JP5944639B2 - Tgg単結晶育成におけるシーディング方法 - Google Patents
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一方、本出願人は、ガドリニウム・ガリウム・ガーネット(GGG)結晶の育成に関して、特に大型の単結晶において、肩部のクラックの発生を抑制し、かつ肩部を直胴部から切断するとき直胴部へのクラック伝播を防止できる育成方法を提案し、種結晶としてGGG結晶を用いて引き上げることで、歪みの少ないガーネット単結晶が得られることを確認している(特許文献2)。このように、従来は種結晶として、育成される結晶と同じ種類の結晶が使用されている。
前記GGG結晶育成の場合、GGG種結晶は、GGG融液に接触しても容易には溶融しないので、結晶育成を行うことができた。
そのため、光アイソレータ用ファラデー回転子として用いられるテルビウム・ガリウム・ガーネット(TGG)を主成分とする常磁性ガーネット結晶(組成式Tb3Ga5O12)をチョクラルスキー法によって容易に製造できるTGG単結晶育成におけるシーディング方法が必要とされていた。
が提供される。
また、種結晶の先端形状や表面粗さが特定の物性を有する種結晶を用いてTGG単結晶を育成すれば、クラックの発生が大幅に減少するので、これにより、製造困難であったTGG単結晶を、一般的な製造方法で容易に育成することができる。
そして、これにより得られるTGG結晶は、高品質であることから、可視光波長域光アイソレータの回転子として光特性の優れるTGG単結晶が比較的容易に得られ、可視光波長域用の光アイソレータを実用化することができる。
本発明におけるTGG育成では、種結晶として、育成するTGGと同じガーネット構造の単結晶ではあるが、育成するTGG単結晶とは組成の異なる結晶であり、かつ、融点が1750℃以上で、TGGとの格子定数差が±3%以下である結晶を使用する。
また、種結晶がTGG融液に溶けなくても、TGGとの格子定数差が±3%を超えると、育成結晶にクラックが生じるなどの不具合が発生する。したがって、融点が1750〜2000℃で、TGGとの格子定数差が±2.8%以下である結晶が好適である。
この転位をなくすために、図1のように種結晶のそばの部分の結晶を細くする。このように結晶を細くすると温度差も小さくなり、転位も減り、やがて全くなくすことができる。TGGでは一旦、転位がなくなると、その後かなりの温度差が結晶にかかっても転位が新たに発生しないという性質があるので、大きくても転位のない結晶ができる。
したがって、本発明では、種結晶の先端形状は先端直径を3mm以上5mm以下の先細形状とし、先端から5mm以内の表面を算術平均粗さRaで10μm以下に仕上げたものを使用することが好ましい。
本発明のシーディング方法では、TGG育成に使用されている公知の単結晶育成装置を用いることができる。
単結晶を製造するには、まず、上記の製造装置のルツボd内に原料cを投入して充填した後、高周波加熱コイルeに通電して上記ルツボdを高周波誘導加熱法により発熱させ、ルツボd内の原料cをその融点以上の温度に加熱して融解させる。
次に、上記引上げ軸gを降下させて融解した原料融液の中心部に種結晶fとなるLN等の単結晶片を接触させる。そして、ルツボdに投入する高周波電力を調節して種結晶fを中心に原料融液を徐々に固化させると同時に、上記種結晶fを回転させながら上昇させるという操作を連続的に行うことにより、略円筒形状の単結晶hを製造する。
本発明においては、単結晶用原料としては、Tb2O3、又はTb4O7から選ばれるTb酸化物、及びGa酸化物のGa2O3を含む酸化物粉末を使用する。それらの純度は4N以上であることが好ましい。Tb酸化物、及びGa酸化物は、基本的にはTb:Ga:O=3:5:12の比率となる量を用いる。
次に、この坩堝内の原料粉末を加熱融解させる。その際、炉内雰囲気は、酸素と窒素などの不活性ガスの混合ガス雰囲気にすることが好ましい。混合ガス雰囲気の成分組成、ガス流量は特に制限されるわけではないが、酸素を4体積%以下、さらに好ましくは2体積%以下含有し、ガス流量を1〜5L/分、さらに好ましくは2〜3L/分とすると、酸化ガリウムの昇華、坩堝の酸化抑制の点で好ましい。酸素量が過多の場合、坩堝が酸化して、シードタッチする際に酸化イリジウムが浮遊して酸化イリジウムから結晶の固化が発生し、シードタッチを妨げることがある。
本発明では、種結晶の組成を育成結晶と異ならせるようにしたから、加熱温度、加熱時間は、従来技術の範囲を採用することができる。
原料が融解したら、種結晶軸を適当な回転数で回転させながら降下させ、融液に種結晶を付ける。シーディングとは、種結晶が坩堝内に溶融した融液表面に接触することを表し、育成結晶の引き上げを開始する作業である。これはまた、タッチとも呼ばれる。タッチ温度は、種結晶が融液に接触する際の坩堝底の温度を熱電対の起電力で示したものである。
種結晶としては7mm角に切り出したTGG結晶(Tb3Ga5O12結晶、融点1725℃)を用いた。育成雰囲気は、酸素濃度2%、残りは窒素ガスとした雰囲気で行い、ガス流量は2.5リットル/分とした。その後、溶融物に種結晶を接触させ、種結晶回転速度0.5〜13rpm、引き上げ速度1mm/hで育成結晶を引き上げた。
タッチ温度が10.860mVで種結晶の溶融が始まり、これよりタッチ温度が高い10.890mVで融液の固化が始まるという温度の逆転が生じる要因の一つに、融液表面に坩堝の表面が酸化して浮遊したものを核として固化が始まるような状況がある。このような要因を排除することは、現実的には困難である。
これにより、シーディングの成功率を大幅に高めることが可能となった。
単結晶の育成は、チャンバ内を混合ガス雰囲気に保ち、回転数や引き上げ速度を調整して、ネック部および肩部を形成し、引き続き直胴部を形成する。結晶形状の調節は、育成中の結晶重量を測定し、直径や育成速度などを計算によって導き出し、回転速度や引き上げ速度を調整して行う。また、結晶重量の変化を加熱ヒータ投入電力にフィードバックして融液温度をコントロールする。
TGGの場合、育成軸方向の温度勾配は、一般的に数十〜100℃/cm程度であり、ガーネット結晶以外のものと比べると一桁以上も急峻である。温度勾配が異なる理由のひとつは、融液の粘性の違いによるもので、TGG結晶の原料融液の粘性が比較的低いので、低温度勾配下では、融液内対流が乱れやすく、安定した結晶成長が困難となることによる。
結晶肩部の広がり角θは、45°以上、好ましくは60°以上とする。広がり角θが45°未満であると、結晶に捩れ、割れが発生するので好ましくない。また、結晶の直胴部直径に対して絞りの内径が1.3倍を超えても、結晶に捩れ、割れが発生してしまう。捩れが発生した結晶では、サンプルが切り出しても、消光比が光アイソレーターとして使用可能な下限値30dBを下回るので好ましくない。
引き上げ速度は、特に制限されるわけではないが、例えば1〜5mm/hrとし、1〜3mm/hrとするのが好ましい。また、回転速度は、特に制限されるわけではないが、例えば5〜20rpmとし、8〜15rpmとするのが好ましい。
まず、純度99.99%の酸化テルビウム(Tb4O7)原料と、純度99.99%の酸化ガリウム(Ga2O3)とを準備した。この原料粉末を混合し、イリジウム製のるつぼに投入し、通常の高周波加熱炉を用いて溶融させて、CZ法によって結晶を育成した。イリジウム製のるつぼ形状は直径約160mm、高さ約160mmで、種結晶としては7mm角に切り出したTGG結晶(Tb3Ga5O12結晶、融点1725℃)を用いた。育成する結晶の直径は60mm、全長120mmとした。育成雰囲気は、酸素濃度2%、残りは窒素ガスとした雰囲気で行い、ガス流量は2.5リットル/分とした。その後、溶融物に種結晶を接触させ、種結晶回転速度0.5〜13rpm、引き上げ速度1.0mm/hで育成結晶を引き上げた。
比較例1(TG−047)の場合、タッチ温度を10.470mVに設定してTGG種結晶を融液に向かって下降させたところ、タッチ前に融液の固化が始まった。そこで、タッチ温度を10.860mVに漸増させ、再度降下させたところ、種結晶がタッチ前に溶融し始めた。そこで、タッチ温度を10.700mVに低下させ、再度降下させたところ、融液の固化が始まった。今度は、タッチ温度を10.760mVに漸増させ、再度降下させたところ、引上げを成功させることができた。
また、比較例2(TG−048)の場合、同様に7回行ったが、引上げを成功させることができず、再度、タッチ温度を10.855mVに設定して行ったところ、やっと引上げを成功させることができた(比較例3(TG−048再))。
。比較例4〜10でも、同様にして育成を行った。その結果は表2に示したとおり、成功率が低かった。
まず、純度99.99%の酸化テルビウム(Tb4O7)原料と、純度99.99%の酸化ガリウム(Ga2O3)とを準備した。この原料粉末を混合し、イリジウム製のるつぼに投入し、通常の高周波加熱炉を用いて溶融させて、CZ法によって結晶を育成した。イリジウム製のるつぼ形状は直径約160mm、高さ約160mmで、種結晶としては図1に示されるような7mm角(先端長さ8mm、先端直径3mm)に切り出したGSGG結晶(Gd3Sc2Ga3O12結晶、融点1750〜1850℃、TGGとの格子定数差1.7%)を用いた。育成する結晶の直径は60mm、全長120mmとした。育成雰囲気は、酸素濃度2%、残りは窒素ガスとした雰囲気で行い、ガス流量は2.5リットル/分とした。その後、溶融物に種結晶を接触させ、種結晶回転速度5.0〜15.0rpm、引き上げ速度1.0〜1.5mm/hで育成結晶を引き上げた。育成の結果は表3に示したとおり、いずれも一度でシーディングが成功し良好であった。
実施例1〜4と同様に、原料粉末を混合し、イリジウム製のるつぼに投入し、通常の高周波加熱炉を用いて溶融させて、CZ法によって結晶を育成した。イリジウム製のるつぼ形状は直径約160mm、高さ約160mmで、種結晶としては7mm角に切り出したYAG結晶(Y3Al5O12結晶、融点1970℃、TGGとの格子定数差2.753%)を用いた。育成する結晶の直径は60mm、全長120mmとした。育成雰囲気は、酸素濃度2%、残りは窒素ガスとした雰囲気で行い、ガス流量は2.5リットル/分とした。その後、溶融物に種結晶を接触させ、種結晶回転速度、0.5〜13.0rpm、引き上げ速度0.5〜13.0mm/hで育成結晶を引き上げた。育成の結果は表3に示したとおり、いずれも一度でシーディングが成功し良好であった。
種結晶として基部7mm、先端直径3〜5mmに切り出したGGG結晶(Gd3Ga5O12)の先端5mmまでを表面粗さRa10μm以下に研磨したものを用いて、実施例1と同様に実験を行った。GSGG種結晶やYAG種結晶同様、一度でシーディングが成功した。
以上、表3の結果から明らかなように、実施例1〜26では、種結晶として、TGG融液に溶けない結晶の融点として1750℃以上のGSGG、YAG(TGGとの格子定数の差が±3%以下)である結晶を採用したため、一度でシーディングが成功し、高品質のTGG結晶が得られている。また、実施例27では、種結晶として、先細形状で、先端から5mm以内の表面を特定値以下の算術平均粗さRaに仕上げた単結晶を用いており、格子定数においてGGG種結晶はTGG単結晶に最も近いことから、シーディング後の引き上げ工程において、TGG単結晶に格子定数不整合に起因するクラックの発生頻度をより低減させることができる。
これに対して、比較例1〜10では、表2の結果から明らかなように、種結晶として、育成する結晶と同じTGGを用いたために、シーディングの成功率が低く、高品質のTGG結晶を得ることができなかった。
b 保温材
c 原料
d ルツボ
e 高周波加熱コイル
f 種結晶
g 引上げ軸
h 単結晶
Claims (2)
- 単結晶用原料として、Tb 2 O 3 、又はTb 4 O 7 から選ばれるTb酸化物、及びGa酸化物のGa 2 O 3 を含む酸化物粉末を使用し、該Tb酸化物、及びGa酸化物がTb:Ga:O=3:5:12の比率となる量を混合し加熱融解して製造した原料融液に種結晶を接触させて、Cz法(回転引き上げ法)により、成長結晶を引き上げるテルビウム・ガリウム・ガーネット(TGG)単結晶の育成におけるシーディング方法において、
種結晶として、TGGと同じガーネット構造のYAG単結晶、GGG単結晶又はGSGG単結晶で、融点が1750℃以上、TGGとの格子定数差が±3%以下の単結晶を選択し、かつ該種結晶の先端直径を3mm以上5mm以下の先細形状とし、先端から5mm以内の表面を算術平均粗さRaで10μm以下に仕上げて用いることを特徴とするTGG単結晶育成におけるシーディング方法。 - 炉内は、酸素を4体積%以下含有する不活性ガス雰囲気とし、ガス流量を1〜5L/分
とすることを特徴とする請求項1に記載のTGG単結晶育成におけるシーディング方法。
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