JP5889130B2 - 誘導加熱調理器およびその制御方法 - Google Patents

誘導加熱調理器およびその制御方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5889130B2
JP5889130B2 JP2012146789A JP2012146789A JP5889130B2 JP 5889130 B2 JP5889130 B2 JP 5889130B2 JP 2012146789 A JP2012146789 A JP 2012146789A JP 2012146789 A JP2012146789 A JP 2012146789A JP 5889130 B2 JP5889130 B2 JP 5889130B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
temperature
top plate
specified
heating
heated
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012146789A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014011020A (ja
Inventor
一法師 茂俊
茂俊 一法師
健太郎 柳澤
健太郎 柳澤
直 藤城
直 藤城
和裕 亀岡
和裕 亀岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Electric Home Appliance Co Ltd
Mitsubishi Electric Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Home Appliance Co Ltd
Mitsubishi Electric Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Electric Home Appliance Co Ltd, Mitsubishi Electric Corp filed Critical Mitsubishi Electric Home Appliance Co Ltd
Priority to JP2012146789A priority Critical patent/JP5889130B2/ja
Publication of JP2014011020A publication Critical patent/JP2014011020A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5889130B2 publication Critical patent/JP5889130B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Induction Heating Cooking Devices (AREA)

Description

本願発明は、誘導加熱調理機器に関し、特に鍋などの被加熱体の表面温度を正確に推定するとともに、被加熱体を適正な温度で加熱することができる誘導加熱調理機器、およびその制御方法に関するものである。
これまでの誘導加熱調理機器において、鍋の表面温度を正確に測定し、これに基づいて加熱コイルに適正な電力を供給することにより、最適な調理方法の実現に対する市場の強い要請があった。そして従来の誘導加熱調理機器の多くは、一般に、トッププレートの下面に直接的に接触させたサーミスタや熱電対など感熱素子(接触式温度センサ)を用いてトッププレートの温度を測定し、熱平衡状態にあるときのトッププレートの温度と鍋の表面温度が一定の関係を有することに基づいて、トッププレートの温度から鍋の表面温度を検知するものであった。
これに対し、たとえば特許文献1に記載の誘導加熱調理機器のように、トッププレートの下方に配置された赤外線センサなどの光センサ(光学式温度センサ)を用いて、トッププレートを介して通過する赤外線などの放射エネルギを測定することにより、鍋の表面温度を検知するものも提案されている。
特開2004−227976号公報(図1)
しかしながら、接触式温度センサを用いて測定されたトッププレートの温度は、耐熱ガラスなどで作製されたトッププレートの熱抵抗が大きいため、鍋の表面温度をリアルタイムで反映するものではなく、とりわけ加熱開始直後において、トッププレートの温度から検知された鍋の表面温度が実際の鍋の表面温度に遅れて上昇するため、加熱コイルへの給電を適正に制御することはできなかった。
一方、光学式温度センサは、高温物体からの放射エネルギが表面温度の4乗に比例することを利用するものであるところ、特に、通常の実用調理時に鍋の表面が達する温度(約150℃)以下の比較的に低い温度においては、鍋の表面からの放射エネルギは非常に小さいため、鍋の表面温度を正確に検知することができなかった。すなわち、光学式温度センサを用いて検知された鍋の表面温度は、とりわけ実用調理温度より低いとき(加熱開始直後)、温度検知精度が低く、接触式温度センサを用いた場合と同様、加熱コイルへの給電を適確に制御することはできなかった。また、光学式温度センサを用いて温度を検知することは、たとえば鍋の表面状態(汚れ、光沢の有無など)により検知精度が損なわれやすく、その他火力や、内容物、周囲環境などにより影響を受けやすく、鍋の表面温度の正確な検知をより困難なものとしていた。
本願発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、被加熱体が載置されるトッププレートと、前記トッププレートの下方に配置された、前記被加熱体を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルに高周波電流を供給する駆動回路と、前記トッププレートの下方に配置された、該トッププレートの温度(T)を検出する温度センサと、前記温度センサに接続された温度推定回路と、前記駆動回路を制御する制御回路とを備えた誘導加熱調理器であって、
前記温度推定回路は、
a)前記被加熱体の温度上昇率が所定の閾値以下となるときの前記被加熱体の規定表面温度(Tsh)、および前記被加熱体が規定表面温度(Tsh)に達するまでの規定加熱時間(τ)の関係を記憶し、
b)前記メモリ内の前記規定加熱時間(τ)における前記規定表面温度(Tsh)、前記規定加熱時間(τ)が経過したときの前記トッププレートの温度(T)およびその時間変化率(ΔT/Δt)に基づいて、前記被加熱体の表面温度(T)を推定し、
前記制御回路は、前記温度推定回路で推定された推定温度(T)を用いて前記駆動回路を制御することを特徴とするものである。
本願発明に係る誘導加熱調理器によれば、被加熱体とトッププレートとの間の間隔が不明であっても、この間隔を規定表面温度および規定加熱時間から算出することにより、被加熱体である鍋の表面温度を正確に、かつ応答性よく(リアルタイムで)検知し、加熱コイルに適正な高周波電流供給することができる。
本願発明に係る誘導加熱調理器の全体を概略的に図示する斜視図である。 図1の誘導加熱調理器のII−II線から見た拡大断面図である。 図2の破線で示す領域を拡大した拡大部分断面図である。 水を入れない鍋を加熱したときの鍋の実測温度と、本願発明によりトッププレートの実測温度に基づいて推定される鍋の推定温度との時間的推移を示すグラフである。 水を入れた鍋を加熱したときのトッププレートの実測温度と、水の実測温度と、鍋の底板の実測温度および推定温度とをプロットしたグラフである。 本願発明に係る誘導加熱調理器の回路ブロック図である。 所定の火力で鍋内の水を加熱したとき、通常の沸騰が生じる場合における水および鍋の底板の温度をプロットしたグラフである。 所定の火力で鍋内の水を加熱したとき、突沸現象が生じる場合における水および鍋の底板の温度をプロットしたグラフである。
以下、添付図面を参照して本願発明に係る誘導加熱調理器の実施の形態を説明する。各実施の形態の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(たとえば「上方」および「下方」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本願発明を限定するものでない。また以下の添付図面において、同様の構成部品については同様の符号を用いて参照する。
実施の形態1.
図1〜図6を参照しながら、本願発明に係る誘導加熱調理器の実施の形態1について以下詳細に説明する。図1は、本願発明に係る誘導加熱調理器1の全体を概略的に図示する斜視図である。図1に示す誘導加熱調理器1は、概略、筐体2、その上側表面のほぼ全体を覆う耐熱性ガラスなどで形成されたトッププレート3、左右対称的に配置された誘導加熱式の一対のIH加熱部4a,4b、輻射加熱式のラジエント加熱部5、および魚などの調理に適したグリル部6を有する。なお各IH加熱部4a,4bは、トッププレート3と平行に螺旋状に捲回されてなる加熱コイル20(図2)を有する。
なお、以下の実施形態において、グリル部6が筐体2の左側に偏って配置された、いわゆるサイドグリル構造を有する誘導加熱調理器1について例示的に説明するが、本願発明は、これに限定されず、グリル部6が筐体2のほぼ中央に配置されたセンタグリル構造を有する誘導加熱調理器、またはグリル部6を具備しない誘導加熱調理器にも同等に適用することができる。
また誘導加熱調理器1は、ユーザがIH加熱部4a,4b、ラジエント加熱部5、およびグリル部6を操作するために用いられる操作パネル7および火力調整ダイヤル8a,8b,8c、ならびにこれらの制御状態を表示するための液晶表示部9を備える。さらに誘導加熱調理器1は、筐体2の後壁に隣接してトッププレート3上に設けられた吸気孔10および排気孔11とを有する。
図2は、図1の誘導加熱調理器1のII−II線から見た拡大断面図であって、被加熱体P(以下、単に「鍋」という。)がトッププレート3上に載置された状態を示すものである。本願発明に係る誘導加熱調理器1は、トッププレート3の下側表面に当接するように配置されたサーミスタなどの温度センサ30を有し、トッププレート3の温度(T)を測定することができる。
なお詳細後述するが、誘導加熱調理器1は、各IH加熱部4の加熱コイル20に高周波電流を供給するための駆動回路(インバータ回路)60と、温度センサ30で測定されたトッププレート3の温度(T)から推定された鍋Pの表面温度、および火力調整ダイヤル8などによりユーザが設定した「火力」(加熱コイル20に供給される電力(W))に基づいて、加熱コイル20に適正な高周波電流を供給するように駆動回路60を制御する制御回路50を有する(図6)。
次に図3および図4を参照しながら、本願発明に係る、温度センサ30で測定されたトッププレート3の温度(T)から被加熱体Pの表面温度の推定する方法(推定原理)について説明する。図3は図2の破線22で示す領域を拡大した部分拡大断面図である。
制御回路50は、ユーザが操作パネル7および火力調整ダイヤル8などを用いて設定した所望の火力に従って駆動回路60を駆動し、鍋Pの下方に設けられた加熱コイル20に高周波電流が供給されると、加熱コイル20の周囲における鍋Pの底板Bを含む交流磁場(閉磁路)が形成される。このとき鍋Pの底板Bの表面近傍に渦電流が形成され、そのジュール熱により鍋Pの底板Bが加熱される。すなわち被加熱体である鍋Pが直接的に誘導加熱される。
鍋Pの底板Bが加熱されて生じた熱量は、鍋Pに収容された水分など食材Fを調理加熱するとともに、底板Bの下方にあるトッププレート3にも伝わる。このとき、とりわけ鍋Pの底板B(およびトッププレート3)は、完全に平坦に形成すること(平坦度をゼロとする)ことはできず、微小な湾曲形状を有するため、トッププレート3との間には所定の間隔または隙間(δ)を有する空気層Aが形成される。
ここで鍋Pの底板Bの下面からトッププレート3に伝導する熱量Q(すなわち鍋Pの底板Bの下面とトッププレート3との間に形成される空気層Aを伝導する熱量Q)について考える。このとき熱量Qは、一般に、鍋Pの底板Bの温度(T)とトッププレート3の表面の温度(T)との温度差(T−T)が大きいほど、両者が対向する面積(S)が大きいほど、また隙間(δ)が小さいほど大きい。また熱量Qは、空気層Aの熱伝導率(λ)にも依存する。したがって、鍋Pの底板Bの下面からトッププレート3に単位時間あたりに伝導する熱量Qは、次式で表される。
Figure 0005889130
さらにトッププレート3に伝導する熱量Qは、トッププレート3の上面から下面に伝わる。このとき、耐熱ガラスなどで形成されたトッププレート3を顕熱蓄熱材として見ると、その蓄熱量Qは、トッププレート3の質量(M)、比熱(c)および温度(T)の時間変化率(ΔT/Δt)を用いて次式で表される。
Figure 0005889130
ここで、トッププレート3の熱伝導率(λ)が無限大である(すなわちTとTとが等しい。T=T)と仮定すると、[数1]および[数2]の左辺の熱量Q,Q(Q=Q)が等しいので、これらを連立させて整理すると次式を得ることができる。
Figure 0005889130
:鍋Pの推定温度
:温度センサで測定されたトッププレートの温度
δ:鍋Pとトッププレートとの間の間隔
ρ:トッププレートの密度
:トッププレートの比熱
δ:トッププレートの厚み
λ:空気の熱伝導率
すなわち、上記係数Cはトッププレート3により一意的に決まる定数であるので、鍋Pの底板Bの温度Tは、鍋Pの底板Bの下面とトッププレート3との間に形成される空気層Aの間隔(δ)、および温度センサ30が測定するトッププレート3の温度Tとその時間変化率(ΔT/Δt)を用いて表すことができる。
上述のように、トッププレート3の熱伝導率(λ)が無限大であると仮定しても、上記[数3]に示す関係が成り立つことを検証するために以下の評価実験1を行った。
なお、この評価実験1においては、食材F等の対流による伝熱効果を排除するために、鍋Pの内部には食材Fを収容せず、いわゆる「空焚き状態」で鍋Pを加熱コイル20により誘導加熱した。
[評価実験1]
図4は、加熱コイル20に供給される電力を1000Wとしたとき、
i)温度センサ30で測定したトッププレート3の実測温度(T)、
ii)別の温度センサ(図示せず)で測定した鍋Pの底板Bの実測温度(T)、および
iii)上記[数3]で求められた鍋Pの推定温度(T)、
の時間的推移をプロットして得たグラフである。このとき空気層Aの間隔(δ)が1.5mmに規定されるように、鍋Pとトッププレート3との間にスペーサ(厚み1.5mm、図示せず)を配置し、加熱コイル20に250秒間高周波電流を供給して鍋Pを加熱した後、加熱コイル20への給電を停止した。
図4のグラフから明らかなように、加熱開始250秒経過した時、鍋Pの実測温度(T)が200℃以上に達しているのに対し、温度センサ30で測定したトッププレート3の実測温度(T)は約70℃であり、両者において約130℃以上の温度差があり、応答性が非常に悪い。
一方、上記[数3]で求められた鍋Pの推定温度(T)は、加熱開始直後から全般的に鍋Pの実測温度(T)に追従性よく近似(推定)している。したがって、上記[数3]で規定される本願発明に係る被加熱体温度の推定方法によれば、トッププレート3の実測温度(T)から鍋Pの表面温度(T)を極めて精緻に追従性よく推定できることが図4のグラフから確認された。
このようにトッププレート3の構成材料であるガラスの実際の熱伝導率(λ)は、約1W/(m・K)であるにもかかわらず、これを無限大であると仮定して上記[数3]を導出したが、上記[数3]に基づいて得られた鍋Pの推定温度(T)は、鍋Pの実測温度(T)を正確に近似するものであることが確認された。
換言すると、トッププレート3を構成するガラスの密度、比熱、および厚みは、設計事項であり既知である(上記係数Cが一意的に決まる)ので、鍋Pとトッププレート3との間の間隔(δ)、トッププレート3の実測温度(T)およびその時間変化率(ΔT/Δt)に基づいて、上記[数3]を用いて鍋Pの温度を追従性よく(リアルタイムで)正確に推定することができる。
ところで上記評価実験1では、鍋Pとトッププレート3との間に一定の厚みを有するスペーサを配置することにより、鍋Pとトッププレート3との間の間隔(δ)が一定となるように設定した。しかしながら、実際の誘導加熱調理器1では、トッププレート3上にスペーサが配設されないものも数多くあり、鍋Pの底板B(またはトッププレート3の上面)に凹凸がある場合や、鍋Pとトッププレート3との間に異物(食材Fの小断片)が介在する場合、間隔(δ)は、必ずしも一定でなく、むしろ使用毎に変動することがある。
そこで本願発明に係る誘導加熱調理器1は、以下詳細説明するように、上式[数3]を用いて、鍋Pの底板温度を推定する前に、鍋Pとトッププレート3との間の間隔(δ)を、後述する規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)と、規定加熱時間経過後の所定の時間におけるトッププレート3の温度(T)と、その時間変化率(ΔT/Δt)とから、鍋Pとトッププレート3との間の間隔(δ)を推定しようとするものである。このように間隔(δ)を推定できることを確認するために、以下の評価実験2を行った。
[評価実験2]
評価実験1とは異なり、評価実験2では鍋Pに0.75リットルの水を入れ、加熱コイル20には比較的に大きな電力(3000W)を駆動回路60より供給した。このとき、
i)温度センサ30で測定したトッププレート3の実測温度(T)、
ii)別の温度センサ(図示せず)で測定した鍋Pの底板Bの実測温度(T)、および
iii)さらに別の温度センサ(図示せず)で測定した鍋P内の水の実測温度(T)、
の時間的推移をプロットして図5のグラフを得た。
上記[数1]と同様、鍋Pの底板Bと食材F(水)との間の熱伝達量Qは、一般に、熱伝達係数h、過熱度ΔTbf(底板Bと水との温度差(T−T)に相当)、および伝達面積Aを用いて次式で表される。
Figure 0005889130
すなわち熱伝達量Qは、熱伝達係数hおよび過熱度ΔTbfに依存して変動する。
図5のグラフにおいて、鍋Pの底板Bの実測温度(T)に着目する。加熱コイル20に給電(加熱調理開始)した直後においては、鍋Pの底板Bの温度(T)と食材F(水)との間の温度差はあまり大きくなく、鍋Pの底板Bとこれに収容された水との間でほとんど熱交換がされていないため(自然対流が少なく、熱伝達係数hが小さいため)、ある一定の時間(τ、たとえば約20秒)が経過するまでは、鍋Pの底板Bの実測温度(T)は急激に上昇する。
しかし、さらに一定の時間(τ、たとえば約50秒まで)加熱コイル20への給電が続くと、鍋Pの底板Bの実測温度(T)が上昇することに伴い、すなわち過熱度ΔTbfが大きくなるほど、鍋P内での食材F(水)の自然対流が促進され、鍋Pと水の間の熱伝達係数が大きくなり、すなわち鍋Pの底板Bから食材F(水)に熱が伝わりやすくなるので、鍋Pの底板Bの温度(T)は、一時的に緩やかに上昇し、実質的にほぼ一定に推移する。すなわち、鍋Pの底板Bの実測温度(T)の温度上昇率ΔT/Δtは所定の閾値以下となる。
さらに一定の時間(τ、たとえば約80秒まで)加熱コイル20に給電されるとき、鍋Pの底板Bでサブクール沸騰が生じ始め、気泡が底板B内に付着して、底板Bと水との間の接触面積が低減するので、伝達面積Aが小さくなり、底板Bから水に伝熱しにくくなり、鍋Pの底板Bの温度(T)の上昇率が増大する。
さらに続けて一定の時間(τ、たとえば約130秒まで)加熱コイル20に給電すると、鍋P内の食材F(水)は、安定した飽和沸騰状態になり(沸騰が活発化し)、鍋Pの底板Bで生じるジュール熱と水の気化熱として奪われる熱とが均衡して、鍋Pの底板Bの温度(T)は一定の温度で維持される。飽和沸騰状態にあるとき、過熱度ΔTbfおよび熱伝達係数hは、主に、鍋Pの底板Bの表面性状や、食材Fの物性値、加熱コイル20への加熱電力(W)に依存し、図5において(供給電力が3000Wのとき)、底板Bの温度(T)は約140℃で維持され、過熱度ΔTbfは約40℃となっている。
上記のように、時間(τ)から時間(τ)までの期間において、鍋Pの底板Bの実測温度(T)が一時的にほぼ一定に推移し、その温度上昇率は所定の閾値以下となるが、本願発明においては、この温度を「規定表面温度(Tsh)」と定義し、規定表面温度(Tsh)に達するまでの時間を「規定加熱時間(τ)(τ<τ<τ)」と定義する。そして本願発明者は、上記一連の沸騰過程において、規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)は、主として、鍋Pの底板Bとトッププレート3との間の間隔(δ)および加熱コイル20への供給電力(W)に依存し、誘導加熱調理器1としての構造にも若干の影響を受けることを確認した。すなわち本願発明者は、この評価実験2において、特定の誘導加熱調理器1を限定すれば、間隔(δ)が一定であると仮定すると、加熱コイル20に供給される供給電力(W)に応じて、上記規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)を特定できることを確認した。換言すると、上記規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)を特定した後においては、特定の誘導加熱調理器1における、間隔(δ)は、後述のように、加熱コイル20に供給される供給電力(W)依存して推定することができる。
具体的には、評価実験2で用いられた誘導加熱調理器1において、加熱コイル20への供給電力(W)が3000Wであるとき、図5から読み取れるように、規定表面温度(Tsh)は約120℃であり、規定加熱時間(τ)はたとえば約40秒(約20秒〜約50秒)である。グラフ等を用いて特に図示しないが、他の誘導加熱調理器を用いて同様の評価実験を行った場合には、その構造に起因して、規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)が上記のものとは多少異なることがある。ただし本願発明に係る誘導加熱調理器1は、加熱コイル20への供給電力(W)に応じた規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)を出荷前実験等で予め設定しておき、温度推定回路40内のメモリ(図示せず)に記憶しておくように構成されている。また温度推定回路40は、規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)が所定の供給電力(W)の関数で表現できるならば、その関数式をメモリに記憶させ、供給電力(W)に応じて規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)を求めるようにしてもよい。いずれにしても本願発明に係る温度推定回路40は、加熱コイル20への供給電力(W)に応じて、規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)を特定することができる。
したがって本願発明に係る温度推定回路40は、上記[数3]を変形した次式を用いて、上記のように特定された規定表面温度(Tsh)と、規定加熱時間(τ)が経過した時に温度センサ30で測定されたトッププレートの温度(T)と、その時間変化率とにより、鍋Pの底板Bとトッププレート3との間の間隔(δ)を算出することができる。
Figure 0005889130
ここで、Tg,t=τは、加熱コイル20への給電開始後、規定加熱時間(τ)経過した時における温度センサ30で測定されたトッププレートの温度(T)であり、(ΔT/Δt)t=τはその時の時間変化率を示すものである。また、各係数λ,ρ,c,δは上記と同様で、λは空気の熱伝導率、ρはトッププレート3の密度、cはトッププレート3の比熱、δはトッププレート3の厚みであり、既知の設計値である。

本願発明に係る温度推定回路40は、たとえば加熱コイル20への給電開始後、規定加熱時間(τ)の約40秒が経過したときに、鍋Pの底板Bが規定表面温度(Tsh)の約120℃に達するものとして、トッププレートの温度(T)およびその時間変化率を特定して、鍋Pの底板Bとトッププレート3との間の間隔(δ)を、上記[数5]から求めるように構成されている。
なお、規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)は、加熱コイル20に供給される電力(W)に応じた規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)を、出荷前実験等で予め設定しておき、温度推定回路40内のメモリ(図示せず)に記憶させておいてもよいし、規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)が所定の供給電力(W)の関数で表現できるならば、その関数式をメモリに記憶させ、供給電力(W)に応じて規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)を求めるようにしてもよい。
本願発明に係る誘導加熱調理器1の温度推定回路40は、供給電力(W)に応じた規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)を特定または記憶した上で、規定表面温度(Tsh)と、規定加熱時間(τ)経過後の温度センサ30で測定されたトッププレート3の温度(T)と、その時間変化率(ΔT/Δt)t=τとを上式[数5]に代入して、鍋Pの壁底とトッププレート3との間の間隔(δ)を算出することができる。
なお、規定加熱時間(τ)は、鍋Pの底板Bの実測温度(T)と食材F(水)との間の温度差が大きく、熱交換係数hが大きいために、鍋Pの底板Bの温度(T)が一時的に緩やかに上昇している期間(τ<τ<τ)として説明したが、これに厳格に限定されるものではなく、底板Bでサブクール沸騰が生じている期間(τ、τ<τ<τ)においても、水の自然対流が顕著であり(熱交換係数hが大きく)、鍋Pの底板Bの温度(T)と間隔(δ)との間に相関関係が認められることから、規定表面温度(Tsh)が得られる規定加熱時間(τ)をたとえば約20秒から約80秒まで(τ<τ<τ)としてもよい。ただし、食材F(水)が飽和沸騰状態にあって、鍋Pの底板Bの温度(T)がたとえば約140℃で一定の温度に維持される期間(τ、たとえば約130秒以後)においては、間隔(δ)に依存しないため、この期間を規定加熱時間(τ)とすることは妥当ではない。
換言すると、規定表面温度(Tsh)に達する規定加熱時間(τ)として、時間(τ、たとえば約20秒)から時間(τ、たとえば約80秒)までとしてもよい。なお、トッププレート3の温度は、通常10秒程度遅延して温度センサ30により測定されるので、規定加熱時間(τ)として約30秒〜約90秒としてもよい。ただし、間隔(δ)は、より早期に算出して、その後の鍋Pの温度(T)の推定に用いるという観点から、加熱開始後の初期段階で推定することが好ましく、規定加熱時間(τ)として約30秒〜約60秒とすることが望ましい。
以上のように、鍋Pの底板Bとトッププレート3との間の間隔(δ)を算出した後においては、本願発明の温度推定回路40は、上記[数3]を用いて、算出された間隔(δ)、規定加熱時間(τ)経過後に温度センサ30で測定されたトッププレート3の温度(T)およびその時間変化率(ΔT/Δt)より鍋Pの温度を推定することができる。こうして推定された鍋Pの推定温度(T)は、同様に図5においてプロットされており、一定の時間(τ、とりわけ80秒)が経過した後において、鍋Pの実測温度に追従性よく近似(推定)するものとなっている。図5においては、鍋Pの底板Bの実測推温度(T)は、水の沸点である100℃より過熱度(約40℃)だけ高い約140℃で安定して推移している。
なお、図5(評価実験2)で説明した具体例では、鍋Pに収容される食材F(水)は、当初室温状態にあるものとして説明したが、連続して異なる食材Fを調理する場合や、同一の食材Fを再加熱する場合には、温度センサ30で検出されるトッププレート3の実測温度(T)が規定表面温度(Tsh)を超えることがある。このとき、加熱開始後、所定の規定加熱時間(τ)が経過したときの鍋Pの底板温度を規定表面温度(Tsh)と設定すると、上述のようには間隔(δ)を正確に推定することができない。
そこで、加熱開始直後のトッププレート3の実測温度(T)と、規定表面温度(Tsh)とを比較して、
a)加熱開始直後のトッププレート3の実測温度(T)が規定表面温度(Tsh)より大きいとき(T−Tsh>0)、および加熱開始直後のトッププレート3の実測温度(T)と規定表面温度(Tsh)との差が所定の温度差(T)より小さいとき(Tsh−T>T>0:Tは所定温度で、たとえば10℃である。)には、間隔(δ)等を算出した後に鍋Pの温度(T)を算出するという本願発明に係る温度推定処理を中止し、
b)加熱開始直後のトッププレート3の実測温度(T)が規定表面温度(Tsh)より大きく、その温度差が所定温度以上であるとき(Tsh−T>T>0)に限って、本願発明に係る温度推定処理を行うことが好ましい。これにより、間隔(δ)等を算出した後に鍋Pの温度(T)を推定する際の精度(温度推定精度)を向上させることができる。
鍋Pの底板Bとトッププレート3との間の間隔(δ)は、通常、0.1mm(0mmも考えられる)〜3mmの範囲で変動し得、間隔(δ)の最小値に対する最大値は30倍ともなり、間隔(δ)自体を直接的に推定する場合に生じ得る誤差は相当大きくなる。一方、供給電力(W)が3000Wであるとき、たとえば規定表面温度(Tsh)を120℃とした場合、加熱開始直後のトッププレート3の実測温度(T)が室温の30℃であるとき、上記[数5]の右辺の(Tsh−Tg,t=τ)の項のばらつきは、70℃(Tshが120℃で、Tg,t=50が50℃のとき)から、110℃(Tshが140℃で、Tg,t=20が30℃のとき)の範囲であり、ばらつきの最小値70℃に対する最大値110℃は1.57倍程度であり、間隔(δ)自体に生じ得るばらつきより実質的に低減することができ、温度推定精度を相当に改善することができる。
なお、被加熱体が油の場合、規定表面温度(Tsh)は140℃から200℃程度が好ましい。
なお、鍋Pの底板Bの推定温度(T)を求めるための上記[数3]に、間隔(δ)を求めるための[数5]を代入して、本願発明に係る温度推定回路40は、規定表面温度(Tsh)、規定加熱時間(τ)経過後のトッププレート3の温度(Tg,t=τ)およびその時間変化率(ΔT/Δt)t=τから次式を用いて、鍋Pの底板温度(T)を直接的に算出することもできる。
Figure 0005889130
なお、上式の右辺にあるトッププレート3の温度(T)およびその時間変化率(ΔT/Δt)は、鍋Pの底板Bの温度推定精度をいっそう向上させるために、規定加熱時間(τ)経過後の複数の時点において測定および算出した温度(T)およびその時間変化率(ΔT/Δt)の平均値を用いることが好ましい。
同様に、誘導加熱調理器1は、温度推定精度のさらなる改善のために、より数多くの温度センサ30(詳細図示せず)を用いてトッププレート3の温度(T)を測定することが好ましい。より数多くの温度センサ30を用いることにより、局在的に温度が高い部分を検知した場合には、その測定値を鍋Pの温度推定に利用しないことにより、適正な温度推定を実現することができる。
図6は本願発明に係る実施の形態1による誘導加熱調理器1の回路ブロック図である。誘導加熱調理器1は、上述のように、加熱コイル20に高周波電流を供給するための駆動回路(インバータ回路)60と、トッププレート3の温度(T)を測定するサーミスタなどの温度センサ30と、規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)等から間隔(δ)を求め、トッププレート3の実測温度(T)等から鍋Pの表面温度を推定する温度推定回路40とを有する。また誘導加熱調理器1は、火力調整ダイヤル8などの設定機器70によりユーザが設定した「火力」(供給電力(W))に基づいて、加熱コイル20に適正な高周波電流が供給されるように駆動回路60を制御する制御回路50を有する。本願発明に係る制御回路50は、上述のように精緻に追従性よく推定された鍋Pの温度(T)に関する情報を温度推定回路40から受け、より適確な高周波電流が供給されるように駆動回路60を制御するものである。
なお誘導加熱調理器1は、好適には、詳細後述するが、鍋Pの推定温度が異常に高温に達した場合など、基準値を越える異常な使用状態であることを検知した場合、警告機器80からの警告信号を受け、警告をユーザに与えるための警告音を発するビーパーまたは警告表示などを表示する液晶表示部9などの警告機器80を有する。
図6を参照しながら、本願発明に係る誘導加熱調理器1の動作について説明する。ユーザにより鍋またはフライパンなどの被加熱体Pがトッププレート3上に載置され、操作パネル7および火力調整ダイヤル8などの設定機器70により火力が設定されると、これに応じて制御回路50が駆動回路60を制御して、加熱コイル20に高周波電流を供給する。加熱コイル20に高周波電流が供給されると、加熱コイル20の周りに高周波磁界が発生し、鍋Pの底板Bに渦電流が発生して、そのジュール熱により鍋Pが加熱される。誘導加熱により鍋Pの底板Bに生じた熱は、鍋Pから食材Fへ伝達され、食材Fが加熱調理される。
一方、鍋Pの底板Bに生じた熱は、その下方に形成された空気層Aを介して、トッププレート3伝わり、トッププレート3を昇温させる。トッププレート3の下方に設けられた温度センサ30は、継続的にトッププレート3の温度(T)を測定するとともに、その測定信号を温度推定回路40に送信する。
そして温度推定回路40は、上述のように温度センサ30からの測定信号に基づいて、温度(T)の時間変化率(ΔT/Δt)を算出するとともに、鍋Pとトッププレート3との間の算出された間隔(δ)を用いて鍋Pの底板温度(T)を推定し、その信号を制御回路50に送信する。
制御回路50は、設定機器70で設定された入力信号に応じて、制御回路50に内蔵されたメモリ(図示せず)に記憶された駆動プログラム(デフォルト値)を呼び出し、この駆動プログラムに基づいて駆動回路60に駆動信号を送信するとともに、必要ならば警告機器80に警告信号を供給して警告をユーザに与える。
駆動回路60は、制御回路50からの駆動信号により、IGBTなどの半導体スイッチング素子を駆動して、適正な高周波電流を加熱コイル20へ供給して、設定機器70で設定された入力信号に応じて鍋Pへの火力を調整する。また警告機器80は、制御回路50からの警告信号に基づいてユーザに警告を与える。
以上のように、本願発明に係る制御回路50は、上記一連の動作において、設定機器70からの設定信号および温度センサ30からの測定信号を反復的にモニタすることにより、ユーザが所望する調理状態を維持するように駆動回路60を制御することができる。
従来技術によれば、図4のグラフに示すように、トッププレートの実測温度(T)が鍋Pの実測温度に応答性よく推移しないので、正確な鍋Pの温度をリアルタイムで検知することができず、ユーザが所望する調理状態を必ずしも実現するものでなかった。たとえば鍋Pの実際の温度は十分高く、食材Fは沸騰しているにも拘わらず、鍋Pをさらに過剰に加熱して、吹きこぼれが生じるおそれがあった。
しかしながら本願発明によれば、トッププレートの実測温度(T)の時間変化率(ΔT/Δt)を新たなパラメータとして用いることにより、鍋Pの推定温度の応答性を高め、かつ実際の鍋Pの温度により近似して推定することができるので、ユーザは所望する調理状態を追随性よく把握することができる。
また評価実験2で説明したように、間隔(δ)は必ずしも一定でないところ、本願発明によれば、規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)の概念を導入することにより、トッププレート3の実測温度(T)およびその時間変化率(ΔT/Δt)から間隔(δ)を算出することを可能とし、任意の間隔(δ)を有し得る誘導加熱調理器1において、実際の鍋Pの温度(T)を精度よく推定することができる。
なおトッププレート3は、一般には、透光性を有するガラス板が用いられるが、本願発明においてサーミスタなどの接触式の温度センサを用いる場合、非透光性のガラス板を用いてもよく、同様に鍋Pの温度を正確に応答性よく検知することができる。したがって、本願発明によれば、トッププレート3の表面に非透光性の皮膜(塗料)を形成して、デザイン性を向上させることができ、またトッププレート3を着色ガラス材料、樹脂材料、セラミック材料などを用いて作製し、耐熱性および耐衝撃性を改善することもできる。
特に樹脂材料およびセラミック材料は、その耐衝撃性および成形性が優れており、トッププレート3の割れ(破砕)を抑制することができ、さまざまな形状(凹形状、凸形状、角部に湾曲形状など)を有するトッププレート3を容易に作製することができ、さらにトッププレート3の周縁部(図示せず)に設けた枠部材と一体に成形し、または枠部材を省略する構造とすることができるので、部品点数を削減し、製造コストを低減することもできる。
また成形性が優れた材料を用いてトッププレート3を作製することにより、トッププレート3の表面上において、鍋Pの適正な載置位置を示すためのガイドや、食材Fが吹きこぼれた際に水分を誘導するためのガイドまたは流路などを構成する凹凸を容易に形成することができる。さらに、トッププレート3上に点字を形成することにより、視覚障害者でも利用しやすい誘導加熱調理器1を提供することができる。
ここで鍋などの被加熱体Pに収容される食材とは、水、だし汁、油、野菜、肉、魚などの食品をいう。また被加熱体Pとは、誘導加熱により発熱することができる鍋、フライパン、やかんなど、上記食材を収容するためのものをいう。
設定機器70とは、上述の操作パネル7および火力調整ダイヤル8の他、電源のON/OFFスイッチ、調理モード、火力モードまたは鍋温度の選択スイッチなど、ユーザが誘導加熱調理器1の駆動状態を設定するための信号を制御回路50に入力するものをいう。
たとえば調理モードの選択スイッチを用いて、制御回路50のメモリ内に事前に記憶された数多くのメニュの中から炊飯調理モードを選択入力したとき、本願発明による温度推定回路40により推定された鍋Pの温度(T)に基づいて、同様にメモリ内に格納された炊飯調理モードの調理プログラムに応じて火力調整するようにしてもよい。また調理モードの選択スイッチで揚げ物調理モードを選択し、さらに鍋温度の選択スイッチを用いて鍋温度を「180」℃に設定して、油の温度が一定に維持されるように火力調整することもできる。
また誘導加熱調理器1は、設定機器70として、電子記憶媒体(SDカード、USB)を受容するスロットや、外部のPCや携帯電話等との通信を可能にする通信手段(通信ケーブル、赤外線センサ)を有するものであってもよい。
警告機器80とは、上記液晶表示部9の他、合成音声、ビープ音、メロディなどのサウンドを利用して、あるいはライトの点灯/点滅など光を利用して、安全基準を逸脱した場合の警告や調理状況をユーザに通知するものをいう。また、ユーザが設定機器70で設定した鍋Pの温度と比較できるように、液晶表示部9において実際の鍋Pの温度をリアルタイムで表示するようにしてもよい。さらに、液晶表示部9で調理の進捗状況を表示するようにしてもよい。
本願発明に係る温度センサ30として、サーミスタ(半導体の電気抵抗が温度により変化する特性を利用して温度を推定するもの)の他、トッププレート3の温度を測定できるものであれば任意のもの(接触式温度センサおよび光学式温度センサ)を利用することができる。接触式温度センサは、たとえば熱電対(性質の異なる2種類の金属線の一端を接合した温度センサで接合部に温度を加えると両端の温度差に応じて発生する微弱な熱起電力を利用して温度を推定するもの)、測温抵抗体(物質が金属の場合、温度に比例して電気抵抗が大きくなる特性を利用して温度を推定するもの)、放射温度計(物体が放射している赤外線エネルギを赤外線センサで受け、基準温度補正、放射率補正などを行って温度を推定するもの)などであってもよい。また光学式温度センサの放射温度計を用いて,鍋Pの温度を測定する場合には、トッププレート3の下面に赤外光の透過を抑制する皮膜(塗装など)を形成してもよい。
実施の形態2.
図5に加え、図6および図7を参照しながら、本願発明に係る誘導加熱調理器の実施の形態2について以下詳細に説明する。実施の形態1において、規定表面温度(Tsh)および規定加熱時間(τ)は、加熱コイル20に供給される電力(W)に依存するので、それぞれの誘導加熱調理器について事前に設定できることを説明したが、実施の形態2においては、供給電力(W)に応じて規定表面温度(Tsh)を決定する手法について以下説明する。
実施の形態1に係る誘導加熱調理器1において、加熱を開始して約130秒経過後については、鍋Pの推定温度(T)は約140℃でほぼ一定に推移しており、同様に、鍋P内の食材F(水)の実測温度(T)も沸点(約100℃)に維持されている。これは、鍋P内の食材F(水)が飽和沸騰状態にあり、加熱コイル20からの供給電力(熱量)と食材F(水)が放出する熱量(気化熱を含む)が釣り合っており、上式[数4]の左辺にある規定加熱量Q(一定)に対し、右辺にある熱伝達係数hおよび過熱度(ΔTbf)が一定であることを意味する。
一方、沸騰状態にあるときの鍋Pの温度(T)は、上述のように、一般には、鍋Pの底板Bの表面性状、食材Fの物性値、および加熱コイル20への供給電力(W)に主に依存する。他方、市販されている鍋Pは磁性材料(またはその上に琺瑯材料を皮膜したもの)を用いて形成され、これらの磁性材料や琺瑯材料の厚みもさまざまであり、さらに積層材や貼付材などにより追加的に皮膜されたものが数多く提供され、底板Bの表面性状は鍋Pの底板Bにより大きく異なる。ただし、ほとんどの鍋Pは、食材F(水)と接する底板Bの表面性状が熱伝達係数hを最適化するように設計されている。また本願発明において、鍋Pの温度(T)を推定できるのは、水または油を含む食材Fを鍋P内で調理する場合に限定される。
説明を簡略にするために、食材Fが水である場合を検討すると、水の沸点は、調味料や塩分等により多少上昇することがあるが、約100℃である。このとき、図5に評価実験2では、加熱コイル20への供給電力(W)が3000Wであり、過熱度(ΔTbf)は約40℃であった。
なお、水を沸騰させるために熱量Qを鍋Pに加えたときの過熱度(ΔTbf)は、水を飽和沸騰させるために必要な熱量Q(規定加熱量Q)を鍋Pに加えたときの過熱度(ΔTbf0)を用いて次式により推定できることが知られている。
Figure 0005889130
ここで指数(n)は0.5〜0.9であり、好適には0.6〜0.8である。すなわち、各誘導加熱調理器1において、加熱コイル20への供給電力(W)を変化させて、過熱度(ΔTbf)を事前に測定し、温度推定回路40のメモリ内に記憶しておいてもよい。たとえば飽和沸騰させるために必要な熱量Q(規定加熱量Q)が3000Wで、上記指数(n)が0.7で、過熱度(ΔTbf0)が40℃および30℃である誘導加熱調理器について、鍋Pに加えた熱量Qに対する過熱度(ΔTbf)は、上式[数7]に基づき、下表のように算出される。
Figure 0005889130
したがって、上記評価実験2において、加熱コイル20への供給電力(W=加熱量Q)が3000Wで、過熱度(ΔTbf0)が40℃であるときの規定表面温度(Tsh)を120℃に設定した。しかし、加熱コイル20への供給電力(W)を1000Wとしたときの過熱度(ΔTbf)は18.5℃であるから、鍋Pの底板温度は飽和沸騰状態にあっても118.5℃程度にしかならず、規定表面温度(Tsh)を120℃に設定維持して、上記のように鍋Pの底板温度(T)を推定することは妥当でない。すなわち、「規定表面温度(Tsh)」は、加熱コイル20への供給電力(W=加熱量Q)に応じて異なる値に補正する必要がある。
そこで、たとえば供給電力(W=加熱量Q)を3000Wとした過熱度(ΔTbf0)と任意の電力(W=加熱量Q)を供給したときの過熱度(ΔTbf)との比が、供給電力(W)を供給したときの規定表面温度(Tsh)と任意の電力(W)を供給したときの規定表面温度(Tsh’)との比が一致するように、規定表面温度(Tsh’)を算出してもよい。
Figure 0005889130
択一的には、温度推定回路40において上述のような複雑な計算処理を簡素化するために、加熱コイル20への供給電力(W=加熱量Q)に対する規定表面温度(Tsh’)を、供給電力(W)を3000Wとした規定表面温度(Tsh)に基づき、次式を用いて規定表面温度(Tsh’)を算出してもよい。なお、次式は経験的に得られた概算式であるが、上式[数8]で得られる結果と符合するものである。
Figure 0005889130
すなわち本願発明に係る温度推定回路40は、加熱コイルに供給される加熱電力(W)に応じて、上式[数8]および[数9]を用いて、規定表面温度(Tsh)を補正することができる。
以上のように、規定表面温度(Tsh’)を供給電力(W)に依存するように設定することにより、鍋Pの底板Bの温度(T)の推定精度を向上させることができる。すなわち本願発明に係る誘導加熱調理器1によれば、温度推定回路40により正確に応答性よく推定された鍋Pの表面温度に基づいて、制御回路50は、さまざまな異常モード(発火、油煙、突沸、吹きこぼれ、空焚き、焦げつきなど)を検知し、駆動回路60を非常停止または火力低下(段階的低下も含む)を行うことができるので、調理時の安全性を向上させることができる。また本願発明に係る制御回路50は、火力調整ダイヤル8などの設定機器70によりユーザが設定した「火力」に基づいて、鍋Pの温度をユーザが所望する温度に調整するように駆動回路60を制御することができる。
上記異常モードのうち、油の発火に関して、たとえば揚げ物調理に際して、鍋Pの温度が任意の温度以上に上昇すると、油は発火するが、特に油量が少ない場合に温度上昇しやすく、発火しやすい。したがって、このとき温度推定回路40で求められたトッププレート3の温度(T)またはトッププレート3の温度(T)の時間変化率(ΔT/Δt)が所定の閾値を越えたとき、制御回路50は、油が発火する可能性があると判断して、駆動回路60を非常停止させる。
また別の異常モードである焦げ付きの発生に関して、焦げ付きが発生すると、鍋Pの底板Bに食材Fの炭化物による皮膜が形成され、食材Fに熱が伝わりにくくなり、鍋Pの温度が徐々に上昇する。制御回路50は、推定された鍋Pの温度が所定の温度より高くなったとき、または温度上昇し続けるとき、加熱コイル20への給電を停止または抑制する。たとえば、水分を含む食材Fは、100℃以上になると食材F内の水分が沸騰し、食材Fから流出するため、焦げ付きが発生しやすくなる。したがって、本願発明に係る誘導加熱調理器1は、鍋Pの底板Bの温度(T)の推定した上で、加熱コイル20への供給電力(W=加熱量Q)および過熱度(ΔTbf)等から、食材Fの温度を100℃以下に保つように加熱制御して、焦げ付きを抑制するように構成することが好ましい。すなわち本願発明に係る制御回路50は、鍋Pの底板Bの推定温度(T)、および過熱度(ΔTbf)に応じて、食材Fの温度を100℃以下に維持するように、加熱コイルに供給する加熱電力(W)を調整することにより、焦げ付きを防止するものである。
さらに別の異常モードとして、稀にではあるが、突沸現象が生じ得る。突沸現象とは、たとえば湯沸し時に、水が沸点(100℃)を超えても沸騰せず、沸点以上に過熱され、何らかの外的衝撃が加わることにより爆発的に沸騰し、食材Fが鍋Pから一気に放出され、食材F(水)の温度が急激に下がる現象をいう。これは、高温の食材Fが鍋Pから突然に吹き上がるので、きわめて危険な現象である。
図7および図8は、1500Wの供給電力(火力)で鍋P内の水を加熱したとき、通常の沸騰が生じる場合、および突沸現象が生じた場合において、水および鍋Pの底板Bの温度の時間的推移をプロットしたグラフである。通常の沸騰が生じる場合(図7)、鍋Pの底板Bの温度は、約120℃に達するまで上昇した後、ほぼ一定に維持され、鍋P内の水は、連続的に蒸発し、気化熱が奪われるため、その温度が沸点を超えることはない。これに対し、鍋Pの底板Bの温度は120℃を超え、140℃に達した時、鍋P内の水は沸点を超え、突沸現象が生じ、水および鍋Pの底板Bの温度は急激に低下する(図8)。
このように、突沸現象が生じる前には、図8から明らかなように、鍋Pの底板Bの温度が、通常の沸騰時に維持されるべき温度を超過するので、この温度を超えた場合であって、かつこの状態が所定の時間(たとえば100秒)以上継続した場合には、制御回路50は、突沸現象発生の可能性があると判断し、加熱コイル20へ供給される電力(W)を低減または停止するように駆動回路60を制御して、突沸発生を未然に防止することができる。
また本願発明に係る誘導加熱調理器1によれば、上記異常モードが検知された場合に、上記警告機器80を用いて、ユーザに警告を与えることができる。ユーザが誘導加熱調理器1から離れた場合に特に有用である。
たとえば上記異常モードを検知したとき、制御回路50はさまざまな警告機器80を制御して、ビープ音を発し、合成音声を出力し、警告灯を点灯または点滅させ、あるいは液晶表示部9に警告表示させることができる。これにより制御回路50は、異常モードが検知された際には、速やかにユーザに通知して注意を喚起するとともに、加熱コイル20への給電を停止または抑制してより高い安全性を実現することができる。
さらに本願発明に係る誘導加熱調理器1によれば、制御回路50は、火力調整ダイヤル8などで設定された鍋Pの温度と、上式[数3]で精緻に推定された鍋Pの温度を比較した上で、最適な火力で加熱するように駆動回路60を制御することができる。また液晶表示部9上には、従来技術のように設定された鍋Pの温度ではなく、実際の温度をリアルタイムで表示することができるので、ユーザの希望する調理方法に適した火力調節を実現し、より容易においしい料理の完成を支援することができる。
たとえば、揚げ物調理においてじっくり火を通したい場合は、火力調整ダイヤル8などで設定された鍋Pの温度を160℃に設定し、表面をこんがりと揚げたい場合は200℃に調節し、ミルクやお茶などを加熱する場合は一旦沸騰させた後、約70〜90℃になるように調節する。また煮込み料理時においては煮込み具材が60℃に維持されるように調節し、みそ汁などを加熱する場合には沸騰させない程度の温度に調節する。このように、ユーザはそれぞれの調理方法に適した温度を設定することができ、従来のユーザの感覚に頼って火力調整する必要が無く、美味しい料理の調理を行うことができる。また従前、鍋Pに収容された食材Fの内容量により火力調整しなければならなかったが、鍋Pの温度を正確に推定し、これに基づいて火力調節することができるので、食材Fの内容量に応じた火力調整は不要であり、より簡便に調理することができる。
また、卵焼き、目玉焼き、ハンバーグ、クレープ、餃子などを調理する場合、予熱したフライパンPに食材を入れるとき、事前にフライパンPの温度を設定することにより、異常温度に達する空焚きを未然防止しつつ、フライパンPを適正かつ安全な予熱温度に維持することができる。
さらに、おでんなどの煮込み料理を調理する場合、または熱燗やミルクなど低温で加熱保温した場合においても鍋Pの温度を正確に推定できるので、確実に所望する温度に設定することができる。
また誘導加熱調理器1は、炊飯などの特定のメニュを選択可能にしたメニュ選択機器(図示せず)を設け、選択されたメニュに対して調理時間および火力が設定された調理プログラムを制御回路50の内臓メモリ内に記憶しておき、この調理プログラムに従って調理時間および火力を自動的に制御する(「おまかせ調理」を行う)ものであってもよい。
なお上記実施の形態1,2において、鍋Pの底板温度(T)を推定する際、鍋Pの温度は、温度センサ30で測定されたトッププレート3の温度(T)に基づいて上式[数3]により算出されるが、トッププレート3の温度(T)は、トッププレート3を冷却する冷却風の温度(Tair)や、加熱コイル20の温度(T)、温度センサ30とトッププレート3との間の熱接触抵抗からも影響を受ける。
すなわち、別途設けた温度センサ(図示せず)を用いて冷却風の温度(Tair)を測定することが好ましい。トッププレート3が十分に冷却されれば、温度センサ30で測定される温度(T)は下がり、これに基づいて算出された底板Bの推定温度(T)は、上式[数3]で算出した温度より低くなる。そこで冷却風の効果によるトッププレート3の温度(T)の低下を考慮して、次式のようにトッププレート3の温度(T)および冷却風の温度(Tair)に依存する補正項(たとえば関数F(T,Tair)>0)を上式[数3]に追加して、温度推定回路40は底板Bの推定温度(T)を推定してもよい。
Figure 0005889130
同様に、別途設けた温度センサ(図示せず)を用いて加熱コイル20の温度(T)を測定することが好ましい。加熱コイル20の温度(T)が高いほど、温度センサ30で測定される温度(T)は上がり、これに基づいて算出された底板Bの推定温度(T)は、上式[数3]で算出した温度より高くなる。そこで加熱コイル20の温度(T)の上昇による効果を考慮して、次式のようにトッププレート3の温度(T)および加熱コイル20の温度(T)に依存する補正項(たとえば関数G(T,T)>0)を上式[数3]に追加して、温度推定回路40は底板Bの推定温度(T)を推定してもよい。
Figure 0005889130
1:誘導加熱調理器、2:筐体、3:トッププレート、4:IH加熱部、5:ラジエント加熱部、6:グリル部、7:操作パネル、8:火力調整ダイヤル、9:液晶表示部、
20:加熱コイル、30:温度センサ、40:温度推定回路、50:制御回路、60:駆動回路、70:設定機器、80:警告機器、
P:被加熱体(鍋、フライパン)、B:被加熱体の底板、A:空気層。

Claims (12)

  1. 被加熱体が載置されるトッププレートと、
    前記トッププレートの下方に配置された、前記被加熱体を誘導加熱する加熱コイルと、
    前記加熱コイルに高周波電流を供給する駆動回路と、
    前記トッププレートの下方に配置された、該トッププレートの温度(T)を検出する温度センサと、
    a)前記被加熱体の温度上昇率が所定の閾値以下となるときの前記被加熱体の規定表面温度(Tsh)、および前記被加熱体が規定表面温度(Tsh)に達するまでの規定加熱時間(τ)の関係を記憶するメモリを有し、
    b)前記メモリ内の前記規定加熱時間(τ)における前記規定表面温度(Tsh)、前記規定加熱時間(τ)が経過したときの前記トッププレートの温度(T)およびその時間変化率(ΔT/Δt)に基づいて、前記被加熱体の表面温度(T)を推定する温度推定回路と、
    前記温度推定回路で推定された推定温度(T)を用いて前記駆動回路を制御する制御回路とを備え
    前記温度推定回路は、次式により被加熱体の表面温度(T )を推定することを特徴とする誘導加熱調理器。
    Figure 0005889130
    :温度推定回路で推定された被加熱体推定温度
    :温度センサで検出されたトッププレートの温度
    t :加熱開始からの時間
    τ :規定加熱時間
    sh :規定加熱時間における被加熱体の規定表面温度
    g,t=τ :規定加熱時間が経過したときのトッププレートの温度
    (ΔT /Δt) t=τ
    規定加熱時間が経過したときのトッププレートの温度の時間変化率
    (ΔT /Δt):
    規定加熱時間の経過後の所定の時間が経過したときのトッププレートの温度の時間変化率
  2. 前記温度推定回路は、
    前記被加熱体と前記トッププレートとの間の間隔(δ)を、前記規定加熱時間(τ)が経過したときの前記トッププレートの温度(T)およびその時間変化率(ΔT/Δt)、ならびに前記規定表面温度(Tsh)に基づいて算出し、
    前記間隔(δ)に基づいて、前記被加熱体の表面温度(T)を推定する請求項1に記載の誘導加熱調理器。
  3. 温度推定回路は、次式により被加熱体の表面温度(T)を推定することを特徴とする請求項に記載の誘導加熱調理器。
    Figure 0005889130
    δ:被加熱体とトッププレートとの間の間隔
    ρ:トッププレートの密度
    :トッププレートの比熱
    δ:トッププレートの厚み
    λ:空気の熱伝導率
  4. 規定加熱時間(τ)は、30秒〜90秒の間で設定されることを特徴とする請求項またはに記載の誘導加熱調理器。
  5. 規定加熱時間(τ)経過後の複数の時点において、トッププレートの温度(T)が検出され、その時間変化率(ΔT/Δt)が算出され、
    温度推定回路は、これらの温度(T)および時間変化率(ΔT/Δt)の平均値を用いて、被加熱体の表面温度(T)を推定することを特徴とする請求項またはに記載の誘導加熱調理器。
  6. 加熱開始後のトッププレートの温度(T)と、規定表面温度(Tsh)とを比較して、
    i)加熱開始後の前記トッププレートの実測温度(T)が規定表面温度(Tsh)より大きいとき(T−Tsh>0)、および加熱開始後の前記トッププレートの実測温度(T)と規定表面温度(Tsh)との差が所定の温度差(T)より小さいとき(Tsh−T>T>0)には、間隔(δ)を推定せず、
    ii)加熱開始後の前記トッププレートの温度(T)が規定表面温度(Tsh)より大きく、その温度差が所定温度以上であるとき(Tsh−T>T>0)には、前記間隔(δ)を推定することを特徴とする請求項に記載の誘導加熱調理器。
  7. 温度推定回路は、加熱電力(W)に応じて規定表面温度(Tsh)を補正することを特徴とする請求項またはに記載の誘導加熱調理器。
  8. 温度推定回路は、被加熱体の推定温度(T)、およびこれと該被加熱体内に収容された食材との間の温度差に相当する過熱度(ΔTbf)に応じて、食材の温度を100℃以下に維持するように、加熱コイルに供給する加熱電力(W)を調整することを特徴とする請求項に記載の誘導加熱調理器。
  9. 制御回路は、被加熱体の推定温度(T)が、食材の沸点に該被加熱体内に収容された該食材との温度差に相当する過熱度(ΔTbf)を加えた温度を超え、その状態が所定期間以上継続したとき、突沸現象が発生すると判断して、加熱コイルへ供給される高周波電流を抑制または停止するように駆動回路を制御することを特徴とする請求項に記載の誘導加熱調理器。
  10. 被加熱体が載置されるトッププレートと、
    前記トッププレートの下方に配置された、前記被加熱体を誘導加熱する加熱コイルと、
    前記加熱コイルに高周波電流を供給する駆動回路と、
    前記トッププレートの下方に配置された、該トッププレートの温度(T)を検出する温度センサとを備えた誘導加熱調理器の制御方法であって、この制御方法は、
    a)前記被加熱体の温度上昇率が所定の閾値以下となるときの前記被加熱体の規定表面温度(Tsh)、および前記被加熱体が規定表面温度(Tsh)に達するまでの規定加熱時間(τ)の関係を記憶するステップと、
    b)記憶された前記規定加熱時間(τ)における前記規定表面温度(Tsh)、前記規定加熱時間(τ)が経過したときの前記トッププレートの温度(T)およびその時間変化率(ΔT/Δt)に基づいて、前記被加熱体の表面温度(T)を推定するステップと、
    推定された推定温度(T)を用いて前記駆動回路を制御するステップとを有し、
    前記被加熱体の表面温度(T )を推定する前記ステップは、次式により被加熱体の表面温度(T )を推定することを特徴とする制御方法。
    Figure 0005889130
    :温度推定回路で推定された被加熱体推定温度
    :温度センサで検出されたトッププレートの温度
    t :加熱開始からの時間
    τ :規定加熱時間
    sh :規定加熱時間における被加熱体の規定表面温度
    g,t=τ :規定加熱時間が経過したときのトッププレートの温度
    (ΔT /Δt) t=τ
    規定加熱時間が経過したときのトッププレートの温度の時間変化率
    (ΔT /Δt):
    規定加熱時間の経過後の所定の時間が経過したときのトッププレートの温度の時間変化率
  11. 前記被加熱体の表面温度(T)を推定するステップは、
    前記被加熱体と前記トッププレートとの間の間隔(δ)を、前記規定加熱時間(τ)が経過したときの前記トッププレートの温度(T)およびその時間変化率(ΔT/Δt)、ならびに前記規定表面温度(Tsh)に基づいて算出し、
    前記間隔(δ)に基づいて、前記被加熱体の表面温度(T)を推定する請求項10に記載の制御方法。
  12. 前記被加熱体の表面温度(T)を推定するステップは、次式により被加熱体の表面温度(T)を推定することを特徴とする請求項11に記載の制御方法。
    Figure 0005889130
    δ:被加熱体とトッププレートとの間の間隔
    ρ:トッププレートの密度
    :トッププレートの比熱
    δ:トッププレートの厚み
    λ:空気の熱伝導率
JP2012146789A 2012-06-29 2012-06-29 誘導加熱調理器およびその制御方法 Active JP5889130B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012146789A JP5889130B2 (ja) 2012-06-29 2012-06-29 誘導加熱調理器およびその制御方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012146789A JP5889130B2 (ja) 2012-06-29 2012-06-29 誘導加熱調理器およびその制御方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014011020A JP2014011020A (ja) 2014-01-20
JP5889130B2 true JP5889130B2 (ja) 2016-03-22

Family

ID=50107542

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012146789A Active JP5889130B2 (ja) 2012-06-29 2012-06-29 誘導加熱調理器およびその制御方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5889130B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3939384B1 (en) * 2019-03-14 2023-03-08 Vestel Elektronik Sanayi ve Ticaret A.S. Induction cooking device and method

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2554580B2 (ja) * 1992-07-23 1996-11-13 リンナイ株式会社 ガスコンロ
JP2003007444A (ja) * 2002-04-26 2003-01-10 Matsushita Electric Ind Co Ltd 電磁調理器
JP2005310555A (ja) * 2004-04-21 2005-11-04 Sharp Corp 電磁調理器
US7573005B2 (en) * 2004-04-22 2009-08-11 Thermal Solutions, Inc. Boil detection method and computer program
JP2008288181A (ja) * 2007-04-17 2008-11-27 Panasonic Corp 加熱調理器およびそのプログラム
WO2011132614A1 (ja) * 2010-04-21 2011-10-27 三菱電機株式会社 誘導加熱調理器
JP5197676B2 (ja) * 2010-05-31 2013-05-15 三菱電機株式会社 加熱調理器
JP5556506B2 (ja) * 2010-08-30 2014-07-23 パナソニック株式会社 誘導加熱調理器
JP5506609B2 (ja) * 2010-09-01 2014-05-28 三菱電機株式会社 誘導加熱調理器およびその制御方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014011020A (ja) 2014-01-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2019509454A (ja) 無線制御調理システム
JP5033733B2 (ja) 誘導加熱調理器
JP5340479B2 (ja) 誘導加熱調理器
KR101482117B1 (ko) 조리기기 및 온도 제어 방법
WO2013134239A1 (en) Method and apparatus for temperature measurement during induction cooking
JP2008034228A (ja) 加熱調理器
KR102109979B1 (ko) 자동 조리 기능을 갖춘 전열식 프라이팬
JP5308830B2 (ja) 誘導加熱調理器
JP2009295457A (ja) 誘導加熱調理器
JP2019200002A (ja) 加熱調理装置
JP5889130B2 (ja) 誘導加熱調理器およびその制御方法
JP2008052960A (ja) 誘導加熱調理器
JP6138200B2 (ja) 加熱調理器
JP5241575B2 (ja) 誘導加熱調理器
JP5889092B2 (ja) 誘導加熱調理器
JP2011228030A (ja) 誘導加熱調理器
KR20110096201A (ko) 자동온도조절이 가능한 조리기 및 그 제어방법
JP5795931B2 (ja) 誘導加熱調理器
JP2020126750A (ja) 誘導加熱調理器
JP5865010B2 (ja) 誘導加熱調理器
JP6983058B2 (ja) 誘導加熱調理器
JP2011009089A (ja) 誘導加熱調理器
JP2010135191A (ja) 誘導加熱調理器
JP2013097936A (ja) 誘導加熱調理器
KR100916982B1 (ko) 쿡탑, 쿡탑의 온도조정방법

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20141104

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150819

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150929

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20151023

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160119

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160216

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5889130

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250