値がゼロに近いほど、外力による複屈折変化が小さいことが判る。
=|Δn|/σ …(i−1)
|Δn|=nx−ny …(i−2)
式中、Cは光弾性係数、σは伸張応力、|Δn|は複屈折の絶対値、nxは伸張方向の屈折率、nyは面内で伸張方向と垂直な方向の屈折率、をそれぞれ示す。
熱可塑性樹脂の光弾性係数Cは、既存樹脂(例えば、PMMA、PC、トリアセチルセルロース樹脂、環状オレフィン樹脂等)と比較して、十分に小さい。従って、外力に起因した(光弾性)複屈折を生じさせないために複屈折変化を受けにくい。また、成形時の残存応力に起因する(光弾性)複屈折を生じにくいために成形体内での複屈折分布も小さい。
(ii)全光線透過率
熱可塑性樹脂は、フィルム成形した場合の全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。ここで全光線透過率は、100μm厚に換算して求めた値である。全光線透過率が85%未満であると、透明性が低下し、高い透明性を要求される用途に使用できないことがある。
[熱可塑性樹脂の製造方法]
樹脂は、例えば下記重合工程により得ることができる。また、下記脱揮工程により精製することができる。
(重合工程)
本実施形態の熱可塑性樹脂は、第一の単量体、第二の単量体及び第三の単量体を含む単量体群を重合することにより得ることができる。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂の重合反応においては、互いに反応性が近しい単量体、及び/又は共重合性が高い単量体を組み合わせることが、得られる熱可塑性樹脂の樹脂組成比を、反応液に仕込む原料組成比に基づいて容易に制御することが可能であることから望ましい。一方、反応性が著しく異なる単量体を組み合わせる場合、a)反応性が低い単量体が十分に反応せず未反応単量体として残存する、b)結果として得られる熱可塑性樹脂の樹脂組成比が予測し難い等の問題が生じ得る。特に、未反応単量体が残存すると、熱可塑性樹脂の特性、例えば、透明性、耐光性、が低下する等の問題もある。
本発明に係る熱可塑性樹脂の重合方法として、例えば、キャスト重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、リビングラジカル重合、アニオン重合等の一般に行われている重合方法を用いることができる。熱可塑性樹脂を光学材料用途として用いるには微小な異物の混入は出来るだけ避けるのが好ましく、この観点から懸濁剤や乳化剤を用いないキャスト重合や溶液重合を用いることが望ましい。
また、重合形式として、例えば、バッチ重合法、連続重合法のいずれも用いることができる。重合操作が簡単という観点からは、バッチ重合法が望ましく、より均一組成の重合物を得るという観点では、連続重合法を用いることが望ましい。
重合反応時の温度や重合時間は、使用する単量体の種類や割合等に応じて適宜調整できるが、例えば、重合温度が0〜150℃、重合時間が0.5〜24時間であり、好ましくは、重合温度が80〜150℃、重合時間が1〜12時間である。
ラジカル重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、一般にラジカル重合において用いられる任意の開始剤を使用することができ、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物;等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
重合開始剤の使用量は、単量体の組合せや反応条件等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは0.005〜5質量%の範囲で用いられる。
重合反応に必要に応じて用いられる分子量調節剤は、一般的なラジカル重合において用いる任意のものが使用され、例えばブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン化合物が特に好ましいものとして挙げられる。これらの分子量調節剤は、重合度が先述の範囲内に制御されるような濃度範囲で添加される。
重合反応時に溶剤を使用する場合、重合溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。使用する溶剤の沸点が高すぎると、最終的に得られる熱可塑性樹脂の残存揮発分が多くなることから、沸点が50〜200℃である溶剤が好ましい。
また、重合反応時には、必要に応じて、有機リン系化合物や有機酸を添加してもよい。これらの化合物が共存することで、副反応が抑制される、及び/又は未反応N−置換マレイミド量が低減される等して得られる熱可塑性樹脂の成形加工時の着色が低減される場合がある。
有機リン系化合物としては、例えば、アルキル(アリール)亜ホスホン酸及びこれらのジエステル又はモノエステル;ジアルキル(アリール)ホスフィン酸及びこれらのエステル;アルキル(アリール)ホスホン酸及びこれらのジエステル又はモノエステル;アルキル亜ホスフィン酸及びこれらのエステル;亜リン酸ジエステル、亜リン酸モノエステル、亜リン酸トリエステル;リン酸ジエステル、リン酸モノエステル、リン酸トリエステル等が挙げられる。これらの有機リン系化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。有機リン系化合物の使用量は、単量体の総量に対して好ましくは0.001〜5.0質量%である。
一方、有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等及びこれらの酸無水物等が挙げられる。これらの有機酸は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。有機酸の使用量は、単量体の総量に対して好ましくは0.001〜1.0質量%である。
重合反応を行う際には、重合体濃度としては重合中の除熱の観点から、反応液の粘度を適切にするために、10〜95質量%で実施することが好ましく、75質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。10質量%以上であれば、分子量と分子量分布の調整が容易である。95質量%以下であれば、高分子量の重合体を得ることができる。
一方、得られた重合反応液の粘度を適切に保つという観点から、重合溶剤を適宜添加することができる。反応液の粘度を適切に保つことで、除熱を制御し、反応液中のミクロゲル発生を抑制することができる。特に、粘度が上昇する重合反応後半においては重合溶剤を適宜添加して50質量%以下となるように制御することが更に好ましい。
重合溶剤を重合反応液に適宜添加する形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、連続的に重合溶剤を添加してもよいし、間欠的に重合溶剤を添加してもよい。このように重合反応液中に生成した熱可塑性樹脂の濃度を制御することによって、反応器内部の温度均一性を向上させ、反応液のゲル化をより十分に抑制することができる。添加する重合溶剤としては、例えば、重合反応の初期仕込み時に使用した溶剤と同じ種類の溶剤であってもよいし、異なる種類の溶剤であってもよいが、重合反応の初期仕込み時に使用した溶剤と同じ種類の溶剤を用いることが好ましい。また、添加する重合溶剤は、1種のみの単一溶剤であっても2種以上の混合溶剤であってもよい。
熱可塑性樹脂を懸濁重合法で重合する場合には、水性媒体中で行い、懸濁剤及び必要に応じて懸濁助剤を添加して行う。懸濁剤としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の無機物質等がある。水溶性高分子は、単量体の総量に対して0.03〜1質量%使用するのが好ましく、無機物質は、単量体の総量に対して0.05〜0.5質量%使用するのが好ましい。懸濁助剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤があり、懸濁剤として無機物質を使用する場合には、懸濁助剤を使用するのが好ましい。懸濁助剤は、単量体100質量%に対して0.001〜0.02質量%使用するのが好ましい。
(脱揮工程)
脱揮工程とは、重合溶剤、残存単量体、水分等の揮発分を、必要に応じて減圧加熱条件下で、除去処理する工程を意味する。この除去処理が不充分であると、得られた熱可塑性樹脂中の残存揮発分が多くなり、成形時の変質等により着色することや、泡やシルバーストリーク等の成形不良が起こることがある。残存揮発分量は、熱可塑性樹脂100質量%に対して好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、更により好ましくは0.3質量%以下である。残存揮発分量とは、前述した重合反応時に反応しなかった残存単量体、重合溶媒、副反応生成物の合計量に相当する。
脱揮工程に用いる装置としては、例えば、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置;ベント付き押出機;脱揮装置と押出機を直列に配置したもの等が挙げられる。ベント付き押出機を用いる場合、ベントは1個でも複数個でもいずれでもよいが、複数個のベントを有する方が好ましい。
脱揮工程の温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは170〜330℃、更に好ましくは200〜300℃である。この温度が150℃未満であると、残存揮発分が多くなることがある。逆に、この温度が350℃を超えると、得られた熱可塑性樹脂の着色や分解が起こることがある。
脱揮工程における圧力は、好ましくは931〜1.33hPa(700〜1mmHg)、より好ましくは800〜13.3hPa(600〜10mmHg)、更に好ましくは667〜20.0hPa(500〜15mmHg)である。この圧力が931hPa(700mmHg)を超えると、揮発分が残存しやすいことがある。逆に、圧力が1.33hPa(1mmHg)未満であると、工業的な実施が困難になることがある。
処理時間は、残存揮発分の量により適宜選択されるが、得られた熱可塑性樹脂の着色や分解を抑えるためには短いほど好ましい。
重合反応時の単量体反応転化率が低い場合、重合液には未反応単量体が多量に残存している。その場合、得られる熱可塑性樹脂の残存揮発分量を減らすには高い処理温度で、長時間処理することになるが、そうすると着色や分解が生じ易いという問題がある。多量に未反応単量体を含む重合反応液を処理する場合には、問題となる単量体は、例えば、芳香族炭化水素系溶剤、炭化水素系溶剤、又はアルコール系溶剤等を重合溶液に添加した後、ホモジナイザー(乳化分散)処理を行い、未反応単量体について液−液抽出、固−液抽出する等の前処理を施すことで重合反応液から分離できる。前処理による単量体分離後の重合反応液を前述した脱揮工程に供すると、得られる熱可塑性樹脂100質量%中に残存する単量体の合計を0.5質量%以下に抑えることができる。
熱可塑性樹脂に含まれる異物数は、光学用に用いる場合少ないほど好ましい。異物数を減少させる方法としては、重合反応工程、脱揮工程、及び成形工程において、該熱可塑性樹脂の溶液又は溶融液を、例えば、濾過精度1.5〜15μmのリーフディスク型ポリマーフィルター等で濾過する方法等が挙げられる。
[熱可塑性樹脂組成物]
熱可塑性樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂を含有し、透明性、耐熱性、低複屈折性に優れる。また、熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体は、機械特性が良好であり、取扱い性に優れる。
熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、種々の添加剤を含有していてもよい。添加剤の種類は、樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。
添加剤としては、例えば、無機充填剤;酸化鉄等の顔料;ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤・離型剤;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤;有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤;着色剤;その他添加剤;あるいはこれらの混合物等が挙げられる。添加剤の含有割合は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜2質量%、更に好ましくは0〜1質量%である。
熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体等のスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸エステル系樹脂;ポリアミド;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリスルホン;ポリフェニレンオキサイド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアセタール;環状オレフィン系樹脂;ノルボルネン系樹脂;トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂等の熱可塑性樹脂、及びフェノール樹脂;メラミン樹脂;シリコーン樹脂;エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等の少なくとも1種以上を含有することができる。
[位相差板]
本発明に係る熱可塑性樹脂は、例えば、シート状、フィルム状、ストランド状やパイプ状等の押出成形体、円盤状、立方体状、板状等の射出成形体、及びプレス成形体に成形することができる。本実施形態に係る位相差板は、熱可塑性樹脂を、例えば、シート又はフィルム形状に成形加工してなる成形体である。その加工方法としては、押出成形、溶液キャスト成形等を用いることができる。
具体的には、押出成形では、Tダイや円形ダイ等が装着された押出機等を用いて溶融樹脂からシート又はフィルムに成形することができる。この際、各種添加剤やアクリル系熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂をアクリル系熱可塑性樹脂とともに溶融混錬させた成形体を得ることもできる。溶液キャスト成形では、例えばクロロホルムや二塩化メチレン等の溶媒に樹脂を溶解しポリマー溶液とした後、キャスト、乾燥固化させてシート又はフィルムに成形することができる。
シート又はフィルムの延伸は、押出成形、キャスト成形に連続して行うことができる。例えば、未延伸フィルム又はシートを機械的流れ方向に縦一軸延伸、機械的流れ方向に直行する方向に横一軸延伸したり、またロール延伸とテンター延伸の逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等によって延伸したりすることにより、2軸延伸フィルムとすることができる。
延伸により、成形体の強度を向上させることができる。延伸倍率は、好ましくは少なくとも一方向に0.1〜300%であり、より好ましくは、0.2〜290%であり、更に好ましくは0.3〜280%である。この範囲に延伸することにより、強度、透明性、複屈折等の光学特性に優れる成形体が得られる。
延伸後の成形体に対して、その機械的特性や光学的特性を安定化させることを目的に熱処理(アニーリング)等を行うことができる。熱処理の条件は、従来公知のシート又はフィルムに対して行われる熱処理の条件と同様に適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
さらに、フィルム状、又はシート状の成形体を位相差板とした場合、必要とされる複屈折として、適用する液晶モードの要求により、面内方向の位相差(Re)が、その絶対値は30〜300nmの範囲に設計されることが好ましい。(但し、ここで位相差とは、フィルムとして測定した値を100μm厚に換算して求めた値である。)例えば、1/4波長板を想定した場合には、必要とされる位相差(Re)の絶対値は、好ましくは100〜180nm、より好ましくは120〜160nm、更に好ましくは130〜150nmである。また、1/2波長板を想定した場合は、必要な位相差(Re)の絶対値は、好ましくは240〜320nm、より好ましくは260〜300nm、更に好ましくは270〜290nmである。
本発明に係る位相差板は、その複屈折としての位相差(Re)を(i)本発明の熱可塑性樹脂の組成制御、又は、(ii)成形後の延伸加工による高分子鎖の配向制御、さらに、(i)と(ii)の組み合わせのいずれかの方法によって制御される。
一般的に、延伸加工は、複屈折制御に限らず、フィルムの機械強度を高めることを目的に実施される場合がある。複屈折の付与、機械強度の付与のいずれを目的にするとしても、少しの延伸により複屈折が大きく変化する材料は、結果として必要とする位相差への制御が難しいという問題点がある。
上記のように成形されたシート又はフィルムの厚さは1〜10000μmであることが好ましく、1〜5000μmであることがより好ましく、1〜3000μmであることが更に好ましい。
本実施形態の位相差板のガラス転移温度(Tg)は、120℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、135℃以上であることが更に好ましい。ガラス転移温度が120℃に満たない場合、使用環境温度下の寸法安定性に劣る等高い耐熱性を要求される用途に使用できないことがある。
本実施形態の位相差板の全光線透過率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。全光線透過率が85%未満であると、透明性が低下し、高い透明性を要求される用途に使用できないことがある。
本実施形態の位相差板の耐光性は、そのイエロー・インデックス(YI)の変化率(ΔYI)が、1未満であることが好ましく、より好ましくは、0.9未満、更に好ましくは0.8未満である。ΔYIが1を超える場合には、透明性を要求される用途に使用できないことがある。
本発明の位相差板は、従来存在していたアクリル系熱可塑性樹脂からなる位相差板に比べ、低い光弾性係数を有し、且つ、延伸によりその位相差を容易に制御できることで特徴付けられる。
本実施形態の位相差板、例えば、シート又はフィルムには、反射防止処理、透明導電処理、電磁波遮蔽処理、ガスバリア処理等の表面機能化処理をすることもできる。本実施形態の位相差板は、主として複屈折を必要とする用途、例えば、位相差フィルム(具体的には、TN、VA、IPS、OCB等の各種液晶モードに用いられる視野角制御フィルム等の液晶光学補償フィルム)、1/4波長板、1/2波長板等の位相差板、等に適している。
[偏光板]
本実施形態の偏光板は、一般的な方法で作製することができる。偏光板の少なくとも一方の面に本発明の位相差フィルムを貼合することが好ましい。すなわち、本発明の位相差フィルムの裏面側を、ヨウ素溶液中に浸漬、延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、プライマー溶液を介して貼り合わせることが好ましい。プライマー溶液としては、ポリビニルアルコール水溶液や、ポリビニルアルコール、ポリウレタン系樹脂等の水溶液等の水系接着剤、エポキシ系硬化剤及び外線硬化性接着剤等の溶剤系接着剤が用いられ、偏光膜と位相差フィルムを接着可能であれば、公知のものでいかなるものでも良い。
もう一方の面には該位相差フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。別の偏光板保護フィルムには、ハードコート層、防眩性ハードコート層、反射防止層、帯電防止層、防汚層等の表面処理層を設けることが好ましい。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後に一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。概偏光膜の面上に、本発明の位相差フィルム、別の偏光板保護フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。
[画像表示装置]
本実施形態の画像表示装置の構造は、本実施形態の位相差板を組み込んでいる限り、特に限定されない。本実施形態の画像表示装置としては、例えば、液晶表示装置であり、本発明に係る偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。例えば、本実施形態の偏光板を、少なくとも視認側かバックライト側のどちらか一方に用いる態様が好ましい。
液晶表示装置の液晶のモードとしては、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、フリンジフィールドスイッチング(FFS)モード、バーチカルアライメント(VA)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モード等が挙げられる。
以下、実施例、参考例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
本願発明に用いられる各測定値の測定方法は次のとおりである。
<a>熱可塑性樹脂の解析
(1)構造単位
H−NMR、13C−NMR測定より、(i)第一の構造単位、(ii)第二の構造単位、(iii)第三の構造単位、及び(iv)第四の構造単位を同定し、その存在量を算出した。
測定機器:ブルーカー株式会社製 DPX−400
測定溶媒:CDCl、又はd−DMSO
測定温度:40℃
(2)ガラス転移温度
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(パーキンエルマージャパン(株)製 Diamond DSC)を用いて、窒素ガス雰囲気下、α−アルミナをリファレンスとし、JIS−K−7121に準拠して、試料約10mgを常温から200℃まで昇温速度10℃/minで昇温して得られたDSC曲線から中点法で算出した。
(3)分子量
重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー(株)製 HLC−8220)を用いて、溶媒はテトラヒドロフラン、設定温度40℃で、市販標準PMMA換算により求めた。
(4)耐光性
耐光性は、アイスーパーUVテスター(岩崎電気(株)製 SUV−W151;メタルハライドランプ)を用いて温度63℃、湿度60%の環境で約150時間暴露後、分光色彩計(日本電色工業(株)製 SD−5000)でイエロー・インデックス(YI)を測定して、その変化率(ΔYI)で評価した。
<b>光学特性評価
(1)光学フィルムサンプルの作製
(1−a)プレスフィルムの成形
真空圧縮成形機((株)神藤金属工業所製 SFV−30型)を用いて、大気圧下、260℃、で25分間予熱後、真空下(約10kPa)、260℃、約10MPaで5分間圧縮してプレスフィルムを成形した。
(1−b)延伸フィルムの成形
インストロン社製5t引張り試験機を用いて、延伸温度(Tg+20)℃、延伸速度(500mm/分)で一軸フリー延伸して延伸フィルムを成形した。延伸倍率は、100%、200%、及び300%で延伸した。
(2)複屈折の測定
大塚電子製RETS−100を用いて、回転検光子法により測定を行った。複屈折の値は、波長550nm光の値である。複屈折(Δn)は、以下の式により計算した。得られた値をフィルムの厚さ100μmに換算して測定値とした。
Δn=nx−ny
(Δn:複屈折、nx:伸張方向の屈折率、ny:伸張方向と垂直な屈折率)
複屈折(Δn)の絶対値(|Δn|)は、以下のように求めた。
|Δn|=|nx−ny|
(3)位相差の測定
<面内の位相差>
大塚電子(株)製RETS−100を用いて、回転検光子法により波長400〜800nmの範囲について測定を行った。得られた値をフィルムの厚さ100μmに換算して測定値とした。
複屈折の絶対値(|Δn|)と位相差(Re)は以下の関係にある。
Re=|Δn|×d
(|Δn|:複屈折の絶対値、Re:位相差、d:サンプルの厚み)
また、複屈折の絶対値(|Δn|)は以下に示す値である。
|Δn|=|nx−ny|
(nx:延伸方向の屈折率、ny:面内で延伸方向と垂直な屈折率)
<厚み方向の位相差>
王子計測機器(株)製位相差測定装置(KOBRA−21ADH)を用いて、波長589nmにおける位相差を測定し、得られた値をフィルムの厚さ100μmに換算して測定値とした。
複屈折の絶対値(|Δn|)と位相差(Rth)は以下の関係にある。
Rth=|Δn|×d
(|Δn|:複屈折の絶対値、Rth:位相差、d:サンプルの厚み)
また、複屈折の絶対値(|Δn|)は以下に示す値である。
|Δn|=|(nx+ny)/2−nz|
(nx:延伸方向の屈折率、ny:面内で延伸方向と垂直な屈折率、nz:面外で延伸方向と垂直な厚み方向の屈折率)
(理想となる、3次元方向について完全等方的等方性であるフィルムでは、面内位相差(Re)、厚み方向位相差(Rth)ともに0となる。)
(4)光弾性係数の測定
Polymer Engineering and Science 1999, 39, 2349−2357に詳細について記載のある複屈折測定装置を用いた。レーザー光の経路にフィルムの引張り装置(井元製作所製)を配置し、23℃で伸張応力をかけながら、その複屈折を、大塚電子(株)製RETS−100を用いて回転検光子法により波長400〜800nmの範囲について測定した。伸張時の歪速度は50%/分(チャック間:50mm、チャック移動速度:5mm/分)、試験片幅は6mmで測定を行った。複屈折の絶対値(|Δn|)と伸張応力(σ)の関係から、最小二乗近似によりその直線の傾きを求め光弾性係数(C)を計算した。計算には伸張応力が2.5MPa≦σ≦10MPaの間のデータを用いた。
=|Δn|/σ
|Δn|=|nx−ny|
(C:光弾性係数、σ:伸張応力、|Δn|:複屈折の絶対値、nx:伸張方向の屈折率、ny:伸張方向の垂直な屈折率)
[熱可塑性樹脂の合成]
<メタクリル酸メチル/N−フェニルマレイミド/N−シクロヘキシルマレイミド重合体>
[実施例1]
容積100mlのガラス製容器に総量で50gになるように表3に示す仕込み比でメタクリル酸メチル(MMA)、N−フェニルマレイミド(PheMI)、及びN−シクロヘキシルマレイミド(CyMI)を秤量した後、攪拌しながら混合、溶解した。次いで、該溶解液を窒素ガスで置換し原料液を調製した。
次いで、原料液にジラウロイルパーオキサイド0.015g、n−オクチルメルカプタン0.05gを添加して完全に溶解した。再度、窒素ガスでガラス製容器内を窒素雰囲気下にしたのち封管した。
ガラス製容器を68℃に設定したオイルバスで20時間反応させた後、オイルバス温度を120℃に変更後、10時間更に反応させ重合反応を完了させた。
ガラス製容器から重合塊を回収後、テトラヒドロフラン200gに溶解し、得られたテトラヒドロフラン溶液を貧溶媒であるメタノール1000mlに滴下して、沈降するポリマーを分離回収した。真空下、130℃で2時間乾燥して目的とする熱可塑性樹脂を得た。
参考例2及び3]
熱可塑性樹脂の原料仕込み比を表1に示す組成比に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、熱可塑性樹脂を得た。
実施例1、並びに参考例2及び3で得られた熱可塑性樹脂を用いて、前述の(1−a)方法に従いプレスフィルムを成形した後、前述の(1−b)方法に従い100%延伸フィルムを作製し、位相差板としての光学特性を評価した。結果を表1に示す。
低光弾性係数の評価は、光弾性係数の絶対値が2.5以下(○)、光弾性係数の絶対値が2.5を超える(×)とした。また、位相差の評価は、位相差の絶対値が30nmを超える(○)、位相差の絶対値が30nm以下(×)とした。さらに、耐光性の評価は、PMMAに遜色ないもの(○:ΔYI<1未満)、明らかに黄着色したもの(×:1<ΔYI)とした。
Figure 0005919611
実施例1、並びに参考例2及び3で作製した位相差板は、いずれも高い耐熱性及び良好な耐光性を有すると共に、低い光弾性係数及び十分な位相差を有していた。
[比較例1]
容積100mのガラス製容器に総量で50gになるように表3に示す仕込み比でメタクリル酸メチルを秤量した後、攪拌しながら混合、溶解した。次いで、該溶解液を窒素ガスで置換し原料液を調製した。
次いで、原料液にジラウロイルパーオキサイド0.015g、n−オクチルメルカプタン0.05gを添加して完全に溶解した。再度、窒素ガスでガラス製容器内を窒素雰囲気下にしたのち封管した。
ガラス製容器を68℃に設定したオイルバスで20時間反応させた後、オイルバス温度を120℃に変更後、更に10時間反応させ重合反応を完了させた。
ガラス製容器から重合塊を回収後、テトラヒドロフラン200gに溶解し、得られたテトラヒドロフラン溶液を貧溶媒であるメタノール1000mlに滴下して、沈降するポリマーを分離回収した。真空下、130℃で2時間乾燥して熱可塑性樹脂を得た。
[比較例2〜10]
熱可塑性樹脂の原料仕込み比を表2に示す組成比に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行って、熱可塑性樹脂を得た。
比較例1〜10で得られた熱可塑性樹脂を用いて、前述の(1−a)方法に従いプレスフィルム成形した後、前述の(1−b)方法に従い100%延伸フィルムを作製し、位相差板としての光学特性を評価した。結果を表2に示す。
Figure 0005919611
比較例1で作製した位相差板は、光弾性係数が大きく、比較例2〜7で作製した位相差板は、光弾性係数が大きかったり、光弾性係数が小さい場合も耐光性が不十分であった。一方、比較例8で作製した位相差板は、光弾性係数が大きく、比較例9、10で作製した位相差板は、耐光性が十分ではなかった。
<メタクリル酸メチル/N−フェニルマレイミド/N−シクロヘキシルマレイミド/スチレン重合体>
[実施例4]
容積100mlのガラス製容器に総量で50gになるように表3に示す仕込み比でメタクリル酸メチル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、及びスチレンを秤量した後、攪拌しながら混合、溶解した。次いで、該溶解液を窒素ガスで置換し原料液を調製した。
次いで、原料液にジラウロイルパーオキサイド0.015g、n−オクチルメルカプタン0.05gを添加して完全に溶解した。再度、窒素ガスでガラス製容器内を窒素雰囲気下にしたのち封管した。ガラス製容器を68℃に設定したオイルバスで20時間反応させた後、オイルバス温度を120℃に変更後、10時間更に反応させ重合反応を完了させた。
ガラス製容器から重合塊を回収後、テトラヒドロフラン200gに溶解し、得られたテトラヒドロフラン溶液を貧溶媒であるメタノール1000mlに滴下して、沈降するポリマーを分離回収した。真空下、130℃で2時間乾燥して目的とする熱可塑性樹脂(実施例4)を得た。
[実施例5、6及び参考例7]
熱可塑性樹脂の原料仕込み比を表3に示す組成比に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行って、熱可塑性樹脂を得た。
[比較例11、12]
熱可塑性樹脂の原料仕込み比を表1に示す組成比に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行って、熱可塑性樹脂を得た。
実施例4〜6、参考例7、比較例11及び12で得られた熱可塑性樹脂を用いて、前述の(1−a)方法に従いプレスフィルム成形した後、前述の(1−b)方法に従い100%延伸フィルムを作製し、位相差板としての光学特性を評価した。結果を表3に示す。
Figure 0005919611
実施例4〜6及び参考例7で作製した位相差板は、いずれも高い耐熱性及び良好な耐光性を有すると共に、低い光弾性係数及び十分な位相差を有していた。一方、比較例11及び12で作製した位相差板は、光弾性係数が大きかった。
参考例8、実施例9
参考例2及び実施例5で得られた熱可塑性樹脂から作製した位相差板フィルムを、前述の方法に従い一軸フリー200%延伸フィルム、一軸フリー300%延伸フィルムに加工して延伸倍率とそのフィルム光学特性の変化を評価した。その結果を表4に示す。
Figure 0005919611

本発明の位相差板は、任意の位相差(正及び負)に設計することができ、1/4波長板、1/2波長板等の位相差板、光学補償フィルムとしての位相差フィルム等の用途に好適である。
本発明の位相差板は、低い光弾性係数と有意の位相差を有し、且つ、耐熱性及び耐光性が良好であることから、主として複屈折を必要とする用途、例えば、位相差フィルム(具体的には、TN、VA、IPS、OCB等の各種液晶モードに用いられる視野角制御フィルム等の液晶光学補償フィルム)、1/4波長板、1/2波長板等の位相差板等に好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. 50〜90質量%の下記式(1)で表される第一の構造単位、0.1〜15質量%の下記式(2)で表される第二の構造単位、0.1〜49.9質量%の下記式(3)で表される第三の構造単位、及び、0〜10質量%の下記式(4)で表される第四の構造単位をその総量基準で有する熱可塑性樹脂から形成され、
    前記第三の構造単位の含有量に対する前記第二の構造単位及び前記第四の構造単位の合計含有量が、モル比で2.8以上15以下であり、
    前記熱可塑性樹脂の光弾性係数の絶対値が2.5×10−12Pa−1以下である、位相差板。
    Figure 0005919611

    [式中、Rは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜14のアリールアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は、下記A群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数6〜14のアリール基、を示す。
    A群:ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基及び炭素数1〜12のアルキル基。]
    Figure 0005919611

    [式中、Rは、炭素数7〜14のアリールアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は、下記B群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数6〜14のアリール基、を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を示す。
    B群:ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数7〜14のアリールアルキル基。]
    Figure 0005919611

    [式中、Rは、水素原子、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、又は、下記C群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数1〜12のアルキル基、を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を示す。
    C群:ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基及び炭素数1〜12のアルコキシ基。]
    Figure 0005919611

    [式中、R及びRは、同一でも、異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルコキシ基、及び直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基からなる群から選ばれるいずれかを示し、aは1〜3の整数を示す。]
  2. 前記熱可塑性樹脂は、フィルム成形した場合の面内方向の位相差(Re)の絶対値が、100μm厚み換算で30nmを超え、300nm以下である請求項1に記載の位相差板。
  3. 前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度が120℃以上である、請求項1又は2に記載の位相差板。
  4. 前記熱可塑性樹脂は、フィルム成形した場合の全光線透過率が85%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相差板。
  5. 前記Rが、メチル基又はベンジル基であり、
    前記Rが、フェニル基又は前記B群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有するフェニル基であり、
    前記Rが、シクロヘキシル基である、請求項1〜のいずれか1項に記載の位相差板。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の位相差板を備える、偏光板。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の位相差板を備える、画像表示装置。
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