以下、本発明に係る車両用ブラシレスモータの制御方法の具体的な実施例について、図面を用いて説明する。
本発明の第1の実施形態である実施例1について、図1から図6を用いて説明する。
[ブラシレスモータの構造の説明]
まず、本発明のブラシレスモータの構造について、図1(a),(b)を用いて説明する。
図1(a)は、本発明のブラシレスモータ10を下側から見た下面図である。このブラシレスモータ10は、車両に搭載されて、車両用空調装置の送風機ファンの駆動に用いられ、三相2極巻線のアウタロータ形のブラシレスDCモータ(以後、単にブラシレスモータと呼ぶ)であり、内周側のステータ3に電機子コイル(4a〜4f)、外側のロータ1にメインマグネット(界磁用永久磁石)2を備えている。
すなわち、図1(a)において、ステータ3には、各突出部(3a〜3f)をコアとして、突出部3a〜3fの外周部に、回転磁界を生成する三相(U,V,W)の電機子コイル4a〜4fが配置されている。また、ステータ3の外側には、90°間隔でメインマグネット(界磁用永久磁石)2を備えたロータ1が配置されている。このロータ1の回転位置を示すセンサマグネット5は、N極とS極とが2対、ロータ1の回転中心に対し均等角度に配置されて、ロータ1と一体に回転するシャフト6に取り付けられている。
そして、図1(a)のブラシレスモータ10は、ロータ1と、メインマグネット(界磁用永久磁石)2と、センサマグネット5と、シャフト6と、が一体となって、回転方向Rの向きに回転する。
なお、センサマグネット5によって発生する磁界の方向を検出する磁気センサ(IC1〜IC3)が、ステータ3の内周側に120°間隔で均等に配置されている。磁気センサ(IC1〜IC3)には、例えば、電流に直角に磁場をかけると、電流と磁場の両方に直交する方向に起電力が生じる、いわゆるホール効果を利用して磁界を検出するホールICが用いられる。
ブラシレスモータ10にあっては、電機子コイル(4a〜4f)に流す電流を切り替えるタイミング、すなわち、ロータ1とメインマグネット(界磁用永久磁石)2の位置関係に応じて、発生するトルクが変化する。ロータ1の回転位置を示すセンサマグネット5は、本実施例1では、メインマグネット2に対して遅れ角42°でシャフト6に取り付けられて、さらに電気的な進角制御を行っている。なお、図1(a)において、領域P1は電流経路が短く、他の電機子コイルに対して2倍の電流が流れているコイルを示す(詳しく後述する)。また、領域P2は電機子コイル4c(4f)とメインマグネット2との反発力による正回転トルク発生位置、そして、領域P3は電機子コイル4a(4d)とメインマグネット2との反発力による逆トルク発生位置を示す。
ブラシレスモータ10が図1(a)の状態にあるとき、各電機子コイル(4a〜4f)は、後述するMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)と、図1(b)に示すように接続されている。
すなわち、磁気センサ(IC3)から出力される信号を用いて、図1(b)に示すように、MOSFET(Q1),(Q5)がスイッチングされて導通状態となり、外部に設置した直流電源から、所定の直流電圧が、接続点Uaと接続点Vaの間に印加される。このとき、接続点Uaから接続点Vaに向けて、2つの電流経路に沿って電流が流れる。第1の電流経路は、接続点Uaから電機子コイル(4c,4f)を経て接続点Vaに至る経路であり、第2の電流経路は、接続点Uaから電機子コイル(4b,4e,4a,4d)を経て接続点Vaに至る経路である。
[ブラシレスモータの動作の説明]
次に、ブラシレスモータ10が回転する原理について、図1(a)〜(d)を用いて簡単に説明する。
図1(b)の接続状態にある場合、第1の電流経路の抵抗値は第2の電流経路の抵抗値の半分になるため、第1の電流経路には、第2の電流経路に対して2倍の電流が流れる。前述した領域P1(図1(a)参照)は、この2倍の電流が流れる電機子コイル(4c,4f)を示している。そして、この電流値が2倍となる電機子コイル(4c,4f)とメインマグネット2との間には、他の電機子コイル(4a,4b,4d,4e)と比べて、特に強い反発力が生じる。そして、この反発力によって、前記した逆トルクが打ち消されて、ロータ1は、回転方向Rの向きに回転する。
図1(c)は、このようにして、ロータ1が回転方向Rの向きに30°回転した状態を示している。そして、図1(d)は、このときのMOSFET(Q1〜Q6)の状態を示す。すなわち、この場合、磁気センサ(IC1)から出力される信号を用いて、MOSFET(Q3),(Q5)が導通して、所定の直流電圧が、接続点Waと接続点Vaの間に印加される。
図1(c)の場合は、電機子コイル(4a,4d)とメインマグネット2との間に、他の電機子コイル(4b,4c,4e,4f)と比べて、特に強い反発力が生じ、ロータ1は、さらに回転方向Rの向きに回転する。以下、同様の動作を繰り返して、ブラシレスモータ10は回転方向Rの向きに回転を続ける。
なお、図1(a),(c)に示したブラシレスモータ10の構造によると、センサマグネット5は、N極とS極とが90°毎に配置されるため、磁気センサ(IC1〜IC3)からの磁界方向変化検出信号(以下、単にセンサ信号と呼ぶ)は、ロータ1が1回転する間に2周期変化する。これによって、ロータ1の回転を2倍細かくタイミング制御することができる。また、磁気センサ(IC1〜IC3)を均等間隔で3個配置したことによって、ロータ1の回転を3倍細かくタイミング制御することができる。この均等間隔で配置された磁気センサ(IC1〜IC3)からの磁界方向検出結果に基づき、ロータ1が1回転する間にMOSFET(Q1〜Q6)の導通/非導通を計12回スイッチングし、導通されたMOSFET(Q1〜Q6)の組み合わせによって、電機子コイル(4a〜4f)に電圧を印加する電源側接続点と接地側接続点とを順次切り替えることによって、電機子コイル(4a〜4f)に流れる電流の方向を切り替える。その結果、回転磁界が生成されて、ロータ1が回転方向Rの向きに回転する駆動力が得られる。
[ブラシレスモータの駆動モードの説明]
次に、ブラシレスモータ10の駆動モードについて、図1〜4を用いて説明する。
図2(a),(b)は、ブラシレスモータ10の電機子コイル(4a〜4f)に印加する電圧波形e(t)の例である。
このうち、図2(a)は正弦波状の電圧波形e(t)を表わしており、図2(b)は矩形波状の電圧波形e(t)を表わしている。正弦波形状を有する電圧波形e(t)を用いてブラシレスモータ10の電機子コイル(4a〜4f)に流す電流を切り替えると、電機子コイル(4a〜4f)に発生する磁束の変化が穏やかとなるため、相切り替え時の騒音を低減することができる。本実施例1においては、このように正弦波形状の電圧波形e(t)を用いてブラシレスモータ10を駆動するモードを第1の駆動モードとする。
一方、矩形波形状を有する電圧波形e(t)を用いてブラシレスモータ10の電機子コイル(4a〜4f)に流す電流を切り替えると、有効な回転トルクを生じる期間が長くなるため、高トルクを発生させることができる。本実施例1においては、このように矩形波形状の電圧波形e(t)を用いてブラシレスモータ10を駆動するモードを第2の駆動モードとする。
[実施例1における電圧波形制御の説明]
本実施例1では、具体的には、電機子コイル(4a〜4f)に印加する電圧波形e(t)を、図3に示すように制御する。電機子コイル(4a〜4f)に印加する電圧波形e(t)を正弦波とし、ブラシレスモータ10を低騒音で駆動する第1の駆動モードと、電機子コイル(4a〜4f)に印加する電圧波形e(t)を矩形波とし、ブラシレスモータ10を高効率で駆動する第2の駆動モードを設定する。
そして、MOSFET(Q1〜Q6)を所定のタイミングでスイッチングする駆動制御部の温度が、予め設定した所定の温度しきい値T(例えば85℃)を超えたときには、ブラシレスモータ10を、目標回転数によらずに第2の駆動モード、すなわち矩形波で駆動する。また、駆動制御部の温度が予め設定した所定の温度しきい値T(例えば85℃)を超えていないときには、ブラシレスモータ10の目標回転数が低い(例えば1800rpm以下)ときには、ブラシレスモータ10を第1の駆動モード、すなわち正弦波で駆動して、ブラシレスモータ10の目標回転数が高い(例えば1800rpmよりも多い)ときには、ブラシレスモータ10を第2の駆動モード、すなわち矩形波で駆動する。なお、所定の温度しきい値Tは85℃に限定されるものではなく、ブラシレスモータ10の運転条件や駆動制御部が置かれている環境に応じて適宜設定される。
[実施例1の構成の説明]
次に、実施例1の具体的な構成について、図4を用いて説明する。
図4は、本実施例1において、ブラシレスモータ10の回転制御を行うブラシレスモータ制御装置100aの全体構成を示すブロック図である。すなわち、ブラシレスモータ制御装置100aは、ブラシレスモータ10と、センサ信号検出部12と、スイッチングタイミング演算部14aと、モータ駆動部20と、MOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)と、電源供給部22と、駆動電圧波形生成部23と、空調制御部24と、定電流回路26と、サーミスタ28と、温度検出部30と、からなる。
センサ信号検出部12は、磁気センサ(IC1〜IC3)から出力されるセンサ信号に基づいて、センサマグネット5の磁界方向が変化したことを検出する。そして、各々の磁気センサ(IC1〜IC3)のセンサ信号の反転信号を生成して、非反転信号と合わせて6種類の信号からなるセンサ信号としてスイッチングタイミング演算部14aに入力する。これは、後述するスイッチングタイミング演算部14aが、信号の立ち下がりエッジを検出して動作するため、立ち上がりエッジを立ち下がりエッジに変換して検出するためである。
電源供給部22は、モータ駆動部20、およびMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)に対して、必要な直流電圧を供給する。
スイッチングタイミング演算部14aは、前記した駆動制御部に対応する。このスイッチングタイミング演算部14aはマイクロコンピュータで構成されており、MOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)を所定のタイミングでスイッチングする。スイッチングタイミング演算部14aは、さらに、駆動波形決定部18と、電流切り替えタイミング生成部17aと、からなる。
駆動波形決定部18は、後述する温度検出部30が検出したスイッチングタイミング演算部14aの周囲温度に基づいて、ブラシレスモータ10の電機子コイル(4a〜4f)に印加する電圧波形e(t)を決定する。具体的には、温度検出部30で検出された、マイクロコンピュータで構成されたスイッチングタイミング演算部14aの周囲温度が、所定の温度しきい値Tを超えているときには、電機子コイル(4a〜4f)に印加する電圧波形e(t)を正弦波形として、ブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動する。
一方、スイッチングタイミング演算部14aの周囲温度が、所定の温度しきい値T以下であるときには、電機子コイル(4a〜4f)に印加する電圧波形e(t)を矩形波形として、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。
電流切り替えタイミング生成部17aは、空調制御部24から得た、ブラシレスモータ10の目標回転数を示す空調制御信号に基づいて、各相(U,V,W)に流す電流の切り替えタイミングを決定する。このとき、空調制御信号によって、ブラシレスモータ10の回転数として、所定値(例えば1800rpm)以上の値が指示されたときには、スイッチングタイミング演算部14aの周囲温度が所定の温度しきい値T以下であっても、ブラシレスモータ10を第2の駆動モード(矩形波)で駆動する。また、空調制御信号によって、ブラシレスモータ10の回転数として、所定値(例えば1800rpm)よりも小さい値が指示されたときには、スイッチングタイミング演算部14aの周囲温度が所定の温度しきい値Tを超えていたら、ブラシレスモータ10を第2の駆動モード(矩形波)で駆動して、スイッチングタイミング演算部14aの周囲温度が所定の温度しきい値T以下であると判断されたら、ブラシレスモータ10を第1の駆動モード(正弦波)で駆動する。
温度検出部30は、スイッチングタイミング演算部14aの近傍に設置されて、マイクロコンピュータで構成されたスイッチングタイミング演算部14aの周囲の温度を検出する。すなわち、スイッチングタイミング演算部14aの温度が上昇すると、スイッチングタイミング演算部14aの近傍に設置されて、定電流回路26から定電流の供給を受けるサーミスタ28の内部抵抗値が変化して、サーミスタ28の両端に発生する電圧が変化するため、温度検出部30は、この電圧の変化を検出することによって、スイッチングタイミング演算部14aの周囲の温度を検出する。
駆動電圧波形生成部23は、ブラシレスモータ10の駆動モードに応じた電圧波形e(t)を生成する。すなわち、電圧波形e(t)として正弦波が選択されたときには、当該正弦波を所定の高周波成分からなる変調波でパルス幅変調したPWM波形を生成する。そして、磁気センサ(IC1〜IC3)から出力される6つのセンサ信号の立ち下がりのタイミングで、生成したPWM波形をMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)のゲート信号として出力する。
一方、電圧波形e(t)として矩形波が選択されたときには、駆動電圧波形生成部23において、電流切り替えタイミング生成部17cで生成された電流切り替えタイミングを有する矩形波を生成する。そして、磁気センサ(IC1〜IC3)から出力される6つのセンサ信号の立ち下がりのタイミングで、生成された矩形波をMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)のゲート信号として出力する。
このようにして駆動電圧波形生成部23で生成された、正弦波に対応するPWM波形、または矩形波がモータ駆動部20に入力される。
モータ駆動部20は、ブラシレスモータ10の各相(U,V,W)に印加する電圧を発生させるタイミング信号を、モータ駆動部20に接続されたMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)のゲートに印加する。
MOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)は、電源供給部22から供給される直流電圧を、前記タイミング信号で設定された所定のタイミングで断続して、ブラシレスモータ10の各相(U,V,W)の接続点(Ua,Va,Wa)に供給する。
このようにして各相(U,V,W)の接続点(Ua,Va,Wa)に供給された電圧信号が、電機子コイル(4a〜4f)に印加されることによって、ステータ3に回転磁界が発生し、この回転磁界と、ロータに設置されたメインマグネット(界磁用永久磁石)2との間で、磁力による吸引力と反発力が発生して、ブラシレスモータ10が所定の回転数で回転する。
[実施例1の処理の流れの説明]
次に、実施例1の具体的な処理の流れについて、図5のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS50)温度検出部30にて、スイッチングタイミング演算部14aの周囲温度を検出する。
(ステップ52)検出された温度が、所定の温度しきい値Tである85℃を超えているか否かを判断する。温度しきい値Tを超えているときはステップS54に進み、温度しきい値T以下であるときはステップS56に進む。
(ステップS54)ブラシレスモータ10を第2の駆動モード、すなわち矩形波で駆動する。なお、駆動時の目標回転数は、空調制御部24から出力された空調制御信号に基づいて電流切り替えタイミング生成部17aで決定される。
(ステップS56)ブラシレスモータ10の目標回転数が1800rpmよりも小さいか否かを判断する。この処理は、空調制御部24から出力された空調制御信号に基づいて行われる。算出された目標回転数が1800rpmよりも小さいときはステップS58に進み、算出された目標回転数が1800rpm以上であるときはステップS54に進む。
(ステップS58)ブラシレスモータ10を第1の駆動モード、すなわち正弦波で駆動する。
(ステップS59)ブラシレスモータ10の停止命令の発生を検出する。もし停止命令があったときは、図5の処理を終了し、停止命令がないときは、ステップS50に戻る。
次に、本発明の第2の実施形態である実施例2について、図1、および図6から図10を用いて説明する。本実施例2では、実施例1で用いた方法とは異なる方法によって、第1の駆動モードと第2の駆動モードを実現する。
[実施例2における駆動モードの説明]
ブラシレスモータ10を低騒音の回転状態で駆動する第1の駆動モードと、高効率の回転状態で駆動する第2の駆動モードを作り出す方法は、実施例1で説明した方法に限定されるものではない。
図6は、本実施例2において行うオーバーラップ制御の説明図である。図1(b)に示す、接続点Uaと接続点Vaとの間に電圧を印加し、MOSFET(Q1),(Q5)を導通とする状態から、図1(d)に示す、接続点Waと接続点Vaとの間に電圧を印加し、MOSFET(Q3),(Q5)を導通とする状態への切り替えを行う際に、図6に示すように、接続点Uaと接続点Waを共に電源側に接続して、接続点Vaを接地側に接続する状態を作るものとする。このとき、接続点Uaと接続点Waにはともに等しい電圧が印加されており、この状態をオーバーラップ状態と呼ぶことにする。
オーバーラップ状態にあるときは、接続点Ua,接続点Waは同電位となって、接続点Ua,接続点Wa間には電流が流れない。このため、図1(b)の接続状態から図6に示すオーバーラップ状態を経て、図1(d)の接続状態に移行させることによって、電機子コイル(4a〜4f)に流れる電流の変化が穏やかとなり、その結果、電機子コイル(4a〜4f)に発生する磁束の変化が穏やかとなる。このため、ロータ1のメインマグネット2と電機子コイル(4a〜4f)間の反発力の変化が穏やかとなって、反発力によって生じる固有振動音が小さくなる。また、その反面、有効な回転トルクを生じる期間が短くなるため、トルクの発生効率が低下する。
このオーバーラップ状態は、図7のタイミングチャートに示すように、電機子コイル(4a〜4f)の各相(U,V、W)に印加する電圧波形e(t)を切り替えるタイミングにおいて、切り替えタイミング前に電圧を印加していた相(U,V,Wのいずれか)と、切り替えタイミング後に電圧を印加する相(U,V,Wのいずれか)に、同時に電圧を印加することによって実現することができる。このとき、同時に電圧を印加する時間をオーバーラップ時間δと呼ぶことにする。
[実施例2におけるオーバーラップ制御の説明]
本実施例2では、具体的には、オーバーラップ時間δを図8に示すように制御する。すなわち、オーバーラップ時間δを長く(例えば670μsec)設定した、ブラシレスモータ10を低騒音で駆動する第1の駆動モードと、オーバーラップ時間δを短く(例えば75μsec)設定した、ブラシレスモータ10を高効率で駆動する第2の駆動モードを設定する。
そして、MOSFET(Q1〜Q6)を所定のタイミングでスイッチングする駆動制御部の温度が、予め設定した所定の温度しきい値T(例えば85℃)を超えたときには、ブラシレスモータ10を、目標回転数によらずに第2の駆動モード、すなわち、オーバーラップ時間δを短く設定した状態で駆動する。また、駆動制御部の温度が予め設定した所定の温度しきい値T(例えば85℃)を超えていないときには、ブラシレスモータ10の目標回転数が低い(例えば1125rpm以下)ときには、ブラシレスモータ10を第1の駆動モード、すなわち、オーバーラップ時間δを長く設定した状態で駆動して、ブラシレスモータ10の目標回転数が高い(例えば1800rpm以上)ときには、ブラシレスモータ10を第2の駆動モード、すなわち、オーバーラップ時間δを短く設定した状態で駆動する。なお、所定の温度しきい値Tは85℃に限定されるものではなく、ブラシレスモータ10の運転条件や駆動制御部が置かれている環境に応じて適宜設定される。
さらに、ブラシレスモータ10の目標回転数が1125rpmと1800rpmの間にあるときには、目標回転数に応じてオーバーラップ時間δを緩やかに切り替える。これは、オーバーラップ時間を急激に変化させると、ブラシレスモータ10の回転トルクも急激に変化するため、モータの回転むらが発生するためである。
[実施例2の構成の説明]
次に、実施例2の具体的な構成について、図9を用いて説明する。
図9は、本実施例2において、ブラシレスモータ10の回転制御を行うブラシレスモータ制御装置100bの全体構成を示すブロック図である。ブラシレスモータ制御装置100bの概略構成は、実施例1で説明したブラシレスモータ制御装置100a(図4参照)とほぼ等しいものであるため、ここでは、ブラシレスモータ制御装置100aとの差異のみ説明する。
ブラシレスモータ制御装置100bは、ブラシレスモータ制御装置100aが有していたスイッチングタイミング演算部14a(図4参照)と駆動電圧波形生成部23(図4参照)の代わりに、スイッチングタイミング演算部14bを有する。
スイッチングタイミング演算部14bはマイクロコンピュータで構成されており、さらに、オーバーラップ時間算出部15bと、オーバーラップ制御部16bと電流切り替えタイミング生成部17bと、からなる。
オーバーラップ時間算出部15bは、温度検出部30が検出したスイッチングタイミング演算部14bの周囲温度に基づいて、ブラシレスモータ10の駆動モードを決定して、電機子コイル(4a〜4f)に印加する電圧を切り替える際に、切り替え前後の接続点(Ua,Va,Waのいずれか)に重複して電圧を印加する時間であるオーバーラップ時間δを算出する。
すなわち、温度検出部30で検出された、マイクロコンピュータで構成されたスイッチングタイミング演算部14bの周囲温度が、所定の温度しきい値Tを超えているときには、電機子コイル(4a〜4f)に流れる電流の切り替えタイミングにおいて、切り替え前に電流を流していた(電圧を印加していた)電機子コイル(4a〜4fのいずれか)と、切り替え後に電流を流す(電圧を印加する)電機子コイル(4a〜4fのいずれか)と、に重複して電流を流す(電圧を印加する)時間を減らすことによってブラシレスモータ10を駆動する第2の駆動モードで駆動する。
一方、スイッチングタイミング演算部14bの周囲温度が、所定の温度しきい値T以下であるときには、電機子コイル(4a〜4f)に流れる電流の切り替えタイミングにおいて、切り替え前に電流を流していた(電圧を印加していた)電機子コイルと、切り替え後に電流を流す(電圧を印加する)電機子コイルと、に重複して電流を流す(電圧を印加する)時間を増やすことによってブラシレスモータ10を駆動する第1の駆動モードで駆動する。
オーバーラップ制御部16bは、オーバーラップ時間算出部15bで算出されたオーバーラップ時間δを実現するために必要な、電機子コイル(4a〜4f)に流す電流の切り替えタイミングを算出する。
電流切り替えタイミング生成部17bは、オーバーラップ制御部16bで算出された電流の切り替えタイミングと、空調制御部24から得た、ブラシレスモータ10の目標回転数を示す空調制御信号に基づいて、各相(U,V,W)に流す電流の切り替えタイミングを決定する。このとき、空調制御信号によって、ブラシレスモータ10の回転数として、所定値(例えば1800rpm)よりも大きい値が指示されたときには、スイッチングタイミング演算部14bの周囲温度が所定の温度しきい値T以下であっても、ブラシレスモータ10を、オーバーラップ時間δが短い第2の駆動モードで駆動する。また、空調制御信号によって、ブラシレスモータ10の回転数として、所定値(例えば1800rpm)以下の値が指示されたときには、スイッチングタイミング演算部14bの周囲温度が所定の温度しきい値Tを超えていたら、ブラシレスモータ10を、オーバーラップ時間δが短い第2の駆動モードで駆動して、スイッチングタイミング演算部14bの周囲温度が所定の温度しきい値T以下であると判断されたら、ブラシレスモータ10を、オーバーラップ時間δが長い第1の駆動モードで駆動する。
[実施例2の処理の流れの説明]
次に、実施例2の具体的な処理の流れについて、図10のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS60)温度検出部30にて、スイッチングタイミング演算部14bの周囲温度を検出する。
(ステップ62)検出された温度が、所定の温度しきい値Tである85℃を超えているか否かを判断する。温度しきい値Tを超えているときはステップS70に進み、温度しきい値T以下であるときはステップS64に進む。
(ステップS64)ブラシレスモータ10の目標回転数が1800rpm以上であるか否かを判断する。この処理は、空調制御部24から出力された空調制御信号に基づいて行われる。目標回転数が1800rpm以上であるときはステップS70に進み、目標回転数が1800rpmよりも小さいときはステップS66に進む。
(ステップS66)ブラシレスモータ10の目標回転数が1125rpm以下であるか否かを判断する。この処理は、空調制御部24から出力された空調制御信号に基づいて行われる。目標回転数が1125rpm以下であるときはステップS68に進み、目標回転数が1125rpmよりも大きいときはステップS72に進む。
(ステップS68)電流切り替えタイミング生成部17bにおいて、ブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動する電流切り替えタイミング信号を生成して、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)をスイッチングしてブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動する。
(ステップS70)電流切り替えタイミング生成部17bにおいて、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する電流切り替えタイミング信号を生成して、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)をスイッチングしてブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。
(ステップS72)電流切り替えタイミング生成部17bにおいて、目標回転数に応じたオーバーラップ時間δを有する電流切り替えタイミング信号を生成して、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)をスイッチングしてブラシレスモータ10を駆動する。
(ステップS74)ブラシレスモータ10の停止命令の発生を検出する。もし停止命令があったときは、図10の処理を終了し、停止命令がないときは、ステップS60に戻る。
なお、本実施例2では、磁気センサ(IC1〜IC3)から出力される6つのセンサ信号の立ち下がりによって、MOSFET(Q1〜Q6)のゲート信号をタイミング制御する。この場合、各センサ信号の立ち下がりに対応して、次の立ち下がりに相当するタイミング(ロータ1の30°回転相当)を予測して、MOSFET(Q1〜Q6)のゲート信号をオン/オフ制御する。その際、センサ信号の立ち下がりエッジ間の時間からロータ1の回転数を算出し、その回転数に対応したオーバーラップ制御のためのオーバーラップ時間δを求める。そして、ハイサイド側(電源側)およびローサイド側(接地側)のMOSFET(Q1〜Q6)のゲート信号をオン/オフ制御する際、そのオーバーラップ時間δに応じたオーバーラップ制御を行う。なお、センサ信号の立ち上がりエッジを用いて同様の制御を行うこともできる。
また、オーバーラップ制御を行う際に、ハイサイド側のMOSFET(Q1〜Q3)の出力のみ切り替えタイミングを制御して出力オフのタイミングを遅らせても、固有振動音を小さくする効果が得られるが、ローサイド側のMOSFET(Q4〜Q6)の出力の切り替えタイミングも遅らせることによって、電機子コイル(4a〜4f)の全ての電流切り替え時にオーバーラップ制御を行うことになり、よりいっそう固有振動音を小さくすることができる。
次に、本発明の第3の実施形態である実施例3について、図11から図15を用いて説明する。本実施例3では、実施例1,2で説明した方法とは異なる方法によって、第1の駆動モードと第2の駆動モードを実現する。
[実施例3における駆動モードの説明]
図11(a)は、ブラシレスモータ10の状態を示す下面図である。ブラシレスモータ10自体は、実施例1で説明したものと全く同じであるが、図11(a)では、センサマグネット5が、メインマグネット2(界磁用永久磁石)に対して遅れ角30°になるように、シャフト6に取り付けられている。この配置のとき、最も発生トルクが大きくなって、効率がよくなる。本実施例3においては、図11(a)に示す状態でブラシレスモータ10を駆動するモードを第2の駆動モードとする。
一方、図11(b)は、同じブラシレスモータ10のセンサマグネット5を、遅れ角42°でシャフト6に取り付けた状態を示す図である。この配置のとき、ブラシレスモータ10の振動周波数とブラシレスモータを収納する収納ケースの固有振動周波数との共鳴によるうなり音が最も小さくなる。本実施例3においては、図11(b)に示す状態でブラシレスモータ10を駆動するモードを第1の駆動モードとする。
なお、図11(a),(b)のブラシレスモータ10も、電機子コイル(4a〜4f)に流れる電流を切り替えることによって回転方向Rの向きに回転する。その動作原理は、実施例1で説明した通りである。
そして、この電機子コイル(4a〜4f)に流れる電流を切り替えるタイミングを制御することによって、センサマグネット5の、メインマグネット2(界磁用永久磁石)に対する遅れ角を制御することができる。すなわち、ブラシレスモータ10を、図11(b)に示す状態(遅れ角42°)に設計しておき、電機子コイル(4a〜4f)に流れる電流を切り替えるタイミングを制御することによって、図11(a)に示す状態(遅れ角30°)とすることができる。
この制御は、遅れ角を42°から30°に進める制御であるため、遅れ角の進角制御と呼ぶ。そして、この場合、遅れ角の進角量dは12°となる。
すなわち、ブラシレスモータ10の回転数が少ない(回転速度が遅い)ときには、遅れ角の進角量dを0°(図11(b)の状態)として駆動し(第1の駆動モード)、ブラシレスモータ10の回転数が多い(回転速度が速い)ときには、遅れ角の進角量dを12°(図11(a)の状態)として駆動する(第2の駆動モード)ことによって、ブラシレスモータ10が低速で回転しているときは低騒音で駆動して、ブラシレスモータ10が高速で回転しているときは高効率で駆動することができる。
なお、ブラシレスモータ10の機械的な誤差などによって、うなり音が最も小さくなる遅れ角には幅があるため、余裕をみて、例えば遅れ角44°で取り付けておいて、誤差分を進角制御で補うようにする。本実際例3では、遅れ角の進角量dを8°(すなわち、第2の駆動モードにおける遅れ角は36°)とする進角制御を行って、駆動モード1を駆動モード2に切り替える例をあげて説明する。
[実施例3における進角制御の説明]
本実施例3では、具体的には、遅れ角の進角量dを図12に示すように制御する。すなわち、遅れ角の進角量dを0°に設定した、ブラシレスモータ10を低騒音で駆動する第1の駆動モードと、遅れ角の進角量dを8°に設定した、ブラシレスモータ10を高効率で駆動する第2の駆動モードを設定する。
そして、MOSFET(Q1〜Q6)を所定のタイミングでスイッチングする駆動制御部の温度が、予め設定した所定の温度しきい値T(例えば85℃)を超えたときには、ブラシレスモータ10を、目標回転数によらずに第2の駆動モード、すなわち、遅れ角の進角量dを大きく設定した状態(d=8°)で駆動する。また、駆動制御部の温度が予め設定した所定の温度しきい値T(例えば85℃)を超えていないときには、ブラシレスモータ10の目標回転数が低い(例えば1800rpm以下)ときには、ブラシレスモータ10を第1の駆動モード、すなわち、遅れ角の進角量dを小さく設定した状態(d=0°)で駆動して、ブラシレスモータ10の目標回転数が高い(例えば2500rpm以上)ときには、ブラシレスモータ10を第2の駆動モード、すなわち、遅れ角の進角量dを大きく設定した状態(d=8°)で駆動する。なお、所定の温度しきい値Tは85℃に限定されるものではなく、ブラシレスモータ10の運転条件や駆動制御部が置かれている環境に応じて適宜設定される。
さらに、ブラシレスモータ10の目標回転数が1800rpmと2500rpmの間にあるときには、ブラシレスモータ10の目標回転数に応じて遅れ角の進角量dを緩やかに切り替える。これは、遅れ角の進角量dを急激に変化させると、ブラシレスモータ10の回転トルクも急激に変化するため、モータの回転むらが発生するためである。
なお、ブラシレスモータ10の目標回転数のしきい値が、実施例2に記載した値(図8参照)と異なっているが、このしきい値は、個々のブラシレスモータ10の特性や、空調制御部24の仕様に基づいて設定される値であって、特定の値に限定されるものではない。
[実施例3の構成の説明]
次に、実施例3の具体的な構成について、図13,図14を用いて説明する。
図13は、本実施例3において、ブラシレスモータ10の回転制御を行うブラシレスモータ制御装置100cの全体構成を示すブロック図である。ブラシレスモータ制御装置100cの概略構成は、実施例1で説明したブラシレスモータ制御装置100a(図4参照)とほぼ等しいものであるため、ここでは、ブラシレスモータ制御装置100aとの差異のみ説明する。
ブラシレスモータ制御装置100cは、ブラシレスモータ制御装置100aが有していたスイッチングタイミング演算部14a(図4参照)と駆動電圧波形生成部23(図4参照)の代わりに、スイッチングタイミング演算部14cを有する。
スイッチングタイミング演算部14cはマイクロコンピュータで構成されており、さらに、進角量算出部15cと、進角制御部16cと電流切り替えタイミング生成部17cと、からなる。
進角量算出部15cは、温度検出部30が検出したスイッチングタイミング演算部14cの周囲温度に基づいて、ブラシレスモータ10の駆動モードを決定する。そして、スイッチングタイミング演算部14cの周囲温度所定の温度しきい値T(例えば85℃)を超えたときには、ブラシレスモータ10を、目標回転数によらずに第2の駆動モード、すなわち、ロータ1に取り付けられた界磁用永久磁石2に対する、ロータ1と一体に取り付けられたセンサマグネット5の遅れ角の進角量dを大きく設定した状態で駆動する。
一方、進角量算出部15cは、スイッチングタイミング演算部14cの周囲温度が予め設定した所定の温度しきい値T(例えば85℃)を超えていないときには、ブラシレスモータ10の目標回転数が低い(例えば1800rpm以下)ときには、ブラシレスモータ10を第1の駆動モード、すなわち遅れ角の進角量dを小さく設定した状態で駆動して、ブラシレスモータ10の目標回転数が高い(例えば1800rpmよりも多い)ときには、ブラシレスモータ10を第2の駆動モード、すなわち遅れ角の進角量dを大きく設定した状態で駆動する。なお、所定の温度しきい値Tは85℃に限定されるものではなく、ブラシレスモータ10の運転条件や駆動制御部が置かれている環境に応じて適宜設定される。
進角制御部16cは、進角量算出部15cで算出された遅れ角の進角量dを実現するために必要な、電機子コイル(4a〜4f)に流す電流の切り替えタイミングを算出する。
電流切り替えタイミング生成部17cは、進角制御部16cで算出された電流の切り替えタイミングと、空調制御部24から得た、ブラシレスモータ10の目標回転数を示す空調制御信号に基づいて、各相(U,V,W)に流す電流の切り替えタイミングを、図12に示す制御目標に基づいて決定する。
次に、各相(U,V,W)に流す電流の切り替えタイミングを決定する方法について、図14(a),(b)を用いて説明する。図14(a),(b)は、磁気センサ(IC1〜IC3)から出力されるセンサ信号と、電機子コイル(4a〜4f)に流す電流を切り替えるためにMOSFET(Q1〜Q6)をスイッチングするゲート信号との関係を示すタイムチャートである。
図14(a)に示すセンサ信号(SAH,SAL)は、それぞれ磁気センサIC1から出力されるセンサ信号、およびその反転信号を示す。同様にセンサ信号(SBH,SBL)は、それぞれ磁気センサIC2から出力されるセンサ信号、およびその反転信号を示し、センサ信号(SCH,SCL)は、それぞれ磁気センサIC3から出力されるセンサ信号、およびその反転信号を示す。以上の6信号によって、ロータ1が30°回転するごとに、電機子コイル(4a〜4f)に流す電流切り替えタイミングをきめ細かく制御することができる。
図14(b)は、進角制御を行った際に、MOSFET(Q1〜Q6)に印加するゲート信号を示し、ゲート信号(AT,BT,CT)はハイサイド側(電源側)のMOSFET(Q1〜Q3)、ゲート信号(AB,BB,CB)はローサイド側(接地側)のMOSFET(Q4〜Q6)に対するゲート信号を示す。
本実施例3では、前記した6つのセンサ信号(SAH,SAL,SBH,SBL,SCH,SCL)の立ち下がりによって、MOSFET(Q1〜Q6)のゲート信号をタイミング制御する。この場合、各センサ信号(SAH,SAL,SBH,SBL,SCH,SCL)の立ち下がりに対応して、次の立ち下がりに相当するタイミング(ロータ1の30°回転相当)を予測して、MOSFET(Q1〜Q6)のゲート信号をオン/オフ制御する。その際、センサ信号(SAH,SAL,SBH,SBL,SCH,SCL)の立ち下がりエッジ間の時間からロータ1の回転速度を算出し、その回転速度に対応した進角制御のための遅れ角の進角量dを求める。そして、MOSFET(Q1〜Q6)のゲート信号(AT,BT,CT,AB,BB,CB)をオン/オフ制御する際、その遅れ角の進角量dに応じた制御を行い、タイミング制御する。なお、センサ信号(SAH,SAL,SBH,SBL,SCH,SCL)の立ち上がりエッジを用いて同様の制御を行うこともできる。
[実施例3の処理の流れの説明]
次に、実施例3の具体的な処理の流れについて、図15のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS80)温度検出部30にて、スイッチングタイミング演算部14cの周囲温度を検出する。
(ステップS82)検出された温度が、所定の温度しきい値Tである85℃を超えているか否かを判断する。温度しきい値Tを超えているときはステップS90に進み、温度しきい値T以下であるときはステップS84に進む。
(ステップS84)進角量算出部15cにおいて、ブラシレスモータ10の目標回転数が2500rpm以上か否かを判断する。もし、目標回転数が2500rpm以上ならばステップS90に進み、それ以外のときはステップS86に進む。
(ステップS86)進角量算出部15cにおいて、ブラシレスモータ10の目標回転数が1800rpm以下か否かを判断する。もし、目標回転数が1800rpm以下ならばステップS88に進み、それ以外のときはステップS92に進む。
(ステップS88)電流切り替えタイミング生成部17bにおいて、ブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動するように遅れ角の進角量dを設定する電流切り替えタイミング信号を生成して、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)をスイッチングしてブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動する。
(ステップS90)電流切り替えタイミング生成部17bにおいて、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動するように遅れ角の進角量dを設定する電流切り替えタイミング信号を生成して、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)をスイッチングしてブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。
(ステップS92)電流切り替えタイミング生成部17bにおいて、目標回転数に応じた進角制御を行う。具体的には、目標回転数に応じた遅れ角の進角量dを設定する電流切り替えタイミング信号を生成して、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)をスイッチングしてブラシレスモータ10を駆動する。
(ステップS94)ブラシレスモータ10の停止命令の発生を検出する。もし停止命令があったときは、図15の処理を終了し、停止命令がないときは、ステップS80に戻る。
以上、説明したように、実施例1に係る車両用ブラシレスモータの制御方法によれば、車両用ブラシレスモータ10を、所定の回転数以下で回転させるときには、低騒音で回転させる第1の駆動モードで駆動して、所定の回転数よりも高い回転数で回転させるときには、高効率で回転させる第2の駆動モードで駆動するときに、ブラシレスモータ10のスイッチングタイミング演算部14a(駆動制御部)の温度が上昇して、所定の温度しきい値Tを超えたと判断されたときには、ブラシレスモータ10を、その回転数によらずに、高効率で回転させる第2の駆動モードで駆動するため、ブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動していた低回転領域であっても、スイッチングタイミング演算部14a(駆動制御部)の温度が上昇したときには、効率の高い第2の駆動モードで駆動されるため、回転数を低下させることなく運転を継続させることができる。そして、ブラシレスモータ10の運転効率が上がることによって、熱の発生が少なくなるため、スイッチングタイミング演算部14a(駆動制御部)のさらなる温度上昇を防止することができる。
また、実施例1に係る車両用ブラシレスモータの制御方法によれば、第1の駆動モードを、ブラシレスモータ10の電機子コイル(4a〜4f)の各接続点(Ua,Va,Wa)に印加する電圧波形e(t)を正弦波としてブラシレスモータ10を駆動する駆動モードとしたため、電機子コイル(4a〜4f)に発生する磁束の変化が穏やかとなって、ブラシレスモータ10を低騒音で駆動することができ、第2の駆動モードを、電圧波形e(t)を矩形波としてブラシレスモータ10を駆動する駆動モードとしたため、有効な回転トルクを生じる期間が長くなって、トルクの発生効率が向上してブラシレスモータ10の効率が向上する。そして、ブラシレスモータ10の電機子コイル(4a〜4f)に印加する電圧波形e(t)を変更するという簡便な方法によって、第1の駆動モードと第2の駆動モードを確実に切り替えることができる。
また、実施例2に係る車両用ブラシレスモータの制御方法によれば、第1の駆動モードを、車両に搭載されたブラシレスモータ10の電機子コイル(4a〜4f)の各接続点(Ua,Va,Wa)に印加する電圧を切り替える際に、切り替え前に電圧を印加していた電機子コイル(4a〜4fのいずれか)と、切り替え後に電圧を印加する電機子コイル(4a〜4fのいずれか)と、に重複して電圧を印加する時間(オーバーラップ時間δ)を増やすことによってブラシレスモータ10を駆動する駆動モードとしたため、電機子コイル(4a〜4f)に発生する磁束の変化が穏やかとなって、ブラシレスモータ10を低騒音で駆動することができ、第2の駆動モードを、車両に搭載されたブラシレスモータ10の電機子コイル(4a〜4f)の各接続点(Ua,Va,Wa)に印加する電圧を切り替える際に、切り替え前に電圧を印加していた電機子コイル(4a〜4fのいずれか)と、切り替え後に電圧を印加する電機子コイル(4a〜4fのいずれか)と、に重複して電圧を印加する時間(オーバーラップ時間δ)を減らすことによってブラシレスモータ10を駆動する駆動モードとしたため、有効な回転トルクを生じる期間が長くなって、トルクの発生効率が向上してブラシレスモータ10の効率が向上する。そして、ブラシレスモータ10の各相(U,V,W)に印加する電圧波形のオーバーラップ時間δを変更するという簡便な方法によって、第1の駆動モードと第2の駆動モードとを確実に切り替えることができる。
また、実施例3に係る車両用ブラシレスモータの制御方法によれば、第1の駆動モードを、車両に搭載されたブラシレスモータ10への通電状態を制御するMOSFET(Q1〜Q6)(スイッチング素子)の切り替えタイミングを、ブラシレスモータ10のロータ1に取り付けられたメインマグネット2(界磁用永久磁石)に対する、ロータ1と一体に取り付けられたセンサマグネット5の遅れ角の進角量dが大きくなるように制御して、ブラシレスモータ10を駆動する駆動モードとしたため、電機子コイル(4a〜4f)に発生する磁束の変化が穏やかとなって、ブラシレスモータ10を低騒音で駆動することができ、第2の駆動モードを、車両に搭載されたブラシレスモータ10への通電状態を制御するMOSFET(Q1〜Q6)(スイッチング素子)の切り替えタイミングを、メインマグネット2(界磁用永久磁石)に対するセンサマグネット5の遅れ角の進角量dが小さくなるように制御して、ブラシレスモータ10を駆動する駆動モードとしたため、有効な回転トルクを生じる期間が長くなって、トルクの発生効率が向上してブラシレスモータ10の効率が向上する。そして、ブラシレスモータ10の遅れ角の進角量dを変更するという簡便な方法によって、第1の駆動モードと第2の駆動モードとを確実に切り替えることができる。
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。